ディジョン解放を急げ…だそうだ。（作者 秋津透）

0

リプレイ

「ディジョン解放戦か、なんだかんだでこういう作戦は珍しいな。だいたいの場合は配下を削って排斥力を弱めてからジェネラル級を討つからな。逆に指揮官のジェネラル級を奇襲つーか暗殺染みた感じで倒してから、残った配下を撃破していく例はあんまりないな……いや、まぁジェネラル級どころか断片の王ヴィルヘルム2世を暗殺した例もあるが……まぁともあれ、やることは単純だ。敵の援軍が来る前にさっさと殲滅しちまおう」
　ディジョンに向かうパラドクストレインの車内で、呉守・晶（TSデーモン・g04119）が述懐する。時先案内人が新米で過去の作戦に関する言及が全然なかったので、ベテラン高レベルディアボロスの晶としては、ちょっと一言（？）言っておきたかったのだろうか。
　そして、やはりベテラン高レベルというか、上限レベルに達しているハニエル・フェニックス（第七の天使・g00897）が、ちょっと違う方向から感想を述べる。
「アークエンジェル、かぁ……名前も見た目もいかにも大天使って感じだね。綺麗だけどその表情はいただけないなぁ、復讐で心がいっぱいって顔してるよ。でも私も……油断したら同じような顔になっちゃうかもね！」
　そう言うと、ハニエルはぐっと拳を握って続ける。
「大天使にもアークデーモンにも、ここでまで悪い事はさせない。かきゅーてきすみやかにやっつけてあげるんだから！」
　一方、ハニエルと同じく上限レベルの嵐柴・暁翔（ニュートラルヒーロー・g00931）は、敢えて言葉には出さずに呟く。
（「なんというか、アークエンジェル達も猪武者というか復讐鬼にされてしまうとは難儀だねぇ…美人なら怒った顔も綺麗とはいうけど限度はあるし、まして他人の復讐心でその意志と表情を歪めているのは色々と台無しだよ……まあ、フェニックスの言う通り、復讐者も一歩間違えればあんな感じになりかねないんだろうけどな…」）
　そして、他の連中に比べるとレベルはやや低いがTOKYOエゼキエル戦争ディヴィジョン出身の大崎・朔太郎（若返りサキュバスアイドル・g04652）と、この中では唯一、後発（とはいえ既に奪還されているが）ディヴィジョンである蹂躙戦記イスカンダル出身のバトラ・ヘロス（沼蛙・g09382）は、比較的思い入れのない感じで言葉を交わす。
「復讐に囚われた天使ですか、本当に色んな所に沢山広がってますね。出来るだけ減らしていきましょうか」
「……またあの天使たちでありますか。彼らの事はよく知りませんけど、随分と生き残りがいたものであります。問題ありません。現れる端から倒していけばいいだけであります」
　そして暁翔は二人の会話から、あちこちのディヴィジョンに出現している大天使、特に下っ端の卜ループス級が、TOKYOエゼキエル戦争ディヴィジョンの生き残りなのか、それとも漂着先ディヴィジョンの一般人が（リグ・ヴェーダの蟲将のように）変えられたものなのかわからないことに気づいたが、同時に、そんな指摘をしても誰も嬉しくないことにも気づいて黙っていた。
　やがてパラドクストレインは、ディジョン郊外に到着する。街を支配し、クロノヴェーダを統率していたジェネラル級キマイラウィッチ『ニコラ・フラメル』が陣没したことを知っているのかいないのか、どこか茫然とした雰囲気で集まっていたトループス級大天使『アークエンジェル』たちが、ディアボロスたちがやってきたことを察知したのか、猛然と動き出す。
「ディアボロスだ！　殺せ！　殺せ！　復讐だ！」
「やれやれ……」
　少なくとも、むこうさんを広い場所へ移動する手間も余裕もないようだな、と声には出さずに呟くと、暁翔は先手必勝（？）とばかりに挑発系（？）パラドクス「落ちる男再現（リライト）」を発動させる。
「俺の道はおっぱいダイブ、そして落下と共にある！」
「ぎゃああああああああ！」
　ディアボロスの気配へと殺到しようとした矢先、凄まじいとしか言いようのない勢いでカウンターの体当たりをぶちかまされた『アークエンジェル』は、卜ループス級の身で耐えられるわけもなく、複数の個体が巻き込まれるような形で無惨に四散する。潰れ際に反撃のパラドクス「アークシャインスラッシュ」をほとんど自動反射のように発動させるが、創造された光の剣はあまりにも間合い（？）が近すぎて空振りとなり、高空から落下するかの如き超高速で胸から胸へと飛んでいく暁翔を掠めて小ダメージを与えることしかできない。
「お、お、お、おのれーっ！」
　よりにもよって不埒の極みの「おっぱいダイブ」で多数の仲間を潰された『アークエンジェル』たちは、植え付けられた復讐心に激怒の油どころかガソリン（暁翔談）をたっぷり注がれ、自分たちが飛行できることも忘れ果て、一片の冷静さもなく後先構わず一斉に殺到しようとして、結果的に団子状態になって無様に押し合いへし合いする。
　そして、そこへ続いてパラドクストレインから飛び出したディアボロスたちが、いわゆる七面鳥撃ちの如く遠距離攻撃パラドクスを叩き込む。
「大天使アークエンジェルか、いや意味被ってるぞ！　いわば種族人間で名前がヒューマンみたいなもんだぞ！　まぁ種族名を冠するのは伊達じゃない、か？」
　言い放って、晶がパラドクス「ブラスフェミースラッジ」を発動させる。ちなみに昔、堂々と「ヒューマン」と名乗るヒーロー（？）がいたらしいが、晶がそれを意識して言ったのかどうかはわからない。
「邪悪を討つ、か。なら、こいつはどうだ！元は伝承的には邪悪も邪悪な「黙示録の大悪魔マスターテリオン」のパラドクスだ！　赤黒い血のような液体で出来た剣や槍、斧など多種多様な武器の数々を作って撃ち出すぜ！」
　暁翔に激昂している『アークエンジェル』たちはたぶん聞いていないと思うが、晶は存分に言い放って血の武器を当たるを幸い叩き込む。無惨に両断されたトループス級は死に際に反撃のパラドクス「アークシャインスラッシュ」を発動。光の剣を撃ち返された晶は素早く躱して直撃を避けるが、掠められて多少のダメージを負う。
「ハッ！　植え付けられた復讐心で、俺らディアボロスに復讐に敵うと思うな！　せめて、植え付けられたものではなくエゼキエルを滅ぼされた真正の復讐心で掛かってくるんだな！」
　掠めた傷から滲む血をぴっと指で弾き、晶は鋭く言い放つ。ただし、そのタイミングでは既にトループス級は壊滅状態で、誰も聞いていない。
　そしてハニエルは、パラドクス「アンホーリー・スティング」を発動する。
「大事なのはタイミング……今っ！」
　挑発してカウンター食らわせるつもりだったけど、あっち（暁翔）に気を取られてるならそれはそれで好機、と、ハニエルはかつて食らったアークデーモンの槍を宙に突然出現させ、遠慮会釈なく『アークエンジェル』に叩きつけて貫く。串刺しにされたトループス級は、死に際に反撃の「アークホーリーレイ」を発動させ光線を放つが、暁翔や晶ほど「この攻撃でお前を斃した！」オーラが激しくなかったのか、光線の多くは槍が出現した空中へと放散。ハニエルを掠めたものも数条あったが、さほどのダメージにはならなかった。
「お願い、青縞」
　バトラは珍しくもというべきか、自ら突撃を行わずに無双馬『青縞』の嘶きによるパラドクス「夢魔の嘶き（ナイトメアネイング）」を発動。『アークエンジェル』の小集団をまとめて幻覚に落とす。もっとも、トループス級でも大天使に対して精神攻撃は効きづらく、幻覚を見せる以前に嘶きの音波攻撃ダメージで打ち倒す結果になる。『アークエンジェル』の頭が破裂し、反撃の「アークホーリーレイ」が放たれるが、バトラは一瞬早く『青縞』の召喚を解いて直撃を避け、魔力盾スクトゥムをかざして余波を防ぐ。
「歌声よ、光になって……届けっ！」
　更に朔太郎がパラドクス「極光歌（キョクコウカ）」を発動。歌声を光弾に変えて、最後に残る少数のトループス級を的確に撃ち抜く。撃ち斃された『アークエンジェル』は死に際に反撃のパラドクス「アークフェザーバラージ」を発動して光の羽を飛ばすが、追撃の光弾に撃ち飛ばされ朔太郎まで届かない。
「復讐したい気持ちはわかりますが先に東京に手を出したのはそっちな訳で、だったら僕等もしっかりやり返しても文句はないですよねっ？」
　言い放って、朔太郎は他のディアボロスたちとともにパラドクストレインへと走る。もちろん、全滅したクロノヴェーダから文句が返ることはなかった。

最終結果:成功
完成日	2024年09月10日