続・イデアロゴスとの対話:500年後からの『刻逆』
●【西暦2026年:地球衛星軌道】未来を示す予兆
ディアボロスとの対話を終えたバイナリー・イデアロゴスが、地球を去って数時間。
北米大陸の『帰還』を確認するべく宇宙に留まっていたディアボロスは、巨大な歴史の歪みを感じ取る。
そしてディアボロス達は、長い『予兆』を目にすることとなった。
「この予兆は、未来の記憶……?」
「何かが、未来から現れようとしているのか!」
●【西暦2526年(地球時間):イデアロゴス中心宙域】オリジン・イデアロゴスの嘆き
かつて興隆を極めた『永遠存在(イデアロゴス)』の中心宙域は、壊滅状態に陥っていた。
それをもたらしたのは、数百年前に遭遇した
『イデアロゴスが認識することの出来ない謎の敵』だ。
それだけの短期間で、『謎の敵』は既知宇宙の過半を平らげ、イデアロゴスを滅ぼさんと押し寄せて来ているのだ。
初めての接触は、ある惑星でディアボロスとなり得る知的生命体を発見し、手順通りに対応を行っていた時の事だ。
『謎の敵』は『少しだけ待って欲しい』『俺達なら、一般人を絶滅させずに解決する事が可能だ』『この事が真実である事は、時がくれば証明される』などと、意味不明の主張を繰り返してきた。
主張は意味不明であったが、彼らがイデアロゴスになりうる『ディアボロス』であると判断された為、現地のディアボロスとまとめて対応するのが合理的と判断。
幸い、『謎の敵』は、現地の一般生命体の虐殺に応じ、復讐心を引き出せる事が判明したため、絶滅処理を継続したのだが……。
『謎の敵』は『イデアロゴスは決して敵では無い』『だけど、こんな事、見逃せない!』『自分達だけ安全であれば、他の星の人々を見捨てて良いなんて事は無い!』と、イデアロゴスには意味不明な主張を重ね、絶滅処理を実行していたイデアロゴスに戦いを挑み、撃破、撃退してしまったのだ。
『謎の敵』は、ディアボロスとしては規格外に高いイデアロゴスに準じた時間干渉能力を持ち、なんらかの方法で、その力を増幅している事までは判明したが、それ以上の情報はどうしても得られなかった。
なんらかの『観測妨害』が行われているのは間違いない。
だが、この強力な『観測妨害』は、全てのイデアロゴスの力を束ねた程の強度であり、そのような『観測妨害』を行える存在が、この宇宙に存在するなどと、ありえない筈だった。
最初の接触以降、新たなディアボロスを傘下に加えた『謎の敵』勢力は、宇宙に散らばる知的種族と接触し、勢力圏を広げ続けた。あまつさえ、それを阻止しようと対応したイデアロゴスからも、復讐心を植え付けられ、あるいは取り戻して『謎の敵』の傘下に加わる者が現れ始めるに至り、時間無制限で最も合理的な行動を取れる優位性もなくなった。
「何故、こんな事になったのか。
このままでは、この宇宙は、破滅の未来を確定してしまう。
我がイデアロゴスとなったのは、このような破滅を防ぐ為だったというのに……」
イデアロゴス中心宙域で、オリジン・イデアロゴスが宇宙の未来を憂う。
その時、500年の『観察猶予』期間が終了した。
そして、消去されていた、500年前に決定された『最終人類史のディアボロス』に関わる全ての情報が蘇る。
「な、なんという事だ。
『謎の敵』……いや、地球の、
『最終人類史のディアボロス』!
あの者達に与えた、たった500年の猶予期間が、この事態を招いたというのか!
現時点で動けるイデアロゴスを集結させよ。
もはや、一刻の猶予も無い。
アル・カポネとアイザック・アシモフがイデアロゴスとなっているなら、呼び寄せろ。
まだイデアロゴスとなっていなければ、そのままでも良い。
宇宙の未来を破滅に導く『最終人類史のディアボロス』は、なんとしても食い止めねばならぬ!」
●【西暦2526年:地球衛星軌道】新たな『刻逆』
オリジン・イデアロゴスと、彼と同じ判断に至ったイデアロゴスは、太陽系、地球へと押し寄せる。かつて絶滅人類史を滅ぼしたものを、大きく上回る戦力だ。だが、最終人類史のディアボロスは動じない。
「どうやら、観察猶予の期間が切れたようだな」
「だが、消去した情報が戻ったイデアロゴスが、地球を襲うのは想定済だ」
「この時の為に、改良に改良を加えた、我らが最終拠点『新宿島』の力を見せる時!」
「地球人類120億、全宇宙に広がるディアボロス連合の総人口7300億、その全ての思いを束ねた『新宿島』、攻略できると思うなよ!」
最終人類史のディアボロス、及び、様々な星から加わった後進のディアボロスが、イデアロゴスとの決戦に挑まんとする。
この戦いは、圧倒的なまでに、最終人類史のディアボロスの有利に進んでいく。
もとより、防戦一方で本拠地に追い込まれていた勢力が、優勢な勢力の本拠地に無謀に攻め込んだのだ。
真っ当な手段では、勝ち目などある筈が無かった。
そこに、ディアボロス連合の古参の将の一人、他惑星出身のディアボロス達との連絡役となった天魔武者『明智光秀』から緊急の連絡が入った。
何百年という宇宙での戦いと世代交代を経た時代では、新たに造られる天魔武者は加虐的な本能を抑えられる知性的な個体ばかりで、イデアロゴスの『圧政』に晒され、救いを求める生存者の感情を検知する種族となっている。
「大変です!
イデアロゴス中心部で、『刻逆現象』の兆候が確認されました。
更に、敵中枢に、『アル・カポネ』と『アイザック・アシモフ』の反応を確認。
奴らは、イデアロゴスは、あの2人を鍵とし、人類史改竄術式『刻逆』を実行するつもりです!」
明智光秀からの報告に続き、各方面から同様の情報が新宿島に報告される。
「全ディアボロスに通達。『刻逆』を阻止せよ! 各自、最善の手段をもって、敵中枢を叩け!
歴史改竄は絶対に許されない!」
新宿島大本営から発せられる大号令。
死に物狂いの全面攻撃は、残存イデアロゴスの軍勢を瞬く間に磨り潰していく。
だが、一歩の遅れは、イデアロゴスとの戦いでは膨大な時間を与えるのに等しい。
『刻逆、発動。
最終人類史のディアボロスの生存を赦した、我らの過ちを取り除き、宇宙に平和と安定を取り戻せ!
アル・カポネ、アイザック・アシモフ、先導せよ!』
オリジン・イデアロゴスの言葉と共に、儀式の中心にいたイデアロゴス数体の姿が掻き消える。
人類史改竄術式『刻逆』。
一旦発動した『刻逆』は、他者の介入を排斥し、領域内で確定した歴史を覆す事は不可能になる。
オリジン・イデアロゴス率いる、イデアロゴスの軍勢は、最終人類史のディアボロスの存在を無かった事にするため、かつてはイデアロゴスを妨げていた『刻逆』を行使したのだ。
●【西暦2026年:地球衛星軌道】断片の王改竄術式『王の再臨』
遥か遠い未来を示す予兆は終わった。
そして500年後にイデアロゴスの行使した『刻逆』が、西暦2026年の衛星軌道上に影響を及ぼし始める。
最初に出現したのはアル・カポネだった。彼は自分自身の歴史を奪い、空想科学コーサノストラの断片の王の座に戻ると共に、イデアロゴスに近付いた姿で再び『アルカトラズ』と共に地球衛星軌道上に姿を現した。
彼はまずイデアロゴスからもたらされた膨大なエネルギーと技術を用い、『この場にいる可能性のあるジェネラル級ワイズガイ』を、衛星軌道上に呼び寄せる。
ジェネラル級達は激しく混乱していたが、「落ち着け!」という断片の王『アル・カポネ』の命令に統制を取り戻す。
「おめぇら、良く聞け! 俺は宇宙でパワーアップした、更にイデアロゴスという援軍も連れて来た。
もはや、最終人類史のディアボロスなど、物の数でもねぇ!」
「あれは、アル・カポネ様! あの赤き姿から感じる力は、今までのアル・カポネ様の比では無い!」
「まさに赤き首領、
アル・カポネREDだ!」
「戦え、戦え、戦え! 最終人類史のディアボロスを殺せ!」
アル・カポネREDの檄に、ワイズガイが大きく沸き立つ。
同じく戦場に現れた大型UFO『フレンドシップ』では、アイザック・アシモフが艦長であるアメリア・イアハートにこう命令を下していた。
「すぐに地球衛星軌道から指定の距離まで離れてくれ。ディアボロスが来れないようにね。
これは
次の『断片の王』たる僕の命令だよ」
空想科学コーサノストラの共同統治者たるアイザック・アシモフは、アル・カポネREDが死亡すれば、即座に断片の王を継承できる。
《戴冠の戦》が完遂されなければ、この時代のディアボロスがイデアロゴスに真っ向から勝利を得ることは不可能だ。
アイザック・アシモフは盟友アル・カポネとの打ち合わせ通り、冷静に最終人類史を滅ぼすための行動を開始する。
さらにアル・カポネREDは、6つの酒瓶を取り出していた。
そこには500年間に渡り錬成された、かつて滅んだディヴィジョンの『因子』と術式、イデアロゴスから与えられた力が詰まっている。
「ほとんどの『因子』を揃えられなくて悪いな、絶滅人類史の同輩達よ。
俺は、結局イデアロゴスに降伏する流れになっちまったが……。
絶対に諦めなかったお前達の事は、本当に格好良いって思ってたんだよ。
だからこそ、絶滅人類史の嘆きと抵抗が無駄だったとは言わせねぇ。
対話で滅びを回避し、挙句に未来でイデアロゴスを完全に滅ぼすだぁ?
誰がなんと言おうが認めるか!
ディアボロスの力じゃ、イデアロゴスには勝てねぇ!
人類史を犠牲にしようが、『刻逆』を、徹頭徹尾の復讐を選んだ俺達は正しかった!
そいつを、最終人類史のディアボロスに叩き込んでやれ!
頼むぜ、同輩達よ!
断片の王改竄術式『王の再臨』!!」
もはや『狂気』とも言えるまでに凝り固まった最終人類史への憎悪と共に、アル・カポネREDは『因子』の詰まった酒瓶を投じる。
イギリス、フランス、ドイツ、ロシア、南米、そして太平洋。
流星の如く地球へ向かった酒瓶から『因子』が広がり、6つのディヴィジョンを支配した断片の王が、配下と共に次々と再臨していく……。
だが、全てのクロノヴェーダが敵となった訳では無い。
最終人類史の日本地域で、宇宙の決戦に参加するべく船で移動中だった明智光秀ら、天魔武者の一群から、新宿島のディアボロスに一報が入る。
「先ほど、我らも、未来の情報を垣間見ました。
我ら天魔武者が、最終人類史のディアボロスと宇宙を駆け、多くの星を救い、諸悪の根源たるイデアロゴスを追い詰める未来を。我らが『圧政』の感情を糧とする種として創造されたのは、あるいは宇宙が圧政の感情に満ちていると、創造主が理解していたのかもしれない……というのは良く考え過ぎでしょうが。
弱兵なれど、ディアボロス連合の将として、命を賭して、再臨した断片の王に戦いを挑ませていただきましょう。
あなた方ならば、あの未来を現実のものに、あるいはさらに良きものと出来るでしょう。
その未来を守るため、我ら天魔武者、この戦で全てが死に尽くしたとしても、後悔はございません!」
明智光秀の言葉の向こうから、天魔武者達の鬨の声が沸き上がる。
500年の未来を共に戦った絆が、そこには生じていたのだ。
●【西暦2026年:地球】最期の『歴史の奪還戦(ディアボロス・ウォー)』
ディアボロスは、ただちに臨戦態勢を整える。
イデアロゴスとの『話し合い』は、500年の猶予を地球に与えたはずだった。だが、それは500年後に行使された『刻逆』により、無かったことになろうとしている。
オリジン・イデアロゴス率いる軍勢の襲来。
アル・カポネを筆頭とするワイズガイの宇宙戦力。
そして、再臨した断片の王による地上への襲撃。
もとより、最後の決戦に挑む覚悟は出来ていた。
『刻逆』の中で勝利すれば、未来での勝利は確定する。
『未来の宇宙は、イデアロゴスの脅威から完全に解放』されることとなるだろう。
しかし、ここで敗北すれば、未来のディアボロス達も、滅びる事になるかもしれない。
だが重大な局面に、ディアボロス達の戦意は揺るがない。
「負けられない戦いなど、当然の事だ!
再臨した断片の王を滅ぼし、宇宙のワイズガイを駆逐し、イデアロゴスの軍勢も撃ち払い、全てに決着をつけてみせる!」
ディアボロスは意気軒高に、前哨戦であるファーストアタックに挑む。
この戦いで、いかに敵戦力を減らせるか。そして、アル・カポネREDを討ち取る事ができるかが、戦いの帰趨に大きな影響を与える事だろう。