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『薬』と書かれた小さな看板が木陰に隠れている。
風情を感じる木造の三階建て。
耐震強度は強そうではないが、吹いて倒れそうな程でもない。
ガラガラ引き戸を開ければ ちりん、ちりん、 と鈴が鳴る。
店内は土足厳禁。
青いベルベット生地がまるで深海のように床に敷かれている。
手触りはふわふわしっとり。ぜひ素足でどうぞ。
四方の壁に備え付けられた棚には漢方の素材が縦横無尽に並べられている。
奥の方からは煎じる音、独特の匂いが漂ってくるだろう。
苦手な人は、少し、申し訳ないが我慢してほしい。
「客か。それとも茶でも飲みにいらしたかね」
黒い獣の耳が揺れる。
ふさりと黒い尾も揺れる。
「どちらでも良いさね。まあゆるりと座りんしゃい」
『架空の薬屋』とは、どこにでもありどこにもない
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