【RP】Radio receiving set.
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
黄昏も仄暗む頃、店内には客がひとり。
貧乏時期に仕方なく手放すことになったという親の形見を取り戻し、ありがとうありがとうと泣き崩れる男から、縋り付くように握り締められていた手をそっと抜き取った。
「ほらほら、取り引きも終わったんだから帰った帰った」
引き換えに受け取った古書を棚に置いて、男を店の外に見送るために外に……出た、途端。
「あれ」
異形のヘッドフォンをした少年と、遭遇した。
😈 ↝
お客サマ:十埼・竜
0
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
(胸に形見を抱え、何度となく頭を下げては酷く名残惜しげに去って行く男をひらひらりと軽く片手を振るだけで形ばかりで見送って。興味は、もうとっくに少年の方へ向いていた。悪魔の青年は、少年と向き合う)
久しぶりだねぇ、竜。
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
(中に入るかい? と軽い口調で男は扉を開けて、少年を手招いた)
……お茶、は、……うーん、その辺の自販機で買えばあるけれど。(お茶くらい出すよ、とは言えないこの悪魔。料理どころか、お茶を淹れることすら微妙な所である)
(無効票)
十埼・竜 2022年1月13日
(大きな鞄を肩に下げ、看板を探すためにきょろきょろ視線を上向けていた、異形のヘッドホンで耳を塞いだ白い少年は)
あ、すみません……
(ひどく感動した様子で出てきた男の人に道を譲り、)
……あ。
(その向こうに、探していた相手の顔を見つけた。)
十埼・竜 2022年1月13日
ああ、ここで良かったんだ……“失せ物古物商”。(ほ、と表情を緩めて)お久しぶりです、レンさん。(柔らかなこどもの声で、名前を呼ぶ。)
いえいえ、お気遣いなく。(背筋を伸ばして、大人ぶった返事。招かれるままに戸口を潜り……店内の様子に、わぁ、と小さく感嘆の声を漏らして視線を彷徨わせる)
(無効票)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
地下は乾燥気味だからなぁ、水分は取った方が良いよ。(だからと言って、用意する訳でもないのだが。子供が好きかと聞かれれば別にとしか答えられないが、この子供のやわこい声は嫌いではない。言いながら店内に戻ると、控えめの光量の下で並ぶ棚が異質なまでに存在を主張した)
とりあえず、ラジオを持って来てくれたの? カウンターで良いかな、生憎店内に座れる場所が其処のみなんだ。(先に立って、棚の隙間の細い通路を抜ける。ひょいとカウンターを乗り越えて、己は内側へ。相手には、カウンターの前の丸椅子を示した)
(無効票)
十埼・竜 2022年1月13日
(次第に目が慣れると、次第にその輪郭がはっきりと意味を持ちだすみたいだった。覆い被さってくるみたいに威圧的な棚は古めかしい図書館を思わせたけれど、そこに収められているのは古今東西ばらばらの物品たちだ)
(彼の背中から離れすぎないようについていってしまったのは、たったこれだけの距離でも迷ってしまいそうな気がしたから、かも知れない)
十埼・竜 2022年1月13日
うん、約束通り。(勧められた丸椅子に掛ける前に、肩にかけた鞄を探る。二人の間のカウンターの上に、傷つかないようにしっかり包まれた風呂敷包みを乗せて、ほどいた。)
(現れたのは、渡した時と何ら変わりない姿のラジオだ。きれいに汚れや埃は掃ってあったけれど。)
ラジオ、直してきましたよ。……電源、入れてみる?
(吊り下げられた灯りの下で、群青色の瞳がどこか誇らしげに輝いた)
(無効票)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
(カウンターの内側に腰を下ろした男の姿は、其処が当たり前に丸きりの定位置であるようにも、厳しく古びた其処から浮いているようにも見えることだろう。しんと静かな店内で、男は少年が取り出したラジオに手を伸ばした。自分のものではないけれど、自分の内側に眠る魂が大切にしていたであろうもの)
そうだねぇ、折角だからちゃんと音を聴きたいし。(何処か誇らしげなその眼差しに、ストロベリーレッドが笑う。そうして、男の骨張った長い指がラジオを操作する)(さぁ、お前の生命は戻って来ているかな)
(無効票)
十埼・竜 2022年1月13日
(じり、ざざ、ざぁ、)
(――――合わせられた周波数そのままに、ピアノのメロディが流れ出す。“トロイメライ”。高音はのびやかに、低音は丸く膨らむような。)
(耳に優しく沁みるその音は、恐らく、往年の声のまま。)
十埼・竜 2022年1月13日
(……もちろん作業中に何度もテストしたから、ぼくにとっては、もう初めて聞いたものじゃない。けれど、この場で改めて聴くと)
これ。……ここにあったんだな、って、感じがしますね。
(ひそり、ラジオの音を邪魔しない程度に抑えた声で、呟く。)
(無効票)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
(──嗚呼。良い音、だ)(瞳を細めて、ゆぅるりと笑う。ぎしり、古びた椅子の背凭れに完全に背中を預けて、一度瞳を閉じる。静かなだけだった店内に、音は柔らかく、何処か暖かみを帯びて流れて行く。なるほど、“彼”はこうして、この空間でラジオを聴いていた訳か。多分、このラジオは、“彼”が先代から譲り受けた物であるはずで)
……そう、だねぇ。此処に在るべきものだ。(穏やかな声を返す。今まで別に興味なんてなかったけれど。元の持ち主の大切なものなら、と思っただけだったのだけれど)(これは、良いものだ)
(無効票)
十埼・竜 2022年1月13日
(くつろいでラジオに聞き入ってくれてる姿に頬を綻ばせて。……その声に、心からの満足が乗っているのを、ぼくの耳はしっかり聞き取っていた。)
気に入ってもらえたなら、なによりですよ。また具合が悪くなったら、教えてくれたらまた直してあげられるしさ。
……ここにあるのは、(店内を、ぐるっと眺めまわして)こうやって、あるべきところに収まるのを、待ってるものたちなんだね。
十埼・竜 2022年1月13日
(は、と、短く息を吐いた。少し、背筋を伸ばす)……ぼくも、少し、探したいものがあるんですけど。
(無効票)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
その時はまた頼むよ。おれはこの手のことは詳しくないから。(指先でそっと、まるで生き物でも撫でてやるかのような手付きで戻って来たラジオを撫でる。魂が違っても、身体は何となく、このラジオに触れる感覚を覚えているような気がする。この手のこと、も何も、この世のことで自分が詳しいことなんてほとんどない。何せ自分に出来るのは、朽ちるべきものを塵に還すことと、迷子を帰るべき場所に帰してやることくらいなのだから)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
そうだよぉ。お前曰く、迷子の待機所。みんな、何らかの理由で何処かで取り零されて、お迎えを待ってる。(ずらりと並び立つ棚、棚、棚、棚。それらが増えて行けば行くほど、この店は静かに、静かに、広さを増して行く。待ち続ける彼らが、何時か何処かで、誰かの手元に戻れるように。決して取り残されぬように。それは、この店を始めた誰かの願いに他ならない)
話を聞こうか、竜。
お前の声で語ると良い。求めるものが何か分からなくとも、刻逆で消えた誰かの何かであっても、お前のその声で、言葉を尽くして語ると良い。(人魚姫に声を差し出させた海の魔女の如く、御伽噺を語るが如く、男は軽く脚を組んで笑った)(あるのなら、失せ物はお前の語る想いに応えるだろうよ)(あの日、自分はそう言った。ぎらつくように奇妙なまでの熱を持って飢えた群青の眼差しを見た日から、きっと、お前は此処に願いと共に来ると思っていた)
(無効票)
十埼・竜 2022年1月13日
…………。
(迷子たちを集めた託児所、なんて、確かにぼくが言ったんだ。実際目の当たりにしたここは、それよりもずっと……水底の淀みや吹き溜まり、そんな重みのある静けさに満ちていたけれど。)
(咳払い。……確かに、さっき彼が言ったみたいに、ここは少し乾いているようだった。)
ぼくが、探してるのは……ぼくの父親の持ってたもので。刻逆で、ぼくの実家も一緒に消えてしまったものだから。
・・・・・
それらしい建物は、いつの間にかこのモールに流れ着いて、組み込まれてるんだけどさ。
(ぽつ、ぽつ、声変わり前の子供の声で、幾分低めに語りだして――――)
(……いや、)
十埼・竜 2022年1月13日
(違うな。)
…………探してるのは父さん。父さん、自身だ。(ぼくの欲しいものは。ぼくの、欲望は。)
ぼくの、たったひとりの、家族。……放送局を立ち上げて、ずっと一人で守り続けて、ラジオのことなら何でも知ってて、その背中がかっこよくて、毎日、毎日、みんなの声を拾って、束ねて、がんばってて、でもぼくにはやさしくて、なんでも教えてくれて、
(幼子の、抑揚で)
ぼくが病気になったときも、怒んなかった。
ぼくがもうお手伝いできないのに。
…………遠くから、ずっと、ずっと、声を、届けてくれて。がんばれって。
(声を、ぼくはまだ、覚えていられているだろうか。風化していないだろうか――――記憶は、まず、その音色から失われる。)
十埼・竜 2022年1月13日
……ぼくは。もし、もう一度立ち上がれるなら。真っ先に父さんに、ありがとうって言いたかったんだ。
なんでだよ。………………なんで父さんがいないんだよ。
(喘ぐように、吐き捨てる)
(その怒りが、ぼくを、復讐者たらしめている。)
……すみません(顔を拭って)ないものねだりだって、わかってるんですけど。
ぼくが欲しいのは、父さんで。……探してるのは、ありとあらゆる手掛かりと手段です。
(無効票)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
(その話し始めを、何度となく聞き飽きたような何処か退屈な音だと思ったのは、あの飢え切った眼差しが語るには温度が足りないと思ったからだ)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
(目の前で、火が燃えている。ぐつぐつと、ぐらぐらと、ふつふつと。今にも爆発しそうに青く青く揺らめきながら、端に行くに連れて真白く透き通るそれはきっと、触れれば溶かされてしまいそうな高温だ。揺らめく業火が、音を奏でる。魂の悲鳴のような声で、語る)(嗚呼、これだ。まろい声で話していたあの群青の裏でじりじりと燃えて、焦がして、飢えていたのは)(これだ)(肌を焼くような灼熱。子供の持つ色彩には不釣り合いなほどの、灼き焦がす熱量。スピカのような、青白いそれ)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
……良いな。その火、気に入った。(悪魔の唇が、吊り上がるように弧を描いたと同時。砂礫のような金色の光がざぁぁあっと渦を巻いて、店の中を巡って行く)(それに引き摺り出されるように、相手の語った言葉が固形化するようにするすると宙に綴られて行く。金色を、青く、白く、熱量が浸して侵す。触れ合う金属のような、オルゴールのような、不可思議な音が微かに響く。やがて、その言葉は、そのまま一度、融解する。融けたそれは、金属を型に落とし込むように全く別の魔術言語へと変化する。魔術言語はくるくると回って、煌めき、青白く冷たい金属のような色を宿した。カウンターに、金色の砂塵と青白く瞬く星のような煌めきが魔法陣を描く)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
(──どんッ!!)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
(一瞬、まるで叩き付けるような強さで何処かの棚が揺れた。何かが、この青白い星に応えた。何かなんて、自分は知らない。悪魔は笑う。うっそりと、まるで蕩けるようなストロベリーレッドで)
竜。魔法陣の中に、手を。(もう一度言おう。何が応えたか、なんて、自分は知らない。ただ、その手に帰るべきものが、此処にあることだけが確かだ)
(無効票)
十埼・竜 2022年1月13日
(その火、気に入った――――その声に顔を上げて、)
(目にしたものは金の砂の旋風、その向こうで笑う浅黒い肌の悪魔だった)
え、
(金の砂が真冬の星みたいに青白く燃えて、ヘッドホンがとても不思議な音を拾う。それは自分の声みたいにも、流れ星が立てる軋みににた電波にも似て――――ああ、流れ星ってのは、願いを叶えるんだもんな。)
十埼・竜 2022年1月13日
(星が落ちた音と地響きは、予想外に背後で上がった)!?(思わず振り向いたぼくに、きみの聲が。)
……手、を?
(向き直り、視線を、再びカウンターの上――――魔法、としか呼びようのない、金の光と青白く浮かび上がる文字へ。耳の奥に、ずっと不思議な音が、“波”が、きらきらと光るように響いている)
(――――呼んでいる、と、思うのは、錯覚だろうか)
(透ける紅色に、促されるまま。誘われるままに。)
十埼・竜 2022年1月13日
(掌を、上に向けて。何かをねだるように)
(金の光はその色白い肌に触れるや否や、ぶわ、広がるように青白く染まる。魔術文字と光がくるくると溶け合い、広げた掌の上で小さな旋風を作って集まり、紡がれ、)
(――――じゃり。……ころん。)
(鈍い銀色の光、金属の重みと擦れる音、古びて錆びた鈴の音が混じる。)
(それは、キーホルダーに束ねられた鍵の束だった。車の鍵。家の鍵。放送室の鍵……他にも。いくつかはぼくも持っていて、それは入院前に置いてきたからなくしてしまった。)
(キーホルダーの飾りには、擦り切れた、首長竜のペイント。)
十埼・竜 2022年1月13日
(震える指で、その飾りを、ひっくり返す)
(“Arata”と、ひっかき傷みたいに彫り込まれていた。)
……………とうさん。(その傷を、撫でる)とうさん、(ぎゅ、っと、両の掌で包み込んで)とうさん……!!(顔の前で、握りしめる、姿は)
(祈るようにでも、見えるんだろう。)
(無効票)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
(ふ、と吐息を零す。何時も思うけれど、念の如く強い想いが込められた品物は自己主張が強くて、少し疲れる。きらきら、青く、白く、煌めく火の粉のような光がまだ室内には残っていて、それが目に楽しかった)
……辿り着きたい場所に、無事に帰れたの。そう。お迎えが来て良かったじゃない。(おめでとう、と男はそれに向けて笑った。嗚呼、楽しかった。良いなあ、あの火が欲しいなあ、なんて、ないもの強請り。目に眩しくて、灼かれて融かされてしまうようで、良い火だ。機嫌良さそうに、背の悪魔の翼が揺れる。生憎とこの店は遺失物専門だから、父親そのものは、帰してやれやしないけれど)
世界が広がったら、流れ着く迷子も増えるかもね。
(無効票)
十埼・竜 2022年1月13日
(手の中にあるのは、欠落だ)
(これはまだあるべき場所まで辿り着いていない)
(だから)
(ぼくが、ぼくが、必ずそこまで連れて行くから────)
【────何処か奥底で、楽しげな笑い声を、聴いた気がした。】
十埼・竜 2022年1月13日
(詰めていた息を、長く、吐く。無理矢理に落ち着ける。2、3回深呼吸を繰り返して、涙に濡れた目元を拭う)
…………ありがとう、ございました。………これを、預かっていてくれて。
(心底楽しそうな"波"を湛えて微笑む店主に、深く頭を下げる)
お返しは、どうしたら、いいんでしょう。
(無効票)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
(男は相変わらず、何処か楽しそうに相手を眺めていた。其処に悪感情も揶揄うような色もひとつとてなく、ただ、細められたストロベリーレッドは純粋に、無垢に楽しげだ。この店から、ひとつの迷子が帰って行く。それは何時だって楽しいことだと、記憶を失い存在自体もあやふやのまま他に手段がないからと人間の真似事をして生きている迷子は思う)(良かったね、その業火はきっと、燃え尽きる前にお前の本来の持ち主に辿り着くよ)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
そうだねぇ、これはおれの裁量と言うより、この店の天秤次第なのだけれど。おれ、ちょっとアレ欲しいしなあ……。(言いながら、翳した手の下。先程の魔法陣と同じ、金色を浸し侵した青白い金属がぱきぱきと音を立て、小さな美しいカンテラを形成して行く。それはまるで、卵型の鳥籠のようにも見えた)
……ね、竜。おれにその火をちょうだい? お前の胸に宿るその火を、ひと欠片。くれると、言って? (成人した男が問うには何処かあどけなく、無邪気に。ことんと小首を傾げたそれは、相手の胸を、とん、と人差し指で指し示した)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
(その言葉に相手がもしも頷いたなら。青白く瞬くスピカの如く美しい火が、カンテラの中に宿るだろう)
(無効票)
十埼・竜 2022年1月13日
店の、天秤……(そうだ、彼は前もそう言って、まるで羽と心臓を秤にかけるみたいだな、って思ったっけ……)
(ふと、天井を仰いだ。どこかに、大きな天秤が傾いていやしないかと。……この鍵は、きっと、ぼくにとっては途方もなく重いのだから)
……アレ? って……?
(ぱき、ぱき、霜が伸びては砕けるみたいな音に再び視線を降ろす。育ちつつあるのは、不思議な形の灯。……火を、ここに?)
……あげます、ぼくにあげられるものなら……
(真似て、自分の胸に手を。)
(まるで無邪気な願いに、答える。)
十埼・竜 2022年1月13日
(ぱ、)
(卵型の鳥籠の内が青白く燃え上がる。眩く鋭い光条を伴って揺蕩い、それこそ、星を閉じ込めたみたいに見えた。)
(無効票)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月13日
(店の天秤は、多分釣り合わないと怒るかもしれないけれど。たまには店主の裁量でも良いと、先代の日記に書いてあったからきっと大丈夫。だって、どうしても、どうしてもこの火が欲しかった)(相手の応えと同時にカンテラへ宿ったそれは、紛れもなく可視化されたあの火だった。薄暗い店内を、煌々と照らす青白い星。苛烈に、鮮烈に、どうしようもないくらいの憤怒と嘆きを燃料に、諦めて堪るかと叫び続ける魂の悲鳴)
…………、……きれい。(ぽつり、吐息のように呟いて。そっと取り上げたカンテラを、大切そうに胸に抱えた)(己には存在しない、煮え滾るような、全てを灼き焦がすような、熱量)
(無効票)
十埼・竜 2022年1月13日
(カンテラを抱える姿に、危ないですよ、と口にしかけたけれど。ぼくにはこの魔法の熱量がわからなかったし――――なにより、店主は、それが唯一の熱源であるかのように、うっとりとそれを抱きしめているようだったから)
……レンさんが欲しいものだったんですか、それ。
(さっきすれ違った男の人も。ぼくも。もしかしたら、こんな顔をしていたのかも知れないな、と、なんとなく思った。)
(無効票)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月14日
(カンテラを組んだ膝の上に置いて、宝物を抱えるように腕で囲った姿は、何処か幼く見えるかもしれなかった。あったかい。きれい。これは相手の火だから、どうしたって本当の意味で自分のものにはなってくれやしないのだけれど。その代わり、相手が心折れたり死んだりするまでは、消えない火だ。きらきら、きらきら、薄暗い店内を照らすそれは、目に楽しい)
うん、欲しかったの。おれには無いから。(だって、この店に来る客は。大なり小なり、これに近いものを持っているのに。自分には無いから)(人のものを欲しがる幼子のような言い分)(人間の熱量って、きれいで、熱くて、面白いなあ)
(無効票)
十埼・竜 2022年1月14日
(おれには、無い。……自分の胸に手を当てた。今は彼の膝の上できらめく灯火からは、先刻の金の砂や青白い光が伴っていた、星のような“波”が伝わってくる)
(ぼくの声にも、少し似た――――)
十埼・竜 2022年1月14日
……じゃあ、レンさんのものですね、それ。大事にしてください。
(してくれるのだろうけれど。なんとなく確信めいて、ふわりと微笑んだ)
ぼくも、(じゃらん。鍵束を、大事に手で包んで)(ポケットに仕舞い込んだ)……二度と手放しませんから。
(無効票)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月14日
うん。(大事にするよ。男の機嫌の良さを示すように、その魔力が火の煌めきに混ざって、きらきらと金色の砂塵のように、星屑のように揺れていた。誰が何と言ったって、天秤が足りないと怒ろうと、自分はこれがどうしても欲しかったからこれで良い。これが良い)
そうだね、お前も。
……気分が良いから、教えてあげる。おれが取り引きを曲げても欲しいと思ったのは、この火が初めて。お前の心は、この悪魔の眼に適う。そのまま走りなよ。(ばたん、と店の扉が開いた。お帰りは彼方、とでも言うように。悪魔は、それはそれは楽しそうに笑っていた)
(。)
十埼・竜 2022年1月14日
……取引を、曲げた?(きょとん、目を見開いた。……魔術の心得の全くないこどもには、魔術に於ける“取引”の重みがわからない。ただ、何となく直感的に、それって結構――――)
十埼・竜 2022年1月14日
(――――扉の開く音。)
(その先は、形にしなかった。)
ありがとう、レンさん。
(無邪気な悪魔の笑顔に、もう一度、柔らかな――――熱を帯びた声で礼を述べて、)
ラジオ以外でもさ、困ったことがあったらいつでも声かけてよ。
(軽くなった鞄を背負い、カウンターに背を向けて。)
(立ち去り際に振り向いて、大きく、大きく、手を振ったのだ。)
(。)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月14日
(大抵のものは、どうでも良い。別に、好きも嫌いもなければ、ちょっと眺めてぽいと手を離すくらいのものだ。自分のことだって、死んでないからまあ良いか、と思って此処に居る。でも、この店に来る客を眺めていて、相手の火を見て、眩しさに灼かれてしまった。欲しかった。だから、取り引きを曲げた)
その時は頼るよ。またね、竜。(大きく振られるその手に笑って軽く手を振って、直ったラジオから流れる暖かみのある音楽と共にその背を見送った)(嗚呼、良い取り引きだった!)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月14日
(ばたん)(扉が閉まる)(古物商の本日の業務は終了しました)
フェアリーレン・アノニューム 2022年1月14日
【〆】