11.11
ゼキ・レヴニ 11月12日22時
https://tw7.t-walker.jp/scenario/show?scenario_id=10314
「明日」の手前で
2
ゼキ・レヴニ 11月12日22時
「おやすみ、オード」
「うん。……兄貴もちゃんと、寝て」
珍しく家に泊まっていくらしいオードが、犬のネイトと共に寝室に入っていくのを見届けて、ソファに深く沈みこむ。
未だ神経が興奮しているのか眠る気にはなれず、ぼうっと天井を眺めるうちに様々な思いが泡のように浮かんでは消え、その間にも時計の針は無為に進んでいく。
今日は色々とあり過ぎた。熱暴走しかけのちっぽけな自分の脳みそも、冷たい夜気にあたれば少しはマシになるか。そう考え、窓を開けてベランダに出る。
ゼキ・レヴニ 11月12日22時
ぽつぽつと不眠患者達の灯りを残して、街は概ね眠っている。遠くを走る車のエンジン音だけが、冷えた風に乗って微かに聞こえてきた。
一服しようと煙草の箱を取り出したその時、ポケットから何かが滑り落ちた。
ひらひらと落ちる、小さな紙。摘み上げてみれば、少しだけ厚みがあるのがわかる。
何気なくそれを裏返した時、息が止まった。
膝が崩折れ、視界が滲む。堪えきれず、喉の奥から嗚咽が漏れた。
ゼキ・レヴニ 11月12日22時
それは写真だった。
おそらく、ディヴィジョンで「重なった」時に、過去の自分の持ち物が消えずに残ったものだろう。
――いや。託された、のか。
眼を乱暴に袖で拭って、窓から漏れる光に写真をかざす。
モノクロの景色の中で、“家族”が笑っている。
写真の枠になんとか収まろうと、12人が肩を寄せ合って並び、
土に汚れた顔に、夢見る瞳を輝かせて。
ゼキ・レヴニ 11月12日22時
たとえ正しい歴史に「スラグ」が存在しなかったとしても。
たとえ足跡がこの最終人類史に続いていなかったとしても。
彼らは生きていた。
確かに、生きていたのだ。
ゼキ・レヴニ 11月12日22時
11月11日。この日は奇しくも、歴史上の「大戦」が終結した日でもあった。
106年の時を経て、名も無き11人の戦争もまた終わった。
――残るふたりの背を押して。