毎週日曜日は怪文書の日②
墨乃・しるし 2021年9月12日
はい、目を開けていただいて。ええ、そうです。我ですよ。
仕上がりをご確認いただきながら、お話を聞いていただきましょうか。
いえ、行政に対する愚痴等ではなくて、そもそも機能していないものに愚痴は言えないではないですか。
貴様はちゃんと誰かから愚痴を言ってもらえるような生産的な行動をしていますか? 新宿島がこういう状況だからこそ、我もこうやって散髪という日常の営みを絶やさぬよう、守り続けていきたいと思っていますよ。ええ、それがつまらない愚痴を頂く結果を招こうとも、ね。
まあ、この前まーた理容師免許の話をされてですね。そもそも管轄当局が機能していないのに免許もなにもないんですけれど、まあ来る客来る客、This is a pen.しか英語を学ばなかったのかというぐらいに免許の有無について問いただしてくるものですから。もう適当に作っちゃおうと思ったんですね。資格証明書的なやつを。なんか巷だと復讐者(ディアボロス)であることを証明する奴があるらしいじゃないですか。それを流用すればいいやと思って写真を撮りに行ったんです。
そうしたらあろうことか、仮面(溶接マスク)を外せと言ってきたんですよ。
意味わからなくないですか? 写真撮るときって馬鹿みたいにピカピカ光るじゃないですか。あんなの我の眼球を三周半は焼いて余るぐらいの光量ですよ。そういう光から瞳を守るためにこの仮面があるというのに、それを外せなんて本末転倒じゃないですか。だから我としては断固反対だと伝えたんですけれども、相手が言うには「それ(溶接マスク)を付けた状態だと本人確認の証拠として使えない」って言うんですね。馬鹿も休み休みに言いなさいと。我以外にこんなお洒落な仮面をつける奴がいたら出てこいって言う話なんですけれども、どうやら実在するみたいなんですよね。ゲームと言えばみんなプレステ、ロボットを見ればみんなトランスフォーマー、仮面を見ればみんな同じマスクとして同一視してしまう輩が。
だから言ってやったんですね。そこまで言うなら我はこれから全ての客を丸刈りにしてやると。マスクを見分けられない奴に丸刈り頭の見分けがつくはずないと。そうしたら向こうも向こうで引かずに「だったらやってみろ」って言うもんですから我も頭にきて帰宅し今に至るというわけです。
ええ、見事な仕上がりでしょう?
全部あの写真屋のせいですから、お代はタダでいいですよ。
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