理容タソガレ

毎週日曜日は怪文書の日①

墨乃・しるし 2021年9月5日
はい、お客さまー。我ですよ。墨乃・しるしです。
洗髪の前に少しでいいので我のお話を聞いてもらえますか。
いや、当店の客層に問題があるという話ではなくてですね、だったら今ここに居る貴様にも問題があるはずではないですか。少しはお客様としての自覚を持っていただけます?
理容店に備え付けのサインポールってあるじゃないですか。赤と青と白のクルクルしているあれですね。あれってそもそもどういう意味かご存知ですかってこの前来店された男性に聞いてみたんですよ。世間話って言うやつですね、世間を知らない我と客との間で成立するかどうかも怪しいですけど。
そうしたらその男性は「それは大正義おふらんすカラーざます。全ての起源はおふらんすざます」とかぬかしやがるんですね。何が大正義おふらんすだよと。今や断頭革命グランダルメで一括りにされるようなところが大正義を名乗るのもおこがましくないですか? 指摘したら顔真っ赤にして「シェー!」とか言ってましたけど散髪中に急に動くもんだから当然我のせいではなく失敗しましたよね。結果として丸刈りです、丸刈り。
ちなみに正解は、「血管」と包帯なんですよ。赤は動脈、青は静脈。そして白は包帯。というのはですね、髪も体の一部ではないですか。体の一部を切除するということは手術にほかならず、もともと、理容店というのは医者の延長にある職業であって、その名残がサインポールに残っているというわけなんです。お勉強になりましたね、貴様も。

え? それは俗説ですって? 動脈静脈の概念が発見されたのは17世紀で、医者と理容店が兼ねていたのはそれより前のことだからガセに違いないと昨日『テレビ』で見たって?

ええガセですよ。ですが、マヌケ(アンオフィ)は見つかったようですね!! 見廻組!!
「「「応ッ!!」」」
 




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