【蹂躙戦記イスカンダル奪還戦】静かなる者達の戦場(作者 陸野蛍)
#蹂躙戦記イスカンダル
#【蹂躙戦記イスカンダル奪還戦】静観の預言者
#蹂躙戦記イスカンダル奪還戦
#㉕預言者ザラスシュトラ
#預言者ザラスシュトラ
#オリバーからの案内
⊕
●見届けようとする亜人
「『断片の王・イスカンダル』の命運をかけた戦いが始まろとしている」
『蹂躙戦記イスカンダル奪還戦』の始まりを感じ、ジェネラル級亜人『預言者ザラスシュトラ』が静かに言葉を落とす。
「イスカンダルが、この大地の防衛に成功するのか。或いは、ディアボロスが大地の強奪を成し遂げるのか、或いは……」
イスカンダルの勝利、ディアボロスの勝利、そして……ザラスシュトラに視えるのは、他の形での戦いの終わり。
「私はここで、戦いの行く末を見届けさせてもらおう」
『蹂躙戦記イスカンダル』がこの状況になってもなお、ザラスシュトラは此度の戦いの静観を決めていた。
●先に視える未来を輝かせる為に
「『蹂躙戦記イスカンダル奪還戦』のファーストアタックの案内を始めるよ。いいかな?」
十・オリバー(守護の十字架・g05933)は、ディアボロス達を見回すと『蹂躙戦記イスカンダル奪還戦』までの経緯の説明から始める。
「『イラン高原の決戦』及び、『断頭革命グランダルメ奪還戦』で、多くの『ジェネラル級を』失った、『断片の王・イスカンダル』が、起死回生の為に、『神威断罪ギガントマキア』の力を使用し、ディアボロスとの決戦に挑もうとしているのは、皆も知ってるよね?」
『断層碑文』に刻まれた文字から、殆どのディアボロスが、『蹂躙戦記イスカンダル奪還戦』開戦の事実を既に把握している為、オリバーの言葉に大きく頷くディアボロスも多い。
「中でも、嘗て損したというディアヴィジョン『神威断罪ギガントマキア』の『断片の王・雷神ゼウス』が使用としたというクロノ・オブジェクト『ゼウスの雷』は、『新宿島』を破壊するだけの非常に高い破壊力を持つことから、侮る事は出来ないね」
イスカンダルが勝利したことで『神威断罪ギガントマキア』が有していた、多くのクロノ・オブジェクトを『オリンポスの遺物』として使用していたことも、多くのディアボロスが知るところだ。
「『攻略旅団』の方針が功を成したことから、『蹂躙戦記イスカンダル奪還戦』では、『融合世界戦アルタン・ウルク』からの侵攻は無く、『蛇亀宇宙リグ・ヴェーダ』も、奪還戦に介入はするものの、現在の占領地から動く事は無いみたいだよ」
『蹂躙戦記イスカンダル』に於いて、多くの作戦を挫いてきたことが、今、形となって未来を掴む盤面を作っているのだ。
「この好機を活かし、『蹂躙戦記イスカンダル』から、歴史と大地の奪還を果たすとしよう」
笑顔の中にも強い決意を見せながら、オリバーが言う。
「その為のファーストアタックなんだけど、皆には現状この戦いを静観している、ジェネラル級亜人『預言者ザラスシュトラ』の支配地域に攻め込んでもらいたいんだ。ザラスシュトラは、現状、自分から動く様子はないけど、撃破することが出来れば、なんらかの特殊な状況になる……予言かも知れないけれど、ザラスシュトラが語る言葉は知っておいた方が良いからね。撃破をする為に、此の地にも確り打撃を与えたいんだ」
多くの謎が残され、イスカンダルに直接、力を貸す様子もない『預言者ザラスシュトラ』は、確かに不思議というより、不気味な存在としか言いようがない。
「ファーストアタックとして襲撃してもらいたいのは、ザラスシュトラ配下のトループス級亜人『暗殺教団員』だよ。深追いする必要はないけど、なるべく多くのトループス級を倒した後に撤退すれば戦況は何かしらの形で変わるかもしれない」
万が一、『重傷』を負うようなことになれば、『蹂躙戦記イスカンダル奪還戦』自体に、参戦することも難しくなる為、そう言った事態だけは避けてほしいと、オリバーは付け加える。
「『蹂躙戦記イスカンダル』は、現在は劣勢となっているけど、今回の『奪還戦』さえ乗り切れば『亜人』の繁殖力により、勢力を盛り返す危険性が常に残り続ける、厄介な敵だから、この『蹂躙戦記イスカンダル奪還戦』で確実に撃破していきたいね」
『蹂躙戦記イスカンダル』には、繁殖の力を増幅するクロノ・オブジェクト『ファロスの光』もある為、オリバーの言葉は過ぎた危惧ではないだろう。
「それと念の為、伝えておくんだけど、かなり可能性は低いと思うけど、何らかの切っ掛け、条件と言ってもいいかもね。『預言者ザラスシュトラ』が戦場に現れる可能性が、極々低い可能性であり得るみたいなんだ。その場合は、直ぐに撤退してほしい。戦闘タイプの『亜人』ではないとはいえ、相手はジェネラル級だからね。……約束だよ」
粗暴な『亜人』の中に居て、『預言者』を名乗る『ザラスシュトラ』と対話をしたいと考えるディアボロスが居ることも理解した上で、リスクの方が高いと、オリバーは判断していた。
「それじゃ、定刻だ。みんな、『蹂躙戦記イスカンダル奪還戦』に向けて頼んだよ。いってらっしゃい」
パラドクストレインの到着を告げ、オリバーは漸く普段通りのやわらかな笑顔を見せるのだった。
リプレイ
鴻・刃音
※アドリブ、連携可
イスカンダル奪還も近づいてきた、この好機を逃す手は無い。
今回の作戦は徹底的な殲滅。ならばやるべきことは単純。可能な限り数を減らし確実に撤退する事。
戦争前の肩慣らしには丁度いい、全てを剣の錆にしてあげましょう。
味方がいるなら足並みそろえて、居なければ切り込み隊長として敵軍の中心に飛び込む。
敵陣をかき乱し錯乱させ、後からくる味方が各個撃破しやすい様に、また多少力の差があっても見方が複数で囲めるよう混乱させることを主目的に入れる。
やることは至ってシンプルに、敵に斬りかかりひたすらに倒していく。
此方が使う新陰流は回避からの反撃に秀でている技。敵陣中央であろうとも難なく対応できるはずだ。
多少の被弾は無視、兎に角数を減らすことを大前提に。
撤退限界が来るまでその腕を振るい続け、味方が確実に撤退できるように殿を務めることも視野に。
使用武器は軍刀【二振り】。新陰流を軸に王道外道あらゆる作法で戦い抜く。
ディアナ・レーヴェ
軍勢の片翼、比較的障害物多めで退路も繋げエリアから食い破りに行くわ!
狭い[地形の利用]は、多対少の基本でしょう?
宙を蹴って不規則に襲い来る暗殺者は脅威だけど、でもエアライドには滞空時間の長さって弱点もある――つまり『物陰』に消える私に困惑したその隙は、着地まで無防備な所を集中攻撃し放題!(夜影旋舞の計)
遠くの敵は拳銃で、近くの敵はナイフで。
[戦闘知識]で急所は知ってて、…今日は妙に頭が冴えて、私はそれらを正確に貫いていく。
皆とは背を守り合い、また、
前後衛とか適宜交代し合って継戦能力を高めましょう。
そうして堂々目立って粘って戦い続けて――
私達の行動が[幸運]にもその『条件』掠めて『極々低い可能性』を手繰り寄せる事を、私は実は願ってる!!
会いたかったわ、預言者さん!
…ああ、勿論撤退はするわよ?
でも零れた言葉を耳にする、敵が戦場の何を観察してるのか観察し返す、攻撃手段を見る、一言くらい交わす、何かしらで情報は狙いたい。
あれからギガントマキアも調べてやっぱり思うの。
このディヴィジョンは何か。
変。
六宮・フェリクス
トリチャンかく語りき。一羽で高みの見物ってか?
実際お偉なところにいるわけだが…イスカンダルちゃんの「標的」に入ってんのは何だろうなァ
ま、今考えてもしゃーない!
速戦即決!他の復讐者の割り出したルートに乗っからせて頂きつつ周囲を『偵察』して撤退時に活かす!
っしゃ、容赦なく乗り込んでやらァ!
さァて【エアライド】一発、標的多く捕捉できるよーにちょい上から目線で失礼しまぁす!【命中アップ】で狙いすまーす!
光背顕現、聖杭生成――御使いたるは我と識れ!
蹂躙されるべきはどちらか、オレが教えてやる
反応速度にゃそれなり自信!急所狙いは分かりやすいつっーの!ざっくり行かれねぇよう『光耀』で弾く!
近接するってんなら――この雷、真正面から受ける自信が有んだな?アッハハ♡
予言がどーとかほざいてろ、オレは聞かねー!
他はどうか知らねぇが――いや
出会っちまったら。何か聞きてぇなら多少は付き合ってやんよ
あとは撤退ルート割り出し、首根っこ引っ掴んで逃げる!!全速力でな!!
…この先も、オレらの流儀をしーっかり教えてやる
待ってろ
ジズ・ユルドゥルム
預言者ザラスシュトラ…。奴は人の信仰の道において、重要な標となった人物の名を奪っている
早々に名を奪還したい所だが…。奴の死が特殊な事態を招く以上、一考せねばならんか
私も、可能ならば奴と再び相まみえて、少しでも情報を得たい
静観するにも関わらず部下を連れているということは
何らかの理由で部下が必要なのだろう
なら、目に余るほど部下を屠る勢いを見せれば、預言者を引っ張り出せないだろうか。
「火禽の趾」を起動。
遠目にも目立つ光炎を隠さず燃やし、巨大な猛禽の鉤爪を作り出す。
光炎の鉤爪で敵を斬り裂き、殴って燃え上がらせ、炎を敵陣に撒き、
広範囲に被害を及ぼしたい。
さらに【ガードアップ】で継戦能力を向上させ、可能な限り戦い続けよう。
敵の攻撃は地上で迎え撃つ。
鉤爪が纏う炎で投げナイフを防ぎ、飛んできた方向を斬り裂いて反撃に繋げよう。
預言者が現れた際は勿論、現れずとも深追いせず、頃合いを見て撤退する。
史実の預言者は「善の最高神」の意志を体現したという。
では、改竄世界の預言者は…
「何」の意志を体現しようとしている?
大和・恭弥
鍛錬が鈍っているかもしれないが、尽力出来るなら今度の戦い、一矢報いたい。敵を侮る気はないが、静観の構えならば少し強引に行こうか。
妖刀「藍雪花染」を抜刀し、呪詛の力を解放。いままでの戦いで藍雪が喰ってきた数多の魂の嘆きを糧に、横一閃に刀を振るって空間ごと虚無へ帰すように教団員を斬り伏せて葬る。
動きは仲間と密な連携を意識し、臨機応変に対応しつつ、こちらへ注意を惹くように殺気を放っておく。広範囲の結界を築くように空間ごと斬ることでより多くの敵を撃破できるよう立ち回ろう。
地に、空間に、すべてを味方につけ光学迷彩で戦場を駆ける。
未来のない虚無、というのをお前たちは知っているか。
刹那の絶望を、藍雪花染が凡て喰わせてもらう。
もしもザラスシュトラに遭うようなことがあれば、仲間と方針を示し合わせて良き頃合いに撤退したい。預言者の言うことには多少なりとも興味はある。いざとなれば晴彦と共に対処する、大戦に向けての重傷は回避するよう味方にも気を配ろう。
仲間は信頼している。あとは宜しくお願いするよ。
●奪還戦を前に静観せし者の地へ
「『蹂躙戦記イスカンダル』奪還も近付いて来た……この好機を逃す手は無い」
パラドクストレインを降り、軍刀【二振】を手にし、鴻・刃音(偽女子学生・g06022)が静かな覚悟を言葉に乗せる。
「今回の作戦は、徹底的な殲滅。ならば、やるべきことは至極単純。可能な限り数を減らし確実に撤退する事。……戦争前の肩慣らしには、丁度いい。全てを、剣の錆にしてあげましょう」
僅かにサーベルの刀身を太陽に当て、刃音は刃をギラリと光らせる。
「鍛錬が、少し鈍っているかもしれないが……今度の戦い、一矢報いたい。敵を侮る気はないが、静観の構えならば少しばかり、強引に行こうか」
最大の尽力をするつもりでこの地に来た、大和・恭弥(追憶のカースブレイド・g04509)も重くハッキリと言った。
「それにしてもだ」
普段と変わらぬ調子で、六宮・フェリクス(An die Freude・g01325)が、この戦場で最後に倒さねばならぬモノに対して自身の想いを口にする。
「トリチャンかく語りき。一羽で高みの見物ってか?」
ジェネラル級亜人『預言者ザラスシュトラ』は、今回の『蹂躙戦記イスカンダル奪還戦』に於いて、『静観』することを決めている様子で、他のジェネラル級亜人とは一線を画す存在となっている。
「実際、お偉なところにいる訳だが……イスカンダルちゃんの『標的』に入ってんのは何だろうなァ?」
フェリクスの言う通り、『蹂躙戦記イスカンダル奪還戦』で、断片の王『イスカンダル・ゼウス』が使用すると見られているクロノ・オブジェクト『ゼウスの雷』……その標的に、『亜人』が護る戦場の中で唯一、この戦場だけが”何故か”含まれているのだ。
イスカンダル・ゼウスが『ゼウスの雷』の制御に不慣れとは言え、唯々『味方の亜人』を減らすのは愚策でしかない。
「ま、今考えてもしゃーない!」
イスカンダル・ゼウスの意向も、ザラスシュトラが静観を決めている理由も分からないのだからと、フェリクスは割り切って言葉にする……これから、ザラスシュトラ警護の『亜人』達に『ファーストアタック』を仕掛けるのだ、多くを考えてもきっと答えは出ない。
「預言者ザラスシュトラ……。奴は、人の信仰の道に於いて、重要な標となった人物の名を奪っている」
この地の『亜人』の存在が頭の片隅で気になっている、ジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)も言葉を落とす。
「早々に、名を奪還したい所だが……。奴の死が、特殊な事態を招く以上……一考せねばならんか」
可能ならばザラスシュトラと相見えることが出来れば、少しでも情報を得ることが出来るだろうかと、ジズは考える。
「みんな思うことはあると思うけど、今は軍勢の片翼……比較的障害物が多くて、退路も繋げられるエリアから食い破りに行くわよ!」
『狭い戦場の利用は、多対少の基本でしょう?』と、ディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)が仲間達に言えば、皆頷く。
その時、明確な何かとは断言出来ないが、ディアナの中で――何かが花開くような感覚を得た。
ただ分かるのは、今回の戦いでは、きっといつもより力が振るえると言うこと……そして、小さな奇跡くらいなら起こせるような予感。
その予感を胸に、ディアナは歩を進めるのだった。
●真の蹂躙者は
「速戦即決! ディアナ嬢の割り出したルートに乗っからせてもらうぜッ! ッシャー!! 容赦なく乗り込んでやらァ!!」
視界に入ったトループス級亜人『暗殺教団員』の集団に対し、フェリクスは先手必勝とばかりに、【エアライド】を駆使し跳躍すると、1体でも多くパラドクスに巻き込める位置を取ると直ぐ様、背に巨大光輪を顕現させる。
「光背顕現、聖杭生成――御使いたるは我と識れ! ――『蹂躙』されるべきは、どちらか……オレが教えてやる!」
原罪をも灼き尽くす光から、数多の雷の杭で数多の暗殺教団員を貫き、そこから伸ばした薔薇の荊で暗殺教団員の全てを喰い破るフェリクス。
フェリクスの攻撃からのディアボロス達の連携は素早く、見事としか言えない速さでそれぞれが得物を振るった。
暗殺教団員が鎖を放ちディアボロス達を絡めようとも、それに屈しない強さがあったのだ。
発煙弾を投げ、煙幕を作り、身を隠そうとした暗殺教団員の喉元を『グサリ』と軍刀サーベルが貫いた。
「私の役目は、あなた達を中心から崩すことです……」
左手のサーベルを抜いた次の瞬間には、逆手に持った右手のサーベルを構え攻防一体の技で、暗殺教団員を真っ直ぐ両断する、刃音。
「古流にて活人剣を極めし剣技。転からは――逃れられません」
敵陣を掻き乱し、錯乱させ、仲間達が暗殺教団員を各個撃破し易い様に、そして……多少の力の差があろうと仲間達に攻撃を繋げることが出来れば充分な打撃を与えられる筈だと、刃音は二振の軍刀を軽やかに振るい続ける……亜人の異質な血飛沫を身に浴びても、その太刀筋が鈍ることはない。
「――死してなお、存在まで滅された者達の感情を思い知れ……!」
妖刀『藍雪花染』を鞘から抜いた恭弥は、哀しみ、絶望、後悔の呪詛の力の全てを解放すると、これまでの戦いで『藍雪花染』が喰らってきた数多の魂の嘆きを糧とし、迷いなく『藍雪花染』を横に鋭く一閃した。
美麗な剣閃のもと振るわれた、『藍雪花染』の刀身は、空間すらも虚無へ帰すかのように、暗殺教団員の上半身と下半身を二つに別ち、葬り去る。
「未来のない虚無、というのをお前達は知っているか。――刹那の絶望を、藍雪花染が凡て喰わせてもらう」
数を葬ることを求められる『ファーストアタック』に於いて、最も敵を殲滅するに至る戦方が仲間との密な連携であることを恭弥もまた理解していた。
そして、仲間への信頼も充分だ。
臨機応変さも求められるが、仲間達が敵に集中して狙われようものなら、自身へ注意を惹くべく、強い殺気を放ちつつ、恭弥は『藍雪花染』を力強く振るい戦場を駆けた……漆黒の長い髪を風に靡かせて。
(「静観するにも関わらず、部下を連れているということは……」)
光と炎を操り、2足1対の巨大な『鷹の鉤爪』を創り出し、光炎の鉤爪で暗殺教団員を斬り裂きながらも、ジズは思考を続けていた。
(「何らかの理由で、部下が必要なのだろう。……目に余るほど部下を屠る勢いを見せれば、預言者を引っ張り出せないだろうか」)
遠目にも目立つ光炎を隠さず燃やし、広範囲の暗殺教団員を焼き焦がすジズ。
だが、ジズの冷静な部分が『それだけでは足りない……預言者には』と自身に教えていた。
暗殺教団員の投げるナイフを炎の鉤爪で溶解させ、その鉤爪で直ぐにジズは暗殺教団員を切り裂いた。
(「宙を蹴って不規則に襲い来る、暗殺者は脅威だけど……でも【エアライド】には、滞空時間の長さって弱点もある――つまり!」)
白煙や仲間達の剣戟の中、隠れ潜んでいたディアナは、暗殺教団員の虚を突く絶好のタイミングで、暗殺教団員が無防備になった瞬間にディアナは、デーモンの翼に満ちる黒い魔力で空間の因果調律を捻じ曲げる。
「月夜に踊るのは――」
暗殺教団員の目に、ディアナの姿が映った時にはもう遅い。
死角を取ったディアナは、手にした自動拳銃のトリガーを引き絞り、同時にナイフを暗殺教団員の首元に突き立てる。
その時背後から、瀕死の暗殺教団員が、せめて傷の一つでもとディアナに刃を向けるが、ディアナは即時に反応するとその胸にナイフを正確に突き刺した。
(「私は、軍人で、軍師だもの……当然、急所は知ってて、でも……今日は、妙に頭が冴えてる。全てが見える……」)
「絶対に外さないわ!」
刃音の背に回り、再び引き金を引くディアナ。
そして、背を預けられた刃音にしても、この戦場でやることは、至ってシンプルだった。
敵に次々に斬りかかり、ただひたすらに斬り倒す……ただ、それだけだ。
「私……いえ、此方が使う新陰流は、回避からの反撃に秀でる剣技。敵陣の中にあろうと、難なく対応が出来るのです!」
多少ナイフで身を斬られることは、刃音も覚悟しているし、無視して良いと考えていた。
重傷を負うようなことさえなければ、『蹂躙戦記イスカンダル奪還戦』に参戦することは出来るのだから。
(「兎に角、数を減らすことを大前提に殲滅していきましょう」)。
『ファーストアタック』である以上、戦闘継続限界はあるが、撤退の時が来るまで、軍刀を振る手を、けして止めないと刃音は誓う。
「反応速度にゃ、それなり自信アリアリなんだよなァ! オレチャン!」
言葉と共に『急所狙いは分かりやすいつっーの!』と赤く光るナイフ『光耀』で暗殺教団員のナイフを弾き飛ばし、雷の杭を一気に放つフェリクス。
「近接するってんなら、この雷――真正面から受ける自信が有んだな? アッハハ♡」
雷と共に笑い声を、フェリクスは戦場に響かせる。
明らかに、ディアボロス優勢で戦局が進む戦場に在って、ディアナは強い想いを抱き戦い続ける。
(「私達が、堂々と目立って、粘って、戦い続けて――『極々低い可能性』を手繰り寄せる事を、私は……願ってる!!」)
拳銃を強く握る手が、正確に急所を穿つナイフを握る手が、ディアナの軍人でありながら女性的な手が――その者との”邂逅”の僅かな運命を、やがて手繰り寄せる。
●預言者の語る言は
それは、突然のことだった。
ディアボロス達と斬り結び、命をかけ、刃を振るっていたトループス級亜人『暗殺教団員』達が一斉に戦闘を中断し、道を作る様に並ぶと膝を突いた。
そして、ディアボロス達もこの作られた道の先から、来る者が”誰”なのかを瞬時に理解した。
奥からゆったりと現れた蒼き翼を持つ『亜人』が、静かに口を開く。
「私を呼ぶ声が聞こえると思いましたが、あなた達ですか……」
ジェネラル級亜人『預言者ザラスシュトラ』は、一箇所に集まるディアボロス達……その中の1人、赤茶の瞳に問いかける。
「会いたかったわ、預言者さん!」
けして怯む様子を見せず、ディアナが答える。
その上で、ディアナは仲間達に一瞬視線を送り、撤退の段取りも整える。
(「撤退ルートは大丈夫。でも、折角、ザラスシュトラが現れたんだもの。零れた言葉を一言も聞き漏らさない、ザラスシュトラが戦場の何を観察しているのか観察し返す、言葉を交わして得られる情報を持って帰る
……!」)
強くザラスシュトラとの邂逅を願っていたディアナだが無謀な訳ではない。
刃音は既に殿を務めるべく撤退の構えを見せているし、仲間達も撤退を視野に入れつつ、それぞれに思うことがあるようだ。
「『亜人』の預言者だったな、ザラスシュトラ。預言が、どーとかほざいてろ、オレは聞かねー! 他はどうか知らねぇが、いや――出会っちまったからナ」
フェリクスとて、『蹂躙戦記イスカンダル』に於いて、立ち位置が明確ではない『預言者ザラスシュトラ』の存在が気になっていたからこそ、この戦場に来たのだ。
他の仲間達もそうであることは分かっている。
それに加えて、今、ザラスシュトラを真っ直ぐ見るディアナが普段と何か違うことだけは分かる……自身も過去に味わった、世界に愛されているような……そんな感覚をディアナも味わっているのだと、フェリクスは直感的に感じる。
(「深追いは当然出来ないが……」)
ジズもザラスシュトラが語る言葉に大いに興味があった。
史実に於ける預言者は『善の最高神』の意志を体現した者だという。
ならば、改竄世界――ディヴィジョン――での預言者は……『何』の意志を体現しようとしているのか。
納刀しないまま、恭弥もクダギツネの『晴彦』を出し、撤退を考えながらザラスシュトラを見据える。
「まず、私は貴女の呼び声が無ければ、この戦いの地に直接赴くことは無かったでしょうね。ディアボロスの力でしょうか?」
明確に、ディアナを指して訊くザラスシュトラ。
「そうかもしれないし、そうでないかもしれないわ。けれど、『預言者ザラスシュトラ』――あなたに会いたいと願ったのは確かよ」
魂に刻まれたこれまでの栄誉が自身の味方をしたなどとは、ディアナ自身も正確には分からない。
だからこそ、ディアナは自身の考えをザラスシュトラへの言葉とする。
「あれから、『神威断罪ギガントマキア』についても調べて、やっぱり思うの。この、『蹂躙戦記イスカンダル』というディヴィジョンは何か、何か――変」
何が、何処が、何故に、それは説明しなくてもザラスシュトラには伝わると考えたディアナは、『変』と言葉にする。
「変ですか? 私もそのような気がしています。その上で、私は、此の地で、あなた達ディアボロスと戦う事は本意では無いと言っておきましょう」
「私達と戦う気がない? 『亜人』のあなたが?」
ザラスシュトラの意外な言葉にディアナが聞き返す。
「もし、私とディアボロスが戦えば、あなた達ディアボロスにとっても、私自身ににとっても、けして良い事にはならないでしょう」
「どういうこと? あなたは、何を知っているの?」
ディアボロスと戦うことを望んでいないというより、戦うことで悪いことが起こるというザラスシュトラ……それも双方にとってだ。
「それであっても戦うことを選ぶというのならば、やむを得ぬことなのでしょう」
ディアナの問いには答えず、そう言葉を選ぶザラスシュトラに、預言者たるザラスシュトラ自身にも、その『良いことにはならない』という事象が明確には分かっていないのだと、ディアナは察する。
「逃げるぞ、ディアナ嬢! 多分、こいつはこれ以上、話さねぇ! ……この先も、オレらの流儀をしーっかり教えてやる
待ってろ」
言うフェリクスに、ザラスシュトラは何も返さないが、ザラスシュトラを護る暗殺教団員達を動かす様子もない。
撤退を見逃すという、ザラスシュトラの意志が配下にも伝わっているのだろう。
それ以上の言葉を残さず、ザラスシュトラは暗殺教団員を連れ戦場をあとにする。
「ディアボロスと戦う事は本意では無い……どういうこと?」
自分達を、みすみす見逃したことが、ザラスシュトラの言葉に嘘がないことを物語っており、ディアナはザラスシュトラの言葉を繰り返す。
『ファーストアタック』としては、充分な打撃を与えることが出来たディアボロス達は、全く危険なく『新宿島』へと帰還するのだった。
ジェネラル級亜人『預言者ザラスシュトラ』と戦うべきか、という疑問を抱いたまま……。
超成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【防空体制】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV2が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!