リプレイ
エイレーネ・エピケフィシア
ナポレオンがラ・ショー=ド=フォンのオベリスクに全てを懸けたように、イスカンダルにも奥の手があることは覚悟の上でした
わたし達はこの時に備えて、一日でも早く、と戦線を進めてきたのです
ギガントマキアの傲慢なる偽神の余燼も、亜人どもの暴虐も、全て消し去って見せます!
――全ての都市と、人々のために!
復讐者を探して駆けつけて来るであろう敵の移動速度を【泥濘の地】で低下
馬体の健脚を妨げつつ、接近される前に『大地の激震』を仕掛けて数を減らします
敵の足下の大地が凄まじい振動を発し、蹄から胴へと駆け上る衝撃波で敵の脚を攻めましょう
骨肉を粉砕する破壊の波が臓腑を磨り潰し、一撃で死を与えられるなら最良
仕留めきれなくとも脚を挫いて動きを鈍らせ、十全な態勢で突撃を仕掛けられない状態に陥れます
敵の突撃に対しては≪神護の輝盾≫を構えて防御
泥濘や脚への攻撃で駆け抜ける勢いを弱めた上で、鋭い穂先を堅牢な盾で受け止め、喉や胸のような急所を突かれぬようにします
蹂躙の終焉に至る道を阻ませるものですか。奈落の深淵へと去りなさい!
クロエ・アルニティコス
最後の詰めですね。
元のオリュンピアの儀式もそうでしたが、あちらもなりふり構ってはいられないと、そういうことでしょう。
いいでしょう、イスカンダル。お前の手から札がなくなるまで叩き潰し続けます。
まずは儀式の妨害を円滑に行うため、こちらを狙ってくる亜人騎兵を迎え撃ちましょう。
【タロース・オフリス】を使用し、タロースを象った植物の怪物を作り出します。
【泥濘の地】を使用し、サリッサを構えて突進攻撃を仕掛けてくる亜人騎兵の脚を僅かなりとも遅らせたところを、横合いからタロースの腕で殴りつけ、タロースが帯びる熱で焼き焦がします。
他の復讐者と標的を合わせ、攻撃を既に受けている者があれば追撃をするようにし、【ダメージアップ】と合わせて早期の撃破を狙います。
反撃の突進は【泥濘の地】で足を遅らせることで突進の勢いを弱めるとともに、「守護の赤薔薇」の防壁で傷を最小限に抑えます。
今更、この程度で私たちを止められると思わぬことです。
ハーリス・アルアビド
なんと凄まじい有り様でしょうか。このような暴挙に出るほど追い詰められていると言うのであれば、イスカンダルの喉元まではあと少しと考えてよいでしょう。
殺戮をもって秩序もたらす神セクメトよ、この地にまことの姿を取り戻すためお力添えを。
仲間達への幸運を願い、この戦の勝利を捧げます。
相手もあの形状からすれば速度に優れているはず、より鋭く地を駆けるため両足に【肉体改造】を施し獣の足へと変えます。
【残像】を生み出す速度で駆け、最高速度に【忍び足】の緩急を加えて間合いや攻撃のタイミングをずらす【フェイント】を行いながら仲間の攻撃や罠からこちらに注意を引き付けつつ、狙いやすいように位置を誘導しましょう。
私に集中すれば仲間の攻撃に対し万全の態勢は取れず、仲間に注力するならば私がその隙を突いて【セクメトへの嘆願】を叩き込みます。
「なんと凄まじい有り様でしょうか」
ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)はオリュンピアの中心部にて繰り広げられている殺戮の宴めいた狂騒を遠目にしながら呻くようだった。
これが断片の王『イスカンダル』の切り札。
クロノ・オブジェクト『アーレスの玉座』による亜人たちの進化の儀式。
オリュンピアにて行われていた儀式をディアボロスたちは妨害していたが、『イスカンダル』はなんとしてもこの儀式を完遂させようと強攻策とも言える切り札を切ってきたのだ。
「ナポレオンがラ・ショー=ド=フォンのオベリスクに全てを懸けたように『イスカンダル』にも奥の手があることは覚悟の上でした」
エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)の言葉にクロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)は頷く。
彼女たちはこの時に備えて、一にでも早くと戦線を推し進めてきたのだ。
ディアボロスたちの道程はきっと間違っていなかったのだろうと思える。
敵に切り札を切らせた瞬間こそが、勝負どころなのだ。
故にエイレーネたちはオリュンピアの中心部を守るようにて展開している亜人たちの姿を見据える。
「このような暴挙に出るほど追い詰められているということでしょう。であれば」
「ええ、そういうことでしょう」
「イスカンダルの喉元まであと少し」
「ギガントマキアの傲慢なる偽神の余燼も、亜人共の暴虐も、全て消し去って見せませす!」
エイレーネの掲げた槍の輝きと共にクロエたちは駆け出す。
その輝きを受けて、亜人の防衛部隊であろうトループス『亜人騎兵』たちが土煙を上げながら、彼女たちに突進してくる。
「殺す! ディアボロス殺す! 絶対! 命令絶対!命令、命令、絶対絶対絶対!!!」
彼らは狂ったようにディアボロスである彼女たちを睨めつけている。
ギラギラと輝くような瞳には狂気めいた物があるように思えてならなかった。
亜人にとって、このオリュンピアにて広がったクロノ・オブジェクトの赤い光は進化への欲求を、そうしなければならないという本能を刺激するものであった。
だが、『亜人騎兵』たちは、その本能を上回るような命令でもって儀式を妨害してくるであろうディアボロスに猛進してくるのだ。
その勢いは凄まじものであった。
「――全ての都市と、人々のために!」
残留効果を手繰り寄せる。
泥濘の地が生まれ、進撃は滞るだろうが『亜人騎兵』たちはディアボロスを視認した瞬間、ためらうことなくパラドクスを放つ。
猛進する彼らの手にした槍は騎兵たる脚力を持って槍ではなく破城槌のような勢いで持って己を弾丸へと変えてエイレーネへと飛び込む。
構えた盾に伝わる衝撃がエイレーネの体躯を襲う。
凄まじい突進。
だが、エイレーネは持ちこたえて己が盾を支えながら、手にした槍の石突を地面に叩きつける。
大地の激震(クラダニシス)は、彼女の一撃で凄まじ異衝撃を生み出し『亜人騎兵』の脚部を吹き飛ばす。凄まじい一撃に『亜人騎兵』はたまらず吹き飛ばされ、泥濘に沈むしかなかった。
「蹂躙の終焉に至る路を阻ませるものですか。あなた達の行く先は奈落の深淵以外にないのです」
「ええ、これが『イスカンダル』の切り札なのならば、その手から札がなくなるまで叩き潰し続けるのみ――種子に宿るは我が憤激、芽吹け『タロース・オフリス』!」
クロエの手にした球根が泥濘の地に落ち、彼女の瞳がパラドクスに輝いた瞬間、その身に宿した魔力が流入する。
一瞬で膨れ上がるようにして成長した球根は、巨人の姿へと変貌する。
振るい上げた拳の一撃が風の魔力まとう『亜人騎兵』をはるか頭上から叩き潰す。
どれだけ此方に突撃を敢行しようとしても、クロエの前には盾を構えたエイレーネがいる。
守りは硬い。
ならばこそクロエがなすべきことは一つ。
オリュンピアの外縁を守る『亜人騎兵』を尽く叩き潰すのみ。
「今更、この程度で私達を止められると思わぬことです」
その言葉に怒りの咆哮を上げる『亜人騎兵』たちが、手にした長槍を構える。
馬体の脚部が、その蹄が泥濘の地を踏みしめる。
ぬかるんだ大地であろうとも彼らの身にまとった風の魔力と、亜人ならではの屈強なる体躯が、その突進を後押しするようにして迫るのだ。
だが、その突進を前に立ちふさがるのはハーリスであった。
「殺戮をもって秩序を齎す神セクメトよ、この地にまことの姿をとりもどすためお力添えを」
願うは幸運。
仲間たちの戦場にあって、その幸運こそが彼らを助けることを祈るのだ。
ハーリスは獣の足でもって大地を蹴る。
敵の速度は恐るべきものであった。構えた槍の穂先、その剣呑さも言うまでもないことだ。
あれだけの脚力である。
どれだけぬかるみに足を取られても関係ないとい言わんばかりに『亜人騎兵』たちは、自分に穂先を届けるために疾駆するだろう。
恐ろしいまでの突進。
だが、ハーリスの心にあるのは祈りであった。
恐怖よりも先に祈りが彼の中にはあるのだ。
共に戦う仲間の幸運を祈る。
ただそれだけで恐怖は吹き飛ぶのだ。
残像を生み出すほどの速度でハーリスは飛び込み、最高速度に到達した瞬間、セクメトへの嘆願(セクメトヘノタンガン)によって得た牙の如き一撃で以て『亜人騎兵』の体躯を切り裂く。
両断された『亜人騎兵』の体躯が大地に落ちる。
「命令! 絶対! 絶対絶対命令命令!!!」
「なんとしてでも私達をここに留めようとしているようですね」
「ですが、止まる理由にはなりません!」
エイレーネたちの瞳には意志が宿る。
必ずや、このオリュンピアの儀式という『イスカンダル』の切り札を打ち破ると。
故にハーリスは頷く。
「ならば、征きましょう。敵の壁など食い破り、その先へ」
ハーリスが駆け抜けていく。
彼の疾駆する先に敵はなく、穿たれた壁のように外縁の亜人たちが蹴散らされていく。
その背を追うようにしてクロエの生み出した植物の巨人が『亜人騎兵』を叩き潰し、投げ飛ばす。エイレーネの激震生み出す槍の一撃が彼らの足場を崩して、さらなる路を切り開く。
なんとしてでも、アヴァタール級をジェネラル級に進化させてはならない。
ディアボロスたちが走り抜けた先には、数多のトループス級たちが相争うオリュンピアの市街地があった。
誰も彼もが狂気に侵されたように殺し合っている。
同族であろうとなかろうと関係ない。
己の目に映るものから加護を奪い、己が力とするために、ただ殺戮の宴にて己が手にした刃をかつての同胞達に振るうのだ。
「全部、俺の力だ。お前の力も、俺のものになって、一つになる。それでもっと、もっと、もっと、強大な力を得るんだ!!」
それは咆哮であった。
悍ましいほどの力への希求。
赤い光がそうさせるのかもしれない。
トループス級亜人たちは、ただ、その欲求にしたがって血に塗れながら争い続けていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【泥濘の地】LV2が発生!
【神速反応】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
ディアナ・レーヴェ
駆けつけた先、オリュンピアの市街地で、特に同士討ちを待ったりはせずに速攻で戦いに入りましょう!
…ほら、待って強化されるのも面倒だし――
(なんて。 もしかしたら私も少しだけ、この狂乱の空気にあてられて気が急いているのかもしれないとも思う)
さて!
まずは適当な視界の通りにくそうな壁際にでも陣取って【Licht fällt】。
降る陽光、そして赤い光に紛れるように大玉を降らせてあげる!
大量の敵に囲まれて四方八方からの風に刻まれるのは嬉しくないから、撃ったらすぐまた別の物陰に走って、また撃って――って繰り返していくわ。
損傷している敵から狙ってさっさと数を減らしましょう!
もし乱戦すぎて物陰とか言ってる場合じゃないなら、逆に敵に体当たりしちゃってもいいわね!
どうせ元々同士討ちになってた奴らだもの。
闘牛じみた動きでぶつけ合わせて喧嘩させて、ディアボロス側への集中を欠いて貰ってもいいかなーってね!
まあぶつかりすぎて「強化」まで行っちゃうと面倒だから、喧嘩してる隙をこっちで撃たせて貰いたいけーどっ!
「やめろ、どうしてこんな……グギャァッ!!」
「……俺の力だ、お前の力も、俺のものだ。すべて俺のものだ!!」
トループス級『ミノタウロスの狂戦士』は、同胞たる同じトループス級を手にした斧で両断し、滴る血に瞳を煌々と輝かせる。
狂気が染み付いているようにさえ思えた。
彼の心にあるのは、ただ一つ。
あの赤い光を目指すことのみ。
そのために多くの加護が必要なのだ。
そして、その加護を持つのは同胞たち。なら、殺して奪うという短絡的思考は亜人らしいと言えばらしいものであったことだろう。
ディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)は駆けつけたオリュンピアの市街地で、何度もそのような光景を目にした。
『ミノタウロスの狂戦士』たちが行っているのは同士討ちだ。
放っておけば数は減っていく。
だが、ディアナはそれを選ばなかった。
速攻で敵を打ち倒すことを選択していた。
なぜなら、強化されたトループス級と戦うのが面倒であったからだ。
「なんて」
ディアナはもしかしたら、と自身の内面を見つめ直す。
眼の前にあるのは狂乱。
この空気に当てられているのかもしれないと彼女は思うのだ。気が急いているのは事実だった。
「仕掛けはひみーつ。さあ、お立会いってね!」
彼女のパラドクスが輝く。
市街地の建物、その壁を背にしてディアナは手にした火砲の砲口を直上、その宇宙に輝く陽光へと打ち上げる。
それは市街地の中心部に存在する赤い光放つクロノ・オブジェクト『アーレスの玉座』に紛れるように、火砲からの砲弾を『ミノタウロスの狂戦士』の頭上に降らせるのだ。
すぐさま彼女は走る。
敵に位置を気取られる前に。
「お前の加護をよこせええええっ!!!」
咆哮を上げながら『ミノタウロスの狂戦士』はディアナへと迫る。
手にした戦斧を振り回し、旋風のようにディアナへと叩き込まんとする姿は、身に迫る砲弾すら気に留めていなかった。
ディアナのパラドクスの一撃に打ちのめされてなお、前に進もうとしている。
そんな『ミノタウロスの狂戦士』を別の個体が斧で首を落とす。
弱っていると見れば、同胞であろうと関係ないのだ。
「俺が、俺が、俺が俺が!!」
狂乱そのものであった。
「こんな状況でも敵味方わかんないのね」
ディアナは、この狂乱の戦いが乱戦へと様相を変えていることに気がつく。
最早『ミノタウロスの狂戦士』にディアボロスと同胞の見分けはついていないように見えた。
弱っているものがいれば殺す。
それだけなのだ。
「なら、こっちも隙を討たせてもらうからーね!」
ディアナは砲身を構える。
敵が同士討ちを積極的に行うというのならば、強化を得る前に此方が倒せばいいだけの話だ。
血風荒ぶ市街地。
まだ、トループス級同士の争いは終わらない。
最後の一体になるまで終わらないのだろう。故にディアナは彼らの強化が進まぬように弱った『ミノタウロスの狂戦士』を己が火砲で打ちのめすのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【照明】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
ベアトリクス・ライスター
無理やり同士討ちとは非道だな
イスカンダルの切り札を落とせるなら落とすに限る
倒れた亜人の武具や儀式場の破片を拾って≪ストリートストライク≫で叩きつける
向かってくる敵にはぶん投げる
ミノタウロスの狂戦士の「タウロスサイクロン」に対し、二本の斧をバールのようなもので受けとめる
おっと、私にアーレスの加護はないぞ
隣の奴を放っておいていいのか?
私などより強そうだし、余程アーレスの玉座に近そうだ
注意を逸らしてみるが、聞く耳もたなさそうだ
狂乱の隙を見つけて、追い詰めから逃れる
斧も大振りなら致命傷を避ける
【泥濘の地】を使い、同士討ちを始めた奴を背後から狙って≪ストリートストライク≫で攻撃していく
弱った敵からトドメを刺していく
他のトループス級の影からも武器を投げる
乱戦で生まれる隙を狙っていく
他のディアボロスとの連携は歓迎だ
連携できるなら援護する
フィリス・ローラシア
※アドリブ、連携ok
何というか、色々な意味で凄惨ですね。
形振り構わないという感じですが、此方がそれに付き合う道理もありません。
同士討ちしているなら、此方は遠慮無く横殴りですよ。
とはいえ、敵の数は侮れませんし、敵味方の区別がないだけで此方にも普通に向かってくる敵も居るでしょう。
リュカには周囲の警戒をして貰っておいて、私は『心の鎖』をばら撒いて、手当たり次第に敵勢を締め上げていきましょう。
味方だけは巻き込まないように注意ですね。
戦闘では『心の鎖』を敵集団に放射し、締め上げて動きを止める序でに薙ぎ払います。
もし接近戦を行う味方が居たら、其方と目標を合わせて、敵の動きを止めるなどして援護ですね。
基本的には弱った敵から順番に狙い確実に数を減らしていきますが、もし敵に止めを刺されそうな個体が居たら、其方は最優先で倒して強化の妨害を図ります。
敵の起こす風に対しては、鎖で壁を作ったり魔力障壁を張ったりして防御するか、勢いを殺いで受け流します。
直接斧を振り回してくるなら、其方は鎖で切り払って体勢崩しです。
クロエ・アルニティコス
方針:ディアナに続き、加護を多く得ていない、数多くのトループスを相手取る
頼みの力さえもお前たちは奪うことしか頭にないんですね。
自己の研鑽という言葉はお前たちには存在しないようで。
奪うことしか存在できないのなら、お前たちが奪われる側になっても文句はないでしょう。
【セイレーン・カンパニュラ】を使用し、セイレーンを象った植物の怪物を作り出します。
身を引き裂くような叫び声で、実際にミノタウロスの身体を引き裂きましょう。
まだ数はそれなりにいますし、複数の敵を同時に攻撃するパラドクスと【ダメージアップ】で殲滅速度を重視。周囲の敵を同時に攻撃し制圧します。
同じ方針で共に戦う復讐者がいれば、可能な限り標的を合わせ、弱った者から狙いましょう。殲滅速度もですが、弱った亜人を仲間割れで殺されて力を奪われるようなことがあっても面倒です。
反撃の鮮血色の風に対しては「守護の青薔薇」の結界術で防御を行います。
これで粗方倒せたでしょう。
後は「アーレスの玉座」とやらに辿り着いたアヴァタール級のみ、確実に仕留めます。
オリュンピアの中心にほど近い市街地は凄惨たる有り様であった。
血に汚れていない場所など何処にもない。
視線を移せば必ず血の色があるほどであった。辺りには亜人の争った跡が残されている。
「無理矢理同士討ちとは非道だな」
「ええ、なんとも……色んな意味で凄惨ですね。形振り構わないという感じですが、此方がそれに使う道理もありません」
ベアトリクス・ライスター(スカーレットレイライン・g11365)の言葉にフィリス・ローラシア(夢現の竜使い・g04475)は頷く。
そう、敵は互いに争い続けている。
クロノ・オブジェクト『あーれすの玉座』とは、亜人たちに狂気をもたらしている。
トループス級『ミノタウロスの狂戦士』たちは、己自身が強大になるために争い続けているのだ。
「やめろ! やめろって! なんでこんなことを、ギャアアッ!?」
状況を飲み込めていない亜人もいるのだろう。
だが、そんな者たちさえ構わぬというように『ミノタウロスの狂戦士』は、その手にした斧でもって同胞である亜人を殺すのだ。
「イスカンダルの切り札を落とせるなら落とすに限る」
「ええ、同士討ちしているなら、此方は遠慮なく横殴りですよ」
ベアトリクスは、己を認め、向かってくる『ミノタウロスの狂戦士』へとパラドクスを発露する。
相争い倒れた亜人の武器を手にして投げはなった一撃は、構わず猛進する『ミノタウロスの狂戦士』の体躯に突き刺さる。けれど、彼らはまるで意に介していないかのように猛進を続けているのだ。
「……おっと、私にアーレスの加護はないぞ?」
「知るか! お前もあいつも、どいつもこいつも殺す! 殺す! 殺す殺す殺す!!」
言葉が通じないな、とベアトリクスは思っただろう。
これほどまでの狂気を『アーレスの玉座』は齎すのだ。そして、結果的にトループス級はアヴァタール級に進化し、アヴァタール級はジェネラル級へと進化を果たす。
それは即ち、蹂躙戦記イスカンダルの戦力の増強を示している。
振り下ろされた斧を受け止め、ベアトリクスは息を吐き出す。
どうやらどんな言葉も彼らには届かないらしい。
「やはり敵味方の区別がないようですね」
フィリスは術式『心の鎖』(チェインオブハート)によって、ベアトリクスを襲っていた『ミノタウロスの狂戦士』を縛り上げる。
締め上げることで『ミノタウロスの狂戦士』は動きを止める。
軋む鎖。
やはり同士討ちで徐々に加護を得て強大になってきているのだろう。
この儀式を完遂させることがどれだけ危険であるのかを思い知らされる。
「頼みの力さえもお前たちは奪うことしか頭にないんですね」
クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)は嘆息する。
亜人という種族の知能の程はよく知っているつもりであった。だが、そこに自身たちと同様に自己研鑽といった慣例がまったくもって当てはまらないことを彼女は改めて知るのだ。
「奪うことでしか存在できないのなら、お前たちが奪われる側になっても文句はないでしょう」
「奪う! 俺の力だ! その力も、お前の力も、全て、俺の力だ!!」
『ミノタウロスの狂戦士』は狂乱に満ちた眼でクロエを睨めつけ、襲いかかる。
だが、彼の眼の前に現れたのは、セイレーン・カンパニュラ――植物でかたどられた怪物であった。
組み付く『ミノタウロスの狂戦士』。
瞬間、セイレーン・カンパニュラの頭部が横一文字に裂け、口腔が生まれる。
広がる口腔よりほとばしるは、金切り声。
絶叫ほとばしり、身を切り裂かんばかりの音が『ミノタウロスの狂戦士』の体躯を、文字通り切り裂くのだ。
血潮が噴出する。
「ご無事ですか」
クロエはフィリスの鎖によって拘束された『ミノタウロスの狂戦士』が崩れ落ちるのを見ることもなく、ともに戦うディアボロスたちの元へと駆け寄る。
「ああ、まだまだ行ける。どのみち、此処にいるトループス級は全て倒さなくちゃならないんだ。弱った敵から潰していこう」
ベアトリクスは、その場に落ちていた『ミノタウロスの狂戦士』の得物である手斧を手にして顎で未だに争い続ける『ミノタウロスの狂戦士』たちを示す。
此方のことなどまるで気に掛けることなく、彼らは争っている。
「連中、同士討ちに忙しいらしい」
「ならば、確実に数を減らしていきましょう。私が足止めを行います」
敵の同士討ちに割って入るには、同時に複数のパラドクスの標的にもなるということである。
けれど、フィリスはこれが最も効率的だと判断していた。
敵の同士討ちが続けば、それだけトループス級は加護を得て強化されていく。
それ故に点ではなく面で制圧していくこと。
「亜人同士の争いで彼らが強化されるのも面白くはありません」
「ええ、有り体に言って面倒です」
敵トループス級に加護を奪われる前に倒し切る。これによって敵の数を減らしつつ、戦いを優位に運ぶことができる。
「それじゃあ、やるとしようか。敵は元より知能が低い。そこにこの狂気だ。まともに連携できないのなら、連携できる此方に分がよくなるのは道理だ」
そう言ってベアトリクスは手斧を投げ放ち、駆け出す。
一気に『ミノタウロスの狂戦士』へと肉薄し、その手にした手斧を奪うようにしてパラドクスを発露する。
そこへ、フィリスのパラドクスの鎖が、その動きを止める。
「容易いことです。如何に強化されようとも亜人は亜人。何処まで行っても」
クロエの生み出したセイレーン・カンパニュラの絶叫が『ミノタウロスの狂戦士』の体躯を切り裂く。
「これで粗方倒せたでしょう」
「ええ、これが最後の一体の様子。後は……」
「アヴァタール級に進化した亜人か」
三人は市街地にて巻き起こる狂乱たる戦いの宴が未だ続くことを知る。
共に駆け抜ける仲間を得たディアボロスと、ただ己だけが勝者になればよいとする亜人たち。
その行く末を暗示するように、血路を往くのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【強運の加護】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
【通信障害】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!
ハーリス・アルアビド
別勢力が攻めて来たにも関わらず亜人同士で殺し合いを続けるとは…なんとも恐ろしいものです。この狂乱を終わらせるためにも力を尽くしましょう。
大地の神ゲブよ、この地に平穏を取り戻すため大いなる御手により狂える者たちを冥界へとお導き下さい。
仲間達への幸運を祈り、正気を失った者達に安寧を。
ディアナさんが先駆けとなってくださいました。私もそれに続き数が大い敵を狙います。
先ずは【残像】を生み出す速度で駆け、最高速度に【忍び足】の緩急を加えて間合いや攻撃のタイミングをずらしながら敵群を引き付け、仲間の攻撃や【泥濘の地】に誘い込みながら纏めて攻撃しやすいよう立ち位置を誘導しましょう。
敵の数は多く、包囲されるか集中攻撃を受ければ危険です。足を止めずかつ誘導に気付かれぬよう【フェイント】を織り混ぜ敵群がある程度固まった所に【ゲブへの嘆願】を放ち纏めて片付けます。
リューロボロス・リンドラゴ
ふん。まさしく蠱毒よな。
殺し合うだけならば構わぬが強くなられるのは面倒だ。
進化したてでさえ通常より強いというのはアヴァタール級でも厄介だが、ジェネラル級でも同様なら断片の王にも準ずる危険があるというのも納得よ。
力の使い方に慣れられる前に速攻で叩き潰してくれるわ!
当然、他のアヴァタール級に漁夫の利で我ら担当のを殺させるなどさせてはやらぬよ!
――幼子よ、健やかに育て。未来護るは竜である。
雄叫び?
威圧?
それがどうした!
竜がこの程度で圧されるものか!
その身で味わうが良い!
雄叫びとは、威圧とは!
こうするのだ!
ルゥゥゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!
高速突撃なにするものぞ!
我がカウンターの登竜門で真正面から激突してくれるわ!
どれだけ強力な加護を得ていようとも、正気を失い戦わされておるだけの分際で!
我が龍鱗、我が魂に、自らの意思で戦わぬ者の突撃が、雄叫びが、響くとでも思うたかあああああああ!
奪うことでしか進化できぬ者よ。
奪わずとも留まること無き幼子の進化、刮目せよ!
亜人たちの狂乱たる宴が止むことはなかった。
ディアボロスたちがオリュンピアの市街地へと踏み込み、トループス級を打倒しつくしてもなお、彼らは団結する姿勢を見せることはなかった。
如何に儀式の最中であるとは言え、ディアボロスの侵攻があったのだ。
本来ならば如何に知能が低くとも、対応しなければならないと理解するだろう。
けれど、クロノ・オブジェクト『アーレスの玉座』の赤い光は、亜人たちに狂気しかもたらさなかった。
より強く。より強大に。
その欲求を亜人たちは抑えられなかった。
故にひたすらに争い続け、『アーレスの玉座』にほど近い場所では、さらなるアヴァタール級同士の争いが行われようとしていた。
身に宿した輝きは、まさしくトループス級からアヴァタール級に進化したことを示すもの。
「……なんとも恐ろしいものです」
「うむ、まさしく蠱毒よな。殺し合うだけならば一向構わぬが、強くなられるのは面倒だ」
中心部たる『アーレスの玉座』へとたどりつたディアボロス、ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)とリューロボロス・リンドラゴ(ただ一匹の竜・g00654)は、赤い光、その加護によってアヴァタール級へと進化した『ブケファラス』の姿を認めた。
通常のアヴァタール級を差し置いても強敵であるとわかる。
それほどの重圧が彼らの身に降り注いでいるのだ。
「ブルゥゥゥッ!!!」
だが、言語さえ忘れたように『ブケファラス』は、闘気漲らせ、その力を発露するように嘶く。
「進化したてで、これか。なるほど、厄介だ。ジェネラル級でも同様なら断片の王に準ずる危険があるというのも納得よ」
リューロボロスは不敵に笑む。
そう、如何に強大な敵であろうとディアボロスとして戦って打ち破ってきたのだ。
ならば、彼女は笑む。
笑み、そして咆哮するのだ。
「――幼子よ、健やかに育て。未来護るは竜である」
それはハーリスも同様であった。
「大地の神ゲブよ。この地に平穏を取り戻すため大いなる御手により、狂えるものたちを冥界へとお導き下さい」
仲間たちへの幸運。
そして、正気を失って死せる者たちへの安寧。
それをハーリスは祈り、駆け出す。
仲間たちが先駆けとなってくれたのだ。
ならば、己もそれに続かねばなんとする。故にハーリスは残像を生み出しながら『ブケファラス』へと踏み込む。
「大地の神ゲブに奉る」
打ち込んだ拳は大地を鳴動させる。
『ブケファラス』は、豪腕を無理矢理に振るいハーリスを打ち据える。
だが、それでもハーリスは踏み堪える。
敵の一撃は確かに痛打。
されど、堪えきれぬほどではない。己が耐えたのならば、必ずや仲間が敵を打ちのめしてくれると信じている。
そして、その信頼に応えるようにしてリューロボロスが咆哮する。
「ブルゥゥゥオオオオオッ
!!!!」
だが、その咆哮を打ち消すように『ブケファラス』のパラドクスが走り抜ける。
強烈な咆哮。
相対する者を全て蹴散らすかのような咆哮は、リューロボロスの身を打つ。
だが、その小さき体躯は吹き飛ばされることなく、むしろ胸を張るようにして一歩を踏み出す。
雄叫び?
威圧?
「それがどうした!」
一喝であった。
大喝の如き言葉に『ブケファラス』は、しかし止められぬ己の突撃を持ってリューロボロスへと飛び込む。
しかし、その一撃を前にリューロボロスはあろうことは前進したのだ。
ハーリスがそうであったように、これは共に戦う仲間がいるからこそできる行為であった。
「雄叫びとは、威圧とは! こうするのだ! ルゥゥゥオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
咆哮を塗りつぶす咆哮と共にリューロボロスは登竜門(リュー・ウロボロス・エボリューション)たるカウンターの一撃を『ブケファラス』の馬体たる腹部へと叩き込む。
肉が断裂していく音が響き渡る。
それはリューロボロスの拳の骨が軋む音と混じり合い、轟音へと成り代わるのだ。
「我が龍鱗、我が魂に、自らの意志で戦わぬ者の突撃が、雄叫びが、響くとでも思うたかああああああ!」
振り抜いた拳が『ブケファラス』の体躯を吹き飛ばす。
ハーリスは大地を鳴動させ、更に追い打ちをかける。
「正気を失った者の力など、何の意味もありますまい」
「その通りよ。奪うことでしか進化できぬ者よ。これが奪わずともとどまることなき幼子の進化! 刮目せよ!」
その言葉と共に二人は『ブケファラス』の体躯をしたたかに打ち据え、その得た加護が無為であることを知らしめるのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【動物の友】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【ガードアップ】がLV2になった!
クロエ・アルニティコス
とうとう最低限の知性まで消え失せましたか。
狂乱し暴れ狂い、同族を食らう。
お前のようなものから生まれるものが人に有益であるはずもない。
お前は殺します、「怪物」。
【ラードーン・ローザ】を使用し、ラードーンを象った植物の怪物を作り出します。
【反撃アップ】で敵の動きを読み、先回りするかのようにパラドクスで反撃を行います。
こちらに噛みつきを行おうとするブケファラスを遮り、またその足元から体を伸ばすようにしてラードーンの百の頭を象った茨を伸ばし、ブケファラスを絡めとりましょう。
絡めとった後は他の復讐者の攻撃をサポートするようにして拘束して足を封じ、最後にはそのまま締め殺します。
英雄ではなくとも……魔女として、邪魔な怪物の排除くらいはやりましょう。
簡単に使えるものならばもっと早い段階で使っていたでしょう。
ここまで取っておいたことがこの『アーレスの玉座』が切り札であることと、追いつめていることの証左。最後の時まであと数歩です。
ベアトリクス・ライスター
むぅ、惨憺たる有り様だな
どこもかしこも狂気だが、玉座と呼ぶには曰くがつきすぎだな
一体の勝者にも、蟻の群れは喰らいつく
イスカンダルもよっぽど後がないんだな
野生から見ても、どうにも非生産的に見えるのだが……
加護を吸いまくった強敵か、こっちも気は抜けない
突撃が得意そうだし、私も戦闘用オートバイで駆け回りながら、≪ストリートストライク≫で攻撃だ
その場にあるものを投げつけて、味方の援護
玉座もぶん投げてやりたいくらい
【泥濘の地】で移動の脚が鈍ればいいが
「単騎蹂躙」に対し、オートバイを駆り突撃と剛腕をかわしていくぞ
市街地の高低差や建物の壁も利用していく
他のディアボロスとの連携は歓迎だ
ディアボロスのパラドクスを一身に受けながらアヴァタール級『ブケファラス』は咆哮する。
痛みがないわけではない。
ただ、痛みに勝る欲望があるのだ。
最後の一体になるまで赤光の齎す加護を己がものにする。
亜人に課せられた欲望、その欲求を満たすためだけに『ブケファラス』は狂乱のままに叫んでいた。
「力は、全て、オレの、モノだ! 全部、全て! 何一つ、渡しはしないぃぃぃ、おおおおおッ!!」
迸る力は、通常のアヴァタール級よりも強大であることがわかるだろう。
「むぅ、惨憺たる有り様だな」
ベアトリクス・ライスター(スカーレットレイライン・g11365)は、戦闘オートバイに跨りながら戦場を疾駆する。
共に戦う仲間たちと連携するため『ブケファラス』を自由にさせてはならないと旋回するように彼の周囲を走る。だが、そうした囲いすらも踏み砕くように『ブケファラス』の瞳がパラドクスに輝く。
振り上げた馬体の前足。
その蹄が大地を穿つかのように打ち付けられ、大地を揺らす。
ベアトリクスは、これがクロノ・オブジェクト『アーレスの玉座』によって強化されたアヴァタール級の力、加護を由来とするものであることを知る。
このアヴァタール級がジェネラル級に進化するのならば、脅威以外の何者でもない。
「気が抜けないな!」
「ブルゥゥゥァアアア!!」
戦闘バイクに突進する『ブケファラス』。
ベアトリクスは、戦闘バイクの馬力に任せて突進を受け止める。
「まったく、どこもかしこも狂気だが、玉座と呼ぶには曰くがつきすぎたな。一体の勝者にも、蟻の群れは食らいつく……玉座をぶん投げてやりたいくらいだ」
『ブケファラス』の突進に押し込まれるままにベアトリクスは、ただ任せていたわけではない。
突進にタイヤの轍を刻みながら、彼女は周辺に散っていたアヴァタール級に進化できなかったトループス級亜人の武器を手にして『ブケファラス』へと叩きつける。
「グゥッ、オオオッ!!」
僅かに緩んだ瞬間、ベアトリクスは戦闘バイクの前輪を跳ね上げて『ブケファラス』を交わし、市街地の建物壁面を走って逃れる。
振り返る『ブケファラス』。
逃さぬと言わんばかりであった。
「ただ逃げていると思ったか。頼んだぞ!」
ベアトリクスの言葉にパラドクスの光が煌めく。
それは、クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)の瞳が放つパラドクスの輝きであった。
「とうとう最低限の知性まで消え失せましたか」
クロエは『ブケファラス』の狂乱に輝く瞳を見やる。
そこに知性は感じられなかった。
ただ奪うだけ。
狂乱すれど、暴れ狂い、同族をも喰らうのは亜人の本質めいたものだった。
ただ奪い尽くす。蹂躙する。
それだけが亜人なのだ。
だが、クロエは眼の前の『ブケファラス』を『怪物」であると断じる。
「お前のようなものから生まれるものが、人に有益であるはずもない」
「ブルゥオオオオ!!!」
咆哮が迸る。
それはクロエの言葉に反応したわけではないだろう。
ただ、眼の前に敵がいる。それだけで威圧するように咆哮したのだ。
馬体の前足が踏み出す。瞬間、クロエは見ただろう。
人体に馬頭。
その歯列よりこぼれるは、欲求の発露たる唾液。
振り乱しながらクロエを食らわんとしているのだ。
「種子に宿るは我が抑圧、芽吹け『ラードーン・ローザ』!」
バラの種子に注ぎ込むは魔力と言いようのない憎悪であった。
クロエは『ブケファラス』に、亜人に憎悪を抱く。
その感情は一つや二つではない。百を数えるほどの感情のうねりとなって植物の怪物を生み出す。
曰く、百頭の蛇。
彼女のパラドクスが象ったのは、まさしく『ラードーン』と呼ばれる蛇の怪物であった。
茨の体躯がうねり、クロエへと迫る『ブケファラス』を取り囲み、その足を絡め取る。引きずり倒すようにして地面に顔面を打ち付ける『ブケファラス』にベアトリクスの戦闘バイクが建物の壁面から飛び立ち、踏みつけるようにして、その体を打ち付けるのだ。
「抑えつける! このままっ!」
車輪が『ブケファラス』の体躯を斬りつけるようにして回転し、抑えつける。
もがく『ブケファラス』の嘶きが響き渡る。
だが、長くは続かない。
クロエの『ラードーン・ローザ』、その百頭をもした茨が『ブケファラス』の体を呑み込んでいく。
踏ん張る馬体も、もがく人の腕も何もかも茨の棘が食い込んで締め上げていくのだ。
「英雄ではなくとも……魔女として、邪悪な怪物の排除くらいはやりましょう」
クロエのパラドクスに輝く瞳が伏せられた瞬間、『ラードーン・ローザ』の百頭は『ブケファラス』を飲み込み、その血潮を吸って成長する。
咲くは大輪の薔薇。
「イスカンダルもよっぽど後がないと見える。こんな非生産的な行いは……」
「簡単に使えるものならば、もっと早い段階で使っていたことでしょう。ここまで追い詰められるまで取っておいたということが『アーレスの玉座』が切り札であることと、追い詰めていることの証左」
クロエとベアトリクスはイスカンダルの切り札……儀式の完遂の一角を突き崩す。
「最後の時まであと数歩です」
蹂躙戦記イスカンダル奪還、その時に一歩また踏み出すのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【託されし願い】LV1が発生!
【強運の加護】がLV2になった!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】がLV2になった!