リプレイ
天音・梓
マルファスでもハルファスでも構いません、東京を取り戻す邪魔をするのならただ敵も教義もぶち壊すだけです
しかし、信者の方々を説得するといっても、こうも話を遮ってきそうな邪魔者が多いとお話になりませんね
まずは今まで何度も戦っていて、戦い方が大体分かっているソードメイデンから片づけてしまいましょう
ソードメイデンの得物は剣、対してこちらはボウガン、相手は接近戦を仕掛けたいところでしょう。相手の攻撃を観察しつつ、ボウガンで牽制しながら周囲を取り囲むように近づいてこさせます
敵が取り囲んできて、十分引き付けたら大嵐で一気に薙ぎ払いましょう
ギャラリーの皆さま方、お集まり頂きありがとうございます、手間が省けました
支倉・珠
地対空なので若干やり難いですが、こちらは銃器持ちです。
地上に妖精使いを放っておくと痛い目に遭わせますよって感じで、ガツガツ殴ってみましょうか。
■準備
【トラップ生成】を使って、周囲の一部をトリモチ・粘液に変えて飛翔し難くします。
■戦闘
とにかく飛翔を封じて、十全に戦えるようにしましょう。
大盾とハンドガンを装備。銃で射撃をして注意を引き、視線をこちらに向けたら銃の柄で盾を叩いて、挑発して攻撃をこちらに仕向けます。
来ないなら来ないでネチネチ射撃します。
こちらに意識が向いたら風の妖精を召喚し機動力を削いでいただき、その上で敵をトラップ地点目掛けて思いっきりぶん殴り、突き飛ばしましょう。
永森・武尊
年内に港区を必ず取り戻す。
かもしれない、では無く確実にだ。
だから、この戦いは負けられないね。
無くしたものを取り戻す為に。
双翼魔弾を放つ時は【時間稼ぎ】の様に不規則に飛び回ったり、
間合いを詰められたらショットガンを撃つ等、
クロススラッシュを警戒しながら戦う
【制圧射撃】をして援護する等、味方の他の復讐者とは
可能な限り連携する
攻撃を出来るだけ一体に集中させて確実に数を減らす
百鬼・運命
「やれやれ…悪魔が天使を護衛に使うか…どうやら前から攻略旅団で疑いが合った通り、現状において悪魔と天使が裏でつるんでいるのはほぼ確定みたいだな」
…新宿島漂着前の記憶が虫食い状態でなければ、もっとはっきりとディヴィジョンの状況が分かるんだろうがな…
「さて、信仰心を折るなら、下手に策を弄するよりも正面突破を策とするべきか」
正面から侵入。戦闘中はできるだけ余裕をもち、それを信者に見せつけるように対応。出来るだけ派手に戦闘し、戦闘中は【建造物分解】も使って天使を建物ごとまとめて切り刻むことで、信者に天使の撃破と神殿が破壊される様子を見せつけ信仰心を折る下準備とします。
絡みアドリブ歓迎
●
パラドクストレインは夜の浜松町駅に到着した。
同じ山手線の車両だからだろうか。パラドクストレインは何の違和感もなく2番ホームに滑り込むと、ディアボロスたちを降ろしてすぐ、誰も載せずに出発した。
ホームで列車を待っていた人々は、ディアボロスが降りたあと車内に誰も乗っていないのを見て、回送列車だと思ったのだろう。乗れなかったと文句をいう客は1人もおらず、とくに騒ぎは起きなかった。
ホームに降り立った百鬼・運命(人間の鬼狩人・g03078)は、あっけにとられたような顔をして、うなじに手をやった。
「……完璧な隠ぺいだったな。まさか山手線を利用して、どうどう乗り込ませるとは」
ふつう、パラドクストレインは人目につかない場所を選んで止まる。目的地にたどり着くまで大変なことが多いのだが、今回は駅を出て竹芝通りを真っ直ぐ西へ。日比谷通りに突きあたるまで進み、そこから北へ少し上がればたどり着く。
「だけど帰りはどうするんだ?」
ゆったりとしたシルエットの前開きパーカーの中にミニドラゴンの『紅』を入れた支倉・珠(赤盾・g04907)が、後ろから運命の肩をぽんと叩いた。
「なるようになりますよ。終電の後、私たちならホームに忍び込めますし。ちょっと暗いですが、のんびり迎えを待てばいいでしょう」
「なるほど」
「改札は階段の下です。行きましょう」
珠たちはそのまま何食わぬ顔で階段を降りていく。
天音・梓(雨兆す・g03821)はあわてて引き止めた。
「ち、ちょっとどうするんですか。私たち、切符をもっていません」
段の下から振り返った永森・武尊(デーモンのデジタルサマナー・g03090)は、梓の目を見ていたずらっぽく笑った。
「ICカードをかざしたと勘違いさせて出る。梓さん、確かハッキングツール持っていたよね? ちょっと貸して、センサーを作動させないようにするから」
「えっ、それって……」
「なーんてね。ちゃんと切符を無くしたって言って、新宿駅からの料金を払えばいいんだよ」
武尊は改造バイオリンケースを肩にかけなおしながら、無邪気な声で笑った。
大げさに胸をなでおろす梓に、珠も運命も顔を見合わせて苦笑する。
「非常時だけど、キセルなんてしません。私たちは復讐者であって犯罪者ではありませんから」
「俺たちはこの時代の山手線ではなくパラドクストレインに乗ってきた。だから正確なところキセルにはならないはずだ。だから金は駅の使用料として払う。まあ、少額だしな」
「よかった。でも、それなら新宿ではなく、高輪ゲートウェイ駅からのほうがいいと思います。海になっている新宿区はもちろんのこと、他の区へも列車が乗り入れているかわかりませんから」
「アギャー」
梓、よくそこに気がついたね、と珠のパーカーから顔だけ出した『紅』が鳴いた。
「ねえ、みんな。急ごう。ほら、ネリリさんも翡翠さんも」
武尊は梓の後ろからゆっくりと階段を降りてくる2人をせかす。
「僕はより早く、より多く、カテドラルを潰してハルファスを追い詰めたい。この任務を成功させて、年内には港区を必ず取り戻すんだ」
武尊の決意表明に全員が真剣なまなざしで頷いた。
6人はとくに怪しまれることなく、2駅分のお金を払って改札を出た。
●
11階建ての白い旧ホテルの背後にライトアップされた東京タワーの赤と、顔を突き合わせるハルファスの灰色の巨大な頭部が見える。ホテルをカテドラルに改修するときに作ったものだろうが、せっかくの景観が台無しだ。
運命は広々とした敷地の手前で立ち止まった。
「さて、信仰心を折るなら、下手に策を弄するよりも正面突破を策とするべきか」
すべてミサに出ているのか、あたりにカテドラルを警備するクロノヴェーダ―の姿はない。
珠が相槌をうつ。
「ええ、そうしましょう。フロア案内図をみるまでもなく、どこでミサが行われているか明白ですし」
向かって左手側、白い建物の裏に建つハルファス像がある場所だろう。
二重扉を潜り、広々としたロビーに入る。一見するとクラシックで上品な雰囲気なのたが、ロビー中央に飾られている ハルファスの胸像や、壁や柱に張られたハルファスの絵が目立ち、いやな気分にされられた。
「悪趣味ですね」、と梓。
武尊が左奥に見えるエスカレーターを指さす。
「どうやら二階からじゃないといけないようだ。あれであがろう」
一階ロビーからエスカレーターを駆けあがり、大ホールに向かった。
閉じられた扉を通して、オルガンの断音的な伴奏と朗らかに歌う信徒たちの唱和が漏れ聞えてきた。
扉の左右に別れて、突入のタイミングを図る。
運命は小声で、ネリリと翡翠に作戦を伝えた。
「もともとカテドラルを警備していた天使は俺たちが引き受ける。そっちはハルファスの護衛を抑えてくれ。その後、信徒たちを説得してここから出す」
わかりました、と翡翠が唇だけを動かして返事をする。
「よし、いくぞ」
ディアボロスたちはドアを蹴破って派手に突入した。最後尾に座っていた信徒たちが驚きの声を上げて、椅子から腰を滑り落とす。
ディアボロスたちも向かい風に吹かれながら、大ホールの変わりように度肝を抜かれていた。
西奥の天井がぶち抜かれて吹きさらしになっていた。四角く切り取られた天井から、都会の明るい夜空が覗き見えている。両側を柱のようなハルファスの立像に挟まれた奥壁は、ステンドグラスの窓に変えられていた。東京タワーの赤い輪郭が、色のモザイクにぼんやりと滲んでいる。
その中央正面に護衛に囲まれたハルファスが、超然と浮かんでいた。
あっけにとられるディアボロスたちに正気を取り戻させたのは、梓の一言だった。
「マルファスでもハルファスでも構いません、東京を取り戻す邪魔をするのならただ敵も教義もぶち壊すだけです」
ディアボロスたちが祭壇めがけて駆けだす。
ほぼ同時に、初期のショックから立ち直った警備兵たちが襲い掛かって来た。大ホールはたちまのうちに大混乱に陥ったが、誰一人として出ていくものはいない。
運命はカーペット敷きの床を蹴って空中に飛翔しながら、神刀『十束乃大太刀』を抜いた。
「目を見開いてよく見ろ。これがお前たちが崇め奉る者たちの正体だ!!」
顔の前で十字に剣を構えて迎え撃ってきたソードメイデンを、壁の悪趣味な装飾とともに一刀両断する。
信徒たちの上に落ちていく天使の上半身を、ミニドラゴンの『紅』が空で咥えて振り回し、壁にぶつけた。
「ナイスアシスト、虹!」
着地した運命を狙うソードメイデンの刃を、珠が撃って弾く。
邪魔をされたソードメイデンは攻撃目標を珠に切り替えたようだ。三角跳びの要領で壁に足をつく。
「かかりましたね。『ホールド……っ! アンドスマイトッ!』」
ソードメイデンが蹴った壁の一部がとりもち状に変化して、足の裏に張りついた。跳ぼうとしていたソードメイデンは勢い余って顔面を床にしたたかに打ちつける。
すぐそばに座っていた小太りの信徒が、ぴいい、と子豚のような泣き声をあげた。
声を聞きつけて、新たなソードメイデンが天状すれすれを飛んで向かってくる。
顔を打ちつけたソードメイデンが床に手をついて立ち上がろうとしていた。
「トドメを刺してください、私が援護します」
「ありがとうございます」
珠は、足の裏の鳥もちを剣できり離そうとしているソードメイデンに駆け寄ると、ライオットシールドを頭に叩きつけて首の骨を折った。
梓は天使たちにボウガンを向けて引き金を引いた。小さな虹の破片を零しながら水の矢が飛んでいく。
矢は天使の手前で霧のごとく四散し、豪雨の壁を作った。
ソードメイデンたちが両手に構えた剣や、足の刃で流れる壁を切り崩そうと踊るようにもがく。が、次々と飲みこまれ、床に叩きつけられた。
『不用意に近づくからですよ』
無様に床の上でもがく天使たちを見て、信徒たちの表れた不安の色が次第に濃くなっていく。
こともあろうに、思わぬ苦戦に焦った『慈悲のマースリー』が、信徒たちにディアボロスを取り押さえるよう命じた。
「む、むりですマースリー様」
「無理ではありません。みなさんにはハルファス様のご加護がついています」
武尊がソードメイデンに向けてショットガンを連射しながら叫ぶ。
「何が『ハルファス様のご加護』だ。自分は悪魔の後に隠れておいて!!」
悪魔と聞いて、信徒たちの間を動揺が走り抜けた。
「そうだ、よく見てみてみろ。ハルファスを守るのは天使じゃない、悪魔だ!」
「それは違う」
ここまで沈黙を貫いてきたハルファスが口を開いた。
「彼女たちは改心し、我が子となったのだ。私を頼ってくるものは誰であろうと拒まぬ。すべて救う。それが私、ハルファスである。真の悪魔は我に仇するおまえたちであう。見よ、そのもの背を。悪魔の翼で飛び、魔弾をまき散らしているではないか!」
運命はソードメイデンの前に次々と立ちはだかり、片手を挙げて、十束乃大太刀の鋭い斬撃を繰り出した。
剣と剣がぶつかり合う鈍い音とともに、無数の火花が飛び散る。
「寝言をほざくな! なにが改心した、だ。単に攻めて来た他の区の悪魔を支配して配下においているだけだうが」
これだけ事実を暴露しても、まだ信者たちはハルファスへの信仰を捨てきれないようだ。
ディアボロスたちを捕まえようとはさすがに真似でもしないが、大ホールから逃げようともしない。このままではいずれ、『慈悲のマースリー』が配下の者に命じて信徒たちを肉の盾にするだろう。犠牲者が出る前に、ハルファスを退けなくては。
「ああ、もう!」
焦れた武尊が、ソードメイデンが放つクロススラッシュをサイドステップでかわしながら叫ぶ。
「いい加減に目を覚ませ。偽りの保護に甘んじて奴隷になるな。こいつらはいざとなったら人間なんて簡単に見捨てるぞ。闘え! 自分たちの世界を、歴史を取り戻すんだ!」
信徒たちの頭上で、ショットガンに撃たれたソードメイデンの体が砕け散った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【クリーニング】LV1が発生!
【トラップ生成】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV2が発生!
ネリリ・ラヴラン
人間自身の力を信じて欲しいのが本音だけれど、そんなに簡単にはゆかないよね。
だったら、まずはディアボロスを信じて貰えるように頑張るよ。
というわけで、サキュバスのネリリちゃんが戦ってみせるよ。
見てて、見ててっ。
直接お話するのはまだ早いけど、隠れて倒すみたいなのじゃ疑われてしまうものね。
【飛翔】で手前にいる敵さんや信者さん?飛び越えて、トループス級に挑む前にアピールしておくよ。
なんだか素早そうな子達だから、十分に距離は取っておいて
高速詠唱からの”爛れた輪舞”で寄られる前に攻撃したいね。
隙を見せないよう連続魔法ですぐに次を準備するよ。次が撃てなくても一番手なら警戒させれば十分!
アドリブと連携は歓迎だよ
吉水・翡翠
アドリブ、連携歓迎
「まずは少しずつ削りましょう。事を成すために一歩ずつ一歩ずつ」
敵の攻撃に先んじ、【パラドクス】を使用しましょう。
先んじて攻撃する事で数を減らす事をもくろみます。
その後は≪陰陽鉄扇≫で相手を叩きつけたり、斬りつけたりの接近戦を行ったり、隙を作るためにわざと攻撃間合いを外して≪陰陽弓≫で攻撃したりしてみたいですね。
接近戦を挑むうえで傷を負うのは仕方ないと思うので、多少の傷は気にせず攻撃します。
●
4人と1匹がカテドラルを守るソードメイデンたちを引きつけている間に、ネリリ・ラヴラン(★クソザコちゃーむ★・g04086)と吉水・翡翠(道求める陰陽師・g01824)は、体を低くして信徒席の間を駆ける。
ネリリは走りながら、人々の目や表情を観察した。激しいショックが人々を一種のパニック状態にしているようだ。どの顔にも強い不安が浮かんでいる。
(「人間自身の力を信じて欲しいのが本音だけれど、そんなに簡単にはゆかないよね」)
ならば魅せてやるしかない。ディアボロスが戦う様を。
首をすくめている人々を鼓舞するように。元気な声を頭の上に注ぐ。
「見てて、見ててっ」
南瓜蝙蝠の杖を一振りすれば、星の消えた夜空をコウモリの羽音が渡ってくる。
『みんなっ、行って来て!』
ネリリは目に小さな蝙蝠たちに助けられ、黒のケープをはためかせながら通路が途絶えた最前列を跳び越えた。
ハルファスを守るため、剣を構えたクヴァールがネリリの前へ進み出る。
「あは、なんだか素早そうな子達だね。近づかれたら面倒なことになりそう。だったら……こっちから行くよ!」
細くしなやかなサキュバスの指が魔楽器を奏でると、音楽と同じ律動で蝙蝠たちが縦横無尽に飛び回った。信徒たちの目は、一緒に黒のケープで渦を巻くように踊るネリリから離せない。
髪をなびかせ、腕をまわし、腰をたゆませ、また床を蹴り、ネリリの踊りは見る者全員を圧倒する。
背後からハルファスの圧を受けたハルファスが踊りに乱入した。
青白く光る左腕を極限まで膨れ上がらせて、踊り子に殴りかかる。
ネリリは体をくるりと翻すと、振りつけの一つであるかのように脚を回し振って、ハルファスの首に靴の踵を当てて倒した。
「ダメダメ。全然ダメ。ヘタクソね。そんなんじゃ、ダンスの相手はしてあげられないよ」
ネリリの挑発に、色めき立ったクヴァールたちが一斉に襲い掛かる。
最前列の後ろで気を整えていた翡翠の双眸が、静かな輝きを放つ。
「まずは少しずつ削りましょう。事を成すために一歩ずつ一歩ずつ」
右手で汲んだ刀印の切っ先を町もとに据え、静かに呼吸を整える。
「オン……」
翡翠が放った真言が空気を振るわせる。生じた振動が同心円状に広がり、翡翠を囲むようにして、ふありと風が立った。纏う直衣(のうし)の袂が風を孕む。
「ネリリさん、下がってください」
途端、祭壇の前に光の柱が噴き上がった。それは薄く、薄く、扇形に広がってつながり、巨大な天蓋のように祭壇の前に展開していたクヴァールたちを包み込んでいく。
敵を逃がさないための結界が結ばれた。
「なにをしているのです。うち破りなさい!」
焦りを含んだ声で『慈悲のマースリー』が叫ぶ。彼女とハルファス、そして近衛の2体は結界の外に逃れていたが、ディアボロスと直接戦うつもりはないようだ。
「どこまでも卑怯で矮小な者たちですね」
クヴァールたちは光剣の腕と青白く光る左腕を交互に振るって、薄く光る結界の壁を攻撃し始めた。バラバラに叩いていたのでは破れぬと観たか、行動を連携させながら1点に攻撃を集中させる。
「このままじゃあ、破られてしまいそうだよ」
翡翠がやおら手をあげて、結界の中に飛び込むというネリリを制した。
「もう少しお待ちください」
翡翠は指を汲み替えて、両手でいくつかの印を立て続けに結ぶ。
仄かな、鈴の音にも似た響きが生じた。
戦いの音が大ホールを満たす中、翡翠の清き声が一本すっと通る。
「秘密の利剣の先にかけ、鬼門の方へ祓い給へ」
結界の中に無数の式神が現れたかと思うと、ただ敵を閉じ込めるだけだった結界が、執行台へと変じた。
乱舞する式神に体中を打たれて息を詰めるクヴァールたちが、体をくの字に折りまげる。
ネリリのパラドクスによって大小のダメージを受けていたクヴァールは、閉じ込められた空間で式神の猛攻を受けて果てた。
「邪悪な力は、それを放った者に跳ね返り、自身を滅ぼすことになるのです」
背後では、武尊と梓が撃ちおとしたソードメイデンに運命と珠がトドメをさして全滅させたところだった。
「さあ、そこの悪魔たち。どうするの? お仲間はわたしたちがみーんな倒しちゃったわよ」
ファルファスの傍に最後まで寄り添っていたファルフスたちが、ネリリと翡翠を目がけて突撃してきた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】がLV2になった!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
【能力値アップ】LV1が発生!
●
残るはこのカテドラルをファルフスから預かる『慈悲のマースリー』、ファルファスを守る2体のクヴァール、そして港区を支配するファルファスのみとなった。
状況が坂を転がるように悪化したのを見て、高みの見物を決め込んでいたファルファスが動く。
「『慈悲のマースリー』よ、ここを何としても死守せよ。そして我が僕たちよ、よく聞きなさい。このカテドラルが悪魔の手に落ちれば、港区は地獄と化す。命をかけて守った者たちは、聖人として祝福し、私の横に立つことを認めよう。『慈悲のマースリー』とともに戦いなさい」
そういうと、ファルファスは翼を広げ、のっぺりとした夜空へ舞いあがっていった。
信徒たちの悲鳴が、小さくなっていくファルファスを追いかけていく。
天音・梓
(信者に向かって)逃げちゃいましたね、ハルファス
残るはマースリーとクヴァールが2体だけ、ずいぶんとすっきりと片付きました
そして……まもなく1体、そして全滅です
迷える子羊の皆さん、今は震えた子羊のように声も上げずに盲信するしかないかもしれませんが、それで本当にいいのかどうか、私が(クヴァ―ルを)掃除している間に少し考えていて下さい
◎戦闘
さて、お待たせしました
直ぐに片づけましょう
クヴァールの動きを【観察】し私が駆けて断ち切れる間合いまで入ったら【風使い】で空気の流れを操作し追い風を受けつつ加速
【光使い】で断罪の光を逸らし接近しつつ
体を捻った回転で威力を高めるように大鎌を振るって敵を断ち切りましょう
●
マースリーは傍観を決め込むことにしたようだ。
天音・梓(雨兆す・g03821)は細く息を吐いた。静かに微笑む目に、緑色の狐火のような光を灯す。
「逃げちゃいましたね、ハルファス」
怯えた顔のひとつひとつを見ながら、なにか憐れみとも慈しみとも受けとれる類の感情を込めて信徒たちに語りかける。
「迷える子羊の皆さん、今は震えた子羊のように声も上げずに盲信するしかないかもしれませんが、それで本当にいいのかどうか、私が――」
ネリリと翡翠に挑みかかるクヴァ―ルを指さす。
「あれらを掃除している間に少し考えていて下さい」
仲間たちが説得に動き始めるのを確認して、梓はイヤホンを耳に差し込んだ。携帯音楽プレーヤーの再生ボタンを押す。
「さて、お待たせしました。直ぐに片づけましょう」
流れ出したのはお気に入りの一曲、歌の一節が聞こえてくる。
梓はメロディに合わせて大きく腕を動かした。空気が流れて風となり、クヴァールたちの翼を弄ぶ。
『お先に失礼します』
一足飛びにネリリと翡翠の間を駆け抜けた。
二人の前に出るや振り降ろした天使の大鎌で、体勢を崩したまま飛んでくるクヴァールの首を狩る。
「私に任せてください。お二人は説得と避難誘導を」
息つく間もなく、残りの一体が無数の破壊光線を翼から放ちながら飛んできた。
(「曲がって!」)
破壊光線が落ちるように曲がり、焼き音を立てて分厚い絨毯に穴を穿った。すぐ後から突っ込んできたクヴァールは、後ろへ跳んでかわした。
クヴァールが壁を蹴ってターンしてきた。
心臓を狙って突きだされた剣を、天使の大鎌を回して横へ受け流したが、そのまま体当たりを食らって突き飛ばされる。
「きゃ!」
梓はすぐに立ちあがって仲間を安心させた。
「大丈夫です。説得を続けてください」
おそらくこれを倒せばマースリーが動く。避難が終わるまで倒せない。
二度、三度、と闘牛よろしく、クヴァールをギリギリまで接近させてはひらりと跳びかわす。一方で、パラドクスを放つタイミングがくるのを辛抱強く待った。
これで何度目だろう。攻撃をかわしつつホールの中を見る。
殆ど人が残っていない。あと二、三人だ。
出入口へ目を向けると、ドアの横で武尊が親指をたてていた。
「もういいよ」
こくり、と頷く。
「お遊びはここまでです」
壁を両脚で蹴ったクヴァールに向かって閃光の如く駆ける。
梓は反転して向かってきた堕天使に、天使の大鎌を振り降ろした。
大成功🔵🔵🔵
効果1【操作会得】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】がLV2になった!
ネリリ・ラヴラン
命がけで頑張って、死んでから助けて貰っても、もう遅いんじゃないのかな。
殉教者の気持ちが解らないから、わたしはそんな風に思っちゃうよ。
難しいお話じゃないと思うの。
誰だって痛い想いはしたくないし、生きていたい。それで良いと思うわ。
あの子達(マースリー達ね)は生きていく力を貰っているのかもしれないけれど、皆はまだ何も貰ってないのに、先に命を差し出せって言われたんだよ。
それって守ってくれるんじゃなくって、後払いされてるだけだわ。
だから……はいっ、注目!
これから、ネリリちゃん達が皆を守るので、崇めても良いよっ。
明るく振舞うのは、余裕をみせたいからだよ。
本当はまだ大変でも、それを見せちゃいけないよね。
支倉・珠
特級厨師程の腕前はありませんが、ストイックな生活をなさってる方には普通の家庭料理で十分でしょう
本音としてはこのホテルの食材が略奪に遭うのも勿体ないくらいの気持ちですが、飢えた人に対して匂いで責め殺すくらいの勢いで四つ星ホテルの食材で豚汁とか松茸ご飯と秋刀魚の塩焼きを作り、説得です
(料理上手な人が居る場合は補助に回ります)
■
ハルファスの守護も絶対安全というわけでもありません。現に私たち少数で蹴散らされ、貴方たちは庇護を失いつつあります。
こちらの料理をどうぞ。
貴方がたは安全の為にただ選択を変えるだけです。私達にあとはお任せください
ところでこのお高い調理器具持って帰っても…ダメ?はい…そうですね……
百鬼・運命
信者を説得しようにも、後ろから反論してくるマースリーが厄介だな
マースリーの信用を失わせて信者の説得を有利に運びたい所。さらには【友達催眠】で効果を上乗せ。
「そもそもハルファスとは悪魔の名前。そんな名前の時点でおかしいと思わないのか?」
「天使の振りをする。いかにも悪魔がやりそうな事じゃないか」
「さて、まあ奴らが天使でも悪魔でもどうでもいいことだがね?人間風情に蹂躙される存在が本当に信者を守るだけの力があると思うのか?」
「そもそも神道をはじめとした多種宗教において収穫祭が最も重要視されるように、神とは五穀を豊穣し、飢えを満たす力を持った存在だ」
「貴方たちは今、満たされているのか?」
永森・武尊
【アドリブ・連携歓迎】
いざとなったら平気で見捨てる・・
というか見捨てたよね、本当に。
順調に進んでいると思うしかない。
見送るしかないのは腹が立つけど。
ハルファスが飛び出った直後は阿鼻叫喚で説得どころではないと思うので、ショットガンを数発、人の居ない場所へ向けて発砲し強引に黙らせます。
目を覚ませって言ってるだろ。盾にされそうになったり、見捨てられたりしたのに、まだハルファスを信じるのか。全てを救うのならなぜ逃げたんだ。
信徒たちに、目の前で起こったハルファス達の裏切りを改めて突き付けて、畏怖の心を失わせようと試みます。そして、僕達も力を貸すから共に戦おう呼びかけます。歴史を取り戻し、未来に進む為に。
天音・梓
味方同士でさえパラドクス通信を使うのです
以心伝心で思いが伝わるというのは、そんなの過信ですから、言葉を尽くして信者の方々を説得しましょうか
皆さんは極限状態の時に、ハルファス達がご親切にしてくれたから全て盲信しているだけです
信者になれば安心と
ですがそれは誤審、間違いです
現実を見るのは確かに苦痛ですが、ハルファスは逃げて音信不通
親切にしてくれた理由を当ててみましょう、彼らの目的は自分たちの保身、皆さんの信仰心で自分たちを守りたいだけです
信者と書いて遠くから見てみると儲けるとなりますが、あなた達は信仰心を利用するだけされて、危なくなったからたった今ポイされたんです
それでもまだ忠誠心を見せるのですか
●
逃げた。
永森・武尊(デーモンのデジタルサマナー・g03090)は、あっという間に遠ざかっていくハルファスに、深々とため息を零した。
お前たちを守るとかなんとか。調子のいいことを言っていたくせに、いざ旗色が悪くなると信徒たちを見捨てて逃げ出す。その身勝手さに呆れるやら、腹が立つやら。
「ハルファスさまぁ」
武尊のすぐ横にいた男性が涙ぐんだ声をあげ、周りにいた信徒たちにパニックが広がった。
一方で、クヴァールたちを声援する人たちもまだ多くいる。
天音・梓(雨兆す・g03821)が凛とした声を響かせて、「よく考えてください」、とどちらに正義があるのかを問いかけたが、大多数は祈りのポーズで彫像のように固まって、その場から動こうとしない。
(「……しようがないなぁ」)
武尊は天井に向けてショットガンをぶっぱなした。
衝撃でシャンデリアが大きく揺れた。天井に開いた穴から漆喰が落ちてきて、息苦しいほどの埃が空気中に充満する。
彫像と化していた人々も、パニックになって走り回っていた人たちも、口と鼻を手で覆って咳き込んだ。
その隙をついて、支倉・珠(赤盾・g04907)は、ミニドラゴン『紅』とともに大ホールの外へ出ることにした。
仲間たちに、「ちょっと美味しいものを拵えてきます」といって調理場に向かう。信徒たちの胃袋をガッツリ掴んで、説得しようという作戦だ。
ついでに近くにいた信徒の手を引いて、パニックになっていた人々をさりげなくホールの外へ連れ出していく。
「僕もすぐ手伝いに行くよ」といって、武尊はもう一発、ショットガンで天井に穴をあけた。
「早く目を覚ませって。盾にされそうになったり、見捨てられたりしたのに、まだハルファスを信じるのか。全てを救うのならなぜ逃げたんだ」
祭壇の奥に開けた夜空から冷たい風が吹き込んできて、埃を払った。晴れた先でクヴァールたちが梓を相手に戦っているが、それを見守るハルファスはいない。
信徒たちはすがるような目をマースリーへ向ける。
「落ち着きなさい。祈るのです。貴方たちの祈りがある限り、私たちが負けるはずはありません」
どうやらマースリーは、クヴァールたちの戦いに手は出さないが、口は出すことにしたようだ。ここで人々の支持を失ってしまえば、逃げたところで先は無いと悟ったのだろう。
百鬼・運命(呪剣士・g03078)は霊験あらたかな神刀『十束乃大太刀』を一振りしてパラドクスを発動させた。
「おい、あんたたち。俺の話を聞け。そして考えろ。そもそもハルファスとは悪魔の名前。そんな名前の時点でおかしいと思わないのか?」
信徒たちは戸惑い、近くにいる者同士で顔を見合わせた。戦いの音が飛ぶ下で不安のざわめきが起こり始める。
反論するマースリーの声には焦りが滲んでいた。
「そ、そんな言いがかりに惑わされてはなりません。仮にハルファスさまと同じ名前の悪魔がいたとして、それがなんだというのです。これまで貴方たちが心安らかに暮らしてこられたのは誰のおかげか!! ハルファスさまはハルファスさまなのです!」
マースリーの下手な弁論に、運命は細く笑む。
今の発言は、運命が提示した疑惑を肯定したも同然だ。必死になればなるほど、言い訳じみて聞こえる。
この調子で押していけば、自滅するに違いない。
●
運命は神刀『十束乃大太刀』を肩に担ぎ、顎の下に手を当てた。
「なるほど、なるほど。ハルファスは天使のフリをしてみんなを騙してきた、と。いかにも悪魔がやりそうな事じゃないか。なあ、あんたたちもそう思わないか?」
「誰がそんなことをいいましたか。騙していません。天使のフリもなにもハルファスさまは――」
武尊が大声でマースリーの声を遮る。
「騙してるじゃないか! 僕たちから本当の歴史を奪っておいて、なに自分たちが作ったメチャクチャな歴史をみんなに押しつけてるんだよ。みんな、僕達も力を貸すから共に戦おう。正しい歴史を取り戻すんだ!」
「バカなことを言わないで! デタラメの大嘘です。これこそ悪魔の誘惑! 騙されてはいけません。貴方たちは祈ることはできても戦えない……だからハルファスさまを頼ってここに身を寄せてきたのではありませんか。さあ、私たちの勝利を祈るのです」
運命は口の端を歪ませた。
「よくいうぜ」
呆れを通り越してもはや腹正しい。
ドスを効かせた声で天使ぶったクロノヴェーダ―に問いただす。
「おめぇ、さっき、信徒たちに『俺たちと戦え』ってけしかけていなかったか?」
「うっ……そ、そんなことは言っていない……」
矛盾をつかれるとすぐに動揺する。この程度でよく信者が集められたものだ。それだけこのデヴィジョンに捕らわれた人々が不安を抱えているということか。
「まだ解らないようだな。ちょうどいい、あれを見ろ!」
運命が指さすところへ、首を切り落とされたクヴァールが落ちた。
絨毯に血しぶきを散らして、クヴァールの首から下がみるからに気の弱そうな女性の足元まで滑ってきた。
ひっ、と短い悲鳴をあげて昏倒した若い女性が床に頭を打つ前に、翡翠が腕を出して抱き留めた。
翡翠と一緒に前線から下がってきたネリリ・ラヴラン(★クソザコちゃーむ★・g04086)が、「ナイスキャッチ」と褒める。
ネリリはすぐに笑顔を引っ込めて体を祭壇へ向けると、マースリーにピッと人差し指を突きつけた。
「この大嘘つき。さっき言ったこと、なかったことにしようとしてもダメよ。みんなも覚えているでしょ?」
信徒の何人かが、ネリリに頷く。
「ここにいる天使や悪魔はハルファスから生きていく力を貰っているのかもしれないけれど、皆はまだ何も貰ってないのに、先に命を差し出せって言われたんだよ」
うなずく信徒が増えるにつれて、マースリーは見るからに余裕をなくしていった。体の横で、白くなるほど強く拳を握りしめ、憎々し気にネリリを睨む。
「それって守ってくれるんじゃなくって、後払いされてるだけだわ」
つき刺すようなマースリーの視線に気づかぬネリリではなかったが、お構いなしに説得を続ける。
「難しいお話じゃないと思うの。誰だって痛い想いはしたくないし、生きていたい。それで良いと思うわ」
共感の波がネリリの周りからゆっくりと広がっていく。いまや多くの目が偽天使のマースリーではなく、チャーミングなサキュバスのレジェンドウィザードに向けられていた。
「だから……はいっ、注目!」
ネリリは大ホールの隅々まで照らすような明るい笑顔で、パンッ、と手を打ちあわた。
「これから、ネリリちゃん達が皆を守るので、崇めても良いよっ」
梓も天使の大鎌を振るってクヴァールをいなしながら、信者たちに声をかける。
「皆さんは極限状態の時に、ハルファス達が親切にしてくれたから全て盲信しているだけです。信者になれば安心と。ですがそれは誤審、間違いです」
祭壇からマースリーが放つ怒りの波が寄せてきた。
ネリリはわざと無視して信徒たちに余裕を見せつける。
本当はここからが本番だ。
トループス級とアヴァタール級とでは、その実力にかなりの差がある。これまで幾度となくクロノヴェーダ―と戦ってきたが、初めからディアボロスを侮ることなく本気で挑んでくるアヴァタール級との戦闘はそうそうなかった。
笑顔の裏でネリリは気を引き締める。
マースリーは簡単には倒せないだろう。
現に、まだクヴァールと梓の戦いは続いているが、マースリーはいつでも戦えるように触れれば切れそうな冷たい闘気を全身にみなぎらせている。
運命は神刀の切っ先を向けてマースリーを牽制しながら、ところで、と信徒たちに問いかけた。
「貴方たちは今、満たされているのか?」
一触即発の緊張状態の中、どこからともなく美味しそうな匂いが漂ってきた。
「え、なになに。美味しそうな匂い……思わず口が緩んじゃう」
信徒はもちろん、ネリリまで匂いにつられて匂いが入ってくる出入口へ顔を向ける。
エプロンをつけた珠とミニドラゴン『紅』が姿を見せた。
「お待たせいたしました。隣の中ホールにご馳走をご用意しております。ここは危険です、私たちが歴史の簒奪者たちを退治している間、安全な場所でお食事をお楽しみください」
「あぎゃ」
『紅』が翼をはためかせ、美味しそうな匂いを信徒たちの鼻先へ送る。
●
時は少し巻き戻される。
珠とミニドラゴン『紅』は、一緒に大ホールを出た信徒たちの案内でホテルの調理場へ向かった。
「ありがとうございました。おかげで探す手間が省けました」
「あの……」
茶色く染めた髪を首の後ろで束ねた女性が思いつめたような目をして、調理場に入る珠を呼び止めた。
「はい、なんでしょうか」
「私たち、大丈夫ですか? こ、怖いんです。誰かに守ってもらわなきゃ、この街では生きていけないから……本当は……ハルファスさまたちが……心の底ではみんな解ってて、それでも……」
珠は涙ぐむ女性の両手を取って、握りしめた。
「あなたたちは自らハルファスに掛けられた呪いを解きました。それって、とっても勇気があることだと思います」
「え?」
「でも、まだ勇気が出せない人たちが大勢ホールに残っています。どうか、その人たちに勇気を分けてあげてください」
「そんなこと……」
「できますよ!」
どうやって、という女性に笑顔で答える。
「お腹が空いていると、笑顔も勇気もでませんよね。だから美味しいものを食べて、不条理と戦う力を取り戻してもらいましょう」
珠は、「さあ、一緒に」といいながらスイングドアを押した。
『虹』が嬉しそうに尾を振りながら、先頭きって調理場へ入っていく。
作る料理は決まっていた。
短時間で作れるが、コンビニ弁当やインスタント食品では味わえないもの……。
四つ星ホテルの食材で、豚汁、松茸ご飯、秋刀魚の塩焼きを作る。
「本音としてはこのホテルの食材が略奪に遭うのも勿体ないくらいの気持ちですが、飢えた人に対して匂いで責め殺すくらいの勢いで」
どれも家庭の料理だが、こういったもののほうが食べてほっこりするはずだ。失った故郷や家族、友だちを思い出して、再び立ちあがってくれるだろう。
「さっきも言いましたが、時間がありません。みんなで手分けして作りましょう」
そこからは大忙しだった。
途中から武尊も手伝いに加わって、みんなで出来た料理を大ホールと同じ二階にある中ホールへ運び入れた。
いざ、味覚を刺激する秋の料理の香りとともに大ホールへ。
珠は『紅』と一緒に大ホールの入口に立つと、大きくて明るい声で信徒たちに呼びかけた。
「ハルファスの守護も絶対安全というわけでもありません。現に私たち少数で蹴散らされ、貴方たちは庇護を失いつつあります。貴方がたは安全の為にただ選択を変えるだけです。私達にあとはお任せください」
一人、また一人と、匂いに連れだされていく。
マースリーは、背を向けて出口に進む信徒たちを一喝した。
「どこへいこうというのです、貴方たち! ハルファスさまに背くつもりですか」
だが、信徒たち、いや元信徒たちは足を止めない。振り返ることすらせず、大ホールから出ていく。
「戻ってきなさい。死にたいのですか!」
無駄だ、と運命は笑う。
「そもそも神道をはじめとした多種宗教において収穫祭が最も重要視されるように、神とは五穀を豊穣し、飢えを満たす力を持った存在だ。ただ一か所に閉じ込めて、ロクな物を食わせてやらなかったおめぇじゃあ、到底、引き止められないぜ」
「な……」
そこへ武尊がやってきて、クヴァールと戦う梓にトドメを促した。
梓は頷くと、鮮やかな大鎌さばきで閃光を走らせてクヴァールを仕留めた。
体の前でくるりと大鎌を返して血を振り落とす。
「さあ、のこるはマースリー、あなただけですよ」
「うるさい。黙れ、この……この……」
「この、なんでしょう。悪魔? でも、それってあなたたちの事ですよね。人の弱みにつけこんでいいように操る本当の『悪』は」
梓は大ホールに残っている人々に顔を向けた。
「現実を見るのは確かに苦痛ですが、ハルファスは逃げて音信不通。親切にしてくれた理由を当ててみましょう、彼らの目的は自分たちの保身、皆さんの信仰心で自分たちを守りたかっただけなのです。あなた達の信仰心を利用するだけ利用して、危なくなったらポイ……それでもまだ忠誠心を見せるのですか」
最後まで残っていた人たちも慌てて大ホールから出ていった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】がLV3になった!
【エアライド】LV1が発生!
【友達催眠】LV1が発生!
【温熱適応】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV3になった!
【命中アップ】LV3が発生!
【アクティベイト】LV1が発生!
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部屋で一人、冷たい弁当ばかりを食べてきた。
だからだろうか、決して凝っているわけでもなく豪華でもない料理がとびきり美味しく感じる。涙を零しながら食べている人もいた。
焼きたての秋サバの皮目に箸をそっと押し当てる。パリッという微かな音と共にホンワカと湯気が上った。
パリッとした皮とホロホロになった身を噛み締め、魚の旨味に自然と目じりが下がる。美味しい焼き魚の味が口の中に残る内に、持ちだしてきた日本酒を口にした。
「うー、たまらん!」
テーブルの反対側では、ふっくらとした甘い香りがする炊き込みご飯飯を片手に、サクサクした衣をまとう天然まいたけのシャキシャキ感を楽しむご婦人がいた。
「おいしい……おいしい……」
委縮していた心がほっこり膨らんで、忘れていた気持ちが蘇る。天使と悪魔に二分され、荒れてしまったこの街で、人として戦い、生きる気持ちが。
大ホールからでは、これまで自分たちが敬ってきた『慈悲のマースリー』と目を覚まさせてくれた若者たちが戦っている。
怖くないといえば嘘になる。
だが、自分たちのために命をかけて戦ってくれる、ディアボロスと名乗った彼らには感謝してもしつくせない。彼らに報いるために、人々は料理を食べた後もホテルに居残っていた。
大多数の腹が満たされた頃合いで、茶髪を首の後ろで束ねた女性は声をあげた。
「お腹が膨れたら、今度は私たちの番よ。美味しいデザートを作って、彼らを待ちましょう」
支倉・珠
マースリー、マイトリー。サンスクリット語で「衆生に楽を与えたい」慈しみの心…でしたっけ
ぱっと見、慈愛っぽいですが…力で畏怖させ、命運を握って選択肢を狭め、信仰を誘導する有様は慈悲とは言わないでしょう。
奴隷や従属を飼育する事を慈愛と言うほど、ここの戦争は歪んでいるのかもしれませんが
■戦闘
この身、我が盾を活かしましょう。
敵の隙を作る為、敵を挑発し、味方への攻撃を防御してサポートします。
慈悲のなんたらさんでしたっけ。溢れる慈悲で信徒の心を掴んだマースリーな支倉がお相手しましょうかとかそんな感じで。全力で相手の神経を逆撫でしましょう
ミニドラの紅さんは逃走経路の封鎖。
逃げようとしたらブレスで牽制します
天音・梓
美徳天使……いえペテン師マースリー、どうやらあなた達のメッキ屋さんの腕は悪いようです。もう化けの皮が剥がれ、追い詰められているわけですから
信仰心によって要塞を築こうとした目論見もハルファスが逃げた時点でもう終わり、正しき者(元信者)はもうあなた方の下を去りました。ソドムとゴモラではないですが、滅びるには良い日だとは思いませんか?
ボウガンから水の矢を上方に向けて何本も曲射し、マースリーを牽制します
牽制で外した水の矢同士は、【風使い】で風を操作してぶつけて融合させ、大きな水の玉を作成
水の玉をそのまま勢いよくマースリーの方へと落下させて破裂させて攻撃します
百鬼・運命
残りはマースリー。幸い迂闊すぎるようだ。カマをかけてみるかな?
「既にカテドラルはほぼ落ち、他の防衛機構も黙らせた。後は東京タワーでハルファスを墜とすだけだ」
(→東京タワーに防衛機構がないか?)
「天使とやらは悪魔の手下の立場に疑問を覚える程度もできないのか?」
(→天使と悪魔の関係性は?)
「ところで俺たちに天使と悪魔がつるんでいることがばれたと思ったようだが…俺たちは今まで天使と悪魔がつるんでいるって知らなかったのだがね?」(→冷静さを奪うための挑発)
戦闘では回避運動を中心として行い、隙を見せたら一撃を叩きこんでいくスタイルで。隔離眼で障害物を消したり出したりして翻弄していきます
絡みアドリブ歓迎
永森・武尊
天使でも悪魔でも、ちゃんと約束を守っていたら、僕らはもっと苦戦する事になってたと思う。
嘘吐きで助かったと言うべきかな。
騙された人達にとっては、迷惑な話だと思うけどね。
放たれた光には【光使い】、偽りの友愛は【呪詛】で跳ね除ける。
慈悲の美徳をとか、笑えない冗談。マースリーに足りないものだ。
飛び回られても困るので、【飛翔】して接近戦の間合いに持ち込む。
逃走を防ぐ為【トラップ生成】で網やトリモチのトラップも設置。
マースリーが逃げなくても動きを制限する役には立つと思う。
捨て石にされて損な役回りだとは思うけど、同情なんてしない。
信徒の人達にした事を考えたら可哀想とか思えない。
アドリブ・連携歓迎
ネリリ・ラヴラン
信仰を力に変えることを否定はしないよ。
わたしだって頼ってくれる想いがあるから戦うんだしね。
マースリーの攻撃に合わせて、”高速詠唱”による常闇の帳を展開するよ。
全部を防ぎきれなくても、皆への被害を抑えたいわ。そして、先に一手使わせて、隙を見つけ出すよ。
常闇の帳の反撃が開始される直前に
【トラップ作成】で真下へ動けばシャンデリアを落下させるわ。
【セルフクラフト】も移動を妨害する位置へ作りだして、避ける路を惑わすね。
一人で戦ってるわけじゃないから、大きな一撃を入れる布石を積み重ねるわ。
皆を本当に救いたくて、皆の為に傷つく覚悟があれば、
勝っていたのは、きっと君達だったんだよ。
アドリブや連携は歓迎だよ
●
「いくぜ!」
開戦の火ぶたを切ったのは、百鬼・運命(呪剣士・g03078)だった。
永森・武尊(デーモンのデジタルサマナー・g03090)や天音・梓(雨兆す・g03821)の支援を受け乍ら、自ら作りだした障害物の間を稲妻のごとき速度と不規則な軌道で走りぬけ、一気に間合いを詰める。
「まずはご挨拶だ。一発、食らいやがれ!!」
反応が遅れたマースリーの眼前で跳躍し、大きくしならせた背の後ろから演身の一撃を打ち下ろした。
マースリーは左腕を掲げて神剣を受けた。
「つっ!」
体をぐん、と沈み込ませて受けた刃の衝撃を和らげる。
電光をともなうかと思えるほどの一撃は、硬質な腕を斬り落とすことはできなかったものの、太いヒビを走らせて骨を砕いたようだ。
頭部に掛けられた天使のベールが苦痛に揺れる。
翡翠にバックアップされながら運命はマースリーの腕から神剣の刃を抜くと、反撃をあける前に跳び下がった。着地の直前、一瞬、目がマースリーの腹に吸い寄せられる。
(「――なんだ、あれは?」)
クロノヴェーダの氷のような腹膜の下に、腹底からから絶えずあがっている水泡が見えた。初めは比較的かたくて暗い色をしていた腹の水が、あれよという間に沸きたち、赤くなっていく。
「よくも『人々の祈り』の回収を邪魔してくれましたね。悔い改めなさい」
マースリーの目がかっと見開かれ、割れた腹の中から怒りのパワーを込めた追跡弾が飛び出した。
「残念でした。みんなは傷つけさせないよ」
ネリリ・ラヴラン(★クソザコちゃーむ★・g04086)が高速で呪文を唱え、すかさず敵と味方の間に常闇の帳を降ろす。
運命を追尾していたミサイルのほとんどが、帳に触れたとこで暴走し、あらぬ方向へ飛んで爆発した。
マースリーのすぐ横の壁に穴が空き、ハルファス像の太ももが砕ける。
「なんですか、これは!?」
突然、大ホールの天井を黒い光が駆けたと思ったら、いきなり夜を折り込んだような膜目の前に出現したのだから驚くのも無理はない。
「信仰を力に変えることを否定はしないよ。わたしだって頼ってくれる想いがあるから戦うんだしね」
でも、とネリリがトラップを仕掛けるために移動しながら続ける。
「求め、奪うだけじゃダメよ。自ら与えて、尽くして、初めて信仰が力になるの」
そこで初めてマースリーの目がネリリへ向けられた。
運命がマースリーから気をそらせようとして、わざとおどけた調子でマースリーに訊ねる。
「信仰といえば、だ。マースリーよ、天使とやらは悪魔の手下の立場に疑問を覚える程度もできないのか?」
たくらみは成功した。
マースリーが再び運命に顔を向ける。
「手下? 何を言うのです」
「へええ、違うっていうのか? なら、何が違うのか教えてくれよ」
マースリーが問答に気を取られているうちに、武尊たちも壁や天井のそこかしこにトラップを仕込んだ。自由に飛び回られると厄介だ。とくにトドメの時は動けないようにしておきたい。
マースリーは傲慢ともとれる笑みを浮かべた。
「そもそも……そもそもお前たち人間の区別が間違っている。正しくは、正しきものに従うものを天使、それ以外は悪魔とするべき。故に、正しき者ハルファスさまは天使。ファルファス様に従う私たちもまた、みな天使なのです!」
「なんですかその理屈。詭弁もいいところです」
パラドクス効果を使って天井すれすれに飛翔した支倉・珠(赤盾・g04907)が、大盾で体を隠しながらハンドガンの銃口をマースリーに向けた。
「大体、ハルファスが正しきものという大前提が間違っています。誰が何と言おうとも、ハルファスは悪しき存在、絶対悪です!」
珠は引き金を絞った。
弾丸は額に命中して頭を後ろへ弾いたが、パラドクスではないので致命傷にはならない。
「その認識は間違っています。ハルファスさまの『改変を受け入れ、全てをよしとするのです』」
マースリーの下腹部が光り、全方向に調伏の波動が広がった。
それは清らかなものではなく、コールタールのように光沢をもつ邪悪な波動で、波動に触れたディアボロスたちの心を蝕んだ。
ネリリはぷっくりとした艶やかな唇をかみしめて、心を痺れさせる黒い波動に抵抗する。だが、少しずつ、少しずつ、胸で燃え盛っていた復讐の炎が小さくなるのを止められない。
「これ……で、あの人たちから反抗心を奪ったのね!」
無気力に包み込まれる前に、ネリリはシャンデリアのトラップを発動させた。
背後から忍び寄っていた『虹』が、マースリーのベールを加えてシャンデリアの真下まで引っ張る。
「――な!!?」
ホールの天井高く吊るされたシャンデリアの吊り手が切れて、ガラスがこすれぶつかる大音響とともに落下した。
大急ぎで『虹』が逃げる。
鼓膜を食い破る程の音を立てながらマースリーの頭に落下してベールを破り、背中の翼を傷つけた。
「ちくしょう! なによ、なによ、なによ、なによ!!」
マースリーは突然ヒステリックに顔色を変えて荒々しく何回もどなった。
梓は冷ややかな目でそれを眺めながら、水の矢を番えたボウガンをマースリーの上へ向けた。
「美徳天使……いえペテン師マースリー、どうやらあなた達のメッキ屋さんの腕は悪いようです。もう化けの皮が剥がれ、追い詰められているわけですから」
「ふざけるな!」
マースリーの青かった目が真っ赤に充血している。言葉遣いの丁寧さをかなぐり捨て、歴史を簒奪した癒しい本性をむき出しにしたようだ。
「ガラスの雨はお気に召したようですね。では、私からも水玉をプレゼントしましょう」
梓は水の矢を連射した。
「風よ、彼の者のうえに集え!」
風を産みだして水の矢同士を束ね、巨大な水の球を作りだす。
顎をあげたマースリーの顔に、揺らめく水の影が落ちた。
「信仰心によって要塞を築こうとした目論見もハルファスが逃げた時点でもう終わり、正しき者はもうあなたの下を去りました。ソドムとゴモラではないですが、滅びるには良い日だとは思いませんか?」
ぱん、と破裂音が響くと同時に、パラドクスの力が破壊の雨となってクロノヴェーダに降り注ぐ。
下腹部の大きな刃を砕き流されて、すっかり濡れ細ったマースリーだったが、まだディアボロスたちに怒りを向ける気力が残っていたようだ。下唇を噛みしめ、二枚だけになった翼を広げて飛翔した。
追い詰められた天使が再び、黒き調伏の波動を広げる。
「貴方たちだけで何ができる? 流れに逆らわず、私たちに従いなさい」
運命は太ももを己の拳で強く打ち据えて気力を奮い立たせると、腹の底から声を放った。
「無駄じゃない! 既にカテドラルはほぼ落ち、他の防衛機構も黙らせた。後は東京タワーでハルファスを墜とすだけだ」
「バカな。嘘は大罪ですよ。私たちの元で美徳を積みなさい。そうすれば――」
その瞬間、天井に仕込まれていた珠と武尊のトラップが発動した。
驚愕に目を見開くマースリーの光環を天井のとりもちが固定する。
「こんなもので私を捕えるなど不可能!」
とりもちを外した直後、マースリーは四方飛んできた網に絡み捕られて落下した。
網の下でもがく天使に逃げられないように、何処からともなく現れた妖精たちが網の端を押さえる。
いつもなら、ここですかさず珠が大盾でぶん殴るところなのだが……。
「あぎゃ?」
『虹』が鼻先を珠へ向けて不安そうに鳴く。
珠は大盾を構えたまま動かない。
二度にわたってマースリーが放った黒き調伏の波動が、ディアボロスたちの復讐心を弱め、パラドクスの力を削いでいるのだ。
心を蝕む無気力と格闘している珠や他の仲間たちに変わり、妖刀『脚食惟定(あしばみこれさだ) 』を鞘から抜き放った武尊が進み出る。
「慈悲の美徳をとか、笑えない冗談。それ、君に一番足りないものだよ、マースリー」
「貴方は……」
武尊の目を見たマースリーが息をのむ。
「どうしてまだ怒りに捕らわれているのです?」
武尊は自分に自分で呪いをかけて黒き調伏の波動を打ち消していた。
だが、武尊はそれには触れず妖刀を構える。
「マースリー。捨て石にされて損な役回りだとは思うけど、同情なんてしない。君が信徒の人達にした事を考えたら、とても可哀想とか思えないよ」
『脚食惟定(あしばみこれさだ) 』に宿る呪いを解放する。
血と炎の匂いを帯びた熱い風が刀身から吹き出し、武尊の髪を乱した。
柄を強く握る。
ディヴィジョンとなったこの東京で虐殺された家族や友だちのことが思い出された。
武尊の体を復讐の黒い焔が包み焼く。
「返せ、返せ、返せ!! 『東京』をいや『世界』を僕たちに返せ!」
妖刀を振るうたび、重い何かが体の奥からこみ上げてくる。
『それこそが怒りの罪。捨て去るべき感情です。自らの暴走でその罪の重さを知りなさい』
呪いの刃を受けるたびに小さくなっていく体で、マースリーは全追跡弾を武尊だけに向けて飛ばした。
至近距離からの攻撃。
避ける間もなく武尊は全身にミサイルを浴びた。が、なおも野獣のごとく叫び、震える腕で刀を振りあげる。
ゆっくりと。
ゆっくりと、刀を振り上げたまま後ろへ倒れていく武尊を、珠が抱きとめた。
武尊の叫びが珠の心を奮い立たせ、無気力を追い払ったのだ。
「武尊さん、ありがとう。あとは私が引き受けます」
全ての翼を失ったマースリーは、床を這って逃げた。救いを求めるかのように、夜に燦然と輝く東京タワーへ向かって右腕を伸ばす。
武尊をカーペットに横たえたあと、珠は『虹』とともにマースリーを追った。
「そんなに東京タワーに行きたいなら、私がお手伝いしてあげましょう」
半身を起こして振り返ったマースリーに、珠は全力で振り抜いた大盾をぶつける。
「東京タワーまでと言わず、時の彼方へ吹っ飛んでください!!」
●
片づけをする必要もないのに、翡翠がシャンデリアの残骸を壁に寄せている。
よせよせ、という運命の声を聞きながら、武尊は梓とネリリに助け起こされた。
「天使でも悪魔でも、ちゃんと約束を守っていたら、僕らはもっと苦戦する事になってたと思う。嘘吐きで助かったと言うべきかな」
「そうですね」、と梓がハンカチを出して、武尊の額の血を拭きとった。
信者たちが残ったままで戦っていたら、マースリーは迷わず彼らを肉の盾として使ってきただろう。
運命は丸眼鏡についた埃をふっと吹き払った。
「そういえば、元信徒の連中はどうした? 逃げずにホテルの中に残っているのか?」
この勢いで逃げたハルファスを追い詰めて港区を解放するつもりではいるが、その間、クロノヴェーダたちがまたここを利用しようとするかもしれない。
また洗脳されてしまう前に、別の場所に移ってもらわなくては。
珠は大盾に残るマースリーの残滓を振るい落した。
「まだご飯をたべているかもしれません。中ホールを見に行きましょう」
「うーん……」
「どうしたネリリ?」
ネリリが悪趣味なファルファス像を見上げたまま言う。
「これ、壊したほうがよくない?」
「ほっとけ。悪趣味だが、それ自体はただの偶像だ。それを見た誰かが『ファルファスさま』とかいって拝みだす前に、俺たちがヤツを倒す」
「それもそうねぇ。じゃ、まずは中ホールを見にいきましょう」
大ホールを出て廊下を進み、中ホールへ。
扉を押し開いた途端、六人と一匹は人々の称賛と温かな拍手に迎えられた。
「こっちへ」
茶髪を後ろで束ねた女性が、珠の手を取ってテーブルへ連れて行く。
テーブルの上には山吹色のアイスクリームが入ったガラスの器と、栗と生クリームのクレープの皿がたくさん並べられていた。
「山吹色のやつはカボチャのアイスよ。疲れているだろうから甘いものがいいかなって。みんなで作ったの。貴方たちに感謝して」
珠と梓、ネリリがぱっと顔を輝かせる。
「ありがとう。いただきまーす!!」
さっそくスプーンを手に取る女性陣。
『虹』も珠にスプーンでカボチャアイスを食べさせてもらう。
運命は武尊の肩に腕を回した。
「さ、俺たちも遠慮なく頂こうぜ、武尊」
「もちろん食べるよ。あ、僕はクレープを!」
戦いで尖ったディアボロスたちの心と体が、甘く蕩けていく。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【トラップ生成】がLV2になった!
【フライトドローン】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
【セルフクラフト】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV5になった!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!