リプレイ
フルルズン・イスルーン
内紛と粛清の種ねぇ。
まあなくはないだろうけども、ラスプーチンの信用のラインを引き下げる方法が見つかるまでは鼻で笑われるくらいかな?
さて、まずは防衛ライン突破だ。ダンジョン・ゴーレム。
トーチカとは、銃眼などの間口が外に開いた立てこもり用簡易拠点である。
ではそれに【迷宮化】を施すとどうなるのだろう?
多少外からやっても中の構造の複雑化が効くのか。間口が開いてても複雑化で閉塞されるのか。
本来は立てこもりの為の時間稼ぎ用残留効果は、拠点防衛のアンチ戦法に転用できるのか。
まあわかんないよね。ならやってみようね!
混乱させて距離を詰められるんなら御の字。
ダメでも迷宮案内用ゴーレムくんがトーチカ内部に湧いてポコポコと暴れてくれる……といいね!
あんまり強くないからねぇ。
でも防衛固めてるのに正面から攻略なんてボクやりたくないもーん。
如何に意識の外から横っ腹を突っつくか腐心してやるのだ。
(「内紛と粛清の種ねぇ」)
フルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)は、その可能性に思いを巡らせて――冷ややかに笑った。
(「まあ、無くはないだろうけども。ラスプーチンに対する信用を引き下げる方法が見つかるまでは、鼻で笑われるくらいかな?」)
ラスプーチンの企みは、このエカテリンブルクでアルタン・ウルクを相手に戦ってきた精鋭部隊からすれば、手酷い裏切りであり、状況次第で荒れること自体は想定できる範囲だ。
けれど現時点ではラスプーチンに目立った瑕疵がなく、こちらの話を信じる理由はないというのが、フルルズンの見解だった。
(「さて、それも防衛ラインを突破した後の話だ」)
フルルズンはトーチカに目を向けた。敵が詰めているトーチカをどうにかしなければ、足止めを食らうばかりである。
ここでフルルズンには、ひとつ疑問があった。防衛拠点であるトーチカに、【迷宮化】を施すとどうなるのか? 外からやっても、中の構造の複雑化が効くのか否か。
「まあ、わからないよね。なら、やってみようね! ダンジョン・ゴーレム」
早速、フルルズンはゴーレムを錬成するパラドクスを発動させる。
……そして、フルルズンの疑問はあっさり解消した。【迷宮化】の効果は、あくまで敵の探索や突破に必要な時間を倍加させるものであり、それ以外の効果はない。つまり敵の防衛拠点に使用しても、意味はない。
現われた超巨大なゴーレムは内部に敵を取り込む代わりに、錬成された部位である重たげな腕を振り上げてトーチカを殴りつける。
「敵の襲撃だ! 総員、すみやかに反撃を開始せよ」
ロマノフ白軍精鋭兵たちの反応は早かった。銃眼にとりついた敵兵たちが、赤い弾丸を腕だけのゴーレムに向かって間断なく叩き込んでいく。
ゴーレムは登場こそド派手だったが、長くは持ちそうにない。
フルルズンが狙った搦め手からの攻略は、上手くいかないままに終わりそうだ。
(「でも防衛固めてるのに正面から攻略なんて、ボクやりたくないもーん」)
だが、フルルズンは諦めることなく次の策を練るだろう。
(「如何に意識の外から横っ腹を突っつくか、そこに腐心してやるのだ」)
それが彼女の信念なのだから。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【迷宮化】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
レイラ・イグラーナ
吸血ロマノフ王朝の対アルタン・ウルクの精鋭軍となると、彼らの本来の上役として考えられるのはシベリアにいるであろう彼でしょうか。
彼との関係悪化は避けたいところですが……ここは通らせて頂きます。
トーチカは銃はもちろん、上から飛来する矢や擲弾にも強い設備です。
壊れないことを前提に作られた設備ですし、そうそう破壊できるものではないでしょう。
しかし敵もこちらを狙うために開口部を必要としている、そこを狙います。
小さな開口部からでも薄暗い中が良く見えるように【完全視界】を発動させます。
敵がトーチカ内部からこちらを狙うために開口部から銃を突き出してきたところを狙い【手製奉仕・嵐】。血の弾丸で狙われるよりも先に、針の嵐を見舞いましょう。
複数のトーチカから同時に狙ってきそうですし、それらに対応するため複数体を同時に攻撃するパラドクスを使用。
敵が一時体勢を整えるために引っ込んだならこちらも戦場を駆けて立ち位置を変更。敵が私に狙いをつけるまでの時間を長くし、開口部から姿を見せたところを先んじて攻撃できるように。
イオナ・ガルバローゼ
ロマノフでのトーチカ攻略は久しぶりです。
前と状況が違いますがトーチカにはセオリーがあります。
トーチカは互いの死角を補い合うように配置され、近づく敵へ十字砲火を浴びせるよう銃眼などの間口が開いて居ます
逆に言うと強固な防御の代償に一個一個には広い死角があるので
一度懐に入れば敵は狭い場所で火器の取り回しに困り
一つ制圧できればカバーしきれない死角は広がります
問題は完全な警戒態勢の中どう死角へ飛び込むか
密かに忍び寄るか一機に接近するかですが
一度身を潜めてから
【アイスクラフト】で作り出した立方体を二つ重ねて敵の注意を引き付け
その隙に十字砲火を抜けます
実体はただの氷の塊ですが
1辺が3mの「氷の立方体」の存在感は
強く警戒している今こそ「ただの虚仮威し」か数舜でも判断に迷うかも
少なくともソレに気を散らす事はできるでしょう
あるいは破壊する気があればその隙を突くチャンスもあるかもしれません
距離を置いて三つ配置、敵の注意を引いて居る隙にトーチカの死角まで一番短い距離を全力で駆け抜けトーチカ内部へ攻めます
(「吸血ロマノフ王朝の対アルタン・ウルクの精鋭軍となると、彼らの本来の上役として考えられるのはシベリアにいるであろう彼でしょうか」)
レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)が思い浮かべているのは、白い髭を蓄えたジェネラル級の姿だろうか。対アルタン・ウルクの前線で戦っているのなら、なんらかの関係性があると想定するのは自然だ。
(「彼との関係悪化は避けたいところですが……」)
できるなら僅かな可能性でも排除したいが、エカテリンブルクにいるというラスプーチンの企みを放置しておくわけにもいかない。
(「ここは通らせていただきます」)
懸念事項を認識しつつ、レイラは防衛ラインの攻略に取り掛かる。
「ロマノフでのトーチカ攻略は久しぶりです」
イオナ・ガルバローゼ(空染めの一輪・g07485)は、平原で堅牢な姿を見せるトーチカの数々を見渡しながら呟いた。
「前と状況は違いますが、トーチカ攻略のセオリーはそう変わるものではないでしょう」
「ええ、以下に頑強な防衛拠点といえども、無敵ではありません」
イオナの言葉に、レイラが頷いた。
攻略に当たっての問題は大きく2点だと、2人は整理する。
ひとつは、トーチカ同士の連携だ。トーチカは互いの死角を補い合うように配置され、トーチカに取り付こうとする間に別のトーチカから攻撃されることを避けられない。
もうひとつは、トーチカ自身の防御力だ。ひたすら頑強に、壊れないことを前提として作られた設備は、そうそう破壊できるものではない。
「トーチカ同士の連携について逆説的に言えば、強固な防御の代償として、単体のトーチカでは広い死角が存在するということです」
前者については、イオナがさらに分析を加えていく。
「一つを制圧できれば、カバーしきれない死角が広がります。次はより楽に死角へ潜り込めるでしょう。……問題は最初の一つの死角へどう潜り込むかです」
続く言葉を口にする前に、己の考えを再検討した。大丈夫、いけるはずだ。
「――厳重な警戒態勢の中、秘かに忍び寄るか、一息に接近するか。わたくしは敵の目を引く囮を仕立て、一息に接近することを提案いたします」
「距離を詰めたあとは、いかにトーチカを攻略するかですね」
後者の問題は、レイラが引き取った。
「トーチカは銃はもちろん、上から飛来する矢や擲弾にも強い設備です。ですが敵も攻撃を行う以上、開口部は必ず存在します。シンプルにその1点を狙うのが良いかと」
互いの想定と行動を確認し合い、2人はトーチカに向き合った。
あとは、実践あるのみである。
2人は1度身を隠してから、慎重にトーチカとの距離を詰めた。
これ以上進めば発見されるリスクが大幅に高まる――、そんなギリギリの距離まで前進したところからが本格的な作戦の開始だ。そして作戦を1度開始したならば、完遂するまで駆け抜けなければならない。
イオナは目配せを送った。レイラが頷くのを見てから、【アイスクラフト】の力で氷塊を生み出す。
3mの立方体を二つ重ね、6mの高さにもなるその氷塊の出現は、いかにも突然だった。
「なんだ、あの怪しい物体は! ただの氷のようではあるが……」
「あれを連ね、目の前に簡易的な陣を作るつもりかもしれん」
ロマノフ白軍精鋭兵たちがざわめき出す。
だが、イオナは壁として使うつもりで氷塊を生み出したわけではない。あくまで、敵の目を引く囮としてだけの期待だ。
だから氷塊を生んだ直後には、既に平原を走り出していた。精鋭兵が戸惑っている間に、できるだけ距離を詰めなければならない。
「……放置しておくわけにもいくまい。攻撃して、破壊せよ」
精鋭兵たちは銃眼から銃口を突き出した。数多くの弾丸が、体勢を低く保ったまま駆けるイオナの頭上を越えて飛び、氷塊に炸裂していく。
「――銃を構える御姿、丸見えでございますよ」
その瞬間こそが、レイラが狙っていたものだった。薄暗い銃眼の奥に姿を隠していようが、【完全視界】は彼らの姿をはっきりと捉えている。
レイラは平原の草むらから飛び出して、翻ったスカートの下から取り出した銀の針を両手の指で挟み持ち、一斉に投げ放った。狭い銃眼の中に数多の針が飛び込んで、トーチカに潜む精鋭兵たちを刺し貫く。
その間に、イオナもトーチカの壁に取り付いていた。壁伝いに進み、砲撃用に比較的広く取られた窓から、トーチカ内部へ乗り込む。
「――っ! 敵兵侵入!」
「もう手遅れです」
ひとつひとつのトーチカの内部に潜む精鋭兵の数は少ない。イオナは氷で覆われた刃で、レイラの銀の針が突き刺さった敵兵を斬り払い、内部を掃討した。
「さあ、次は――」
イオナはトーチカからすぐに飛び出して、新たなトーチカへと向かう。
平原では、レイラが戦場を駆けて敵の攻撃を引きつけながら、反撃を加えている姿が見えた。けれど、トーチカの1つが落ちた敵からの攻撃は、明らかに緩んでいる。
この分なら、すべてのトーチカを遠からず落とせるだろう――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【完全視界】LV1が発生!
【アイスクラフト】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
「ペダチェンコ様、トーチカが抜かれたようです!」
「なんですと、応援を出す間もなくやられてしまったというのですか。ですが、エカテリンブルクに向かわせる訳には参りません。どんな手を使ってでも、ここで食い止めなければ」
皇帝官房第三部による報告を受け、切り裂き卿ペダチェンコが顔色を変えた。
まさか、こうもあっさり防衛ラインが抜かれるとは考えていなかったのだ。
「アルタン・ウルクを引き入れるなど、あまりにも卑劣。個人を謀殺するのとは、訳が違うのですよ……!」
だが、有利な防衛ラインを失おうとも、彼らの戦意は衰えない。
攻め寄せてくるディアボロスを撃退するべく、戦闘準備を始めるのだった。
アスナ・シュヴェーゲリン
――おかしいと思いませんか?
妾達は多くのジェネラル級吸血貴族を謀殺し、主要都市制圧まで行っている……これらは手前味噌ながら戦略眼が優れている証でしょう
その上で……アルタン・ウルクを引き入れる事に関しては『妾達にとっては愚策』なのです
地理的にモスクワ等の西部の都市とエカテリンブルグの間……ここでエカテリンブルグからアルタン・ウルクを引き入れれば、吸血貴族とアルタン・ウルクの挟撃状態になってしまいます
地図を見て戦略を構想すればある程度は誰にでも察せられる事……其れが出来ない相手に劣勢になる程、吸血王朝は脆弱なのですか――違いますよね?
一方で『挟撃作戦』……『あえてエカテリンブルグからアルタン・ウルクを引き入れ、西部の主要都市等からディアボロスを挟み撃ちにする』作戦で行った場合、妥当性はグッと上がると思いません?
――そう、引き入れたのは……ラスプーチンですよ
戦略的合理性を考えれば、そちらの方がしっくりときませんか?
妾達をアルタン・ウルクにぶつければ、被害も抑えられるでしょうからね
イオナ・ガルバローゼ
こちらの敵はラスプーチンと違い復讐者がどういう方針か解っていません
自分達を一クロノヴェーダ勢力として
動機まで解りやすい話をしないといけないでしょうね
これまで貴方達は復讐者が何時も先回り出来た事が不思議だった事でしょう
それは私達はラスプーチンと手を組み政敵を蹴落とす為の情報を得て居たからです
モスクワが陥落しようという所で彼は掌を返し
アルタン・ウルクで用済みとなった我々復讐者諸共
自分の策謀を有耶無耶にしようとしています
アルタン・ウルクこそ全ディヴィジョンにおける不倶戴天の敵
ロマノフと敵対する我々であってもあんな無法ものを呼び寄せる事は許せません
それを利用しロマノフを思いのままにしようとするラスプーチンも同じです
私達はどうやってアルタン・ウルクを解き放つ事が出来るのか何も知らない
しかしラスプーチンは知って居る筈です
東の強固な防衛をすり抜ける事もできる
ソレが出来るのはラスプーチンだけなのです
彼を売れとまでは言いません。
しかし彼の行動を見れば真意は自ずと掴む事が出来るでしょう。
突破した防衛ラインを抜けて、エカテリンブルク側へ足を踏み入れる。
その先でイオナ・ガルバローゼ(空染めの一輪・g07485)たちは、皇帝官房第三部を引き連れた、切り裂き卿ペダチェンコと遭遇した。
防衛ラインを抜かれたことを知って、ペダチェンコが急遽引いた警戒線に引っかかったようだ。
彼らはディアボロスが侵入を成功させる前に捕捉できて、ひとまず安心しているかもしれない。だが、ディアボロスにしてみれば、ペダチェンコたちと遭遇することが目的を果たすための第一歩だ。その上でクロノヴェーダたちに情報を持ち帰らせなければならない。
(「彼らはラスプーチンと違い、復讐者がどういう方針か理解していません。私たちがひとつのクロノヴェーダであるかのように、彼らに理解しやすい動機で話さないといけないでしょうね」)
イオナは話す内容を考えつつ、ペダチェンコに呼びかける。
「まずは私たちの話を聞いてもらえませんか?」
「……おや、攻め寄せておいて、突然何を言いだすかと思えば。まあいい、言ってみたまえ」
ペダチェンコは怪訝な表情を浮かべている。かなり強く警戒している様子でもある。
「これまであなた達は、復讐者がいつも先回りできたことが不思議だったことでしょう。それは、私たちがラスプーチンと手を組み、政敵を蹴落とすための情報を得ていたからです」
そんな彼に対して、イオナはまず、ディアボロスとラスプーチンの関係性から話を切り出した。
「モスクワが陥落するというところで彼は手のひらを返し、アルタン・ウルクで用済みとなった我々復讐者諸共、自分の策謀を有耶無耶にしようとしているのです」
淡々と話し続けながら、ペダチェンコの様子を窺うが、彼はとくに相槌を打つでもなく黙って聞いている。本当に聞かせたいのは皇帝官房第三部だが、彼女たちもどう考えているのか、いまひとつ掴めない。
どうにもやりにくい――。
「アルタン・ウルクこそ、全ディヴィジョンにおける不倶戴天の敵。吸血ロマノフ王朝と敵対する我々であっても、あんな無法者を呼び寄せることは許せません。アルタン・ウルクを利用し、ロマノフを思いのままにしようとするラスプーチンも同じです」
「ほう、ラスプーチン様がアルタン・ウルクを利用しようとしていると」
ペダチェンコの反応に「ええ」と頷いて、イオナはさらに言葉を重ねた。
「私たちは、どうやったらアルタン・ウルクを招き入れることが出来るのか、何も知らない。しかし、ラスプーチンは知っているはずです。東の強固な防衛をすり抜けることもできる。それが出来るのは、ラスプーチンだけなのです。彼を売れとまでは言いません。しかし、彼の行動を見れば真意を自ずと掴むことが出来るでしょう」
「……ふむ。それで、そちらのお嬢さんも何か言いたいことがあるようだが?」
ペダチェンコはイオナに対して応答するまえに、アスナ・シュヴェーゲリン(藍血魔女・g07162)へ話を振ってきた。アスナは一礼してから口を開く。
「――おかしいとは思いませんか? 妾たちは多くのジェネラル級ヴァンパイアノーブルを謀殺し、主要都市の制圧まで行っている。これらは、手前味噌ながら妾たちの戦略眼が優れている証でしょう」
アスナは高飛車な物言いで話を始めてみたが――、やはりペダチェンコたちからは肯定的、否定的、いずれの反応もない。
「その上で、アルタン・ウルクを引き入れるなど、『妾たちにとっては愚策』なのです。地理的にはモスクワなどの西部都市と、エカテリンブルクの間……。ここでエカテリンブルクからアルタン・ウルクを引き入れれば、ヴァンパイアノーブルとアルタン・ウルクから挟撃を受ける状態になってしまいます。地図を見て戦略を構想すれば、ある程度は誰にでも察せられること……。それが出来ない相手に劣勢になるほど、吸血ロマノフ王朝は脆弱なのですか。――違いますよね?」
だが、相手の反応がどうだろうと、話を続けるしかない。アスナは予定通り、ディアボロス側には利がないことを筋道立てて説明していく。
「一方で『挟撃作戦』として、あえてエカテリンブルグからアルタン・ウルクを引き入れ、西部の主要都市等からディアボロスを挟み撃ちにする作戦が仮にあったとするならば、ずっと妥当な戦略だとは思いません?」
アスナは、やや語気を強めた。ここが彼らに言い含めたい核心の部分だ。
「――そう、引き入れたのは……ラスプーチンですよ。戦略的合理性を考えれば、そちらのほうがしっくりきませんか? 妾たちをアルタン・ウルクにぶつければ、被害を抑えられるでしょうからね」
話を終えて、じっとペダチェンコの顔を見る。
ペダチェンコは2人の話をゆっくりと反芻しているかのうように、何度か深く頷いて口を開いた――。
「……なるほど。つまり、君たちにアルタン・ウルクを招き入れる意図はなく、全てはラスプーチン様の企みというわけか」
うつむいた彼の表情は、帽子の庇に隠れてよく見えない。
だが、次第に大きくなる低い笑い声が聞こえてくる……。
「ククッ、クックック……。攻撃を加えておいて御高説を垂れるとは、我らとはずいぶん礼儀作法の次元が異なるようだ」
そう言ってディアボロスたちを見るペダチェンコの顔に浮かんでいるものは、嘲笑だった。
「よろしい、特別に君たちを指導して差し上げましょう。こういう時は、武器を捨て、白旗を上げて跪き、許しを請うてから口を開くものですよ。そこまでして、初めて耳を貸そうかという気になるというもの」
ペダチェンコはつらつらと皮肉を並べ立て、最後に……、
「――痴れ者どもが。恥を知りたまえ」
そう一言でディアボロスたちの話を切り捨てたのだった。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【スーパーGPS】LV1が発生!
【寒冷適応】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【命中アップ】LV1が発生!
ペダチェンコは馬鹿にされたと感じたか、明らかに不機嫌な様子だ。皇帝官房第三部は冷静な表情で、ペダチェンコの周囲を固めている。
いずれにせよ、ディアボロスの言葉は欠片たりとも信じられておらず、胡乱なことを並べ立てていたと思われているだけだろう。ただ今回の目的は、ディアボロスが何を言っていたかが伝わることである。クロノヴェーダが退却したならば、『ディアボロスが、アルタン・ウルクの件はラスプーチンの企みだと言っていた』という情報は確実に届くはずだ。
ならば、あとは眼前の切り裂き卿ペダチェンコを倒すだけである。
イオナ・ガルバローゼ
秘密警察の代理人、アレクサンダー・ペダチェンコとお見受けしました。
貴方の言い分はごもっとも。
敵の言葉に「そうか」と頷く間抜けは居ない。
しかし、ロマノフの未来を想うならば今ここで気づいても良かったとわたくしは思うだけです。
(言葉にはしませんが、私もこのディヴィジョンに産まれた以上
こんな過酷な世界であっても故郷
それをあんな異形に踏み荒らされるのは嫌だと思うのは本心です――)
警告はしました。ならば宿敵ラスプーチンへの道、押し通ります。
【先行率アップ】でなるべく誰より早く行動しペダチェンコへ接敵
【能力値アップ】で自己強化し、発動率は低いですが【命中アップ】を使います
敵は医師、自分の急所や防御の癖を狙って突いて来るでしょう
でも敵の得物と腕の射程、狙われる箇所と隙が出来るタイミングは分って居ます
【反撃アップ】で反撃を試みます
攻撃を受けても【グロリアス】で身を癒しつつしぶとく食い下がりましょう。
レイラ・イグラーナ
全く言葉を発することすら許さないのではなく、少なくとも貴女たちは耳には入れた。記憶にも留まったことでしょう。
ならばそれで結構です。
その時が来た時、貴女たちが七曜の戦での彼の奮戦を無駄にせぬことを祈ります。
とはいえ……私たちもラスプーチンの元に向かう必要はある。
退かぬなら、貴方は討たせて頂きます。
策を成就させるには護衛を残したまま戦い勝つ必要がございます。
他の復讐者がペダチェンコを攻撃する際には護衛からの攻撃で妨害されないように周りを牽制、1対1の状況を作り上げるようにしましょう。
私の攻撃は【手製奉仕・巧】を用い銀の針で行います。
他の復讐者と入れ替わるようにして中距離から銀の針を投擲しながら接近。接近できたなら銀の針での刺突でペダチェンコを貫き、敵が攻撃からの離脱を行おうとする際には銀の針を投擲して追撃を。
反撃の死角からの襲撃はこちらも暗殺者としての戦闘知識から攻撃の来る方向を予測し、急所を避けることで致命傷を負わないように。
私たちとて、戦争の手段は選ぶのですよ。
フルルズン・イスルーン
不信感バリバリな感じの反応なのだ。
ま、この手のは冷静に考えられるのを排除したら通る。
頭を回せる人材のなんと貴重なことか。海の荒くれ基準だけどね。
では、聳え立つ氷山となれ。グレイシャー・ゴーレム。
スマートな戦術を駆使する相手と見た。ならばゴーレムくんは盾を構えてどっしりと行こう。
氷の盾と氷の剣。古い時代の戦い方と侮ることなかれ。愚直に距離を詰めて切り込み事こそは古来から変わらぬ戦の基本である。
前衛の兵卒無くして奇策無し。相手の動きを観察するのも隙をつくのも、硬い守りがあってこそさ。
そして、それは単なる壁でなく鋭い剣を持った脅威でもある。
キミは氷山の如き堅牢さを持っているのかな? そうであるなら避ける必要もないよね。
さあ、いろんな手段でゴーレムくんの剣から逃れようとするが良い。
手札を晒し切り底が見えたならば、それがキミの最後さ。
頭の良さそうな相手は追い詰めて追い詰めて余裕をなくす事。
数が居るのはそれだけで優位なのだ。
(「不信感バリバリな感じの反応なのだ」)
切り裂き卿ペダチェンコの頑なな言葉を聞いて、フルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)は独り言ち、
(「ま、この手のは冷静に考えられる奴を排除したら通る。頭を回せる人材のなんと貴重なことか。海の荒くれ基準だけどね」)
ペダチェンコ、そして皇帝官房第三部の面々を順番に眺めて内心で笑った。
そもそもラスプーチンが具体的な行動に出ていない今、彼らが上層部に対し疑念を持つ動機がないのだ。少なくとも、この場でディアボロス側の言い分が通ることはないだろう。
それは彼らに言葉を投げつけた、イオナ・ガルバローゼ(空染めの一輪・g07485)にもわかっていたことだ。
「秘密警察の代理人、アレクサンダー・ペダチェンコとお見受けしました。貴方の言い分はごもっとも。敵の言葉に『そうか』と頷く間抜けは居ない」
ペダチェンコの言葉を首肯しつつも、
「しかし、ロマノフの未来を想うならば、今ここで気づいても良かったとわたくしは思うだけです」
一抹の心残りがイオナの言葉の端に滲む。
この吸血ロマノフ王朝に生を受けた以上、それが如何に過酷な世界であっても故郷であることに変わりはない。あんな異形どもに故郷が踏み荒らされるなんて、嫌だ――。その想いを言葉にしたとして、ペダチェンコは歯牙にもかけないだろう。それでも、これがイオナの偽らざる本心だ。
「そのような言葉で我らを惑わそうとしても――」
ペダチェンコはなおも反発しようとするが、レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)は、もはや言葉を交わす必要はないのだと手をかざして制した。
「貴方は私たちに言葉を発することを許し、少なくとも貴女たちの耳には入った。記憶にも留まったことでしょう。ならば、それで結構です。その時が来た時、七曜の戦での彼の奮戦を、貴女たちが無駄にせぬよう祈ります」
そして、銀の針を手に告げる。
「とはいえ……、私たちもラスプーチンの元に向かう必要がある。退かぬなら、貴方を討たせて頂きます」
貴方と貴女たち。その微妙なニュアンスには、れっきとした意味がある。ただ、現時点では伝わるまい。いつか、今日伝えた言葉が意味を持つ日に、思い起こされるかどうかといったところだろう。
「はい、すでに警告はしました。聞かぬのならば、宿敵ラスプーチンへの道、押し通ります」
イオナもまた抜いた刃を両の手に構えた。
対立はしながらも言葉が交わされていた場に、急速に戦場の空気が吹き込まれていく――。
「話は済んだね? では、聳え立つ氷山となれ。グレイシャー・ゴーレム」
そんな空気の変化を、フルルズンが起動したゴーレム召喚のパラドクスが決定づけた。
呼び出された永久凍土のゴーレムが、手にする分厚い盾を押し出しながら前進し、握りしめた氷の剣を振り下ろす!
「ペダチェンコ様、お下がりください」
皇帝官房第三部はリーダーをゴーレムの攻撃から庇おうと動くが、
「貴女たちに邪魔はさせません」
レイラが銀の針を投擲し彼女たちを牽制、その間にゴーレムの刃はペダチェンコへと迫った。
「魔力の霧よ、広がれ」
ペダチェンコは周囲を魔力の霧で覆い、己の姿を隠しながら反撃に出ようと試みる。
だが刃は迷いなく、まっすぐに霧中に潜む彼へと振り下ろされた。
「愚直に距離を詰めて、単純に斬り込む。これこそ古来から変わらぬ戦の基本だ。トリックの限りを尽くそうが、ゴーレムくんは止まらないぞ」
広がる濃密な魔力の中でも、フルルズンによって制御されたゴーレムは全ての攻撃を受け止めて、流麗ながら重い一撃を叩き込む。まさしく、頼りがいのある前衛としての振る舞いだ。
皇帝官房第三部はペダチェンコの周囲を固めようとするが、レイラが要所要所で入れる牽制の一撃のせいもあって、思うように行動できていない。ディアボロス側としても牽制などするより、倒してしまったほうが面倒がないのは間違いないのだが。
(「策を成就させるには、護衛を残したままペダチェンコを討つ必要がございます」)
それでは、せっかく彼女たちに言葉を聞かせた意味がない。だからレイラは丁寧に彼女たちの面倒を見て、仲間の攻撃がペダチェンコへ確実に届くよう状況を整える。それはさながら裏方として屋敷を切り盛りするかのように。
イオナは足並みが乱れている皇帝官房第三部の間を抜けて、ペダチェンコとの間合いを詰めた。
「――来たまえ」
ペダチェンコの手の中には、銀色の刃が光る。とても戦闘向きには見えない男だが、医師であり、切り裂きジャックの正体とも言われる人物だ。その名を名乗るクロノヴェーダならば、的確に自分の隙をついてくるはず。
(「ですが、その優秀さを逆手に取りましょう」)
イオナはあえて手札の中で一番オーソドックスな構えを取った。酸いも甘いもよく知る鍛錬を重ねた構えで、知り尽くした己の隙に誘導するのだ。
思い描いた軌道で、鋭いメスが伸びてくる。イオナは稲妻を纏わせた刃を振るって、メスの先端を斬り飛ばした。そして流れるままに逆の手に握った刃で、斬撃を浴びせる。
「くっ……!」
ペダチェンコのしかめ顔を横目に後退し、前進するフルルズンのゴーレムの陰へ。
「さあ、次はゴーレムくんの番だ。ゴーレムくんの剣を逃れる新しい手はあるかな? 手札を晒し切り、底が見えたならば、それがキミの最期さ」
身を固めて敵の攻撃に備え、シンプルな斬撃で追い詰める。派手さはなくとも本質を突き詰めた一撃が、ペダチェンコの身を削っていく。
「なるほど、防御線を易々と抜けてくるだけのことはあるということか」
しかし、ペダチェンコもしぶとい。
「だが、エカテリンブルクに近づけるわけには行かぬ……!」
この地の守備に従事してきた誇りがそうさせるのか、決定的な一撃を許さず、反撃の機を窺っている。
――今こそが、決め時だ。
そうレイラは直感する。もはや、皇帝官房第三部を牽制する必要はない。
レイラは、これまで全体の把握に割いていた意識を全てペダチェンコに集中させ、放てるだけの針を投擲した。そして敵が針に気を取られている間に、一息に距離を詰める。
「手練れの暗殺者だと」
驚いた顔を見せつつも、ペダチェンコは近付くレイラから離脱する動きを見せた。死角に身を隠し、反撃に転じようというのだろう。
その意図は読める。叩き込まれた暗殺者としての技術が、次の動きを手に取るように教えてくれる。先読みした位置へ針を投げ放ち、敵の選択肢を狭めて、一歩、さらに一歩と距離を詰めた。
そしてついに至近から突き刺された銀の針が、ペダチェンコの急所を貫く。
「私たちとて、戦争の手段は選ぶのですよ」
「――今となっては、それが真だと期待するしかないな」
レイラの囁きで、皮肉気に顔を歪めたペダチェンコが散っていく。
周囲に散らばる皇帝官房第三部たちは悔しげな表情を浮かべつつも、統制の取れた動きで即座に撤退していった。
こうしてディアボロスたちは、エカテリンブルクの敵戦力に疑念の種を一欠片、埋め込むことに成功した。
この作戦がすべて成功した暁には、疑念が花開くだろう。そしてそのトリガーは、おそらくラスプーチン自身が引くことになるはずだ――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【通信障害】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
【アイスクラフト】がLV2になった!
効果2【グロリアス】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!