リプレイ
ジェームズ・クロサワ
他所の連中を招き入れて代理戦争させようとは、随分やる気のある連中だな。
勿論ディアボロスも策を講じることはあるだろうが……まあ、向こうが使おうとするならこっちも使わせてもらうだけだ。
さて、仕事するか……。露払いくらいなら俺にも出来るだろう。
警備ご苦労。
仕事熱心なところ申し訳ないが、ちょっとどいてもらおうか。
本場の吸血鬼は飛べるのか、ふーん。
しかし、そんなに振り被ったんじゃ見切られやすいんじゃないか。
状況にもよるが、観察して、一発避けて、相手の隙を見てからパラドクスでこっちも一発叩き込む。
ここは手加減してやる必要もないんだろう。
どんなことをしても勝ちたい、生き残りたいのはお互い同じ。
そういうことだろ、戦争ってのは。
※連携・アドリブ歓迎
●高き嶺
「あれが、エカテリンブルクの防衛ラインだな」
その奥にいるヴァンパイアノーブル達の瞳は、間違い無く此方を捉えていた。それでいて、まだ動き出しはしない姿にジェームズ・クロサワ(遺薫・g10136)は一つ息を吐く。
(「バリケードに、トーチカは無しだな。あの感じ奥にもあるだろうな」)
警察官時代に見た派手なバリケードとは随分と違うが、相手の動きは似ている。
(「ラスプーチンの策、か。他所の連中を招き入れて代理戦争させようとは、随分やる気のある連中だな」)
勿論ディアボロスも策を講じることはあるだろうが……、とそこまで考えたところで顔を上げる。
「まあ、向こうが使おうとするならこっちも使わせてもらうだけだ」
呟いて緩く拳を握る。
「さて、仕事するか……。露払いくらいなら俺にも出来るだろう」
だからまず——先を取る。相手を動かす。
「——来たか、ディアボロスよ」
「警備ご苦労」
ひゅん、と向けられたハルバードに、ジェームズは軽く肩を竦めるようにしてそう言った。
「仕事熱心なところ申し訳ないが、ちょっとどいてもらおうか」
告げる一歩と共に前に——出る。た、と大きく。身を傾けるようにして踏み込みを加速させれば、は、と黄金騎士達が嗤った。
「踏み込んでくるか、ディアボロス!」
「陣形を保て! ここで討ち取る!」
高らかに告げた黄金騎士がバリケードを飛び越えてきた。だん、と荒く入れられた着地に雪が散り——次の瞬間、騎士は空へと飛び上がった。
「——」
ジェームズの頬に影が落ちる。跳躍ではないあれは——飛行だ。
「本場の吸血鬼は飛べるのか、ふーん」
ヴァンパイアノーブルの作り出した影の下で、吸血鬼は笑う。真上に掲げられたハルバードが風を切る音を響かせた。ごう、と斧槍は唸り——来た。
「黄金の一閃を!」
振り下ろす一撃と共に刃が来た。落下の勢いを間合への踏み込みに変え、重い一撃がジェームズを襲った。
「しかし、そんなに振り被ったんじゃ見切られやすいんじゃないか」
ゴォオ、と唸る風音と共に来た一撃にジェームズは地面を蹴った。た、と右に身を振り、だが躱しきれなかった衝撃が腕に届く。ザン、と抉るように来た一撃が腕を赤く染め——だが、それだけだ。
「は、その腕、落としたと思ったが」
「ここに置いてくつもりは無いからな」
お前相手に、と言の葉をひとつ、添える。滲む痛みを置いて、血濡れの刃を持ち直す。身を跳ばした先、つけた片足を軸とするようにジェームズは——踏み込んだ。
「ここは手加減してやる必要もないんだろう」
叩きつける。その強い意思と共にジェームズは刃を振るった。一気に落とす刃は黄金騎士の一撃に似て——違う。思念を込めた一撃が、ギン、と黄金騎士のハルバードとぶつかり——だが、押しこんだのはジェームズの方だった。
「っく、ぁああッ」
ザン、と深く刃が黄金騎士の体に沈んだ。鮮血が鎧を染める。
「ディアボロス風情が、我らエカテリンブルクの部隊を舐めるなよ!」
ぐらり、と身を揺らした黄金騎士が再び大地を蹴り上がった。だん、と地を蹴る音は重く、掲げたハルバードを振り下ろす勢いと共に一気に——来た。
「散れ!」
「——」
その姿を視界に——変わらず見上げて見せた吸血鬼は——その身を得た男は、静かに落とす息と共に軽く、身を引いた。
「言っただろう。見切られやすいんじゃないか、と」
「——!」
先の一撃よりも小さな回避。ただ、身を逸らしただけで正面、振り下ろされた一撃を躱しきった男は拳を握る。
「持ってけ」
「くそ、が、ぁあ!」
叩きつけた拳に、黄金騎士が吹き飛ぶ。一撃に騎士が光の中に飲み込まれればバリケードの内側にいる残りの黄金騎士達がざわめき出した。
「どんなことをしても勝ちたい、生き残りたいのはお互い同じ」
そのざわめきを前にジェームズは冷えた瞳で告げた。
「そういうことだろ、戦争ってのは」
さぁ、全員どいてもらおう。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
亜威仙・迦昏
(トレインチケット)
●利刃
穿つ拳と共に黄金騎士が吹き飛んだ。砕かれた核と共に光の中に飲み込まれるように消えればバリケードの向こうにいる黄金騎士達がざわめき出す。
「ディアボロスめ、よくも……」
低く唸るような声があった。戦場にあってひどく目立つその声は苛立ちを隠すことなど無い。
「……」
そうも目立ってみせる騎士達にひとつ、息だけを落として亜威仙・迦昏(王の獣・g09662)は、顔を上げる。
「——この場を制し」
静かな声がざわめきを沈める。一歩、踏み込んだ青年は——次の一歩の足音を殺し、身を前に跳ばす。
「沈めよ」
入れた踏み込みと共に眼前のバリケードを飛び越える。棘を蹴って、大地に片足をつけた瞬間——迦昏の身が、揺れた。
「残像か!」
「ッチ、貴様、右か!」
「——」
告げる言葉と共に黄金騎士の動きが一拍遅れた。振るうハルバードが切り裂いたのは残像であり霞となってきえた黒の後ろ、振り抜かれた斧槍を踏むようにして迦昏は騎士の影を踏む。
——ヒュン、と暗殺ナイフは流れるように黄金騎士の——ヴァンパイアノーブルの首を掻き切った。
「っくぁあ……ッ貴様!」
「敵を前に随分と饒舌ですね」
静かに迦昏は告げる。淡々としたそれは、己の『嘗て』がそうさせるのか。血溜まりも、むせ返るほどの血の臭いも——横暴に支配者を気取る者達の声も迦昏は知っている。
「その程度のことで、我が揺らぐこともない」
黄金騎士は笑う。しとどに流した血を拭うことなく、ただ一度、息を吐き——来た。
「ロマノフの支配者が誰であるのか教えてやろう!」
咆吼と共に黄金色の稲妻が、騎士の握るハルバードに宿った。だん、と荒く響いた踏み込みと同時に薙ぐように刃が来る。
「——散れ!」
「——」
薙ぎ払いと共に稲光が放たれた。ゴォオオ、と響く衝撃に迦昏は身を跳ばす。跳躍と共に身を逸らし、肩口、抉るように来た一撃に僅かに眉を寄せる。
「避けたか。この一撃で、まだ生きているとはな」
「……生きて……」
痛みは熱と共にあった。焼けるような感覚は迦昏に危険を伝えるが——だがそれだけだ。致命を避けたのは分かっている。流れた血もあるが、ここで膝を折るようなものじゃない。ただ、ひどく疼くのだ。裡にある記憶が。
(「私は何故生きている? いや死んだのか? 王は……何処へ」)
何度問うても答えの出なかった記憶。深い喪失感と共に——それでも、ここで倒れる気は無いと嘗ての暗部に刃を握らせた。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
レイラ・イグラーナ
アルタン・ウルクの引き入れは今後を考えればとりたい策ではなかったはず。
それでも実行したということは……私たちへの対策を行わなければ先などない。少なくともラスプーチンはそう考えているということでしょう。
ここから先も、あらゆる手を彼は使ってくる。一刻の猶予もございません。ここを抜け……ラスプーチンと決着を付けましょう。
万全の迎撃準備を整えている相手の元へと踏み込むのですから、漫然と進んでは集中攻撃を受けることになるでしょう。
他の復讐者と同時に攻撃し、一人の負担が増えないように。
指揮棒のように銀の針を振るい【天上奉仕・熱狂】。バリケードに隠れていようと響く革命の楽曲の重圧で黄金騎士団たちを押しつぶします。
他の復讐者と標的を合わせて、まずは一点突破で敵の陣形を崩すことを狙います。正面か、右か、左か……短時間で陣形の攻める箇所を見極めましょう。
崩せたら敵を撃破することで傷を癒す【グロリアス】を利用し、そこから再度攻め立てます。
そう易々と、終わりを受け入れないからこそ私たちは「復讐者」なのですよ。
●揺籃を揺らす手
薙ぎ払う刃の一撃が、重く響いた。一体、また一体とバリケードを飛び出してきた黄金騎士達が倒れていった。
「陣形を崩すな! 吸血ロマノフ王朝こそこの大地の支配者だ。彼奴等の動きに引き摺られるな!」
「ディアボロスの策を我々が砕くのだ!」
「……」
ヴァンパイアノーブル達の声が荒々しく響いていた。隠すことの無い敵意に、レイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)は瞳を細める。黄金騎士達が己が正当性を告げるのは『ディアボロスがアルタン・ウルクを招き入れようとしている』という情報によるものだろう。
ジェネラル級の言葉であれば、彼らも疑う余地は無く——だがラスプーチンとて、アルタン・ウルクの引き入れは今後を考えればとりたい策ではなかったはずだ。
(「それでも実行したということは……私たちへの対策を行わなければ先などない。少なくともラスプーチンはそう考えているということでしょう」)
ここから先も、あらゆる手を彼は使ってくる。
呟くように一つ、そう言ってレイラは地を蹴る仲間の姿を見る。機を見る。待つのではなく、戦場そのものの流れをレイラは読む。
「一刻の猶予もございません。ここを抜け……ラスプーチンと決着を付けましょう」
「——あぁ」
「そうですね」
前に出た数体は、仲間が相手をしてくれている。ならばこちらは——守りそのものを、崩す。
「……」
あのバリケード自体を。それが『防衛ライン』として存在為うる事実をなくす。
「参りましょう」
静かにレイラがそう告げると共に、仲間の二人も前に出た。派手な踏み込みはジェームズが、素速く地面を蹴った迦昏の動きは暗殺のそれだ。二つの違う動きに合わせ、ただ一歩を入れたレイラは手の中に落とした銀の針を指揮棒のように振るった。
「ハ、貴様、戦場で立ち止まるなど……!」
「——歌う血煙、奏でる雑踏」
戦場を駆け回り、バリケードすら飛び越えることができるだろう娘はこの時立ち止まることを選んだ。ほっそりとした白い指先が銀の針を指揮棒のように持ち、たん、と踵で拍子を刻む。
「割れた刃が眼下に迫る」
ひゅん、と空を切った銀の針は、だがレイラの指先に収まったまま——次の瞬間、旋律が戦場に響き渡った。
「な——!?」
「これは、この音楽は
……!?」
それは、革命の意志を伝える熱を帯びた迫力ある楽曲。重く、力強く——旋律は響き渡った。
「は、この音楽で何、を……な、体、が」
「なぜ、力が入らない……!? まさか、これは、貴様、我らの精神に干渉を……!」
「いかがでしょうか?」
静かにレイラは問う。万全の迎撃準備を整えている相手に踏み込むのでは無く、その内側を直接精神から砕く。革命の楽曲の重圧は、バリケードでは防ぎきれはしない。
「っく、ぁあ……ッ」
「意識が、音楽が頭に響いて……!」
ぐらり、とバリケードの裏で黄金騎士達が揺らぐ。傾ぐように身を揺らした瞬間、その一点をレイラは告げた。
「右です」
一点突破。陣の崩れを見極めたレイラの声に仲間の踏み込みが重なる。剣戟の音が重なり、轟音と共に黄金騎士のハルバードが落ちた。
「ぐ、ぁああ!」
「くそ、陣形が……!」
保て、と響く声と共に黄金騎士がハルバードを掲げた。瞬間、轟音と共に稲妻が武器に宿る。射るような視線は、瓦礫を飛び越えたレイラへと向いていた。
「貴様、この音楽止めてもらうぞ!」
「……」
荒い踏み込みが耳に届いた。一気に距離を詰めてくる相手に、レイラは小さく唇を開く。
「グロリアス」
短く紡いだのは癒やしの術。駆け抜ける為に選んだ祝福の形。今は小さく息だけを落としてレイラは大地を蹴った。
「轟雷の波を!」
踏み込みと同じような、大きな薙ぎ払いだった。ごう、と唸り声を上げ、波のように来た雷撃がレイラの脚を襲う。痛みと共に鈍い痺れのような感覚があった。
「——ですが、止まりはしません」
たん、と足を下ろす。ぱたぱたと落ちる血はあれど、体は動き致命には遠い。迷い無くレイラは次の旋律を戦場へと招いた。
「この音楽は、なんだ……ッ」
「この、旋律は、熱は……」
響き渡る旋律が革命を告げることを黄金騎士達が気がつけることもないままに、剣戟とその旋律に押し潰されるようにして防衛ラインは崩れていく。
「そう易々と、終わりを受け入れないからこそ私たちは「復讐者」なのですよ」
最後の旋律が響く。ぐらり、と黄金騎士が崩れ落ちれば防衛ラインの突破を告げていた。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【避難勧告】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!
●マスターより
ご参加頂きありがとうございます。
秋月諒です。
導入を追加致しますので、暫くお待ちください。
●disengage the safety
「——ほう、ディアボロスが防衛ラインを突破したか」
予想より、低い声がエカテリンブルクの大地響いていた。一歩、二歩と進められた歩は防衛ラインのあった一角をその瞳に収めたところで止まる。
「予想より早かったね。バリケードは?」
「——……バリケードの損傷自体は大したことは無いようです。内側で崩された者も多かったと」
「ほう、内側からか。確かにバリケードの中にいる連中の頭を弄られれば壁も意味が無い」
外と中で倒れた者がいるのであれば、と告げる声は僅かに笑うようでもあった。靴先が雪に沈むのを気にする様子など無いままにヴァンパイアノーブルは告げた。
「攻め方を分けたようだね。黄金騎士の連中には、荷が重かったかもしれないが……これからアルタン・ウルクを招こうとする奴らが使う手にしては妙とみるべきか、ディアボロスならばやるだろうと思うべきか……」
考えるように一度、瞳を伏せたヴァンパイアノーブル——セルゲイ・イワノビッチ・モシンは、やがてゆるりと笑みを浮かべた。
「興味深いね」
「——大佐」
窘めるように響いた血影猟兵の声に、口の端を上げるようにして笑みを見せるに終えたセルゲイは、小銃を手に取り荒れた大地の向こうに銃口を向ける。
「私が出よう。この目で確かめるんだよ、ディアボロスというものを。この吸血ロマノフ王朝に、アルタン・ウルクを使おうなんて連中をね」
どれだけ大層なことを考えて、蹂躙しようと思ったのか。
「危険因子たるディアボロスの強度が、どれ程なのか楽しみだよ、それにどれだけ耐えるのかも」
何を考えて——未だ、私達に跪かずにいるのか。
---------------------
マスターより
ご参加頂きありがとうございます。
秋月諒です。
選択肢①ラスプーチンへの疑いを植え付ける を想定しています。詳細は、選択肢エリアもご確認ください。
*①ラスプーチンへの疑いを植え付ける をクリアした上で、護衛のトループス級選択肢をクリアせずにシナリオを完結させれば、トループス級は情報を持ち帰ったことになります。
●リプレイについて
アヴァタール級セルゲイ・イワノビッチ・モシンと護衛の血影猟兵達と出会ったところからスタート。
●プレイングについて
1〜2日置いてプレイング採用となります。先着順ではありません。
また、必要人数をぐわっと大きく越えた採用は無いので、そんな感じです。
*技能は、パラドクスを越えた効果は発揮しません。
*必要技能は被っても各自持っていった方が安全な場合もあるよーという感じです。
それでは皆様、御武運を。
レイラ・イグラーナ
なぜ跪かないかと問われれば、理由は一つ。
人民のためです。
人民に自由を、暮らしを、希望を、未来を。
ただ私にあるのはそれだけ。そのためにただ成すべきことを成しているのみです。
アルタン・ウルクを招くことはそれに繋がらない。
そうですね、仰る通りかと思います。
普通に考えれば、私たちはそれを止める側であり、仮にアルタン・ウルクの侵入を許せば吸血ロマノフ王朝への攻撃の手を緩めてでも、そちらへ対処せざるを得ないでしょう。
お分かりになりませんか?
「アルタン・ウルクを招こうとしたのは私たちではない」。そう申し上げております。
貴女たちはアルタン・ウルクのための兵力なのでしょう。
であれば、それを対私たちへの戦力として利用するためにラスプーチンはそのような嘘をついたのでしょう。
では、どうしてラスプーチンは冬将軍らも連れず、一人で、嘘をついてまでやってきたのか。
まるでラスプーチン自身がここに用事があったみたいではありませんか。
例えば、エカテリンブルクの防備を破壊し、アルタン・ウルクを呼び込むとか。
●撃鉄を起こす
「何を考えて——未だ、私達に跪かずにいるのか」
「なぜ跪かないかと問われれば、理由は一つ」
凜と、響く声が応えとなった。
冷えたロマノフの風が大地を浚う。巻き上がる砂埃など無く——ただ、淡く残った雪だけが娘の視界を舞った。
「人民のためです」
その薄雪の向こう、赤いレイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)の瞳が真っ直ぐにこの戦場を指揮する者を見据えていた。
「……」
空の手に虚空より一丁の銃を取りだしてみせた存在——セルゲイ・イワノビッチ・モシンは、こちらの姿を認めると驚いた様子もなく、ただ笑ってみせた。
「探しに行く手間が省けたようだね。それで? 人民の為だって?」
緩く首を傾ぐセルゲイは口許に笑みを浮かべど、その瞳には圧があった。押さえ付けるような——それでいて、試すような威圧にレイラは一歩、足を進める。
「人民に自由を、暮らしを、希望を、未来を。
ただ私にあるのはそれだけ。そのためにただ成すべきことを成しているのみです」
真っ直ぐに向けた視線の先、セルゲイは小さく笑った。
「アルタン・ウルクを招き込もうって言うのに、人民のためとは」
口の端を上げるようにしてセルゲイは笑う。どこか演技めいた露悪は、レイラの言葉を図っているのか、ディアボロスへの興味心か。射るように向けられた視線に、レイラは真っ直ぐに瞳を返した。
「そうですね、仰る通りかと思います」
肯定を、ひとつ添えて。
「貴様……ディアボロス!」
「——待て」
苛立ちを露わにした血影猟兵を片手で止めると、セルゲイは静かに言った。
「興味深いね。続けて」
「普通に考えれば、私たちはそれを止める側であり、仮にアルタン・ウルクの侵入を許せば吸血ロマノフ王朝への攻撃の手を緩めてでも、そちらへ対処せざるを得ないでしょう」
レイラの言葉に、セルゲイは僅かに眉を上げる。考えるように一瞬、動いた瞳に「お分かりになりませんか?」とレイラは告げた。
「「アルタン・ウルクを招こうとしたのは私たちではない」そう申し上げております」
「——ほう」
血影猟兵達が殺意を滾らせる中、セルゲイだけが薄く笑っていた。
「君がディアボロスである以上、私がその言い分を信じる理由は無いが……随分と自信があるようだね」
ディアボロス、と重ねて響いた言葉と共に殺意が来る。ゆっくりと持ち上げられた銃口に、視線を逸らすこと無く、次の言葉の為に息を吸った。
「貴女たちはアルタン・ウルクのための兵力なのでしょう。
であれば、それを対私たちへの戦力として利用するためにラスプーチンはそのような嘘をついたのでしょう」
「——ラスプーチンが嘘をついたと」
その名に、セルゲイは初めて顔色を変えた。晒すつもりなど無かった変化に息を吐く。
「奴が知らせてきたことを知っているようだね」
その言葉にレイラは瞳だけを返す。ラスプーチンは『知らせに来た』のだ。その事実が共通となった今、この言葉は意味を成す。
「では、どうしてラスプーチンは冬将軍らも連れず、一人で、嘘をついてまでやってきたのか。
まるでラスプーチン自身がここに用事があったみたいではありませんか」
「——」
「例えば、エカテリンブルクの防備を破壊し、アルタン・ウルクを呼び込むとか」
レイラの言葉に、血影猟兵達がざわめき出す。かれらにとってみれば信じがたい事実であり——だが、押し黙ったひとり、アヴァタール級セルゲイ・イワノビッチ・モシンにとってはあり得ないことでも無いようだった。
「興味深い話だね」
一言、そう告げたセルゲイの瞳には一つの可能性——ジェネラル級による虚偽の情報、ラスプーチンへの疑いが芽吹いていた。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【冷気の支配者】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
●余塵の在処
危機を知らせてきたのはジェネラル級・ラスプーチンであった。
ディアボロスが、吸血ロマノフ王朝にアルタン・ウルクを呼び寄せようとしている、と。故に部隊は動き、防衛線を引き——……。
「今に至るか。君の言い分が事実であれば興味深い話だね。私も、確認したくなってきたが……」
は、とセルゲイ・イワノビッチ・モシンは顔を上げる。ラスプーチンへの疑いが、優秀な狩人たる血影猟兵に広がり——そして、セルゲイの中にもあった。
「先に、君たちを片付けてからだね。放っておくには、寝覚めが悪い」
それに、とセルゲイは薄く笑う。
「さっきは随分と話してくれただろう? 良く喋る小鳥も嫌いじゃないんだよ。
傷みの中で話されるのも嫌いじゃないが、効率が悪いんだよ。その身で、自ら差し出してくれ」
セルゲイは言った。ディアボロスという存在への興味心を隠すこと無く。
「我らが吸血ロマノフ王朝の為に」
可愛い小鳥であれば、一撃で仕留めよう、と。
---------------------------------------
マスターより
ご参加頂きありがとうございます。
秋月諒です。
選択肢④アヴァタール級との決戦『セルゲイ・イワノビッチ・モシン』を想定しています。
*①ラスプーチンへの疑いを植え付ける をクリアした上で、護衛のトループス級選択肢をクリアせずにシナリオを完結させれば、トループス級は情報を持ち帰ったことになります。
●リプレイについて
アヴァタール級セルゲイ・イワノビッチ・モシンと戦闘に入ったところから。
●プレイングについて
1〜2日置いてプレイング採用となります。先着順ではありません。
また、必要人数をぐわっと大きく越えた採用は無いので、そんな感じです。
*技能は、パラドクスを越えた効果は発揮しません。
*必要技能は被っても各自持っていった方が安全な場合もあるよーという感じです。
それでは皆様、御武運を。
ソラス・マルファス
兄貴(g00862)と
ロマノフを外敵から守るって意味じゃ、こいつらは俺たちにとってもありがたい存在なんだがな。ラスプーチンのやつ、目論見が上手くいって俺たちを排除できたとして、その後はどうするつもりなのかねぇ。
考えても仕方ねぇ。気は進まんが、邪魔をするなら排除させてもらおうか。大剣に風を纏い、正面から切りかかるぜ。同時に雪を巻き上げて、多少なりと敵の視界を妨害しよう。反撃の銃弾は可能な限り大剣の腹で受け止めるぜ。
ラウム・マルファス
ソラ(g00968)と
アルタンが攻めてくる可能性が少しでもある以上、防衛部隊の戦力は、あまり減らしたくないんだけどネ。まぁ、ジェネラルの命には逆らえないカ。クロノヴェーダとしてという以上に、軍人としてなのカナ。
味方と連携。太極扇を開いて鳳凰の絵に凍気を通し、黒い鳳凰を飛ばして敵を氷漬けにするヨ。同時に敵の動きや視線を観察し、反撃が何処から来るかを予測、可能な限り回避しよウ。
●守護者
最初に感じたのは火薬に匂いだった。ゆっくりと手にした小銃の撃鉄を上げてみせるセルゲイ・イワノビッチ・モシンの姿に、ソラス・マルファス(呪詛大剣・g00968)は眉を寄せる。警戒するように大剣を握る手に力を込めた。相手は、もうやる気だ。
「ロマノフを外敵から守るって意味じゃ、こいつらは俺たちにとってもありがたい存在なんだがな」
小さく落とした声はセルゲイの耳にも届いたか。ふ、と息を落とすようにして笑ったセルゲイの足元から鮮血が沸き立つ。
「それは興味深い話だね。どうやらディアボロスにも我らの戦力を評価されているようだよ」
君達、と低くセルゲイが告げたのはこちらが、セルゲイ・イワノビッチ・モシンに狙いを定めたのを理解しているからだろう。その先——血影猟兵をどうしようとしているのか、までは勘づいてはいないのか。
「アルタンが攻めてくる可能性が少しでもある以上、防衛部隊の戦力は、あまり減らしたくないんだけどネ」
ラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)はそう言いながら、ゆるり、と前を向く。軽く一歩、足を進めた姿にソラスが眉を寄せれば、兄は軽く肩を竦めた。
「まぁ、ジェネラルの命には逆らえないカ。クロノヴェーダとしてという以上に、軍人としてなのカナ」
「——さて、どうだろうね。少なくとも、こちらの事情を君たちに話す理由も無いだろう」
笑うようにセルゲイが告げる。軽く肩を竦めて見せたのは、セルゲイ・イワノビッチ・モシンであるが故か。
「それに、ラスプーチンに関わる真実がどうであれ——君たちを自由にさせる理由も無いんだよ」
何せ君たちはディアボロスだよ。
「興味深い対象を、返す訳にはいかない」
「——」
来る、とソラスは思った。足を擦るように身を前に出す。低く構えた大剣を強く握れば、へぇ、と興味深そうにセルゲイが笑みを見せる。
「反応は良いようだね」
「そうかい」
兄貴、とソラスは短く呼ぶ。振り返ることなく上げた声は、ただそれだけで意図を告げるものだ。
「聞こえてるヨ」
笑うように応えたラウムが風を招く。パン、と響いたのは太極扇か。背中越しに感じる冷気に託し、迷うことなくソラスは前に出た。
「来るようだね」
「やる気はそっちだよな?」
言いながら二歩目を大きく入れた。鋒を下げたまま、その重ささえ勢いに変えるように三歩目を入れる。相手はエカテリンブルクの部隊。アルタン・ウルクを相手にする為に存在している戦力だ。容易い相手ではない。
(「ラスプーチンのやつ、目論見が上手くいって俺たちを排除できたとして、その後はどうするつもりなのかねぇ」)
考えても仕方ねぇ、と息を吐く。舌の上に溶かして飲み干すには向かぬ言葉を響かせて、ソラスは大剣を振り上げた。
「気は進まんが、邪魔をするなら排除させてもらおうか」
それは呪詛の大剣。
悪魔への殺意に誘う剣は、今はただソラスの手の中で純粋な力となる。
「風纏い、旋風!」
振り上げる勢いと共に風が舞った。ヒュウ、と鋭く響く風音と共に大剣を中心に巻き起こされた旋風がセルゲイに向かった。
「——ほう、鋭いね」
それは巻き上がる風か。或いは踏み込んだ天使の刃にか。轟音を招く風と共に大地に残されていた雪が舞った。視界を塞ぐには足らないが、その一拍がセルゲイの守りをずらした。
「やるようだね」
鮮血が、舞う。零れ落ちた赤さえ掠うように旋風がヴァンパイア・ノーブルの肌を引き裂いた。ばたばたと落ちる血が足元に溜まり——次の瞬間、ふつふつと沸いた。
「ソラ」
「——」
警告はラウムから響いた。反射的にソラスは身を後に跳ばす。その反応に、セルゲイは笑った。
「良い警戒だよ。——弾幕用意」
告げる言葉と共に、沸き上がった血が召喚の要となる。セルゲイの背後、大量に召喚された小銃が一斉にソラスに向かって放たれた。
「撃て」
「——ッと」
ガウン、ガン、と鈍い音を立てながら銃弾が大剣にぶつかる。衝撃が痺れるように腕に伝わり——鈍い痛みが肩に、足に走った。撃ち抜かれる痛みは——だが、致命を避けた証だ。ぱたぱたと零れ落ちる赤に、は、と息を吐いてソラスは顔を上げる。銃弾は頬を掠め、同時によく通る声が背後から響いた。
「そこまでだヨ」
広がるのは悪魔の翼。熱せられた空気さえ払うように振るわれた扇が招くは冷気。ロマノフを覆う冷たい空気とは違う——凍気だ。
「押し留め、切り開ク」
召喚は何も敵だけの力では無い。一差し、舞うに似て違う姿は太極扇が見せるのか、或いは先を見んとするラウムの瞳が成す技か。姿を見せた黒い鳳凰は、その身を構成する凍気と共に舞いあがった。
「鳳凰の舞」
ピィイイ、と甲高く風が啼く。羽ばたきと共に凍気が舞った。
「——ッチ、ただの鳥なら撃ち落とせば良いと思ったが」
鳳凰は、舞うようにセルゲイの周りを飛んだ。凍てつく空気に、ソラスを狙うようにあった小銃が凍り付いて飲まれていく。
「やるようだね」
「そうかナ?」
射るような視線にラウムはそう言って笑った。セルゲイの背後、鮮血より生み出された小銃は凍てつかせた。セルゲイ自身も無傷では無い。凍り付いた指先に軽く息を吐き——だが、それだけで済ませた相手にラウムは警戒するように見据えた。指の数本、動かなくなった程度で撃ってこない相手では無い。
(「それなラ……死角から来る。問題は何処からか、だけド……」)
敵の動きを見る。指先一つ、視線ひとつ。緩く足が動いたその瞬間、ふ、と笑う相手にラウムは身を横に跳ばした。
「上だネ」
「ハ、悪く無い反応だよ」
ガウン、と銃声が響くのと、ラウムが身を跳ばしたのは同時であった。浅く腕を掠っていった一撃に、は、と息を吐く。
「頭から顔まで狙うなんて、ひどいネ」
流石に頭に目はついていないが、死角をついてこようとするのであれば自ずと場所は絞れる。軽く流れた血に笑うようにして、ラウムは太極扇を持ち直せば傍らにソラスが立つ。大丈夫かとは問わずに、ただ傍らにいる姿にふ、と笑うようにしてラウムは言った。
「さア、続きと行こうカ」
「——あぁ」
この先を——この大地の先に、辿り着く為に。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
●witchcraft
銃声と共に薄く雪が舞った。雨のように降りそそぐ弾丸が地面を撃ち抜き——その硝煙に、ぴん、と少女は狼の耳を立てる。
「見つかったみたいですねー」
「ハ、歓迎は派手にやる方でね」
薄雪が散る。銃弾が齎したか視界が煙る。だが、その向こうに立つ者の気配を少女が見逃すことは無かった。
「——!」
魔女の箒を手に、たん、と地面を蹴る。ふわりと先に浮いた箒に腰掛けるようにして魔女は空に飛び上がった。
「尻尾が焦げたらどうするんですかー!」
「魔女がその程度で焦げ付いたりはしないだろう?」
笑うように告げた相手——セルゲイ・イワノビッチ・モシンに少女は頬を膨らませた。
「ちょびっとだって焦げるんですよー!」
空に行った少女はパチン、と指を鳴らす。虚空より手に落ちた本は、少女が触れるより先にぱらぱらとページを捲り出す。手にするは魔女であればこそ、紫の瞳は一節を辿り煌めきと共に力を——招く。
「私の番ですよー!」
テレーズ・リヴィエール(正義の魔女っこ・g10159)は、つい、と魔女の帽子をあげて、雪の舞う空に魔方陣を描き上げた。
「空に響け」
魔女は謳う。異なる大地に力を招く。涼やかに響く魔術の音を聞く。
「——これは」
空が輝く。星々の瞬きに似た光に、セルゲイは顔を上げた。警戒と驚きを見せた相手にテレーズは空より告げた。
「どかーんと行きますねー! ウィッチスターダスト!」
それは正しき魔術。
テレーズが森の奥深くで代々継いで来た力の姿。降りそそぐ魔力の雨がセルゲイを貫いた。
「——ッハ、やる、ようだね」
唇から鮮血が零れる。ぐらり揺れた身を支え、セルゲイは顔を上げた。
「甘く見ない方が良さそうだね。魔女」
指先まで染めた赤を、セルゲイが空に舞わす。その赤に、パチ、とテレーズは瞬き——次の瞬間、ぞわり、と嫌が気がした。
「……!」
「——あぁ、魔女を撃ち抜く」
ガウンと響く銃声と共に背中に衝撃が走った。肩口、貫くようにきた銃弾に傾いだ体を箒に抱きつくようにして支えきる。
「今度こそ尻尾を狙ってるじゃないですかー!」
正しくは肩を狙われはしたのだが。死角に召喚された小銃は暗殺の為の術だろう。ぱふん、と膨れた尻尾をゆらり、と揺らしながらテレーズは顔を上げる。真っ直ぐにセルゲイを見据えた。
「次は、私の番ですよー!」
びしっと指差しひとつ、キィン、と集まる魔力と共に正義の魔女っこはそう言った。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【アイスクラフト】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】がLV2になった!
レイラ・イグラーナ
退いて頂ければそれが最も早かったのですが、致し方ありませんか。
私としては「その時」が来た時に吸血ロマノフ王朝をアルタン・ウルクに蚕食されないためにも、貴女たちにここに居てもらうのも手ではあるのですが。
吸血ロマノフ王朝の為ならば、貴女が「その時」が来ることをそもそも受け入れられないのも道理。
ならば……お覚悟を。
燃焼の呪詛を込めた針を両手に戦闘を行います。
序盤は中距離から距離とタイミングを伺いながら戦闘。
【既成奉仕・炎】の針の投擲により、セルゲイ・イワノビッチ・モシンを貫き、燃焼の呪詛で燃やしましょう。
一定の距離を保つことで回避の余裕を作り、敵が弾丸を撃ってから避けることで躱しきることはできずとも大きな傷を負わないようにしつつ、アヴァタール級へと注意を払いすぎて、残る護衛への注意が疎かになることのないように。
敵の計算された精密射撃のタイミングを読めたら弾丸を避けながら素早く踏み込み接近。敵の胸に針を突き立て、焼き尽くしましょう。
私の言葉、彼女の迷い……貴方がたも覚えて帰ることです。
●革命家のワルツ
戦場に硝煙の匂いがしていた。血と熱、薄くあった雪は散り、足跡ばかりが残る。
「本当に、ディアボロスという存在は興味深いよ。何がそこまで君たちを突き進ませるのか」
それはセルゲイが「疑問」を抱いたからか。興味を告げた相手にレイラ・イグラーナ(メイドの針仕事・g07156)はひっそりと息をついた。
「退いて頂ければそれが最も早かったのですが、致し方ありませんか」
言の葉を躱すだけの時は終わった。真紅の瞳で真っ直ぐに前を見る。
「私としては「その時」が来た時に吸血ロマノフ王朝をアルタン・ウルクに蚕食されないためにも、貴女たちにここに居てもらうのも手ではあるのですが」
距離は詰めない。ただ、真っ直ぐに迷うこと無く相手を見る。
「吸血ロマノフ王朝の為ならば、貴女が「その時」が来ることをそもそも受け入れられないのも道理」
「——」
セルゲイの瞳が瞬く。ほんの一瞬、目を瞠ったヴァンパイアは「そうか」と笑うように言の葉を零した。
「私は君という存在を見誤っていたようだよ」
セルゲイは銃口を下げたまま笑った。
「此処で終わるのが惜しいが……、私は私として、セルゲイとしての全てで君と相対するよ」
血溜まりに立つヴァンパイアは、その鮮血さえ利用するように小銃に弾丸を込めた。
「このモシン・ナガンでね」
「ならば……お覚悟を」
タン、と素速くレイラは身を後に跳ばした。間合い二つ、身を低めるようにして着地した先で針を放つ。ヒュン、と放ったそれが銃を構えたセルゲイの腕を貫く。
「針だね。暗器の割には傷が……」
浅い、と突き刺さった針をセルゲイが引き抜いた瞬間——炎が、零れた。
「これは……ハ、やってくれる」
それなら、とセルゲイは小銃を持ち上げる。熱で焼けた腕を、赤く染まるその手で撃鉄を引いた。
「私の番だね」
ガウン、と銃声が響き渡った。反射的に、レイラは後に身を跳ばす。一定の距離を保ったのは回避の余裕を作る為だ。一撃躱した先、着地の足を下ろした瞬間——次の銃弾が来た。
「——ッ」
衝撃が、足を貫いた。傷みに、だが転ぶことはしないまま、顔を上げる。
(「これは、先読みでしょう」)
銃口はさっきまで違う場所を向いていた。流れるようにセルゲイは狙いを変えたのだろう。高い分析能力を以てレイラの動きを『読んで』みせたのだ。
「足を砕くつもりだったが……足らなかったようだね」
「足を止めるつもりはありません」
次の銃弾が来るよりも先に、レイラは身を後に跳ばした。セルゲイの射撃は正確だが——それでも、致命を撃ち抜けてはいない。此方も動ける範囲だ。流した血はあれど、それだけ。
「私は、進みます」
銃声と炎が戦場を染める。セルゲイだけに気を取られぬように、戦場の動きを視界に収めきるようにしていたからこそ——気が付いた。
「大佐!」
「私の獲物だ」
「——」
血影猟兵を制したセルゲイの小銃がこちらを向く。銃口がレイラの胴に定められる。引き金に指をかけた瞬間——その動きに『違和』があった。
(「狙いは胴では無く……頭」)
上に来る、そう思ったのと同時にレイラは前に出た。
「——これで終わり……」
終わりだと、そう言うつもりだったのだろう。銃声は重く響き——だが、その一撃に、踏み込んだレイラは身を沈めていた。
「な……」
「魔道の罪、外道の罰」
身を前に倒すように低く、腰を沈めれば銃弾は上を抜けた。読んだのだ、セルゲイの動きをその精密射撃を。先に『読んで』見せた相手に対して。
「慄く狂乱が十字を焙る」
地を、蹴る。間合いを一気に詰める。相手の影を踏むように——驚愕に見開かれた瞳に映り込むように、身を沈めるようにして踏みこんだ先でレイラは針を持つ手を振り上げた。
「これで終わりです」
ヒュン、とセルゲイの胸に針を突きたてた。
「——っくぁ、ああ!」
瞬間、炎が溢れた。延焼の呪詛が此処に完成する。しとどに溢れるように火が零れた。
「まさか、私の、射撃を」
ハ、とセルゲイは笑う。やってくれたね、と零れた声は血と炎に飲み込まれ——消えた。延焼の呪詛は、その炎は焼きつくすまで消えはしない。
「我が、ロマノフよ……」
そうして、セルゲイ・イワノビッチ・モシンは崩れ落ちた。
「私の言葉、彼女の迷い……貴方がたも覚えて帰ることです」
「——!」
その言葉の意味が分からない訳では無いのだろう。レイラを見据え、次の瞬間、血影猟兵達は戦場から飛び去った。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【熱波の支配者】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!