ペルシアに暁風(作者 ツヅキ
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#蹂躙戦記イスカンダル  #イラン高原、イスカンダル軍奇襲作戦  #イラン高原  #ペルセポリス  #断片の王『イスカンダル』  #イラン高原大決戦 

 高原に集まった大勢の軍団が暁を背負い、西を目指す。
 風にたなびく軍旗はそれぞれのジェネラル級が意匠を凝らしたものだった。
「聞け、皆の者!」
 軍勢を率いるイスカンダル大王が声を張り上げ、将兵を鼓舞するための演説を行った。
「ペルセポリスより東の領土はこれより放棄する」
 ざわりと亜人たちの間に動揺が走る。
 大王は右手を掲げ、配下のざわめきをおさめた。
「《戴冠の戦》まで未だ多くの時を残しながら、我らの蹂躙がこうも停滞したことは遺憾である。だが、敵がいかなる想定外の策を弄して来ようと、我の覇道を邪魔すること罷りならん! 将兵達よ、西へ進め! 体制を立て直し、蹂躙し尽くすために我と共に進軍するのだ!」

「さて、無事にペルセポリスにバベルの塔の代わりを建設させるのは阻止できたわけだが……ペルセポリス入城を諦めたイスカンダル大王が軍勢を率いて動き始めたらしい」
 ハファエル・アルバトロス(セイレーンのトレジャーハンター・g10822)が示すのは、西。
 イラン高原を越え、何処かを目指して。
「さすがに断片の王率いる大軍勢だ。ジェネラル級も多く参加していて、これ以上の情報は現時点で何もわかっていない。そこでだ。ちょっとこの軍勢をつついて打撃を与えてやることになった。なにしろ敵の大陣営だからもちろん危険はある。だが、戦果に釣り合うだけの情報は得られるはずだ」

 それからハファエルは考え込むように視線を逸らした。
 大軍勢の出所は主にインド戦線帰りの将兵たちである。
 数は圧倒的だが、強行軍で疲弊しており、さらには多数の亜人部隊が混在しているがゆえの連携の不徹底という弱点を抱えている。
「なにより亜人ってやつは基本的に暴れるのが好きな連中だ。攻める時は無類の強さを発揮するが、受け身に回っている間は果たしてどうかな」
 うまい具合に大軍勢の外側にいる部隊を叩き、混乱させることができれば上々だろう。
「あまり中の方まで入り込むのはやばいだろうな。それに遠征の途上であることを考えればきりのいいところで撤退するこちらを深追いはしてこないだろう。十分叩いたと思えば、各自の判断で退いてくれ」

 イスカンダル陣営についての情報は戦場で集める必要はないので、皆は敵を倒すことに集中してくれたら問題ない。後ほど奇襲作戦の成功度合いに応じて報告が出るだろう。
「情報が出揃えば今後の動き方も決まってくる。ペルセポリスの攻略に、リグ・ヴェーダ方面の戦況も気になるところだな。何か考えがあれば攻略旅団の方へ提案を頼む」
 ――では、出発だ。
 乾いた風の吹き抜ける中東のイラン高原へ。

 ――西へ。
 イスカンダル大王の演説には感じ入るところもあったが、いかんせん彼らは疲れていた。インドから大急ぎで戻ってきたところへ、休む暇もなく遠征にかり出されては不平不満も出るというもの。
「くそッ、酒池肉林が俺を待っているはずだったのに、大王もいけずなことをされる……おい、ゴブリン戦車! 出発の準備はもうできたのか!?」
「へい、親分! 完璧でさあ!」
「ちッ、他の部隊に遅れを取るなよ」
「了解でさあ!」
 ゴブリンたちは調子よく返事する。
「いししッ、西にはどんな街があるんですかねい? めずらしい酒や熟れた女共が手に入るといいですなあ」
「ん? ああ……」
 そうか、とエイクスュルニルは頷いた。
 大王は言っていた。
 新たな蹂躙を、と。
「褒美が先延ばしになったと考えれば、それはそれでいいか……うむ。西だな。まだ見ぬ地にまだ見ぬ獲物か。悪くない、悪くないぞ……!」


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【冷気の支配者】
1
ディアボロスが冷気を自在に操る世界になり、「効果LV×1km半径内」の気温を、最大で「効果LV×10度」低下可能になる(解除すると気温は元に戻る)。ディアボロスが望む場合、クロノヴェーダ種族「アルタン・ウルク」の移動速度を「効果LV×10%」低下させると共に、「アルタン・ウルク」以外の生物に気温の低下による影響を及ぼさない。
【スーパーGPS】
1
周囲のディアボロスが見るあらゆる「地図」に、現在位置を表示する機能が追加される。効果LVが高ければ高い程、より詳細な位置を特定できる。
【活性治癒】
1
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【使い魔使役】
1
周囲が、ディアボロスが「効果LV×1体」の通常の動物を使い魔にして操れる世界に変わる。使い魔が見聞きした内容を知り、指示を出す事もできる。
【クリーニング】
1
周囲が清潔を望む世界となり、ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建造物や物品が、自動的に洗浄殺菌され、清潔な状態になる。
【通信障害】
1
ディアボロスから「効果LV×1,800m半径内」が、ディアボロスの望まない通信(送受信)及びアルタン・ウルク個体間の遠距離情報伝達が不可能な世界に変わる。
【コウモリ変身】
1
周囲が、ディアボロスが小型のコウモリに変身できる世界に変わる。変身したコウモリは最高時速「効果LV×50km」で飛行できるが、変身中はパラドクスは使用できない。

効果2

【能力値アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV1 / 【凌駕率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV3

●マスターより

ツヅキ
 ペルセポリスの入城を諦めた断片の王『イスカンダル大王』の軍勢に奇襲攻撃を仕掛けます。
 陣営にはジェネラル級も多く、ただちに大打撃を与えることはできないようですが、今回の奇襲作戦の戦果に応じて攻略旅団の提案に沿った情報を得られる確率が増します。
 情報はシナリオの成功後に判定されるため、シナリオ中で情報を集める必要はありません。

 ①👾護衛するトループス級『ゴブリン戦車』がクリアされずに残っていると②👿アヴァタール級との決戦『エイクスュルニル』と戦う際に邪魔が入る可能性があります。
 また、②👿アヴァタール級との決戦『エイクスュルニル』を自由にさせておくと①👾護衛するトループス級『ゴブリン戦車』に指示を出して統率の取れた動きを可能にします。

 完結条件は②👿アヴァタール級との決戦『エイクスュルニル』の撃破です。
 それでは、よろしくお願いします。 
103

このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


フミラ・ヴィグリーノ
ふふふ、見渡す限りの大軍勢。ですがそれが良いのです。越え甲斐があると言うもの!
相手側が反応する前に先手といきましょう。
早口には自信があるのですよとばかりに高速詠唱、全力魔法の敵を纏めて氷漬けにしてあげます!
戦車の突撃は結界術で受け流して軌道を逸らしながら回避しましょう。


帳・九
連携・アドリブ歓迎

あーあー、アンタら五月蠅ぁて夜も眠れへんのや
こういうのなんていうんやっけ……
嗚呼、そうや
負け犬の遠吠え?

お仕置きして追い返す感じ、でえぇやろか
せやったらおやつにでもなってもらおな

コウモリを解き放ち亜人兵の戦車を強襲
隙間から入り込み、陣形を崩し、視界を遮るように羽搏かせる

鍛えられた肉体は大きくて噛みつきやすいなぁ?

[ドレイン]で吸い取り自身は攻撃を回避、遠くから煽る
仲間の動きを見て連携するようにコウモリを操り妨害

うちか弱いんやから、そんな突っ込んでこんと
怖い怖い
迷惑や、はよどっか行き

え、なにあの鳩こわっ

チリも積もればなんとやら
血を吸いまくって戦意を奪い、十分つついた辺りで撤退しよね


ロッカ・スターアニス
アドリブ連携歓迎大歓迎。

【等価交換】のパラドクスで氷の鳩を作り出し、敵にぶつける攻撃方法。
敵が此方にやってくるなら背中を見せて全力で逃げ

「私は! 嫌がらせがしたいだけです!
「一人で真正面に戦えるはずないでしょう!
「くるっぽー
「なんかこの鳩喋るんですけどなんでですかぁ!?

と叫びながらひたすら敵に鳩をぶつけまくる。
何故か氷の鳩が時折

「くるっぽー

と鳴く。


 くるっぽー。
 気の抜けるような鳴声の主は鳩だった。それも、氷でできた鳩。声帯もないのになぜか鳴ける。とてものんびりと、平和的な鳴声で。
 それにしても、どうしてこんなところに鳩が?
「答えは、私が等価交換によって生み出したからです!」
 ロッカ・スターアニス(スノウホワイト・g09145)が手品みたいに取り出して飛ばした氷の鳩が戦車に乗るゴブリンたちを一斉に激しくついばんだのだった。
「あいったた!?」
「や、やめちくりー!」
「あ、あいつが鳩の主ですぜ!」
 ゴブリンたちは大慌て。
 あいつが犯人だとばかりに指差されたロッカは「きゃー」と頭を抱えて逃げ出した。
「そんなに怒んないでください! 私は! 嫌がらせがしたいだけです! なのにすごい形相で追いかけて来たぁ!?」
 隊列から離れ、ロッカに向かって戦車を駆るゴブリンたち。
 思わずロッカを追い掛けるのに夢中で、どんどんと本体からの距離が空いてゆくのも気にしない。何かに集中すると周りが見えなくなるタイプなのだろう。
「待つでやんすよ!」
「いやー! 一人で真正面に戦えるはずないでしょう!」
 くるっぽー。
 またしても呑気な鳩の鳴き声がゴブリンたちの怒りを余計に煽った。
「なんかこの鳩喋るんですけどなんでですかぁ!?」
 うわーん、とロッカは涙目になって走る。
 意外と足が速い。
「来た来た。ぎょうさん束になって女の子ひとりをよくもまあ……にしても、五月蠅ぁて叶わんわ」
 帳・九(大喰らいのヴェルデ・g11025)は呆れたように首を傾げながら、はてと考える。こういう時に相応しい言葉があったような気がするのだが。
 敵さんは西へ大遠征……と言えば聞こえはよいが、結局は東から逃げ出しているのに過ぎない。
 となれば嗚呼、そうだ。
「せや、負け犬の遠吠え? うんうん。お仕置きの時間やねえ」
 くすりと笑んだ途端に蝙蝠が羽ばたいた。
 それらはあっという間に戦車の隙間へ入り込んでゴブリンたちの視界を遮るように乱れ飛ぶ。
「ぎゃッ! は、離れるでやんすよ!」
 もはや蝙蝠のおやつ状態のゴブリンに、九はおっとりと言った。
「とっても噛みつきやすいってその子らも言っとうわ。うん、鍛えられた肉体は食い甲斐がありそうやね」
 なにしろその蝙蝠は生気を食らう。
 ゴブリンたちはしなしなと皺くちゃになった。美味かどうかは不明である。もっとも蝙蝠たちはそのようなもの無関係に食い散らかすだけだったが。
「あらまあ、聞きしに勝るもの凄い大軍勢ですね」
 フミラ・ヴィグリーノ(未踏の沃野・g09477)にとって、それは願ったりかなったりの光景であった。
 見渡す限り、亜人たちで埋めつくされている。砂をはらむ風にたなびく旗の数は片手に余った。なんという数、なんという大遠征。
 あのどこかに断片の王イスカンダルもいるはず。
 思わず、フミラは含み笑う。
 ならば越えてみせよう。
「ぎえ!?」
 一瞬にして戦車ごとゴブリンが凍り付いた。
「ふふふ……」
 フミラの吐く息が白い。
 ――それは超低温の猛吹雪であった。
 薄っすらと開いた唇からこぼれ落ちる、高速で紡がれた呪文の名残り。
「早口には自信がありましてね。あら、突撃ですか? 威勢のよいことで」
 結界に車輪を取られた戦車がガタンと大きく揺れてもう少しで倒れる寸前だった。思わず振り落とされそうになったゴブリンが悲鳴を上げる。
「ひええぇ!」
「ごめんあそばせ」
 フミラは軽やかに囁いた。
 冷たき雪と風はさらに温度を低めて吹き荒ぶ。さあ、全ては吹雪に包まれてしまいなさい。肉を裂き、骨を断つ凍れる刃の犠牲となって……。
「や、やべえ! このままじゃ――へぶし!?」
「くるっぽー」
 顔面に突っ込んだ氷の鳩がまた鳴いた。
「ほんとなんで鳴くんでしょうねぇ?」
 きょとんとロッカが首を傾げる。
 九も一緒になって不可思議な現象に引いた。
「こわっ、何でなん?」
「わからないのです」
「マジで不明なんかい……」
 つまりはミステリアス。 
 礫のように突っ込む鳩の動きに合わせた蝙蝠は進路妨害ならお手の物。戦車からようやくのことで逃れた九がやれやれと肩を竦める。
「うちか弱いんやから、堪忍してぇや。ええ加減迷惑やから、はよどっか行き」
 しっしっと追い払うような仕草で突進を跳ね除ける。
「ほな、さいならー」
「ま、待て……きゅぅ」
 チリも積もればなんとやら。陣形を崩されて散々な目に遭ったゴブリンたちを後目に九は早々に退散するのだった。
 血を吸われてしなしなになってゴブリンたちに追撃する余力は残されていない。震えながら伸びる手ががくっと途中で力尽きた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【使い魔使役】LV1が発生!
【コウモリ変身】LV1が発生!
【スーパーGPS】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

「お、おのれぇ……!」
 エイクスュルニルは憤慨していた。
「よくも俺のかわいい部下たちをやってくれたな!!」
 足を踏み鳴らし、いらだち紛れに棍棒を地面に叩きつける。あまりにも怒っているので自分が孤立していることも忘れてしまったみたいだ。
 もはや、こちらに襲いかかることしか考えていない。
「ディアボロスめ! そこへなおりやがれぇ――!!」
エイレーネ・エピケフィシア
エイクスュルニル……最終人類史の資料によれば、北方の神話に現れた神秘なる牡鹿の名であるとか
イスカンダルの領土とは縁が遠く、奇妙に感じますが、為すべきことは変わりません
人々を脅かす怪物を討ち倒し、イスカンダルの軍勢を削り落とす――ただそれだけです!

≪神護の長槍≫と≪神護の輝盾≫を手に戦線に合流します
トループス級を倒した仲間が引き続き戦うようなら、彼らが決着を付けられるよう支援しましょう
地に穂先を擦らせながら槍を振り上げ、その勢いで『吹き荒れる浄化の砂塵』を放ちます
身を削る砂塵によって敵の体を抉り取ると共に、視界を一時砂によって覆いましょう
一瞬なりとも敵の目が曇った隙に、背後や側面から仲間が痛烈な一撃を仕掛けやすくなればよいですね

反撃の棍棒と纏わりついた炎は盾で受け止め、直撃を貰うことを防ぎます
盾を弾かれたとしても、咄嗟に身を躱して≪神護の胸当て≫部分で打撃を受けるなどして、威力を抑えましょう

地上のどこであれ、人々が語り継いできた物語に現れる名は大切なものです
あなた達に奪わせなどしません!


フミラ・ヴィグリーノ
あらあらまあまあ、これは随分とごつい鹿さんです事・・・とはいえやること自体は変わりません。
イスカンダル王の喉元に行くために消えていただきます!
頭に血が上っているようで好都合
冷静を取り戻す前に高速詠唱、全力魔法の一撃で消し飛ばしてあげます!
相手の繰り出す炎は吹きすさぶ風を結界として防ぎながらいったん後退しましょう。
さあ、どきなさい。大王への道を開けるのです!


帳・九
連携・アドリブ歓迎

遠くまでご苦労さん
でも、もう終わりにしよか

はは、大層な夢をお持ちやったんやねぇ…――馬鹿なん?
いつまで他人の土地でデカい面ぁ出来ると思てるん、アンタ

その綺麗な角、家の灯りにちょうど良さそうやね

決して強くはないけれど、仲間と連携すれば形になるだろう

揮われるこん棒を回避しつつ接近
身を低くしたり逸らしたり
抹茶ラテカラーの髪を伸ばし、ハリネズミのように鋭利になって突き刺す
踊るように避けながら剣舞の要領で敵を攻撃する

強い味方の攻撃が通るように、気を逸らすためにちょこまか動く

ちくちくするんも嫌になるやろ
苛立てば小さな痛みも気になって気になって、痛みが増すだろう

さぁ退き、お前の居場所はここにはないんよ


ロッカ・スターアニス
アドリブ連携歓迎。

相手の燃え盛る炎を氷の華に変える。

「これあれですね! 蒸発した煙で前がみえませんね!?

戦いの一角、膨大な煙製造所となり、炎が弱まってくると氷の華が咲いてくる、はずである。


 神護の名を戴く長槍の穂先が渇いた砂漠のような荒地を擦りながら天に向けて跳ねた。弧を描くような鋭い軌跡から生み出されるのは砂礫と突風で構成された激しき砂塵である。
 エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)の放つ浄化の力を孕むそれが次第に勢いを増しながらエイクスュニルに向かって襲いかかった。
 ――エイクスュニル。
 最終人類史にはその名における伝説が残されている。北方神話に登場する聖なる牡鹿がそんな名前であることをエイレーネは事前に知っていた。もっとも、だとすれば少々奇妙にも思えるのだが。
 ここ、イスカンダルとは土地が離れすぎていないだろうか、と。
「イスカンダルで遭遇したクロノヴェーダの名としては違和感がありますが……いずれにせよ、みすみすと西へなど往かせるものですか!」
 甲高い金属音を奏で、棍棒と輝盾が互いにぶつかり合う。
 天まで巻き起こる大量の砂塵の中を帳・九(大喰らいのヴェルデ・g11025)が疾走した。身を低めながら棍棒の動きをよく見て、ここぞというタイミングで体を逸らす。誰が直撃などくらってやるものか。
「遠くまでご苦労さん。でも、もう終わりにしよか」
 呆れたような眼差しの理由は、ただひとつ。
 亜人たちがあまりにも大層な夢を抱いているからだ。東を捨て、西へ。イスカンダル大王率いる軍勢はそれが可能であると信じてやまないようであった。
「……――こう言っちゃなんやけど、馬鹿なん?」
「な……」
 砂嵐の中を、まるで抹茶ラテのような緑色の髪が針状になってエイクスュニルを貫いた。
「ぐはッ!?」
「もう一度言うで。いつまで他人の土地でデカい面ぁ出来ると思てるん、アンタ」
 反撃はすぐにやってきた。
 重い棍棒の一撃。しかし、九は踊るようなステップで狙いを定められないように動き回った。九を追うのに夢中になるエイクスュニルの頭からは、すっかり他のことが抜け落ちてしまったかのようだ。夢中になって棍棒を振り回している間に、隙を晒しているとも知らないで。
「あらあらまあまあ」
 フミラ・ヴィグリーノ(未踏の沃野・g09477)は腕を組み、隙だらけのエイクスュニルの背後で不穏な微笑みを浮かべて言った。
「随分とごつい鹿さんです事……ふふ、イスカンダル王の喉元へ行くために消えてくださる?」
 刹那、膨大な量の魔力が巨大な魔法陣から解き放たれた。
 まるで歌うような、けれど素早い詠唱はフミラの唇から紡がれたものである。うまく連携が決まったので、九は微笑んだ。ご自慢の綺麗な角が欠けてしまったのを残念がるように。
「せっかく、家の灯りにちょうどよさそうな角やったのにね」
 九がちょこまかと動いた背後から、今度はエイレーネの槍と砂塵が再び猛威を振るう。胸当てを掠める棍棒の荒々しさといったら、亜人の面目躍如といったところなのは間違いない。
 エイクスュニルの顔が真っ赤になった。
 アヴァタール級たる自分がディアボロスのいいように翻弄されているのが、許せないかのようだ。
「おのれ、貴様ら――!!」
 頭から湯気が立ち上るほどに怒っている。もっとも、怒れば怒るほど、こちらの思うつぼなのだとエイクスュニルが気づくことはなさそうだった。
「好都合ですね」
 フミラの魔法がついに閾値を越え、戦場に爆発的な破壊をもたらした。砂を巻き上げながら吹き荒ぶ風は結界のように周囲を漂い、フミラを中心にした聖域のような空間を作り出す。
「そこから出てこい、ディアボロス!」
「そんな挑発には乗りませんよ」
 渦巻く炎を前に、フミラは涼しげな顔で返すのだった。
 そして、ぴたりとエイクスュニルに向かって指を突き付ける。
「さあ、どきなさい。大王への道を開けるのです!」
「く……」
 エイクスュニルは歯ぎしりして悔しがった。
「なぜだ! なぜやられぬのだ! 俺の方が強い! 強いのだ!」
「そんなん決まっとるやろ」
 九の針がまたエイクスュニルを刺した。ハリネズミみたいに。ひとつひとつの威力はそれほどではなくともこれだけ重なれば決して無視できない。苛立てば苛立つほど、小さな痛みが気になって……やがて、痛みは誤魔化しようのない程度にまで増すだろう。
「うぐぅ」
 エイクスュニルが呻いた。
 九はちら、と背後を見ながら告げる。
「お前の居場所がここにないからや。わかったら、さぁ退き。退かんと……」
「氷の華を咲かせましょう!」
 ロッカ・スターアニス(スノウホワイト・g09145)の仕掛けた氷華がその時、一斉に咲き誇った。透き通る硝子のような氷が満開の花弁となってエイクスュニルを傷付ける。
「なに――!?」
 さっきまで炎が渦巻いていたはずの戦場に、美しく日の日差しを受けて輝く氷細工のような花、花、花――。
「これあれですね! 蒸発した煙で前がみえませんね!?」
 無邪気にロッカは笑い、大量に漂う蒸気の中にたたずんだ。エイクスュニルは咳き込み、邪魔だと言わんばかりに蒸気を手で掻き分ける。
「くそッ、これもディアボロスの陰謀か!!」
「陰謀とは人聞きの悪い! でも綺麗でしょう?」
 満面の笑みでロッカが言うように、炎と入れ替わるようにして戦場を氷の華が埋め尽くす様子は見事だった。花は決して無害とは限らないのだと、エイクスュニルは身をもって知ったことだろう。
「西に向かい、そこに住む人々を脅かすつもりなのでしょう? 断固阻止いたします」
 エイレーネの神槍はイスカンダルの軍勢を削り落とすためにあるといっても過言ではなかった。たとえ地上のどこであれ、人々が語り継いで来た物語に現れる名は大切なものだ。
 ゆえにエイレーネは戦う。
 奪わせないために、取り戻すために。
「覚悟はよろしいですね」
「う……」
 ディアボロスに取り囲まれ、エイクスュニルは己の敗北を覚悟した。砂塵に塗れ、針に貫かれ、氷華に削がれ……迫る魔力の塊に最期は呑まれ、西を見ぬままに今斃される。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【通信障害】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
効果2【凌駕率アップ】LV1が発生!
【ドレイン】がLV3になった!
【能力値アップ】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2024年03月07日

イラン高原、イスカンダル軍奇襲作戦

 ペルセポリス電撃戦の成功により蹂躙戦記イスカンダルの断片の王『イスカンダル』は、ペルセポリスへの入城を断念。
 これにより、ペルセポリスでの新たな『バベルの塔』建設は阻止できましたが、イスカンダル軍はイラン高原を西へ向かおうとしています。

 この軍勢には多数のジェネラル級がおり、容易に崩せる陣容ではありません。ですが奇襲攻撃で戦果を挙げられれば、攻略旅団の提案に基づく解析を行い、様々な情報を得られるでしょう。
 断片の王率いる強大な軍勢に果敢に攻撃を仕掛け、陣容を明らかとしたうえで、断片の王と相見えるチャンスを伺いましょう。

※特殊ルール
 この事件の攻略期限時点での「シナリオ成功数」に応じ、3月分の攻略旅団提案に基づく情報の獲得や作戦の実行が可能となります。
 4月分の提案は、この事件の状況を踏まえた内容に出来ると、より良い結果となるでしょう。
 この事件は攻略旅団の提案による【期限延長】を行うことができません。
  • 成功数3:断片の王『イスカンダル』の新たな目的地の情報を獲得
  • 成功数5:イスカンダルの軍に居るジェネラル級の情報を獲得
  • 成功数8:イスカンダルの本陣を特定し、接触を図る事が可能に
  • 成功数10:軍勢にいるジェネラル級のうち1体との決戦が可能に
  • 以降、成功数5ごと:決戦を挑めるジェネラル級が1体増加
  • (多数のジェネラル級と決戦を行う事ができれば、イスカンダルとの接触時に、決戦を挑める可能性も生じるでしょう)

断片の王イスカンダル

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#蹂躙戦記イスカンダル
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#イラン高原、イスカンダル軍奇襲作戦
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#ペルセポリス
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#断片の王『イスカンダル』
🔒
#イラン高原大決戦


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選択肢👾護衛するトループス級『ゴブリン戦車』のルール

 事件の首魁であるクロノヴェーダ(👿)を護衛するトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 👾を撃破する前に👿と戦闘を行う場合は、👾が護衛指揮官を支援してくるので、対策を考える必要があるでしょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『エイクスュルニル』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「松中・誠」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。