リプレイ
ディアナ・レーヴェ
薔薇星と一緒に荒地を堂々歩いてくる。両手に持てるだけの酒瓶を見せびらかすように。
デーモンの翼も隠さずいて「私は差し入れを持ってきた、かつ『私自身も差し入れ』の娼婦のアークデーモンだ」と示しましょう。
「こーんにーちはーーっ!!シトリー様からのご褒美よ!」
服装は2022年の水着で。…露出は少ないけど、これ以上出すと私は傷跡が多くて逆に不自然なの。体型は出るから何とかなるでしょう?
その手の欲を亜人に向けられるのはとても不愉快で、今すぐ懐の銃をぶっ放したい衝動にかられるけど顔に出さないよう頑張るわ!ニコニコ。
「やーだ、『よいこと』はお酒で気持ちよくなってかーら!」
実際に身体を許す気は全くなく、伸ばされる手はやんわり躱す。
いやホント触らないで。せめて翼やめて。
「お酒に強いヒトが好き。…沢山サービスしたくなるかも?」
「カッコ良い亜人のあなたなら、私よりお酒は得意よね!」
煽って酒宴のどんちゃん騒ぎに持ち込む。
煽てたら情報漏らすかしら?他の皆もこの騒ぎの隙なら接近しやすい筈ね。
視線が、気持ち悪い。我慢。
薔薇星・パッフェ
我輩は酒や食べ物を差し入れて駐屯地へ潜入しよう
支援を目的とする活動ならば土地に残り続けるようにディヴィジョンにあわせた食料を用意するが、今回は違う
潜入の為に一時、亜人たちに取り入る為の食料。血の気の多い彼らならすぐに食べるだろうから保存のことは考えないのだ
ふむ。待っておれ、新宿島のおいしい酒と食べ物で骨抜きにしてくれるわ!
しかしあまり奇を衒った食べ物だと警戒して箸をつけんかもな。ハーブやスパイスをきかせた凝った燻製肉にでもするか
酒も上等な物を準備して…と
さあ『acteur』よ、最終人類史の食事のおいしさを思い知らせに行くぞ!
このディヴィジョン、なんか平均年齢短そうよな
【エイティーン】を使って潜入するである
おお、若い。アンニュイ系でなかなかの美形ではないか。お肌ぴっちぴち…!
潜入したら亜人たちに差し入れを振る舞おう
差し入れが上物であることを知れば気を良くするだろうからその辺もアピール。酌をしつつ訓練の労いの言葉もかけよう
上機嫌になった彼らから何か情報が得られればラッキー
アドリブ歓迎!
●……いざ赴かん、敵陣の懐へ!
『……ん?』
亜人剣闘士。そいつらの隊長『山羊頭』は、
自分たちの陣営へ接近する者を、視界にとらえていた。
『全員警戒! 接近する奴が居るぞ!』
それを聞き、部下の亜人剣闘士たちも、即座に戦闘態勢を。
彼等のみならず、その場に居た全員が武器を構え、盾を構え、
戦いの態勢をとっていた。
「いやいや、これは皆様! ご機嫌麗しゅう!」
「はぁい、こーんにーちはーーっ! シトリー様からのご褒美よ!」
そいつらは、たった二人。だが、妙な取り合わせの二人組だと、山羊頭は見て思った。
……いや、男とともに、もう一人いる。人形らしい。
『……何者だ? ……そちらの女は、デーモンか?』
警戒する山羊頭。だが、副隊長の羊頭は、
『おうおう、随分と色っぽい格好してんじゃあねーか。銀髪に、白い肌が中々「そそる」ぜ』
女性の方に、夢中になっている。コウモリの翼を有しているため、おそらくデーモンに違いなかろう。
「……気持ち悪い」
女性は小さく、小さく呟く。
『? なんか言ったか?』
「ううん、皆さん力持ちそうで、頼もしそうでステキって思って」
と、彼女は両手に持てるだけ持った、酒瓶らしきものを見せた。
『……それで? シトリー様からだと? お前ら、何者だ?』
まだ訝し気な山羊頭が問うと、
「私は、ディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)よ。こっちは……」
「……我輩は、薔薇星・パッフェ(役『吸血鬼 薔薇星・パッフェ』・g10767)! こちらは我輩の相方、『acteur』! よろしくお見知りおきを」
と、二人はうやうやしく頭を下げた。
(「ふむ。『エイティーン』の効果が、これほどとは……」)
18歳になった己の姿に、薔薇星は我ながら驚いていた。
(「若いな。それに、アンニュイ系で中々の美形……! お肌も……」)
と、どこかナルシスっぽくなりそうな自分を自覚し、かぶりを振ると、
(「……いかんいかん。さてと」)
薔薇星は作戦を、頭の中で確認していった。
簡単に言えば、作戦内容は、
『酒や食事を差し入れる事で、駐屯地に潜入』
その潜入の際に、ひと時亜人たちに取り入るため、彼は食料を用意していた。
新宿島の美味なる料理、そして上等の酒。
それらを以て、骨抜きにしてくれよう! ……という目論見に用いるものだ。
そして、ディアナも同様。実際彼女は、露出が少な目ではあるが、『水着』を着ていた。
肌はあまり出ていないが、彼女の女性らしい身体のラインは、良く出ている。
更に、薔薇星は先刻の相談時の彼女の口ぶりと、あからさまに嫌そうな顔から、悟っていた。……この連中を、嫌悪している事を。
(「……ま、理由は言わずもがな、であろうな」)
彼女もまた、酒類を持ち込んでいる。
(「では、始めようぞ!」)
今回の舞台……という名の戦いは、ここより始まる。見事に演じ切ってみせよう。
決意とともに、
「では、酒と肴をご賞味あれ!」
持ち込んだ食べ物を、亜人剣闘士たちの前に広げる薔薇星だった。
●……さあさ、まずは一献!
『……わっはっは! シトリーも気が利くじゃあねーか!』
『ああ! 美女が一人だけってのが残念だが!』
亜人たちは酒が入ると、すぐに警戒を解き、騒ぎ出した。
山羊頭も盃を手にして、中身を含む。
『……ふん、毒は入ってないようだな』
今度は、がぶりとあおった。
『へっへっへ、ほれ、酌してくれ!』
『こっちもだ!』
既に酔いが入った亜人たちが、ディアナに迫る。
「……あんっ。もう、慌てないの」
言いつつディアナは、
(「……ああ、不愉快。気持ち悪い。今すぐ……銃をぶっ放したい!」)
衝動に駆られるが、それを我慢しつつ酌をしてやる。
『なあカワイ子ちゃん、俺と今晩どうだ?』
『そいつより、俺といい事しようぜ?』
馬頭と牛頭が、ディアナの身体に手を伸ばしてきた。
「やーだ、『よいこと』は……」
と、その手をやんわりと躱したディアナは、
「……お酒で、気持ち良くなってかーら!」
と、ぺろりと舌を出した。
しかし、そいつらはお構いなしに、彼女の尻や腰、翼に触り、撫でまわす。
それらの手を、ディアナは、
「触らないで!」
思わず本気で叫び、ばしっと強めに叩いてしまった。
が、馬頭と牛頭は、
『……気が強えな、気に入ったぜ!』
『へっ、これくらいのお転婆な方が、俺の好みだ!』
大笑しつつ盃の酒を飲みほす。
(「……焦りました」)
薔薇星は心中で胸をなでおろし、
(「いやホント触らないで、せめて翼やめて」)
ディアナもまた、己の嫌悪感を抑えんと必死に。
かくして、円形に座りこんだ亜人剣闘士たちは、
本格的に、どんちゃん騒ぎを始めるのだった。
ディアナと薔薇星が供している『料理』は、新宿島で手に入れた、ハーブやスパイスを効かせた『燻製肉』だった。
気に入ったのか、亜人たちは喜びつつ貪っている。
先刻の牛頭と獅子頭の大柄な亜人たちは、ディアナにまた言い寄った。
『おい、ネエちゃん!俺にもっと酌してくれよ』
『待て! そのカワイ子ちゃん味わうのは、俺が先だ!』
と、一触即発の様相になるも。
「あんっ。喧嘩しないで? 私はぁ、お酒に強いヒトが好き……大きくて、逞しいなら、特にね」
ディアナはそれを見て、扇情的に言い放った。
「……カッコ良い、亜人のあなたたちなら……私より、お酒……得意よね?」
と、酒杯を片手に、ちびり……と、その中身を舐め。
「お酒が強い、ステキなヒトなら……沢山、サービスしたくなるかも? ……証明、して見せて?」
色っぽく言ってみると、獅子頭と牛頭、それに他の亜人たちも、
『お、俺は酒、大得意だぜ!』
『俺の方が得意だ!』
『おいお前、その酒樽ごとこっちに寄こせ! 飲み比べだ!』
手にした盃を空にすると、薔薇星の持ってきた酒の樽をひったくった。
●……そして、楽しんでいただこう!
『……まったく、馬鹿どもが』
『けっ、どいつも潰れちまえ』
と、山羊頭と羊頭が、部下たちの飲み比べを見つつ呟く。
「いや、しかし皆様。強そうなお方ぞろいですが……。あなた方は特にお強そうですな」
そんな二人へ、薔薇星は酒杯に新たな酒を注ぐ。今回持ち込んだ中でも、最高級の葡萄酒だ。
「毎日、血のにじむような訓練を乗り越えておられるのですから、体力のみならず、精神力も鍛えられていらっしゃるのでしょう。感嘆する他ありません』
『ふっ。まあな』
『ああ、隊長も俺も、ちょっとしたもんだとは自負してるがな』
「それはすばらしい。きっと、これから大義ある作戦に参加されるのでしょうな……ささ、もう一献」
『おっと……まあ、その通り。ムシュフシュ様とシトリー殿とが協力すれば、バビロン奪還は時間の問題よ』
『ああ、まさしく! シトリー殿の方は、バビロン湖から……境界、だったか? そこを通り、ディアボロスの本拠地に行くらしい! 我々もまた、同じルートでともにその本拠地に攻め込み、略奪するつもりだ!』
山羊頭とともに、羊頭が得意気に話す。
『……略奪の際には、男は皆殺しするつもりだ』
山羊頭が、そんな事を口にした。
『そして、女子供は我々の奴隷にしてやる。ああ、楽しみだ。女は全て犯してやる。子供は服従を誓わせ、奴隷にしてやる。そして、新たな略奪を……くっくっく、楽しみだ』
山羊頭が、含み笑いをもらす。
『さあ、もっと注げ。これは前祝、略奪が成功した暁には、お前にも何かくれてやろう!』
『そうとも! 我等の輝かしき未来に乾杯!』
そんな山羊頭に愛想笑いし、羊頭にべんちゃらを言いつつ、
薔薇星は、『acteur』とともに杯に酒を注ぎ、ツマミを供し続けた。
「……もう、限界」
視線が気持ち悪く、限界を覚えていたディアナは、
「……ディアナ嬢。そろそろ……」
と、薔薇星から声をかけられ、二人して近くの大箱の陰に隠れた。。
亜人たちは、全員が酔いつぶれ、前後不覚の状態に。
「……ありがとう。そっちはどうだった?」
「……あまり重要な情報は……ただ、ムシュフシュはシトリーとともに、ディヴィジョンを通って新宿に出現し、新宿の略奪を予定しているとは言っておりました……。そちらは?」
「こっちも同じようなものね。ただ、イスカンダルの皆は、一部はシトリーを疑っている……とは言っていたけど」
「……シトリーとムシュフシュ、完全なる一枚板とは言えない、といったところですか」
どうやら、得られる情報はこれが限度だろう。あとは……戦いのみ。
ディアナと薔薇星は、
「……それじゃ」
「……本来の戦いを、始める頃合いですな」
頷き合った。
手勢がやや心もとない。とはいえ誰かが助太刀に来てくれるとしたら、泥酔しているこの状態なら、容易に接近できるだろう。
酒の宴はここまで。ここからは、斬り苛む戦いの時間。
ディアボロスたちは、戦いへと……、
己の心を切り替えるのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【エイティーン】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
ディアナ・レーヴェ
気色悪さで若干フラフラはするけど、まあ大丈夫、戦える!
(カラリと笑う)
(背筋を伸ばせ。前を向け。――進め!)
端の方で寝てる亜人にそっと近より、柔らかく微笑みながら、敵の胸に額をつける形でしなだれかかるわ。
起きるなら「そろそろ『良いこと』の時間じゃない?」と囁き更に擦り寄り――その影で用意してたパラドクスのナイフで急所部を一突き、先制攻撃としましょう。
(流れは薔薇星の通りパラドクス通信で内外に共有済。私は3・2・『1』に重なる位で上記の通り刺す想定)
以降は敵の顔色をよく観察し動く。
酔いや動揺が深い奴には考える隙も与えず速攻。
激高する敵はフェイントの連続で引っ掛けてグサリ。
冷静な奴には…もしかして私より薔薇星向きかしら?
なかなか趣きある舞台背景ねえ!
存分に目も心も奪って、作戦行動とか考えられないようにしちゃえ!
…
(作戦上使える物は何でも使うのが私の前時代からのルール。だから今回の動きも正しいもの――それでもグルグル考えはする。ゴワついた欲の手。濁った視線。冗談じゃない。私は***のものだ)
薔薇星・パッフェ
連携アドリブ歓迎
作戦が綺麗に嵌ったか、善哉善哉
作戦は第2幕へ
フッ、頼れる仲間ならもう呼んでいる
獅子堂君と音無君に【パラドクス通信】で状況を報告
手筈通り敵を骨抜きにした。我輩たちはこのまま中から攻撃を仕掛ける、二人は外から攻撃をしてほしいのだ
挟撃となるようにタイミングを合わせることが肝心であるが…。オーソドックスに3・2・1で仕掛けようか
っと、少し細工をさせてもらおう。寝ている山羊頭たちの角を此糸で結んで…、これでお互いの足を、いや角を引っ張り合ってくれたまえ
さて…準備は良いかね?では、3・2・1!
この機を逃す手はない
複数人を対象とするパラドクスを使用、幻影と『acteur』と共に敵を蹴散らそう
淑女たちのダンスは如何だったかな?
美しい幻影に見惚れたまま散りたまえ!
此糸の仕掛けが働いて敵が互いを引っ張りあうなら、その隙にまた攻撃を叩き込みたいものだ
敵が戦闘態勢に入ったら仲間との連携を意識
互いにフォローしあえるような距離で戦おう
…有利な状況だが腕に覚えのありそうな隊長と羊頭には注意であるな
音無・サカハ
*アドリブ・連携歓迎
剣闘士ーーグラディエーターか、残念ながらお前たちと遊ぶ時間などない
ここは皆との連携で一気に倒してやるぜ、じゃまずは【パラドクス通信】で皆と話し合おう
ふむふむ、なるほど、こういうことが—――よし、状況は理解した
ならばここで外から一気に焼かれてやるぜ!
さって、まずは信号待ち、信号か来る前に待機だ・・・よし来た!「3・2・1!」だ!
サモンデバイス、セット!パラドクス起動!さぁ、行くぜプロミネンス・ドラグナー、お前の炎で奴らを焼き尽くせ!
「いけぇ!プロミネンス・ドラグナー!」
獅子堂・崇
アドリブ連携歓迎
状況はわかった。ありがとう、ディアナ、薔薇星さん。予定通り俺たちは外から攻めよう。
……それにしても亜人というのはろくでもないやつが多いな。こんな連中を新宿島に入れさせるわけにはいかない。こいつらはきっちりここで片付けてしまおう。
【パラドクス通信】で連絡を取って襲撃のタイミングに備える。カウントダウンまでは気付かれない範囲で近づいて物陰に潜んでおく。カウントダウンがの「1」のタイミングで物陰から飛び出して仕掛ける。
近くにいる二人と遠距離のサカハの攻撃が先になるだろうから、皆の攻撃で起きて立て直そうとしているやつを優先して狙う。お前たちにはこれ以上なにもさせはしない。
立ち上がったところを上段回し蹴りで顔面を蹴り抜いて自慢の角諸とも吹き飛ばす。
どれどけ訓練してきたのかは知らないが、こうなっては形無しだな。
●『酒』は、戦いにおいて注意すべきである。
「……さて。『acteur』よ、第二幕を開始するとしようか」
人形へ語りながら、薔薇星・パッフェ(役『吸血鬼 薔薇星・パッフェ』・g10767)は、
大きな木箱の陰で、状況を整理し始めた。
「まず、地形と場所の確認と」
この駐屯地、『亜人剣闘士』たちが駐留。平坦な荒野の真ん中で、物資の箱やテントが放射状に置かれている。中心部には、やや豪奢なテント。
肝心の『亜人剣闘士』たちは……、現在ほぼ全てが南側に集まり、酔いつぶれていた。持ち込んだ酒と燻製肉は、既に無い。
「……そちらは、大丈夫でありますかな?」
と、薔薇星は、ディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)に問いかけた。
「……まあ大丈夫、戦える!」
カラリと笑った彼女だが、若干ふらついているのを薔薇星は見て取った。
先刻に亜人たちの酌をした時に、さんざっぱら尻や太腿、羽などを触られていたのだ。薔薇星ですら、見ていて嫌悪を覚えていた。
「……まだ立てるし、歩ける。傷もない。ならば……何をすべきか、言うまでもないでしょう?」
カラ元気だが、まだ元気。明るく言い放つディアナだが、
「……背筋を伸ばせ、前を向け……そして……『進め』!」
薔薇星は『聴き』逃さなかった。
彼女が己へ、小さく呟いて言い聞かせているのを。
「……では……甘美なる復讐の美酒を口にするとしましょうぞ。その手伝いの人間も……」
既に手配はしていますと、薔薇星は『パラドクス通信』を開いた。
「……ふむふむ、なるほど。そういう事か」
「状況は分かった。それじゃ予定通り……俺たちは外側から、二人は内側から攻撃するって事で」
「頼みましたぞ。お二方。後でもう一度、連絡を入れます。オーバー(通信終了)」
「オーバー……さて、状況は理解した。あとは……」
「実行あるのみ、だな」
駐屯地・外部。
やや離れた場所にて、二人の男がそこに立っていた。
「……ここは、皆との連携で、一気に倒してやるぜ」
一人は、黒髪の青年。
デジタルサマナー、
ガジェッティア、
人間。
その名は、音無・サカハ(流星の風来坊・g10149)。
「……ああ。それにしても、亜人はろくでもない奴が多いな。きっちり、此処で片付けてしまおう」
かたや、逞しい体つきの、ボサボサ頭な男、
破軍拳士、
デストロイヤー、
同じく人間。
彼の名は、獅子堂・崇(破界拳・g06749)。
「それじゃあ、襲撃のタイミングは……」
「薔薇星の方に合わせる、だったな」
と、駐屯地へと接近する二人。
アルコールの効果が今少し持続するようにと祈りつつ、彼らは歩を進めた。
●八岐大蛇や酒呑童子も、『酒』で弱体化した。
駐屯地。
いびきをかく亜人……先刻に色仕掛けした、牛頭と馬頭……の近くで酔いつぶれている、大牛頭と大馬頭に、ディアナはしな垂れた。
そいつらは先刻の牛頭と馬頭の部下で、そいつらの二倍以上の体格を有していた。
ディアナはそいつらへ、そっと近寄ると、
「……ねえ、起きてるんでしょう?」
囁いた。
『……あ? なんだ?……ヒック』
『……お、起きてる……ぜぇ……?』
その二体も目覚めた。まだ朦朧としているが。
柔らかい微笑を浮かべ、ディアナは、そいつらの胸に額を擦りつけ、
「……そろそろ、『良い事』の時間じゃあない?」
甘い口調で囁き、そいつらの好色そうな顔つきを、更に緩ませた。
『……3……』
薔薇星のカウントダウン、開始。
その薔薇星は、細工をしていた。
「……山羊頭は、何処に? まあ、この羊頭に……」
鹿頭や野牛頭などの亜人たち、その角に、丈夫な糸を結んでいく。しかし、山羊頭は見当たらない。テント内に引っ込んだか?
「……これでお互いの足を、もとい、角を、引っ張り合ってくれたまえ」
『……2……』
カウントダウン、続行。
「さって、まずは信号待ちだ」
駐屯地は目前。サカハはそこで、待っていた。
「……カウントダウンが終わった、その時に……」
先刻に話し合ったように、己のパラドクスを叩きこむ予定だった。
『……1……』
ディアボロスたちの瞳に、輝きが宿る。
(「……今だ!」)
崇は、いち早く物陰から飛び出し……、
(「『ゼロ』の直前、このタイミングで仕掛ける!」)
駆け出し、走り、
亜人たちへと接近していった。
そして、
『……ゼロ!』
その時も、訪れた。
「サカハ君、お願いします!」
「了解! サモンデバイス、セット!」
サカハは、己が携えているサモンデバイス『アズールフレイム』を起動。
「サモン! 『プロミネンス・ドラグナー』!」
『それ』を、呼び出した。
『それ』の、色は蒼、纏うは蒼き火炎、姿は雄々しき竜。
召喚に応じ参上した『それ』は、蒼き炎を纏うドラグナー!
「……いけぇ!『蒼炎と竜星の息吹(プロミネンス・ファイヤー)』!」
蒼炎の竜は、召喚者に従い、蒼炎の息吹を放つ!
聖なる蒼き炎がもたらす輝きは、天空より飛来する流星群のよう。弾幕が如く、亜人たちの駐屯地へ容赦なく降り注ぐ。
『!? なんだっ!』
『あ、熱ぃ! これはっ!?』
『敵か!? ……ぎゃあああっ!』
炎は、略奪と侵略を企む亜人たちを燃やしていく。
それでも、火炎を逃れた亜人はいた。
『くそっ! 敵の本拠地を略奪しなきゃならねえってのに……ひっ!』
「……それは『不可能』だ」
亜人の一人へ、その顔面へ。崇の上段回し蹴りが決まった。角を折られた水牛頭の亜人は、
「はーっ!」
崇の更なる一撃で、引導を渡された。
「……お前たちは、ここで果てる。ゆえに、これ以上の略奪や侵略は『不可能』だ!」
言い放つ崇に、
『……ざけんな!』
『俺たちが死ぬわけが……!』
角を持たぬ、獅子頭や熊頭の亜人たちが向かうが、
全員が例外なく、崇の前に倒され、果てていった。
「……どれだけ訓練したかは知らないが、こうなっては形無しだな」
彼は呟き、倒れたそいつらを一瞥すると、
サカハの蒼炎が、亜人たちを焼き殺す様を見守っていた。
●『酒』で、魔竜ヴリトラは討伐、神蛇ケツァールは追放された。
『……あ?』
ディアナのナイフは、大馬頭と大牛頭の急所を刺し、命を奪った。
『……おい姉ちゃん? ……ぐえっ!』
『な、なんだ……ひっ!』
サカハの炎と、崇の打撃音。
それに驚き、目を覚まし動揺している亜人たちは、
眠ったままの亜人たち同様に、ディアナのナイフにより果てていく。
「後は……ひっ?!」
が、ディアナはいきなり手首を捕まれた。
掴んだのは馬頭で、その近くには牛頭。先刻に酌をした、あの二人だ。
『部下共を殺るとは、恐れ入ったぜ』
『だが残念だったな、俺たちはあの程度の酒でつぶれはしねえ!』
「は、放して!……気持ち悪い!」
『そう言うなって。どうせ敵だろ?』
『お前の仲間は、俺たちの仲間が殺す。その間、俺たちでお前を味わってやるぜ』
(「……だめ! 逃げられない!」)
ナイフが、ディアナの手から落ちた。
『……ん?』
周囲の喧騒に、目覚めた羊頭は、
野牛頭、鹿頭などの、角のある亜人たちとともに立ち上がった。
が、
『うわっ! なんだこれ!?』
『おい! 俺の頭に何か……』
『てめえ! 何しやがる!』
細く、長い『糸』が、角に結び付けられていた。それは互いの動きを封じ、パニックを誘発。引きちぎろうとしても、弾力がありちぎれない。
「……皆さん、Good Morning」
しれっと近くに立つ薔薇星を見つけた羊頭は、
『てっ、てめえ! 騙しやがったな!』
立とうとする。が、それはかなわない。
『おい離れろ!』
『てめえこそ離れろ!』
『くそっ、動けねえ!』
数体、否、数十体の角持ち亜人らは、戦うどころか立つ事すらできない。
「……では酔い覚ましに、ダンスはいかがかな? ……『acteur』!」
『acteur』が薔薇星とともに並び立ち、周囲に『幻影』が顕現する。
舞踏会が行われる古城の『幻影』。そこで踊る、舞踏会の参加者たち。
「さあ、一曲踊りましょうぞ! 『古城の見る夢(コジョウノミルユメ)』!」
薔薇星、『acteur』、そして幻影の紳士淑女たち。亜人たちはそれらが踊りつつ、ぶつかられ、蹴られ、踏みつけられ、突き飛ばされていく。
「淑女たちのダンスは如何だったかな? 美しい幻影に見惚れたまま……散りたまえ!」
薔薇星の前に、
『お、おのれえええっ!』
『ぎゃああああああっ!』
反撃も、逃走もできず。亜人たちは、幻影の中に散っていった。
「……ねえ、お願いよ。近づかないで」
馬頭に捕まり、牛頭に近づかれたディアナは、慌てていた。
『やなこった。嫌がる顔を見るのも好きなんでなぁ』
『離れねえぜ? たっぷり舐め回してやる』
下卑た笑みで、迫る二体。
だが、
「……そう。なら、あなたたちの『負け』ね」
言い放ったディアナは、自分の両手首を握る馬頭の金的を、蹴り上げた。その衝撃で、手が離れ解放される。
『……痛え!』
股間を押さえる馬頭。そして、
『……な、なんだああっ!?』
次の瞬間。牛頭は、何かに引っ張られ『倒れた』。
『な、なんだ? 何が起こった?』
馬頭は思わず、相棒を凝視する。
「……言ったでしょ、『後悔する』って!」
と、ディアナは取り落としたナイフを拾い、牛頭の胸、心臓を貫いた。
『ぎゃああっ!』
『……てめえ! そいつに何をした!』
「……答える必要はないわ!」
うそぶくディアナだったが、実は『仕込んで』いた。
先刻に腕を捕まれた時。牛頭の角に、輪にした『糸』を引っかけていたのだ。
行動を起こす直前に、彼女は薔薇星から言われていた。
「……ディアナ嬢。そちらの亜人にも、角を持つ相手がおりましたら……角に『糸』を引っかけるとよろしいかと。うまくいけば、我輩の『古城の見る夢』を発動させた際、隙を作る事が出来る故」
まさしく、ディアナが結び付けたその『糸』は、羊頭たちの亜人の角に繋がっていた。
そして、薔薇星がパラドクスを発動させると。
暴れまわる羊頭たちにより、牛頭もまた糸に引っ張られ、バランスを崩され倒れる羽目になったのだ。
『……ふん、まあいい。お前は俺が……』
馬頭は、盾と剣を構えたが、
それ以上は、進めず、言葉も出なかった。
その代わりに、悲鳴を上げる。
「……『お前は俺が』? 何?」
ディアナの嘲るような言葉にも、答えない。否、答えられない。
こっそり近づいたサカハが、馬頭の真後ろから『プロミネンス・ファイヤー』を浴びせたのだ。
「ディアナ! 大丈夫か?」
「ええ、タイミングばっちりよ!」
蒼炎に包まれ……馬頭も果てた。
しかし。
「……やはり、君は要注意人物だったな」
羊頭たちを全て倒した、薔薇星の前に、
『……ふん』
山羊頭。亜人たちのリーダーが、姿を現していた。
●『酒』は戦士にとり、高揚の百薬であり、破滅をもたらす毒でもある。
『古城の見る夢』を放った直後。
薔薇星は羊頭以下、亜人たちをほぼ倒した事を知った。
「あとは皆の活躍で、掃討できるだろう……」
そう呟いた、次の瞬間。
「!? ぐっ……!」
『acteur』に突き飛ばされ、その直後。
『シールドブーメラン』、投擲されたシールドに襲われた。
『acteur』もまた、シールドの攻撃を受けてしまい……地面に叩きつけられた。ダメージが大きいのか、中々立ち上がらない。
そこに、山羊頭が姿を現した。
『……最初から、怪しいと思っていた。だから泥酔したふりをしていたが、案の定だったな』
山羊頭は、得意げに言い放つ。
「……こちらも、見通しが甘かった事。反省しきりである」
薔薇星も言い返した。
『酒と肴は美味だった。それに免じ……一撃で殺してくれる』
一歩を踏み出す山羊頭。だが、
「……ならば、そこの山羊。俺と勝負だ」
崇の声が、響き渡った。
『……ほう、拳士か』
亜人は、崇へと視線を移した。
「……ああ。お前の部下たちは、俺と、仲間が片付けた。生き残っているのは……お前だけだ」
彼の言葉に嘘はない。実際、目覚めた亜人たちもほぼ全てが倒されていた。
山羊頭は薔薇星を一瞥し、
『……ふん。見通しが甘かったのは、俺の方も、だったか。俺一人が生き残ったところで、部下が居なければ……無意味』
そして、
『では拳士! 行くぞ!』
「応!」
崇へと、向かって行った。
「! ちっ!」
崇を、山羊頭の『獣焼きの火』が襲う。横に転がって躱すも、
『もらった! シールドバッシュ!』
盾を叩きつける山羊頭。その強烈な攻撃は、躱す暇もなかったが、
崇は、両腕で防御しつつ受けきる。
『!?』
「次はこちらから行くぞ!」
と、崇は両拳を握りしめ、拳の連打を放った。
『ぐっ! ……くうっ!』
盾でそれを受ける山羊頭だが、
『だめだ! 受けきれない!』
そして……、渾身の一撃とともに、山羊頭の手から弾き飛ばされた。
が、
『かかったな!』
「……!?」
崇は悟った。山羊頭は『あえて盾を捨てた』のだと。
バランスを崩し、構えが一瞬解ける。
その隙に、山羊頭は剣を振りかぶり、崇の脳天へと、
振り下ろした。
「……あれは……崇さん?」
「間に合わない!」
敵を掃討し終えたディアナとサカハも、駆けつける。が、遠すぎて援護が出来ない。
山羊頭は勝利を確信したのか、笑みを浮かべていた。
●故に言われる。酒は飲んでも、飲まれるな、と。
「……いや、まだだ!」
だが崇は、それを躱し……亜人の刃を横に弾いて、その剣筋を狂わせた。
『……!?』
次の瞬間、
「これは……避けられないぜ!」
天を裂くほどの勢いとともに、崇は山羊頭へ、強烈な上段回し蹴りを放つ!
蹴りは完璧に、山羊頭の頭部に決まった。角をへし折り、生じた旋風は亜人を身体ごと吹き飛ばす。
山羊頭は、地面に強烈に叩きつけられ、転がされた。そのまま大きな資材の木箱にぶち当たり、バラバラに吹っ飛ばし、ようやく勢いは止まった。
これぞ『我流破界拳・驚天(ガリュウハカイケン・キョウテン)』。数多くの武術を学んだ崇が、編み出したパラドクス。
山羊頭は、立ち上がれない。
『……み、見事……」
首も折れ、亜人はうめいていた。
『……だ、だが……お、オリュンピアス、様は……もっと、強い、ぞ……』
「オリュンピアス? アヴァタール級か?」
崇が訊ねると、
『……そ、そうだ。彼女を、見たら……に、逃げるが、いい。で、でないと……』
その時。
いつの間にか、そこに新たな亜人が現れていた。
仲間は全員倒したはず。まだ生き残りがいたのか?
いや、何か『おかしい』。山羊頭は、倒れつつ恐怖の表情を浮かべていたのだ。
「崇君、何かまずい! 離れろ!」
薔薇星の警告に従い、崇が離れるのと、
そいつが、倒れている山羊頭に飛びついたのは、同時だった。
次の瞬間。
亜人は、山羊頭を巻き込み、爆発した。
爆風を受けた崇だが、
「……崇!」
「崇君!」
「……大丈夫だ!」
離れたため、無事。
しかし、
「「……!?」」
直後、おぞましい感覚がディアボロスたちを襲った。
「……な、何よ。これ……」
ディアナは思った。こんな感覚を味合わされるくらいなら、先刻の亜人どもに嬲られた方がましだと。
彼女だけではない。全員、冷や汗を流している。
ディアボロスたちは、恐怖を無理やり抑え込み、
(「……負けない!」)
警戒の目を光らせた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【無鍵空間】LV1が発生!
【エイティーン】がLV2になった!
【操作会得】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【ラストリベンジ】LV1が発生!
【アヴォイド】がLV2になった!
【ダブル】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
ディアナ・レーヴェ
(おぞましい感覚だ。精神を塗り替えられるような。気を抜けば愛も何もかもこの女亜人に捧げてしまいたくなる、そうすれば先の気持ち悪さも悩みも記憶も全部ぜんぶきえてきっと幸せに)
――好き。
(いつしか手にしていた【火砲】を、ゆっくり味方に向け)
好き。好き。大好き。
私はいつだって――
(精神疲労の溜まった者から誘惑攻撃に陥落する、それはきっと自然な事で、)
――『あの人』の事が大好きなのーーーッ!!
(…っていう風に『誘惑にやられたフリ』で隙を生み出す【Zählen bis drei】。振り向きざま、油断した敵ど真ん中を火砲で狙い撃つわ!)
(なお『あの人』で思い浮かべるのがドイツ時代の『隊長』である事は、少なくともトループス戦で居合わせた面々は知っている。…その、実は『もう一人思い浮かべた』のは内緒だけどね?)
(当然頭はガンガン痛むが根性で笑おう)
ふっ、こちとら元より頭痛持ちよッ!!!
二手目以降は薔薇星の目眩ましも活用しつつ囲んで叩きましょう!
元々私は砲撃手だからね、接近型の皆をバッチリ援護するわ!
薔薇星・パッフェ
山羊頭君の警告に従いたいが
我輩たちは酒や食料を快く提供してくれた新宿島の方々の想いを裏切るわけにはいかないのだ
(ディアナ嬢の心をすり潰すようなもてなしに報いる為にも、とは言わない。それを口に出すと彼女の尊厳を更に傷つけそうで憚られる)
…『acteur』よ、悪いがもう少し力を貸してくれ
アヴォイドを、凄まじい幸運を蜘蛛の糸に縋る想いで重ねたが望み薄か
蜘蛛の糸よりも紫の糸を信じよという事であるな
我輩と『acteur』とで敵を挟むように動く。互いに此糸を繰って張り、巡らせた糸で敵の動きを妨害
翼に糸が絡まればさぞ厄介だろう
パラドクスは混戦時、または戦況が不利になったら使用
特殊効果は我輩たちの姿を遮って有利な環境を作ってくれる
入り乱れた状態での戦闘に、仕切り直したい戦況に適当だろう
特殊効果に紛れて威光の杖で殴打し攻撃
誘惑など我輩には…『acteur』?
敵はあっちであるぞ!?
全然操作が効かんな。役を与えて鎮めよう
脚本を開き死者の役を与える
これで動かずにいてくれるだろう
…咄嗟とはいえ惨い配役だ、すまない
音無・サカハ
さって、残るのはこいつだけか
ネメシス:モード・ゼファーを起動--闇を焼き払う覚悟の炎、見せてやぜ
でもなんか仲間たちの様子が変だ…まさか既に誘惑攻撃を受けたのか!
こうしちゃいけない、ここで一発で勝負を決める
ただし今の乱戦状態だと仲間たちを巻き込む可能性が高い、だとしたらやるべき事が一つ
ゼロ距離で叩き込む!そうするしかない!俺のスピードについて来れるか?
うん?誘惑?あ、確かにすごい魅力的だが――
「残念ながら俺は予約済み――愛している人と比べると、お前はただのハリボテだ!」
この程度の攻撃ならまだ何とかなる、俺はそれだけでやられるほど弱いじゃない!(レベル64)
パラドクス起動!距離を取って発射体制に入る。柔の風の炎よ、我を支えよ
そして闇の炎よ、我が敵を焼き払え!
ゼロ距離X BLAZER発射!大蛇だろうが衝撃波だろうか、この覚悟の炎の前では無力!
さぁ、無に帰れ!
獅子堂・崇
アドリブ連携歓迎
(さっきまでの相手とは比べ物にならない威圧感)
なるほど、こいつは強敵だな。だが、だからといって逃げるわけにはいかないな。むしろ、こいつはここで倒しておくべきだ。
皆の様子がおかしいな。敵になにかされたか?
それなら復帰するまでの間、俺が時間を稼ごう。(復帰できることは信じて疑わない)
率先して前に出て、真っ向勝負を仕掛ける。俺にできる最大の一撃だ。
衝撃波もなにもかも、まとめて吹き飛ばしてみせる。空高くジャンプして念動力で加速した急降下の飛び蹴りを食らわせる。
俺がオリュンピアス止めを刺す必要はない。次に繋がればそれでいい。
反撃は念動力を通したバンデージを使ってしのぐ。
皆が正気に戻ってからが本番だな。ディアボロスは集まってからが強いものだ。
ここから先の攻撃、簡単に凌ぎ切れるとは思わないことだ。
●蛇、それはかつて、アダムとイブをそそのかした存在
ディアボロスたちは、駐屯地内に充満した『怖気』を目の当たりにして、立ち直るのに時間をかけすぎた。
五秒もかかったのだ。最初の二秒で、怖気に打ちのめされそうになり、ここから逃げたいと思ってしまった。
だが、残りの二秒でそれを押しとどめ、最後の一秒で闘志を再び燃やす。
(「この感覚、一体
……!?」)
薔薇星・パッフェ(役『吸血鬼 薔薇星・パッフェ』・g10767)は、混乱しそうな自分を何とか御し、先刻の亜人剣闘士……山羊頭の言葉を思い出していた。
『オリュンピアスはもっと強い。彼女を見たら逃げるがいい』
この後に『でないと……』と付けていたが、何が起こるのだろう。あと少し生きのびていたら、その後の言葉も聞けただろうか。
(「だがしかし! 我輩たちは逃げるわけにはいかない! 協力してくれた新宿島の人々の想い、裏切るわけにはいかないのだ!」)
と、彼は自身のパラドクスの効果……『アヴォイド』、すなわち幸運を授かる効果に賭ける。
だが、幸運を欲しているのは、仲間たちも同じ。
「……大丈夫か? なんだか……皆の様子が変だが……」
音無・サカハ(流星の風来坊・g10149)が、心配そうな様子を見せる。
聞かれた獅子堂・崇(破界拳・g06749)は、
「問題は無いぜ。だが……俺が時間を稼ごう」
両拳を握り、気配の元がどこかを探っていた。見たところ、彼はこの感覚に飲まれてはいないようだが……まだ、気になる。
「…………」
そして、最も影響を受けているらしいのは、ディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)。
『気味の悪い嫌悪感』と、『身を任せてしまいたくなる恍惚感』とを、同時に感じているような表情を浮かべていたのだ。
(「……何? この『奇妙な感覚』は!」)
ディアナは感じていた。例えるなら、『悪臭を嗅がされているのに、なぜかもっと嗅ぎたくなる、なりつつある』ような、そんな気分を味わっていたのだ。
もっと言えば、『精神そのものが塗り替えられる』かのよう。嫌悪しているのに、その嫌悪が『本当に嫌悪なのか? 実は許容しているんじゃないか?』と言われ、それを聞き入れているかのよう。
何より恐ろしいのは、この気配を発する『何か』に、身も心も捧げてしまいたい、と思い始めている事。
「くっ……このおっ!」
自分をおかしくする『何か』がいるなら、先手必勝!
『火砲』を、手持ち式の重キャノンを取り出し、構えると、
「! ディアナ? おい、何を……」
崇が止めるのも聞かず、そのまま引き金を引いた。
放たれた砲弾が、中心部の豪奢なテントに直撃。爆発し、燃やした。
だが、気配は……消えない。『何か』は、まだ存在している。
『……あらあら、随分と過激な事をするのね』
どこからか、その『何か』らしき存在の声が聞こえてきた。
他のディアボロスも反応しているため、これは物理的な音声だろう。ディアナだけに聞こえているわけではない。
『……ねえ、あなた……そう、銀髪のあなたよ。少し、お話ししない?』
そう言って、テントのすぐ脇に置かれた木箱が『内側から』開くと、
おぞましき、蛇の女怪が、その姿を現した。
それは『美女』。それも、驚くほど穏やかな印象の美女だった。
背中には黒いが、小さめの翼を持ち、豊かな両胸を薄布の服で覆っている。
黒髪は短くまとめられ、眼差しは優しげなそれ。薄い褐色の肌が醸し出すは、清楚な雰囲気。
その手に持つは、丸めた鞭。
そして、下半身は……長大な蛇のそれ。女怪ラミアのごとく、腰から下は長く伸びる蛇の胴体と尾になっており、その鱗は黒く鈍色の光沢を見せている。
その黒い蛇の尾には……人間大の大きな白蛇二匹が、まるで甘えるように身体を絡みつかせていた。ニシキヘビの類よりも一回り大きい。
その白蛇たちも含め、彼女からは……良い臭いが漂ってくる。とても魅力的で、とても心地良い香りが。
『初めまして、私は「オリュンピアス」……あら、怖がってるの?』
艶っぽく、囁くように言った彼女は、
『怖がることはないわ、お友達に……なりましょう?』
あくまでも自然に、しかし、とろけるような口調で、皆にそう告げた。
『……さあ、そこのかわいいレディ。あなた、とても素敵』
それを聞いたディアナは、
「……っ、『おぞましい』!」
己に言い聞かせるように、言い放つ。
気を抜けば身も心も、愛さえも、『全てこの女亜人に捧げてしまいたくなる』ような、そんな感覚が強まってくる。
……でも、それのどこが悪い?
よく見ると美人。蛇の部分も、連れている蛇も、醜くはない。むしろ可愛い。
それに、身を委ねることに何か問題でも? 全て任せたら、『嫌悪感』も、『悩み』も『記憶』も、全部ぜんぶきえてきっとしあわせに……、
そうだ、彼女は悪くない。『安心感』をくれる。蛇だの亜人だので抵抗する事自体がおかしい。嫌い? ううん、むしろ……、
「――好き」
いつしか、手にしていた『火砲』を、
仲間たちへ、ディアボロスたちへと、ディアナはその砲口を向け、
その引き金に、指をかけた。
「「「!?」」」
ディアボロスたちは、それを見て驚愕の表情を浮かべた。
「ちっ! 『acteur』よ、我輩たちだけで、あの蛇をやるぞ!」
と、人形を操りつつ薔薇星は、オリュンピアスの方へと向かう。
そして、ディアナは味方に向けた『火砲』を構えると、
「……好き、好き、好き……大好き。私は、いつだって――」
ぶつぶつと呟きつつ、狙いを付けた。
その様子を、オリュンピアスは微笑みつつ見つめていた。
『予定通り』とでも言いたげに。
そして、
「……あの人が、大好きなの―――ッ!」
叫ぶように、迸るように言いつつ。ディアナは発砲した。
●同時に蛇は、無限を意味するウロボロスの象徴、不老不死の体現者
「……ちっ! かなりの威力!」
なんとか、その火砲の砲撃を躱したサカハは、彼女に飛びつき、その火砲を落とす。
「様子が変だ……と思っていたら、まさか既に誘惑攻撃を受けたのか!」
サカハに続き、横に転がって躱した崇も、ディアナの首筋に手刀を入れ、気絶させる。
「どうやら、その様だ!」
そして二人は、戦闘態勢を取る。
(「……それにしても、何て『威圧感』だ! さっきまでの相手とは、比べ物にならない
……!」)
崇は目前の、オリュンピアスを見据えた。
彼に続き、サカハも、
「……ネメシス:モード・ゼファーを起動……! 闇を焼き払う『覚悟の炎』、見せてやるぜ!」
新たなる戦闘態勢を取る。
(「……彼女が復帰するまでの間、俺が時間を稼がねば!」)
と、率先し前に出た崇は、
両拳を握りしめ、それらをもって殴りかかった。だが、オリュンピアスはそれらを、奇妙に体をくねらせる事で回避。
『……『白黒蛇舞』!』
そして、鞭を奮う。その長くくねった鞭が、文字通り蛇のように空中を切り裂くごとに、
『衝撃波』が発生。崇へと襲い掛かった。
「……そんなものに、負けるか!」
己の拳を奮い、その衝撃波を吹き飛ばした彼は、大きく跳躍。
空中からの蹴りを放たんとするが、
「!?」
その片脚に、白蛇の片方が巻きついて、強引に地面に叩きつけられた。
「ぐわっ!」
『どうしたの? その程度?』
オリュンピアスの問いからは、『余裕』が感じられた。お前たちなど、脅威ではないという余裕。
しかし、
「俺のスピードについて来れるかッ!」
『ネメシス:モード・ゼファー』を起動させたサカハは、
両腕を、対称になるように構え、そのまま突撃した。
その勢いのまま突進し、若きイタリアマフィアの頭目候補は、最速かつ必殺の一撃を放たんとする。
だが、接近した途端、
(「!? ……『誘惑』かっ!」)
『蛇后の誘惑』の、蠱惑的な香りが彼を襲った。
それは、彼が思う以上に強く、濃く、魅惑的で魅力的。一瞬……彼の判断力を誤らせ、彼自身の動きも、ためらいを見せつつ止まった。
……それが再び動き出すのに、時間を要した。3秒もかかったのだ。
「すごい魅力的だ。だが! 残念ながら俺は予約済――愛している人と比べ、お前はただのハリボテだ!」
叫びつつ、パラドクスを放つ体制に入る。
「もらったぜ! これを食らっても余裕かませるか!」
だが、放つ直前。
「……え?」
いきなり彼の『両脇』に、オリュンピアスに似た、女怪が『二体』。
サカハを挟み込むようにして、飛びつき、地面へと押し倒したのだ。
『……私に集中しすぎて、周囲への注意が散漫になってたようね。ふふっ、おばかさん』
まるでカモを騙した娼婦のように、オリュンピアスはサカハへ微笑んだ。美しく、優しげ。それでいて、実際は見下しているという……心底腹の立つ微笑だった。
(「こいつらは、一体!?」)
先刻に、あの亜人剣闘士を、山羊頭の奴を押さえつけ、爆発した亜人がいたが。そいつの仲間か? まだ亜人が生き残っていたのか?
とっさに考えたサカハだったが、
『ああ、その子達には優しくね。でないと……「爆発する」わよ?』
と、改めて笑みを。
構うかと、片方を突き飛ばしたサカハは、
「!?」
そいつが爆発し、その爆風と衝撃波を食らってしまった。
『……「幻影亜軍」。夢まぼろしの、亜人の軍勢。これは最弱だけど、それ故に最強。……呼び出す数は無数、そして消え去る時に爆発するのよ。いかがかしら?』
オリュンピアスの『余裕』は、あくまでも崩れない。
そして、ディアナは。
「……好き、好きなの……あなたが……好き……」
先刻の当身から、意識を戻しつつあった。が、まだ味方側に戻ってはいない。周囲に向けた火砲の先は、あちこちにぶれている。
地面に叩きつけられた崇は、その様子を横目で見つつ、なんとか立ち上がる。
「……サカハ! 大丈夫か! 今行く!」
崇がサカハを助けんと、彼に近寄る。
が、
もう一体の幻影亜人が、今度は崇に飛び掛かり……爆発した。
「ぐっ……ああああっ!」
『あらあら、もう終わり? 情けないわねえ』
残念そうに嘆息するオリュンピアスだったが、
「いいや、これからだ。マドモアゼル!」
彼女は知った。
薔薇星が、彼の人形『acteur』とともに、自分を挟んで立っている事を。
「幸運が我輩に味方した! この糸を以て絡めて……」
『ふぅん、面白いですね。でも……』
しかし、やはり、
オリュンピアスの『余裕』は崩れない。
『……その人形、貴方が操っているようですが、この私が「誘惑」してしまったら、どうなるでしょうね?』
「なんだと?」
その言葉を聞き、薔薇星は、
すぐに、その意味を理解し、理解『させられた』。
●そして蛇は、人に知恵を与えた存在、竜種のモチーフでもある
「何を考えているか知らぬが、誘惑など我輩には……『acteur』?」
自身の愛しき人形が、自分の命令を受け付けない事に気付いたのだ。勝手に動き……否、別の誰かの命令を聞き、こちらからの操作を受け付けない。
「敵はあっちであるぞ!? おい、『acteur』!」
『どうかなさいまして? 言い忘れていましたが、私の『蛇后の誘惑』……男女や生物のみならず、「無機物」にも、効果があるのですよ?』
「……くっ!」
まさに大ピンチの場面。ここからどう、逆転劇を見せるべきか……!
薔薇星は考えたが、思い浮かばなかった。
(「状況を確認するのである!」)
そう、いつだって詰まった時には、『確認』する事で、状況の打破をするもの。それは全てにおいて例外はない。
考える時間はない。ゆえに……高速で思考する。
崇殿、サカハ殿は、敵たるオリュンピアス……蛇の令嬢のパラドクスの前に倒れている。
『幻影亜軍』、召喚した幻影の亜人たちは、飛びつき爆発する。すなわち歩く爆弾のような存在。サカハ殿と崇殿は、この爆発に巻き込まれてしまった。
それを用いずとも。『白黒蛇舞』、鞭と二匹の大蛇の攻撃が、組んで良し離れて良しの攻撃を放つ。
接近戦はもちろん、間合いを取っても衝撃波を放ち攻撃。
これでもまだ足りぬとばかりに、かの女怪は『蛇后の誘惑』というパラドクスを持つ。……種族、性別に関係なく、無機物ですら『誘惑』し操る事が可能。ディアナ嬢はその魔手に捕まってしまい、操られている。
信頼していた仲間だけでなく、道具すらも裏切らせ、己の武器に、戦いの道具や手足にするなど、何というでたらめな、そして強力なパラドクスか。
そして誘惑された『acteur』、愛しの我が人形は、様々な『役』を与え、動いてくれる……。
待てよ、それならば!
「……『acteur』! 君は死者だ! その命尽き、地に伏した者なり!」
途端にかの人形は、ぱったりと倒れ、動かなくなった。
『……? 何を、したの?』
「……『acteur』に、役を与えた。『死者』という役をな。死体は歩かず、動かない!」
オリュンピアスに、薔薇星は言い放った。
(「すまない、咄嗟とはいえ、惨い配役だ! すまない!」)
心の中で、『acteur』に謝りつつ、蛇の女怪を見据える薔薇星。
『……なるほどね。そのお人形は……あなたの大切な相棒で、役になりきって動かす、と言ったところかしら。死体ならば、確かに動かないし、動けない……けど……』
「!?」
非常に、ぎこちない動きで、
『acteur』が、再び動き出し、立ち上がらんとした。
「なっ
……!?」
『「なぜ、死体が動く?」と聞きたいかしら? 対象の定義を変えただけよ。「ただの人形」から「死体を演じる人形」にね。それを誘惑できない、とでも思ったかしら?』
「……っ!」
返答、できなかった。この敵は、思った以上に……厄介な能力と実力とを有している。
唯一、『acteur』の動きが非常に鈍いのが、幸いだった。おそらくは、抵抗しているのだろう。
この敵に相対したのが、薔薇星と『acteur』だけだったなら。勝てなかったに違いない。
オリュンピアスは、それを悟ったかのように言い放つ。
『さて、あなたを殺す攻撃は、どれを希望するかしら? 私の鞭と、誘惑。この蛇たち、或いは「幻影の亜人」たち。それとも、操られたあなたの人形? 希望に沿ってあげますよ』
オリュンピアスの、勝ち誇った顔に、
「……その前にそちらも、周囲をもっと注意するべきなのであるよ」
逆に、勝ち誇った表情を、薔薇星は見せつけた。
『……何を? 不利になり過ぎて、おかしくなったのかしら?』
言いつつ、オリュンピアスは周囲を見回す。
「……好きなのよ、わたしは! 『あの人』の事が、大好きなのーーーッ!」
先刻に、誘惑し手先としたディアナが、視界に入って来た。
『ほらごらんなさい。あの女の子も、私の「誘惑」から逃れられずに……』
オリュンピアスが言い終える前に、
「……Eins, zwei, drei ――」
独語で『三つ』数えたディアナは、
火砲を撃ち、それを蛇の女怪に命中させていた。
●人は蛇を畏れ、蛇を嫌悪する。
『!? ……な、何故!?』
オリュンピアスが戸惑うのを、火砲を手にしたディアナは見ていた。
頭がガンガン痛む。この『誘惑』に、逆らえば逆らうほど、この頭痛は酷くなるようだが、
「……ふっ、こちとらもとより頭痛持ちよッ! この程度朝飯前! どうという事は無し!……いたたっ」
と、再び火砲を撃つディアナ。その砲撃は二度、三度とオリュンピアスに直撃し、
『くっ! あああっ!』
蛇の女怪を、きりきり舞いさせた。
これぞ、『Zählen bis drei(ツェーレン・ビス・ドライ)』。
『三つ数える程度の時間内に、敵を惑わす簡単な嘘をつく』。そこから隙を産み出し攻撃するという、ディアナのパラドクス。
『……舐めるな! 我が誘惑の力、逆らう事は不可能と知りなさい!』
だが、怒りの形相を浮かべたオリュンピアスが叫ぶと、
「! ああああああっ!」
ディアナは激痛に頭を襲われ、火砲を取り落とし、そのまま崩れ落ちた。
「……ディアナ嬢が……」
やられた。薔薇星はそれを認めたが、
同時に、口元に笑みを浮かべた。
『次は、気取り屋! あなたよ!』
余裕が吹き飛んだオリュンピアスが迫る。が、
「……ならば、クライマックスだ!」
薔薇星に迫った目前に、いきなり世界が変化した。
紙吹雪が舞い、スモークが視界を奪い、テープが飛び交い、かんしゃく玉があちこちで爆ぜる。
「『climax↑↑↑AIR SHOT!(クライマックス・エアーショット)』! この舞台、ラストシーンが待っております!」
『ええい、うっとおしい! このような煙など……』
鞭を奮い、スモークをかき消したオリュンピアスは、
「隙あり!」
崇が、上空から降下しつつ攻撃してくる様を認めた。
「蹴り抜く!『我流破界拳・天衣(ガリュウハカイケン・テンイ)』!」
それは、猛禽が急降下し強襲するかのよう。崇は念動力で空高く跳躍したのち、急降下の飛び蹴りを放ってきたのだ。
逞しいその脚には、念動力が集中し、鋭い円錐状の光を纏わせていた。それはまるで、悪の怪人を滅ぼす、正義の英雄の一撃のよう。
『させるか! いけーっ!』
しかし、オリュンピアスは即座に、二匹の蛇を二重螺旋状に、ドリルの様に絡め、
回転させてその蹴りに対抗した。
キックの円錐vs蛇二匹の螺旋。勝ったのは、
「蹴り抜き……蹴り貫く!」
崇の『我流破界拳・天衣』! 白蛇二匹を千々に吹き飛ばし、その主人たるオリュンピアスに命中。その半身を吹き飛ばした。
『……ま、まだだっ!』
それでも、なんとか身体をくねらせ、その場から逃走を図るが、
「……ファンクション・クロス!」
すでに、近距離まで接近していた、サカハに追いつかれた。
『……ひっ!』
オリュンピアスの、恐怖にひきつる顔を見て。サカハは良い香りを嗅いだ。
相手の『蛇后の誘惑』だけではない。敵が放つ、『恐怖』の臭い。恐怖を感じている時に放つ臭い。それを嗅覚でなく、他の感覚で感じ取ったサカハは、驚異的なスピードを活かし、敵の懐に入り、そして、
「柔の風の炎よ、我を支えよ……そして闇の炎よ、我が敵を焼き払え!」
ゼロ距離で、『それ』を放った。
サカハが放つは、左手からの、姿勢制御の黒炎。そして右手からの、攻撃用の冷たく燃え上がる白き炎。
「『X BLAZER(クロス・ブレイザー)』! 大蛇だろうが衝撃波だろうが、そして誘惑だろうが、この『覚悟の炎』の前には無力! さあ……無に帰れ!」
火のように凍ったオリュンピアスは、逃走も、攻撃も、『幻影亜軍』の亜人を出す事すらできず……サカハにその動きを封じられ、
即座に、黒き闇火炎を叩きこまれた。
『…………ぎゃあああああっ!』
駐屯地に、オリュンピアスの、蛇の女怪にして、剣闘士亜人たちを率いるアヴァタール級、『黒鱗の蛇后』の断末魔が響き渡り、
その悲鳴が止むとともに、やがて、静寂が再び訪れた。
「……はあっ、はあっ、はあっ……思ったより、骨が折れたな。エスプレッソで一休みしたいところだ」
あの、『幻影亜軍』の爆発から逃れられたのは僥倖だったと、サカハは荒く呼吸しつつ思っていた。爆発の衝撃波は受けてしまったが、それでも致命傷を負わずにいられたのは、幸運以外の何物でもない。
「……見事だ、サカハ。コーヒー淹れるなら、俺と、皆の分も欲しいな」
崇もまた、疲れがにじみ出ている様子。だが、問題は無さそう。
「二人は?」
薔薇星は、
「我輩は大丈夫! 『acteur』も、元に戻っておる!」
人形に手を振らせ、健在をアピール。
「私もよ……ううっ、頭が、まだ痛い……」
ディアナもまた、笑みを浮かべていた。
しかし、笑みを浮かべつつも、頭痛がなかなか取れない。徐々に収まってくるのはわかるが、それでも早く抜けてほしいとディアナは思っていた。
(「……『あの人
』……」)
頭痛を誤魔化すべく、『蛇后の誘惑』を受けた時に、思い浮かべた人のことをディアナは思い出す。
当初、敵からの攻撃を、それも誘惑の攻撃を受けた時の事を、彼女は他のディアボロスたちと素早く話し合い、決めていた。
『「誘惑にやられたふり」をして、その後で自身の「Zählen bis drei」を用い、敵を攻撃。隙を作る』と。
この作戦通りにことは進み、オリュンピアスに火砲を直撃させる事に成功。
あまりダメージは入らなかったが、そこから生じた隙を突き、薔薇星の『クライマックス・エアーショット』で幻惑。崇とサカハの攻撃でとどめをさせた。
うまくいって良かったが、最初の『誘惑にやられたふり』の時は、実は半ば『本当に誘惑されかかっていた』。
(内緒、だけどね。最初に思い浮かべた『あの人』……ドイツ時代の隊長を思い出す事は、皆も知ってるだろうけど……」)
しかし、実際は『もう一人、思い浮かべていた』。それらの人物のおかげで、彼女はあの蛇女の誘惑から逃れられたのだ。
「……とにかく、うまくいって良かった。ディアボロスは集まってからが強いものだと確信していたが、その通りになってなによりだ」
満足げに、崇が頷く。
「うむ……うまく舞台の幕引きができたようで、言う事無しである」
薔薇星もまた、それに同意。
やがて、頭痛が引いてきたディアナは、
「……私もコーヒー……いや、カプチーノかマキアートが飲みたいわね。アフォガードもいいな、バニラアイスにエスプレッソをかけた奴。サカハ、作ってくれないかしら?」
痛みを誤魔化すため、努めて明るい口調でそう述べた。
「……ああ、もちろん。それじゃあ……」
戻るとしよう。サカハのその言葉に、ディアボロスたちは、
これからの戦いと、それがもたらすだろう結末の事を想いつつ、帰路につくのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【平穏結界】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
【無鍵空間】がLV2になった!
【落下耐性】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
【アヴォイド】がLV3になった!
【ラストリベンジ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV2になった!