リプレイ
ジズ・ユルドゥルム
焼肉を乗り越えてペルセポリスへ向かったら、そこはスイカ畑だった…。(遠い目でひとりごと)
重要拠点のはずなのに、ノンビリした雰囲気の奴らだな。
…あの魚の口から出た水吸ったスイカ、魚臭くならないか?
ちょっと調子が狂うが、牧歌的な光景だからと言って素通りはしない。
「羆嵐」を起動。ひとつ荒らしてやろう、ケレイ。
とはいえスイカに罪は無いから無為に作物を傷付けないようにしておく。
あのスイカ爆発するらしいし。怖…。
熊変身したジンと並走しながら、敵が完全に体勢を整える前に敵集団へ突っ込んでいく。
戦闘開始時にジンに恐ろしい咆哮を上げてもらい、
ただでさえ烏合の集と化している敵をさらに恐慌させ撹乱したい。
敵への攻撃は、熊となったジンによる爪の薙ぎ払い、突進、噛み付き等、
多少精密さに欠けても、敵の肉体を大きく損傷させるものを主としつつ
私はジンが手傷を負わせた敵へ、槍で確実に止めを刺す。
…スイカ農家を槍で追い立てて…。
…なんだか自分が山賊になったような気分になってきた。
マティアス・シュトローマー
戦線が拡大しているからこそ、取り零しの無いよう確実に勝利を収めていきたいね
まずは油断している敵を…
油断どころかスローライフを満喫してない?
葉や障害物に身を隠し、地形も利用しながら作業に集中している個体に接近。仲間と連携してパラドクスを発動しよう
どんな作物を育てるにせよ、大切なのは土づくり!
俺にも少し手伝わせてよ
毒を含んだ熱砂のトラップを展開し、敵を地中に引き込みながらその表皮を焼いてダメージを与える。もちろん【泥濘の地】の効果で足止めするのも忘れずに
さらに、効率よく複数の敵を巻き込めるようポジション取りにも注意を払おう
これで水捌けもバッチリだね
さあ、心置きなく水を撒い――って
もう地面を平すフェーズは終わってるんじゃ…!
反撃への対策として自身の周囲に【泥濘の地】を展開。巨大魚を振りかざし近付こうとする敵を僅かな間でも足止めし、隙を付いて攻撃の回避を試みる
致命傷さえ負わなければ、能力値アップの効果もあって戦いが長引くほど有利になるからね
う、山賊は山賊でも正義の山賊――義賊って事でここはどうか
その日は、2月とは思えない陽気だった。
晴天の下を軽く歩いただけで汗が額に滲む。幸いにも空気が乾燥しているおかげで不快な湿気とは無縁だ。
しかし、そうなると新たに復讐者を悩ませるものがあった。そう――喉の渇きである。
「ああ……水分が欲しいな。できれば水以外で、ちょっぴり甘い何かが沢山あればいいのになあ……」
パラドクストレインを下車し、ペルセポリスの近郊を進むこと暫し。
ジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)が溜息交じりに漏らした呟きが叶ったように、彼女の行く手に広がるのは一面のスイカ畑であった。
どうやら、大天使ミズウリエルの領域に足を踏み込んだらしい。畑の中を見渡せば、スイカを食べる為と思しきスペースが食器類まで揃えて設けてある。
「焼肉を乗り越えてペルセポリスへ向かったら、そこはスイカ畑だった……か」
遠い目で見遣った先、畑のあちこちでは農作業にこき使われる魚使いたちが見える。
あちこちに転がるスイカはどれも手頃な大きさで、ズシリと重そうだ。きっと中にはたっぷり果肉と果汁が詰まっているに違いない。黒縞のくっきりと走った果皮を眺めただけで、思わず喉がゴクリと鳴った。
(「鮮やかさな縞模様は甘さのバロメーターらしいが……思い切り齧りついたら美味しいだろうな……」)
辺りにはスイカの涼を感じる瑞々しい香りが漂っており、懸念していた魚臭さなどは一切ない。
少なくとも、怪しい素材で作られているようなことは無さそうだ――そう思いつつ、ジズの視線がスイカから敵へと移る。
「ノンビリした雰囲気の奴らだな。重要拠点のはずなのに」
「……うん。油断どころかスローライフを満喫してない?」
ジズの呟きに、マティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)が同意を返した。
イスカンダルの戦線が拡大しているからこそ、取り零しの無いよう確実に勝利を収めていきたい――そう思って参加した彼の眼前に広がるのは、戦場と言うには余りにも牧歌的な光景である。
自分の姿が目立たないよう葉の茂るエリアにそっと身を隠しつつ、マティアスは魚使いに狙いを定めていく。
「こっちは何時でも行ける。さっさと片付けてしまおうか」
「そうだな。ちょっと調子が狂うが、牧歌的な光景だからと言って素通りは出来ないしな」
マティアスが動き出すのに合わせ、ジンのケレイを召喚して戦闘態勢を取るジズ。
それを見て俄かに慌ただしく迎撃に動き始めた魚使いたちを見遣り、
「ひとつ荒らしてやろう、ケレイ」
『羆嵐』のパラドクスで熊へと変身したジンと並走しながら、魚使いの群れ目掛けて疾駆していった。
『ミズウリエル様! 敵がパラドクスを使いながら、こっちに向かって来ますパク!』
『なにぃ!? ということはディアボロスか……迎撃しろ、お前たち! 俺はその間にスイカの準備をする!』
『パクパクゥーッ!?』『し、承知しましたパク!』
魚使いたちは泡をくったように、次々と畑の端へ集まり始めた。
恐らく、戦闘時はスイカを巻き込むなとミズウリエルに命令されているのだろう。ジズは好都合とばかり、従えたケレイに合図を飛ばして魚使いの隊列へ突っ込んでいく。
「クロノヴェーダを憎んでスイカを憎まずだ。行くぞケレイ!」
「グオオオオッ!!」
ケレイは身も竦むような咆哮を轟かせると、ズンズンと地響きを立てて魚使いの群れへ飛び込んだ。
咆哮で反射的に身を委縮させる魚使いたち。重々しい肉体を武器に突進していくケレイ。それはまるでレーンに居並ぶピンと、そこに向かって転がっていくボウリング球を連想させる光景だった。
「グルルルオオオオォォォッ!!」
『て、敵襲パク!』『パクパクーッ!?』
嵐のごとき勢いで暴れ回るケレイ。ボウリング球を受けたピンよろしく、魚使いたちが玩具のように吹き飛ばされていく。
鎧袖一触――そんな言葉に相応しい、あまりに一方的な戦闘開幕だった。ジズはそんな中を駆け回り、傷を負わせた個体へ槍の刺突で確実にとどめを刺していく。
同刻、ジズとケレイの襲撃を免れた一団を狙い定め、マティアスもまた攻撃を開始していた。
ジズの襲撃で乱れた敵陣の隙を突くようにスイカ畑へ身を隠し、ギリギリまで接近してからの奇襲である。
「どんな作物を育てるにせよ、大切なのは土づくり……ってね。俺にも少し手伝わせてよ!」
『パクパク? ……じ、地面が!?』
襲い掛かろうとした魚使いの一団が、ふいに隊列を乱し始める。
マティアスが発動した泥濘の地に足を取られて、速度を落とした為だ。間を置かず、その足下に生じた蟻地獄が、魚使いを次々と呑み込んでいった。
かくして、戦闘開始からさしたる間を置かず。
復讐者の猛攻に晒された烏合のトループスたちは、まさに溶けるように蹴散らされていった。
「これで水捌けもバッチリだね。さあ、覚悟して貰おうか!」
『パ、パクパクーッ!』
魚使いの悲鳴を、攻勢を告げるマティアスの言葉がかき消した。
パラドクス『アーマイゼン・レーヴェ』。毒を含んだ熱砂のトラップは、敵が気づいた時にはもう遅い。
魚使いたちがナイルマグロを抱えたまま、身をよじらせて灼熱の蟻地獄へと墜ちていく。時折苦し紛れに飛んで来る反撃を着実に捌きながら、マティアスは敵を撃破していった。
一方ジズはマグロを得物に抵抗する魚使いを相手に槍で火花を散らしつつ、悩まし気に溜息を漏らす。
「スイカ農家を槍で追い立てて
……。……なんだか自分が山賊になったような気分になってきた」
「う、山賊は山賊でも正義の山賊――義賊って事でここはどうかな」
ただのスイカならともかく、爆発するみたいだし……そう付け加え、マティアスは魚使いを狙い定めた。
元より多くなかった敵群の残りは、今や片手で数えられるほど。
そこへ彼が生成した熱砂の蟻地獄は、戦場の魚使いを余さず呑み込んで、後には静寂だけがスイカ畑に残される。
「……よし。これで、残るは大天使だけかな」
かくして、残る敵は一体のみ。
畑のスイカに紛れ、怒りに打ち震える大天使――ミズウリエルである。
『ディアボロスども、よくも……! 俺が精魂込めたスイカ、存分に喰らって死ぬがいい!』
スイカ型の頭部を揺さぶり、怒りの咆哮を上げるミズウリエル。対する復讐者たちもまた、そんな敵を撃破するべく得物を構えた。見た目は愉快な相手だが、ペルセポリスへ向かう為にも彼の撃破は不可欠である。
カンカンの太陽が照り付ける中、ふんわり漂うスイカの爽やかな香り。
いまだ牧歌的な空気に包まれた畑を舞台に、決戦の火蓋が斬られようとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【通信障害】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
シャムス・ライラ
以前大根型の天使と交戦したことはありますが
大天使も多種多様ですね
牧歌的に農業を営んでいる所失礼いたしますが
ここは推し通らせていただきますよ
【地形の利用】…ええ、畑に適しているのはさておき
足場やカンカン照りの太陽を利用した戦闘に有利な位置取りを素早く
そして【変化】を発動
『我が意に応えよ』
大地よ
敵を討ち倒し
かつ作物の収穫にも適した武器となれ
土から全てを刈り取る大鎌を形成し
素早い足運びで攪乱しつつ
逆光を背にして必殺の一撃を
「我はエジプトの無慈悲な太陽(自称)
くらえ、必殺のサン・アタックーーーー!」
太陽の光で敵の目を眩ませつつジャンピングスイカ割り
敵の攻撃
うん、待ってました
収穫の時間ですね
ばっさばっさと畑から西瓜を切り離して収穫します
【植物知識】もありますので
効率よく作業を進められるかと
素晴らしくみずみずしく香りも爽やか
もしや無農薬でここまでのものを?
これだけの大玉スイカを育てるとは
さぞかし苦労もあった事でしょう
ああ、家に良い土産が出来ました
仲間とは情報共有、連携を
アドリブ等歓迎
ペルセポリス近郊に広がるスイカ畑。
戦闘態勢を取るミズウリエルの前方から、ガラガラと何やら派手な音が響く。
それは救援機動力で戦場に駆けつけたシャムス・ライラ(極夜・g04075)の、運搬用リヤカーが立てる音だ。
「大天使ミズウリエル。ここは推し通らせていただきましょう!」
太陽を背にキメポーズを取り、高らかにそう宣言すると、シャムスはスイカ畑を見渡した。
あちこちに転がる大玉のスイカはどれも瑞々しい輝きに溢れ、一目で上物とわかる物ばかり。これは是非とも、沢山貰って帰らねば――そう思いつつ、ミズウリエルをビシッと指さして言う。
「危険なクロノヴェーダを放置は出来ません。この戦いに勝って、スイカはいただきます!」
『ふっ……俺の野望は世界をスイカ畑に変えること。阻む気なら容赦せんぞ!』
戦う気満々のミズウリエル。対するシャムスもまた、勝利への決意を燃え上がらせていく。
この戦い、求められるのは速攻での撃破だ。何故ならば、
「追熟しないスイカは鮮度が命。戦闘に時間をかけていては、味が落ちてしまいますからね!」
シャムスのパラドクスが、煌めきを帯びて畑を覆っていく。
それは即ち、食うか食われるかの決戦が始まったことを意味していた。
「我が意に応えよ。収穫用の鎌となれ!」
開始と同時、シャムスの声で土が鎌へと変じ始めた。
パラドクス『変化』によって生成された其れは魔力を帯びて、瞬時に大きな鎌へと変貌を遂げる。直後、シャムスは素早い足運びで畑を疾駆しながら得物を振るい始めた。
「さあ、一つ残らず収穫しましょう!」
『ふん、そうはさせるか!』
攻撃の機を見計らうように並走を始めるミズウリエル。
だが、植物知識を駆使したシャムスの鎌は、まるでスイカの位置を熟知したかのように探り当て、蔓を切っていく。
「1株から取れるスイカは2玉から3玉。けれど、間引けば味や大きさが其れだけ向上する……ということは!」
果たして読み通り、この大天使は1株1玉で育成していた。
一玉の味、そして一撃の威力を追求した性格が裏目に出たのだろう。鎌を振るうたび、畑に立ち込める濃密な香り。新鮮なスイカの蔓が放つ特有の青臭さに、シャムスの胸が期待で高鳴る。
「これは素晴らしい……さぞかし苦労もあったことでしょう」
掌で優しくスイカを叩けば、ギッシリ詰まった実の手応え。
持てばズシリと重いそれを傍らのテーブルへ運ぶと、シャムスは一思いにザクリと断ち割る。
刃を入れた途端、迸るように溢れる果汁で手を汚さないよう気を付け、大きな赤い欠片を無造作に頬張った。
「おお……これは美味しい!」
シャムスの口から、スイカへの賞賛が漏れる。
ルビーのように真っ赤な果肉。シャリシャリとかき氷のような食感。
そして何より、皮の際まで一切失われない爽やかな甘味。気づけば皮だけを残してすっかりスイカを平らげたシャムスは、目を輝かせて言った。
「瑞々しく香りも爽やかですね。良い土産が出来ました」
『なにっ、本当か!』
シャムスの言葉に、新たなスイカをパラドクスで作り始めたミズウリエルの動きがピタリと止まった。
どうやら、スイカを褒めると隙だらけになるのは本当らしい。これを突かない手はないとばかり、シャムスは天高く跳躍。逆光を背に、必殺の一撃を振り下ろす。
「隙あり! 我はエジプトの無慈悲な太陽(自称)! くらえ、必殺のサン・アタックーーーー!」
『ぐわあああああーーっ!!』
ジャンピングスイカ割りよろしく叩きつける、鎌の一撃。
脳天のスイカに突き刺さった刃の衝撃に、ミズウリエルの絶叫が木霊する――!
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【狐変身】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
マティアス・シュトローマー
生産者様が直々にスイカを食べさせてくれるってさ
良かったね
そう声を掛けて呼び出すのはパラドクスで具現化した大鴉達
一番食べ応えのありそうな大きなスイカ――否、ミズウリエルの頭に狙いを定めて追尾・爆撃を指示。命中アップの効果も乗せてとっておきのサプライズをお見舞いするよ
爆発には爆発で
遠慮なく受け取ってよ
……なっ、更地にしたはずなのに……!?
出現したスイカ畑にペースを乱されないよう、呼吸法を用いながら深く深呼吸を
続いてエジプトの無慈悲な……ええと、有識者の方に倣ってスイカを収穫していこう。【フライトドローン】に積んでいけばたくさん収穫しても安心だね
美味しそうだなー、ひとつくらい食べても……
……なるほど、褒める事で敵に隙が
ナイススイカ!
大玉過ぎて固定資産税かかりそう!
大声で褒めながらその場でスイカを一切れいただこう。……あくまでも作戦の一環として
おおっ、塩も必要ないくらい甘い!
この瑞々しさとシャリシャリとした食感が堪らないね
さ、もう一度君達も
大鴉達を再び敵に向かって放ち、スイカ畑に平穏を取り戻そう
戦闘開始から間を置かず、蔓を切られていく畑のスイカたち。
今やただの美味しいフルーツと化したそれが、シャムスの手でリヤカーに次々と積み込まれていく中、畑では今なお熾烈な戦いが続いていた。
「生産者様が直々にスイカを食べさせてくれるってさ。良かったね、皆」
そう言ってマティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)が語り掛けるのは、仲間の復讐者たちではない。
彼の周りを飛ぶ、それは鴉の群れ――『ラーベ・シュトライヒ』で具現化された七羽の大鴉だ。
一方、その姿を目にしたミズウリエルは、おぞましいものを見たように激しく身震いする。鴉がスイカ栽培の大敵なのは、どうやら大天使にとっても同じらしい。
『カ、カラスだと……! くっ、だが俺は負けん!』
声を震わせ、頭部のスイカを両手で閉じようとするミズウリエル。
まさに其処を狙い定めるように鴉たちへ追尾・爆撃を指示しながら、マティアスは戦闘の開始を告げた。
「とっておきのサプライズをお見舞いするよ。さあ、始めようか」
鴉たちの鳴き声が、折り重なって畑に木霊する。
どんな音よりも不吉な響きをもって、ミズウリエルへ死を告げるように。
「爆発には爆発で、遠慮なく受け取ってよ。――Bitte schön!」
マティアスの言葉と共に始まったのは、七羽の鴉による爆撃であった。
標的に定めたミズウリエルへ鴉を一斉にけしかけ、断続的な振動をスイカ畑に轟かせていく。
『お、俺のスイカ畑に何をするんだあああ!!』
地面を抉る容赦ない爆撃に、畑が、スイカが、次々に吹き飛ぶ。
無論、渦中に居るミズウリエルとて無傷では済まない。鴉たちの執拗な攻撃に晒されながら、その肉体とスイカにじわじわと傷を負って行った。
だが、彼とてアヴァタール級である。反撃に転じた次の瞬間、パラドクスで生じたスイカの蔓が畑を覆い始めた。瞬く間に元の姿を取り戻していくスイカ畑を前に、マティアスは思わず息を呑む。
「……なっ、更地にしたはずなのに
……!?」
『驚くには早いぜ! 俺の可愛いスイカたちの恨み、しっかり受けて貰う!』
刹那、時間経過によってスイカたちが次々と爆発していく。
マティアスは容赦なき炸裂攻撃に晒されながらも、ペースを整えるように深呼吸をひとつ。シャムスと同じ要領で、無事なスイカの蔓を次々に切り離し、収穫し始めた。
(「美味しそうなスイカだなー、ひとつくらい食べても……というか褒めたら思い切り隙だらけになってたな、さっき」)
先の戦闘における一幕を思い出しつつ、マティアスはテーブルへと走り出す。
砲丸のように重く立派なスイカを一個、両手で大事に抱えながら――。
さっそく切ったスイカを、マティアスは一思いに頬張った。
無論、寛いでいる訳では無い。あくまで作戦の一環である。
「ナイススイカ! 大玉過ぎて固定資産税かかりそう! いただきまーす!」
嫌味のない甘味をたっぷり含んだきめ細かい果肉、その味と歯応えに思わずマティアスの頬が綻んだ。
暑い戦場で動き回った体の芯まで、熟したスイカの果汁がすっと染み込んでいく。後でスイカを運ぶのに利用させて貰おうと思いつつドローンを展開しながら、敵を油断させることも忘れない。
「おおっ、甘い! この瑞々しさとシャリシャリした食感が堪らないね!」
『ふふ、そうだろうとも! ……はっ』
気を良くして反射的に警戒を解くミズウリエル。当然、その隙をマティアスは逃さない。
「さ、君たちも行っておいで。狙いはあのスイカ頭だ」
『なっ、ちょ、ぐわーっ!!』
飛び立つ大鴉たち。響き渡るミズウリエルの悲鳴。
スイカ畑に平穏を取り戻す為、そしてペルセポリスへ向かう為、復讐者の戦いは早くも佳境を迎えようとしていた。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
ジズ・ユルドゥルム
私にはわかる、貴様はこれから「スイカ死させてくれるわ」って言う。
貴様らみたいな奴には詳しくなったんだ。特に最近。
敵がこちらをスイカ扱いして脳天をかち割ってくるのなら、こちらが先にかち割ってやるまで。
「原始のならわし」を起動。
あたりに落ちている折れた農具の柄や槍の柄…要は棒っぽいものを手に取り、正面に向けて構え、
敵の…頭?スイカ?をかち割りにかかる。
スイカ割りの時にやるアレ、敵は律儀にやるんだな…。
……私はやらないからな!!?
しかし立派なスイカだな。畑に立っているだけで香ってくるというのは相当なものだ。
確か奴はスイカ食べてる敵には攻撃して来ないと言っていたっけ…。
(というわけで、当然のように戦闘を中断してスイカを収穫し切り分け)
あっ、おいしいこれ。すごく甘くて果汁もたっぷりだ。
皮に近いところも青臭さがまったくない。
それにしても、暑い日に屋外で食べるスイカは、特別感があるなぁ~。
それが上等なおいしいスイカなら尚更だ。
(のどかな様子で棒を手に取り)
隙あり!!!(再び脳天をかち割りにかかる)
『くっ……よくも俺の可愛いスイカたちを!』
傷を負ったミズウリエルが、声を怒りに震わせる。
満身創痍の体にぶら下がったスイカはあちこちひび割れ、美味しそうな香りを戦場に漂わせていた。
其れを前に、ジズ・ユルドゥルム(砂上の轍・g02140)は喉の渇きを抑えて決戦に臨む。
「私にはわかるぞ。ミズウリエル、貴様はこれから――」
『ディアボロスめ! かくなる上は――』
復讐者の頭をかち割らんと棒きれを構えるミズウリエル。それを前にジズは平然と告げる。
「『スイカ死させてくれるわ!』って言う」
『スイカ死させてくれるわ! ……はっ、な、なぜ!?』
「ふっ、貴様らみたいな奴には詳しくなったんだ。特に最近な」
そうしてジズは地面に落ちていた棒切れを拾い、ブンと振るった。
恐らく、折れた農具の柄か何かだろう。長さも硬さも、あの頭をかち割るのに丁度いい――そんなことを考えながら。
「脳天をかち割ってくるのなら、こちらが先にかち割ってやるまで。さあ、始めるか」
棒を振る音がスイカ畑にブンブンと響く。
互いの頭を標的に見立てたジズとミズウリエルが、死のスイカ割りを始めようと言うのだ。
一見すれば子供の遊戯に見える光景だが、これは立派な逆説連鎖戦であり、お遊びなどではない。ジズの振り降ろした棒がスイカ型の頭に命中すると同時、ミズウリエルも反撃を開始する。
『俺がスイカで、お前もスイカだ!』
棒を支柱に回転した後、凹んだ頭に布を巻く。
そうしてスイカ割りの作法に則った所作の後、ミズウリエルが棒を構えて一息に殴りかかる。
勢いこそ果敢なものの、千鳥足で振るう攻撃はジズに痛打を与えるには至らない。
「スイカ割りの時にやるアレ、律儀にやるんだな……私はやらないからな!?」
互いに棒を振るいながら、一進一退の攻防が続く。
このままでは埒が明かない、何とか隙を作らなければ――そう思った矢先、彼女の眼に停まったのは足下に転がった大玉のスイカであった。
傷ひとつなく瑞々しい其れを見て、ジズの喉がごくりと鳴る。
「スイカの出来を褒めると、ミズウリエルは隙だらけになっていたっけ……よし、試してみるか」
『むむ、どこに行った!?』
目隠し姿のまま、ミズウリエルが出鱈目に棒を振るう。
それを横目にジズは当然のように戦闘を中断し、収穫したスイカをテーブルで切り分け始めた。
ナイフを走らせ、パカリと割れる真っ赤な果肉。
きめ細やかな果肉は溢れんばかりの果汁を湛えてキラキラと輝き、漂う爽やかな甘い香りが鼻孔を駆け抜ける。
真ん中に大口でかぶりついた瞬間、迸る果汁の濃い甘味にジズは思わず歓喜の声を洩らした。
「あっ、おいしいこれ。すごく甘くて果汁もたっぷりだ。皮の際も青臭さがまったくない」
『ふふ、そうか! やはり俺のスイカは最高だな!』
「うんうん、暑い日に屋外で食べると特別感があるなぁ~。美味しいスイカなら尚更だ――さて」
殴りかかるのもすっかり忘れ、隙だらけになるミズウリエル。
そんな彼の頭部を狙い定め、ジズはスイカに舌鼓を打ちつつ『原始のならわし』を発動。気配を殺して棒を手に取り、渾身の一撃を一思いに振り下ろす。
「隙あり!!!」
『ぐぇぁ!?』
気を良くしたのも束の間、ジズの一撃を受けた頭部の大玉が派手な音を立てて砕け散った。
バッタリとその場に斃れ、大地に還っていくミズウリエルに合掌を送ると、ジズは収穫したスイカをドローンとリヤカーに積み込み始めた。程なくすれば回収は完了し、持ち帰る準備は万端である。
「よしよし、戦果は上々。作戦が終わったら皆で山分けだな!」
かくして、後は敵への陽動を残すのみ。
スイカ畑を制圧した復讐者たちは、一路ペルセポリスの城壁へ向かって行くのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
夏候・錬晏
※連携アドリブ歓迎
「あれは…天使?なのか??」
どうみてもスイカなんだが…という言葉はかろうじて飲み込む
香りに誘われて収穫されたスイカの山に目を向ければ、確かに美味しそうで
思考を切り替えようと頭を振れば、黒龍偃月刀を構えて臨戦態勢に
陽動だから、派手に暴れて、ペルセポリスが攻撃を受けていると思わせればばいいんだろう?
俺の得意とするところだ
仲間がアヴァタールを抑えている間に
<精神集中>で戦意を高め、朱殷の闘気で怒龍を形成すれば
城壁に直接偃月刀を叩きつけ、【能力値アップ】を付与した咆哮の<衝撃波>で城壁を打ち崩す
城壁の破壊は見た目的にも"攻撃を受けている"とわかるし、のちのち攻め入るのに有効になるだろう
遠慮なく暴れた後は、スイカをつまみ食い
…ん、甘味が凝縮されてて、瑞々しい。水分補給にはもってこいだな
侵略者が作ったものだが、至極まっとうなスイカだ。うん、立派
新宿島の友や仲間へ、土産に持って帰れるかな?
リヤカーとドローンに山と積まれたスイカの山。
ズッシリ実が詰まり、傷一つない大玉のそれらは食べる者に最高の美味を約束するだろう。仲間たちの奮闘を思い返して、夏候・錬晏(隻腕武人・g05657)は微笑を浮かべた。
「本当に美味そうだったな、帰ってからが楽しみだ」
畑を守る大天使がどう見てもスイカだったことも、今となれば些事である。
錬晏は思考を切り替えるように『黒龍偃月刀』を構え、前方を見遣った。陽動の目標であるペルセポリスの城壁と、そこに控える亜人たちの防衛部隊を。
「成程。ここで派手に暴れて、ペルセポリスが攻撃を受けていると思わせればばいい訳だ」
つまりは俺の得意とするところだ――そう呟いた錬晏は不敵な笑みを浮かべ、まっすぐに城壁目指して疾駆していく。
畑の敵を全滅させた今、背後を突かれる恐れはない。
イスカンダル大王の入城を阻むべく、今は全力で陽動を仕掛けるのみだ。
錬晏が襲撃を駆けて程なく、城壁に展開する敵部隊は騒然となった。
亜人側の予測では、これほど早く復讐者がペルセポリスに到達できるハズはない。だが、城壁に繰り出されるパラドクスの猛攻は、眼前の光景が紛れもない現実であると告げていた。
『敵襲! ディアボロスの襲撃だ!』
「覚悟するがいい、亜人ども! この都は私たちが落とさせて貰う!」
精神集中で戦意を研ぎ澄ました錬晏が、朱殷の闘気を龍の姿へと練り上げていく。
続け様に偃月刀を構え、狙い定めるはペルセポリスの城壁だ。
巌のごとく立ちはだかる壁を狙い、パラドクスを発動。足元の地面目掛け『黒龍の咆哮』の一撃を叩きつけた。
「咆えろ!」
偃月刀の柄から生じる衝撃波が、ペルセポリスの空に轟く。
それはさながら黒龍の咆哮にも似て、復讐者の存在を都の隅々まで告げるように響き渡るのであった。
城壁を打ち崩さんと錬晏の放った渾身の一撃が、壁の全面に振動を走らせる。
上方に目を向ければ、亜人の中には衝撃で尻もちをつく者も見える。今回の襲撃が余程の想定外だったのだろう。
とはいえ――流石に都の城壁も、復讐者一人の攻撃で打ち崩せるほど脆くは無かった。偃月刀の柄を叩きつけた周囲を僅かに削ることは出来たが、其れ以外に目立った損傷はない。
「ふむ……やはり、そう簡単には崩せんか。のちのち攻め入るのに有効になればと思ったが」
『くっ、態勢を建て直せ! ディアボロスを撃退するぞ!』
陽動を兼ねて再度の攻撃を試みる錬晏。
だがそこへ間を置かず、弓矢を構えた亜人の部隊から反撃の矢が降り注ぎ始めた。
どうやら敵は防御態勢に入りつつあるらしい。錬晏は最後の数分で偃月刀を振るって更に暴れ回ると、次の仲間に後を託すように退却していった。
(「よし、首尾は上々だ。此処の陽動もじき完了だな」)
戦場を離れ、彼方に聳える城壁を眺めながら錬晏は呟いた。
そうして――偃月刀を収め、達成感を胸に取り出したのは一切れのスイカである。郊外の決戦で仲間たちが収穫した物を、ひと切れ分けて貰ったのだ。
「……ん、甘味が凝縮されてて、瑞々しい。水分補給にはもってこいだな」
作り手である大天使の凄まじい外見とは裏腹に、スイカは至極まっとうな出来であった。
決戦で収穫された大量のスイカも、今頃はパラドクストレインに積み込まれて発車の時を待っていることだろう。この作戦を終えて土産に持って帰った時、新宿島の友や仲間の喜ぶ顔を思い浮かべ、錬晏の顔に微笑みが浮かぶ。
「作戦もいよいよ大詰めだな。後は任せたぞ」
救援機動力で駆けつける仲間に手を振りながら、錬晏は帰還の準備を開始する。
最終人類史へ戻った暁には陽動作戦完了の喜びと共に、皆でこのスイカの美味を味わいたいものだ――そう思いながら。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【泥濘の地】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
シャムス・ライラ
錬晏の脅しも効いている
西瓜を美味しく食べる為
仲間達と連携して陽動頑張りましょう
ペルセポリス攻略が近いと思わせる
即ち攻撃プラス物音の大盤振る舞いで兵や市民に誤認させる
まずは密かに下準備
【フライトドローン】をありがたく使わせていただき
レコーダーを固定
周りに溶け込む迷彩布でぴったり覆う
距離感は敵の目に留まらず
城内に音が届く範囲
城壁の周囲を飛び回らせて
勝ったも同然と歓声や凱歌等を流し
さらに【トラップ生成】で
城壁からやや離れた複数個所に時限式の爆弾を設置
派手に高い砂煙を上げ
すぐ側まで敵が迫っている感を演出します
城壁内だけでなく城壁外の大王陣営の目に砂埃や花火がとまれば
都市が交戦中であると思うのでは
勿論実際に攻撃も
【ピラミッドコンバット】で錬晏の傷つけた壁を再度穿ち
ドローンに目がいかぬよう引き付け
ピンマイク使用で
「これは前哨戦だ!
まもなく本隊が到着する。
城壁内の者は大人しく降伏し、城門をあけ放つ準備をせよ!」
と啖呵を切って
誤情報の拡散は上手く行ったかな?
勿論西瓜は持ち帰りますよ!
アドリブ等歓迎
マティアス・シュトローマー
さすが錬晏
敵はすっかり防御態勢に入ってるね
水分補給も出来たし、俺ももうひと頑張りしようかな
ペルセポリス中の注目を集められるなんて滅多に無い機会だからね!
――まだ明るいって?
いいんだよ、これは宣戦布告なんだから
パラドクスを発動。指先に現れた弾丸が狙うのは、城壁上部とそこで弓矢を構える亜人部隊。着弾と同時に花火のような爆発を起こし、視覚にも聴覚にも相手に大きなインパクトを与えよう
暑いイスカンダルにぴったりの日本の夏の風物詩――それが花火
スイカのお礼だよ
城壁の破壊が出来なくても、破片と兵士が壁の内部に落下してくれば、それを見た市民達にも危機感を与えられるんじゃないかな
とはいえ、目的はあくまでも挑発。本格的な戦闘を避けるため戦況を見極め、その後もシャムスのドローンが発見されないよう、高所への攻撃を継続しよう
また【避難勧告】によって出現した、赤い光とサイレンの音も城壁内部の混乱を招くのに役立つはず
俺達先鋒隊だけでこの有り様じゃあ、ペルセポリスは攻略したも同然だね
そんな捨て台詞も勿論ピンマイクONで
『ディアボロスの襲撃だ!』『ペルセポリスに近づけるな、撃退せよ!』
「さすが錬晏、見事な手並みだ。敵はすっかり防御態勢に入ってるね」
戦場に駆けつけたマティアス・シュトローマー(Trickster・g00097)は、前方に広がる巨大城壁を眺め、そう呟いた。
アヴァタール級との決戦で水分補給も済み、あとは陽動作戦を完遂するのみだ。ペルセポリス中の注目を集められるなんて滅多にない機会だと、戦意旺盛の様子である。
「しかし……さすがはイスカンダルが入城する予定の都、守りは相当に堅そうだ」
マティアスが凝視する先、城壁の上に展開するのは亜人の防衛部隊。
その悉くが弓矢を構え、復讐者を近づけまいと迎撃態勢を取っている。
「奴らと戦闘して落とすことも不可能ではなさそうだけど……そうなると、相当に激しい反撃が来そうだね」
「今回は嫌がらせに集中しましょう。雑魚を数匹蹴散らすより大騒ぎした方が、敵側へのダメージも大きそうですし」
陽動の支度を着々と進めながら、シャムス・ライラ(極夜・g04075)が言った。
幸いにして錬晏の脅しが奏功した結果か、城壁は慌ただしい騒ぎに包まれている。彼の奮闘を無駄にせぬ為、そしてスイカを美味しく食べる為にも、作戦を着実に成功へ導きたいところだ。
(「ここは、ひとつ盛大に行きましょう。兵や市民に、ペルセポリス攻略が近いと誤認して貰う為にも……ね」)
事前の準備は滞りなく完了。
二人が着けたピンマイクの動作も問題ない。
そうしてマティアスに合図を送り、シャムスは静かに頷いた。
「行きましょう。――陽動作戦、開始です!」
威容を誇るペルセポリスの城壁。
都を覆うように聳え立つ其処を目掛け、マティアスが先頭を切って襲撃を開始していく。
遮蔽物のない荒地から疾駆して来る彼の姿に、亜人部隊もまた敵襲を察知したようだ。弓矢を構え、すぐさま撃退の態勢を取り始めた。
「やあ、亜人部隊の皆! 畑のスイカは美味しくいただいたよ!」
そう言ってマティアスは大声を響かせると、その指先を城壁の上部へと狙い定める。
スイカのお礼とばかり放つのは、日本の夏の風物詩――花火だ。
暑いイスカンダルにぴったりだと笑い、パラドクスを発動。『ファイアーヴェルク』を開戦の狼煙さながら発射する。
「行くよ、その目に焼き付けて!」
同時、マティアスの指先から発射される弾丸が、一発残らず外壁へと命中した。
弾に込めたパラドクスが花火のごとく咲き乱れ、大爆発となってペルセポリスの空に木霊する。轟音とともに煌めく鮮やかな光は網膜を焼くような眩さを放ち、亜人の防衛部隊は大騒ぎだ。視覚と聴覚、共に与えたインパクトは絶大だ。宣戦布告の印としては大成功の部類であろう。
『ぐっ……怯むな、奴らを追い払え!』『ん……? おい、あれを見ろ!』
亜人部隊が態勢を建て直した、しかし次の瞬間。
彼らの眼前から更なる襲撃が迫る。それはフライトドローンを引き連れて迫る、シャムスの姿であった――!
「聞け! これは私たちディアボロスの前哨戦だ!」
城壁の周囲より、シャムスの声が響き始めた。
その音量たるや凄まじく、壁を越えて都の中までも優に響かんばかりである。彼のドローンには音響装置が取り付けられ、騒音レベルにまで音量を増幅しているのだ。固定したレコーダーを用いて歓声や凱歌も交えながら、ピンマイクを介して行うシャムスの啖呵は止まらない。
「まもなく本隊が到着する! 城壁内の者は大人しく降伏し、城門をあけ放つ準備をせよ!」
ピラミッドコンバットを発動し、錬晏の傷つけた壁を攻撃するシャムス。
その間も、大声が、歓声が、凱歌が、絶え間なくペルセポリスへ降り注ぎ続ける。マティアスが発射するパラドクスが轟音を響かせ、閃光が明滅し、城壁は今や大騒ぎに陥っていた。とはいえ――敵とて木偶ではない。大音声の源を探り当てると、すぐさま反撃の矢を降り注がせ始める。
『あそこだ! あの妙なガラクタを狙え!』
迷彩布で隠蔽の仕掛けは施してあったが、クロノヴェーダたる亜人がそれを見破るのにさしたる時間は要しなかった。
果たして、パラドクスを帯びた矢がフライトドローンを撃ち落とす。
撃墜と同時に大歓声は鳴り止み、再び静寂が訪れる――かに思われた、しかし次の矢先であった。
「甘い! 二の矢を仕込んで挑むくらいは常識だ!」
亜人たちが見遣る先、シャムスが立ち回るやや後方で、一斉に地面がはじけ飛ぶ。
トラップ生成で地中に仕込んだ爆弾が起爆されたのだ。クロノヴェーダへの殺傷能力こそゼロだが、敵が迫る演出としては充分に効果的。衝撃で巻き上がる派手な砂煙は、都からも十分に見えるであろう高さだ。なおも飛来する矢をガードアップで防ぎつつ、シャムスが合図を送った。
「マティアス殿、頃合いです。長居しても危険ですし、離脱しましょう」
「そうだね。それじゃあ最後に……」
シャムスと足網を揃えて戦場を離れながら、マティアスは背後を振り返り、叫ぶ。
未だ健在の巨大城壁と、そこを守る亜人の兵士たち。そしてペルセポリスの民と、都を治めるダレイオス三世、その全てへ届かせるような大声で。
「やれやれ! 俺たち先鋒隊だけでこの有り様じゃあ、ペルセポリスの陥落も時間の問題だね!」
役目を果たせば長居は無用。
降り注ぐ矢をやり過ごしながら、マティアスとシャムスは大成功の手応えを胸に戦場を離れていった。
かくして作戦を完了し、二人は帰還の途に就いた。
陽動を成功させたことで、イスカンダルの入城を断念させるという目標に復讐者たちはまた一歩近づいたことだろう。そこから先の戦いがどう流れていくか――それが明らかとなるのも、そう遠くはない筈だ。
「収穫したスイカ、先にパラドクストレインに積んでおいて正解でした。帰ったら沢山お裾分けですね!」
「そうだね。皆の喜ぶ顔が目に浮かぶよ」
シャムスとマティアスは達成感に満ちた吐息をほっと漏らし、微笑みを浮かべる。
今回の作戦では、素敵なお土産が沢山手に入った。いずれ始まる戦いに向けて、今は存分に英気を養っておくとしよう。
そうして二人は仲間たちが待つ最終人類史に帰還するべく、パラドクストレインへ向かって行く。来たるべき戦いに必ずや勝利する――そんな決意を、各々の胸に抱きながら。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【避難勧告】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!