速く、疾く速く(作者 秋月きり)
#蹂躙戦記イスカンダル
#ペルセポリス電撃戦
#ペルセポリス
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改竄世界史蹂躙戦記イスカンダル。ペルセポリス内の絢爛豪華な宮殿に、その亜人は居た。
身体は巌の如く硬く、そして巨大だった。
一般人の女性を侍らせる彼の名を『ダレイオス三世』と言った。
「間もなく大王がペルセポリスに来る。歓迎の準備を急がねばならぬ」
ダレイオス三世の重厚な声は、宮殿内に重く雄々しく響いていた。
「このペルセポリスが、大王の御座所となるのだ。大王に相応しい宮殿も新たに造らねばならぬ」
疾く速くと部下を急かす。そう。大王がこのペルセポリスに到着するまで、時間は僅か。その時間を無駄にする訳にはいかない。
「大王のお力で、バベルの塔に代わる中枢の塔が、ペルセポリスに建立されればどうなるか。その時こそ、この都市は名実ともに世界の中心となるだろう。故に、歓迎の準備は急がねば成らぬ。大王の機嫌を損ねるわけにいかんのだ」
大王の到着後、直ぐに動けるように準備を怠るな。
宮殿内に待機する部下達に響く声で、ダレイオス三世は命を発した――。
処変わって最終人類史新宿島新宿駅ターミナル。
到着したパラドクストレインの前に進み出でる少女の姿があった。時先案内人、シルシュ・エヌマエリシュ(ドラゴニアンのガジェッティア・g03182)である。
コホンと空咳を零した彼女は、是と力強く言葉を口にする。背後にホワイトボードがあれば、ばばんと叩きそうな勢いであった。
「攻略旅団の提案により、ペルセポリスへ電撃戦を仕掛けます!!」
ストレートな物言いに、集まった復讐者達から歓声や口笛の音が聞こえた。
「と言う訳で、皆様には今からパラドクストレインに乗って、蹂躙戦記イスカンダルへと向かって頂きます! 準備はいいですか?!」
逸る気持ちを抑えきれない。そんな嬉々とした口調であった。
ちなみに、スサからペルセポリスまで駆け抜けたミウ・ウルは、敵に発見されないよう、ペルセポリスから距離を取って隠してある。と言う訳で、ミウ・ウルで乗り付ける事は出来ないが、徒歩でペルセポリスへ向かうことは可能だ。復讐者達は敵の目を掻い潜って彼の都市まで向かい、攻撃を仕掛けることになるだろう。
「ペルセポリスは史実では、『世界の中心』と呼ばれたアケメネス朝ペルシアの都であり、蹂躙戦記イスカンダルでも、『ディアドコイ評議会』のジェネラル級亜人『ダレイオス3世』の統治する、一大拠点となっているようですね」
もしもこの都市をまともに攻略するならば、ペルセポリス近郊を制圧し、周囲を押さえる事が定石となる。
だが、その方法では、断片の王イスカンダル大王のペルセポリス入城を阻止することは難しい。
そう。この電撃戦の目的は、正に其処なのだ。つまり。
「イスカンダル大王のペルセポリス入城を阻止することが、目的になります」
ペルセポリスが復讐者達によって攻略されている最中である事をイスカンダル大王が知れば、流石に入城を避ける動きを取る筈だ。
派手に戦い、ペルセポリスが安全地帯で無い事を喧伝出来れば、この電撃戦は成功となるだろう。
「さて。先の作戦でスサからペルセポリスまで走破したことが功を奏しました。ペルセポリス近郊の亜人達は、皆様が神速とも喚ぶべき速度でペルセポリスの攻略に乗り出すことは想像すらしておらず、油断しきっているようです」
まさしく、油断大敵というわけだ。
そんな油断しきっている亜人達を撃破し、そのままペルセポリスの城壁に向かい、復讐者達がペルセポリス攻略に乗り出したと言う演出をすることが、此度の鍵となる。
「まあ、周囲の制圧を後回しにしている為、大拠点であるペルセポリスを正面から制圧するのは、現時点では不可能なのですが……」
だが、そんな事、亜人達には判らない話だ。
精々派手に暴れ、敵側に復讐者達のペルセポリス攻略戦が近しいと思い込ませて欲しい。それが今回の作戦の肝となるのだ。
「さて。イスカンダル大王がペルセポリスを拠点として、蹂躙戦記イスカンダルのディヴィジョンを立て直そうとしているのは間違いありません」
そのペルセポリスで第二のバベルの塔建設と言う事態を防げれば、イスカンダル大王が蹂躙戦記イスカンダル全土を掌握することが難しくなるはず。
故に、此度の戦いは蹂躙戦記イスカンダルの戦いの今後を大きく変える作戦となるだろう。
「皆様の御武運、お祈りしています!」
斯くして、時先案内人は復讐者達をパラドクストレインへと送り出す。
その先に倒すべき敵が、攻略すべき作戦がある。
そう信じる眼は、力強い紫色で輝いていた。
遙か彼方から、砂煙が上がっていた。
それを最初に発見したのは、ペルセポリスを護衛するトループス級ディアドコイ『亜人剣闘士』の一団だった。
「あれはなんだ?」
一体の上げた声に、追随するよう、彼らは思い思いの言葉を口にする。
「どこかの部族がヤンチャしてるだけだろ?」」
「いや、あれは、敵じゃないか?」
「敵? そんなことあるわけないだろ。ここは、ダレイオス三世が統治する大ペルセポリスなんだぜ」
「……だが、スサから来た蟲将が何か言っていなかったか?」
聞き覚えのある街の名を上げられ、しかし、亜人剣闘士はハンと鼻で笑う。スサで何が起ころうとこのペルセポリスに影響はない。そう断じる声であった。
「はっ、スサからペルセポリスまでどれだけあると思ってるんだ? あれが敵なわけが……」
――砂煙の正体が、自身等を襲い来る復讐者達と気付くのに、そう時間は必要ないだろう。
だが、今はまだ、彼らは知らない。
それはある意味、幸せなことであったのかもしれなかった――。
リプレイ
ハーリス・アルアビド
ペルセポリスの亜人は私達の侵攻に気付いていないようです。対策を取られる前にこの都市を制圧し、イスカンダルの入城を阻止しなければ。
天空の神ホルスよ、お力添えを。この地を制するための一戦に天空を舞う翼をお授け下さい。
祈りを捧げ、共に戦う仲間に【幸運】を願い勝利を誓います。
【飛翔】し最高速度で敵に接近します。統制を失っている敵にあえてこちらの存在を示し混乱を助長し、反撃もままならぬ状態に陥れましょう。
【残像】を生み出す速度で不規則な軌道と高度を飛び、混乱する敵群に隼の幻影を【連射】します。
巻き起こる砂塵を【砂使い】と【風使い】でより巧みに操り、残像と併せて的確な狙いができないよう【撹乱】しながら敵を密集させつつ、仲間の罠や攻撃に誘導します。
敵同士で密集してしまえば強固な鎧も盾も効果を発揮できず、動きを遮る枷にすらなるでしょう。敵の動きが鈍った先からホルス神の御力で倒して行きます。
エイレーネ・エピケフィシア
連戦の末、ミウ・ウルを無事にここまで辿り着かせましたが……休んではいられませんね
今なお、攻略が遅れればイスカンダルがペルセポリスに入城してしまう状況は続いているのです
弛むことなく、この身にある限りの力を尽くしましょう!
油断した敵の前に姿を現すや否や、≪神護の長槍≫で地を突き『大地の激震』を巻き起こします
侵攻の地響きを断片の王も聞き知るがよい、というぐらいの意気込みで激しく地を揺らしましょう
実際は届かないでしょうが……それはさておき
盾を構え鎧で身を固めた相手に対して、正面から攻撃するのは厄介な仕事です
そこで足元から体内に浸透する衝撃波で骨と肉を粉砕し、堅牢な護りを活かさせぬまま屠りましょう
敵が構える盾に対してはこちらも≪神護の輝盾≫を手に応戦
相手が振るう盾による衝撃を真っ向から身体で受けぬよう、己の盾を突き合わせて受け流します
耐え凌いだら再び槍の石突きで地を叩き、激震でもって亜人どもを殲滅していきます
田淵・あゆみ
人は見たいものを見るって言うけど、クロノヴェーダも同じだね
……あんたらの見てる世界が何であれ、イスカンダルのやり方は好きじゃないんで。何とか邪魔してやりたい
さぁ、踊ろうぜ!
空中や地中に無数のコネクタを生やし、【金色スパーク】で相手の構える盾の後ろから電撃で攻撃
ご立派な盾、そりゃ前はがっちり護られてるだろーね
ホラ背中が空いてるよ、っと!
下から上へ、掟破りの稲妻を昇らせよう
派手に音や光が出るから、攻撃してきてるってインパクトはあると思うんだよね
相手の攻撃はマトモに喰らったらヤバそうなんで、喰らった方向に自ら跳んで衝撃を逃がそうと試みるよ
【通信障害】で他の部隊に情報を出来るだけ渡さないようにしたい
アドリブ連携歓迎、他の人達の動きに合わせます
荒野を疾駆する影は計三つ。砂煙と共に接近するそれらを、歴史侵略者達は最初、何処ぞの部族が行う、意味無き恣意行動と判断した。
それが彼らの命運を分かつ。
彼らは気付けなかった。自身等の判断の誤りに。
獣爪による斬撃が、神槍による刺突が、そして、電撃による破砕が彼らの一翼を斬り裂くその刹那まで、彼らはそれを気付けなかったのだった――。
「天空の神ホルスよ、お力添えを。この地を制するための一戦に天空を舞う翼をお授け下さい」
仲間への幸運を願い、ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)が空を【飛翔】する。
砂煙を遙か彼方へ置き去りにした彼が喚び出すのは、隼の幻影だ。それらを伴い、空を疾駆。トループス級ディアドコイ『亜人剣闘士』達を頭上から急襲する。
本来であれば、ハーリスの行うそれは、敵の集中砲火を呼び覚ます忌むべき行為だ。だが――。
「復讐者だとっ?!」
「まさかペルセポリスを落としに来たのか?!」
「もしかして、もう既に――?!」
浮き足立つ敵には、隼の幻影も相俟って、混乱を誘う呼び水と化す。
「侵攻の地響きを聞き知るがよい!!」
そこにエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)のパラドクス――大地を揺らす激震こと、石突きから放つ衝撃波が拍車を掛ける。
断片の王イスカンダル大王まで届けとばかりに放つそれは亜人達の足を薙ぎ、彼らの体躯をバタバタと地面へ転がしていった。不意打ち、そして空を駆る復讐者や隼の姿を目で追っていた亜人達にとって、その一撃は堪らない。まるでドミノ倒しの如く、重装の亜人達は空を仰ぎながら地に伏せていった。
「さぁ、踊ろうぜ!」
其処に更なる追撃が走る。
田淵・あゆみ(人間のサウンドソルジャー・g06882)が地面や虚空に生やしたのは、無数のコネクタ達だ。
それらは亜人剣闘士達へ喰い付くように接続すると、膨大な電撃を発生。黒焦げの物体と化すや刹那、消失していく。後に残ったのは同じく黒焦げに染まり、プスプスと黒煙を上げる亜人の群れであった。
けほりと煙を吐く者や痛みに呻く者は、それでも、自身に降りかかった惨状が未だマシだったと思い知る。
斬り裂かれ、吹き飛ばされ、電撃を受け、数人の亜人はそのまま落命していた。現状を思い知り、亜人達は絶叫を零す。
悪夢なら醒めろとばかりに零れる悲鳴を聞き入れる者は居ない。
ただ、数多のパラドクスが、そして復讐者達の繰る得物達が、頭垂れる稲穂の如く、亜人の命を刈り取っていった――。
「ご立派な盾、ご立派な鎧。そりゃ、前はがっちり護られているだろーね」
あゆむのパラドクスは苛烈、かつ容赦なかった。
当然、敵の防具はあゆむ達が身に纏うそれと同じく、クロノ・オブジェクトの産物だ。如何に金属製に見えても、正面から叩き付ければ自身の電撃が通るのかは怪しい。
だが、浮き足だった彼奴らには別だ。
「ホラ背中が開いてるよ、っと!」
上から下。右から左。或いはその逆。
四方八方にコネクタを接続し、電撃を繰り出していく。それらを受け、悲鳴と共に更なる黒煙が噴出していく。
「え、援軍を呼べ?!」
「おっと。それは駄目だぜ」
通信機器の類いを亜人達が持っているとは思えなかったが、一応布陣した【通信障害】が伝令の類いを阻害してくれるだろう。まあ、ここまで派手に動けばペルセポリス内の警備兵には異変が伝わっているかもしれないが、むしろそれは望むべき事だ。
「そう。如何に堅牢であろうとも、虚を突かれれば瓦解は一瞬です」
縦横無尽に走る電撃をも背景に、エイレーネは神槍を振るい、衝撃波を撃ち出していく。
彼女もまた、己の武を弁える一人だ。
確かに亜人剣闘士達の強固な護りを突破するのは難しい。剣闘士な彼らと正面から打ち合えば、如何に神官戦士と言えど、彼女の方が分が悪い。彼らが身に纏う武具も、そして体格差も、覆す事は容易でないだろう。
だが、状況が許せばどうだろうか。
浮き足だった彼らは面白い様に足下を掬われ、地面に転がった刹那にエイレーネの一突きで絶命していく。
全てを覆す状況を作ったのは、電撃戦という策と、そして――。
「連戦の末、ミウ・ウルを無事にここまで辿り着かせた私達の力です!」
その決断が、覚悟が、今の状況を作ったのだ。
ならば、弛むこと無く尽力する! それが彼女の意志であり誓いであった。
「ホルス神よ! 御力を! 加護をッ!」
そこに天空からの使者が飛び込む。
それは隼を伴ったハーリスであった。
衝撃波と電撃、刺突と拳撃に右往左往する亜人剣闘士達の頭上すれすれまで降下した彼は、獣爪を、そして己が使役する幻影を叩き付ける。
足下と背中、そして頭上。
四方八方から叩き付けられるパラドクスと剣戟に、亜人剣闘士達はまともな応戦が出来ず、ただ、命を奪われ、大地へと伏せさせられていった。
その所業は、まさしく蹂躙。
全てを呑み込む勢いはペルセポリスを護衛する彼らを、そしてペルセポリスそのものを覆い尽くそうと牙を剥いていた――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV1が発生!
【泥濘の地】LV1が発生!
【通信障害】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
エイレーネ・エピケフィシア
後はあなただけですね、クレタの牡牛を名乗る亜人よ
あなたはポセイドン様が遣わした神秘の牛ではなく、その名を騙る汚らわしい怪物に過ぎません
今ここで、積み重ねてきた悪行の報いを受けてもらいます――覚悟なさい!
仲間たちと共に次々とパラドクスを仕掛け、敵に休む間を与えずに攻めたてましょう
【泥濘の地】で少しでも敵の動きを鈍化させた上で、投擲の軌道を計算します
狙いが定まったなら≪神護の長槍≫を『流星が如く燃え立つ投槍』として、胸を目掛けて投げ放ちましょう!
凄まじい速度で飛ぶ槍の穂先を突き刺し、状況が許せば心臓を撃ち抜いて差し上げます
アテーナー様!どうかこの槍に、人々を脅かす怪物を討ち滅ぼす力をお与え下さい!
反撃に対しては≪神護の輝盾≫を構えて応戦
突撃を受け止めて衝撃を和らげたり、角の先端が肌を食い破る前に弾くことで威力を抑えます
凌いだ後は後ろに跳んで距離を取ってから攻勢に転じ、再び槍を投げつけましょう
わたし達には止まれない理由があるのです。いかなる暴力が立ち塞がろうと、打ち勝ってみせます!
ハーリス・アルアビド
連携、アドリブ歓迎
ペルセポリスからの増援は見られませんね。未だ状況を把握していないのか、様子見をしているのかは分かりませんが、態勢を整える時間は与えません。
豊穣の神にして軍神たるセベクよ、お力添えを。あらゆるものを噛み砕く恐るべき牙をお授け下さい。
祈りを捧げ仲間達への【幸運】を願い、この戦に勝利を。
強く鋭く地を駆けるため【肉体変異】により足に【肉体改造】を施し、【残像】を生み出す速度で駆けます。舞い上がる砂塵を【砂使い】で操り砂の幕とし、【残像】と併せます。
的確な攻撃を遮るよう、私に注意を向けるように仕向け気付かれぬよう突撃してくる敵を【泥濘の地】や仲間の攻撃に誘い込みましょう。
敵が足を鈍らせた一瞬を利用して【精神集中】を行い、【神速反応】をもって死角に回り込み【セベクへの請願】を打ち込みます。
「後はあなただけですね、クレタの牡牛を名乗る亜人よ」
エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)の言葉に、アヴァタール級ディアドコイ『クレタの牡牛』はビクリと震える。
浮き足立っていたのはトループス級ディアドコイ『亜人剣闘士』のみではない。その首魁たるクレタの牡牛も同じであった。
その表情には幾多の何故? が浮かんでいる。
何故、この場所に復讐者達がいるのか? 何故、ペルセポリスを復讐者達が攻めているか? 何故、自身は窮地に追い込まれているか?
だが、生憎、彼に答えを示す者は何処にもいない。
代わりに――。
「あなたはポセイドン様が遣わした神秘の牛ではなく、その名を騙る汚らわしい怪物に過ぎません。今ここで、積み重ねてきた悪行の報いを受けてもらいます――覚悟なさい!」
エイレーネの宣告と共に振るわれた神槍の穂先が己の胸を抉る。
噴出した血は神槍を、そして地面を赤く染め上げていた。
(「ペルセポリスからの増援は見られませんね」)
周囲を推し量っていたハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)はふむ、と首を立てに振った。
未だ状況を把握していないのか、それとも、様子見をしているのか。だが復讐者達の急襲に、虚を突かれているのはペルセポリス側も同じだろう。
ならば、態勢を整える暇を与える理由は無い。目の前のアヴァタール級を討ち、ペルセポリスへと攻撃を仕掛けるのだ。
「豊穣の神にして軍神たるセベクよ、お力添えを。あらゆるものを噛み砕く恐るべき牙をお授け下さい。――勝利を!」
鰐の膂力を用いて、エイレーネと対峙するクレタの牡牛へと飛び込む。
咬殺せんばかりの勢いの吶喊は、クレタの牡牛に踏鞴を踏ませ、そして見る間にその血肉を梳って行った。
トループス級との戦いに次ぐアヴァタール級との戦いもまた、一方的な物として火蓋を切っていた。
己が驚愕を押し殺せないまま、クレタの牡牛は角を振るい、復讐者達への反撃を試みる。だが、懐疑に染まった殴打など、復讐者達に取ってみれば手ぬるい反撃であった。
己が足下を包む泥に阻まれ、有効打になり得ない。それどころか、二重三重に繰り出される刺突や拳闘が、己を追い詰め、身体に多大な損傷を与えている。
「ぶおおおおおっ!」
鼓舞の如く発する雄叫びも、しかし、何の効力も果たさず。
ただ、焦燥だけが募り、滂沱の汗と血液が、大地へと零れ落ちて行った。
「アテーナー様! どうかこの槍に、人々を脅かす怪物を討ち滅ぼす力をお与え下さい!」
炎の一投は空を裂き、そしてクレタの牡牛の胸へと吸い込まれる。
エイレーネの投擲は物の見事にクレタの牡牛の胸を貫き、その肉を焼き焦がしていった。
「わたし達には止まれない理由があるのです。いかなる暴力が立ち塞がろうと、打ち勝ってみせます!」
手元に戻った神槍を構え直し、エイレーネは己が言葉を叩き付ける。
流石はアヴァタール級と言うべきか。神槍は確実にクレタの牡牛の急所を貫いた筈だ。だが、それでもクレタの牡牛は倒れない。苦し紛れに振るう角を輝盾で受け流しつつ、エイレーネは荒い息を吐いた。
「一撃で倒れないなら二撃目を。それでも倒れないなら倒れるまで攻撃し続けるだけです」
地を蹴り、神速を形成しながらハーリスがクレタの牡牛へ斬撃と殴打を、そして、咬撃を加えていく。
端から見るそれは少々エグく感じたが、だが、効果的ではあった。彼が血肉を梳る都度、クレタの牡牛は悲鳴を上げ、彼を振り払うように首を振るう。だが、太い牛角が薙ぎ払うのは、ハーリスが巻き起こす砂塵のみであった。
蹂躙される。
蹂躙する側だった筈の亜人が、ただ、蹂躙されて果てる。
その恐怖にクレタの牡牛の表情が引き攣る。
それを許さないと叫び、角を振るった。腕ほどもある双角は空を裂き、復讐者達の衣服を、防具を切り裂き、はらりと舞い散らせる。
だが、それだけだった。
有効打になり得ない攻撃は、逆転の一手とはなり得ない。
そして、歴戦の勇者たるエイレーネもハーリスも、それを許すような愚鈍では無かった。
「輝ける槍よ、悪しき者の命を過たず穿たんことを!」
「豊穣の神セベクに請い願う――」
神槍が、神撃がクレタの牡牛に打ち据えられ、その身体が派手に吹き飛ぶ。ぐしゃりと潰れた音は、骨の一つ二つでも逝った為か。だが、折れたのはそれだけではなかった。
「――ぐ、ぐぬぬ」
唸るクレタの牡牛の目には、絶望の色のみが映し出されていた。
そう。彼奴の心は完全に折れていたのだ。
ですが、とエイレーネは頭を振る。
ですね、とハーリスは同意を紡ぐ。
それでも、この戦いを止めるつもりはない。歴史侵略者達を打ち破り、ペルセポリスへ攻撃し、そして、イスカンダル大王の凱旋を阻害する。
復讐者達の歩みは止まらない。動き出した歯車も、運命も、そして、疾く速くと駆け出す皆の意志も、止める事は出来ないのだ。
「覚悟なさい。クレタの牡牛! 貴方を乗り越え、私達はペルセポリスへと到達しましょう!」
「この誓いを果たします。貴方を倒し、全てを打ち払うことで!」
鬨の声とばかりに、二人の宣言が、戦場へ響き渡っていった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV2になった!
夏候・錬晏
※連携アドリブ歓迎
救援機動力で仲間と合流すれば、黒龍偃月刀に朱殷の闘気を纏わせ<殺気>を前面に
仲間の勢いに便乗して、亜人どもを討ち果たそう
仲間が敷いた泥濘の地の中に、【トラップ生成】でくくり罠を忍ばせて
己は苛烈な猛攻を仕掛けて泥濘の方へ誘導するような立ち回りを
泥濘に足を踏み込んだ瞬間を<看破>し、虎爪多節鞭を引いて罠を発動
『クレタ』の太い脚をからめとり、【ダメージアップ】を付与した<薙ぎ払い>を叩き込む
泥濘で移動速度が低下させ、足に絡みつく罠で<グラップル>して勢いを削げば、反撃もさほど脅威ではない
冷静に見極め、最低限の動きで躱し、【ガードアップ】で耐えきれば
跳ね飛ばしに身を任せて宙へ移動し、落下の勢いを加え、偃月刀で切りかかり、地へ縫い付ける
エイレーネ殿もアルアビド殿も、何度か共闘した仲だから、見ずとも連携はできる
己は完全な立て直しを許さないよう猛攻を続けることで、仲間の攻撃がより効果的に通るように立ち回る
仲間にはディフェンスを
素早く討ち取り、陽動作戦への時間を確保しようか
「雄雄雄雄雄ッ!」
復讐者達の鬨の声に負けじとばかりに、クレタの牡牛もまた叫ぶ。
身体は砕かれ、心は折られ、それでも彼には彼なりの、亜人としての矜持がある。
(「追い詰められたからなんだと言うのだ!!」)
相手はたかが復讐者。改竄世界史の果てに居場所を奪われ、絶滅した存在ではないか。それに好き勝手される謂れなど何処にもない!
泥濘の中、己を鼓舞する叫びを放ち、頭を振って絶望を追い出す。
(「まだ負けてはいない!」)
己が叫びを力に変え、両脚で泥底を踏みしめて立ち上がる。
そんな彼に走り抜く影があった。
「――見切れるか」
朱殷の闘気を自身の得物、黒龍偃月刀に纏わせた夏候・錬晏(隻腕武人・g05657)であった。
袈裟掛けの一刀を振るい、斬烈をクレタの牡牛へと刻み込む。叩き込まれたのはその一刀のみではない。二度、三度、四度。幾多に振るわれる斬撃は、立て直しを許さないと宣言するかのような力強き猛攻であった。
「ぐぉっ?!」
泥土の中、踏鞴を踏むクレタの牡牛の脚に、幾多のワイヤーが絡みつく。【トラップ作成】によって生み出されたそれは、当然の如く、クレタの牡牛への致傷へと成り得ない。常識を逸脱した彼らにとって、それらは、ただの非殺傷性の罠だ。刹那の足止めとなれば、それだけで上等な代物と錬晏は理解している。
そして、その隙こそ、彼の欲したモノであった。
斬撃が奔り、クレタの牡牛を切り刻む。幾渡と繰り出される偃月刀の猛攻に、クレタの牡牛は少しずつ冷静さを欠いていく。
そもそも、その心は一度折られた。
立て直しを図る否や、錬晏によって、再度、彼の心は梳られていく。そこに希望の輝きが浮かぶ暇は無かった。
闇雲に振り回す角は、しかし、錬晏の身体を捕らえる事は出来ない。
必死の一打を紙一重で躱し、代わりにと再度、斬撃を叩き込む。脳天、首、肩、胸、そして腹。幾渡と剣戟が煌めき、その都度、牡牛の悲鳴と肉を断つ鈍音が響き渡っていく。
やがて、それも終焉を迎える。
「……やれやれ。ようやく終わったようだ」
額に浮かぶ汗を拭った錬晏は、乱れた呼吸を整えるべく息を吐く。
彼の目前には、ただ、クレタの牡牛だったものが立っていた。だが、それも刹那だ。一瞬きも時間を要さず、ずるずると泥濘の中に倒れ、派手な水音を立てる。
絶命は、最早誰の目にも明らかであった。泥に塗れ、命を落とす。それが彼の最期であり、残された肉体のみが、存在の証しであった。
それも直ぐに消失していく。自然為らざるモノ故の最期を見届けず、ただ、錬晏は次の目標であるペルセポリスの都市に視線を向けた。
「さて。陽動作戦だ。幾らか時間を稼げたなら良いが……」
終局を迎えた敵に興味は無い。
武人は次の目的を見定め、新たな闘気を纏っていった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【トラップ生成】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
新城・橙花
(トレインチケット)
百鬼・運命
(トレインチケット)
「うん。無事、敵は撃破出来たようだね!」
「では、陽動攻撃に移ろう」
救援機動力で駆けつけた二人の復讐者、新城・橙花(呪刀の裁定者・g01637)と百鬼・運命(ヨアケの魔法使い・g03078)は頷き合うと、ペルセポリスへの進軍を開始する。
周囲に響く剣戟は、未だ、戦いを繰り広げている部隊がある為か。
彼らを楽にするためにも、急ぎ、ペルセポリスへの攻撃を行おう。
その援護のため、二人はこの地に自身達はやって来たのだ――。
「我は呼ぶ、国崩しの九尾をっ」
呪法と共に結ぶ舞は大きく、力強く。その都度、橙花の背には狐の尾が具現化。それぞれが鋭いモノへと転化していく。
「――こちらも準備は万端だ」
発声のために大きく息を吸った運命は、共に身構える橙花に視線で合図を送る。それに対し、華のような笑顔が返答として返ってきた。
(「まあ、策も何も無い、ただの陽動作戦だけれども」)
それ自体が策と言えば策であるが、しかし、込み入った作戦が有るわけでは無い。ただ、全力をペルセポリスの城壁へと叩き付ける。それだけの行動に、少しだけ虚無感を覚えてしまう。
運命が得手とするのは、もう少し複雑怪奇な、いわゆる込み入った戦いだ。頭脳労働者の彼としては、単純な力作業は好まない。
だが、時にそれが十全の策になる事も熟知している。
(「さて、頑張ろうッ!」)
対して、橙花は己が所業に悩みを浮かべない。
必要だから攻撃する。必要だから敵を倒す。必要だから仲間を助ける。
戦闘機械と化す己に余計な思考は必要ない。それらを切り捨てた役割こそ、自身に求められるモノだと断ずるように。
外見は元より、内面も対象な二人は各々のパラドクスを紡ぐと、そこから発する圧を強めていく。
橙花は破城槌と化した、九尾の闘気を。
運命は渦巻く海水の塊を召喚する歌声を。
それぞれ操り、そして――。
「いっくよーっ!」
「砕ケッ!」
勢いの声が、砲声が、呪法が、呪歌が響き渡る。
同時に叩き付けられたパラドクスは破壊の力と化し、城壁そのものを砕くと、其処に集う亜人達を巻き込み、ペルセポリスの中へと流れ込んでいく。
流石に命を奪う前に至らなかったが、あの様子では骨の一本や二本――些か、軽傷と呼ぶには酷い怪我も免れなかっただろう。
まるで都市を横殴りにした巨大な衝撃に、亜人達は何を思うのか。
ともあれ、役割は果たしたと運命は吐息を零す。
「さて、後はジェネラル級ディアドコイのダレイオス3世がどう動くか、だな」
「きっと大慌てだよ」
まさかこんな速効でペルセポリスが攻撃されるとは思っていなかっただろう。
驚愕の様子を想像すれば笑いが込み上げて来そうになるが、それは未だの話だ。
何故ならば、まだペルセポリス攻略は始まったばかり。この陽動攻撃もまだ、序の口と言えば序の口なのだ。本懐には至っていない。
「まあ、とは言え」
「逃げろっ。だねっ!」
一撃離脱とばかりに二人して反転。荒野へと走り去っていく。
その様を脱兎の如く、と例えれば、橙花も運命も抗議しただろうか。
真相はただ、改竄世界史蹂躙戦記イスカンダルの荒野へと消えて行くのみであった。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【狐変身】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
ハーリス・アルアビド
周辺の敵は一掃できました。陽動に移りましょう。できる限り派手に、でしたね。
砂漠の守護者にして嵐の神セトよ、お力添えを。あらゆる敵を薙ぎ払う御力をお貸し下さい。
【祈り】を捧げこの地で戦う仲間たちへの激励として、亜人への宣戦布告として、嵐を顕現します。
【セトの誓願】により巻き起こる嵐を【風使い】と【砂使い】の力でより巧みに砂塵を舞わせ、より大きく激しい砂嵐に見えるように、砂同士を擦り合わせる音でより迫力が出せるよう細工しましょう。
敵軍を分断する恐るべき嵐で周辺の地面を抉り、威力を見せつつ挑発を。
ペルセポリスは包囲しました!増援を期待しても無駄です。周辺の亜人はすべて一掃し、我々の支配地となったのです。
壁の中で来ることのない助けにすがって朽ち果てるか、玉砕覚悟で我々と戦うか、あなた方には二つの道しかありません!
挑発をしながらペルセポリスからの襲撃があれば脱退しやすいよう、先ほど抉った場所に【防衛ライン】を築いておきます。
「出来るだけ派手に、でしたね」
ぴゅーと去って行く二人の姿を見送り、ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)は微苦笑を浮かべる。
あの二人に倣い、ペルセポリスの城壁を破砕する。実際に砕く事は出来ずとも、都市を揺るがせる攻撃はこの地で戦う仲間達の激励として、或いは亜人への宣戦布告として顕著する筈だ。
「砂漠の守護者にして嵐の神セトよ、お力添えを。あらゆる敵を薙ぎ払う御力をお貸し下さい」
立ち上る砂嵐に全てを込め、ハーリスは引き鉄を引く様、びしりとペルセポリスの城壁を指差した。
「ぐおおおおっ?!」
咆哮の如く聞こえるのは、亜人の叫び声か。或いは雄叫びか。
そのどちらでも構わないと、ハーリスは首を振る。
可能な限り力を注ぎ込み、砂嵐は巨大なモノを練り上げた。砂塵は荒野を抉り、道を、城壁を梳って行く。果たしてそれが集団による攻撃と映ったかは定かではない。だが、己が疑えば、敵に疑うべく空白を残してしまうだろう。大切なのは、己を信じる心だ。
「ペルセポリスは包囲しました! 増援を期待しても無駄です。周辺の亜人はすべて一掃し、我々の支配地となったのです」
「な、何だと……?」
ハーリスが口にする情報は、当然、虚言だ。
実際はペルセポリスに幾らかの復讐者達が到達しただけだし、周囲の亜人は健在。電撃戦を仕掛けるに至るのみだ。
だが、それが虚偽だとペルセポリス側が知る理由は何処にもない。
そして、そう信じ込ませることが、彼と復讐者達の目的だ。
「幾多の攻撃がペルセポリスの城壁へ注ぎ込まれています。もはや、我らの道を築くのに時間を有さないでしょう!」
これは、そう言う戦いだと叫ぶ。
ペルセポリスに残された道は、数多くない。それを選べとハーリスは言葉を叩き付ける。
「壁の中で来ることのない助けにすがって朽ち果てるか。玉砕覚悟で我々と戦うか。あなた方には二つの道しかありません!」
それ以外に選ぶ余地はない。
そう断ずると、更なる砂嵐を召喚。ペルセポリスの壁へと叩き付け、ガリガリと城壁を削り取っていく。
聞こえた悲鳴は、恐怖に塗れたものに思えた。
ハーリスの虚言を真に受けているのか、それとも差し迫るパラドクスの脅威に怖れを抱いているのか、それは判らなかったけれども。
(「さて、このくらいでしょうか」)
余り留まり、深く追い詰めれば手痛い反撃を受けかねない。
既にハーリスの元には投げ槍が、そして矢の群勢が雨嵐と降り注いでいる。今は砂嵐で逸らしているが、これがパラドクスに転化した途端、それらは彼に届き、血肉を抉るだろう。
「さあ、覚悟しなさい! 総攻撃の日は近いでしょう。それまで震えながら、己の最期を夢想していなさい!」
それだけを言い残し、ハーリスは撤退を開始する。
最後に駄目押しと放つ嵐は全てを巻き上げ、砂塵と共に戦場内へと広がっていった。
そして、それが晴れた時、ペルセポリス警備兵の視界に映ったのは、ただ刻まれた戦場の傷痕のみ。ハーリスを始めとした敵影はただの一つも、残っていなかった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【防衛ライン】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!