最終人類史のバレンタイン2024

 新宿島及び奪還済みの地域で、バレンタインを楽しみます。
 チョコを作ったり、造ったチョコを渡したりして、楽しいひと時を過ごしましょう。
 チョコを作る場所や材料などは、時先案内人と、新宿島や帰還した地域の人々が用意していますが、特別な材料などを持ち寄っても良いでしょう。心を込めたチョコレートを作ったり、渡したりして、バレンタインを楽しんでください。

※重要1

 《七曜の戦》後の日本各地、およびオーストラリア全域の『帰還』の成功により、最終人類史の力が強化されています。
 多くのディアボロスや住民達が、最終人類史のお祭りを心から楽しむ事で、最終人類史の力はさらに高まり、ディヴィジョンの排斥力を弱められます。
 この効果により【3月1日】に、【2月末日までに完結した『新宿島のバレンタイン2024』のシナリオ数】と同じ日数だけ、その時点で発生している全てのディヴィジョンの全ての事件の【攻略期限】が延長されます。
(例えば【10シナリオ】が完結していれば、全ての事件の攻略期限が【10日】延長されます。なお、3月1日よりも前に攻略期限が来る事件や、攻略期限が無い事件、期限がくれば自動的に成功する事件に影響はありません)

※重要2

 この「バレンタインシナリオ」でプレイングが採用された方(トレインチケット含む)には超限定の「アイコンフレーム」をプレゼント!
 アイコンフレームのデザイン等の詳細はこちら

ホットチョコレートと過去からの光(作者 音切
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#最終人類史(新宿島)  #最終人類史のバレンタイン2024  #バレンタイン2024  #挿絵あり 


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「今年はさ、冬のコテージに行ってみない?」
 キャンプ場の人から、良ければ使って欲しいと話があったのだと。
 綴・稀夜(妖狐の魔導忍者・g08573)は説明を始める。

 思えば一年前。
 小学生男子にバレンタインの企画をしろと? と。
 途方に暮れてバタバタと準備する羽目になった少年は、今年のバレンタインこそ余裕を持って準備しようと思ったのだ。
 そう、思ったのだ……その時は。

 しかし次のバレンタインは、一年も先の話。
 慌てて考えてもいい案は出ないだろうと、問題を棚上げし。
 棚に上げたまま忘れ去り。季節は巡って、再びの冬。
 バレンタイン開催のお達しが来て、『しまった』と。
 お約束な展開を忠実になぞった少年に、天……ではなく、キャンプ場から救いの声が届いたのである。

「こういうお祭りをみんなで楽しむと、最終人類史の力が高まるのは知ってるよね?」
 ならば、今年のバレンタイン会場にぴったりの場所があると。
 そんな声が届いた、豊かな自然の中に佇むコテージには、ミニキッチンやトイレ。バスルームといった設備が整い、冷暖房やテレビといった家電も充実している。
「こういう所で過ごすのを、確か……グランピングって言うんだっけ?」
 初心者にも嬉しい、快適さを兼ね備えたキャンプ。
 あるいは、自然体験を楽しむ事のできるキャンプテイストの宿泊施設は、本来ならば観光客や家族連れで常に賑わっている所なのだが……。
「今はお客さんがほとんどいなくて、かなり寂しい風景になっちゃってるみたいでさ」
 『建物復元』や『ハウスキーパー』で、コテージの状態は保たれているものの。
 人が訪れない建物には、特有の寂しい空気が漂うもの。
 刻逆以前の景色を恋しく想う近隣の人々の意見もあって、今回の話が持ち上がったという次第だ。

「キッチンも付いてるからね。それこそチョコレートとかなら、その場で作る事もできるよ」
 勿論、事前に作ったものを持ちこんでもらっても構わない。
 なにせこの日、このキャンプ場は、ディアボロスだけの貸し切りなのだから。
 一組につき、一軒。
 借りたコテージでどう過ごすかは、そのディアボロス次第という訳だ。

「それにね。そのコテージ、天窓が付いててさ」
 夜には、星が良く見えるのだそう。
 冬の澄んだ空気の中で輝く星を、暖かな屋内から見上げる事ができるのだ。
「あ、勿論。ウッドデッキに出れば、直接星を見る事も出来るよ」
 屋外のウッドデッキは、少し冷えるかもしれないが。その分、視界一杯に広がる星空を見上げる事が出来る。
 寒さが気になる場合は、温かな飲み物などを用意していくといいかもしれない。

「そう言えば……星の光って、僕らに見えてるのはずっと昔の光なんだって」
 みんなは知ってた? と。
 稀夜は何だが嬉しそうに笑う。

 宇宙はとっても広いから。
 太陽でさえ、その表面から地球に光が届くまで約8分かかるのだそう。
 それが、無数に散らばる星々となれば。
 何十年。何百年……更に遠くの星ならば、もっと昔の光が、地球に居る人々の目に映っている。
「それって、ちゃんとそこに『過去』があるんだな……って気がして、ちょっと嬉しくならない?」
 そんな過去からの光の下で。
 都会の喧騒を離れて、たまには一人でゆっくりと。
 あるいは、親しい人と心置きなく過ごすバレンタインはいかがだろうか。

「まぁ、バレンタインだからって、必ずチョコレートをあげたり貰ったりしなきゃいけない訳じゃないからさ」
 良ければ、星を見においでよ……と。
 稀夜は、ディアボロス達に声を掛けるのだった。


 夜の闇に、窓から零れる光は柔らかく。
 コテージの外観を、うっすらと浮かび上がらせている。
 都会の喧騒は遠く。
 冷たい冬の空気は静かで。空気を白く染める、己の吐息が耳に付く。

 そんな自然の中に佇むコテージは、今宵あなたの。あるいは、あなたたちだけの空間。
 バレンタインらしく、チョコレートを作って渡し合ってもいいし。
 いっそ、グランピングだと。賑やかにパーティを開いてもいい。

 星を見るのなら、コテージの余計な光は消しておくといいだろう。
 ウッドデッキに出るのなら、温かな飲み物も忘れずに。
 そこにはきっと、あなたたちが守った過去からの光が降り注ぐから。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【フライトドローン】
1
最高時速「効果LV×20km」で、人間大の生物1体を乗せて飛べるドローンが多数出現する。ディアボロスは、ドローンの1つに簡単な命令を出せる。
【勝利の凱歌】
1
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【操作会得】
1
周囲の物品に、製作者の残留思念が宿り、ディアボロスの操作をサポートしてくれるようになる。効果LVが高い程、サポート効果が向上する。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【アイテムポケット】
2
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【寒冷適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が、摂氏マイナス80度までの寒さならば快適に過ごせる世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV2 / 【命中アップ】LV4 / 【反撃アップ】LV2 / 【リザレクション】LV1

●マスターより

音切
 音切と申します。
 バレンタインシナリオをお届けにあがりました。
 本シナリオは1章編成です。

『①最終人類史のバレンタイン』
 星が見えるコテージで、バレンタインを過ごします。
 基本的にはチョコレートを渡すという内容になりますが、
 チョコレートパーティを開く等、常識とマナーを守ってコテージをご利用いただければ何でもOKです。

『その他・注意』
 特定の相手にプレゼントを渡したりするという場合は、渡す側と渡される側、両方のディアボロスが参加している必要があります。
 公序良俗に反する内容は採用しません。
 プレイングにご指定頂いている場合とシナリオの締めに必要な場合等に、NPCの綴・稀夜(g08573)が登場する事があります。

 筆は非常に遅い方です。
 一応、少人数完結の想定でおりますが、期限内にお届け出来る範囲で最大限書かせていただきます。
 お目に留まりましたら、よろしくお願いいたします。
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


七星・優希
コテージを借りてバレンタインを過ごすのもいいですね。
この時期ですしチョコレートの他にマシュマロとクッキーを持ち込んで使わせてもらおうかな。
設備が整ってるなら安心して楽しめそうです。

日中はチョコレートケーキを作って出来上がるまでは焼きマシュマロを作って楽しむよ。
これを溶かしたチョコをかけて食べるのがたまらないんだよね。手が止まらないね。

出来上がったらケーキを切り分けてホットチョコを淹れて日が暮れるのを待ってと…
コテージの中から星を眺めるためにも電気を消しますね。
部屋の中からとはいえ星が綺麗ですね。時間を忘れてしまいそう。
あの星の名前はなんだったかな…忘れちゃいましたけど。

星を見ながらホットチョコを一口。ほっとする味ですね。
こういう時間を過ごすのも悪くありませんね。ふう…クッキーもチョコも美味しい。


 ひとつ、呼吸をするたびに。
 微かな木の香りを含んだ冬の空気が、体を通り抜けていくような。
 多くの自然に囲まれた、静かなキャンプ場で。
(「コテージを借りてバレンタインを過ごすのもいいですね」)
 木目のあたたかなコテージの佇まいに、七星・優希(気怠げなファッションデザイナー・g10433)は僅かに目を細める。

 傍目には、無表情に見える優希だけれど。
 彼女が手にするバックは、この日の為に準備してきたあれこれが、ぎゅぅっと詰め込まれていて。
 その膨らみ方に、今日という日を楽しもうと言う優希の気合が、密かに表れていたりするのだ。
 時先案内人から渡された鍵を手に、ほんのり足早にステップを上がって。
 コテージの扉を開ければ……ほら、こんなにも。
 空調の良く効いた、暖かな空間が優希を出迎えてくれるのだから。

(「これなら、安心して楽しめそう」)
 綺麗に整えられたテーブルに、見るからにふかふかなソファとクッション。
 更に奥へと足を進めれば、よく使い込まれているけれど、ピカピカに磨かれたキッチンがお目見えして。
「それじゃあ、さっそく……」
 日が暮れる前に、完成を目指しましょうと。
 持って来たバックの中身を広げて、優希は今日の創作活動を開始!

 今日はバレンタインデーだから。
 手にする道具も材料も、普段とは違って。チョコレートにクッキーに……どれもが、美味しいを作るためのもの。
 黄身と分けた卵白は、しっかりとメレンゲに泡立てて……。
 つい、途中で味見したくなる。とろりと蕩けるチョコレートソースを、少し多めに作ったら。
 メレンゲが萎んでしまわないうちに。手早く混ぜてオーブンへ。

 ブォン……と。
 オーブンの音を聞きながら待つ時間は、ただ待っているだけでは、長く感じるものだけれど。
(「今こそ、これの出番だよね」)
 そこは、準備にぬかりなし。
 バックより取り出したマシュマロを串に刺したなら。
 コンロの上で、くるくるくるり。
「これがたまらないんだよね」
 香ばしく色付いたマシュマロに、取り分けておいたチョコレートソースをとろ~り……遠慮なく、沢山かけたなら。

「……はふっ」
 まだ熱々だったマシュマロが、外はカリッと。中はとろりと溶け出して。
 口の中でチョコソースと交じり合い、甘い香りが広がってゆく。
 しっとりと口の中に残る、幸せの余韻に浸ったら……もう一個、と。
 つい、新しいマシュマロに手が伸びる。

 あと一つだけ。
 次こそ最後。これがほんとの最後の最後……と。
 焼きマシュマロのおかわりをしていたら、時間が過ぎるのなんてあっという間。
 窓から見える風景が夜の色に染まる頃には、オーブンからもいい匂いが漂ってきて……。

 綺麗に焼き上がったチョコレートケーキは、食べやすいように切り分けて。
 余ったクッキーに、ホットチョコレートも忘れずに添えたなら。テーブルの上の準備はばっちり!
(「あとは……」)
 丁度いい位置のソファに、クッションを一杯重ねたら。
 ふかふかの感触に、思いっきり背中を預けて。
 リモコンの、消灯ボタンに手を伸ばす。

「……わぁ」
 一瞬にして訪れた、夜闇の中で。
 それまで、部屋の中を映していた天窓に星明かりが灯る。
「あの星……」
 名前はなんだったろうか。
 学校の授業か何かで、名前を習ったような気がするけれど。
 窓というフレーム越しに見る星は、それでもやっぱり綺麗で。
「……美味しい」
 チョコレートケーキの、ふんわり優しい甘みに満たされながら。また天窓を見上げれば。
 見る角度が変わった事で、天窓には違う星空が現れる。
(「こういう時間を過ごすのも、悪くありませんね」)
 様々な顔を見せる窓枠の芸術に。
 そこから降り注ぐ星の光りの下、ゆったりと夜は更けてゆくのでした。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!

南雲・葵
ミレイ(g01550)と一緒に参加させて貰うよ

コテージの1棟貸しってありがたいよね
この時期は空気も澄んでるし星が綺麗に見えるから、夕食の後は星空観測なんてどうかな?

メインはミレイに任せて、俺はバケットを使った簡単な物を作っていこう
定番のガーリックやピザ風、ブルスケッタ。
凄いね、手際の良さはバイト仕込みかな?
ソースも美味しいし、完成が楽しみだよ

ミレイが仕上げてる間にテーブルセッティング
プレースマットにシルバーを並べたら、小さなブーケをテーブルに飾ろう

向かい合って座ったら、2人だけの記念日ディナーに舌鼓
んー、美味しい!
チョコソースで食べたの初めてだけど、これは毎年食べたくなる味だよ
…来年も期待しても良いかな?

とろりと溶けるショコラに幸せをかみ締めながら
チョコも美味しい!
これは…来月は奮発してお返ししないとね。
何か希望はある?

そうそう、防寒具とクッション持ってきてるから、ウッドデッキで天体観測しない?

勿論、一緒にブランケットに包まって、隣で一緒に見よう。


ミレイ・ドリムータ
葵(g03227)と参加

コテージって初めて!キッチンも付いてるし、これなら豪華な夕食も作れそうだね!
まずは2人で夕食の準備
メインのローストチキンをオーブンに入れて、焼いてる間にソースを作る。
今日のソースはチョコレートを使ったソース!
チョコとバルサミコ酢、醤油を混ぜて……うん、ちょっと大人の味で美味しい!葵も味見してみる?(ソースをスプーンで掬って葵へ向ける)

夕食の準備が出来たら天窓のあるリビングで食事……の前にデザートの準備をこっそりしておく。
ローストチキンとチョコレートソース合うね!ブルスケッタも美味しい!
おしゃべりしながら食事を楽しむ
実はデザートも用意してたんだ。今持ってくる!
用意したのは焼きたてのフォンダン・ショコラ。熱いうちにどうぞ。
どう?おいしい?良かった、チョコレートがちゃんととろけるように何度も練習した甲斐があったよ。

来月のお返しかぁ。それじゃ葵の手作りのお菓子が食べてみたいな!

食後は天体観測
冬の星空はやっぱり綺麗だね。けどちょっと寒い。
……もうちょっとそっちに寄って良い?


 キンと冷たい冬の空気が、暖かなものへと変わり。
 照明が、部屋を明るく照らし出したら。

「コテージって初めて!」
 ミレイ・ドリムータ(新宿島で暮らすもの・g01550)の足は、何処かそわそわと早足に。コテージの中を巡る。
 年季の入ったテーブルや、ふかふかのソファの横を通り抜けて。
 足を進めた窓際。
 その向こうに見えるのは、冬特有の落ち着いた雰囲気を漂わせる針葉樹の景色。

「コテージの1棟貸しってありがたいよね」
 見慣れた公園の景色とはまた違う自然の風景に、目を輝かせるミレイの隣へ。
 南雲・葵(バールの人・g03227)が、窓の外を覗き込むように並び立つ。

 慣れているトレーラーハウスや簡易テントでのグランピングも、勿論楽しいけれど。
 場所や設備が変われば、また違った楽しみ方が生まれるのが、グランピングの醍醐味。
「それじゃあ早速……」
 準備を始めよっか、と。何やら意味ありげに。
 ふふっと勝気な笑みを見せたミレイの足は、キッチンの方へ。
 そう。今日は必須の準備物が少なくて済む分、バックの容量に余裕があったから。

「……うん。これなら豪華な夕食も作れそうだね!」
 コンロの数に、オーブンの大きさもしっかり確認したなら。
 下拵えはもう済ませて来たのだと。
 ミレイが取り出したのは、しっかりとタレが染み込んだ鳥のモモ肉。
「お、間違いなく美味しいやつだ」
 感嘆の声を零す葵に、けれど、まだまだこれだけじゃないのだと。
 予熱したオーブンに、お肉をセットしたのなら。
「今日のソースはこれを使うよ」
 ミレイが次に取り出すのは、バレンタインにはぴったりのチョコレート。

 え、ローストチキンにチョコレート? と思うなかれ。
 しっとりとろりと蕩かしたチョコレートに、バルサミコ酢とお醤油を慎重に分量を量って混ぜたなら……ここでちょっと、味見をぺろり。
「うん、ちょっと大人の味で美味しい!」
 甘じょっぱくも、ほんのり苦いカカオの香りがコク味を深める、チョコレートソースの出来上がり!

「葵も味見してみる?」
 その味の完成度は、葵が食べるまでもなく。
 自信に満ちたミレイの表情が、既に物語っているけれど。
「うん、美味しい」
 ぱくりと、口に含んだ。
 舌の上の広がるチョコレートソースの、絶妙な味のバランスに。
「手際の良さはバイト仕込みかな?」
 『本当に凄い』と、零れた言葉は。
 チョコレートソースの美味しさもだけれど。それをテキパキと準備した、ミレイの手際の良さに対して。
 設備が整ったコテージのキッチンと言っても、ミレイにとっては初めて触れる場所なのだから。
 慣れない環境、慣れない道具でこれだけ手際よく動けると言うのは、彼女の普段の努力があってこそのものだろう。

「あとは焼き上がりを待つだけだね」
 そんな慣れないオーブンの火加減と、ミレイが戦っている間に。
 自分も何か一品を、と。
 葵が取り出したのは、細長いフランスパン――バゲット。
 まずは薄くスライスしたら、カリっとトーストして……。
「……うわ、腹減ってきた」
「ふふ、もうちょっとだよ」
 オーブンから漂ってくる香ばしいチキンの香りに、完成が楽しみだと。胃袋を刺激されつつも。
 そんなチキンにもよく合うだろうガーリックを、カリカリのバゲットに塗ってゆく。
 あとはここに、様々な具材を彩りよく乗せたなら……ブルスケッタの出来上がり!
 そして、一部焼かずに残していたバケットには、具材の上にさらにチーズも乗せて。トーストすれば、こちらはピザ風の仕上がりに。

「そっちはもう焼き上がったかな?」
「えっと……」
 『もうちょっと……?』と。
 何だか曖昧なミレイの返事に、一瞬首を傾げつつ。
 ほんのり漂ってくるチョコレートの香りに、きっとソースを作り足しているのだろうと。
 葵はテーブルのセッティングへと入る。

 プレースマットにシルバーを並べたら、小さなブーケをテーブルに飾って。
 お皿に綺麗に整列させたブルスケッタを置いたなら。
 中央の空いたスペースの入るのは、勿論……。
「おまたせ!」
 いい感じに焼けたよと。
 チョコレートソースに艶やかに彩られた、ローストチキンのお目見え!

 一気に華やかさが増したテーブルを見つめて。
 頑張って作ったから、お腹が空いたと。
 クスリと笑うミレイの表情に釣られて、葵の表情も緩む。
 今日はバレンタインデーだけれど。
 二人にとっては、それ以上に大切な記念の日だから。

「そっさくたべようぜ」
「うん」
 いただきます、と。二人で声を合わせて。
 ディナーに舌鼓を打てば、お喋りも弾む。

「んー、美味しい!」
 喋りの合間、口に運ぶローストチキンはミレイの計算通りに。
 絶妙に仕上げた甘じょっぱさが、香ばしいチキンと絡んで。旨味が口いっぱいに広がってゆく。
 けれど、それ以上に……。
「ブルスケッタも美味しい!」
 大好きな人が用意してくれたお料理は、美味しさもひとしお。
 サクッと、ブルスケッタを頬張る度に。美味しいが表情に現れているミレイの様子に。つい、こっちはピザ風なんだと、おかわりを勧めつつ。
 葵もまた、ローストチキンを頬張れば。
「チョコソースで食べたの初めてだけど、これは毎年食べたくなる味だよ」
 ほろりと解れるチキンに、しっとりと広がるソースの風味に。ミレイの頑張りが現れている気がして。
「だから……」
 来年も期待してもいいかな? と。
 願いのような。独占欲のような。どちらとも付かない感情が、少しだけ顔を出す。

 そんな葵の気持ちは、果たして伝わっているのか。分からないけれど。
「実は、デザートも用意してたんだ」
 来年……も、勿論大切だけれど。
 今という一瞬一瞬を大切に積み重ねている少女は、ふわりと笑って。パタパタとキッチンへ。
 実は、葵がブルスケッタを作っているその間に。
 バレないようにこっそりと仕込んでおいたデザートがあるのだ。

 あたかも追加のチョコレートソースを作っていますという顔をしながら、材料をしっかり混ぜて。
 オーブンへと入れておいた、それは……。
「熱いうちにどうぞ!」
「チョコケーキ……?」
 と、思いきや。
 フォークを差し入れた瞬間に、中からチョコレートが溶け出す。
「フォンダンショコラ! これも美味しい!」
「……良かった」
 普段より、少しトーンの高い。
 声色に美味しいが溢れる葵の言葉に、ほっと。ミレイの表情も緩む。

 この焼き加減をマスターするのに。実は、何度も何度も練習していたのだ。
 慣れないオーブンで、上手に焼けるかは少し心配だったけれど……。
 手にしたフォークを差し込んだ瞬間に、蕩けるチョコレートがお皿に広がってゆく……正しくこれこそ、ミレイが葵に食べさせたかったフォンダンショコラだ。

「これは……来月は奮発してお返ししないとね」
 我ながら、会心の出来のショコラを堪能していたら、何かお返しの希望はあるかと。
 葵がそう問うものだから。
「それじゃ……」
 食べる人の事を、想いながら作るのがお料理ならば。
「葵の手作りのお菓子が食べてみたいな」
 その時間を、私にと。
 ミレイからの可愛いリクエストが飛び出す頃には、すっかりと夜も更けて。


「やっぱり、綺麗だね」
 葵に誘われ、手を引かれるまま。
 二人で降りたウッドデッキには、星の光が降り注ぐ。
 防寒具に、クッションに。
 あたたかな装備は、葵がしっかり準備はしてくれているのだけれど。
「……もうちょっとそっちに寄って良い?」
「勿論」
 肩を抱き寄せられるまま、一緒のブランケットにくるまったのなら。
 共に星を見上げる時間は、こんなにもあたたかに過ぎてゆく――。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【操作会得】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!

百部・小太郎
ハニィ殿(g00897)と同行

新宿島では、異性と2人で出掛ける事をデートと言うのだとか
うむ。平安との違いに驚くばかりにございまするなあ

勧めに従いタンブラーとホットチョコレートとブランケットを用意して
借りたコテージの1つ。ウッドデッキで共に星見の約束を
それと、伝えたい事もありますれば

「改めてとなりまするが。どうか聞いて下さいませ」

「それがし、ハニィ殿の事を好いておりまする。つまりまあ、男子として」

「あれら星々は、はるか過去より今この時注ぐ光であるのだとか。
それがしもまた、今この時代に在るは星の光のような物やもしれませぬ」

「されど。人が人を想うに、過去も未来もありますまい」

「出会う頃より、去年より、昨日より。好きにございまする、貴女のことが」

笑ってそれだけ
星の光が永遠でないよう、時を越えた想いもまた泡沫の夢かもしれずとも

「また遊びに行きましょう。それがし大分新宿島の生活にも慣れました故。
いやまあ、相変わらずカラクリの類だけはさっぱりにございまするがー……」

出来得る限り、傍に在らんと思う


ハニエル・フェニックス
小太郎君(g02146)と!
そうそう、デートだよ!
平安じゃ和歌とか詠んでお家デートするのかな?本で読んだ気がする!

コテージでホットチョコレート飲みながら天体観測……うん、あったまるしロマンチック!
あはは、どうしたの?急に改まって。
はい、じゃあ神妙に聞きまーす!
……えっ、それってもしかしてあれ?告白ってやつ?
わー、びっくりしたしすごい照れる!
もう、ほっぺた熱くなっちゃうよぉ。
でも、えへへ……嬉しいな。

自分でも忘れちゃうけど、私も新宿島からしたら小太郎君の言う星の光だよ。
平安とTOKYO、遠さが少し違うだけ。
全部が終わった時、二人がどうなるかは分かんないけど……きっと大丈夫。
上手く言えないけど、私も小太郎君の事、好きだよ。
これからもっとどんどん好きになると思う。
だから大丈夫!
そうだね、その為にももっといっぱい遊びに行こう!
機械の事は私が教えてあげる。
小太郎君は他の事を教えてね。
ふふ、他の事って言ったら他の事!
今分からなくてもその内分かるよ、一緒にいてくれたらね!


 冬の寒さを忘れさせてくれる、空調の暖かさに。
 昼間の様に明るい、人口の光。
 配置された調度品一つとっても、百部・小太郎(犬侍・g02146)のよく知っているそれとは、随分と異なるコテージの中で。
 ピカピカの小奇麗な厨は、つまみを一つ捻れば簡単に火がついて。
 鍋で牛乳を温めるのも、あっという間。
 そんな新宿島では、確か……。
「異性と2人で出掛ける事をデートと言うのだとか」

 そう語り掛ける。
 小太郎の視線の先には、ふかふかのソファに身を委ねているハニエル・フェニックス(第七の天使・g00897)の姿。
「そうそう、デートだよ!」
 小太郎からの呼びかけに、ひょこりと。
 上体を起こし、背もたれの向こうから顔をのぞかせたハニエルが、いつも通りの無邪気な笑顔を見せる。

 つまり今日は、二人でお出かけ。これは、まごうことなきデートというもの。
 小太郎の生まれた時代には、その言葉は無かったのだろうけれど。
「平安じゃ、和歌とか詠んでお家デートするのかな?」
 男の人が、何日も家に通ったり。
 和歌のお手紙を送ったり……そんな話を教科書か、何かの本で読んだような気がする。
「うむ」
 得意気に知識を語るハニエルの様子に、こくりと頷きながら。
 温まったミルクに、刻んだチョコレートを投入したら。
「平安との違いに驚くばかりにございまするなあ」
 小太郎の呟きと共に、異邦の甘いがふわりと。部屋の中に広がっていく。

「では、ハニィ殿」
 出来上がったホットチョコレートをタンブラーに注いで。
 ふかふかブランケットを差し出したなら、良ければ共に星見をと。
 小太郎が指し示すのは、ウッドデッキ。

 コテージの余分な光を落したら。
 深い夜の闇に、うっすらと。星明かりに照らされた針葉樹の影が浮かび上がる。
 都会のコンクリートジャングルとは違う、自然に囲まれたこの場所で。
 受け取ったタンブラーに口をつければ。
「……うん、あったまるしロマンチック!」
 ぽかぽかと。
 体に染み渡るようなチョコレートの香りに、ハニエルの瞳も綺羅星のように輝く。

「それは良かったでござる。しかし、念には念を……」
 風邪を引いてはいけないからと。
 一層冷え込む冬の空気に、ハニエルの体が冷えないよう。その肩にふわりと。
 ブランケットを羽織らせたなら……。

「……うん?」
 そのまま動きを止めてしまった小太郎の様子に、ハニエルは不思議そうに首を傾げる。
 その青い瞳に、小太郎の姿を映して。無防備に見上げて来る姿に、今がその時だと。
 覚悟を胸に、小太郎はハニエルを前に片膝を付く。
 
「あはは。ほんと、どうしたの?」
 そんな風にされると、何だかお姫様にでもなったみたいで。
 小太郎の顔が、急に近くて……何だか少し落ち着かない気持ちを誤魔化すように、ハニエルが問えば。
「改めてとなりまするが。どうか聞いて下さいませ」
 まだ遠い春を思わせる桃色の瞳が、真っ直ぐにハニエルを射抜く。

「……はい、じゃあ神妙に聞きまーす!」
 その瞳が、声が。何だかとても真剣そうだったから。
 軽い口調とは裏腹に、ハニエルなりにちゃんと真面目に。傾けた耳に、小太郎の言葉が届く。

「それがし、ハニィ殿の事を好いておりまする」

 『……えっ』と。
 一瞬、ハニエルの思考は止まった。
 もしかしたら、声が出ていたかもしれない。
「それって……」
 一体、どの『好き』なんだろう。
 だって、『好き』には色んな種類がある。
 お友達としてとか。妹分として……とか。なんかそういうのがある事くらい、ハニエルだって知っている。
 けれど、今ハニエルが無意識に期待しているのは……。
「……もしかしてあれ? 告白ってやつ?」
 確認の言葉と共に、普段は自信に満ちている青い瞳に戸惑いの色が浮かぶ。

 そんなハニエルを安心させるように手を取って。
 あたためるように、包み込んだなら。
「つまりまあ、男子として」
「……っ」
 改めて、真っ直ぐに。
 気持ちを伝える小太郎の言葉に、他の解釈なんて出来る筈もない。

「わー、びっくりしたしすごい照れる!」
 一瞬詰まった息を、吐きだすと同時に。
 ハニエルの気持ちも、そのまんま言葉になって飛び出てしまう。
 心臓だって煩いし、ほっぺも急に熱くなって落ち着かない……でも。
「……嬉しいな」
 えへへ、と。笑みが零れれば。
 はにかむその笑顔に、小太郎の表情も緩む。

 握りしめた手を、優しく引いて。
 立ち上がった小太郎が示すのは、夜空に煌めく星々。 
「あれら星々は、はるか過去より今この時に注ぐ光であるのだとか」
 何十年、何百年。それぞれに異なる時の光が、この地に降り注いでいるのなら。
「それがしもまた、今この時代に在るは星の光のような物やもしれませぬ」
 本当ならば、触れられるはずもない新宿島という遠い時間に。
 神か仏か、あるいは女神の悪戯か。流れ着いたこの身だけれど。
「人が人を想うに、過去も未来もありますまい」
 いずれは消える星だとしても、今この瞬間に。
 この時に、巡り合えたのならば。
 それが泡沫の夢かもしれずとも……いや。夢かもしれぬのなら、猶の事。
 伝えておきたいのだと、小太郎は笑う。

 出会う頃よりも。
 去年よりも。
 昨日よりも。

「好きにございまする、貴女のことが」

 微笑む。
 桃色の瞳が、優しくて。ほんの少しだけ、切なくて。
「私も、新宿島からしたら小太郎君の言う星の光だよ」
 自分でも忘れちゃうけど、と。
 笑い飛ばそうとしたハニエルの顔には、苦い笑みが浮かぶ。

 だって、平安とTOKYO。遠さが少し違うだけだ。
 自分も小太郎も。本当ならば、ここに届くはずの無かった光なら。
 全部が終わった時、自分たちがどうなるのかは……分からないけれど。
(「……きっと大丈夫」)
 何故そう思うのかと問われても。理論とか、根拠とか。そんなものは知らない。
 けれど、小太郎と共に居る今この瞬間に。
 確かにここに存在するハニエルの心が、そう感じているのだから。
「上手く言えないけど、私も小太郎君の事、好きだよ……これからもっと、どんどん好きになると思う」
 だからきっと……いや、ぜったい大丈夫だと。
 ハニエルの顔に、元気いっぱいの笑顔が戻れば。
 どこかしんみりしていた空気だって、あっという間に塗り替えて。
 小太郎の胸にまで、光が差し込んでくるようで。思わず破顔してしまう。

「また遊びに行きましょう」
 流れ流されている間に随分と様変わりしていた文明に、目を丸くすることも少なくなった今日この頃。
 思いが通じた今、ハニエルを前に少しばかり見栄を張りたい気持ちもあるけれど。
「いやまあ、相変わらずカラクリの類だけはさっぱりにございまするがー……」
 スマホとか、デジタルとか。
 そう言った方面においては、やはりまだまだ胸を張れそうになくて。

 気弱に笑う小太郎の腕を、ハニエルはぎゅっと捕まえて。
「機械の事は私が教えてあげる」
 だから、小太郎君は他の事を教えてね……と。
 何やら意味を含んでいそうな、小悪魔スマイルで『ふふ』と笑う。
「他の事……で、ござるか」
 はてそれは、一体どのような……? と。
 首を傾げる小太郎に、他の事って言ったら他の事なのだと。少し強引に押し切って。
「今分からなくてもその内分かるよ、一緒にいてくれたらね!」
 だから、そのためにも。
 もっといっぱい遊びにいこう。
 色々な場所に。色々な季節に。
 共に在れる時間が続く限り、ずっと――。

 願い。約束を交わし合う二人を、祝福するように。
 過去より来る星の光は、彼らの頭上で瞬くのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【寒冷適応】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!

シル・ウィンディア
ファギーおねーちゃん(g00880)と一緒に。

ね、せっかくだから夜通しおしゃべりとかしてみない?
こんなにお星様が綺麗に見えるんだもん。
取り戻したもの、それについておしゃべりするのもいいんじゃないかなってね。

キッチンでホットチョコレートを作って、それを相棒にしておしゃべりだね。

キングアーサー奪還戦で過去を取り戻したのは最近の事。
わたしの場合は、奪還戦の前に大切な人達…。両親を助けることができたんだけどね。

ファギーおねーちゃんは最近だもんね。大切な人を死の宿命から取り戻したのは。

二人とも、変えられない過去を上書きしてきたんだもんね。
それってとんでもない事なんだろうね。
だって、運命を変えたんだもんね。

過去を取り返して、これから先どうしようか?って思っちゃうよね。
この綺麗な星の下、新しく誓いを立てるのもいいかも?
わたしは…。
大切な人が悲しまないように、笑えるようになる…。
その為に戦い続けるよ。

…大丈夫、悲しませないように頑張るからねっ♪
そういって、ホットチョコレートを一口。
この暖かさのためにもね


ファギー・ルヴァン
シルちゃん(g01415)と参加

夜通しでおしゃべり?
いいよ。せっかくだし、たくさんお話しよっか。
実はね…ホットチョコレートに乗せる、マシュマロやココアパウダーを持ってきたの。よかったら、使ってみる?

ホットチョコレートを片手に話しながら、途中こう伝えます

あのね。何度でも伝えたいから、もう一度言うね。
あの時…エンディヴァーを前にしたとき、本当は、すごく怖かったんだ。
昔のこと、思い出しちゃって…怖くて、泣きそうだった。
でも、シルちゃんが手を握ってくれて、大丈夫だよって言ってくれたから勇気を出せた。
本当に、ありがとう。私に勇気をくれて。
ディルが死んでしまう過去を変えられたのは、貴方のおかげだよ。
…もちろん、コロロにも、感謝しているよ?

空気が澄んでいるからか、いつもなら見えない星がたくさん見える…綺麗だね…
入院している弟のディルに星空の写真を撮りたいけど…あれ、星がうまく映らない…
お見舞いに行くときにちゃんと話せるように…今日は朝まで喋ろっか。…途中で寝ちゃったら、それはおあいこ…ってことで、ね?


 明るい人口の光に照らされた、コテージの中。
 天窓の位置を確認したのなら。

「このあたりかな?」
 ソファを、ベッド風にくっつけて。
 ふかふかのクッションを、ぎゅぎゅっと重ねて……。
「うん。位置調整ばっちり!」
 いっぱい重ねたクッションに、思いっきり背中を預けたのなら。
 自然と見上げる形となる視界の真ん中には、ちょうど天窓がやってくるから。
 ホットチョコレートから立ち上る湯気が、消えてしまわぬうちに……。

「ファギーおねーちゃんも」
 はやく、はやくと手招く。
 そわそわと。浮き立つ気持ちが表情に現れているシル・ウィンディア(虹を翔ける精霊術師・g01415)の様子に、思わず笑みを誘われながら。
「……ちょっと待ってね」
 もふもふの相棒――モーラット・コミュ『コロロ』の為のクッションを整えて。
 ファギー・ルヴァン(明けぬ夜森の魔法つかい・g00880)もまた、ぽふりと。ふかふかな感触に背中を預ける。

「それじゃ、消すよ?」
 リモコンの消灯ボタンを押せば。
 一瞬にして、夜の闇がコテージの中を満たして。
 それまで部屋の中を映しだしていた天窓には、四角い夜空が浮かび上がる。

「……ね、ファギーおねーちゃん」
 ふと、シルに袖を引かれて。
 振り返るファギーの視線の先、暗い部屋の中。
 降り注ぐ星明りに照らされたシルの顔が近くて。
「せっかくだから、夜通しおしゃべりとかしてみない?」
 こんなに星の綺麗な夜に、直ぐに目を閉じてしまうのは、もったいないからと。
 まるで、内緒話でもするように。どこか楽し気に。
 部屋の暗がりにようやく慣れて来た視界で、シルが悪戯っ子のようにクスリと笑う。

「夜通しでおしゃべり?」
 シルの義姉ちゃんとしては、ここは『夜更かしはダメ』と言うべきところだろうか。
 けれど、今日はバレンタイン。
 折角二人でゆっくり過ごせる空間があるのだから……。
「いいよ。せっかくだし、たくさんお話しよっか」
 がんばりやな義妹に甘い時間を贈ったって、何も悪い事はないはずだ。
「実はね……」
 コトリ、と。
 ファギーが傍らのテーブルに置いたそれは。
「あ、マシュマロ! あとこっちは……」
「ココアパウダーを持ってきたの。よかったら使ってみる?」

 うん、と。元気な返事と共に。
 ファギーからの嬉しい気遣いを、遠慮なく受け取って。
 あたたかなホットチョコレートに、マシュマロをぷかぷかと浮かべたら。
 ここは慌てず、急がず。
 チョコレートの香りを楽しみながら、マシュマロがほんのり溶け出す頃合を見計らって……ぱくり。
「んっ……」
 口から体中に染み渡ってゆく甘さに、思わず美味しい声が零れて。
 日々の目まぐるしさや疲れも、すーっと消えていくよう。

「ね、おねーちゃん……」
 残るマシュマロが、カップの中でゆっくりと蕩けてゆくのを見つめながら。
 奪還戦、終わったね……と。
 シルの口をついて出たのは、二か月程前に行われた『幻想竜域キングアーサーの奪還戦』の事。
 ようやく取り戻したブリテンの空に、ドラゴンが羽ばたく事は、もう無い。
 そして、理不尽な死の運命も……。

 あたたかなマグカップの中、小さくなってゆくマシュマロを見つめながら。
 両親の事を思い出す。
 幼き日の自分では抗う事も出来なかった両親の死の運命を、シルが仲間達と共に覆したのは、奪還戦より以前の話。
 別れ際に両親から送られた『またね』の言葉は、今となってはシルの宝物だけれど……決着を付けた直後は、やっぱり少し切なくて。

「ファギーおねーちゃんは、最近だもんね……」
 微かな星明りの中、薄暗がりの向こうからシルの視線を感じて。
 ゆっくりと、一呼吸。ファギーは息を吐く。
「あのね……」
 シルが言っているのは、つい先日。ファギーたちが『紫怨竜エンディヴァー』に打ち勝った時の事。
 その時にも、何度も伝えた事だけれど。
「何度でも伝えたいから」
 もう一度言うね、と。
 語り始める。マグカップを包むファギーの手に、きゅっと力が籠る。
 
「あの時……」
 焼き付いた記憶と寸分違わぬ姿をした、黒きドラゴンの前に立った時。
「本当は、すごく怖かったんだ」
 姿も、声も、あの日通りのドラゴンと、あの日のままの弟がそこに居て。
 この先の結末を、否応なくファギーに思い出させたから。
「……怖くて、泣きそうだった」
 今は、誤魔化すように笑えるけれど。あの時は……。
 弟を助ける為に、頑張らなくちゃいけないのに。
 手が震えて。心は焦るばかりで。
 余裕を失くしていたファギーに、勇気をくれたのは……。
「シルちゃんが手を握ってくれて、大丈夫だよって言ってくれたから」
 貴女のこの手なのだと。
 伸ばしたファギーの手が、優しくシルの手に触れる。

「本当に、ありがとう」
 私に、勇気をくれて。
 弟を――ディルを助けるチャンスを、掴ませてくれて。
 いくら言葉を重ねても伝えきれない思いが、笑顔となって溢れれば。

「……変えられない過去を上書きしてきたんだもんね」
 既に起こってしまった運命を変える。
 自分たちのしてきた事は、本当に。奇跡のように、とんでもない事だったのだと改めて感じて。
 シルの唇からも、笑みが零れる。

「もっきゅ~ぅ♪」
 そんな賑やかな笑い声に誘われたのか、二人の間に割り込むようにぴょこりと。
 コロロが飛び込んで来たのなら。
「……もちろん、コロロにも、感謝しているよ?」
 ずっとファギーの支えになってくれていた、ふわふわの相棒にも。
 改めて、ありがとうを。

「あ、そうだ……」
 そんな、多くの人に支えられて救出した弟は、まだ療養中で此処には来られなかったから。
「写真?」
「うん。本当に、今日は星が綺麗だね……」
 いつもなら見えない星もたくさん見えるこの空を、弟にも……と。
 ファギーは、スマートフォンを構えるけれど。
「あれ」
 画面越しに見る夜空は、宵闇も深く。随分と寂しくて。
 ズームして見たり、明るさを調節してみたり。
 ぽちぽちと、色んな所を触ってみても。
「星がうまく映らない……」
 
 むむむ、と。
 スマホを手に悪戦苦闘するファギーの姿に、笑みを誘われつつ。
「それじゃ、写真の代わりに……」
 夜通し語り明かした、思い出話ならどうかな……と。
 空の星を掴むように、シルは天窓に手を伸ばす。
「この綺麗な星の下、新しく誓いを立てるのもいいかも?」

 自分たちが運命を変えたあの時、あの瞬間に。
 産声を上げた光が、今、ここに届いているかもしれないから。
 誓おう。
 伝えよう。
 これから先の白紙の未来に、自分がどうありたいのかを。
(「わたしは……」)
 一人じゃないから。大切な人がいるから。もう大丈夫だから。
 その大切な人が悲しまないように。
 星明りを受け止める手を、きゅっと握って。
「笑えるようになる……その為に、戦い続けるよ」

 悲しませないよう、頑張るからと。
 マグカップを手に笑うシルの姿が、何だかちょっと眩しくて。
「……今日は朝まで喋ろっか」
 さて、自分は何を誓おうか。
 他にも、話したい事が沢山あって。時間がいくらあっても足りそうに無くて。
「途中で寝ちゃったら、それはおあいこ……ってことで」
 ね? と。二人で笑い合ったなら。
 チョコレートの香りが漂う、甘くて静かな星の夜は、ゆったりと更けてゆく――。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【勝利の凱歌】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【命中アップ】がLV4になった!

イツカ・ユメ
古安くん(g02347)と一緒に。

たまには新宿の街から離れて、大自然の中でのんびり過ごすってのも良いよね。
それにキャンプみたいにテントを張ったりしなくていいし、寒く無いし!グランピングサイコー!!

ん?古安くん、何作ってるの??
わぁ、ホットチョコバナナサンド…!すごく美味しそう!
あつあつとろーりなチョコとバナナとかもう神じゃん!
それじゃあ、わたしもキャンプの定番を作っちゃおうかな。
炙ったマシュマロをクラッカーで挟んだスモアを、バレンタインっぽくチョコでコーティング。
ふふふーん、ふわふわさくさくのあまあまだよ♪古安くんもおひとついかが?
麦茶ラテも良いね、良いね。
今夜は甘いものと甘いものの組み合わせをたっぷり楽しんじゃおう!

星空を見るなら、ウッドデッキへ。
麦茶ラテもあったかいけど……外はやっぱり寒いから、いつもよりもちょっとだけ古安くんの方に寄ってみたり。
ふふ、流れ星見えるかな?見えたら、何をお願いしようかなぁ。
古安くんは、何かお願いしたいこと、ある?


九重・古安
イツカ(g02834)と一緒に参加だ。

コテージを一軒貸し切りとは中々贅沢だな。キャンプでテントにはまだ肌寒い季節だけに設備が整ったグランピングはありがたい。
チョコの季節だからというのもあるが、一度やってみたかったことがあってな。
適度なサイズに割った板チョコと輪切りにしたバナナを食パンで挟んで、弱火で焼いて……キャンプの御供、ホットサンドのチョコレートアレンジだ。
ほうほう、そちらはマシュマロとクラッカーにチョコの組み合わせか。これは食べ比べが捗るな。
あとは以前イツカが勧めてくれた麦茶ラテも試してみるか。もちろん砂糖も込みで。甘いものと甘いものの組み合わせというのも良いものだろう。

ここからでも十分奇麗だが、折角だからウッドデッキから眺めてみようか。
灯りを落として、麦茶ラテも忘れずに。……まだ寒いようなら、もう少し寄った方が良いだろうか?
これだけ空が奇麗に見えればあるいはとは思うが、もし見つけられても願い事は口に出さないのがお決まりという奴だろう。
……実のところ、現在進行形で叶っているのだが。


 空調の効いた、あたたかな空気に。
 昼間のように明るい、人口の光。
 けれど、窓の外を覗けば……。

「大自然の中でのんびり過ごすってのも良いよね」
 新宿の煌びやかな街並みとは、似ても似つかない。
 夜闇の中に更に濃く、針葉樹の影が落ちる自然の風景は、何だか落ち着くと。
 イツカ・ユメ(いつかかなうゆめ・g02834)の細い尻尾が、楽しそうにゆらりと揺れる。

「それに、キャンプみたいにテントを張ったりしなくていいし……」
 テントの設営は、慣れていてもそれなりに時間がかかるもの。
 自分たちの手で組み立てる楽しさや達成感があるのは分かるのだが、やっぱりこの時期は……。
「寒く無いし!」
 指先が震える程の寒さも、コテージの中ならば。
 手も足も。翼も尻尾も思いっきり伸ばして過ごせるくらいには、ぽかぽかと暖かくて。

「コテージを一軒貸し切りとは……」
 中々贅沢だと。
 すっかりリラックスモードなイツカの様子に、九重・古安(巻き戻り路逸れる針・g02347)は小さく頷く。
 自分一人ならまだしも、今日という日を共にしてくれているイツカが凍えることなく過ごせるというのは、やはりありがたい。
 それに、空調以外の設備も整っているグランピングは、出来る事の幅も大きく広がるから。
「うん。グランピングサイコー!!」
 窓の外を見つめて。
 声を弾ませるイツカの後ろを通り過ぎ、古安の足はキッチンの方へ。

「ん? 古安くん、何か作るの??」
「一度やってみたかったことがあってな」
 パタパタと。後に続いてキッチンへとやって来たイツカが、興味津々にのぞき込む中で。
 まずは、チョコの季節だからと。
 古安は、用意してきた板チョコを、パキパキと適度なサイズに割ってゆく。
 部屋の暖かな空気で、チョコレートが柔らかくなってしまわないうちに。続けて取り出したバナナは、手早く輪切りにして……。
「チョコとバナナって時点で、既に美味しいが約束されてる……!」
 チョコバナナ……いや、輪切りにしているならチョコフォンデュだろうかと。
 イツカの期待感と想像が膨らむ中。古安が次に取り出したのは……。
「ホットチョコバナナサンドだ……!」
 お目見えした直火式のホットサンドメーカーに、正解を導き出したイツカの目がキラリと輝く。
「キャンプの御供、ホットサンドのチョコレートアレンジだ」
「すごく美味しそう!」
 下処理を終えたチョコとバナナを、食パンの上に並べて。挟んで。
 中までじっくり熱が通るように、コンロは弱火に。
「あつあつとろーりなチョコとバナナとか、もう神じゃん!」
 古安の手元から、甘く香ばしい匂いが立ち上り始めたら。
 その仕上がりを想像するだけで、イツカの口はすっかり甘いものモードに。

「それじゃあ、わたしも……」
 キャンプ場というこの場所に、相応しい定番を……と。
 イツカが取り出すのは、ふわふわのマシュマロ。
 コテージには、オーブンもあるけれど。ここはキャンプらしく、串に刺して。
 古安の隣に並んで、焦げないように慎重に。コンロで炙れば……。
「焼きマシュマロか」
 確かにそれも、キャンプの定番だなと。
 語る古安に、『ふふふーん』と。イツカは何やら、意味を含んだ笑みを返す。

 狐色に色付いたマシュマロは、このまま食べても間違いなく美味しいけれど。
 まだ完成ではなく、仕上げはここから。
「これを、バレンタインらしく……」
 ぎゅ、っと。クラッカーで挟んだら。
 チョコレートでコーティングして、バレンタイン仕立てのスモアの完成!

「マシュマロとクラッカーに、チョコの組み合わせか」
「ふわふわさくさくの、あまあまだよ♪」
 甘く香ばしい香りを放つスモアは、その名前の通りに。
 一つ食べたら、もっと食べたくなる事は間違いないから。
 沢山作っておこうと、次のマシュマロを焼く……その前に。
「古安くん、出来立てをおひとついかが?」
 まだあったかいよ、と。スモアを差し出すイツカの姿に。
 一瞬、逡巡を見せた古安だけれど。ここはイツカの言葉に甘えて……ぱくり。
 大きく一口に、スモアを頬張れば。
「ん、これは……」
 サクサクのクラッカーを噛み締める度に、まだ温かなマシュマロがしっとりと溶け出して。
 チョコレートの香りと共に、口の中に広がってゆく。
「これは食べ比べが捗るな」
 ならば、イツカにもアツアツの焼き立てを……と。
 もう一つ、ホットサンドを作る準備を始めながら。
「あとは……」
 スモアとホットサンド。この二つがテーブルに並んだら。
 合わせるドリンクも拘りたいところ。
 甘味を引き立ててくれる珈琲か、口をサッパリさせてくれる紅茶か。あるいは……。

「む。ちょっと火に近づけ過ぎたかも……」
 聞こえてきた呟きに、ちらりと。隣に視線を向ければ。
 マシュマロの焼き加減一つで、くるくると表情を変えているイツカの姿が目に留まって。
 やっぱり、今日は……。
「以前イツカが勧めてくれた、麦茶ラテも試してみるか」
 たまには、あえて。
 甘いものと甘いものの組み合わせというのも、良いものだろうと。
「もちろん砂糖も込みで」
 普段よりも少しばかり幼く見える顔で、ニヤリと。古安が笑顔を浮かべれば。
「麦茶ラテも良いね、良いね」
 マシュマロを片手に、イツカの声も弾む。

 あつあつで、蕩けるような甘い香りに満たされて。
 窓の外の夜闇も、一層深くなったなら。
 麦茶ラテの二杯目は、ウッドデッキで……。

「灯りを落すぞ」
 古安の指が、ランタンのスイッチに触れて。その光を落せば。
 一瞬にして訪れる闇は、都会のそれよりも遥かに濃く。深く。
「……大丈夫か?」
 目が慣れないうちは、あまり動かない方が良さそうだと。
 傍らに居る筈のイツカへと声を掛ければ。
「麦茶ラテもあったかいけど……外はやっぱり冷えるね」
 星明りの下。
 微かに浮かび上がるイツカの影が、ふるりと体を震わせるから。
「なら、もう少し寄った方が良いだろうか?」
 何気なく問うた、その言葉に。
 まだ目が慣れ切らない薄暗がりの向こうから、『ふふ』と。
 嬉しさの滲むイツカ声が、耳に届いて。
 互いに少しずつ、体を寄せ合えば。肩が触れ合う……その感覚があたたかい。

「……流れ星見えるかな?」
「これだけ空が奇麗に見えれば、あるいはとは思うが……」
 見上げた視界に、納めきれない程の満天の星空の下。
 星光に輝く青い瞳が探すのは、夜空を駆ける箒星。
「見えたら、何をお願いしようかなぁ」
 本当に見つかるかは、運次第だけれど。
 その姿を探して、願い事を考えて……そんな風に過ごす時間こそ、楽しいものだから。
「古安くんは、何かお願いしたいこと、ある?」
 そう問うた瞬間に。

「……」
「…………あれ?」
 ふいに訪れた奇妙な沈黙に、イツカは思わず小首を傾げる。
「私、変な事きいた?」
「……いや」

 さて、このイツカの問いに、どう答えたものだろう。
 星を見上げて。
 イツカから見えぬよう長い前髪で隠した口元で、古安は思わずクスリと笑う。
 星に託す願い――いつか叶えたい夢。
 それは、もし流れ星を見つけられたとしても。今の古安にとっては、唱える必要のないものだから。
「……願い事は、口に出さないのがお決まりという奴だろう」
 イツカへの返答を、さらりとぼかしつつ。
 まだ答えの出そうにない問いを、古安は己に問う。

「む……そっかぁ」
 そう言って、唇を尖らせるイツカの顔を。
 世界中の誰よりも近くで見つめている今、この瞬間に。
 現在進行形で叶っている願いを、星ではなくキミに告げる日は、いつか来るだろうかと――。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【強運の加護】LV1が発生!
【アイテムポケット】がLV2になった!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2024年02月24日