最終人類史の初詣2024

 攻略旅団の提案により、最終人類史で初詣を行い、その信仰エネルギーを『円卓の間』のエネルギーとする作戦を行います。
 といっても、実際にやる事は、奪還済の日本各地の神社に向かい、初詣に参加するだけです。自然に『信仰』が溜まると思われます。
 奪還したオーストラリアについては、残念ながら『年越しに関係する宗教的習慣が盛んでない』為、信仰を集めるのには不向きですが、今後の事を考えて、ディアボロスの手で初詣の為の神社を建立して、初詣の作法などを教えてあげるのも良いかもしれません。

 オーストラリアは、大晦日は平日扱いで、1月1日は祝日となっていますが、2日からは平日となっているようです。
 なお、今年については、オーストラリア政府とも調整を行い、12月31日~1月3日までを、特別に祝日としています。

新たな年に古都で祈りを(作者 湊ゆうき
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●春日詣
「新年あけましておめでとう! 今年もみんなの活躍期待してるよ」
 2024年を迎えた新宿駅グランドターミナルで、ジュリオ・ヴェント(人間のレジスタンス諜報員・g03277)が集まったディアボロスを笑顔で出迎える。
「新年早々みんなに集まってもらったのは、攻略旅団から提案があってね……みんな、お正月には初詣に行くよね? 去年も一昨年も行った人は多いと思うんだけど」
 そう前置いてから、ジュリオは先月行われた幻想竜域キングアーサー奪還戦で手に入れたクロノ・オブジェクト『円卓』について触れる。
「この円卓は信仰エネルギーを集めて蓄えることができるみたいで……じゃあそのエネルギーを貯めるのに、初詣を利用しようってことになったんだ」
 1月は日本各地の神社仏閣では初詣が行われる時期。
「だからみんなには初詣に行って、信仰の力を集めるお手伝いをしてほしいんだ」
 ディアボロスが率先して真剣に祈る姿勢を見せれば、一般の参詣者もより真剣にお参りすることが予想され、そうすることでさらに信仰エネルギーが集まりやすくなるはずだ。
「オーストラリアではそういった風習はないみたいだけど、実験的にやってみる準備は進めてるみたいだよ」
 そちらに向かうなら、準備から手伝うことも出来るのだとジュリオは説明した。

「オレが案内するのは、奈良県にある『春日大社』だよ」
 奈良公園に程近い場所にある春日大社は、約1300年の歴史を持つ世界遺産でもある。
「鹿さんが自由に歩き回ってる境内には、たくさんの燈籠もあって、すごい広さなんだ」
 広い境内を自然を眺めながら散策したり、本殿以外にも貴重な神社や建物があり、様々な神様が祀られているので、願いに合わせてそちらへ足を運ぶのもいいだろう。
「あとね、可愛い鹿のおみくじもあるんだって」
 木彫りの茶色い鹿や陶器の白い鹿がおみくじをくわえている可愛い鹿みくじは参拝者にも人気。他にも鹿のお守りや絵馬もあるので、好きなものに願いを託すといいだろう。
「新しい年に気持ちを新たにするのにお参りするのは良いと思うし、それで円卓のエネルギーが貯まるならいいことづくめだよね」
 だから今年の初詣を楽しんで来てね、とジュリオは満面の笑みを浮かべて、ディアボロスたちを送り出すのだった。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【傀儡】
1
周囲に、ディアボロスのみが操作できる傀儡の糸を出現させる。この糸を操作する事で「効果LV×1体」の通常の生物の体を操ることが出来る。
【未来予測】
1
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【勝利の凱歌】
1
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【完全視界】
1
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【アイテムポケット】
3
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【コウモリ変身】
1
周囲が、ディアボロスが小型のコウモリに変身できる世界に変わる。変身したコウモリは最高時速「効果LV×50km」で飛行できるが、変身中はパラドクスは使用できない。
【防衛ライン】
1
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。

効果2

【能力値アップ】LV1 / 【命中アップ】LV3 / 【ダメージアップ】LV2 / 【先行率アップ】LV2 / 【ドレイン】LV1 / 【アヴォイド】LV1 / 【ロストエナジー】LV1

●マスターより

湊ゆうき
 あけましておめでとうございます。湊ゆうきです。
 今年もよろしくお願いします。
 春日大社はかなり前に一度行きました。

 このシナリオでは、奈良の春日大社での初詣を扱います。
 信仰の力を高めるために、プレイングに『初詣でお祈りする願い』を、必ず書くようにしてください。
 リプレイでは、初詣を楽しむシーンと、お祈りをするシーンとが描写される予定です。
 しっかりお参りしつつ、おみくじを引いたり、お守りを買ったり、出店で飲食したりなど出来そうなことは自由にしていただいて構いません。
 おみくじの結果をMSにお任せしていただいても構いませんが、ランダムなので悪い結果になることもあります。

 お声がけがあった時のみ、ジュリオがご一緒します。話し相手等必要でしたらどうぞ。
 採用人数に制限はありませんが、三連休の辺りでリプレイのお届けを開始したいな、というスケジュール感です。

 それでは、皆様のご参加をお待ちしております!
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


ジェイ・スオウ
【全歓迎】
身嗜みヨシ
一般の参拝者サン達の見本となるような初詣を、ネ?
礼法技能の腕が鳴るナ☆

鳥居の潜り方、手と口の清め方。
皆が真似できるように美シク☆

結構、二礼二拍手一礼は知ってるケド、
本当に正しく出来てるか不安なヤツが多いヨナ…
ヨシ、そこの人達も子供達も一緒に並んでお参りシヨ?

腰を90度に折る深いお辞儀を2回
胸の高さで両手を合わセテ右手を少し下にズラし2回拍手を打ツ
ズラした手を戻して深いお辞儀を一回シ、姿勢を正してお願事をスル。

『闘技場の勝数アゲテクダサイ!マジで頼ム!あと相棒と同じリーグにシテ!』

大きい神社だと個人的なお願いより国規模の平安とかを祈ったほうが良いんダケド…
マァ、真摯なお願いなら優しいカミサマが多いシ大丈夫ダロ♡

オレは勿論ちゃぁんと(ある意味)世界の為にお願いしたゼ?

ジャァ、皆で鹿さんおみくじ引きにイコウゼ♡
カミサマに聞きたいことを考えながら引くんダゾ?
文字の部分で助言が貰えるヨ。
【勝負事:精進スルコト】
ン〜、正論!!

相棒用に勝守を授与して貰って
燈籠見て、鹿と戯れに行くカ


●新春の春日詣
 奈良公園に程近い自然豊かな土地にある春日大社は約1300年の歴史を持つ世界遺産。全国に3000社ある春日神社の総本社でもあるのだ。
「身嗜みヨシ」
 その由緒ある春日大社に詣でるべく、パラドクストレインで奈良の地にやってきたジェイ・スオウ(お茶友・g10376)は、手鏡で自分の姿を確認しては満足げに頷く。
 常より和装の出で立ちで過ごす彼の着こなしは辺りを歩く参拝者の目を引く。すらりとした体形に、ミステリアスな紫のメイクが整った顔立ちをさらに引きたて美しく見せている。
 その見目麗しさに加え、ジェイはディアボロスの中でも抜きんでた礼法の技能を備えている。一般参拝者たちの見本となるべくやってきたのだ。
 春日大社の玄関口である朱塗りの一之鳥居をくぐる前にまずは深く一礼。鳥居は神社の外と内を分けるものでもあり、この先は神様の領域。お邪魔する前に挨拶をするのは当然だ。
 ここから本殿まで道幅の広い参道が1kmほど続いている。ジェイは少し端に寄って、辺りに植わっている松を眺めながら歩いて行く。
(「参道の真ん中は神様の通り道だからネ」)
 そうして鹿の保護施設である『鹿苑』を通り過ぎ、ニ之鳥居をくぐれば伏せた鹿の像が見守る手水所が見えてくる。
 心身を清めるという意味で手と口を水で清めるのも基本的なマナー。柄杓で水を汲み、片方の手を洗い、今度は逆の手で持ち換え両手を清める。次に柄杓の水を掌に注ぎ、口をすすぐ。最後は柄杓を立てて残った水が柄に流れるようにして洗うのをよどみない美しい動作で行うジェイ。
 良い手本となり、周りにいる子どもたちも同じように真似をしている。
(「うん、イイ感じダナ☆」)
 まずはすぐそばにある祓戸神社にお参りし、その後本殿に向かうのが一般的な参拝の仕方。
 そうして燈籠を眺めながら歩いていけば朱に彩られた御本殿が見えてくる。
「えっと、神社のお参りは……」
「二礼二拍手一礼……だっけ?」
 近くのカップルが少し自信なさげにしているのを見てジェイは動く。
「ヨシ、そこの人達も子供達も一緒に並んでお参りシヨ?」
 カップルや近くにいた子どもたちにも声をかけ、まずはジェイが見本を見せる。
 始めに腰を90度に折る深いお辞儀を2回。顔を上げ、胸の高さで両手を合わせ、右手を少し下にずらしてから2回柏手を打つ。
 さらにずらした手を元に戻して深いお辞儀をもう一回。それから姿勢を正し、願い事をする。
(「闘技場の勝数アゲテクダサイ! マジで頼ム! あと相棒と同じリーグにシテ!」)
 辺りの参拝客が見惚れるほど美しい所作で願うのは、超個人的な願いだったりする。
(「大きい神社だと個人的なお願いより国規模の平安とかを祈ったほうが良いんダケド……マァ、真摯なお願いなら優しいカミサマが多いシ大丈夫ダロ♡」)
「おにいちゃん、何をお願いしたの?」
「オレ? 勿論ちゃぁんと世界の為にお願いしたゼ?」
「すごい、ぼくもそうする!」
 闘技場でディアボロス同士、逆説連鎖戦で研鑽を積むのは、回り回って世界のためになるので何も間違っていないのだ。
「ヨシ、皆上手にできたナ? ジャァ、皆で鹿さんおみくじ引きにイコウゼ♡」
 木彫りの茶色い鹿と陶器の白い鹿を好みで選んで。
「カミサマに聞きたいことを考えながら引くんダゾ?」
 鹿がくわえているおみくじに助言がもらえると説明してジェイも広げてみると。
 勝負事に関しては、精進することとの助言に思わず唸る。
「ン〜、正論!!」
 おみくじの助言を胸に、相棒用にも勝守を授与してもらう。
「サテ、燈籠見て、鹿と戯れに行くカ」
 その後も困っている人がいれば参拝の手本を見せたりしながら、ジェイは春日大社の広い敷地内を散策するのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【傀儡】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!

ファギー・ルヴァン
シルちゃん(g01415)と一緒に。
年賀状で使った水色べースの花と手毬柄の着物を着用

こんなに間近に鹿を見るの…すごく久しぶり。しかもこんなに人を警戒しないなんて…元々人懐こいのかな?それとも人間がごはんをくれるって分かっているからでしょうか…?
ーーあ、コロロが鹿の群れに…!?

まずはお参りから
私の故郷もあるキングアーサーがやっと奪還されたけど、エンディヴァーとの決着がまだだからそれに勝つのと…あと、シルちゃんたちがこれからも頑張れるようになって欲しいのと、あとは……あぁ、お願いしたいことがいっぱい…!

あ、そうだシルちゃん。鹿さんのおみくじやってみる?
ええと、確か…吉以上がでればいい運勢なんだよね。
さてと私の運勢は…どうかな?
おみくじを咥えてた陶器はこのまま持って帰れるんだね…家に帰ったら、棚に並べようかな。

あ、あと、鹿せんべいってあるのかな?実は奈良の鹿を調べているうちに鹿さんにせんべいあげるの、やってみたくて…シルちゃんも、よかったらやってみる?
※おみくじ結果はランダムでOKです


シル・ウィンディア
ファギーさん(g00880)と一緒にお参りです
ファギーさんはファギーおねーちゃんと呼んでいます。

着物は水色の爽やかな色合いの着物を着ていきます。

鹿さんかぁ…。とっても大きな東大寺の大きな鹿さんと違ってかわいいよね。あの時は大変だったなぁ…。
え、あれ?コロロさんっ!?まぎれちゃったら大変だよっ!?まってーーっ!!

お参りは、キングアーサー奪還の感謝と…。
そして、気持ちを新たに、キングアーサーみたいにほかのディヴィジョンも開放することを願うよ。
あとは…。
ファギーおねーちゃんの力になれますようにと、それを願って…。

へー、鹿さんのおみくじなんだね。
せっかくだから引いてみよっか?
可愛い鹿さんはお持ち帰りいいって、とってもお得だねっ♪
せっかくだから、並べて見栄えのいいものを選んじゃおうかなー。

うん、鹿せんべいで鹿さんとコミュニケーションだね。
あのでかい鹿さんとちがって、こっちはかわいいなぁ…。こういう賭けが得ない日々もとっても大切だよね。
また、気合入れていくぞー!

※結果はランダムでお任せします。


●新たな年に願いを込めて
「去年も大きな戦いがたくさんあったけど、無事に新しい年を迎えられて良かったね」
 春日大社にやって来たシル・ウィンディア(虹を翔ける精霊術師・g01415)は、一緒にお参りに訪れたファギー・ルヴァン(明けぬ夜森の魔法つかい・g00880)へと笑顔で語り掛ける。
「ええ、シルちゃん。本当にそうね」
 二人にとって縁の深いキングアーサーが奪還され、晴れ晴れしい気持ちで新年を迎えられるのも事実。
「ファギーおねーちゃんの晴れ着姿、とっても綺麗!」
 水色を基調とした色合いの着物には、華やかな花と手毬が描かれていて、ファギーによく似合っていた。その隣をふよふよと浮かんでいるモーラット・コミュの『コロロ』も水色のマフラーを巻いておしゃれしている。
「そういうシルちゃんもすごく可愛い」
「えへへ、ありがとー」
 髪と瞳と同じ青い服を身に纏うことの多いシルの着物は、今日は爽やかな色合いの水色で。奇しくも同じ色合いの晴れ着姿となった二人は本物の姉妹のように仲良しだ。
 新年に相応しい清らかな着物に身を包んだ二人とコロロは本殿へと向かう参道を歩いて行く。
「ここにもたくさん鹿がいるけど……こんなに間近に鹿を見るの……すごく久しぶり」
 一之鳥居から続く道は自然豊かな景観で、春日大社では神使とされる野生の鹿の姿もあちこちに見られる。
「鹿さんかぁ……とっても大きな東大寺の大きな鹿さんと違ってかわいいよね」
 依頼で赴いた先で出会ったのは、巨大化した鹿。何しろ7mもあるというのだから、さすがに可愛いとは思えなかったシルだった。使い魔使役で指示をしてなんとか移動させたりとあの時は大変だったなぁと今となっては懐かしく思い出す。
 鹿は参拝者たちを恐れる様子もなく、気ままに歩いている。
「しかもこんなに人を警戒しないなんて……元々人懐こいのかな? それとも人間がごはんをくれるって分かっているからでしょうか……?」
 ファギーが首を傾げていると、鹿をよく見ようと前に出たコロロが鹿たちの注目を浴びる。
 不思議なふわふわとした生物に興味を持ったのか、鹿たちが一斉にコロロへと向かってきて――。
「あ、コロロが鹿の群れに……!?」
「え、あれ? コロロさんっ!?」
 ちょうど鹿に囲まれたのか、その姿が見えなくなって。
「まぎれちゃったら大変だよっ!? まってーーっ!!」
 そのまま鹿の群れに消えてしまいそうなコロロを慌てて二人で救出する。
「鹿たちも悪気はないんでしょうけど……」
 助け出したコロロをしっかり胸に抱くと、ファギーは安堵の息を吐く。
「コロロさんにとっては東大寺レベルじゃない鹿でも大きく感じるだろうしね」
 よしよしと撫でて慰めつつ、気を取り直してお参りに向かう。
 長い参道を歩いていき、ニ之鳥居をくぐり、手水所で手と口を清めればいよいよ本殿でお参り。
 朱塗りの立派な建物は荘厳な雰囲気に満ちている。今回は真剣に祈ることで、クロノ・オブジェクト『円卓』に信仰エネルギーを蓄えることが出来るというので、よりお祈りに力が入る。
 二礼二拍手一礼の作法にのっとり、二人はそれぞれ真剣にお参りする。
(「私の故郷もあるキングアーサーがやっと奪還されたけど、エンディヴァーとの決着がまだだから、それに勝つのと……」)
 ファギーは出身であるキングアーサー奪還の感謝と、宿敵である紫怨竜との決着を強く願う。
(「あと、シルちゃんたちがこれからも頑張れるようになって欲しいのと、あとは……あぁ、お願いしたいことがいっぱい……!」)
 災禍によって全てを失ってから心も交流も閉ざしていたファギーだが、今はこうして仲良くしている仲間もたくさんいて。自分のことだけじゃなくて大切な人たちのことも願いたいと思うとどうしてもたくさんになってしまう。
 けれどその真剣な思いは、他の参拝者の目にも尊く映ったことだろう。
 ファギーの隣で、シルも手を合わせお祈りする。
(「キングアーサーは一番たくさん依頼に向かった場所……無事に奪還出来て本当に良かったから、その感謝と……」)
 それから、また気持ちを新たにしてキングアーサーと同じように他のディヴィジョンも近いうちに解放できるようにと願う。
(「それから、あとは……ファギーおねーちゃんの力になれますように」)
 まだ宿敵との決着を果たしていないことも、それ以外のことも。シルが力になれるようにと強く願うのだった。
「ついたくさんお願いしてしまいました」
「わたしもー」
 ふふふ、と笑い合い、二人はお参りを済ませ、さっぱりとした気持ちで本殿を後にする。
「あ、そうだシルちゃん。鹿さんのおみくじやってみる?」
 おみくじやお守り、御朱印を扱う授与所の前を通りかかったファギーは、そう言ってシルに微笑みかける。
「へー、鹿さんのおみくじなんだね」
 木彫りの茶色い鹿と陶器の白い鹿がおみくじをくわえている可愛い鹿みくじは参拝者にも人気で、多くの人が売り場に集まっていた。
「うん、せっかくだから引いてみよっか」
「おみくじを咥えてた陶器はこのまま持って帰れるんだね」
「可愛い鹿さんはお持ち帰りしてもいいって、とってもお得だねっ♪」
「お土産にもなるね。……家に帰ったら、棚に並べようかな」
「せっかくだから、並べて見栄えのいいものを選んじゃおうかなー」
 二人は楽しそうに会話すると自分のお気に入りの鹿をひとつ選んで。
「ええと、確か……吉以上がでればいい運勢なんだよね。さてと私の運勢は……どうかな?」
 わくわくとファギーが鹿がくわえているおみくじを開くと――。
「わ、吉だって! これは良い運勢だよね」
「わあ、すごいねファギーおねーちゃん!」
「えっと……願い事は信じて過ごせば必ず叶うって」
 先程願ったことも、実現させるのだと信じていればきっと叶うと背中を押してもらえたような気がする。
「じゃあ、次はわたしが見てみるね」
 今度はシルが結果を確かめてみる。
「あ、わたしも吉だ! わたしの願い事は想っていることを素直に言えば叶うって。でも、全体のアドバイスとしては、自分の力を過信しすぎると失敗するって書いてあるから、ファギーおねーちゃんの吉の方がより良さそうだね」
「吉にも種類があるんだね」
「うん、でも二人とも願いは叶いそうだし……ここで願ったこと、今年ばっちり叶えちゃおうね!」
 シルの明るい笑顔にファギーも嬉しくなってうきうきと歩き出す。
「あ、あと、鹿せんべいってあるのかな?」
 お参りも済ませ、ファギーは思い出したように辺りを見回した。
「鹿せんべい、さっき参道でも売ってるの見たよ」
「実は奈良の鹿を調べているうちに鹿さんにせんべいあげるの、やってみたくて……シルちゃんも、よかったらやってみる?」
「うん、鹿せんべいで鹿さんとコミュニケーションだね」
 一緒にやろうとシルが微笑み、二人は近くの売店で鹿せんべいを購入する。
 鹿せんべいを持っていれば、鹿たちが我先にと近寄ってきて。今度はコロロよりもせんべいに興味津々の鹿に二人は囲まれる。
「はい、順番にね」
 小さく割った鹿せんべいを手際よくあげていくシル。
「シルちゃん上手ね」
「前にも仲間と一緒に巨大な鹿さん相手に巨大な鹿せんべい作ったりしたしね。あのでかい鹿さんとちがって、こっちはかわいいなぁ……」
 やっぱり鹿はこれぐらいの大きさが可愛いと思うシルだった。
「コロロもあげてみる?」
 先程囲まれたけれど、ファギーがあげている様子を見て、コロロが小さな手に鹿せんべいを持てば、鹿がぱくりとせんべいを食べる。
「上手に出来たね」
 ぱああっと顔を輝かせたコロロに思わずファギーも嬉しくなって。
 ぐいぐいと積極的に来る鹿たちにせんべいをあげるのは楽しいひとときだった。
「こういうかけがえない日々もとっても大切だよね。また、気合入れていくぞー!」
「今年も頑張っていきましょうね、シルちゃん」
 幸先のいい一年の幕開けになるのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
【勝利の凱歌】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!

ミレイユ・ファトクーリナ
地大・龍輝(g05599)と参加
【心情】
信仰エネルギーね
中々に愉快じゃない
それがディアボロスの勝利につながるというのなら、手伝わせてもらうわ

【行動】
社へ向かう前に周辺の散策ということだし、散歩も悪くないわね
故郷に比べれば大したことはないけれど、それでも冷えはするわね
もう少し着込んでくるべきだったかしら
「(甘酒をもらって)へえ、こういう飲み物もあるのね。面白いわ」
酒とは名乗っているけれど、米を原料にした飲料なのね

本殿に向かったら、改めて自分がかつての力を超える力を手にするべく研鑽することを誓う
奪われたものを取り戻して満足なんてできないわ
過去のわたしを超えるものがいるなら、それは明日のわたしでなくてはいけないの
これなら、神様も聞いてくれるかしら?

「(お守りを受け取って)女性への贈り物としてはいささか、と思うけれど受け取っておくわ」
悩む龍輝の姿も愉快だったしね、猫が足踏みをしている位には
※極めて分かりづらいですが喜んでいる

【おみくじ】
おみくじはランダムでお願いします
龍輝と勝負よ


地大・龍輝
ミレイユ・ファトクーリナ(g10854)と参加
【心情】
事情は理解した
元より、こうした年初めの神事であれば、断る理由もない

【行動】
せっかくの春日大社に来たんだ
祈願に向かう前には出見世などで買い物もしながら周辺の散策をしておこう
「甘酒だ、飲むと温まるぞ」
ミレイユは本来俺より年上とのことだが、さすがにアルコール入のものを渡すのはな
いや、俺自身は随分とその辺ゆるく考えていたが、どうも当世の人間はその辺うるさい

お守りを買って、ミレイユに贈る
俺は無骨者だし、ミレイユが喜ぶようなものを見繕えるかは分からんが
それゆえにかなり悩むことにはなるだろう

お祈りで願うことは、この戦いを無事に進め、皆が健やかに過ごせること
「今年こそ全てを取り戻す」とまでは言えないが
それでも、《七曜の戦》を経て、俺は自分自身の記憶を取り戻すことができた
次はこの国の未来を取り戻すために戦うまでだ

【おみくじ】
おみくじは勝負するようなものではあるまいが、縁起物だ
悪くはあるまい
おみくじの結果は神様におまかせします


●新たな年の運試し
 幻想竜域キングアーサー奪還戦の勝利は記憶に新しいところだが、その際に手に入れたクロノ・オブジェクトの『円卓』は信仰エネルギーを集めることができるという。
 新たな年を迎えるにあたり、日本では初詣を行うのが一般的。そして円卓のエネルギーを蓄えるために、初詣を利用して効率的に集められそうなことがわかったのだ。
「事情は理解した。元より、こうした年初めの神事であれば、断る理由もない」
 時先案内人からの説明を聞き、地大・龍輝(名前のない戦士・g05599)は大きく頷く。
「信仰エネルギーね。中々に愉快じゃない」
 同じくその説明に納得したミレイユ・ファトクーリナ(氷の国の吸血姫・g10854)も初詣に出向くことに賛同して。
「それがディアボロスの勝利につながるというのなら、手伝わせてもらうわ」
 吸血ロマノフ王朝出身のミレイユにとっては、初詣は馴染みのあるものではなかったけれど、信仰の力を集めるのに大事なのだと理解し、自分が出来ることならと頷くのだった。
 そうしてやって来たのは、奈良県にある春日大社。
「あら、結構な人が初詣に向かっているのね」
 玄関口である一之鳥居をくぐりぬけ、参道を歩くミレイユは多くの人がお参りに向かっていることに気づく。
「年の初めはこうしてお参りに行く人が多いものだ。日本では昔からそうだな」
 戦いの中、失った記憶を取り戻した龍輝には新年のこういった風景は見慣れたものなのだろう。参道に並ぶ出店を指差してはミレイユに説明する。
「正月や夏祭りなどにはこうして露店が出る。せっかく春日大社に来たんだ。買い物もしながら周辺の散策をするのもいいだろう」
「そうね、社へ向かう前に散歩するのも悪くないわね」
 そう言ってミレイユは自然豊かな参道と出店などを眺めながら龍輝と一緒に歩いて行く。
 ただ、1月の外気はやはり少々冷え込む。
「故郷に比べれば大したことはないけれど、それでも冷えはするわね」
 油断したつもりはないが、もう少し着込んでくるべきだったかとミレイユが思っていると、龍輝が待ってろと言い置いては出店のひとつに向かう。
 ほどなくして戻ってきた龍輝が差し出してくれたのは、紙コップに入った湯気の立つ白い液体。
「甘酒だ、飲むと温まるぞ」
 ミレイユが受け取ると、ふわりと甘い香りがした。ゆっくりと口をつければ、優しい甘さが広がり、身体の芯からぽかぽかと温まるようだった。
「へえ、こういう飲み物もあるのね。面白いわ」
「甘酒と言うが、米麹や酒粕を原料としていてアルコールはないのが一般的だ」
「なるほど、酒とは名乗っているけれど、米を原料にした飲料なのね」
 そう言って甘酒を飲むミレイユは見た目は十歳ほどの美しい少女。けれど本来は龍輝より年上らしいとのこと。だが、それでもさすがにアルコール入りのものを渡すのはためらわれたのだ。
 出店と参拝客と、そして鹿で賑わう参道を抜け、いよいよ本殿へとやってきた二人は、今回の大きな目的である祈りを捧げるため、神社の参拝の基本である二礼二拍手一礼でお参りする。
「お参りにもそれぞれルールがあるのね」
 辺りで参拝する人たちの動きと、そして龍輝からの説明を受け、ミレイユも基本にのっとった作法でお参りする。
「ああ、あとはそれぞれ願いを心の中に思い浮かべて祈るんだ」
 そう言って龍輝は手を合わせて目を閉じる。願うのは、この戦いを無事に進め、皆が健やかに過ごせること。
(「『今年こそ全てを取り戻す』とまでは言えないが……それでも、《七曜の戦》を経て、俺は自分自身の記憶を取り戻すことができた」)
 それは自分の名前と手にしていた神剣しか手掛かりがなかった龍輝にとっては、大きな出来事だった。記憶を取り戻した龍輝は、自身の子孫を救うべく剣を振るい、新宿でみなしごたちの面倒を見る日常を送るようになった。
(「次はこの国の未来を取り戻すために戦うまでだ」)
 そう強い決意で誓えば、自然と力が湧いてくるようだった。
 龍輝が真剣に祈る姿を見て、ミレイユも同じように手を合わせ目を閉じる。
 クロノヴェーダに敗れたミレイユは、本来の姿を失ってしまった。だからこそ、改めて自分がかつての力を超える力を手にするべく、日々研鑽することを誓うのだった。
(「奪われたものを取り戻して満足なんてできないわ」)
 強いものが生き残るのは当然と考えるミレイユだが、その強さはそこに到達したからといって永遠に保たれるものではないとわかっている。
(「過去のわたしを超えるものがいるなら、それは明日のわたしでなくてはいけないの」)
 その向上心こそがミレイユの強さの秘訣でもあるのだろう。
 これなら、神様も聞いてくれるかしら? と思いながらミレイユはクールな微笑みを浮かべるのだった。
「お祈りは済んだか?」
「ええ、これだけたくさんの人の願い、神様は聞いてくれるのかしらね?」
 龍輝の言葉にちょっと皮肉に微笑みつつも、ミレイユはお参りを済ませた人々がまた別の場所に集まっているのに気づく。
「あそこには何があるの?」
「おみくじやお守り、御朱印を扱う授与所だな」
 見てみるのが早いと龍輝がミレイユを連れて向かえば、様々な縁起の品が置かれている。
「ふうん、なるほど……」
 見れば春日大社においては神の使いとされる鹿をモチーフにしたおみくじやお守り、絵馬などを参拝客はこぞって買っていくようだ。
 ふと、隣の龍輝を見れば、何やら真剣な表情でお守りを選んでいる。しばらく悩んでいた龍輝だが、ようやく決めたようで、それを購入すればミレイユへと手渡して。
「お守りだ。きっとご利益があるだろう」
「あら、わたしに?」
 手渡されたお守りは、何事にも打ち勝つための勝守。
「女性への贈り物としてはいささか、と思うけれど……受け取っておくわ」
 ミレイユが喜びそうなものは何かと考え、可愛い白い鹿が描かれたお守りも考えたが、ミレイユに似合うのはこちらな気がして龍輝は勝守を選んだのだった。
「悩む龍輝の姿も愉快だったしね、猫が足踏みをしている位には」
 皮肉めいた比喩を織り交ぜながらも、ミレイユは何度もお守りを眺めているので、傍から見ればわかりにくいが、喜んでいるようだ。
「ねえ、あれは?」
「ああ、おみくじだな」
「ふうん、いい結果も悪い結果もあるのね。なら勝負しましょ」
「……おみくじは勝負するようなものではあるまいが、縁起物だ。引いてみるか」
 そうして二人は鹿がおみくじをくわえている鹿みくじを引くことにして、それぞれが気に入ったものを選んで購入する。
「さあ、龍輝勝負よ」
 そう言って先にミレイユが鹿がくわえているおみじくを開く。
「あら、中吉……願い事は、苦労するが叶う。全体の助言としては、『長く続けてきたことがついに実を結ぶ。諦めない気持ちを大切に』ですって。なかなか良いんじゃないかしら?」
「ああ、良さそうだな。さて、俺は……」
 開いたおみくじに示されていたのは半吉の文字。
「半吉……? 中吉とどっちがいいの?」
 ミレイユが首を傾げている間に、龍輝は書いてあることを読み上げる。
「助言は、『注意力が散漫になりやすい。落ち着いて対処することで揉め事を回避できる』か……願い事は、『急ぐべし。時間がかかると叶わない』だそうだ」
「あら、ということは勝負はわたしの勝ちかしら?」
 書いてある内容としては、ミレイユの方が良さそうだ。
「いや、だから勝負をするようなものではないのだがな……。早速勝守のご利益か? だが、こうして気をつけるべきことを知らせてくれれば、慢心せずに済むだろう」
 どう受け止めるかは本人次第。未来を決めるのは自分自身の心がけと行動次第なのだから。
「答え合わせはまた来年、ね……」
 この一年がどうなるのか、そんな期待を込めて、ミレイユはそう囁くのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【コウモリ変身】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!

水蓮寺・颯
實生さん(g00995)と


ここにも鹿が…随分人に慣れてるんですね
じゃあ境内に入っ…なんだろう、あれ
わ、實生さん實生さん、見てくださいこれ!鹿せんべいの自動販売機ですって!
……
自販機を眺めて立ち止まり
あの、いっこだけ買ってみたい、です

買えました!はいこれ、實生さんの分…
え、わひぁ!?
ぞろぞろと背丈より大きな鹿に囲まれ大慌て
み、實生さっ、たす、たすけ
どうにか撒き餌をして抜け出し、がっしり袖を掴んで
實生さん!何笑ってるの!
っあ、ありがとうございま…ひぇ!?も、もう無いからね!?

ひ、ひどい目に合った…なんで實生さん余裕なの?
ヨレヨレの自分と違って涼しげな彼に膨れっ面
それも釣り灯籠の回廊を抜け、本殿に辿り着く頃にはすっかり笑顔に戻って

わぁ…綺麗ですね
實生さん、参拝の仕方はご存知ですか?
はいっ、任せてください!

二礼二拍手、目を閉じて
これ以上民が理不尽に晒されぬようお守りください
それと
隣に立つ人に胸を張れる自分であれますように
とも、少しだけ、内緒で
一礼

アドリブ歓迎
※少しだけ甘えられるようになりました


一角・實生
水蓮寺さん(g08972)と

荘厳な空気と建造物を眺めていたところに水蓮寺さんの声
うん、随分と人懐こい鹿だな
鹿の方から近づいてくる
……なるほど。あのせんべいを欲しがっているのか

そうだね、ここにいる鹿たちも食べたいようだし
なかなか出来ない経験だからあげてみよう

ありが――
一斉に水蓮寺さんを取り囲み集る鹿の群れに思わず笑う
せんべいより水蓮寺さんが餌みたくなってる
俺にも餌をねだってくる鹿には彼女を指差して悪ふざけ
あの子の方がおいしいせんべいを持っているみたいだよ

袖を掴まれたら鹿と水蓮寺さんの間に翼で壁を作って救出しよう
隙間に顔を突っ込まれたら俺の持ってる鹿せんべいを食べさせお帰り頂くよ
はは、ごめん
うーん……身長差ということで

参拝の作法は昨年やったもののうろ覚えな部分もある
水蓮寺さん、教えて貰ってもいいかい
彼女に倣って二礼二拍手、一礼

神様。例え立ち止まることがあったとしても、前に向かって進めるよう見守っていて欲しい
俺の生き方としても――彼女のことも
真剣に祈る横顔につい目が行ってしまいながら、願うよ


●新春の誓い
「あけましておめでとうございます、實生さん。今年もよろしくお願いしますね」
 氷の城で過ごしたクリスマスから一週間もすれば、あっという間に年が明けて。新たな年を迎えるにあたり、水蓮寺・颯(灼がて白く・g08972)は、一緒に初詣にやってきた一角・實生(深い潭・g00995)へと丁寧に挨拶を述べる。
「明けましておめでとう。こちらこそ、今年もどうぞよろしく」
 二人がやってきたのは、奈良県にある春日大社。1300年の歴史を持つ世界遺産には、たくさんの人が参拝に訪れている。
「自然豊かな場所ですね」
 玄関口である一之鳥居から歩き始めれば、立派な松の木が並ぶ参道には、出店や鹿の姿もあり、賑やかだ。
 1kmほどある参道を歩けば、ようやく本殿を始めとする神社の数々が見えてくる。
 辺りに漂う荘厳な空気を感じ、興味深く建造物群を眺めていた實生の耳に、少し弾んだ颯の声が聞こえてくる。
「實生さん、見てください。ここにも鹿が……随分人に慣れてるんですね」
 先程参道でもちらほら姿を見せていた鹿たち。本殿の近くでも当然のように歩いており、人を見ても恐れるどころか、むしろ近づいてくるぐらいだ。
「うん、随分と人懐こい鹿だな」
「鹿に見守られてのお参りはここならではですね。じゃあ、そろそろ境内に入っ……なんだろう、あれ」
 お参りに向かおうとした颯の目に、見慣れないものが映る。
 それは自動販売機だった。それ自体はもちろん目にしたことはあるが、その自販機では、飲み物以外のものも売っているのだ。
「わ、實生さん實生さん、見てくださいこれ! 鹿せんべいの自動販売機ですって!」
 箱詰めされた鹿せんべいを24時間買うことができ、売り上げは鹿の愛護活動に役立つそうだ。他にもお土産として勾玉型のストラップに、小鹿を模した革のチャームも売っている。
 この辺りに鹿が多くいるのは、この自動販売機のせいかもしれない。
「……なるほど。あのせんべいを欲しがっているのか」
「あの、いっこだけ買ってみたい、です」
 本来の目的はお参りではあるとわかっているけれど、自販機を眺めていた颯は、實生を見上げて少し遠慮がちにそう告げる。
 新しい年を迎えても颯の旺盛な好奇心は健在。そのチャレンジ精神に年始早々感心させられつつ、實生は頷く。
「そうだね、ここにいる鹿たちも食べたいようだし……なかなか出来ない経験だからあげてみよう」
 その言葉にぱっと顔を輝かせた颯は、早速自販機で鹿せんべいを購入。
「買えました! はいこれ、實生さんの分……」
「ありが――」
 颯が箱から鹿せんべいを取り出した瞬間、待ってましたとばかりに鹿たちがわらわらと小柄な颯を取り囲むように集結。
「え、わひぁ!?」
 なんとか實生の分は渡すことが出来たが、鹿たちは颯の鹿せんべいをロックオン。渡さないなら、奪いかねない迫力で迫ってくる。
「……せんべいより水蓮寺さんが餌みたくなってる」
 鹿たちの素早い動きと抜群のコンビネーションに思わず笑ってしまう實生だった。
 もちろん、鹿せんべいを持つ實生にも他の鹿たちがおねだりをするのだが、ちょっとしたいたずら心から、實生はその鹿たち相手に颯を指差し言い聞かせる。
「あの子の方がおいしいせんべいを持っているみたいだよ」
 ここは最終人類史。【動物の友】の効果もあって、鹿たちは納得したようにどんどん颯の方へと集まっていく。
「え、なんか鹿が増えて……」
 自分の背丈より高い鹿たちに囲まれ、大慌ての颯だが、鹿せんべいがその手にある限り、鹿たちが退く気配はない。
 ならばとせんべいを小さくして辺りに撒くと、鹿たちはようやくそちらへと向かったので、その隙に颯は鹿の壁から抜け出し、やっと見つけた實生の袖をがしっと掴む。
「み、實生さっ、たす、たすけ……」
「水蓮寺さん、鹿に大人気だったね」
 こらえきれない様子で實生が笑っているのを見て、よれよれになった颯の表情がころりと変わる。
「實生さん! 何笑ってるの!」
「はは、ごめん」
 そんな風に一瞬で表情を変える颯にまた和みながらも、新たな鹿せんべいを求める鹿たちが二人に集まって来たならば、實生は天使の翼で鹿と颯の間に壁を作る。
「っあ、ありがとうございま……ひぇ!? も、もう無いからね!?」
 それでも僅かな隙間に顔をつっこんでくる鹿には、實生の持つ鹿せんべいを分けて与えて。颯が持っていないと手をパーにすれば、賢い鹿たちは理解し、徐々に二人から離れていく。
「ひ、ひどい目に合った……なんで實生さん余裕なの?」
 ようやく人心地着いた颯は、隣に立つ涼し気な實生にちょっと不満顔。
「うーん……身長差ということで」
 それはどうしようもないことだけれど、なんだかちょっとずるい気がして頬を膨らませるのだった。
「じゃあ、お参りに行こうか」
 手水所で手と口を清め、本殿へとやってきて、特別参拝も出来るさらに奥へと向かえば、朱塗りの建物の回廊には無数の釣燈籠が並んでいる。
「わぁ……綺麗ですね」
 このたくさんの燈籠に火が灯される万燈籠という祭礼は年に二回。その際は、幽玄の世界に誘われることだろう。
 すっかり笑顔が戻ってきた颯は、本殿でお参りする前に實生に訊ねる。
「實生さん、参拝の仕方はご存知ですか?」
 新宿島にやってきてから、實生も何度か初詣やお参りには訪れたことがあるけれど、それでもきちんとできるかというとうろ覚えな部分もあって。
「水蓮寺さん、教えて貰ってもいいかい」
「はいっ、任せてください!」
 元気よく頷いた颯は、二礼二拍手一礼の手順を説明した後、見本として自ら先にやってみることにして。
 小さな身体ではあるが、ぴんと背筋を伸ばしてから綺麗なお辞儀を二回。胸の前で両手を合わせ、柏手を二回。そして目を閉じて祈る。
(「これ以上民が理不尽に晒されぬようお守りください」)
 かつての颯は搾取されるだけの集落の心の支えとして生きてきた。あの日、全ては燃え尽きてしまったけれど、それでも今ようやく前に進めるようになって。
 それでも一番に願うのは、自分ではなく他者の安寧。誰かのために生きる。それが颯の天命だと思っていた。けれど、今は。ほんの少し変わって来たのだと少しの自覚もある。
(「それと……」)
 真剣に祈る颯の隣で、實生も彼女に倣い、二礼二拍手。
 父親の血だろうか。こうした日本のしきたりには自然と背筋が伸びる思いがする。
(「神様。例え立ち止まることがあったとしても、前に向かって進めるよう見守っていて欲しい」)
 故郷を奪還し、失っていた記憶は徐々に取り戻しつつある。けれどまだ戦いは続いていく。きっとこの先も簡単ではないだろう。全てが上手くいくことばかりではないとわかっているから、そう實生は願うのだ。
(「俺の生き方としても――彼女のことも」)
 隣で真剣に祈る颯に思わず目が行く。いつも一生懸命な彼女の願いも叶うといいなと思いながら。
 そうして最後に二人そろって深々と一礼する。
「たくさんの祈りで、集めたエネルギーが人々にとって良いものになるといいですね」
「そうだね。祈る気持ちそのものが力になる気がするよ」
 クロノ・オブジェクト『円卓』の信仰エネルギーを集めることも目的ではあるけれど、新年にこうして祈りや誓いを捧げるのは、きっと自分自身の気持ちを整理し、未来へと向かう力になることだろう。
「そうですね、きっと……」
 颯が願ったもう一つのこと。それは――。
 隣に立つ人に胸を張れる自分であれますように。
 これは實生には内緒だけれど、それは自分への誓いでもある。
 燃え滓になった過去を越えて、今はたくさんの愛すべき仲間たちと過ごす日々。今の自分に誇りをもって生きていきたいと思うから。
「あっちにおみくじやお守りもあるみたいだよ。見ていくかい?」
「はい、見に行きましょう!」
 お参りを済ませ、新たな気持ちを胸に抱いては、二人並んで歩き出すのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【防衛ライン】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【先行率アップ】がLV2になった!

捌碁・秋果
【○八】
四人で参加!

春日大社、聞いた通りに鹿がいるね
…鹿、神様の乗り物なんだって
有難いらしいし、鹿せんべいをあげたらご利益あるかな?
ちょっと買ってあげてみよっか
よーしよしよし。いいかい、我々からおせんべを貰ったことを神様によく伝えておくんですよ?

鹿と触れあったらお参り
ちゃんとお賽銭用の小銭も準備してきたよ
新円も便利だけど、やっぱりお賽銭箱に投げ入れた方が効き目ありそうだからね
二礼二拍手一礼…で合ってるはず
私のお願いは『フランスの奪還』
大好きな画家、好きな画家の絵が多く収蔵された美術館
私の憧れを今年こそ取り返す…!

参拝を済ませたら売店へ
ジュリオ君の言ってた鹿みくじ、気になってたんだ
ね、皆でやってみない?
お願い事が叶うか占ってみようよ!
…どの鹿みくじにしようかな。手作りだから少しずつ顔が違う。どの子も可愛いけど…私はこのキリッとした顔の鹿に決めた!
さあ結果はどうかな…!?
(おみくじの結果はMSさんにお任せ!)

ああ、お茶屋さんあったねえ!
行こう行こう!
メニューにお粥あったよね、あれ食べたいなあ


シエルシーシャ・クリスタ
【〇八】の皆と。

わー……鹿。いるって聞いてたけど本当に多いね。
狩られることが無いせいかな、凄くぐいぐいくる……
わ。違うよ、それは妖精さんの石焼き芋。君たちの鹿せんべいじゃ、あ、わ、ちょっ……
ふう、お芋ごと空に逃げて貰ったけど、甘い匂いは危険だね。まだついてきてる……

さ、気を取り直して初詣。
……お芋持ってる妖精さんには境内の外で鹿と一緒に待機しててもらおう。
作法とかは秋果の見様見真似。
お願い事は……基本に忠実に行こうかな。
『今年も一年、みんな元気に過ごせますように』。

参拝の後は売店でおみくじを見よう。
みんな鹿みくじをするんだよね。私もやってみよう。
えーと、この子かな。何となく図太そう。
……ん、んん?
ちょっと妖精さん、結果が全部妖精さん関係とか悪戯がバレバレだよ。
ここですり変えるのは禁止。ほら、本当のおみくじ出して?
(おみくじの結果はMSさんにお任せ!)

ね、来る途中、和風のお店あったでしょ?
荷茶屋?だっけ。最初読めなかった。
帰り、寄って行かない?ぜんざいとか、七草粥とか、おいしそうだったし。


パルサティラ・ブルガリス
【○八】の皆様と
(表情は全く動かないですが感情は豊かなタイプです)

かの有名な春日大社にやってまいりました。
…あ、鹿がいますね。こっちも有名ですよね。お辞儀をしておきましょう。へぇ、神様の遣い…なら鹿せんべいをあげて…あ、袖はせんべいでは、あ、スカートもせんべいでは…あ〜…。(無表情で鹿にタカられるメイドの図)

新年早々エラい目に遭いました…まあ神様の遣いに群がられたと考えればいいことなのかもしれません。
ともあれお参りです。ルール通りに…お賽銭は確か5円玉がいいんですよね?
神様には『無事の世界の奪還』をお願い…いや、誓いをして見守ってもらいましょう。

参拝を済ませたらあと売店へやってきました。
…鹿みくじ。こんなのもあるんですねぇ。
では、今年の運勢を占ってみましょう。私はさっき袖を齧ってくれたコに似てるこれにします。
(おみくじの結果はMSさんにお任せ!)

和風のお店…いいですね、寄っていきましょう。普段は紅茶ですが、抹茶も飲んでみたかったんですよね。本格的なものは初めてですので楽しみです。


千結・つくし
【○八】
皆と初詣でございますよ!!

鹿だー!初めて見たでございますけれど、近くで見るとなかなか迫力がございますね!!
えっ、鹿せんべい?そういうのもあるんでございますか!?
僕はちょっと怖いので餌は買わずに、皆様のフォローに回るでございますね……?
ハンカチなども必要でございましょうか、涎とか。

次は本題の初詣でございますね。
こういう時のお願いってなにがいいのでございましょうか。
『戦の中でも皆息災で来年を迎えられますように』でございましょうか。
それと昨年の一年分のお礼も述べておきましょう、心の中で。
……日本式の参拝の方法ってよく分からないので、皆様のやり方に合わせるでございます。

参拝を済ませたら、売店へ。
皆で引く鹿みくじは……、怖くない子……!僕は険のない顔のこの子にするでございますよ……!!
(おみくじの結果はMSさんにお任せ!)

お茶屋さん!いいでございますね!!
お粥……?お団子ではなく……?
ほへー、そうなんでございますね。それはまた頂くのが楽しみでございます!


●仲間と詣でる春日の社
 新しい年を迎え、最終人類史では奪還した地域で、この一年の厄払いや無病息災などを願うため、神社や寺に参詣する人々が多い。
 特に今年は、クロノ・オブジェクト『円卓』に信仰エネルギーを蓄えるため、ディアボロスたちに初詣を呼びかけ、日本のみならずオーストラリアの各所も賑わっている。
「あけましておめでとう。みんなで初詣に来れて良かったよ」
 旅団の仲間四人で初詣に訪れた捌碁・秋果(見果てぬ秋・g06403)は、新しい年をこうして迎えることが出来て嬉しく思う。新宿島で目覚めたかつての時は、過去を失ったことにより虚無状態だったが、今は絵画や美術などの好きなことをきっかけに、素敵な仲間達にも恵まれ、前向きに生きているのだ。
「かの有名な春日大社にやってまいりましたね」
 自分たち以外にもたくさんの参拝者が訪れている様子に、パルサティラ・ブルガリス(感情豊か系無表情メイド・g08376)が感慨深そうに呟く。刻逆の折に、サイボーグのディアボロスとして覚醒したパルサティラの表情が変化することはないが、その声音からは、由緒ある世界遺産の神社でのお参りを楽しみにしていることがわかる。
 まずは玄関口である一之鳥居をくぐり、広い参道を歩いていれば、出店と共に見えるのは、野生の鹿たち。
「鹿だー!」
 参道を堂々と歩いている鹿を見つけるなり、千結・つくし(員数外・g00339)は元気な声を上げ、ピンクの髪を揺らしながら鹿へと近づく。
「初めて見たでございますけれど、近くで見るとなかなか迫力がございますね!!」
 参拝客に怯えることもなく、悠々と歩いている鹿は近づいてももちろん逃げることもなく、つくしは遠慮なくその姿を間近で眺めてはそんな感想を漏らすのだった。
「わー……鹿。いるって聞いてたけど本当に多いね」
 妖精達と一緒に出店を覗いていたシエルシーシャ・クリスタ(水妖の巫・g01847)も、鹿たちの数に目を丸くして。
「うんうん、聞いた通りに鹿がいるね」
「こっちも有名ですよね」
 秋果とパルサティラもそう言って頷き合う。
「鹿、神様の乗り物なんだって」
 これほどまでに奈良の鹿が人を警戒しないのは、世界一大切にされている鹿だから、と秋果は語る。
「へぇ、神様の遣いですか……」
 奈良時代に神様が白鹿に乗ってやってきたことから、春日神鹿は神様のお供であり、神の使いとして大切に扱われるようになったのだ。
「うん、有難いらしいし、鹿せんべいをあげたらご利益あるかな?」
「そうですね。鹿せんべいをあげてみるのもいいかもしれません」
 早速参道で売られている鹿せんべいを購入すれば、たくさんの鹿が集まってきて。
「えっ、鹿せんべい? そういうのもあるんでございますか!?」
 集まってきた鹿を見てつくしは驚いた顔をする。鹿せんべいが欲しくて集まってくる鹿はちょっと怖い気がして、つくしは鹿せんべいを買わず、買った皆をフォローする側に回る。
「よーしよしよし」
 集まってきた鹿たちへと秋果は手際よく鹿せんべいをあげていく。
「神の遣いですからね、お辞儀をしておきましょう」
 そう言ってパルサティラが頭を下げれば、鹿も同じようにぺこりと頭を下げて。
「わ、礼儀正しい鹿ですね」
 それは鹿せんべいをねだっているだけかもしれないが、全国的にも珍しいお辞儀する鹿の姿だった。
「いいかい、我々からおせんべを貰ったことを神様によく伝えておくんですよ?」
 秋果がそう言い聞かせている隣で、シエルシーシャもまた鹿たちに迫られていた。
「狩られることが無いせいかな、凄くぐいぐいくる……」
 けれど鹿たちの狙いはシエルシーシャが持った別の食べ物。
「わ。違うよ、それは妖精さんの石焼き芋。君たちの鹿せんべいじゃ、あ、わ、ちょっ……」
 先程出店で買った焼き芋が美味しそうに見えたのか、鹿たちはそれを持つシエルシーシャの手に近づいてくる。
 鹿から守るべく妖精たちは焼き芋を空へと避難させ、何とか奪われずには済むのだった。
「甘い匂いは危険だね。まだついてきてる……」
 手には焼き芋はなくなったものの、いい匂いを頼りについてくる鹿たちを眺めながら、ふうと息を吐き出すのだった。
「食欲旺盛な鹿のようですね……」
 シエルシーシャの危機一髪の様子を眺めていたパルサティラだが、鹿たちはじらされたと思ったのか、パルサティラのメイド服の袖の辺りをつついてくる。
「……あ、袖はせんべいでは……あ、スカートもせんべいでは……あ〜……」
 表情は一切変わらないが、そこには鹿に全力でたかられて困っているメイドがいた。
「やっぱり、ちょっと怖いですね……」
 攻撃してくることはないようだが、押しの強すぎる姿に、つくしはやはり見守っていて良かったと思いつつ、鹿せんべいをあげていた仲間にハンカチを差し出すのだった。
「新年早々エラい目に遭いました……」
 鹿たちにたかられたパルサティラは、つくしが差し出してくれたハンカチで手を拭きながら、ふうと息を吐き出す。
「まあ神様の遣いに群がられたと考えればいいことなのかもしれません」
「次は本題の初詣でございますね」
 参道をしばらく歩いて行けば、ニ之鳥居が見えてきて、その先の手水所で手と口を清めれば、いよいよ本殿でのお参りだ。
「うんうん、気を取り直していこう」
 鹿に狙われた焼き芋を持った妖精に、鹿と一緒に境内の外で待機してもらうようお願いしたシエルシーシャも頷いては、朱塗りの歴史ある建物を眺めながら参拝所へと向かう。
「こういうのって作法があるんだよね」
 初詣にあまり馴染みのないキングアーサー出身のシエルシーシャが問いかければ、パルサティラも参拝のルールを思い出そうとする。
「そうですね、確かお辞儀などが必要で……それから、お賽銭は確か5円玉がいいんですよね?」
「そうそう、ご縁がありますようにって願いを込めてね。ちゃんとお賽銭用の小銭も準備してきたよ」
 そう言って秋果は、みんなにも5円玉を配っていく。
「新円も便利だけど、やっぱりお賽銭箱に投げ入れた方が効き目ありそうだからね」
 刻逆以降、新宿島周辺では電子通貨である新円が流通していて、昔のような貨幣経済を継続することは未だ困難。けれどやはりお賽銭などはこうして昔のように物理で投げ入れたいのは当然の気持ち。
 賽銭を投げ入れてから、まずは秋果がお手本になるようにとお参りする。
(「二礼二拍手一礼……で合ってるはず」)
 姿勢を正し、深いお辞儀を二回したあと、胸の高さで合わせた手を二回打つ。そうして手を合わせ、心を込めて祈る。
(「どうか近いうちにフランスの奪還が果たせますように」)
 絵画と美術館が好きな秋果にとっては、フランスは大好きな画家、好きな画家の絵が多く収蔵された美術館がある大切な国。刻逆によって歴史改竄された今、それらの絵画は歴史と共に奪われたのだ。今の秋果にとってそれらを取り戻すのが目標のひとつでもある。
(「私の憧れを今年こそ取り返す……!」)
 強い願いを込め、そうして最後に深いお辞儀を一回。
 秋果に倣って、それを見ていたシエルシーシャも同じようにお辞儀と柏手を打ってから手を合わせて祈る。
(「今年も一年、みんな元気に過ごせますように」)
 初詣とは本来無病息災を願うもの。その基本にのっとり、皆の健康を願うのだった。
 つくしも同じように秋果やシエルシーシャがやっていた通りの作法で参拝する。
(「こういう時のお願いってなにがいいのでございましょうか」)
 少し考えてから、つくしもシンプルで大切な願いに行きつくのだった。
(「戦の中でも皆息災で来年を迎えられますように」)
 願いだけでは申し訳ない気もしたので、つくしは昨年一年分のお礼もしっかりと心の中で述べてから、ぺこりと深いお辞儀をするのだった。
 5円玉をじっと眺めていたパルサティラは、確か穴が開いているので、「先が見通せる」という意味にもちなんでいるのだと思い出しながら、お賽銭を投げる。
 メイドらしい礼節に富んだお辞儀を二回してから、柏手を打ち、そうして手を合わせて祈る。
(「神様、どうか無事の世界の奪還をお願いします……」)
 そう願ってからはたと気づく。いや、奪還するのは神様の力ではなく、きっとディアボロス自身が為さねばならないことだ。
(「いえ、無事の世界を奪還することを誓います。ですので、どうか見守っていてください……」)
 最後にお辞儀をもう一回。
 ディアボロスが真剣にお祈りをする様子は、他の一般参拝者たちへの見本にもなったことだろう。
「ふう、無事にお祈りは済みましたね……おや、あれは……」
 参拝を済ませた四人が歩いて行けば、おみくじやお守り、御朱印を扱う授与所が目に入ってきた。
「あ、あれが鹿みくじ! 気になってたんだ」
 時先案内人も紹介していた春日大社で人気のおみくじは、木彫りの茶色い鹿と陶器の白い鹿がおみくじをくわえている鹿みくじ。
 秋果が授与所に並んでいる鹿みくじを指差し、三人を振り返る。
「ね、皆でやってみない? お願い事が叶うか占ってみようよ!」
「……鹿みくじ。こんなのもあるんですねぇ」
 表情こそ変わらないが、物珍しそうにパルサティラがそれらをしげしげと眺める。
「この中から好きな子を選べばいいのでございますか?」
「ちょっとずつ顔が違うね」
 つくしとシエルシーシャも並んでいる鹿たちの顔をじっと見つめる。
「うん、そうだね。手作りだから少しずつ顔が違う。どの子も可愛いけど……私はこのキリッとした顔の鹿に決めた!」
 そう言って秋果が一番にお気に入りの子を選ぶと、皆も後に続く。
「では、今年の運勢を占ってみましょう……私はさっき袖を齧ってくれたコに似てるこれにします」
 先程メイド服をついばんできた鹿にどことなく似た雰囲気の鹿みくじを選ぶパルサティラ。
「じゃあ、私もやってみよう。えーと、この子かな。何となく図太そう」
 そう言ってシエルシーシャもひとつ選び出す。
「そうでございますね、僕が選ぶなら、怖くない子……!」
 鹿の押しの強さを目の当たりにしたつくしは、できるだけ顔が優し気な鹿を探し出す。
「僕は険のない顔のこの子にするでございますよ……!!」
 そうして四人がそれぞれ選んだ鹿みくじを購入すれば、口にくわえているおみくじをそっと開いて。
「さあ結果はどうかな……!?」
 まずは秋果がその結果を確かめる。
「あっ、凶か……願い事は、願っていても、なかなか叶わず……」
 あまりよくない結果ではあるが、凶はこれから良くなっていくという可能性も秘めている。
「願うだけじゃなくて行動すればいいのかな?」
 それに学問の項目は、怠らなければ成果ありと書かれている。秋果が自ら行動することでいくらでも良くしていくことも出来そうだ。
「私はですね……末小吉と書いてあります」
 次にパルサティラがおみくじを広げて見せた。
「願い事は、毎日の行いを大切に、だそうです。ただ、目標を達成するには時間がかかるので、粘り強く取り組むこと……とありますね」
 確かにこの世界を全て取り戻すには時間がかかりそうだ。けれど前向きな言葉に、ますますこれからの戦いにも力が入るというもの。
「頑張っていきましょー……」
 無表情ながら元気に拳を振り上げるのだった。
「僕の結果は、末凶とありますね」
 つくしはむむっと眉根を寄せる。
 凶にもいろいろあって、末吉が吉の下のように、末凶も凶の下のようだ。
「願い事は、叶えることに固執してはいけない……だそうでございます」
 時には思い切って自然の流れに身を任せてみるというのもいいかもしれない。
「病気は、手や足の怪我に要注意……気をつけたいと思います」
 注意を促す言葉も多いが、全体のアドバイスとしては、周りの人の助言に従うと楽に乗り越えられるともある。
「気をつけることにするでございますね」
「最後は私ね、えーと……え? 大大吉?」
 びっくりしたシエルシーシャが読み進めていくうちに、うん? と首を傾げる。
「待ち人、妖精が連れてくる……病気、妖精の薬で良くなる……ちょっと妖精さん、結果が全部妖精さん関係とか悪戯がバレバレだよ」
 明らかにおかしな文章から、妖精のいたずらと気づいたシエルシーシャは、窘めながら手を差し出す。
「ここですり変えるのは禁止。ほら、本当のおみくじ出して?」
 ばれてしまったらしょうがないとばかりに妖精は本物のおみくじを手渡していく。
「もう、ほんとに……あ、小吉だ!」
 大大吉ではなかったけれど、良い結果に表情を明るくする。
「願い事は、思い通りに叶う。待ち人は思いがけない場所で出会うだって」
 今度こそ妖精のいたずらではない結果にシエルシーシャは頷いて。
 良い結果も悪い結果も、それぞれこれからの心がけ次第でいくらでも変わっていく。何せ改竄された歴史を奪還するディアボロスなのだから、運命を変えるのはきっと難しくない。
 おみくじをくわえていた可愛い鹿はお土産として持ち帰り、それぞれの思いを胸に四人はまた歩き出す。
「ね、来る途中、和風のお店あったでしょ?」
 そう言えば、とシエルシーシャが切り出せば、秋果が大きく頷く。
「ああ、お茶屋さんあったねえ!」
「荷(にない)茶屋? だっけ。最初読めなかった。帰り、寄って行かない?」
 春日大社内にあるその茶屋は、江戸時代末期に春日大社境内で、てんびん棒に茶箱と茶釜をかけ、皿に餅菓子を盛って、火吹き竹で火をおこしては、参拝客に茶を振舞い名物となった茶屋の名に由来している。
「お茶屋さん! いいでございますね!!」
「和風のお店……いいですね、寄っていきましょう」
 お参りも済ませたところで、この自然豊かな場所で一休みするのは賛成と、つくしとパルサティラも頷いて。
「じゃあ決まりだね。行こう行こう! 確かメニューにお粥あったよね、あれ食べたいなあ」
 秋果の言葉にシエルシーシャもメニューを思い出しながら賛成する。
「うん、ぜんざいとか、七草粥とか、おいしそうだった」
 確か看板メニューは万葉粥。出汁と白味噌仕立てのお粥には万葉集にちなんだ四季折々の旬の野菜などが添えられている。
「お粥……? お団子ではなく……?」
 茶屋といえば団子のイメージが浮かんだつくしが少し不思議そうに首を傾げる。
「お団子も季節によってはあるんじゃないかな。今はぜんざいかな。でも有名なのはお粥みたい。お抹茶もいいよね」
「ほへー、そうなんでございますね。それはまた頂くのが楽しみでございます!」
 秋果の説明にお粥にも興味が出てきたつくしはわくわくとした表情を浮かべる。
「普段は紅茶ですが、抹茶も飲んでみたかったんですよね。本格的なものは初めてですので楽しみです」
 表情の変化はなくともパルサティラの足取りは軽く、うきうきしているのがわかる。
「店内以外にも庭園席もあるみたいだから、そっちでもいいかもね」
 豊かな自然を楽しめるとシエルシーシャはそう皆に提案して。
 四人は春日大社でのお参りをめいっぱい楽しむのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【アイテムポケット】がLV3になった!
【完全視界】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
【命中アップ】がLV3になった!

最終結果:成功

完成日2024年01月16日