東メラネシアの海賊船
冥海機ヤ・ウマトのメラネシア東側(フィジー諸島周辺)は、ディアボロスの侵攻により、冥海機が撤退したようです。
しかし、冥海機がいなくなったことで、この地域の制海権は黄金海賊船エルドラードのアビスローバーに握られ、取り残された一般人が、黄金海賊船エルドラードからやってくる海賊に襲われ、略奪されているようです。
襲撃される東メラネシアの島にパラドクストレインで向かい、海賊を撃破、海賊船を奪取してください。
エルドラードから来た海賊船は、エルドラードに帰還する能力を持っているようなので、海賊船を奪う事で『エルドラード側の太平洋』に移動する事ができます。
エルドラードに渡った後は、敵の目の届かない所で海賊船を集結させ、エルドラード側の太平洋の本格探索に備えることが出来るでしょう。
※24年3月1日:『最終人類史のバレンタインデー2024』により、攻略期限が40日延長されました。
霧海からの海賊船(作者 坂本ピエロギ)
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冥海機ヤ・ウマトに属するメラネシア東側の海域。
クロノヴェーダ『冥海機』が行き交う筈の大海に、今、ひとつの異変が生じつつあった。
海上に生じたディヴィジョン境界の霧、その向こうから進んで来たのは一艘の船。
大きなボートにも似た船に、櫂を漕ぐ船員たち。軍艦と潜水艦が海を支配するこの時代にあって、あまりに異質な存在感を放つそれは、紛れもない海賊船だ。
異変はそれだけでは無い。
船を漕ぐ船員は10名ほどだが、そこに人間は一人も存在しないのだ。
彼らは半魚人にも似た怪物――『黄金海賊船エルドラード』のクロノヴェーダ、アビスローバーの一団であった。
『霧が晴れやしたぜ、船長!』
船員の一人、『海賊半魚人』が叫ぶ。
その声に鷹揚な頷きを返すのは、水の妖精にも似た少女型アビスローバー『イビルヴィヴィアン』。
一見すれば可愛らしい姿だが、その眼に宿る好戦的な光は、紛れもない略奪者の其れだ。
『ええ、しっかり見えるわ。此処はもう、ヤ・ウマトの海!』
イビルヴィヴィアンの声に、船員たちは快哉を挙げる。
ヤ・ウマトの海――アビスローバーたちにとって、それが示す事実はただ一つしかない。
即ち、誰の縄張りでもない自由の海。そして略奪放題のお宝の山。彼らに見つかったが最後、人々の住処は奪い尽くされ、残されるのは焼け跡と屍だけだ。
『船長! あっちの方に人の住む島が見えやす!』
半魚人の一人が、遠方の小島を指さして叫ぶ。
イビルヴィヴィアンが見澄ませば、其処には確かに点在する民家と、立ち上る炊事の煙が見えた。
アビスローバーにとって、それは願っても無いお宝と同義である。
『運がいいわね。全力で焦ぎなさい、奪える者は根こそぎ奪うのよ!』
『ヨホホイヨホホイ!』
船長の命令に快哉を返し、海賊船は島へと向かっていく。
悲鳴と殺戮、そして略奪。アビスローバーが命じる本能に、どこまでも忠実に従いながら――。
●新宿駅グランドターミナル
幻想竜域キングアーサー奪還戦の勝利に伴い、新たなディヴィジョンへの道が開かれた。
名を、『黄金海賊船エルドラード』。宝探しと略奪が横行する海賊の世界である。
「今回、皆に向かって欲しいのは、メラネシア東側の島々だよ。所属するディヴィジョンはヤ・ウマトに……んん?」
そう言って話を切り出した女性は、復讐者たちの怪訝そうな顔に一瞬首を傾げ、すぐに笑顔を浮かべた。
「あっ、ごめん。自己紹介がまだだったね。私はジャスミン、エルドラードの事件を案内する時先案内人だよ」
皆、どうかよろしくね――。
そう言って、ジャスミン・モンテイロ(人間の占星航海士・g10808)は作戦の説明を開始した。
「さて、話を戻すよ。今回、エルドラードの海賊たちが、メラネシア東側の島々で略奪を行うことが分かった」
エルドラードの海賊はアビスローバーと呼ばれる怪物たちだ。
彼らは略奪により力を得るクロノヴェーダで、今回の事件もその例に漏れない。冥海機の守りが手薄になったポリネシアの島々を襲い、略奪を行おうと言うのだろう。
「作戦目標は海賊の略奪を阻止すること。そして、もうひとつ――海賊船の奪取だ」
今回の事件では、敵は小型の海賊船で島を襲い、略奪を終えた後はエルドラードに帰還することが予測されている。
この船はクロノ・オブジェクトで出来ており、奪取すればエルドラード側の太平洋に移動が可能となる。今後の攻略の為にも、どうか奪取を願いたいとジャスミンは言った。
「小型の海賊船を集めて小艦隊を組むことが出来たなら、エルドラードの太平洋を探索する移動拠点に出来る。そうなれば、行動できる範囲も大きく広がる筈だよ」
未知なる海の先に何が待って居るか――海賊どもの船を奪えれば、それを知る機会も掴むことが出来るだろう。
今回の作戦は、内容自体は至ってシンプルだ。
島を襲うアビスローバーの元へ駆けつけ、彼らを倒し、然る後に海賊船を奪取する――これだけだ。
しかし、それとは別に、ひとつ解決して欲しい問題があるのだとジャスミンは言う。他でもない、島民たちのことだ。
「島の人たちは、いずれ冥海機が戻って来て、物資の補充をしてくれると信じている。けれど……」
それは叶わない望みだと、ジャスミンは言う。
冥海機の勢力は既にメラネシア東側一帯を放棄しており、復讐者がヤ・ウマトの攻略を進める限り、戻ることは二度とない。
島の人々は見捨てられたことに気づかず、残った資源はいずれ底を突くだろう。そうなれば行きつく先は餓死か略奪、最悪の場合は殺し合いだ。
これを防ぐ方法はただ一つ――島の人々に演説を行い、冥海機に頼らず生き抜くよう導く他にない。
「この演説は海賊船を奪う前に完了する必要がある。幸い、島民たちの住む場所は戦場から遠いから、アビスローバーとの戦闘中でも演説は可能だ。道具や物資が必要なら、新宿島から運んで行くのも良いかもしれない」
今回の事件が起こる島には農地もあり、海の幸も十分にとれる場所だ。
食料などの資源を多少援助し、彼らの心を動かせば、問題なく生活を送れるようになる。
排斥力により人々の記憶から復讐者の存在が喪われても、彼らの心に意思を残すことは出来る。演説が成功すれば島民たちは冥海機を頼らずに生きて行けることだろう。
「そうして、戦闘と演説が終わった後は、海賊船の接収を行うことが出来るよ」
ジャスミンによると、この船はクロノ・オブジェクトであり、大型のボート程度の大きさだという。
乗員は10名程度。ディヴィジョンの境界を越える力を有しており、限定的ではあるが船の力でエルドラードに続く境界の霧の方向も分かるようだ。
これを利用して彼らの居るディヴィジョンに向かい、目立たない場所を探して停泊。そこから帰還すれば作戦完了となる。
「最後にひとつだけ。エルドラードの太平洋には、伝説の大陸の存在が噂されているんだ」
今回の作戦を成功させれば奪った海賊船で艦隊を組み、エルドラードの海を冒険することが可能となるだろう。
未知と財宝と海賊が待つ、黄金海賊船エルドラードの世界。
そこを攻略していく為にも、今回の作戦は重要となるだろう――そう告げて、ジャスミンは説明を終えた。
「アビスローバーの略奪を阻止する為にも、どうか確実に海賊を排除して欲しい。頼んだよ!」
●冥海機ヤ・ウマト:メラネシア東側の小島
「……なんだ、あの船は?」
沿岸に現れた海賊船を伺いに、浜辺には島の人々が集まっていた。
冥海機の支配を甘受して来た彼らにとって、それは余りにアナクロな姿に移る。いかにも海賊船といった姿を眺め、馬鹿にしたように笑う島民も一人や二人ではない。
だが、島民たちは知らなかった。
彼らが海賊船を見ずに済んでいたのは、冥海機が海戦で死力を尽くし、海賊たちを追い払っていたからだという事実を。
稀に海賊の襲撃が成功した場合、住民は皆殺しにされ、その存在が外部に漏れることもなかったという事実を。
そして――もはやこの島に、島民を守る冥海機は存在しないと言う、あまりに無慈悲な事実を。
「え……? な、なんだ? 変な奴らが何か出て……」
かくして、島民が異変に気付いた次の瞬間。
海賊船から現れたアビスローバーは、一斉に牙を剥いた。
『ヒャッハァァァァ! 略奪だぁぁぁ!!』
『奪え! 殺せええええ!』
『良い物は残せ! イビルヴィヴィアン様の取り分だ!』
海賊の略奪を防げるものは、この島に一人もいない。
少なくとも、今はまだ。
新宿島より訪れた復讐者たちが、惨劇の場へ変わろうとした島の浜辺へ駆けつけたのは、正にその刹那であった――。
リプレイ
荒田・誠司
アドリブなど歓迎
【心情】
卑怯とは言ってくれるなよ。お前らと何も変わらねぇんだからな
目には目を、歯には歯を、幻惑には幻惑を!
【行動】
まずはパラドクスを使い幻覚を見せる毒を仕込んでいる一対の鉄扇を製作する
盾のフェイク・プリドゥエンを背負って背中側からの攻撃を防ぎ
前方からなら鉄扇で防ぐ
敵からの攻勢を凌ぎつつ鉄扇で戦いながら
こっそりと大きく振るい毒の粉を撒く
動きが鈍った隙を見計らい一気に畳み掛けよう
あちらが船の生活で鍛えようとも幻惑するような攻撃を仕掛けようとも
気づかずに散布された毒は吸い込まざるを得ないはずだ
必要なら臨機応変に対処するし
仲間とも声を掛け合い積極的に連携していく
レヴィアート・レクザット
アドリブ、連携歓迎
別に海賊行為をどうこう言うつもりはありません。それが貴方たちの生きる道なのでしょうから
けれど貴方たちは文字通りの略奪を行う。物も、人も
ならば私はそれを阻止します
貴方たちが持ち帰ることが出来るものは何もない。いえ、寧ろ逆
貴方たちの船、奪わせていただきます
奪う者は奪われる覚悟あってこそでしょう?
水場が近い場所で戦う事となるでしょう。利用させてもらいます
先に船が停泊する近くで潜って潜んでいましょう
陸に上がってきたのなら背後から、船から攻めてくるのなら船の影から奇襲を仕掛けます
勿論普通に攻撃はしません。水中から空、見える空間を飛び回り攪乱を加えながら場を整えましょう
戸惑ったものから確実に攻め落とします
海賊なら海で溺れることは無いでしょう。しかし、陸で溺れたことはありますか?
竜往無沈は場を選びません。海賊と言う海での優位性を抱きながら、無様に死ぬといいわ
フランシスカ・ルリエー
さて、ブチ転がすか…アビスローバー!
ーーふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん!
祝詞を唱えながら精神波を放射
発狂確定の狂気と悪夢を凝縮した『呼び声』…
耐えられるものなら耐えてみな!
更にパラドクスを付与して一般法則破壊を突破した『ポナペの教えたる刃』を振るい、刀身から狂気と悪夢の精神感応波を流し込み、そのまま一般法則破壊を突破した刃で心臓や頸部を突き切り裂いてトドメを指していく
近くに水場があるならば水中適応を以て海中戦を挑み、撹乱しながら奇襲で精神感応波とパラドクスを付与した刃で攻撃
ヒットアンドアウェイでトドメを指していくぞ
…何者か、だって?
多分このディヴィジョンでも『アタシ達』が滅びたのは二年前の出来事だろうからね…名乗りを上げさせて貰うよ!
ーーディアボロス!
全ての略奪者から奪い返す…復讐者!
帰ってきたからには、絶叫してもらうぞ!
凪沙・悠璃
……略奪を望むのなら、好きなだけ放埒を尽くすといい。
ただし、君たちを阻む復讐者を倒せたらの話だが。
敵が最も油断するであろう略奪の瞬間に“宵影のゆらぎ”による急襲を仕掛ける。
初撃の急襲によって敵陣の動揺を誘い、冷静な思考を取り戻させる前に各個撃破を狙う。
積極的な攻勢による迅速な殲滅が作戦の要。
指揮を取る者がいれば優先して狙い、いないのなら手近な相手から片付ける。
戦闘において重要なのは“観察”すること。
視線を、呼吸を、挙動を、拍動を、そして死角や隙を。
戦闘技量差はこちらが敵を大きく上回るだろう。
しかし、まともに刀で打ち合えば膂力差でこちらが押し負ける。
ならばまともに取り合わなければいい。
暗殺者の体捌きと技能を以て近距離では短剣、中距離では拳銃を使い分ける。
的確に急所を狙い、最小限の労力で最大の戦果を。
冥海機ヤ・ウマト、メラネシアの東側――。
青い海に浮かぶ島の人々が営む平和な暮らしは、たった一隻の海賊船の襲来によって呆気なく終わりを告げた。
凪いだ海をかき分けて、異形の海賊たちが人々の居る浜辺へ迫る。カトラスを構えた半魚人たちの名は、『海賊半魚人』。ヤ・ウマトの島々を略奪に来た、『黄金海賊船エルドラード』の尖兵であった。
『根こそぎ奪っちまえ!』『財宝、女! まとめて略奪だァ!!』
海賊の群れは浜辺へ上陸を果たすと、欲望に目を輝かせながら人々を襲わんと駆け出した。
逃げ惑う人々も、営まれる平和な暮らしも、築かれた僅かな財産も、彼らにとっては全てが略奪の対象である。
「ひっ……く、来るな!」「助けてくれ! 誰か!!」
冥海機がメラネシアを見捨てたことなど知る由もなく、島の人々は右往左往するばかり。遠からず、この島が海賊の略奪によって廃墟と化すことは間違いないように思われた。
たった今、この瞬間。
復讐者である荒田・誠司(雑草・g00115)が、浜辺へと駆け付けるまでは――。
「……よし。間一髪、間に合ったようだな」
誠司が現地で目にしたのは、浜辺で逃げ惑う島民たちと、そこへ上陸を果たした海賊半魚人の群れであった。
海賊たちの頭であるイビルヴィヴィアンは、浜辺に浮かぶ海賊船から略奪の景色に高みの見物を決め込んでいる。すべてが片付いた後、美味しいところを持って行くつもりなのだろう。
(「『船長』の方は後回しだ。まずは手下どもを片付ける!」)
誠司はすぐさまパラドクスを発動し、一対の鉄扇を生成。島民へ襲い掛からんとする海賊へ疾駆した。
仕掛ける好機は、今を置いてない。扇から生成された毒の粉は潮風に乗って、誠司の足に先んじ海賊たちを包み込む。
『あぁ? 何だこりゃ――』『がッ!? か……がはッ!!』
毒粉を吸い込み、たちまち絶命していく海賊たち。
彼らの行く手に堂々と立ち塞がり、誠司は島民たちへ大声で告げる。
「早く逃げろ! 今すぐ此処を離れるんだ!」
「助かった……?」「で、でも冥海機様じゃ、ない……?」
「冥海機ではないが、助けに来た! 話は後だ、今は此処を早く――」
大声に島民たちが我に返った矢先、誠司の周囲が影で黒く染まった。
思考よりも早く、後方に跳び下がる。次の刹那、一秒前まで誠司の頭部があった場所をカトラスの一閃が掠めた。
仲間を討たれ殺気立つ海賊が、跳躍からの斬撃を放ったのだ。驚異的な足腰を駆使し、続け様に放たれるカトラスの猛攻。対する誠司は鉄扇を得物に、真正面から切り結んで行く。
「く……!」
『ヒャァ! 邪魔だ、どきやがれ!』
ローバームーブを繰り出す敵の猛攻に、じりじりと押される誠司。
それを前に、海賊たちの殺意はいよいよ濃さを増していく。
妙な横槍は入ったが、こいつさえ始末すれば略奪の時間だ――そんな欲望に突き動かされ、海賊の意識が残らず誠司に集中した、次の瞬間であった。
「──遅い」
そんな海賊どもに冷や水を浴びせるように、割り込んだのは帯びた怜悧な一閃。
凪沙・悠璃(水底の薄明・g00522)が放った『宵影のゆらぎ』は一切の認識を海賊に許すことなく、接近すらも気づかせることはない。パラドクスの刃が放たれる時、それは獲物を仕留める時と同義である。
急襲から放つ刃が太い首筋を薙いだ。
果たして、海賊は自らの身に起こったことに気づかぬまま、
『……がっ!?』
次の瞬間には派手に血を撒き散らし、そのまま絶命して倒れ込む。
転がる骸を一瞥すらせず、生き残った海賊たちへ切先を突きつけ、悠璃は告げた。
「略奪を望むのなら、好きなだけ放埒を尽くすといい。ただし、君たちを阻む復讐者を倒せたらの話だが」
『てめぇ……!』『なめやがって!!』
挑発の言葉にいきり立ち、海賊たちは即座に反撃を繰り出してきた。
体重を込めて叩きつける魚の尾の殴打は、捉えた悠璃の肉体を芯まで軋ませる。一般人なら浴びれば即死を免れぬであろう一撃にも、しかし悠璃は怯むことは無く。淡々と直撃を避けながら、敵の観察を続行した。
海賊たちは、今や完全に冷静さを失っているようだ。
襲う筈だった島民が一人残らず逃げたことはおろか、新たな復讐者が駆け付けたことにも気づいていないのだから。
「これは、思ったより早く終わるかな。……さ、今だ」
そうして、悠璃が合図を送ると同時。
がら空きになった海賊たちの側面と背後から、復讐者による更なる攻撃が襲い掛かるのであった。
「さて、ブチ転がすか……アビスローバー!」
最初に海賊を襲ったのは、側面からの襲撃だった。
突撃ラッパめいて威勢よく声を響かせるのは、フランシスカ・ルリエー(螺湮城を統べる資格を有する者・g10819)。
『ポナペの教えたる刃』を手に、海賊の隊列の横腹めがけて突撃する。エルドラードの海賊たるアビスローバーを討つため駆けつけた彼女は、誠司と悠璃が作った好機を見逃さない。
「ふんぐるい むぐるうなふ くとぅるう るるいえ うがふなぐる ふたぐん! 螺湮城の王権を行使する者として命ずる!」
謎の詠唱を終えると同時、フランシスカの刃に不気味な輝きが宿された。
『螺湮城王権・呼び声はどこまでも』――浴びた者を発狂へと追い込む思念を、標的へ直に注ぎ込むパラドクスだ。
狙い定めた海賊たちの脳髄に刃を突き刺し、次々に思念を流し込むフランシスカ。脳を侵食する狂気に耐え切れず、海賊が泡を吹いてばたばたと絶命する。
フランシスカは奇襲の勢いをそのままに誠司らの戦列に加わり、肩を並べて剣戟を演じ始めた。
「お待たせ! アタシも加勢させて貰うぜ!」
「応援感謝だ。さあ、ここから戦況をひっくり返すぞ!」
「そうしよう。どうやら『最後』の準備も整ったようだ」
『あァ!? 何をゴチャゴチャ言って――』
悠璃の言葉に苛立った海賊が更なる攻撃を浴びせようと、尻尾を振り被った、その矢先。
踏みしめようと体重をかけた足が、ふいにズブリと砂地にめり込んだ。
いや――めり込んだという表現は適切ではない。まるで地面そのものが液体と化したように、海賊の肉体は見る見る砂地へ沈んでいく。砂の流れは凄まじく、海賊を蟻地獄のように捉えて離さない。
『な……っ!? グァっ……』
「私の歩み、私の心、貴方にとらえることなど不可能です」
砂中へ沈みゆく最中、もがき苦しむ海賊の視界に最後に映ったもの。
それはパラドクスの力で砂浜を悠然と泳ぐ復讐者――レヴィアート・レクザット(彗空深流・g04929)であった。
音もなく背後から忍び寄って発動したパラドクスに全身を呑まれ、海賊半魚人が絶命する。同時、レヴィアートはその身を地上へ躍らせると、三人の仲間たちと共に敵軍を見遣る。
生き残った海賊半魚人は、襲撃当初の約半数。
奇襲を受けてなお、その両眼は殺意に輝き、些かも戦意を失ってはいない。
「成程、諦める気は無いということですか。ですが――」
レヴィアートは冷徹な光を帯びた眼で海賊を見遣り、言い放つ。
お前たちが持ち帰ることが出来るものなど何もない。これから自分たちが、お前たちの船を奪わせて貰う、と。
『海賊船を、奪うだと……?』『ふざけた口を利きやがって!』
怒りを露ににじり寄る半魚人たち。
その時、彼らの後方から無言で雪がれる強烈な視線を、レヴィアートは確かに感じた。
海賊船の上から戦いを見物する、イビルヴィヴィアンの視線。並の者なら即座に身動きを取れなくなるような強烈な圧力を帯びた其れを、レヴィアートは真正面から睨み返し、アビスローバーたちへ宣言する。此れより始まるのは自分たち復讐者による海賊狩りであると、そう告げるように。
「奪う者は――奪われる覚悟あってこそでしょう?」
かくして始まったのは四人の復讐者による、海賊半魚人への包囲攻撃であった。
略奪にありつこうとした矢先の襲撃に海賊たちはいきり立って奮戦するが、復讐者たちの猛攻はそれを許さない。
「生憎だが、俺たちに奇襲を許した時点で勝敗は決している」
『ぐ……ち、畜生……!』
短剣を振るう悠璃が積極的に攻勢を浴びせながら、狙い済ました斬撃で着実に海賊を葬り去っていく。
悠璃の刃が熾烈であることに加え、戦場を吹き荒れるロストエナジーの瘴気は、積極的に攻めようとする海賊から容赦なく体力を奪い、力を削ぎ落す。それすら覚悟のうえで浴びせた攻撃はガードアップによって威力を削がれ、有効な負傷を与えるには叶わない。
海賊の顔にいよいよ露な焦燥が浮かぶ中、レヴィアートは戦場を縦横無尽に泳ぎ回りながら告げる。
「海賊行為をどうこう言うつもりはありません。それが貴方たちの生きる道なのでしょうから。けれど……」
けれど、同時にレヴィアートは思う。
彼らアビスローバーの海賊たちは『略奪』を力の源とするクロノヴェーダなのだ。
それは即ち彼らが力を得る度に、罪なき人々の命と、平和な暮らしが踏み躙られることと同義。
故に、レヴィアートは由としない。この海賊たちを許すことなく、一体残さず撃破すると誓う。
「略奪は、ここで私が阻止します。――『竜往無沈』!」
砂浜を縦横無尽に泳ぐレヴィアートの動きが、ふいに速度を増した。
海賊を取り囲むように生じた竜気の渦は、海賊の足を捉え、その身体を砂地の中へと沈めていく。ひとたび嵌まれば抜けることは二度と叶わず、窒息による死が待つのみだ。
『ぐぉっ……ガッ……!』
「竜往無沈は場を選びません。海賊と言う海での優位性を抱きながら、無様に死ぬといいわ」
砂の中でもがき苦しみ、海賊がまた一体息絶える。
アビスローバー勢力との第一戦は、いよいよ終局へ向かいつつあった。
同胞を討ち取られていく海賊たちの表情には、今や焦燥を通り越して恐怖の色さえ浮かんでいた。
冥海機が去った今、自分たちを邪魔する者などいない筈。
そんな考えを嘲笑うかのように現れた四人の戦士たちに、海賊の一人が絶叫する。
『な……何なんだ、テメェらは!』
「……何者か、だって? なら、名乗りを上げさせて貰うよ!」
射抜くような視線を向けて、フランシスカが口を開く。
「アタシたちはディアボロス! 全ての略奪者から奪い返す……復讐者!」
『ディア、ボロス……!』
海賊が呆然と言葉を漏らす間にも、彼の仲間はフランシスカの刃で狂気を注ぎ込まれ、次々と絶命していく。
誠司が敵の注意を単独で引きつけ、悠璃とレヴィアート、そしてフランシスカの三人が奇襲をかける――そうして行われた戦いは、今まさに復讐者の勝利で幕を下ろそうとしていた。
誠司はパラドクスで生成した鉄扇を構えながら、最後に残った海賊を睨み据え、告げる。
「卑怯とは言ってくれるなよ? お前らと何も変わらねぇんだからな」
『ぐ……!』
舌鋒鋭い一言に、海賊が冷汗を流しながら言葉に詰まる。
冥海機の居ぬ間に襲撃をかけ、略奪をしようなどという輩だ。卑怯という自覚は承知の上なのだろう。
つまり其れは、自分たちが同じ方法で討たれるようとも呪いを吐く筋合いは無い――そういうことだ。
「目には目を、歯には歯を、幻惑には幻惑を!」
誠司が振るう鉄扇が、最後の一撃を振るう。
名を、『即席製作:夢幻の霧』。トラップメーカーとゴーグルを接続して製作した鉄扇がパラドクスの力を帯びて、打撃の嵐となって海賊を打ち据える。全身の骨を砕かれ絶命する海賊の最期を見届けて、誠司は海賊船の方角を見遣った。
「……さて、これで残るは『船長』だけか」
「そうだな。アタシらが船を奪う前に、島民への演説もな!」
そう言って、誠司とフランシスカが視線を海に向ければ、海賊船を降りて泳いでくるイビルヴィヴィアンの姿が見えた。
アビスローバーを撃破し、奪った船で海へと出れば、島へ戻ることは難しくなるだろう。
その前に島民へ演説を行い、彼らの心を奮起させる――それもまた復讐者が果たすべき役割の一つであった。順当に行けば戦闘が先になるだろうが、演説を優先、或いは並行して行うことも出来る。どちらを先に進めるかは復讐者たち次第だ。
「水中適応はいつでも使えます。いま戦いを仕掛ければ、海中での戦いも可能でしょう」
「ああ、だが相手はアヴァタール級。間違っても油断は出来ない」
レヴィアートの言葉に頷きながら、悠璃は浜辺へ近づいて来るイビルヴィヴィアンを見遣る。
選択に費やせる時間は、そう長くない。
戦闘か、演説か。復讐者の一人一人に選択を迫るように、侵略者はじわじわと距離を詰めて来ていた――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【現の夢】LV1が発生!
【水中適応】LV2が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【アクティベイト】LV1が発生!
荒田・誠司
アドリブなど歓迎
【心情】
話すのは任せて俺はアイツを叩くとしようか
これ以上近づけさせない!海の藻屑と消えろ!
【行動】
仲間と声を掛け合い積極的に連携していく
ジェットボード形態にした盾に乗って海上へ移動
そこで迎え撃つ
パラドクスを用いて可燃物質を風で巻き上げ着火し爆発を引き起こす弾丸を制作し発砲することで攻撃
敵が攻撃してくる瞬間海面に出るだろうから
その隙を狙おう
敵からの攻撃はジェットボードでの移動と電光警棒を使って防ぎ
いざとなれば水中適応を使用し
海中へ逃れよう
その状態で戦ってもいいだろうしな
必要なら臨機応変に対処する
レヴィアート・レクザット
※アドリブ、連携可
あれが船の頭目。接近してくる様子は......無いわね
彼女にも現状は見えている筈。逃げるのか、それとも迎え撃てる自身があるのか
何方にしても彼女を倒し、船を奪わなければならない
氷使いの様だけれど、海上ではそれほど脅威ではない
いいわ。折角なら、貴女たち以上に海賊らしく奪って見せるわ
彼女は船にて待っているのでしょう。ならば一気に強襲するわ
水中適応の効果もあるから動きに制約はそうない
海中の少し不覚に潜り、そこから一気に船底へ。後方から飛び上がり最初の一撃を見舞いましょう
彼女の氷は厄介でしょう。それなりに耐えられはするでしょうが、慢心はしない
見極め、致命傷を避けます。猛攻を掻い潜りながら味方と協力して削ります
竜往無沈は何処にいても溺れます。湖の乙女の名を冠するものよ、貴女もよ
深く暗いそこへと沈みなさい
翼は飛行以外に盾の様にも使用。尾はしなやかで頑丈、攻撃を受けたり弾いたりも出来る。
武器はBlaues Drachenschwertを主に用いる
凪沙・悠璃
……さて、ここが正念場といったところか。
演説をするにしても、先ずは正面の脅威を排除しよう。
布陣としては、俺は島からの援護に回る。
後衛が居るのと居ないのでは、前衛の戦い易さも大きく変わるだろうから。
装備する武装は“星辰ノ燕”という銘の弓。
身を隠せそうな木々や建物に“光学迷彩”を纏って潜み、攻撃を仕掛ける戦機を待つ。
“水底の雫”は強力は必殺技──などではない。
天性の観察眼や戦闘技能を強化すること、通常攻撃では傷付かぬ敵に傷を与えること。
たったそれだけの効果だが、何よりも重要なことである。
……君は人の姿をしている。であれば対処も容易い。
人の形という理の範囲内においては、“水底の雫”による先見を超えるに至らない。
位置取りに足を使い、腕や体幹によってバランスを取り、己の眼球を使って視野を得る。
それが人の形を取る者の限界。
前衛の援護となるよう、機先を制するように弓を放つ。
敵の攻撃に対しては前兆をよく読んで回避に徹し、壊された足場は放棄して次の狙撃地点に向かう。
海賊半魚人の群れを撃破し、静寂の帳が降りた小島の浜辺。
そこへ今、海賊船から身を躍らせた一体のアビスローバーが、悠々と海中から向かって来ていた。
名を『イビルヴィヴィアン』。海賊半魚人を束ねる長であり、船を指揮するアヴァタール級の個体である。
『やってくれるじゃない。少しは骨のある奴がいるみたいね!』
「……あれが船の頭目。随分と余裕ですね」
レヴィアート・レクザット(彗空深流・g04929)は水中適応を発動しながら、即座に迎撃の準備を整え始めた。
島民の説得には、先んじて他の仲間が向かっている。自分たちは、ここでイビルヴィヴィアンを確実に撃破する――それが三人の復讐者たちの選択だ。
「あのアビスローバーにも、海賊半魚人との戦いは見えていた筈。よほど自身があるのでしょうか」
「恐らくはな。だが、いずれにせよヤツを陸に上げさせる訳にはいかない」
荒田・誠司(雑草・g00115)が、盾の『フェイク・プリドゥエン』をジェットボード形態に変形させながら言う。
島民への被害を防ぐためにも、戦場が陸地では万が一の事態が考えられる。
誠司とレヴィアートは海中で迎撃を行い、最後の一人――凪沙・悠璃(水底の薄明・g00522)は地上から攻撃を行うというのが、戦いの流れであった。
「ここが正念場といったところか。演説をするにしても、先ずは正面の脅威を排除しよう」
悠璃は射撃のポイントを選定し、着々と迫って来る敵を狙い定める。
今回、彼が用いる得物は弓矢だ。『星辰ノ燕』に矢を番え、精神集中。機先を制する一矢を放たんと弓を引き絞っていく。
それと同時、誠司とレヴィアートも息を合わせ、戦場となる海へ向かって行った。
「さて、覚悟して貰おうか。海の藻屑と消えろ、アビスローバー!」
「折角なら、貴女たち以上に海賊らしく奪って見せる。その海賊船、貰い受けましょう」
『来なさい。返り討ちにしてあげるわ!』
干渉しあうパラドクスによって、浜辺の静穏が儚くかき消される。
それは復讐者とイビルヴィヴィアン、両者の死闘が幕を開けたことを意味していた。
誠司とレヴィアート、二人の復讐者がアビスローバーを討たんと海を突き進む。
フェイク・プリドゥエンを利用して油断なく敵との距離を詰めながら、誠司は陸地で弓を構える悠璃を振り返った。
「どうだ、射程は届きそうか?」
「問題ない、そこまで距離は離れていないから。……二人の援護は引き受ける」
そうして悠璃の放つ矢が、戦闘開始の合図となった。
直観と観察眼に導かれた一撃がパラドクスの尾を引いて、標的の肩を穿つ。
傷口から赤黒い体液を滲ませるイビルヴィヴィアンは海面から身を乗り出すと、お返しとばかりに巨大な氷塊を出現させ、悠璃めがけて叩きつけてきた。
『ペシャンコにしてあげるわ!』
島の人間が浴びたなら、跡形もない肉塊と変じるであろう一撃である。
だが、その一撃が悠璃を圧し潰すことは無い。残留効果のアヴォイドによって氷塊の落下コースが逸れた隙を突いて、悠璃は余裕を持って身を躱す。
(「……とは言え、アヴォイドの発動率は低い。いつまでも当てには出来ないな」)
次なる狙撃ポイントを探して移動を開始する悠璃。同時、空気を震わす衝撃音が海上に鳴り響く。
誠司の発砲した弾丸がパラドクスの力で炸裂した瞬間であった。次いで落下して来る反撃の氷塊が、ズズンと轟音を立てて戦場に水柱を立てた。
盾もろとも衝撃で吹き飛ばされた誠司は、そのまま海へとダイブ。戦場を水中に切り替える。
「海上での戦いは不利か……では、水面の下で仕切り直しと行くぞ!」
事前に発動した水中適応の助けもあって、諸々の行動に苦労することは無い。
未だ健在を誇るイビルヴィヴィアンを前に、誠司は燃え上がる復讐心を秘めながらパラドクスの弾丸を生成していった。
射撃と爆撃、そして氷塊。
パラドクスを浴びせ合う逆説連鎖戦の余波が、激しい衝撃となって海中を揺らす。
イビルヴィヴィアンの猛攻はいまだ衰えることを知らない。海賊半魚人の親玉を務めるだけあり、駆使するパラドクスの力を存分に振るいながら、息つく間もない猛攻を仕掛けて来る。その様はまるで獲物に食らいつく人喰い鮫のようだ。
『ほらほら! どうしたの、もう終わり!?』
「成程、大口を叩くだけのことはありますね。……ですが」
次の刹那である。イビルヴィヴィアンを取り巻く潮の流れが、ふいに力の向きを変えた。
凪いだ水面に突如として吹きつける暴風の如き、自然には有り得ぬ『力』の流れ。それはレヴィアートのパラドクスが引き起こす『竜往無沈』であった。
「私の歩み、私の心、貴方にとらえることなど不可能です」
『……っ!』
レヴィアートの生み出すパラドクスは、陸海空を問わない。
泳ぎ回ることで生じた竜気の渦は瞬く間にイビルヴィヴィアンを捉え、その身体を弄ぶ。
巨人に振り回される玩具の様に体のあちこちが千切れ飛ぶ中、イビルヴィヴィアンの顔から初めて余裕の色が消えた。それは戦況がじわりと復讐者の優勢に傾き始めたことを悟ったが故か、或いは――もしかすると、水中で翻弄されるという事実を前に、自身の誇りを傷つけられたと感じたのかも知れない。
「竜往無沈は何処にいても溺れます。湖の乙女の名を冠するものよ、貴女もよ。深く暗いそこへと沈みなさい」
『……調子に乗るんじゃないわよ!』
即座に氷柱を生成し、反撃と為して連射を浴びせるイビルヴィヴィアン。
だが、次の瞬間、海上から音もなく発射された一矢が、その胸板を穿ち貫いた。
「……君は人の姿をしている。であれば対処も容易い」
地上から矢を放った悠璃が、淡々とした口調で呟く。
彼の一撃は、決して強力な必殺技などではない――それが悠璃の自認だ。
天性の観察眼や戦闘技能を強化し、パラドクスの域にまで高めて放つ『水底の雫』。相手が人の形という理の範囲内においては俺のパラドクスの先見を超えるに至らない、そう悠璃は訥々と言ってのけた。
イビルヴィヴィアンの構造が人のそれとどの程度似るのか、正確なことを知る者はいない。ただ一つ明らかなことは、悠璃の放った矢が彼女に深手を与えたというシンプルな事実だ。そして――それを察知したのは、海中の二人もまた同じ。
「どうやら、チャンスのようですね」
「ああ。きっちり仕留めてやる」
霧の彼方より現れし海賊に、今こそ最後のとどめを刺すため。
レヴィアートと誠司が、息を合わせてイビルヴィヴィアンへと殺到していく。
「中々に厄介な力を使ってくれましたが……それも此処までです」
先手を取ったレヴィアートが、悠然と海中を泳ぎ回る。
もはや此処にお前の居場所は存在しない――そう告げるように堂々たる動きで生じさせた竜気の渦は、イビルヴィヴィアンの五体を容赦なく引き千切っていった。
一度戦いが始まったのなら、容赦はしない。
冷酷な捕食者の心を持って浴びせたレヴィアートの一撃に、なおもイビルヴィヴィアン満身創痍で耐え――。
それが、彼女の最期となった。
『……っ!? これ……は……』
「終わりだ。――泡と一緒に消えるんだな」
誠司の『特殊弾:嵐炎』が、水中を吹き荒れる嵐でイビルヴィヴィアンを捉える。
パラドクスによって海中からかき集めた可燃物質を含む気泡は、瞬く間にアビスローバーの身体を包み込んだ。
次の瞬間、誠司は嵐を巻き起こしたエレメントリボルバーを構え、弾丸を装填。気泡目掛け、とどめの一撃を放つ。
「嵐だけだと思うなよ!」
『……――っ!!』
泡に着弾した弾丸が、パラドクスで火花を起こした。
刹那、爆発の中心部でイビルヴィヴィアンは全身を粉微塵にされ、海の藻屑となって吹き飛んで行く。誠司とレヴィアートは叩きつけるような衝撃の余波に耐え抜くと、揃って海面の上へと体を躍らせた。
「……よし、撃破確認だ。奴らの船は無事か?」
「ええ、無傷です。こちらの戦いは片付きましたね」
主を失って海面に浮く海賊船を見遣りながら、レヴィアートが言う。
後は演説が終わり、島民がひとり立ちの意思を取り戻せば、いよいよあの船で海の彼方へ出発することと為るだろう。
境界の霧を越えた先に待つディヴィジョン『黄金海賊船エルドラード』。そこに待つ新たな世界と危険な海賊たち。
かくして――未知なる地へと向かう準備は、着々と整いつつあった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【避難勧告】LV1が発生!
【水中適応】がLV3になった!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】がLV2になった!
フランシスカ・ルリエー
――いい加減目ぇ覚ませ!
冥海機はなぜこんな奴らの接近を許した!?
奴らが海の軍属だってんなら、接近に気が付かねぇはずがねぇ……ましてや、こんなローテクな船をだぞ!
それでも接近を許したってんなら答えは一つだ!
冥海機はお前達を見捨てたんだ!
そう言ってアビスローバーが住民の方へ向かわない様【未来予測】を活用しながら立ち回っていく
こうして自ら盾になる様に振る舞う方が、人心ってもんを掴みやすくなるだろ
冥海機は最早頼れねぇ!
なら後は漁業や農業等で自分達の手で飯を食うしかない!
アタシ達も、この海賊共を追っ払ってやるからさ!
自分達の頭で考えて、自分達の為に行動しろ!
そう言って声を張り上げて住民に訴えかける
排斥力でアタシ達の事を忘れる、か……
だが、その土地に刻んだ『影響』は消え去る事は無い
なら、どこまでも戦って……考えた上で声を上げようじゃないか
それでクロノヴェーダの支配から脱却し、自分達で未来を築けるってんなら
時間を少し遡り、誠司たちがイビルヴィヴィアンとの戦いを始めた頃。
浜辺に近い村の門を潜ったフランシスカ・ルリエー(螺湮城を統べる資格を有する者・g10819)が目にしたのは、恐慌状態に陥って逃げ惑う島民たちの姿であった。
「冥海機様、早く来て下さい!」「このままでは、村はおしまいだ!」
自分たちが見捨てられた事実も知らず、冥海機へ懸命に助けを求める島民たち。
そんな彼らの上げる悲鳴を前に、フランシスカは深呼吸をひとつ。凛とした声をもって一喝した。
「――おい! いい加減目ぇ覚ませ!」
怒気を帯びたフランシスカの声に、村は水を打ったように静まり返る。
海賊半魚人の襲撃から島民を守った彼女の顔は、すでに人々も知るところであったらしい。感謝と怯えが半々と言った表情を浮かべる者たちを見回しながら、フランシスカは浜辺の光景を指さして言った。あちこちに転がる半魚人の骸、そして海に浮かぶ海賊船。更には、今なお復讐者と戦うイビルヴィヴィアンの姿を。
「冥海機は何故あんな奴らの接近を許した!? 此処が奴らの縄張りだってんなら、接近に気が付かねぇはずがねぇ!」
「……そ、それは……」
「あんなローテクな船の接近を許したってんなら答えは一つだ。分かってるだろ」
実際にはクロノオブジェクトである海賊船は只の船とは比較にならぬ性能を持つが、むろん島民がそれを知る筈も無い。
人々の誤解を上手く利用しつつ、フランシスカは畳みかけるように言う。
「いいか、はっきり言ってやる。冥海機はお前たちを見捨てたんだ!」
予想に反して、島民たちから悲鳴の言葉は出なかった。
恐らくは彼らも、薄々と事実を察していたのだろう。
肩を落とす島民たち。そこへフランシスカは尚も続ける。それはお前たちの終焉を何ら意味しないと。
「冥海機は最早頼れねぇ、ならどうする? 自分たちの手で飯を食うしかないだろ!」
食料となる資源が豊富であることは、既に時先案内人の説明からも把握していた。
事実、島には畑が作られ、村外れには漁船も見えた。農業や漁業を行えば、彼らが飢えることはないだろう。今必要なのはたった一つ――彼らが冥海機を頼らずに生きていく覚悟、それのみだ。
「あの海賊はアタシたちが追っ払ってやる! でも、そこから先は自分たちで考えて、自分たちの為に行動しろ!」
フランシスカの言葉が偽りでないことを示すように、背後の海で一際派手な水柱が立ち上る。
それは、誠司のパラドクスがイビルヴィヴィアンを吹き飛ばした、正にその一撃だ。
身を挺して島民を守り切った復讐者の、新たに歩み出すよう諭す真摯な言葉。それを前に、島民たちは頷く以外の選択肢を持ち得なかった。
「分かりました。もう、冥海機様を……彼らを頼りはしません」
フランシスカの目を真っ直ぐに見つめる島民たちの眼差し。
そこに宿る確かな意思の光に、彼らが破滅の未来を避けたことをフランシスカは悟るのだった。
かくして演説が終わると、フランシスカは見送る島民たちに手を振って、浜辺へ駆けていく。
その心に去来するのは大きな達成感と、微かな寂しさだった。
(「島民たちは、排斥力でアタシたちのことを忘れる、か……だが、その土地に刻んだ影響は消えることは無い」)
ならば、とフランシスカは思う。
自分たちはどこまでも戦って、考えた上で声を上げるだけだと。
「それで、皆が自力で未来を築けるってんなら――アタシはこれから先も戦ってやる。いくらだって戦ってやる!」
自分が向かうのは、荒波と冒険と戦の世界。
浜辺の先、仲間たちの待つ海賊船へ、フランシスカは駆けて行く。
すべての支度を終えて、いざ海の先に待つディヴィジョン――『黄金海賊船エルドラード』へ向かう為に。
超成功🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【未来予測】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
レヴィアート・レクザット
※アドリブ、連携可
さて、後は向こう側へと進むのみ、ですか。何が待ち受けているのでしょう
当然不安も持ち合わせてはいますが、それよりも未開の地へ歩みを進めるという高揚感も感じます
さぁ、真っ直ぐと進みましょう。進む先は霧の向こう、エルドラード
例え何があろうとも、目的は達成して見せましょう
さて、船の操作についてはそこまで難しくはありません。幸い海の竜であるから風や海の癖はよく理解しております
波や風を捉えながら櫂を用いて素早く進みましょう
向こうに何が居るか分かりません、霧を超える段階になったら光学迷彩を念のため発動しておきます
もし向こう側で見つかりそうになれば一度海中に潜って回避しても良いかもしれませんね
霧の向こうが視界不良であれば完全視界にて周りをよく見て見つからない場所へ停泊させましょう
後は無事に帰還するだけです。見れる限り周りの情報を確認して、可能な限り持ち帰るとしましょう
荒田・誠司
アドリブなど歓迎
【心情】
とうとう霧の向こうへ出るのか
ひとまずエルドラードへの第一歩は踏み出せそうだ
ひとまずの備えは必要だな。海上に物資はないんだから尚更だ
【行動】
最初に紛失してしまった時に備えて陸でオールの予備を作って持っていこう
漕いでいる時にうっかり手放してオールがないですって状況は笑えないし
何が起きてもおかしくないから備えるだけなら問題ないはずだ
海洋上では物質を補給するのは困難だしな
試しに操作会得を使用
残留思念でこの船を操作するのに少しは助けになるかもしれない
舵取りとか帆の調整とかは助けがあったほうが楽だろう
海だと方向を見失いそうだから
羅針盤で逐一方向を確認して
外れてしまったら
元の方角へ戻そう
仲間と声を掛け合って連携して行動する
必要なら臨機応変に対処する
アビスローバーの撃退と住民への演説を終えて、出発の支度を終えた復讐者たち。
そんな彼らが接収したのは、一見して何の変哲もない一艘の船であった。
「これが、ディヴィジョン境界を越える力を持つ海賊船……ふむ、どう見ても只の小船にしか見えんが……」
乗り込んだ船内を見回して、荒田・誠司(雑草・g00115)が呟く。
十人程度の船員が座れるスペースと、手漕ぎ用の櫂。更には丁寧に張られたマスト。船にある物はこれが全てだった。
海図のようなものが船内に有るかとも思ったが、敵も流石にそこまで不用心ではないらしい。持ち込んだ方位磁針を手に、誠司は同乗した仲間へ視線を移す。
「まあ、御守りくらいに思っておこう。では、早速だが出発するとしようか」
「ええ。後は向こう側へと進むのみ、ですね」
レヴィアート・レクザット(彗空深流・g04929)は頷きを返し、水平線の彼方へ視線を向けた。
海の彼方に待つ『黄金海賊船エルドラード』のディヴィジョン。そこで待ち受けるものに想いを巡らせて、彼女の胸は大いにときめいた。
無論、不安が無いと言えば嘘になる。だが、未開の地へ歩みを進める高揚感は、それ以上に大きい。
例え何が有ろうと、必ず目的を達成して見せる――そんな使命感を秘めて彼方を見澄ます青色の瞳は、透き通った海のように美しく、好奇心で煌めいている。
「さぁ、真っ直ぐと進みましょう。進む先は霧の向こう、エルドラードです」
「目指すは霧の向こう、だな。黄金海賊船への第一歩、踏み出すとしようか」
期待、不安、高揚、使命。渦巻く感情を胸に、復讐者たちの船は進みだす。
海と冒険と財宝の世界、未知なるアビスローバーの支配するディヴィジョンを目指して――。
大きなマストに風を浴び、海賊船が海を往く。
船員のいない操船スペースに腰を下ろし、誠司は手漕ぎ用の櫂に手を添えた。
「さて。説明では、『ディアボロスが櫂を漕げば高速で移動できる』とのことだったが……」
少年のように弾む好奇心を抑えきれず、誠司が両手に力を込める。
と、次の瞬間――海賊船は俄かに速度を増して海を進み始めた。見えない巨人に背中を押されているかのような力強さに、誠司は思わず快哉を上げる。
「これは凄いな。モーターボート顔負けだ」
「ふむ、では私も……嗚呼、これは面白いですね。力を入れずとも楽々と進んで行きます」
誠司の様子に興味を惹かれ、レヴィアートが櫂を取ると、船は更にぐんぐんと海を進んで行く。
これならば、船の知識が無くても操船は容易だ。風を孕んだマストの影響も相まって、航路は正に順風満帆である。
ふとレヴィアートは、出発前に誠司が整えていた諸々の準備を思い出し、小さく首を傾げた。
「そういえば『操作会得が船に使えないか試したい』と言っていましたね。結果はどうでしたか?」
「無理だった。この海賊船がクロノ・オブジェクトであることを考えれば、まあ無理も無いが……」
特に残念そうな風もなく、誠司は言った。
これだけ操縦が容易であれば、特に問題はないだろう。万一の事態に備えて櫂の予備も運び込んではいたが、今のところは出番も無さそうだ。クロノ・オブジェクトではない一般の道具がどれ程役立つかは未知数だが、願わくば使わずに済むことを願うばかりだった。
そうして船路を行くこと暫し、前方に広がる異変に誠司が注意を促した。
「境界の霧が見えて来たぞ。いよいよだな」
「海賊船に霧の方向が分かるというのは、本当だったようですね。では、行きましょうか」
レヴィアートが敵襲に備えて光学迷彩を発動すると、船は境界の霧へと進んでいった。
此処から先は完全な敵地であり、どれほど用心しても過ぎることは無い。高鳴る胸の鼓動を宥めつつ、レヴィアートと誠司は息を殺して霧の中を進む。さざ波を弾く船底の微かな音を除いて、周囲には何の音も聞こえてこない。
そうして、息を潜めたまま船を漕ぐこと暫し――復讐者たちを乗せた海賊船は、境界の霧を潜り抜けることに成功した。
「ここが……黄金海賊船エルドラードの海域……!」
「そのようだな。漸く、辿り着いた訳だ」
レヴィアートと誠司は、大きな達成感に目を輝かせた。
彼等の前に在るのは、どこまでも広がる一面の青い海。そこに陸地は一切見えず、警戒していた敵の気配もない。どうやらこの一帯は、アビスローバーのさほど多くない海域なのだろう。
レヴィアートは周囲に有益な情報が得られそうな物がないか見回してみるも、四方には小島のひとつも見て取れない。
だが――復讐者としての勘か、あるいは海の竜たる彼女の本能が告げているのか。一帯に漂う妙な気配を、レヴィアートは確かに感じ取っていた。
「此処は……何か、嫌な感じがしますね」
「ふむ。確かに。俺も此処に来てから、何となく落ち着かない感じがするな」
そう呟く誠司に、レヴィアートが頷きを返す。
「うまく言葉には出来ませんが……何とも不吉な気配を感じますね。長居はしない方が良さそうです」
安全な海域に船を停めておけば、いずれ他の復讐者が乗った海賊船が合流して来るだろう。
ある程度の数が集まれば、そのまま小艦隊として運用も可能になる筈だ。
周囲に敵の気配がないことを入念に確かめると、二人は海賊船を後にして、再び境界の霧を目指して帰路につく。
「黄金海賊船エルドラード、そしてアビスローバー……本格的な攻略開始が待ち遠しいですね」
「ああ。いかなる脅威が待って居ようと、恐れはしないとも」
遠ざかっていく海賊船を振り返り、レヴィアートと誠司は思う。
今回の勝利で、攻略の第一歩は確かに踏み出せた。今は小さな一歩に過ぎなくとも、いずれ自分たち復讐者の手で海賊船が集まれば、それは大きな歩みとなって太平洋の海に漕ぎ出していくことだろう。
クロノヴェーダに奪われた世界のひとつ、黄金海賊船エルドラード。
その地を奪還する戦いが一日でも早く訪れることを夢見ながら、復讐者たちは最終人類史へと戻って行った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水中適応】がLV4になった!
【操作会得】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV3になった!
【先行率アップ】がLV2になった!