リプレイ
咲樂・祇伐
【黒華】
まさに相手も死に物狂いというわけですね
己が地を残そうという心はわかる、けれど
私達だって、大切なこの地を…歩むべき明日を
壊させる訳にはいかない…いいえ、私の大切なものを──奪わせなどしない
危機を、ひとつでも多く、払う
それが今の私にできること
いきましょう、ちか
惑いの先に
己が歩んだ路が正道となるの
取り戻しましょう
私も、取り返すから
勿論と花咲み阿吽の呼吸でとんと駆け
全力魔法に伝い、吹き飛ばすように放つは朱夏
風と鳴神とで薙ぎ払い撃つ
…酷い声、耳が痛くなる、
怯んではいられない
返る攻撃には結界と桜禍ノ祝護とで勢いを和らげて
お返しとばかりに朱夏の鳴神にて穿つ
確実に一体ずつ倒すべくちかや仲間達と攻撃をつなげていくわ
隙は互いに補い助け合い、庇うことも積極的に
皆で無事に、帰るのよ
信には力で応えましょう
霞む記憶にもどかしさ
屠りたい気持ちもわかる
ちか。
深追いは危険です
撤退分の余力を残して思い切り朱夏の嵐を放ち退く
今はまだ
刃を研いでおくべきところ
ちか。
繋ぐてはあたたかく
決して離さないと心に決めて暁の名を呼ぶ
紫空・千景
【黒華】
噫、此れ以上は奪わせない
以前から感じていた違和感
龍への心奪う程の怒りを始め少しずつゆらぎ始めた記憶
見えぬ霞に心がざわめく
故郷を取り戻せば晴れるのだろうか
埋める為にも取り戻したい
だから
手伝ってくれと告げよう
あんたに背も隣も預けて
たんっと駆けて暁を抜く
同時に浮かせるしきから貰った花鱗
花筏ノ夢
願いを叶える四季の祝
――うたい、揺蕩い、
唄口遊み、斬花の花弁を纏いて
自らの斬撃に合わせ花弁も又、断ち斬る刃へと転じさせる
薙ぐ力に衝撃波を乗せて
生じた隙は逃さず巨大化した物の軌道を情報を把握し
暁の結界を展開させ刀で受け流すも
矢張り重いな
覚悟と謂うのは
だが直ぐに…しきの夏が降る
隙は繋と連携で補い
庇い庇われ
しきや仲間達と確実に仕留めに
斬り伏せても…未だ、見えない
けれど屠るのは変わらない
…でも、解ってるよ
しき。
今じゃないのは
泡沫を盾に変え護りつつ撤退を
――必ず、返して貰う
其れは色んな意を伴い花唇で告げる音
繋いだぬくもりは何時もあたたかい
しき。
桜の名を呼ぶ
何時も共に此の地へ赴いてくれたしきが居れば
私は、屹度
ひしめく死竜は、さながら黒い叢雲だ。冷たい鬼火めく鱗光が、靜かな雷光を思わせる。
(「鳴神もどき、だなんて――不遜だわ」)
櫻香を運ぶ春風のようなたおやかさに、日常より禍龍の気配を濃く滲ませた咲樂・祇伐(花祇ノ櫻禍・g00791)は、桜咲く柘榴の眸を尖らせた。
夥しい数のドラゴンが空にひしめいている。おかげで世界はいつもより昏い。
「まさに相手も死に物狂いというわけですね」
呟きに、祇伐の瞳孔が糸のように縦に細くなった。また一弾と、纏う気配が引き絞られる。
己が地を残そうとする心は分かる。むしろ一つの生命の種として、当然の欲望だ。
(「――けれど」)
「それは、私たちも同じこと」
いったい誰が、大切な地を、歩むべき明日を、易々と他者へ差し出すだろう。
(「壊させる訳にはいかない……いいえ」)
「私の大切なものを――奪わせなどしない」
甘い唇が凛と強い決意を紡ぐ。
怯む暇はない。必要なのは、危機を少しでも多く祓うことだ。
(「それが今の私……私たちに、できること」)
「ちか」
ドラゴン達を見据えていた祇伐が、傍らを見遣る。呼んだ名前に、並び立っていた紫空・千景(夜明の導べ・g01765)がゆっくりと息を吐く。
「いきましょう、ちか」
何処となく、心ここに非ずな風であった千景の眼が、祇伐へゆっくりと焦点を結ぶ。
「惑いの先に、己が歩んだ路が正道となるの」
千景の裡に凝った靄を、祇伐の言の葉が払拭する。戒めから解かれる心地に、千景はこくりと喉を鳴らす。
「噫、此れ以上は奪わせない」
幻想竜域キングアーサー生まれの千景は、以前から違和感を覚えていた。
心を奪われるほどの龍への怒り。それを始めとした、徐々にゆらぎはじめた千景の記憶。
見通せぬ何かに、千景の芯はざわめいている。
(「故郷を取り戻せば、何もかも晴れるのだろうか」)
全ては未だ明らかにならざる事だ。だが空虚が埋まる可能性はゼロではない。だとするならば――。
「しき、手伝ってくれ」
「ええ、もちろんよ」
美しい夜明け空の瞳に自分の姿を見つけ、祇伐は一も二もなく咲む。
背を、隣を、預け合う覚悟は出来ている。否、二人だからこそ分かち合える。
「取り戻しましょう。私も、取り戻すから」
「そうだな」
祇伐と千景、二人揃って前を向く。そうして阿吽の呼吸で踏み出す最初の一歩は、空を渡る清風のようでありながら、夜闇をつんざく稲妻のようでもあった。
星鏤む鞘から、千景は己が瞳と同じ色の刃を抜く。途端、暁の銘を持つ妖刀は、ジョーカー《切り札》の剣気纏う。
踏み込みは速い。が、そのまま斬り入ることなく千景は柔らかく口遊む。
「──うたい、揺蕩い、咲いて、沈んで──」
千景の唄に応え、ふわりと花鱗が浮きあがる。それは祇伐より贈られたものだ。
(「願いを叶える四季の祝」)
胸に宿した春に、千景の表情が研ぎ澄まされ、呼応した花鱗が艶めく花弁と転じ、暁に添う。
あとはもう、一息に踏み込むだけだ。
疾風と化した千景が、一体の魂無き竜の間合いへ跳び込む。見上げる巨体だが、的が大きいと思えばどうということもない。
斬。
振り切った刃から放たれた衝撃波が、鋭利な桜吹雪を連れて飛ぶ。
直後、操られるだけの竜の口から苦悶の咆哮が上がる。斬り裂かれた片足は、胴から別たれる間際だ――しかし。
「さすがに一撃では堕ちないか」
背後へ跳び退り、千景は竜との距離を稼ぐ。獲物を逃がさんとする巨大な爪は執拗だ。とは言え、これは千景にとって不測の事態ではない。
「――矢張り重いな」
暁を軸に展開した結界で、千景は死竜の爪を凌ぐ。僅かでも気を抜けば、圧し潰されかねないが、ドラゴン達の覚悟たる一撃だ。容易くいなせなくて当然である。
刹那の鍔迫り合いに、千景の額に汗が浮く。なれど千景は、自分が押し負けないことを知っていた。
「ちか、あと一歩だけ下がってください」
(「そら、しきの夏が降る」)
聞えた聲に、千景は渾身を振り絞り、求められただけを退く。そこへ大風が吹いた。
「──謳え、うたえ、鳴神よ」
身を低くした千景に影響はない。が、巨体であるが故に、ドラゴンは風の煽りを受けてバランスを崩す。
それは魔力で吹かせた、ただの風だ。何かを傷付ける威力は無い。けれど生じた隙は、絶対の好機と化す。
「夏を灯して慈雨となれ」
おいで、と祇伐は生命を恵み懐く灼熱の夏を喚ぶ。
宝寿が匿う蕾が花開き、余花を伴に夏燕が飛び上がる。風薫る朱夏の化身の燕だ。
羽ばたきが鳴神の嵐を形作る。深く傷付いたドラゴンに、遍く全てを穿ち碎く苛烈な夏を躱す術はない。
(「……酷い声」)
既に幾度も朱夏を招いた祇伐は、息も絶え絶えな死竜の嘆きに耳を塞ぐ。
身を包む咲麗の蠱惑が幾らか威力を減衰してくれているが、そう何度も聞けるものではない。
「ちか」
飛び出した千景が、ドラゴンの首を堕とす。溢れた冷たい血で、千景は全身を濡れそぼっている。
「深追いは危険です」
それでも尚、新たな竜を仕留め征かんとする千景を、祇伐は柔く引き止めた。
ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつと屠るにつれ、千景の眼に翳りが生じているのを祇伐はきちんと気付いている。
霞む記憶にもどかしさを感じているのだろう――理解るから、祇伐の心も痛む。そしてその優しさが、千景を祇伐の傍らに留める。
「……解っているよ、しき。今じゃないのは」
千景の裡に、急く想いがあるのは真実だ。斬り伏せても、斬り伏せても、視得なかった。
刻、未だ至らず。望む、臨む戦場は、此処に非ず。
「――必ず、返して貰う」
紫鴉の髪揺らして後退しながら、数多を含んだ決意を花唇に乗せ、千景は黎明の眼差しで竜たちを悉く射貫く。
「そうよ、今はまだ刃を研いでおくべきところ」
届いた手をつかまえ、繋ぎ、祇伐は千景へ微笑む。
「ちか」
決して離さないと心に決めて、祇伐は暁の名を呼んだ。
「しき」
頷く千景も、桜の名を呼び返す。
指と手の平で交わす優しいぬくもりは、千景に確証をもたらすものだ。
(「何時も共に此の地へ赴いてくれたしきが居れば――私は、屹度」)
末は定まらぬ。
なれどおそらく、そう遠くない未来に、祇伐は千景の冴え冴えとした貌を視るだろう。
否、視る為にこそ、春と夏を従えし乙女らは戦場を征く。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
三苫・麻緒
キャメロットの戦いに参戦できなかったこと、同胞を失ったこと、まぁそれなりの感情の感情を抱いているとは思うよ
とはいえ、こっちも新宿島狙いなんて逆鱗を踏まれて黙っていられるわけないんだよね
本人…本竜?相手じゃないけど、どっちの感情の方が強烈か、比べてみようか
突出を避けたり攻撃対象を合わせたりするために、他の仲間の位置や動きは常に意識しておくよ
退路を塞ごうとする死竜と、確実に数を減らすために弱った死竜を優先に狙って攻撃
≪高速詠唱≫で攻撃と攻撃の間は極力短縮して、短期決戦のつもりでいこうかな
前哨戦とはいえ、出し惜しみはできそうにないからね
敵の反撃は部位を巨大化させている分大振りになっていそう
ある程度の怪我は気合と加護の力で我慢だけど、直撃は貰わないよう細かく動き回るようにしたいかな
撤退の為の体力計算等で安全マージンを多めにとるとして、勢力削りに使える体力や魔力が少なくなったら撤退するよ
他の人が撤退し始めたときも撤退優先
立ち塞がる・追いすがる敵には牽制の意味で一発入れることを視野に入れておくね
クーガ・ゾハル
そこにだれも、いなくても
いい思い出、ばかりじゃなくても
――コキョウがうばわれること
それは、さびしいって、よくわかった
かえりたいヒトたち
新宿島で、まってるヒト
だれも、おまえたちには、ふれさせない
おまえもいちど、おわったやつなのか
おれの友達にも、いちどおわったやつがいる
……あいつが、おまえみたいに
ヒトを苦しませるために、働かされていたら、イヤだな
すごくでかいドラゴンだ
はねも、ツメも、キバも
ディアボロスたちが、みんな小さくみえるくらい
だけど、おれも、おれのツメでむかえうってやる
群れには入りこみすぎず
ねらいは、仲間のでかい攻撃で
一瞬ひるんだり、あわてたやつ、よそ見してるやつ
またはケガした仲間を、ねらうやつへのカウンターとして
<貫通撃>のせた【穿葬】でうちぬく
おまえの王サマに、ちゃんと言っておいてくれ
やさしくない王サマなんて、はやくイスからおりろって
でかい反撃は、急所だけはさけるよう軌跡を<看破>
おくれず、退けるだけのチカラがのこせるように
撤退は、必要なら<怪力無双>で仲間を支えて
足並みをそろえる
日金・陽洋
新宿島を直接狙いに来るか
結界はあっても、新宿島を、島の皆を狙う奴等を放ってはおけない
敵の戦力を落とす戦い、参加させてもらう
地形や竜達の中を抜け撹乱しつつ隼翼迅風使用
確実に減らせるように、撹乱する中で隙のあるもの、弱ったものがいれば優先して撃破を狙う
敵は多い…【飛翔】は使うなら原則低空で
ただし、敵を引き付け隙を作る等、仲間との連携において有用であれば積極的に活用
他の効果も適時有効活用
仲間とは周囲の状況もよく観察し適時追撃や回避等連携
仲間が囲まれ狙われた場合など、場合によっては捨て身の攻撃で危機打開の隙を作る等立ち回る
できるだけ敵は倒すが…今はまだ奪還戦ではない
こちらの戦力も維持しなくてはな
敵をある程度減らし、こちらが消耗しきる前に仲間と声を掛け合い撤退
有効ならパラドクスと風・砂で砂嵐を起こして竜達に叩きつける
竜達の視界を多少削ぐくらいにはなるかね
てめえらも死んだ上でまた使われるとは酷なもんだな
…とは言え、同情も手加減もしないが
親玉に伝えろ、新宿島を狙うなら次は容赦しない、とな
アドリブ歓迎
霧崎・和月
彼らは彼らなりの想いや正義があり戦っている
その全てを否定するわけではないが…
俺の、俺たちの目的と衝突する以上
容赦はしない
共に戦うディアボロスとの連携を意識
基本方針は各個撃破で数を減らすこと
味方の戦闘方針が有効と判断できればそれに従う
死してなお戦う竜
その物語の幕を下ろそう
氷雪を舞わせ、創るは柩
戦いが始まれば表情は無く
ただ死竜を屠るのみ
弱る敵を優先攻撃
寂滅の氷柩を放ち、一撃離脱や残像で
攻撃の回避や軽減が出来ないかを試みる
観察、看破で戦況や敵の動きを把握し
孤立や意図せず味方へ攻撃を誘導してしまわぬよう注意
気づくことは味方へ共有
味方から共有があれば行動に反映
無理のある行動はしない
必要があれば飛翔も活用
撤退は自身が一撃で沈む可能性がある場合
或いは、味方の大多数の撤退のタイミングに合わせて
敵増援かつ劣勢時は撤退の提案を
自身に余裕があれば殿や撤退支援に務めよう
その際は一撃離脱、撹乱を駆使して
舞う氷雪や光は、目眩しに使えるだろうか
…この戦いは始まったばかり
決着は、またいずれ
オズワルド・ヴァレンティ
魂無く操られて戦う死竜の大群…
幻想竜域の終焉まで彼等は動き続けるだろうか
厄介な勢力は大いに削ってしまうに限る
僕に出来ることを全うしよう
導のように煌めく星の鉱石と共に
戦場を共にする仲間のディアボロス達とも
信を置いて全力で挑むように
戦況全体の把握に務めて
標的をひとつの部隊に絞り、
敵の残数や動きなどの情報を共有
声掛け等で仲間との連携を図り
孤立と死角を防ぐよう立ち回る
体力の低い敵兵から攻撃の手を集中
各個撃破を心掛ける
移動は【飛翔】によって高度と速度を保ち
攻撃手段は紅星による遠距離からの熱線、
自身は*空中戦と携えた剣での防衛に徹し
掴みの反撃を極力回避を試みる
可能な限り敵の数を減らせれば
頃合いを見ての撤退
目安は同部隊を相手にする仲間の内1名以上の
自力な撤退行動の不能者が発生したタイミング、
もしくは其れより安全面を考慮した
提案があれば其方を遵守する
自身が条件に当て嵌まらなければ
撤退不能者の補佐か
余力がある判断時には殿を務める
連携・アドリブ歓迎
陽光の乏しい黒雲の中を、銀色の尾を引く箒星が中天を目指し翔ける。
否、星ではない。褐色の肌を持つ男だ。なびく銀は、無造作に束ねられた長い髪。
「風が来る、気をつけな」
高く、高く、高く。
風と砂を纏った日金・陽洋(陽光・g05072)は、『死に戻り』という意味では同類になるドラゴン達の合間を縫って飛ぶ。
ただし死せる竜たちは使命に操られるのみであり、対する陽洋に関しては言うまでもない。
一群を抜けたところで、空が晴れる。清々しさに、感情の出にくい顏にもうっすらと笑みが浮かぶ。
(「さて、と」)
ちらと後背を振り返り、陽洋は引き連れる砂の竜巻を俯瞰する。捕らえた黒きドラゴンの数は三だ。いずれも牙を剥いて陽洋を追随している。
陽動としては上々だ。個の戦場であれば決して採らない無謀だが、信頼に足る同胞が居るなら話は変わる。
(「新宿島を直接狙いに来る、か」)
意識的に速度を落としながら、陽洋はドラゴン達の思惑に口許を歪めた。
守りの結界があろうとも、新宿島を――そこに住まう皆々を危険に晒そうという輩を、野放しに出来るわけがない。
「お前達も、それなりの覚悟をしてるんだろう?」
見る間に距離を詰めた死せる竜がひときわ大きく羽搏き、陽洋の頭上を取る。獲物を掴み、地へ叩きつけようとしているのだ。
追われる格好になった陽洋は、右へ左へと不規則な軌跡を描く。が、ひとつの爪がついに陽洋を掠める。
勝利を確信したドラゴンが咆哮を上げた――されど、冷たい鬼火色の眼はすぐに誤算に気付く。
「キャメロットの戦いに参戦できなかったこと、同胞を失ったこと、まぁそれなりの感情の感情を抱いているとは思うよ」
地上から、雷も斯くやの勢いでミントグリーンの風が吹き上がる。初夏の頃を思わす、爽やかな色味だ。
「とはいえ、こっちも新宿島狙いなんて逆鱗を踏まれて、黙っていられるわけないんだよね」
この時、ドラゴンにも人と同じ感覚があったならば、背筋に走る怖気に全身を戦慄かせていただろう。事実、陽洋を掴んでいた爪が、加速の勢いを失する。
「本人……本竜? 相手じゃないけど、どっちの感情の方が強烈か、比べてみようか」
重力に身を任せ自由を取り戻した陽洋は、空で交錯した三苫・麻緒(ミント☆ソウル・g01206)が目もあやな色彩の魔力翼を大きく展開するのを見た。
口振りは年頃の少女のものなのに、麻緒の振る舞いは歴戦の猛者のそれ。
ドラゴンたちを抱きとめる蜘蛛の巣のように広がった翼に、魔力が集約する。危険を察知した死竜が二体、回避を試みるが、麻緒が放つのは認識した敵をどこまでも追う魔弾だ。
そして麻緒は、撃つと同時にドラゴン達の懐を目掛け飛ぶ。
攻撃に反撃はつきものだ。魔弾を被ったドラゴンは、牙を、爪を巨大化させるだろう。ならば至近距離で躱す方が、ドラゴン達の動揺は大きい。
思い切りのよい戦いぶりに陽洋が瞠目すると、怖れを忘れた麻緒の笑顔が返る。
「前哨戦とはいえ、出し惜しみは出来そうにないからね。短期決戦のつもりだよ!」
目論見通りドラゴンの攻撃をすり抜けた麻緒は、快活な声を響かせながら、大気のうねりに身を任せた。
ともすれば、コントロールを失ったようにも見える。けれど麻緒は、続く復讐者の一撃を読んだだけ。
不意に周囲の空気がしんと冷える。
「此れは異界への道標」
季節を冬へと塗り換えるのは、霧崎・和月(彷徨う器・g06070)だ。
(「彼らは彼らなりの想いや正義があり戦っている」)
地上に在りて空を見上げ、和月は白銀の長杖を手に魔力を練り上げる。
(「その全てを否定するわけではないが……」)
ひら、と。氷の花が舞う。始めは儚げだが、一体を白くけぶらせるまでは瞬く間だ。
(「俺の、俺たちの目的と衝突する以上――容赦はしない」)
「死してなお戦う竜よ。その物語に今、幕を下ろそう」
詠う音色で言い放ち、和月は雪景を柩へ創り換える。収める骸は当然、魂無き竜たちだ。
唐突に冷え固まりゆく四肢に、立て続けに陽洋と麻緒の攻撃を喰らったドラゴンが苦痛を呻く。
しかし弱々しい抵抗では、寂滅の戒めを解くことは叶わない。何より彼らは死竜だ。柩に眠る終焉こそ相応しい。
斯くて二体のドラゴンが氷柩に潰えた。そう、二体。無論、どのディアボロスも陽洋が引き付けた最後の竜の存在を忘れてはいない。
「お待たせしました」
自由落下する同胞の骸の影から躍り出る一体を、和月はアイスブルーの眼差しで見据え、静かに身を引く。
「ああ」
代わり、直線状に敵を待ち受けるのに絶好の位置へオズワルド・ヴァレンティ(砂塵の・g06743)が進み出た。
翡翠の双眸に、オズワルドは狙いを定める死竜のみならず、叢雲の如く空を舞う魂無きドラゴンたちを観る。
(「幻想竜域の終焉まで彼等は動き続けるだろうか」)
相容れぬからには、憐れむつもりはない。オズワルドの胸に在るのは、気を挫きようのない敵に対する厄介さだ。
生命の本能を失した彼らは、与えられた使命にのみ忠実で、最期までひたすらに足掻くだろう。
(「ならば、ここで削れるだけ削る――僕はただ、僕に出来ることを全うしよう」)
竜族の血の顕れである、白骨めく尾でオズワルドは地を穿つ。
高めゆく魔力の末は、威力に秀でた一撃だ。それなりに反動は大きい。
(「ここで仕留める」)
徐々に影を大きくする竜は、先んじた復讐者の名残と、陽洋の砂嵐を既に浴びている。勝算は十二分だ。
師たる魔法使いの偉大さに恥じぬよう、オズワルドは収束させる魔力で大十二面体の鉱石を生成する。
其は紅き星。煌めきは、導が如く。
「――射抜け、」
溜め込まれた膨大なエネルギーが、一条の光と化す。眩い真白は、鋼も容易に溶かす高温ゆえだ。
(「光あれ」)
オズワルドは短く、祈りに似た句を胸中に落とす。
光は闇を暴くものであり、世界を灼くものだ。真芯を捕らわれた枯れた命の成れの果てに、耐え抜けようはずもない。
断末魔さえ残せなかった死竜は、柩での安らかな眠りさえ赦されず、穿たれた部位より溶けるようにして地に潰えた。
太陽を目指して隼が飛ぶ。連れる風はミントグリーンだ。颯爽とした二色に、ひしめく黒雲が割れる。
ドラゴン達とて、ディアボロスの好きにばかりはさせていない。牙で食らいつき、爪を伸ばす。時おり爆ぜる地面では、誰かが骨を軋ませている。
肌をひりつかせる戦況は、双方の陣営にとって同じことだ。
けれど一人、クーガ・ゾハル(墓守・g05079)の耳には喧騒が遠い。
(「――コキョウがうばわれること。それは、さびしい、こと」)
幼げな口調と同様――長く、言葉を鎖されていたせいだ――の、たどたどしさで思い巡らせながら、クーガは琥珀色の目に世界を映す。
例え、住まう人が皆無になろうとも。良い思い出ばかりではなかったとしても。それでも故郷というものは特別だ。
理不尽な蹂躙は腹立たしいし、奪われることは寂しい――そのことを、クーガも理解るようになった。
(「かえりたいヒトたち」)
(「新宿島で、まってるヒト」)
「だれも、おまえたちには、ふれさせない」
ざあ、と掠めるように迸った熱線を追って、クーガは刹那の微睡みを捨て去って走り出す。
「今だ」
「だいじょうぶ、だ」
熱線の主であるオズワルドの平らな気迫に、クーガは長身の背中で応える。
狩るべきドラゴンを間合いに捉えるまで、距離は僅かもない。そしてオズワルドの強撃に撃ち抜かれたドラゴンに、クーガの接敵までに態勢を整え直す余裕はない。
幽玄な灯りを点す目が、クーガを見た。クーガもまた、魂無き竜を見る。
「おまえもいちど、おわったやつなのか」
洞だった右の眸を埋める光学素子が、クーガの内側でチカチカと瞬く。刺激された神経が、友の顏を呼び起こす。
(「……あいつが、おまえみたいに」)
友もまた、死竜らと同じく、終わりを一度経験している。
(「ヒトを苦しませるために、働かされていたら……」)
想像を重ねた途端、クーガの胸はムカムカした。これは、嫌、という感情だ。
(「うん……イヤだ。ぜったいに、イヤだな」)
間近に拝むドラゴンの巨躯には、それなりに長身のクーガであっても畏れを感じる。だがクーガは微塵も怯まない。
(「おれのツメで、おまえをたおす」)
「貫け」
CODE――角化、穿孔。
機械化された生体回路を通じ、クーガは繰り出す右腕を一筋の槍と化す。
帯びた熾色は、超高温の証だ。つまり、オズワルドの熱線と相性が良い。
「――終われ」
灼かれてたわんだ肉へ、クーガは更なる熱を与える。尖鋭な切っ先は、一切の抵抗を受けずに沈み込み、周囲の一切を焦がす間もなく蒸発させながら終点へ辿り着く。
地響きを立てて、二度目の死に黙した死竜が土煙に沈む。
局地的に上昇した気温に、クーガの首筋を汗が伝った。それを静めるかのように、和月の氷雪が一帯にひらりと舞う。
「次が来ますよ」
和月が指差す先では、群れから二体のドラゴンが引き離されている。陽洋と麻緒の陽動は、よく機能していた。
「ああ、わかった」
迎撃態勢に入るクーガに合わせ、和月は氷の柩を編み上げる。これでまた一体は仕留められるだろう。残りの一体は、先にオズワルドの熱線が墜とすはずだ。
倒した竜の数を唱えるのを、和月は途中で止めている。
(「なかなかの戦果といえるのではないでしょうか」)
空っぽのディアボロスとして覚醒してはいても、失われなかった知識から和月は経過を正しく読む。
同時に、そろそろ頃合いか、とも思い始める。
経験は力だ。如何にして同胞が斃されたのかを、魂無き竜たちも学習するに違いない――正しくは、目的を遂行せんとする盲目さが引き出す、戦闘本能の顕れかもしれないが。
和月が抱いた懸念は、オズワルドも同じであった。
「退き時が近いな」
長い射程を保つべく、空へ立ち位置を移していたオズワルドの足が地面を踏む。
討止めたばかりの死竜が重力に引かれる向こうの空隙が、オズワルドはやけに気になった。
そして二人の違和を裏付けるよう、麻緒が高みから一気に降り下りてくる。
「挑発が通じにくくなってるよ。多分、あと二回くらいで限界だと思う」
あくまで麻緒は朗らかに言うが、より近くで死竜たちと接した彼女の推察は、何よりも重い。
「じゃあ、もう一飛びしてくるよ!」
軽やかに舞い征く麻緒を見送った和月は、こちらも疾うに発動の回数を追うのを止めた氷柩を空に構築する。
(「舞う氷雪や光は、目眩しに使えるだろうか」)
思考の大半はもう撤退の筋道を講じることへ注がれている。
戦いはまだ始まったばかりだ。決着をつけるのは、此処ではない――。
「てめえらも死んだ上でまた使われるとは、災難だったな」
体当たりを仕掛けた巨躯が、勢いに負けて落ちてゆくのを見送りながら、陽洋は死竜たちを憐れむ。
とはいえ、同情はしない。手加減も一切なしだ。
だから砂嵐に巻き損ねた一団が退くのを追わないのも、ただの戦略である。
退き時だという合図は、空へも仲間から届いていた。陽洋も潮時なのを体感している。
「親玉に伝えろ、新宿島を狙うなら次は容赦しない、とな!」
陽洋が空へ放った舌鋒は、事実上の宣戦布告だ。
そして落ちて来た竜を討ち抜いたクーガも声を風に乗せる。
「そうだ。おまえたちの王サマに、ちゃんと言っておいてくれ――やさしくない王サマなんて、はやくイスからおりろって」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】がLV5になった!
【怪力無双】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
【グロリアス】がLV2になった!
【能力値アップ】LV1が発生!
ラヴィデ・ローズ
一番の使命は術者を守ることと考えれば、持ち場を大きく離れるとも思えない
敵中へは深入りせず、やや後退しつつ戦い少数ずつ誘い叩くを繰り返すイメージでいよう
同じ敵を狙えば早く頭数を減らせるし
連携で数の利を覆していきたい
パラドクスは『レゼル』にて
急所は武器で庇う構えを
巨大な爪や牙に『Sweetie』の結界(術)は
儚く散らされるだろうけれど
ドラゴンが、キミたちだけだと思った?
逃げも惑いもせず精神を攻撃/反撃に集中
至近で喰らい返してしまえ
その落ち窪んだ眼窩じゃ
王の輝かしい夢が叶ったところで、見えないだろうにね
捻じ曲げられた都合のいい駒
彼らのような存在を生み出す争いが
本当のところ、大嫌いだ
荒野に花が赤が散る
怨んで、怨まれて、繰り返しているだけのような
この戦いの果てに夢見た景色があるのか
今も未だ、分からないけれど
行く末をこの目で見届ける為
長居は無用ってね
まだ戦える、程度余力を残し仲間とタイミングを合わせ撤収
道を阻む敵がいれば狙いを合わせ一点突破を
他、敵に絡まれ逃げ遅れが出そうであれば
パラドクスを打ち支援
否が応でも目が覚める強烈な斬圧に、魂までも酔わす甘香が儚く散る。
だが生まれた僅かなタイムラグだけでラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)には十分だ。
蠱惑的な芳しさで世界と世界を隔てた黒薔薇からは、数枚の花弁が引き剥がされている。そのハラハラと舞う黒の向こうに、ラヴィデは死せる竜を見極めた。
迫り来る爪がほとんどを占める視界の端に、剃刀で切られたような傷がある。繰り出す腕の上部に刻まれたそれからは、風と砂の残り香があった。
「ドラゴンが、キミたちだけだと思った?」
身を屈めながら、ラヴィデは先が刷毛のようになった尻尾を撓らせる。
額に強く来た衝撃は、自身の角がドラゴンの爪を掠めたせいだ。もしかしたら少し欠けたかもしれない。だがお構いなしにラヴィデは尾の反動で体躯を横滑りさせた。
ギギギ、と耳障りな甲高い音が響く。角の先端が巨大な爪を引っ掻いたらしい。
この事象が意味するのは、ラヴィデが敵渾身の一撃から逃げ果せたということだ。が、死竜が事実を認識するより早く、極限まで意識を研ぎ澄ませたラヴィデは、ドラゴンの腕に組み突いていた。
「散らされた分、咲かせてあげるよ」
余裕を口許で嘯いたラヴィデは、眼下の傷跡を見定める。真新しいそれは、鮮やかな切り口に相応しい深さがあった。
「レゼル」
呼んだ名に、ラヴィデが今まさに降り下ろさんとしていた長剣がどろりと鎔ける。直後、覚醒した大喰らいは、飢えた獣そのままに紫の竜眼をギラつかせた。
「お別れらしい」
勝手に暴れたがる呪われし武具の食欲を、細心の注意でラヴィデは狙いと決めた傷へと向かわせる。
外側からより、内側から喰い破らせる方が効率は良い。咬傷に燃ゆる病毒の薔薇を拝めないのは残念だが、結果としては十分だ。
嗤う竜の影の中に頽れてゆく魂無き竜の絶命を、ラヴィデは確かめない。代わりに空を仰ぐ。
数多のドラゴンがひしめいていて、見通しは悪い。しかしそこに新宿島を害そうとする魔法陣はあるはずだ。
(「術者であるユーウェインが動くとは思えないし。彼を守るドラゴン達も持ち場を大きく離れることはないだろうね」)
よく磨かれた鏡のようなラヴィデの双眸に映るのは、この前哨戦の行く末だ。
打って出る気のない大軍と、数を減らしたい尖兵と。これらが対した時点で、採れる戦術は絞られるし、終わりは二つに一つしかない。
堪忍袋の緒が切れた大軍に尖兵たちが殲滅されるか、程よい戦果で尖兵たちが退き下がるか、だ。
本懐を果たす大戦を控えたディアボロス達の選択は、当然、後者である。
「それにしても、随分と戦いやすくてありがたいよ」
陽動を担う同胞の動きが頗る良いお陰で、ラヴィデとしては随分と動きやすい。
けれど爽快な手応えに、ラヴィデの心は反比例する。
(「――分からない」)
はぐれ竜へ自ら間合いを詰めて、ラヴィデはレゼルを振り上げた。
「その落ち窪んだ眼窩じゃ、王の輝かしい夢が叶ったところで、見えないだろうにね」
速さを活かした剣戟に、死竜の頭が割れる。飛沫く血に温みがあるかないかを考える前に、ラヴィデはレゼルに牙を剥かせ、喰らわせ、薔薇を咲かす。
遺るのは、首なしの骸だ。
(「彼らもまた、捻じ曲げられた都合のいい駒」)
荒野に残るのは、散らされた花ばかり。
怨んで、怨まれて、その繰り返し。
こんなものの果てに、本当に夢見た景色があるのだろうか。
(「分からない……でも」)
「オレは、キミらみたいな存在を生み出す争いが本当のところ――大嫌いだ」
「うん、頃合いだね」
空に咲いた撤収を報せる氷の花に、ラヴィデもまた身を翻す。目的は既に十分に果たした。
「長居は無用ってね」
分からない事は、分からないままだ。
だが、分からないことを分からないままにせぬ為に――行く末を己が目で見届ける為に、ラヴィデはディアボロスとして今日を生き抜き、明日にのぞむ。
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