リプレイ
嵐柴・暁翔
TOKYOエゼキエル戦争では大天使とアークデーモンはある程度対立している部分もあったみたいだけど、ここでは協力体制を築けているんだな
まあ神話ですら人間を堕落させる悪い存在とされている悪魔を全知全能の筈の神が滅ぼさないんだし、天使と悪魔のマッチポンプで信仰心を集めるなんてのは遥か昔からのお約束ではあるか…
《幻想舞踏》を発動して村人達の目がある状況で純潔のチャスティリに攻撃を仕掛けます
村人達を傷付けたくないという意味ではお互いに利害が一致しているし、人質にされる危険もないだろう
村人達が自分から盾になろうとされるのだけは問題だけど、いざとなれば【防衛ライン】を活用するとするさ
讐倣玉人達との戦いでは『青龍偃月刀』を頭上で旋回させたり派手に見栄を切ったりと大立ち回りを演じます
もっとも、そんな余計な事を考えるまでもなく関羽の技は充分過ぎる程豪快で印象的だったけどな
緋詠・琥兎
逃げた先で信仰と畏怖のマッチポンプをしているとはな
しかも、その一端をアレらが担っていると来た
三文劇に付き合う道理はない
容赦なく壊させてもらうぞ
姿を現す前に紫走の捕食を使用
紫電の獣たちを数匹、自分の元に残し
それ以外は純潔のチャスティリに向けて上空から紫電の獣らを落雷のように見せかけてけしかけよう
讐倣玉人らが庇った時には
そいつらを紫電の獣で喰らおう
天使と嘯く奴の本性見たりってか
多くの村人達に聞こえるように声を張りながら
自分の翼(全長、約165㎝)を広げた状態で
紫電の獣を纏わせた狙銃槍を構えた状態で姿を現そう
燈杜美は自分の傍で讃美歌の演奏を頼む
(浄化・祈り・風使い・アート・歌唱・呼吸法など
自分は燈杜美を常に庇いつつ
顔色変えずに讐倣玉人の対処だ
(忍耐力・時間稼ぎ・情報収集・観察・看破・計略など
閃光をしてくるなら
こちらも見えない障壁を張るだけだ
(結界術・光使い・全力魔法など
迫り来る攻撃を薙ぎ払いながら
臨機応変に槍モードの狙銃槍で対応していこう
(衝撃波・吹き飛ばし・フェイントなど
アドリブ
連携歓迎
マリアラーラ・シルヴァ
天使様の企みは完遂間近みたい
これはむやみに天使様を攻撃するとマリア達の第一印象が悪くなって
村人達が演説を聞いてくれなくなるかもだから
マッチポンプに対抗するよう演出たっぷりに立ち回るよ
服を剥ぎとられた村人達に毛布をかけつつ
「巻き込まれないよう少し下がっててね」って微笑んで
貴方達の味方だよアピールしたり
「天使様ごめんなさい!」って傍目には痛くなさそうな
こちょこちょパラドクスを天使様に仕掛け
傷つけず取り抑えようと演出したり
こぶつきベーダを割り込ませて来たら
「天使様!?どうしてっ!?」って酷く狼狽する演技しちゃうね
そんな風に村人達から新しいデーモンの仲間ではなく
何か事情がある人達なのかもって思って貰えるよう振舞いに注意するの
逆にこぶつきベーダが繰り出してくる鋭い矛や閃光は
こちょこちょで捻じ曲げながら懐に飛び込む達人的な動きで
格の違いを魅せつける材料にするし
【怪力無双】でマリアみたいな子どもに押さえつけられ
足の裏こちょこちょで屈服させられたら
もうベーダは畏怖どころか痛ましい存在に成り下がると思うの
セシリー・アーヴェンディル
【アドリブ/連携歓迎】
如何わしい淫魔と言っている事は真逆だが、マッチポンプとは悪辣だな。
いち聖職者としては、それを信仰と呼ぶとは酷く侮辱された気分だ。
その化けの皮を中身ごと両断してやろう。
マッチポンプの現場、チャスティリが降臨したところで
後ろから【光の剣戟】の不意打ちで放ち乱入しよう。
讐倣玉人が庇うだろうが、それは想定通りだ。
なぜ悪魔が天使を庇う? 聖言で悔い改めたとでも言うつもりか?
敵の刃など小雨に等しいと、怯まず悪魔と苛烈に戦う姿を見せよう。
大天使とやらは悪魔と戦わないのか? 護る事は当然の行為と言っていただろう。
チャスティリに我々と悪魔を滅するか、悪魔との繋がりを露呈させる選ばせる。
眩しい閃光の後、私に鋭い攻撃がいくつも刻まれるだろう。
だが、倒れることなく剣を振るう。
チャスティリがどちらをえらぼうとも、お前達はここで滅っされる。
まさしく繋がりは断たれたという事だ。
●『ユーワーキー』って知ってるかい? 見た目は天使、中身は悪魔って代物さ
「……天使様、いつもいつも、ありがとうございます」
「天使様、どうかお納めください」
フォワ・サントテは籠を捧げた。
しかし、大天使チャスティリは、浮遊していたところをいきなり舞い上がった。
「……ちっ!」
そして、『光の剣戟』の刃が通り過ぎ、
その後ろには、剣を振り下ろしているシスターの姿があった。
「……後ろから切り付けても、避けられるとは、な」
が、すぐにそのシスターは、剣……十字架のような剣を構え直す。
『……何者です。その服装、見たところは聖職者……シスターのようですね。ややハレンチな装いですが』
などと言いつつ、チャスティリは振り返り、シスターを睨みつけた。
「は、ハレンチ……私はセシリー・アーヴェンディル(ルクスリア・g02681)、お前の言う通り……シスターだ」
「シスター様? なぜです、なぜ教会にお勤めになるシスター様が、天使様を……」
フォワの疑問とともに、
「乱心したか?」「あのデーモンに誘惑されたのか?」「だからあんな格好なんだな」
村人たちが、騒ぎ始めた。
「……くっ」
『まずい』と、セシリーは思った。
実に『まずい』。
どうやら、このチャスティリとやらは……予想以上に、村人たちの心を射止めてしまっている。
セシリーは一人の聖職者として、村人たちの『信仰』を知りたいと、最初に仕掛けてみたのだが……、
その結果、知ってしまった。以前からの信仰が、『歪められ、利用されている』という事を。まずい、実にまずい。
セシリーは焦燥にかられつつ、剣を、十字聖剣ルクスリアを構え直した。
構えつつ、
「……来るか!」
飛び出した、二人の姿を認めた。
「……はーっ!」
一人は、青龍偃月刀で切りかかる青年。彼のその動きもまた、剛将なる存在そのもののように……力強い。
『?!』
彼の動きに、チャスティリは回避する。さらに、振って来た落雷すらもとっさに躱していた。
「ちっ、思ったより素早いな」
長柄の青龍刀を構える彼は、嵐柴・暁翔(ニュートラルヒーロー・g00931)。
そして、その様子を。フォワと、フォワの隣にいる彼女の友人、カイユ・ボワは、戸惑いつつも見ていた。
カイユは先刻に、アークデーモンに襲われ、服を切り裂かれていた。
「な、なぜ……私を助けて下さった天使様を、なぜ襲うのよ!」
いきり立つ彼女に、
「……ねえお姉さん、巻き込まれないよう、少し下がっててね?」
もう一人、小さな少女が、マリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)が、毛布を肩にかけていた。
「え? あ、あなたは……?」
カイユ、それにフォワ。二人の女性を尻目に、チャスティリに向かうマリアラーラは、
「……天使様、ちょっと、ごめんなさいっ!」
と、手をかざした。
『……ひゃあああっ!?』
途端にチャスティリは、未知の感覚に悶える。
『……少女よ、これは、お前の悪戯ですか?』
だがすぐに耐え、凄味とともに問いかける天使。
「あのっ、天使様っ。マリアね、天使様とちょっと……」
『多少の戯れならば、大目に見ましょう。ですが……今はこのシスターと異教徒を折檻しなくてはなりません、なので……あふうっ! あひぃっ!』
(「……効いてるのね、『こちょこちょアタック(アルティメットフィンガー)』が!」)
マリアラーラの、ある意味究極にして必殺のパラドクス。
その効果は、『対象の弱点』……というか、弱いところを看破し、こちょこちょとくすぐる。これは相手の防御力は関係なく、臨機応変に無効化してしまう。大地に用いれば、地軸が歪むほどの威力を有するが……今は、大天使をくすぐる事に用いている。
とはいえ、チャスティリには弱点らしい弱点は無く……全身の感度も、正直『鈍かった』が。だが、他者と交わる事は、彼女にとって未知の感覚。興奮よりも……おぞましさを感じている様子。
「おいおいどうしたよ、天使サマ。なんだか悶えてんじゃあねーか」
暁翔はそんな彼女に切りかかるも、やはり腐っても天使。ふわりふわりと舞ってそれを回避する。
セシリーの剣も、同様にかわしていた。が、
『……いいかげんに……しなさい! 来い!』
とうとう、耐えかねたのか。
チャスティリの周囲には、『そいつら』が召喚されていた。
『……おかしいですね、何故……あーしらが、戻されているのでしょうか?』
『……というか、俺たちの仕事は終わったはずだが?』
アークデーモン『讐倣玉人』もまた、戸惑っていた。
再びその場に現れた事に。
「さ、さっきのデーモンたちだ!」
「なぜ? なぜ天使様が悪魔を呼び出したの!?」
「いや、天使様でも払えなかったのか!?」
と、パニック状態になるその場。
先刻と同じく、そいつら……『讐倣玉人』の数は『五人』。
『イール! アール! お前たちはシスターと青龍刀の男を! サール、スール、ウールは、あの小娘を殺せ!』
チャスティリは声高に命じ、讐倣玉人の二名をセシリーと暁翔に、三名をマリアラーラへと向かわせた。
パニックになり、村人はその場から、村の広場からなんとか逃げようと、クモの子を散らすかのようにあちこちに逃げまどい、建物の陰へと逃げていった。
が、マリアラーラ、そして彼女の近くにいた、フォワとカイユへ、
その讐倣玉人たちは、襲い掛かる。
『なんだ、お前ら……? 邪魔するなら、消えろよ』
三名は、その身体の一部を変化させていた。少女のサールは、右腕の結晶を大型化、少年のスールは両足を、青年のウールは両手を異形のそれに変異させ、掴みかかる。
「きゃっ! 天使様、どうしてっ!?」
狼狽したように演技をするマリアラーラだったが、
「……痛っ! 二人とも、逃げてなの!」
呆然としていたフォワとカイユを庇わんとして、スールの蹴りが掠ってしまった。
『……小娘、お前は『異端』だ』
チャスティリは、決めつけるかのように言った。
「天使様がこんなことしていいの? マリアは、天使様に……」
まだ戸惑い、逃げるかどうかを迷っているフォワとカイユを庇いつつ、マリアラーラは訴えかけたが、
『黙れ……大天使の名において、お前を『異端』と判断し、これより処罰する!』
ウールの両腕が地面に打ち付けられ、小さな地震めいた揺れが。
そして、スールとサールが迫る。
「くっ……」
当初の目的……すなわち、『天使を煽り、アークデーモンを呼ばせる』。
ここまではうまくいった。そして、デーモンたちに襲わせる事もうまくいった。
だが……うまく『いきすぎた』。この天使がこんなに早く引っかかり、デーモンに攻撃させるとは予想外。そのため、自分はともかく、村人たちまでもが、危機に陥ってしまっている。
「マリアラーラ! ……くっ、離れろ!」
セシリーは、少女の讐倣玉人・イールと、両腕の結晶体を剣に変化させた個体と切り結んでいる。
「だめだ、間に合わねえ!」
暁翔もまた、優男の讐倣玉人・アールを相手にしている。こちらは両腕の結晶体を、槍状に長く伸ばしている。素早く動き、逃れる事はできそうにない。
そしてマリアラーラには、三体のデーモン、サール、スール、ウールが迫る。
やられる……と、彼女が思ったその時。
『―――荒ぶる獣 空を駆ける脚をもって……』
『獣』が、現れた。紫電を纏った、飢餓の獣が。
それは、一瞬にしてその場に現れ、
『……喰らい尽くす』
スールとサール、二体のデーモンは、強烈な電撃を浴びせられた。
「下がれ、スール! サール!」
『ひっ……!』
だが一瞬遅く、スールは、少年の姿のデーモンは巻き込まれ……、
『喰らわれた』
「……『紫走の捕食(プラズマ・プレデター)』。クロノヴェーダならば、喰らう事が出来る紫電の獣たち!」
と、同様の『獣』を数匹伴いつつ、彼女……緋詠・琥兎(その身に潜むは破滅か。それとも朧げな標か・g00542)は、姿を現していた。
その背には翼を広げ、その手に構えるは『禍津餓機・狙銃槍』。槍には、『紫電の獣』の一体を纏わせている。
その傍らには、『獣』たちとともに、オラトリオ『燈杜美』も控えている。
「……琥兎! 燈杜美! 助かったの!」
礼を述べるマリアラーラに、
「大丈夫か、マリアラーラ嬢。フォワ嬢とカイユ嬢の二人を安全な場所へ。彼らは……」
琥兎は、
「……自分が、お相手しよう」
武器の狙いを、デーモンへと向けた。
●ま、人は見た目の美醜で、善悪を勝手に判断してしまうもんさ
「て、天使様? あの方、翼が背中に……」
「し、しかし! だとしたらチャスティリ様は?」
「いったい、どっちが本物の天使様なんだ!?」
隠れている村人たちは、混乱していた。
その様子を、マリアラーラは目の当たりにする。
「ね、ねえ。お嬢ちゃん。あの人……天使、なの?」
「だ、だとしたら……なぜ、天使様同士が……」
フォワとカイユもまた、混乱とともに……目前の状況を『信じたくない』様子だった。
「……マリアは、マリアラーラっていうの。マリアたちは、ある『事情』があって、ここに来たのよ」
マリアラーラは、告げた。
「……あのデーモンを退治するために、ね」
自分たちの、目的を。
「……燈杜美、行くよ」
琥兎が自身のオラトリオに、目隠しをした妖精の様な姿の少女へと言葉をかける。
燈杜美は頷き、『演奏』をし始めた。
自身は、狙銃槍を手に、デーモンと対峙する。
向き合っているデーモン……讐倣玉人たちは、
『……よくも、うちの仲間をやってくれたね』
サールの右腕と、
『……我等が仲間を、食ったのか? ならば、食い返してやる……!』
ウールの両手。玉人の持つそれぞれの結晶体が、不気味に光っている。
「悪かったな。だが、これは戦い。悪いが容赦は、しない!」
琥兎が狙銃槍を構え、
「行け! 『紫走の捕食』!」
再び獣を差し向けた。しかし……、
『何度も同じ手を、喰らうか!』
突如として、世界が『白』に染まり、一瞬……視界が『白』の中に消えた。
サールとウールが、自身の結晶体から閃光を放ったのだ。
眩いそれは、あまりにも強烈な閃光は、琥兎のみならず、『獣』たちですらもひるませ、混乱させ、
半ば強引に、『隙』を作らせた。
瞬間、
『俺たちのことを想うなら……とっとと失せろ!』
接近してきた讐倣玉人たちが、連撃が放つ。
「……!」
なんとか槍を用い防御するも、琥兎は後方に吹っ飛ばされてしまった。だが、体勢を立て直し、再び構え直す。
隣では、燈杜美が控えていた。心配そうに顔を向けるオラトリオへ、
「……大丈夫だ。この程度、どうという事はない」
琥兎は優しく微笑み、そして、
「……失せろ? 悪いが、失せるのはお前らだ。この世界からな」
デーモンには、讐倣玉人・サールとウールには、不敵に微笑んだ。
讐倣玉人・イールは、剣状にした両腕の結晶で切り込んでくる。
セシリーはルクスリアの刃で、その結晶剣を受け止めていくが、
「正確だ、それに……隙がない!」
攻撃に転じても、中々隙を見せなかった。
「シスター様! 早くやっつけて下せえ!」
「そいつは、大天使様が今まで追い払ったやつです! シスター様!」
と、村人たちはそんな事を。
『この似非シスターめ! 地獄に落ちなさい!』
と、離れた場所から大天使が言い放つも、
「……なぜ悪魔が……天使を庇う? 聖書で悔い改めたとでもいうつもりか!?」
セシリーはシスターとして、言い返した。
「それに、なぜおまえが悪魔と戦わない!? 天使ならば、信仰の敵たる悪魔と戦うもの、信徒を護る事は当然の行為と言っていただろう!」
『そ、それは……!』
チャスティリは言いよどむ。間違いない、この天使は……かなりデーモンたちと深いところでつながっているようだ。
ならば……この目前のデーモン……讐倣玉人・イールと戦い、打ち倒し、そして……、
『私が止めをささない』事が必要だ。セシリーは考えながら、剣を振るい続けた。
「……こいつ……なかなかやるじゃあないか……っと!」
暁翔もまた、青龍偃月刀を振るい、豪快に振り回しつつ戦っていた。
が、相手のデーモン、讐倣玉人・アールは、両腕の結晶体を長く伸ばし、
両腕に単槍を構えているかのように、暁翔へと襲い掛かっていた。
二刀流ならぬ、二槍流。それは長いリーチと、剣と異なる攻撃も相まって、暁翔に攻撃させる余地を与えない。
『……どうした、人間。村人を護るんじゃあなかったのか?』
嘲るように言ってくるそいつ……アールが、突撃してきた。
突撃とともに、結晶の閃光を放ち、連弾を叩きこまんとしたが、
「……っ!」
暁翔は、それを弾き飛ばした。そのまま、片手の結晶を砕く。
『! なんだ、その動きは!』
「……『関羽雲長』! またの名を『関聖帝君』! 三国志における、伝説の英雄の動きだ!」
これぞ、『幻想舞踏(トレース)』。
動きを『模倣』する、暁翔のパラドクス。
そして今、彼は。蟲将『関羽』の動きを模倣していた。関羽自身が用いていた青龍偃月刀を、頭上で旋回させ、やや派手めに見栄を切る。
『はっ、英雄だろうがなんだろうが……我等、讐倣玉人の敵じゃあねえ!』
と、アールは伸ばした自分の結晶を、実際の槍のように構え、
突きかかった。
槍と青龍刀とがぶつかり合い、火花が散るのを暁翔は見た。
●善意の龍は醜いから殺され、美しい花は邪悪で猛毒でも受け入れちまう。
「…………」
『観察』。
琥兎は、観察していた。敵と対峙する時には、その敵を観察し、把握し、そこから勝機を見出すもの。琥兎もその例にもれない。
幸い、目前の讐倣玉人・ウールは、燈杜美の方には注視していない様子。このオラトリオの少女は、自分の側で讃美歌の演奏をしてもらっている。
が、ウールは、
『失せるのは俺たちの方だと? その大口、いつまでも叩けると思うな!』
大き目の結晶化した両手首で、琥兎に掴みかかり、殴りかかっていた。
琥兎はそれを躱し、狙銃槍で突き、薙ぎ払う。
が、その手で槍の穂先を捕まれた。しかしそのまま、槍の刃に纏わせていた『獣』から電撃を放ち……ウールにダメージを食らわせた。
『……おのれぇっ! ならば……』
刃から手を離し、いったん離れたウールは、
『……俺たちのことを想うなら………とっとと失せろ!』
と、またも同じく閃光を放つと、
接近し、連打を放った。
大型化した、両拳での連撃。それは躱し切れない強烈な攻撃として……、
「……!」
琥兎に、襲い掛かった。
右腕に結晶があり、その右腕を大型化した讐倣玉人・サール。
彼女は、マリアラーラに掴みかかっていたが、
『ひっ……な、何故だ……』
逆に掴みかかられ、地面に組み伏され、
そして、
『びゃっ、ははははっ! や、やめっ……』
『くすぐられて』いた。
「どうしたの? マリアみたいな子供に押さえつけられて、反撃もできないの?」
当然だろう、『こちょこちょアタック』の『怪力無双』の効果は、並のクロノヴェーダを寄せ付けない。
「……あ、あれが……悪魔? カイユ、あなた……あんなのに襲われていたの?」
「そ、そうみたいね。フォワ」
その様子は、まさにコント。そしてそのコントを見せられ、フォワとカイユ、それに他の村人たちは、笑うどころか、反応に困っていた。
(「マリアの狙い、うまくいったみたいなのね!」)
その反応に、マリアラーラは秘かにほくそ笑む。
『足の裏をくすぐられ屈服させられる』。こんな様子を見せられると、痛ましい存在に成り下がってしまう。当然、畏怖どころではない。
だが、
「!? 琥兎?」
マリアラーラは見た。琥兎が相手している讐倣玉人・ウールが、
突進し、攻撃を当てる様子を。
琥兎は、攻撃を受けた……、
と、ウールへと思わせていたが、自身も既に結界術で、見えない障壁を張っていた。
「……その程度、私には……凡策だ!」
敵の攻撃を防いだ琥兎は、カウンターで狙銃槍の強力な『突き』を放ち、
『がっ!』
その穂先が、ウールへと突き刺さった。しかし、
『……浅いわ! その槍、へし折ってやる!』
と、再び槍を、両手でしっかと握り込む。
「……!」
先刻同様に、纏わせている『獣』の電撃を浴びせるが、
『ぐっ! ……ま、まだまだぁっ!』
耐えている、我慢している。
「……やるな。だが、この攻撃は耐えられるか? マリアラーラ嬢!」
『え? ひゃああっ!』
ウールを襲う、マリアラーラからの『くすぐり』。そこから、隙が生じ、
「……琥兎! お願いなの!」
マリアラーラの声が飛んだ。
「……行け、飢餓の獣たち! 喰らい尽くせ!」
即座に『紫走の捕食』を用い、琥兎は『獣』たちを放つ。
『獣』たちは、
『おのれぇぇぇ……っ!』
無念そうにうめくウール。
そして、
『こ、こんな、やつらに……』
マリアラーラに押さえつけられた後、投げ飛ばされ地面にたたきつけられたサールに、それぞれ襲い掛かり、
『喰らって』いった。
●美しきは善、醜きは悪。人ってやつは、そういう偏見あるのを忘れちゃいかんぜ?
『ウール! サール!?』
『そんなばかな! あーしたちの仲間が、こんな、簡単に……!』
アークデーモン、讐倣玉人の残り二体・イールとアールは、
仲間たちが次々に倒されていったのを知り、戦いの最中に愕然とした。
「……どうやら、お仲間は倒れたようだぜ」
と、斬り結んでいた暁翔は、青龍刀を構え直す
「ここまでのようだな、アークデーモン」
セシリーもまた、十字剣ルクスリアを構え直す。
『…………』
そして、大天使チャスティリは、
表情は変わらずとも、その顔をひきつらせていた。
そんな大天使に、セシリーは言い放つ。
「チャスティリ! 大天使とやらは悪魔と戦わないのか? 護る事は当然の行為と言っていただろう。なのに……『戦っていない』のは、どういうことだ!?」
これが、セシリーの作戦。
『自分の手で、デーモン止めをささず、大天使にこうやって『選択』させる』
もしも手を出したら、自分の味方を減らす事になる。
もしも手を出さなかったら、デーモンと仲間という事になる。どちらを選んでも、自身が不利になる作戦。
ジレンマに陥らせるこの作戦、上手くいったようだ。
『…………』
チャスティリは、黙して語らず。
「どうした!? 我々と悪魔を滅するか、悪魔とのつながりを露呈するか、選べ!」
マリアラーラと琥兎は、そこにかけつけた。
「暁翔! セシリー!」
「こっちは倒した。そっちはどうだ?」
二人の声に、
「ああ、あと少しってとこだな」
暁翔は、最後の攻撃を放たんと、
関羽の動きで、青龍刀を振り回した。回転する青龍刀が、空を切る。
『…………』
しかし、イールとアールは、
『…………改めし、我が腕、我が身体……』
小さく、ぶつぶつと呟きつつ、結晶化すらも解き、
『……滾れ、軋め、滅するために……』
掴みかかるかのように、セシリーと暁翔へと駆け出した。
「? なんだ?」
暁翔は訝しみ、
セシリーは、二人が錯乱したのか、自暴自棄に陥ったのかと思ったが、
「……いや、違う!」
気付いた。その謳の意味するところを。
『……「―――滾つ軋みのままに 賊なるは滅さん」!』
ディアボロスの二人が踏みとどまると同時に、
讐倣玉人の二人は、まがまがしい光球を生じさせ、
それを放った、
『『死ねエエッ!』』
だが、セシリーはその場で踏みとどまり、
「……断て! 『光の剣戟(グラディウス・ルーメン)』!」
十字聖剣ルクスリアを振り下ろし、斬撃と化した聖気を放った。
聖なる斬撃が、二体の讐倣玉人の放った魔弾とぶつかり、切り裂き、
「「「「!!」」」」
強烈な爆発が、その場に発生した。
「きゃああっ!」
「い、一体、何が……!」
フォワたち村人らは、物陰に隠れつつ、爆発を見て驚愕し、恐れ、
戸惑うのみだった。
『……アール! ?! ひっ!』
至近距離で爆発の衝撃波を受けたアールは、致命傷を受け倒れ、
そして、生き残ったイールは、
ディアボロスたちに、遠巻きに囲まれていた。
しばし、にらみ合った後、
「どうしたチャスティリ! 大天使は何もしないのか!」
セシリーは、改めて問いかける。
『…………』
チャスティリは、やがて、
『……見事です。神の使徒たちよ』
そんな事を、口にした。
『私の代わりに、デーモンを処罰してくれたのですね。ああ、これも信仰のなせる業! ありがたい事です』
「……ふざけないでなの! さっき呼び出した時は、仲間みたいな事を言ってたのは嘘なの?」
マリアラーラが抗議するが、そしらぬ顔。おそらくくすぐったとしても、とぼけ倒すだろう。
『……そういう、事かよ。はっ、そうとも! あーしたちとその大天使様はグルさ!』
が、ようやく事態を悟ったイールは、叫ぶように事情を言い放つ。
『あーしが襲い、チャスティリが救う! そうして村の馬鹿どもから信仰を得ようと……ぎゃああっ!』
が、彼女は最後まで言えなかった。
いきなりイールの背後に、棺桶めいた『何か』が現れると、トゲだらけのその内部に取り込み、
串刺しにして、黙らせたのだ。
事切れたイールとともに、棺桶めいた『何か』……アイアンメイデンは、姿を消した。
『神の味方よ、あなた方の活躍でデーモンは退治できました。ありがとう!』
どうやらこいつは、自分の仲間に手をかける事で、自分の保身を図ったようだ。
「天使様と、デーモンが……?」
「まさか! でたらめに違いない!」
「そうね、これは試練よ! 嘘に惑わされないための試練!」
村人たちも、その様子に戸惑うが、必死に『否定』しようとしていた。
戦いは終わったが、新たな戦いが始まった事を、ディアボロスたちは肌で感じ取っていた。
『信仰の否定』という、新たな戦いを。
「……やれやれ。そう簡単には、いかないか」
「信仰の誤りを示しても、それを受け入れる事はまた別、なのね」
暁翔とマリアラーラは、嘆息する。
セシリーもまた、
「……人は、『信じたいものしか、信じない』。改めて、実感だ」
やや寂し気に、呟いた。
例え目前で、どんなに矛盾点を突き付け指摘したところで、『人は、信じたくないものは信じず、受け入れない』。
セシリーは、教会関連のトラブルで……そういった事件と相対した事が何度もあった。
「……だろうな。その対象に思い入れがあるならば、なおのことだろう。そしてそこから……妄信し、狂信者となってしまう事も、往々にしてあるだろうし、な」
琥兎もまた、それに続き呟いた。
『信仰』そのものは、決してネガティブなだけではない。良く在らんとする向上心を育み、悪意や害意といった事を否定する力にもなる。
だが、それも度が過ぎると、異なる思想の他者を受け入れられず、寛容さを失う。そうなると、それは呪縛でしかない。
「……大天使のやっている事は、それを利用した、悪質なる洗脳行為……許さん」
一人のシスターとして、セシリーは怒りを覚えていた。
(「大天使チャスティリ、お前の歪んだ信仰。私が……止めてみせる!」)
その怒りを、闘志に変えると、
セシリーは、ディアボロスたちは、チャスティリを睨みつけた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【防衛ライン】LV1が発生!
【通信障害】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【グロリアス】LV1が発生!
【反撃アップ】LV2が発生!
不破・結宇
繋がらず、交わらず純潔を守り清く正しく。その生き方自体はうちは否定しとらんよ、うちには縁遠い生き方じゃけぇ尊敬もしちょる
けどそりゃあ人に強要するものじゃないよ
確かに誰彼構わず襲っとったら大問題じゃ
けど、過ぎたるは猶及ばざるが如しって言うじゃろがい
それに薬屋として人体に関わる者の立場から言わせてもらうがのぉ。あんた達、大天使の言いよる邪な考えがなきゃこの世に生まれとらん、ってこと忘れとらんか?
男と女がやることやらんと子は生まれんし人は当然年を取って死ぬ
その摂理は変わらんはずじゃ
このまま大天使の教えを守り続けて子供が生まれんかったらこの村、いずれじじばばだらけになって滅びるじゃろうな
そうなったら信仰もパーじゃ
ま、いかにも自然発生した上に年も取らなさそうな天使様にゃ及ばん考えかも知れんがのぉ……
アドリブ絡み歓迎
セシリー・アーヴェンディル
【アドリブ/連携歓迎】
私は人の善性を信じている。
しかし、信じたいものしか信じない心があることも事実。
それを出会う度に、世界に満ちる苦悩と私の未熟さを突き付けられる。
必ずチャリスティの欺瞞を暴き、人々の信仰を取り戻さねば。
汝、姦淫するなかれ。この教えは全ての繋がりを断てと言っているのではない。
人は愛する者と結ばれ、子を成すことで時代を紡いでいく。
それを断ってしまっては、ただ滅びるだけだ。命を繋ぐことを罪とは言えない。
この教えは繋がりを断つのとは逆。繋がりを尊重するためのものだ。
己が繋がりを持った伴侶を慈しみ、他の番の繋がりを断ち切ろうとしない。
これは家族関係、友人関係、繋がりのない他人との関係にも言えるだろう。
自分と相手の関係を大切にし、適切な距離を保つ。相手への配慮が本質だ。
彼奴の教えはそれを根本的に否定している。人は、独りだけで生きていけるものではない。
この演説で目が覚めてくれることを祈る。
しかし、私の身体に向けられる視線が気になるのだが……
マリアラーラ・シルヴァ
「正しき信仰」に背きし者カイユ…貴女は衆目に肌を晒したため穢れてるの
なので悪魔たちと同じ存在だよ
「邪な考え」に染まりし者フォワ…貴女はカイユを心配して繋がっちゃたね
さらに村の人々に支えられ生活してきた…なので貴女も貴女と繋がる彼らも悪魔たちと同じ存在だよ
貴女達の信仰…天使様の教えはそういう事なの
まずは天使様の教えを説法して
自分達の信仰についてちゃんと考えてもらうの
そして納得いかないって雰囲気になったら昔話を始めるよ
かつて聖堂と娼館はお隣同士だった
でもこれって変だよね
普通は隣に娼館なんて聖堂側が許さない
きっと当時の聖堂の信仰と娼館の行いは一体だったの
けど今は聖堂だけが残ってる
これはかつての村が信仰をより良く改革して娼館を追い出せたという事
そして困ってる人が居たら支え合える素敵な村になれたという事
天使様ですら「異端」認定したマリアを「神の使徒」へ掌返しするんだよ?
信仰だって皆が善いと思う方に解釈を変えて良いって証明なの
否定よりは受入れやすい
変化への寛容を村人さん達に芽吹かせて
後は皆に任せるね
緋詠・琥兎
思ったよりも、純潔のチャスティリに対しての村人たちの信頼が厚かったようだな
元々、村人たちが禁欲的な思考だったのも相まっていそうだな
これは厄介だ
村人の思考には強い批判や否定はせず
純潔のチャスティリが説く説法の矛盾点を上げていこう
こちらが話す内容で村人の反応が著しく無い場合は
不審に思われない程度に話題を切り替えたりしよう
そこの天使が君らに説いている信仰は
自分からしてみれば矛盾しているように聞こえる
理由は『誰かを愛することも暖かな家庭や関係を築くことも禁ずる』と言っているのと同じように感じるからだ
確かに、欲は過ぎれば毒だ
だが、無欲でいることも
欲を抑えすぎるのも毒となる
もう一度、そこの天使が説く信仰云々を無しにして考えてみて欲しい
貞操とは何か
純潔とは何か
誰かと結ばれたいと想う感情を
異性と共にありたいという願いを
今、君らがこうして生きている理由も含めて
この先、本当にその信仰を貫き通せるのかを
自分の傍に居る燈杜美の頭を優しく撫でながら
村人達を見守ろう
アドリブ
連携歓迎
嵐柴・暁翔
純潔を保てば神の楽園に辿り着く資格を得るって…
魔法使いにでもなるつもりか…?
……突っ込みどころ満載だな…
そもそも男女の繋がりから産まれる訳ではないクロノヴェーダならではの教義なのかもしれないけど、少なくとも人間向けのものではないな
村人達相手に正面から否定しても余計な諍いになりかねないしやんわりと疑問を呈するように反論しておきます
そもそも自分達自身両親が天使の言う色欲の罪を犯した結果生まれたのではないのか、教義通りなら子供を産んだ方々は楽園に行けないのか…
教義を崩すという大義名分のもと、娼館を探してみます
その手の施設が存在しないなんてあり得ないのは人類の歴史が証明しているからな
首尾よく見付けられたなら足繁く通って全力で愉しみます
金だけの後腐れの無い関係というのは気楽に性欲を満たすという意味では最高だしな
代金は【口福の伝道者】で増やした食料を対価にするか、売って金に換えて用意します
……商館関係者なら職業柄天使の教義に染まりきってはいないだろうし雑談中にでも人間の営みとの矛盾を指摘しておきます
●コウノトリやキャベツなんてのは、純潔で無垢を尊ぶゆえの下らん幻想に過ぎん
『大天使チャスティリ』は、得意げに浮遊していた。
周囲の村人たちは、その大天使に対し、祈りを捧げありがたがっている。
その村人たちの中には、フォワやカイユの姿もあった。間違いなく彼女たちも……チャスティリを信仰している。
『……さあ、迷える子羊たち。悪魔は討伐されました。信仰を守ってくれた皆さんに、感謝を』
と、チャスティリは自身が呼び出したアークデーモン、ないしはそれを討ち取ったディアボロスたちをも利用し、自身の信仰を盤石化しようとしていた。
「……また、『突き付けられた』な」
その様子を、苦り切った顔でセシリー・アーヴェンディル(ルクスリア・g02681)は見ていた。
人の有する『善性』。シスターであるセシリーは、それを信じていた。
だが……『信じたいものしか信じない』心がある事も事実。
そしてその現場も、何度も遭遇している。それらを目の当たりにするたび、自身が関わるたび、
いつも『突き付けられる』。世界に未だ満ちる『苦悩』と、『己の未熟さ』を。
得意気なチャスティリに、説法返しせんとしたが、
「ごめんなぁ、ぶち遅れてしまったわぁ」
長身だが、痩身で猫背の女性が、その場に現れた。その茶色の髪には、ウェアキャットの証たる猫耳。そしてどこか眠たげな眼差しを持ち、口調も雰囲気もやはり眠たげ。
「あなたは?」
マリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)に問われ、
「ウチ? ウチは不破・結宇(ナナシの薬売り・g10601)、しがない薬売りじゃけん、よろしゅうなあ」
若干、のらりくらりとした口調でそう答えた。
「……それで、状況だが……」
緋詠・琥兎(その身に潜むは破滅か。それとも朧げな標か・g00542)と、
「手下のアークデーモンは倒したが、村人たちは大天使のマッチポンプ……という事を知らせても、受け付けないって状態だ。詳細は……」
嵐柴・暁翔(ニュートラルヒーロー・g00931)から、現時点の状況を説明される。
『……おや、神の使徒たちよ。彼女は何者です? 敵ですか? 味方? 敵ならば、とっとと追い払いなさい。味方なら……』
と、チャスティリはいきなり、そんな事を言い放った。
が、それを聞いた結宇は、
「……あーっと、そこのアンタ。ぶち慌てて敵味方と決めつけるのはいけんよ。人間を『敵』と『味方』でしか判断できんのは、おんびんたれ(臆病者)のいう事じゃけえ」
そう言ってたしなめた。
『……なんですか、あなたは。我が信仰を否定するつもりですね?』
と、チャスティリはやや声のトーンをきつめに。
「……こいつ」
セシリーは思った。どうやらこの天使、自分を否定するものイコール悪という、単純な思考がまずありきのようだ。
だが、それを聞いた結宇は、
「セシリーはん、とりあえず、あの天使がいびしー(気味が悪い)やつって事はえらいわかった。じゃけん……」
口喧嘩で、ぶちまわせ(ぶちのめす)ばええのん? ……と、挑発的に言い放った。
そして、
「……そんなところだ。さしあたっては、結宇。まずは……自分たちに任せてほしい」
セシリーが、申し出た。
『説法』、または『説教』。
それは、宗教に携わる者ならば、避けては通れない事。
セシリーはその事を思い出しつつ、進み出た。
「……セシリー、頑張ってなの!」
マリアラーラと、
「……まずは先鋒の攻撃、といったとこやな」
結宇に、その背中を見られつつ進み出る。
「…………」
琥兎は、チャスティリと、村人たちの事を油断なく観察していた。
「……天使、チャスティリ。そして、その天使を信仰している者たちよ。主に仕えし一人のシスターとして、聞いて欲しい」
今のセシリーは、サキュバスでも剣士でもなく、一人の聖職者。
信仰の僕として、口を開いた。
「……『汝、姦淫するなかれ』。この教えは、非常に重要なもの。しかし、この言葉は、全てのつながりを断てと言っているのではない。人は、愛する者と結ばれ、子を成す。そうする事で時代を紡いでいく。これは全ての人間に共通する事、ただの一つとして例外はない」
『…………』
チャスティリは沈黙し、
「……シスター、様?」
村人たちは、注目していた。
「だが、この営みを断ってしまう事は、人の滅びを意味する。新たなる命は、愛とともに生じ、祝福されてこの世に産まれ出でる。これは、命を繋ぐ事。神聖なる行為だ。これを罪などと言えない」
「で、でもシスター様」
と、村人の数人から、
「それじゃあ発情した獣のように、交わり続けろってコトだか?」
「うちの旦那みたいに、女にダラシナイのがいいって事ですか?」
姦淫を肯定するのかと言った抗議が。
「……違う。それは極端な例であり、姦淫という罪から逃れるための、罪人の言い訳だ。『姦淫するなかれ』という教えは、繋がりを断つ事と真逆、繋がりを尊重するためのものだ」
だが、セシリーにとっては、そんな抗議は予想の範囲内。
「己が繋がりを持った『伴侶』を慈しみ、他者の番の繋がりを断ち切ろうとしない。これは罪に非ず。これは家族、友人、繋がり無き他者との関係にも言えるだろう」
徐々に、言うべき事が、セシリーの中ではっきりと形作られる。
「自分と、相手との関係。それを大切にし、適切な距離を保つ。相手へ配慮する。それこそが『姦淫するなかれ』という教えの本質だ。彼奴の……その天使を自称するその者は、それを根本的に否定している。そもそも、『姦淫』と『他者との繋がり』とを混同している時点で、完全に間違えている」
……と、セシリーは深呼吸すると、
「……人は、独りだけで生きていける存在ではない」
……言い放った。
「……おお、シスター様」
「やはり、やはりそうだか! 手ぇ繋ぐ事は悪い事じゃないだな!?」
村人たちは、シスターの言葉を聞き、
やはり、天使の言う事に何かしら思うところがあったようで、セシリーの元へと駆けつける。
「……どうやら、目を覚ましてくれたようだな。しかし……」
全員ではない。まだ半数以上が、大天使の方についている。
「けんど! やっぱいやらしい目で見る男どもがいるだろ! あたしはそんなんいやや!」
「ああ、おらもそういうふうに、女子を見る事はいけないと思うだ」
その中には、
「わ、私も……」
フォワと、
「……い、いやらしい事は……」
カイユの姿もあった。
しかしどこか、二人は迷っているようにも見える。
「……ふぅん。ぶち怪しいなあ、あの二人」
結宇は、そんな二人の様子を、じっくりと観察していた。
「……はっ、あの天使はおかしいと思ってただよ」
「わしらは、シスター様のいう事を支持するだ!」
説得された村人たちが、セシリーの近くに。
しかし、
(「……気のせい、と思いたいが……気になるな。私の身体に向けられている視線が、どうにも……気になる」)
そんな事を考えているセシリーの脇には、
「……では、私の見解を述べたいと思う。やや気になる点をな」
琥兎が、進み出た。
●この手の事は、色々な問題や要素、説明などもムズかしいから致し方ないがな
進み出た琥兎は、
「そこの天使が、キミ等に説いている『信仰』だが……自分からしてみれば、『矛盾している』ように聞こえる」
と、新たな意見を言い放つ。
「む、矛盾?」
「何を言ってるだ。天使様は別におかしい事言ってないじゃろ?」
「そうだそうだ、淫らで邪な考えを起こすから、悪い事が起こるんじゃないのか? そこのシスターのようにハレンチな姿をするから、男は劣情を抱き、悪い事を起こすようにな!」
「おかしいなら、理由を言ってみるだよ!」
と、村人たちは反論。
その反論に、琥兎は臆することなく、
「……いいだろう。理由は『誰かを愛する事も、あたたかな家庭や関係を築くことも、禁ずる』と言っているのと、同じように感じるからだ」
そう答えた。
その返答に、
「な、何を言うだ! 人は淫乱な欲を抱くから、愛や家庭や知り合いを、ダメにするって天使様言ってただのに!」
「そうだそうだ! 男は女に、女は男に、いやらしい事を考えるから、近づいちゃならんって聞いただよ! そうだろ、天使様!」
村人たちは更に反応し、反論。
「……確かに、欲は過ぎれば毒だ。だが、無欲でいることも、そして欲を押さえすぎるのも、毒となる」
それに対し、琥兎は、
「皆、もう一度……特に、そこの天使が説く『信仰云々』を無しにして、考えてみてほしい。『貞操』とは、何か、そして、『純潔』とは何か」
静かに、問いかけた。
「え、そ、それは……」
「やらしいのが悪い事で、貞節や純潔ってのは、やらしい事から離れるイイ事……と違うの?」
そして村人たちから帰ってくるのは、そんな曖昧模糊な言葉のみ。『説明できないが、なんとなくそんな感じ』といった程度の認識しか無い……その事が伝わってくる。
「……だから、その事を『考えてほしい』と言っている。……君たちにも、あるだろう? 例えば……」
誰かと、結ばれたいと思う……いや、『想う』。そんな『感情』。
異性と『共にありたい』という『願い』。
「……その事を、考えてほしいんだ。今、君らがここで、こうして生きている理由も含めて。そして……」
『信仰』。この先本当に、この信仰を貫き通せるのかを。
そう言いつつ彼女は、傍らに控える少女……目隠しをした、オラトリオの少女・燈杜美の頭を優しく撫でた。
「……た、確かに。おらはマリーを、嫁にして……ずっと、一緒に居たいだ……」
「おいらも……結婚したポネと、子供一杯作って、大家族を、作りたい……」
「あ、あたしも……エタロンに抱かれたいだよ……」
そして、琥兎の言葉を聞いて、
主に、若者を中心として。自分の想い人や配偶者に対する想いを吐露し始めた。
そして、
『な、何を言っているのです! そんな邪な思いが、モラルを壊すと言ったではないですか!』
チャスティリは、焦り始めていた。
更に半数以上が、己の提唱した『信仰』の矛盾点に気付き、大天使から心離れつつあった。その事が次第に、明らかになっていた。
『穢れは悪! 人が人と触れ合うから、穢れが起こる! ましてや肌を重ねるなど、もってのほか! その穢れを清めるには、正しき『信仰』が必要! そのためには、汚らわしい『人同士のつながり』といったものを否定せねばならないのです! なぜわからないのですか!』
まさにチャスティリは、口角泡を飛ばすような勢いで言い放つ。
「そ、そうだそうだ! 淫乱は、人肌恋しがる事から始まる! ならば、人肌に最初から触れなきゃいい!」
「最初から触れないでおけば、万事解決よね!」
未だに天使から離れない人々が、その理屈を支持するが、
「……なら、カイユは悪魔と同じなのね」
マリアラーラが、まだ『信仰側』に居るカイユへと、そんな言葉を投げかけた。
一瞬、その場が凍り付き、
「え? な、何を言ってるの! 彼女は何も、悪い事など……むしろ被害者よ!」
フォワが、辛うじてそんな事を言ってくる。
当のカイユ本人は、予想外と言った態度が隠せない。
「ど、どうしてそんな事を……さっき、助けてくれたのに!」
寒所は、先刻にアークデーモンに服を引き裂かれ、その上から上着を纏っていた。どこか、煽情的にも見える。
マリアラーラは、そんな彼女に、
「いいえ。……『正しき信仰』に背きし者、カイユ。……貴女は、衆目に肌を晒したため、『穢れてる』の。なので……悪魔たちと同じ存在だよ」
少し冷たく、そんな言葉を投げかける。
「なっ……ひどい! 被害に遭った事が罪だと言うの!?」
思わず、声を荒げたフォワに対しても、
「……『邪な考え』に染まりし者、フォワ。……あなたは、カイユを心配して『繋がっちゃった』ね。更に、村の人々に支えられ、生活してきた……なので、貴女もカイユと同様、悪魔と同じ存在だよ。ああ、貴女と繋がる彼等もまた、同罪だね」
「え……そ、そんなの無茶苦茶じゃない!」
当然のように、反論するフォワ。だが、
「……うん。無茶苦茶。けど、貴女達の信仰……天使様の教えを守ると、そういう事になるの。人との繋がり、絆。それら全てを否定するチャスティリの教えを忠実に守ると……貴女たちは、罪人という事になるのよ」
マリアラーラの容赦ない追撃に、反論の余地は無かった。
「ち、違う……私はただ……カイユの為を想って……」
と、
「フォワ、納得いかない? なら、ちょっと答えてほしいのね」
口調を変えたマリアラーラは、
「これは、ちょっとした昔話。……かつてこの村の『聖堂』と『娼館』は、お隣同士だった。でも、これって変だよね。普通はお隣に、娼館なんて置かないし、聖堂側が許さない。……つまりは、過去の一時期は『聖堂の信仰』と『娼館の行い』は、一体だったんじゃないの?」
それを聞き、村人たちの多くが気まずそうに顔を背け、
『…………』
チャスティリは、マリアラーラを睨み付けた。
「けど、今は聖堂だけが残ってる。これって、どういう事だと思う? マリアが思うに、これは『かつての村が、信仰をより良く改革』したから。その結果、娼館を追い出せたという事。そして……」
ここからが重要だと、語気を新たにして、
「……そして、困ってる人が居たら、支え合える素敵な村になれたという事。現にフォワ、貴女はカイユを助け、おそらくはカイユもフォワを助けるでしょう? そして、フォワを支えてくれる人たちは言うまでもないの」
「えっ……」
フォワを見たマリアラーラは、彼女が戸惑っているのを悟った。否定していると思っていたら、肯定するような事を言われたのだ。こうなるのは当然。
「意外? でも、天使様ですら、さっきマリアを『異端』設定したんだよ。でもそんなマリアを、ついさっきには『神の使徒』って掌返ししたのを、見たよね?」
「え、ええ……」
「つまりはこれって、『証明』なの。信仰も、皆が良いと思う方に、解釈を変えて良いって『証明』。……そうでしょ?」
「…………」
フォワも、カイユも、他の村人たちも、言葉を失っている。
……これでいい。
相手の言葉を否定するより、肯定できる点は肯定し、そうした事で『変化』への寛容、またはその切っ掛けを村人たちに芽吹かせる。
ただ『お前は間違ってる』と否定するより受け入れやすい。
実際、皆が迷っていた。
この原因を作ったチャスティリですら、戸惑っているくらいだから。
●とはいえ、シモを悪呼ばわりするのも、明け透けすぎるのも、どちらもイカン
『ち、違う……こんな事が……わ、私の信仰こそが、正しい……』
だが、チャスティリは、まだそんな事を口にしている。
(「……どうやら、限界のようだな。琥兎」)
(「ああ、セシリー嬢。あと一押しといったところか」)
言葉に出さず、二人はチャスティリが、信仰から離れつつある事を感じ取った。
「し、信仰を変えるだと? 罰当たりめ! わしはそんなの、認めん!」
「そ、そうじゃ! わしは昔の教会知ってる! 娼館が一緒だったのは確かだが、そうする事で禁欲の試練としたからだ!」
だがそれでも、しつこくチャスティリを、その教義を、しがみつくように信じている者たちがいる。
「……なあ、だったら……聖堂と別に、村に『娼館』があるのは、どういう事だ?」
と、先刻から今まで姿を消していた暁翔が、姿を現した。
「というか、あんたの言う事、ツッコミどころ満載だな。『純潔を保てば神の楽園に辿り着く資格を得る』って……魔法使いにでもなるつもりか……?」
『なんだと! 我が信仰は黄金の教え! それを愚弄するか!』
喚くチャスティリだったが、その言葉には心なしか、力がない。
「……いや、先刻にこの村の、隠し娼館を見つけ、ちょいと愉しませてもらったが……」
暁翔のその言葉を聞き、
「なっ……お前、まさか……」
セシリーは赤面し、
「……行ってきたのか?」
「……うわあ、なの」
琥兎は怪訝そうな顔、マリアラーラも驚愕の表情を浮かべた。
「……あらあら」
結宇は、微笑んでいる。
女子たちのそれらの反応を目の当たりにして、暁翔は大慌てで言い訳めいた事を口にする。
「……あーっと、流石に時間が足りなかったから、実際には致してないけどな。ちょいと会話した程度だ」
(「まあ、天使をぶっ転がし、この件が終わったらじっくり愉しむように、予約を入れはしたがな」)
先刻に、その娼館の娼婦の子に予約を入れていた。料金代わりに、対価として『口福の伝道者』で増やした食料を先に支払ってもいる。
「……ただ、その時に、その娼婦の子とも雑談で話したが……チャスティリ、あなたの言う事間違ってますよ」
と、暁翔は語った。
『……間違い、だと?』
しばしの沈黙の後、天使からのそういう言葉とともに、
「天使様が間違いなど!」
「あるわけがないだ!」
「禁止されてる、村の娼館なんぞに行くやつなんざ、信用できるか!」
まだ天使側に立つ村人たちも、反論した。
「いや、単純におかしいだろうが。そもそも……」
大きく深呼吸した暁翔は、
「……そもそも、あんたたち村の人間だって、天使の言う『色欲の罪』を犯した結果、生まれたんじゃないか? 違う? なら、どうやってあんたらはこの世に生まれたんだ? コウノトリとかキャベツとか言うなよ。いい年こいてそんなメルヘンやファンタジーを口にすんのはあまりに情けないぜ」
黙りこくった村人たちに、
「で、競技通りなら、子供を産んだ方々は、楽園に行けないって事になる。子作りや子供の親になる事が罪になるのか? そこの天使様がそう言ってる? なら俺は、絶対に従いたくないな」
暁翔からの、止めの下りが突き付けられた。
『だ、黙れ黙れ! 人と人とが触れあうから性行為が起こり、過ちも起こる!』
「子作りが罪? 子を産む事が罪? ああそうとも! どうせその子供も成長すれば、罪を犯す! ならば出生も、妊娠も、それ自体が罪だ!」
「そ、そうよ! 人間なんか、生まれない方が良い! だから産まない方が良いのよ!」
「子供の出生自体が悪い事! いや、人間の存在自体が悪い事! だったら、最初からそれにつながる事自体が悪だわ!」
もはや、天使と、最後までその信仰にしがみつく者たちは、自分達自身の存在すら否定していた。
カイユとフォワは、互いに手を取りつつ……混乱している。
「わ、私達は……」
「純潔を、守れればと……清く、正しく生きられればと……」
「その生き方自体は、うちは否定しとらんよ」
トリを飾るかのように、カイユとフォワの手を取り、
結宇が進み出てきた。
「……うちには縁遠い生き方じゃけぇ、尊敬もしちょる」
彼女のその言葉に、
『そ、それじゃあ……そうよね! あなたも、触れあいを禁ずる事に賛成するのね!』
と、チャスティリと、残り僅かな信者たちは言葉で縋り付くが、
「……けど、そりゃあ人に強要するものじゃないよ」
その縋り付きを、振り払うかのように言い放った。
●ま、あんま四角四面にせず、ある程度の余裕を以て対処すりゃいいんじゃね?
『なっ……アンタも誰彼構わず、襲っても良いと!』
もはや、短絡的な思考に陥ったのか。そんな事を決めつけるように言う天使に、
「何いなげな(変な)事を言っとるんじゃ。 確かに、誰彼構わず襲っとったら大問題じゃ。けど『過ぎたるは猶、及ばざるが如し』って言うじゃろがい」
結宇は、言い返した。
「それと……うちは『薬屋』じゃけえ。ゆえに、人体に関わる者の立場から言わせてもらうが……先刻に暁翔も言うとったが、あんた達も、大天使の言いよる『邪な考え』が無きゃ、この世に生まれとらん……って事、忘れとらんか?」
信者たちは、もはや論理的に言い返せず、
「そ、そんな事は……」
「うるさいうるさい! お前みたいなのが居るから悪いんだ!」
「だったら、この世に最初から誰もかれも生まれてこなきゃいいんだ! 出生自体が悪だ!」
支離滅裂になっていた。
「……あんなあ、『男と女が』やる事やらんと子は生まれんし、年取って死ぬ。その節理は変わらんはずじゃ。このまま大天使の教えを守り続け、子供が生まれんかったら……この村はいずれ、じじばばだらけになって滅びるじゃろうな。そうなったら信仰もパーじゃ」
その支離滅裂さは、結宇を逆に冷静にさせていた。
「それに、なんじゃ? 『出生も、妊娠も、それ自体が罪』? 『人間なんか生まれず、産まない方が良い』? 『子供の出生自体が、人間の存在自体が悪い事』? ……何をあらましな(乱暴な)事を言っとるんじゃ。それって、自分らがただ生きる事、それ自体すらも『悪』ってことになるじゃけん。そこんところ、わかっとるんか?」
「…………」
もう、反論は来ない。
当然だろう、『人が生まれる事が悪』などと言ってしまえば、自分の生存そのものが罪悪となってしまう。人の身で、アンデッドでもない限り、これに賛同など誰もできない。
「……ま、いかにも自然発生した上に、年も取らなさそうな天使様にゃ、及ばん考えかも知れんがのぉ……」
最後まで信者としてしがみついていた村人たちは、泣き崩れていた。
そして、
『……そうかそうか。どうやらお前たち……天罰を食らいたいようだな』
チャスティリは、怒っていた。怒り心頭という様子だった。
「どうやら、本性を現したな」
「ああ。……要は『自分が気に食わない。だから消す』と言いただけなんだろう」
セシリーと琥兎、そして、
「……おいおい、そりゃ偏見で差別行為だろ。なんで個人の好き嫌いを他者に強制するんだよ」
「他人の自由とか、自分と異なる意見とかを、認められないからなのね。常に自分が正義であり逆らう事は許さない、根拠も要らない。理由は単純なの」
暁翔とマリアラーラは、敵の本質を露わにした。
「……で、村人の不平や不満を利用し、自分の信者として引き込んだ、と。きちゃにゃー(汚い)やり方じゃけんのう」
結宇の言葉を聞いても、
『ああ、汚くて結構! 信仰しないのなら、無理やり信仰させてやる……その方が簡単でいい!』
チャスティリは、舌戦から実力行使に切り替えつつあった。
……覚悟するのは、お前の方だ。
この時ディアボロスたちは、同じ考えが脳裏に走っていた。それを実感しつつ、
最後の戦いに挑むため、フォワとカイユ、そして村人たちの避難を始めていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV4が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
マリアラーラ・シルヴァ
開き直った天使様は強敵だけど…繋がりなんて不快だ認めない!なんて信仰じゃ
天罰を受けるのは天使様の方だって白黒つけてあげる
これから緊急ホームルーム(パラドクス)を始めるよ!
天使様は「一人称があーしの悪魔呼ばわりされた神」から告発されてるの
・よくもよくもあーしたちを切り捨てやがったな絶対許さねー
・てゆかマッチポンプなんて信頼できる協力者が要るのに繋がり否定とかヤバない?
・マリアのこと異端呼ばわりしたのも許してないからね!
皆からの糾弾に幾らでも自己弁護して良いけど誰も聞いてくれないよ
だって天使様は誰とも繋がっちゃダメな信仰してるんだもの
誰にも意見を言えない
誰からも同調してもらえない
繋がらない干渉されない…孤独…だけど勝手に話が進み全てから置いてかれる
天使様の信仰ってそういう事だもの
ほらもう判決が決まっちゃう
信仰間違えてましたゴメンナサイって
あーしベーダや村人の皆に謝れるなら許してあげても良いよ?
そんな風に煽れば
逆上して風を吹かせるだろうけど
擽る構えで怯ませつつ
その隙に皆に必殺技を決めてもらうね
セシリー・アーヴェンディル
【アドリブ/連携歓迎】
それは信仰ではなく服従というのだ。
そもそも信仰も繋がりだ。始めから破綻しているのだ。
所詮は紛い物の天使。それが貴様の底だ。
そして実力行使は私達の得意とすることでもあるぞ?
戦いのさなか、ふと体を撫でる風に違和感を覚える。
とたんに体がぐらりと揺らぎ、剣を取り落としてしまう。
くっ、精神攻撃か……! それに気づけても、体はいう事をきかず意識が底に沈む。
ふらふらとチャリスティに近づき、身を任せ……歯を食いしばり、無理やりに意識を引き戻す。
貴様に罪を裁く権利はない。裁かれる側だ。ディアボロスを、なめるな!
閉じてくる下半身を【光の障壁】で受けとめ、怪力無双を発揮して無理やりにこじ開ける。
そのまま拳を顔面に叩き込んでやろう。
緋詠・琥兎
自分の意見が通らないと確信した途端に実力行使か
なら、お望み通りに受けて立とう
最も、テメェがもし自分らに勝ったとしても
今までのような信仰は得にくいだろうがな
燈杜美は後方に居てもらい
自分は前衛で立ち回ろう
前に出るのと同時に天澄衛陣を発動
燈杜美の演奏と共に色欲の感情を浄化する風を放とう
魅了は忍耐力で耐えるのを試みつつ
敵に接近した際に防げるように結界術を展開
速攻で下半身に向けて狙銃槍を薙ぎ払い、カウンターを狙う
(早業・グラップル・時間稼ぎ・観察・看破・不意打ち・臨機応変など
その物騒な物諸共、粉砕してやる
(破壊・強打・オーラ操作など
どんなに何かを綺麗に保とうとしても
純粋なものは、時には毒と化す
それを、身を以て味わえ
再度、天澄衛陣を使い
発生させた浄化の風を狙銃槍に纏わせて連撃を放つ
燈杜美の援護と合わせ
確実に追い込んでいこう
(高速詠唱・連続魔法・全力攻撃・魔力付与・貫通撃など
誰かを想い、共に居られるから
人は強く生きられるんだ
テメェのは純潔じゃねぇ
度の過ぎた、それらをも切り捨てる潔癖だ
アドリブ
連携歓迎
●美しき正義の勇者、醜き悪の魔王。それらは表裏一体
「「「!?」」」
美徳天使『純潔のチャスティリ』。
それと対峙していたディアボロスたちは、
『分断』された。
「……これ、はっ
……!?」
マリアラーラ・シルヴァ(コキュバス・g02935)、
「……バリア? 私達を閉じ込めたのか?」
セシリー・アーヴェンディル(ルクスリア・g02681)、そして、
「燈杜美、大丈夫!? ……そうか……そういう事か」
緋詠・琥兎(その身に潜むは破滅か。それとも朧げな標か・g00542)と、彼女のオラトリオ・燈杜美。
彼女たち以外は、元信者を含め……、全員が、オーロラのような、輝く金色の光、ないしはその光の障壁により、『外側へ』分断された。光の障壁は、チャスティリを中心に、半径50m以上の空間をドーム状に覆っている。
その中に、セシリー、マリアラーラ、琥兎および燈杜美が入っている。彼女らは、仲間のディアボロスから切り離され、閉じ込められてしまったのだ。
『大人数を一度に相手をするのは、疲れますのでね。まずは……小生意気なあなた達三名とお相手して差し上げましょう。この『光の障壁』は、私が死ぬか許可しない限り……決して消えず、破れません』
外側から、村人たちや他のディアボロスたちがこちらを覗いている。こちらからも外を見る事は出来るが……どうあっても、外には出られない様子。おそらく外から中へも入れないだろう。
つまり、外からの援護を受けず、このままこの天使と戦い勝たねばならない、という事だ。
「………―――」
小さく呟き、琥兎は一歩踏み出す。燈杜美がそれに合わせ、演奏をしてくれるが。
しかし、敵の気配のおぞましさの前に怯えたのか。燈杜美のその音も、徐々に小さくなっていった。
『……汚いやり方、と言われたが……ま、確かに奇麗な花を植えるために、土で手を汚す事もあるでしょう……逆らう相手もね。ゆえに……』
チャスティリは、
「……ゆえに、少しずつ分断して、少しずつ相手する、って事なのね。全員でかかられたら、かなわないから」
マリアラーラの指摘に、肯定した。
『御名答。ああ、でもあなた方が、私に身も心も全て委ね、我が信者となったなら……殺さずに済ませてあげても良くてよ?』
その口調は、琥兎を苛つかせた。
「……自分の意見が通らないと確信した途端に、実力行使。そういう事だろう? お望み通り、受けて立とう」
最も……と、挑戦するような口調で、琥兎は続ける。
「最も、テメェがもし自分らに勝ったとしても……今までの様な信仰は得にくいだろうがな」
『あら、そんな事は無くてよ。……民は所詮、『花』ですからね』
「?」
「花?」
「……何を、言っている?」
そぐわない単語をチャスティリから聞き、ディアボロスたちは困惑した。
「悩む信者を、『迷える子羊』と例える事はあるが、『花』とはどういう事だ?」
セシリーが問いかけ、チャスティリは得意気に、
『……花はお好き? 花は綺麗よね。なぜ花が奇麗なのか、考えた事があって?』
そんな質問を投げかけた。
「……何が言いたい」
『花は『無抵抗』。逆らわず、誰とも触れ合わず、ただ美しく咲いているのみ。薄汚い肉体同士の接触も無く、繋がりや交わりという穢れもない』
もしも……と、興奮する口調で、言葉を続けるチャスティリ。
『もしも、そうなる事を拒むなら、『余計な事を見たり聞いたり、言ったり考えないように』すればいい。花を長持ちさせるために、余分な葉を切り取り『間引き』するようにね』
「……お前、何を言っている?」
セシリーの問いに、
『簡単なことです。余計なものを見聞きせぬよう、『目や耳を取る』。余計な事を口走らぬよう、『舌も切り取る』。あるいは、余計なことを考えないよう『脳をいじくる』。こうすれば人々は、抵抗も、思考も無く、穢れた繋がりや触れ合いなども無い、ただ信仰するためだけに存在する、美しい『花』になれます……。人は、花のようになるべき。その花が咲き誇る花壇こそが、我が信仰の理想! そうでしょう?』
「……花は、嫌いじゃあない。だが……」
戯言を聞かされて、心底うんざりしたとばかりに、琥兎が進み出た。
「……テメェがとことん『歪んでる』事はわかった。その歪み、矯正……いや、消してやる」
セシリーもまた、
「ああ。……人間は花じゃない。それに、無抵抗で無思考のまま、従うから美しい? ふざけた事を言うな!」
いささかの怒りとともに、ルクスリアを構える。
「……マリアが、『白黒』付けてあげる。ここで『天罰』を受けるのは……天使様の方だって事を!」
マリアラーラもまた、厳しい視線を天使に。
しかし、チャスティリは、
『……ふふふ、そのうちあなた達も私に服従し、正しい信仰を取り戻す事になります。それに……』
そう言って、舌なめずりをするのだった。
『……それに、既に戦いは始まっていてよ?』
「!? 何を……セシリー嬢?」
琥兎が、セシリーに気付いた。
彼女が、よろけつつ、
チャスティリに近づいている事を。
セシリーは、構えていた剣を、十字聖剣ルクスリアを、
取り落とす自分を知った。
(「くっ……!? 精神攻撃、か
……!」)
『あなた、サキュバスでしょ? 肌を重ね、交わる事を喜びとする、呪われた穢れし種族……つまりは、『色欲に非常に弱い』という事。まったく、度し難いとはこのことね。「汝、色欲の罪を知りなさい」』
嘲るように、チャスティリが言い放つ。
「セシリー! ……そんな……!」
マリアラーラと、
「くっ……卑怯者め!」
琥兎はうめき、歯噛みするが……どうにもならない。
セシリーは琥兎に向かい、何かを伝えんと口を動かし、目を瞬かせるが……、
やはり、逆らえぬようで……チャスティリに近づいていくのみ。
(「!? ……んんんっ!?」)
さらに色欲の風は、マリアラーラにも襲い掛かる。
『そっちのおチビちゃんも、サキュバスね? ふふっ、小さい子を調教……もとい、信仰に目覚めさせる事も、考えるとわくわくしてくるわ。ねえ、そうでしょう?』
チャスティリは、既に勝利を確信したかのようだった。
(「…………た、耐えろ、私
……!」)
歯を食いしばるセシリーに、
『ふふっ、あなたの身体、いう事聞いてくれないみたいね。意識も消えそうなんでしょ? さあ、私に近づきなさい、そして、身を任せなさいな』
天使のくせに、悪魔のような囁きを囁くチャスティリ。
「待てっ!」
駆け出そうとした琥兎に、
『……ああ、そちらのあなた。ちょっと遊んでてね。同じ天使同士、後で話し合う余地もあるでしょうから……』
背中の光輪を光らせたチャスティリは、
セシリーやマリアラーラ、燈杜美にそっくりな『人影』を数名、その場に呼び出した。
「なっ……燈杜美!」
『……他者と交わる事は、力ではなく罪なり。故に……「繋がりと交わりを断ちましょう」』
言うが早いが、偽の仲間たちが襲い掛かって来た。
●信仰も然り。一歩踏み間違えれば、信仰は狂気と凶器と化す
「マリアラーラ嬢、燈杜美を頼む!」
オラトリオの少女を、マリアラーラに任せ、背中に預けると、
琥兎は『禍津餓機・狙銃槍』を構え、周囲の幻影へ攻撃を放つ。
幻影ゆえか、大した抵抗もせず、一撃で消えていく。
『あらあら、あなたは繋がるのが大事なんでしょ? 幻影とはいえ、なんで大切な仲間を攻撃するのかしらねえ』
「うるせえ! ……決めた、テメェは自分が直々にぶちのめす」
『……それは、不可能って言うんですよ? なにせ……貴女は永遠に、彼女とともにいるのですからね』
「? ……しまった!」
『誰とも交わらず、永遠の処女であれ』
琥兎たちの後方に、『鋼鉄の処女』……アイアンメイデンが瞬時に出現し、
スパイクを伸ばして刺突を、開いて捕縛を試みたのだ。
「このおっ!」
『狙銃槍』でアイアンメイデンを薙ぎ払うが、
『哀れよねぇ、ああ、必死こいてみっともなく生にしがみついて。私に『信仰します』と言えば、それだけで救われるというのに……さて、どうしてやろうかしら。繰り返し、幻影とアイアンメイデンとを出してやれば、あなたはともかく、そっちの幼女二人は串刺し処刑できるわよぉ。悔しい? どんな気持ち? ねえどんな気持ち?』
「…………」
『ま、まずはこのハレンチシスターのサキュバスが、串刺しにされて惨殺処刑されるとこを見てなさい。さあ……』
と、チャスティリは自分の左右に開いた下半身に、セシリーが近づくのを見せつけていた。
「……セシリー嬢!」
「!」
琥兎が叫ぶとともに、
チャスティリの下半身が、虎バサミの様に、
セシリーを左右から挟み込んだ。
●故に、己を正義、己の信奉する存在を正義と見誤るべからず
『まずは一人目、処刑完了!』
勝利を確信したチャスティリは、
「……貴様に罪を裁く権利はない。裁かれる方だ」
『え?』
「……ディアボロスを、サキュバスを……」
正気に戻ったセシリーは、『光の障壁(カストルム・ルーメン)』で、下半身の虎バサミを受け止めていた。
『怪力無双』でそれをこじ開け、
『なっ、なんでっ!?』
「……主への信仰を! そして私を! 舐めるなぁぁぁぁっ!!」
拳を顔面に、叩きこんでいた。
無様にチャスティリは地面に叩き付けられ、複数出現していたアイアンメイデンに幻影たちは、即座に消え去る。
「大丈夫か! セシリー嬢!」
「ああ……琥兎のおかげで、なんとか耐えきれた!」
そのまま転がって距離を取り、ルクスリアを拾い直す。
『な、な、何でよ! なんで魅了されてたのに……ぎゃあああっ!』
琥兎の狙銃槍の一撃を下半身に受け、再び悲鳴を。
「……セシリー嬢が、お前の術中にハマった……と思い込んだのが、お前のミスだ。こっちはお前が色欲の風を用いる事など、とっくにお見通しなんだよ!」
まさに然り。
チャスティリにより閉じ込められたその時から、琥兎は燈杜美の演奏とともに、
「―――天の海、濁清まう颯颯の声、微睡誘う迅よ。柵む者への矛と為れ……『天澄衛陣(クー・リヴェンス)』」
自身の清浄なる『風』を、既に放ち、自分たちの周囲に纏っていた。
それを用い、敵の色欲の風を浴びないようにしていたが……接近したセシリーは、僅かに浴びてしまった。
すぐに吹き飛ばそうとしたが、セシリーからのアイコンタクトで、このまま『色欲の風にひっかかった』芝居を続け……、
「……で、セシリー嬢は接近し、一撃を食らわせてやったってわけだ。どんな気分だ? 騙してるつもりが、騙されていた気分は?」
チャスティリは琥兎の狙銃槍により、下半身の一部にダメージを受けていた。先刻の得意げな表情が消え、まさに悔し気に、醜く顔を歪めている。
『て、てめえら! 殺す! 正義の名のもとに、殺してやる!』
「……なら、マリアも正義の名のもとに、裁いてあげる」
と、マリアラーラが前に進み出た。
『あ?』
「これから、緊急ホームルームを始めるよ!」
いつしか、周囲の光景が、
まるでどこかの学校の、教室の様なそれに変化していた。机や椅子は円形に並べられ、その中心部にチャスティリが。
『な、なんだこれは! なぜ私が、こんなところに……』
すでに天使は、マリアラーラのパラドクスの術中にはまっていた。
「『神々のさばき(ジャッジメント・クラスメイト)』……セシリーが言ってたでしょ?あなたは裁く方じゃなく、裁かれる方だって。これから、告発を始めるよ」
教室内の教壇には、マリアラーラが。
「天使様は……『一人称があーしの、悪魔呼ばわりされた神』から……名前は『イール』だっけ? 彼女から告発されてるの」
再び、別の方向へ目を向けると、そこにはアークデーモン『讐倣玉人』の一人……イールの姿が。
「証言をお願いなの」
『よくもよくもあーしたちを切り捨てやがったな絶対許さねー』
『あーしはてめーの命令聞いて、その通りに動いたってのに、「よくやった」の一言もねー。何様のつもりだてめー』
『アールもサールも、スールもウールも働いてやったってのに、てめーの采配ミスで殺されたんだろーがよー』
『てゆーか、マッチポンプなんて、信頼できる協力者が要るのに繋がり否定とかヤバない?』
『つーかよー、今回の失敗。てめーのミスでしかねーだろーがよー。責任取れや責任!まじ許さねー!』
イールの一方的な、早口なその口調に、
チャスティリは、言い返せない。いや、
『う……うるさい! お前らが無能だから悪い!』
ようやく、それだけを口にできた。
「……マリアも、許さないよ」
そして、マリアラーラも、
「……マリアのこと、異端呼ばわりしたのも、許してないからね!」
『……ぐっ……』
「……自己弁護、したい? してもいいけど……誰も聞いてくれないよ?」
『な、なんだと!』
「だって天使様は、『誰とも繋がっちゃダメ』な信仰してるんだもの。繋がりがダメだから……」
誰にも意見を言えない。
誰からも同調してもらえない。
「……繋がらない、干渉されない。『孤独』……だけど、勝手に話が進み、全てから置いてかれる。……天使様の信仰ってそういう事だもの」
『ち、違う! これは信仰だ! 正しい信仰だ!』
見苦しく言い返すチャスティリに、
「セシリー、証言をお願いなの」
セシリーが、イールに代わり進み出た。
●……自らの意思を持ち、自らも信仰を考え、生きよ。
「私はシスターだ。シスターとして言わせてもらうが……お前の言うそれは、信仰ではなく『服従』というのだ」
教会や聖堂での説教の様に、セシリーの声が凛々しく響く。
「そもそも信仰そのものも『繋がり』だ。信仰する事で、その対象や、信者同士とで繋がるもの。それを否定した時点で……お前の理屈は、始めから破綻していたのだ」
セシリーの意見に、
『ち、違う! つながりがあるから穢れが起こる! それは信仰や、ひいては生命を否定する事……』
もはや、理屈になっていない言葉を述べるだけのチャスティリ。
「……琥兎、証言してなの」
続き、進み出た琥兎。
「……自分は天使だ。そして、天使として、人の営みを見て確実に言える事がある」
彼女は、傍らの燈杜美を優しく抱き寄せ、
「……誰かを想い、共に居られる。だからこそ、人は強く生きられるんだ」
琥兎に抱き寄せられ、燈杜美は安堵したように口元に笑みを浮かべていた。
そして
「……それから、もう一つ。……テメェのは、『純潔』じゃねぇ。度の過ぎた『潔癖』……人の想いをも切り捨てる、異常で、邪悪な『潔癖』だ!」
怒りとともに、言い放った。
もはや、チャスティリは言い返せなかった。
「ほらもう判決が、始まっちゃう。……『信仰間違えてましたゴメンナサイ』って、あーしベーダ……イールに、それからオルモー村の皆に謝れるなら……許してあげても良いよ?」
マリアラーラが提案するも、
『う、うるさい……間違ってるのはお前らだ! た、正しい信仰は、私だ……』
それでもなお、チャスティリは。己の過ちを、自身の罪を、認めようとしない。
「……じゃ、判決。被告人チャスティリ『有罪」。罪状は『偽りの信仰の強制』。判決は……」
『だまれえええっ! お前らまた、『色欲の風』でハサミ殺してやる!』
いきり立ったチャスティリだったが、
「判決は、『死刑』!」
「執行人は、私と琥兎だ!」
上半身を、琥兎の狙銃槍が貫き、
セシリーのルクスリアが、斬首していた。
そして、斬首され、果てたと同時に、
周囲から分断していた、天使の障壁も消滅。
オルモー村へ歪んだ信仰を持ち込んだ天使は、ここに消滅した。
「皆さん、救っていただき……」
「ありがとう、ございました……」
フォワとカイユは、ディアボロスたちに礼を述べる。
他の村人たちも、ある者は不承不承、別の物は『目が覚めた』とばかりに張り切って、皆に礼を。
「シスター様! どうかこのオルモー村の新たな司祭に!」などと言う者もいれば、
「……おらはまだ、信じらんねえ。あの天使様が、悪者だったなんて……」と、まだ今までの信仰を捨てきれない者も。
「……とりあえず、みなさん。私はこの村に残るわけはいかないので、少しだけ……」
と、集まった村人たちにセシリーは、説教を。
「先刻に言った通り、人と人とが触れあう事は、大いに結構。互いに触れ合い、愛し合い、そこから絆を結ぶ事。それは主の教えに沿う、尊き行為だ」
それから……と、続ける。
「娼館に関しても、立場上は推奨……とは言えないが、ある程度ならば解禁しても良いと思う。まあ、公序良俗に反しない程度で、あまり大っぴらにせず、店側も客も、健全かつ誠実に利用する、という取り決めが必要だろう。そのあたりは、村の皆で決めてほしい」
娼館や、それに関連する事。確かに問題が全くないわけではなく、健全な事とも言いがたいが、
少なくとも、『人が生まれる事が悪』などという歪んだ教えよりも、はるかにまともではある。問題も起こるが、ここから生じる人と人との絆や触れ合い、そして生まれる愛も、確かにあるのだから。
そして、任務が済んだディアボロスたちは、帰還までの時間。
オルモー村に滞在し、見守られつつ出立した。
「……どうかこの村にも、人と人との触れ合いと絆が生まれるように」
見守られつつ、セシリーは、皆は、そう願うのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【通信障害】がLV2になった!
【平穏結界】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
【ガードアップ】がLV2になった!
【ドレイン】LV1が発生!