リプレイ

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　赤髪の小悪魔、天瀬・初名（カオス処方箋・g00765）。
　金髪のミイラ、ハニエル・フェニックス（第七の天使・g00897）。
　青髪の狼女、朝比奈・架恋（駄菓子屋の少女・g01789）。
　三人並べばその髪色鮮やか、シグナルガールズ！
「ダンスパーティー！　と来れば私達『シグナルガールズ』の出番だね！」
　今は全身をその顔に至るまで、ところどころ赤く汚れたボロボロの包帯で覆い隠したハニエル。しかしその手にはロッドを握り、パレードは勿論ダンスの準備も万端だ。
「ハニィちゃんの言う通り！　ハロウィンを盛り上げるのです！」
　棒つきの飴を噛み砕きつつも、ばっちり笑顔で応える初名。露出多めで蠱惑的なその姿はまさに小悪魔。ミニスカートの下にだけは短めスパッツ着用で、架恋が恥ずかしがるようなことにもなりません！
　……実は初名、個人的にはその下を見られても一向に構わないんですけどネッ。
「さぁシグナルガールズ、出撃なのですよー！」
「うんっ、皆で楽しく踊ろう♪」
　そんな架恋はふさふさで艶々の耳と尻尾を揺らしつつ、纏う衣装はメイドさん。ロングスカートの古き良きヴィクトリアンスタイルで上品に、けれどちらりと覗く鋭い爪が仄昏さも演出して。
　三人それぞれに仮装も決めて、パレードの始まりです！

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　パレードは恙なく、それでいて楽しく進み。
　曲調がより明るく楽しいものに変わったら、いよいよ最初のダンスの時間！
「まず私がセンターいくねっ！　ドキドキ……！！」
　ほんの少しの緊張と、皆に楽しんで貰いたいという熱意で。
　センターに向かう架恋を、初名とハニエルは応援しつつバックへ。
　優雅に、けれど楽しげに。
　箒を持ったメイドさんの円を描くような動きはきっとお掃除の時間。スカートの裾を翻しながら何かを差し出す動きはティータイムの配膳。
　山奥から人里へと降りてきた狼女の少女が、一人前のメイドを夢見てお屋敷で健気に修行の日々を送る――そんなミュージカル仕立てだ。
　小悪魔初名も腕を振り上げ、子供のように囃し立てて盛り上げる中、うっかり架恋は爪を立て、紙をビリビリ破いちゃった！？
　後ろでぎこちなく歌い踊るミイラハニエルも、釣られてお皿を割っちゃった。
　でもめげない。すぐに立ち上がって軽やかにお仕事ダンス。そして最後は、スカートの裾をちょこんと摘んでたくし上げ。
　優雅にカーテシーで締め括り。声援を送ってくれた観客達に笑顔で手を振り、バックに下がる。
「次は私！」
　交代でセンターに出てきたのは、やはり覚束ない足取りのハニエルだ。
　ロッドをポールの代わりにダンス。
　全身に包帯を余すところなく巻きつけているからこそ、その四肢の靭やかさがはっきりと見て取れる。それでも一度は死して冷たく硬くなったその身で踊れば動きはゆっくりとぎこちなく。
（「私は棒が斜めに立ってるイメージで……」）
　バックには、棒のイメージを浮かべながら、少しのんびりとしながらも重力に沿った動きや意識してつけた緩急で個性的に演出する架恋と、音楽に合わせてポップなリズムを刻みながら、観客も思わず身体を動かしたくなるような動きで魅せる初名がいる。
　彼女達と比べて滑らかさに欠けた動きのミイラ――だが、ロッドに包帯が巻きつき、解け始めた瞬間からその動きに変化が訪れた。
　するすると包帯が解ける度に、露わになる美しい肢体と共に、徐々に速く、滑らかに、指先まで神経が通うように舞うのだ。
　そして全ての包帯がハニエルの身体から取り払われた時、彼女は生まれ変わるのだ。
　宝石やアクセサリーで彩られた新たな包帯は、水着のようにその身体を飾り立てる。細く透き通るような肌は少女特有の色香を醸し出す。
　ちょっとセクシーにポーズを決めれば、周囲からはほうと感嘆の溜息すら漏れた。
「それじゃあ、ういなちゃんいくよーっ！」
　少女の再誕の物語も終われば、いよいよトリを飾るのは初名。
　待ってましたと言わんばかりに躍り出て、披露するのはその全身を余すところなく躍動させたアクロバティックダンス！
　シグナルガールズとして、大勢の目の前で踊るのはこれが初めてじゃない。寧ろ、この感覚は、高揚感は、鮮明に覚えている。まるで昨日のことのように、いつだって思い出せる。
　はしゃぐような心で、その気持ちの赴くままに今日は踊ろう！
　バク転に前転、ウィンドミルだってお手の物。
　縦横無尽に動いて踊って魅せる魅せる！
　アクロバティックな跳躍で、綺麗に折り曲げた脚と観客に手を振る自由な上半身で、動きに様々な表情を見せる架恋と動きを合わせたり。
（「今ならあのバク転にだって着いていける」）
　負けじとアップテンポに、それでいて初名の動きを引き立てるようにヒップホップを刻むハニエルの手を借りて、ムーンサルトを披露したり。
　駆け巡る中で観客とも何人も続けてハイタッチしたり――仲間と、観客と、心も体も距離を近づけて。
　何より大切なのは兎に角、楽しそうに、嬉しそうに、いつだってとびきりの笑顔を忘れないこと！
（「笑ってればきっと素敵な未来は待ち構えているのです！」）
　だから、笑顔で踊って声を上げるのだ。
「みんなー！　楽しんでるゥー！？」
「うおー！！」
「いえーい！！」
「楽しんでるゥー！！」
　観客のボルテージも最高潮だ！
「皆、楽しそう……私も今、すっごく楽しい♪」
「赤でも私達は止まらない。パレードの続く限り、どこまでも続けちゃおう！」
　初名と観客の様子に、架恋とハニエルも顔を見合わせ頷いて。
　その言葉通りに、シグナルガールズは進むのだ！

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「盛り上がってるゥー！？」
「盛り上がってるゥー！！」
　観客達の興奮も醒めやらぬ中、三人を中心にしてパレードは進んでいき。
　二回目のダンスも大盛況の内に終わり――そして、パレードにも終わりがやってくる。
「何だか終わっちゃうのが勿体ないね！」
「本当に……流石にちょっと疲れたけど、名残惜しいな」
　ハニエルと架恋は、心地よい疲労感を覚えながらも、終点に近づきちょっとだけ、寂しげな色を乗せてぽつりと。
　すると初名が、煌めくような汗を滴らせながらも、笑顔のままで二人を振り返って。
「また、シグナルガールズの皆で歌って踊ろっ♪」
　このパレードが、パーティーが終わったら。
　次もまた、三人で何処かに出かければいい。
　こうしてパフォーマンスを披露するのは勿論、ただのんびりと遊びに行くのだって悪くない。
　シグナルガールズ、新たな約束の予感に三人で笑顔を浮かべれば。
「お疲れ様ー！！」
「すっごくよかったー！！」
「ディアボロスのお姉ちゃんたち、かっこいいー！！　かわいいー！！」
　終点にて、観客達が拍手喝采と共に出迎えてくれる。
　老若男女、全ての観客を虜にしたようだ。
「みんなー！　ありがとー！！」
「ありがとうございます！」
「ほんとにありがとっ！」
　だから、シグナルガールズも笑顔で応えるのだ。
　だって本当に、三人も楽しかったから。


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（「何かおかしいの」）
　マリアラーラ・シルヴァ（コキュバス・g02935）は首を傾げていた。
　敢えて言うなら『思ってたのと違う』といったところだろうか。
　何がって、この日の為に張り切って前日までに準備しておいたのだ。
　素敵なバラの公園でのハロウィンパーティ。折角だから皆の為におみやげを用意してあげたいな、って。
　その一心で専門家の教えも乞うて、薔薇から抽出したオイルを沢山用意して。リボンを結んだ小さな小瓶に入れて、バスケットに詰めて。
　忘れ物なし、準備は万端。
　いざ、意気揚々と会場入りして参加者の人々に配ろうとした。……そこまではよかった。
「オイルいりませんか？」
　こういうものを不要と感じる人もいるかも知れないし、押しつけがましくして迷惑になってもいけない。
　そう思ったからこそ、マリアラーラは小瓶を手にそう聞いて回った、のだが。
（「……なんで誰も受け取ってくれないの？」）
　人々の表情を見るに、少なくとも表立って迷惑そうにしている様子はない。
　と言うより、本来であれば幼くても人類の希望、皆のヒーローなディアボロスからの折角の贈り物を、余程苦手なものでもない限りは無下にはしない、筈なのだが。
（「……マッチに少し垂らして火をつけてって実演販売しても遠巻きなのは何で？」）
　火の点いたマッチを掲げて見せるが成果は変わらず。
　しかしここで、ハッとマリアラーラはやにわに気がついた。こちらを見る――いや、見守る人々の表情は寧ろ微笑ましげだ。
　つまりこのハロウィンという日、パーティーという舞台、人々にとって自分がどういう姿に映っているのかを。
「……違うよ？　これはマッチ売りの少女コスプレじゃないよ！」
　そういうシチュエーションだと思われている！
　寧ろ受け取らないのがロールプレイ上の正解だと思われている！　マリアラーラに全くそんな意図はないのに！
「空気読んで誰も受け取らないとかしなくていいんだよー！？」
　違う、そうじゃない。
　渾身のそんな思いを乗せた叫びは、しかし虚しくヴェルニー公園を満たす賑やかなパーティーの喧騒に掻き消されてしまったのだった……。

　――その後。
　誤解を解くべく懸命に弁解しつつ、諦めずに会場中を回って配り歩いたマリアラーラであったが。
　結局、真っ当に配っても『善意から』誰にも受け取って貰えず、スタッフさん達に事情を話してお土産に持って帰って貰うことになりましたとさ。


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「ハッピーハロウィン！　で、トリックオアトリート！」
　ノスリ・アスターゼイン（共喰い・g01118）が、気さくに笑って声を上げる。
　菓子を頂戴、と向けた夕映えの瞳の中には、バスケットを手にした時先案内人達の姿が映る。
「ひとつきりなんて選べないし、全部貰わなかったら惜しいじゃないの」
　そんな明朗な笑い声が秋薔薇を擽れば、楽しげに揺れて。
　薔薇の園でパーティーをと、準備を進めてくれていた若いスタッフの皆へも届いたのなら。
「皆々サマもお疲れ様と、ありがとう」
　ノスリは悪戯な笑みと共に目配せし、手招きもして誘うのだ。
「イケメンと一緒に休憩は如何？」
　キラキラと輝くような、それこそ背景に秋薔薇でも咲きそうな。
　言葉通りの美男子の微笑みに、若い娘達は揃って心臓を撃ち抜かれたようだ。きゃああと黄色い歓声が上がったり、ぽおっと頬を染めて見惚れたり。
　男性陣も思わず感嘆の溜息を漏らしたほどだ。
「まぁ」
「……凄いものですね」
　若者達の心をその手の内に、鮮やかに収めたノスリへと、綱月も双眸を瞬かせ、翠市も驚いた表情だ。
　当のノスリは飄々と。ゲスト達へと労い、そしてお菓子のお礼に振る舞うアイスローズティー。
　華やかな彩と芳香は、目でも香りでも楽しめるものだ。
「いつも俺達を導いてくれる時先案内人サンにだって、支えてくれる皆にだって、今日を楽しんで貰いたいし」
　ノスリも――ディアボロスも、いつだって感謝しているのだ。
　自分達を、支えてくれている人々のことを。
「英気を養って貰いたいからさ」
　このパーティーだって、ディアボロスの為にと企画、準備してくれたものだ。
　それに、時先案内人や新宿島の住人と直接交流出来る機会はそう多くないから、この機会に皆の為に、何かお返しがしたかった。
　だから、皆で楽しく薔薇のお茶会を。
「――乾杯！」
　カップを掲げれば、皆も続いて唱和してくれる。
　美味しいお茶に、お菓子だけでも満たされる場だ。それを皆と分かち合うこの瞬間はきっと、よりいっそう魅惑の糧になるに違いない。
　楽しげな人々の様子を、微笑みながら眺めていたノスリだが、ふと。
（「……甘い香り？」）
　ほんの、仄か。それでも、確かに届いた薔薇の香り。
　秋でも鮮やかに輝くピンク。その花弁の一枚、ふわりカップに舞い降りれば。
　ローズティーの水面に浮かぶ花の舟に、ノスリは一度だけ瞬いたけれど。
「薔薇もダンスをしたかったみたい」
　そうしてその表情を、更に咲み綻ばせて見せた。
「解るような気も致します。素晴らしい舞踊と行進でございましたから」
　ふふ、と綱月もまた綻ぶように咲う。
　伝搬していく。人々の間に、会場中に。
　愛想のないエドガーさえも、僅かに微かに微笑んでいる……ような、気がした。
（「楽し気に笑う皆の横顔は美しい」）
　ノスリは思うのだ。
　満たされた笑顔は活き活きと、生命の魅力に溢れている。
　凛と咲く花が、懸命に伸びる緑が、美しいように。
　ふと見上げれば、天のまだ低い位置にはほんのり月も煌めいていて。
（「羞花閉月と言うけれど」）
　ノスリの見渡す限り、ここには美しいものしかない。
（「薔薇は斯くも秀麗で、月たる綱月の笑みも閉じるに及ばない麗しさだ」）
　匂い立つほど美しい花と。
　視線が絡めば微笑みを向ける地上の月。
　そして、希望に満ち溢れた人々の笑い声。
「こんな喜びの日々がこれからも訪れるように――俺も、希わずにはいられないよ」
　束の間の休息、大切な日常。
　その尊さを味わうように手に取ったクッキーを、ノスリはゆっくりと味わうのだった。


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　艷やかな紫黒の毛並みは艶やかにして気高く。
　威厳と優美さを兼ね備えた妖狐の寵姫は年に一度の宴を前に――どうやら、心弾ませているらしかった。
　ぱたぱたと揺れる尾がその証左。
　沿道で応援したパレードの賑わいに、会場に満ちる薔薇の香りに、その興奮は醒めやらず。
　そんな己に気づいて、玉藻前こと永辿・ヤコウ（繕い屋・g04118）はひとつ苦笑して。
　けれども、仲間がいると思えばそれも悪くない。
　パレードは楽しかったけれど、ヤコウもまた自ら舞踊に興じるよりは、鑑賞側が性に合っていると思うものだから。
「綱月さんと一緒ですね」
　その行進には加わらず、スタッフ達に混ざってお菓子を配る時先案内人の一人、シスター姿の綱月へと笑み掛けて。
「とりっくおあとりーと」
「ふふ、ええ。はっぴー、はろうぃーん。ですね」
　案内の時とは打って変わって、気張らず慣れぬ様子でゆっくり返す綱月から、赤と金のリボンで飾られた小さな袋を受け取る。
　中身は薔薇のジャム入り桃饅頭。いただきます、と早速一口、味わってみれば。
「わ、わ、美味しい……！」
　花弁入りの薔薇のジャムは甘酸っぱく、少しだけ添えるように底に敷かれたカスタードクリームは優しい味わいながら甘さ控えめだ。ジャムの味を殺すことなく引き立てている。
　思わずヤコウの耳と尻尾もぴこん！　とはしゃぐように跳ね上がる。
「本当に美味しいです。大切な人にもお土産にしたいな」
　もうひとつ頂いても良いでしょうか、と恐縮しつつもそう頼んでみれば。
「大切な方とでしたら、是非ご一緒に楽しんでくださいな」
　手渡された袋はふたつ。
　ありがとうございます、とお礼を告げつつ。帰ったらふたりでちょっとしたお茶会をするのもよさそうだ、なんて考えつつ。
　でも、今は折角のパーティー会場にいるものだから。
「僕ね、お腹が空いてしまいました」
「まあ。でしたら、きっちんかーで軽食をお願いしてみては？」
「ええ、綱月さんも一緒に休憩しませんか」
「……よろしいのですか？」
　瞬く琥珀は、しかし少し嬉しそうだ。
「分け合えば沢山、食べられるでしょう？」
「そういうことでしたら、是非ご一緒させてください」
　柔らかなその表情に、ヤコウもほんのり温かな気持ちになって。
（「しあわせ配りも素敵だけれど、綱月さんにもしあわせな気持ちになって貰えたら、とても嬉しい」）
　優しい気持ちでもう一度、桃饅頭のお礼を告げてから。
　連れ立って向かうのはやはり、軽食とデザートのキッチンカー。
　ジャムと果物をふんだんに使ったフルーツサンドにタルトは目にも華やかで。
　塩気が更に食を進めてくれるキッシュも、甘味が多い中では捨て難い。
「どれもこれも美味しそうで目移りしてしまいますね」
「本当に。どうしましょうか」
　綱月も、魅力的な品ばかりだからこそ悩んでいる様子。
「でしたら、皆で分けて頂きましょうか」
　ふたりでは食べきれない量でも、会場を用意してくれたスタッフの皆もテーブルに招けばきっと楽しく食べ切れる。
　名案でございますね、と綱月もにこり笑みつつ賛同してくれるものだから、ローズティーと食事メニュー全部オーダーで！
　カフェテーブルに料理と人が並べば、これぞ楽しいパーティーの光景。
「はっぴーはろうぃん、ですね」
　ヤコウが笑めば綱月も、集まった人々も笑顔を返してくれる。
（「誰の許にも笑顔としあわせが咲く、素敵な宵でありますように」）
　月が優しく照らすまで。
　花が眠りに落ちるまで。

最終結果:成功
完成日	2023年11月11日