リプレイ
不義・無二
クロノヴェーダのせいで大変な思いをしてる人が色んなトコにいるんだなァ。
俺も故郷は時刻で全部無くなっちまったから、その辺の苦労はよーく分かるわ。
ってな訳で手伝うぜ。
◆行動方針
【飛翔】して荷物の上げ下げや運搬するわ~。
「こーゆー時翼があると便利よナ」
丸太とか石とか、建築材料になりそうなモンは魔晶剣使って【解体】技能でチャチャっと材料にしたろ。
◆初対面の人には「ッス、ッスね」口調で
苦労してる人には自分と重ねてリスペクトするわ
◆アドリブ・連携大歓迎
火撫・穂垂
火を熾すには、種火と、薪と、風が要る。
命だって、村だって一緒。
人々が種火であるならば、ボクらが整えるべきなのは、燃えるために必要な『薪』と、正しく燃えるための『風』の通り道。
下地は、ちゃんと作っておかないとね。
飲むにしても、作るにしても、まずは水が要る。
まずは水源を用意しよう。土を湿らせて、喉も潤せるような。
固くなった土も解して、植物が根を伸ばせるように。
何を育てるかは、あとからでも決められる。
逆に言えば、何を育てるにしても、下地ができていないと、何も育てられない。
ボクはただ、選べるようにするだけ。
最後に選ぶのは、みんなであるべきだから。
カドレクス・フェニカルス
貧すれば鈍する。
鈍くあるな、刃を研ぎ澄ませ。
剣ばかりではなく、土に突き立てるそいつらのもな
麦畑が主だな。
砂の魔剣を突き立て、【土壌改良】を行おう
春に麦を蒔くのは当然として、育成の早いラディッシュや雪に埋もれても育つものも幾つかは見繕ってきた。
兵士、そして家族らが全て食えるだけの広さか否かは……計算通りに行くかどうかはわからんが。
幾ら多めに見積もっても、千人食わすにはこれだけでは足りん。
ざっくりとこの3倍は欲しい。
……重ねるしかなかろうな。3度。
水は来た。土地もある。俺が動けば足りるというなら、やる他なかろうよ……
(ざっくりとLv1土壌改良での範囲を2800アール程と仮定しております)
荻原・仁
兵士達を抱えられるだけの土地を探し捨てられた廃村を確保。村の周囲にあると思われる果樹の場所を把握しておく。果樹の場所については、村に兵士達が移住してから教えることにする。
次に村にある畑を整える。食べ物を作れるだけの畑にする為に耕しておく。作業を迅速に行えるように【士気高揚】を発動して作業を行う。
畑を整えた後農作物を植えれるように野菜や豆、芋などの苗を持ち込んでおき、準備が整った後速やかに畑に植えていく。
余裕があれば打ち捨てられている家の修繕を行うことにする。
「この村を立て直せれば何とかなるかもしれねー。」
人数分の食糧を用意するのも大変だが準備しておき、農地の開墾も行う。
緋薙・紅花
何をするにしても必要なのは水
直近で必要な水は【水源】があるでしょうから
わたしたちが去った後のことを考えて、と
近くに果物がなる森があって
村があった痕跡があるなら
ここには生活のための水場があったはず
それを探しましょう
その前っと水を溜め込む水瓶を探して
見つけたら≪我々流・旋風脚『紅桐花香≫で【クリーニング】
洗浄殺菌すれば使えるはず
次は水場捜索
井戸や泉だったなら同じく【クリーニング】で変な菌を殺しまして
水瓶に貯水しましょう
これで当面お水には困らないはず
後は本格的な治水ですね
『アースワーク・ハンマー』を使って大雑把な水路を
近くの川から水を引けば生活しやすいはず
「てーいっ」
どっかんと工事しちゃいますよ!
●農村の再建へ
閑散とした村は、そこに人々の営みがあったことを無言のうちに伝えていた。
藁葺きの建物の漆喰は剥がれ、放棄された畑は見る影もなく荒れ果てている。
けれどよく見れば、村のそこかしこに生活の痕があり、生き延びるための工夫の名残があった。
「この村を立て直せれば何とかなるかもしれねー」
村に足を踏み入れた荻原・仁(闇の中の光・g03118)は、目の前に広がる光景にそう言った。
肩にかけた大きな荷物には、畑に作付けできそうな種や苗がいっぱいに入っている。
「クロノヴェーダのせいで大変な思いをしてる人が色んなトコにいるんだなァ」
人の気配が失せた荒涼たる村の有様を目の当たりにして、不義・無二(予言の鳥・g01986)は遣る瀬なさそうに独りごちた。
放棄されたこの村にも、人々の生活の営みがあったのだ。
戦乱に翻弄され、住人たちも住み慣れた土地を捨てざるを得ない状況に陥ったのだろう。
善良な村人たちが兵隊となり、戦いの末に飢餓に苦しんでいるのもまた、クロノヴェーダの仕業だ。
「俺も刻逆で故郷は全部なくなっちまったから……その辺の苦労はよーく分かるッすよ」
無二が、仁に――重たげな荷物を地面にどさりと置いた仁に言った。
「そうか……。やるべきことは多いな」
仁もまた、あの大災厄で家族を失っている。
彼も思うところはあろうが――ただ小さく頷いて応えたのみだった。
これから千人単位の人間が生活できるだけの基盤を作るのだ。
規模が規模であるだけに、成すべきことは多い。
「俺は森に行ってみよう。食えるものがどれだけあるのか調べたい」
秋という季節柄、まだ採取できる果実もあるだろう。
見つけ出した上で、その場所を村にやってくる人々に教えてやれば、貴重な情報となるはずだ。
手に入れられるものは何でも利用しなければ、文明の未発達なこの時代で生き延びることはできない。
「さて、と。俺もできることしないとな」
歩いていく仁の背を見ながらそう言うと、無二はパラドクスの力で飛翔した。
黒き翼をはばたかせて急上昇すると、上空から村の状況を見下ろす。
「家とかも直せば結構使えそうだなァ……」
空から俯瞰してみると、森から流れてくる川も見出すことができた。
けれど、大勢が生活していくためには、それだけでは水資源として不足に違いない。
「まずは材料の確保、か」
自在に空を飛ぶ鳥のように気流に乗り、美しく飛翔した無二は、ひとまず村近傍の森を目指した。
木々をすり抜けるように飛んで材料になりそうな樹木や石を確認。
村との距離を計算に入れつつ、木々のただ中に降り立つ。
と、今度は魔晶剣を閃かせて木を切り始めた。
「チャチャっと材料にしたろ」
魔晶剣を使っての解体技術により、手際よく薪や建材が作られていく。
ひとまずそれを抱えると、無二は村に向けて飛び立った。
「こーゆーとき翼があると便利よナ」
ちょっと時間はかかるが、家の修繕や火起こしの材料確保のためには有効な方法と言えた。
秋が過ぎれば、厳しい冬がやってくる――。
●水を求めて
「飲むにしても、作るにしても、まずは水が要る」
荒れ果てた村に入った火撫・穂垂(奉火・g00006)は、まず水の入手のため行動を起こすことにした。
火が人類の発展を導いたように、水もまた人間の生活には欠くことのできない要素だ。
故にこそ人類は川の流れを基点に文明を発展させてきたのである。
ここでも村人たちは何らかの手段で水を手に入れていたに違いない。
「森から流れてくる川があるッすね」
飛翔して薪を運んできた無二が、降り立つや、穂垂に伝えた。
どうやら村と川との間には距離があるらしく、千人単位の人間が日々を暮らしていくには不便極まりない。
「まずは水源を用意しよう。土を湿らせて、喉も潤せるような」
元からある川の流れに接続すれば、多くの人々が、容易に水を手に入れられるような状況を作り出せるだろう。
穂垂は無二の情報をもとに、どこに水の流れを作り出すかを思案する。
「井戸のようなものは流石になさそうですか」
同じく水の入手を第一に考えていた緋薙・紅花(サージェナイト・g03888)は、村の中で或るものを探し歩いていた。
荒れ果てた民家を覗いて、その中を探しては、利用可能なものを一つずつ持ち出して並べる。
それは水を貯蔵するための水瓶であった。
「これとこれはまだ使えそうですね。うわ、蜘蛛の巣が!」
大きな水瓶に張っていた蜘蛛の巣をパタパタと払いながら、紅花が苦笑いをする。
いくつかは割れてしまっていたが、まだまだ使用できそうなものばかりだった。
「飲み水を入れるとなると、綺麗にしないとですね」
紅花は集めた水瓶を地面に並べ終えると、構えを取って、霊力を脚に集中させた。
――我々流・旋風脚『紅桐花香』!
戦闘では猛烈な風と襲撃を繰り出す攻撃も、このような時には浄化の風を巻き起こす。
鮮やかな回し蹴りは穏やかな風を生じさせ、水瓶の穢れを瞬く間に払った。
程なく――穂垂の力により、清らかな水の流れる音が聞こえてきた。
「川と繋げば水の確保はできる。生きていくための量は手に入る、はず」
「では、水路作りはお任せを」
穂垂に紅花は応えると、地面に横たえさせていたアースワーク・ハンマーを重たげに持ち上げた。
「てーいっ」
ただのハンマーではない。
掘削用の爆撃槌は、地面に叩きつけられると、凄まじい威力で土を刳り堀を作り出す。
水源から水を引き込むための水路を作るべく、紅花は、どすんどかんと水の通り道を繋げていった。
「どんどん工事しちゃいますよ!」
汗を拭いつつ、紅花は溌剌とハンマーを振るう。
水の流れは水路を伝い、水の入手を容易にすることだろう。
復讐者たちはこの地に留まることはできない。
だからこそ、人々が生き延び、生活できる方法を二人は整えるのだった。
●畑の再開拓
復讐者たちが動き出し、村の再建に向けての準備は着々と整いつつあった。
冷静にそれを把握しながら、カドレクス・フェニカルス(ベドグレインの魔人・g03110)も行動を開始する。
「貧すれば鈍する、か」
食がなければ人心は荒み、生き延びるためにどんな汚いことでも平然とやるようになるものだ。
村で自活させるには、まず人々の腹を満たすための方策を実行に移さなければなるまい。
「麦畑が主だな」
放棄された広大な畑を前に、カドレクスは丸眼鏡の奥の目を細めた。
土壌を整えたなら、春に蒔く麦は主食の麦粥になる。
野菜は人々を温めるシチューにもなろう。
季節に即した耕作法を考慮したカドレクスは、これからの時期に備え、育成の早いラディッシュを始めとして、冬季にも収穫可能なカブや葉菜類の種をも用意していた。
勿論、千人単位の生活を支えるとなれば、畑の規模は相当なものになる。
「ふむ、兵士とその家族らが食えるだけの広さを作るとなれば……」
村人となる者の人数と既存の畑の規模、そして作付け面積を勘案し、カドレクスは自らの能力と照らし合わせる。
パラドクスにより生じる効果の影響範囲から円の面積を割り出して、アール換算。
彼にとっては実に簡単な計算により、弾き出されたのは――。
「幾ら多めに見積もっても、千人食わすにはこれだけでは足りん」
だが、やらなければならない。その叡智と超常の力で、不可能を可能にしなければ。
「水は来た。土地もある。俺が動けば足りるというなら、やる他なかろうよ……」
砂嵐の魔力を凝縮した黒き魔剣を土に突き立てるや、雑草が吹き飛ばされ、土壌がまるで生き物のように広範囲に撹拌され始めた。
生きるためには知恵を働かせなければならない。
それができない者から死んでいく。
過酷な環境下に於いては日々もまた戦いであり、兵隊となった農民たちも、これからは土を相手にすべきだ。
「……力を重ねるしかなかろうな」
が、カドレクスと言えど、一人で全ての土地を改良し切るのは難しい。
「畑を整えるのであれば手伝おう」
と、果実の入った袋を畦道に置いて、森の探索から戻ってきた仁が言った。
袋には、自生していたベリー類が包まれていた。
シルバーベリーと呼ばれるグミの実や、クランベリー、チョークベリー。
酸味があり、生食の他にもジャムにしたり付け合わせにしたりと、様々な料理に使えるだろう。
「植えられるものも持ってきてるからな」
仁もまた人参やキャベツなどの野菜類に豆――作付けできそうな芋類を幅広く持参していた。
そのうちの幾つかは、これからやってくるであろう兵士たちも、栽培できるものだろう。
「なるほど。……では、本格的に始めるとしよう」
カドレクスが頷き、その土壌改良のもと、仁が品種に分けて種を植えていく。
肥沃な大地が作り出されれば、人々も、思い思いに作物を育て始めることだろう。
●よみがえる農村
飛翔して森と村を行き来する無二には、復讐者たちの手で変わりゆく村の有様がよく見えた。
超常の力を行使する彼らでも、千人規模が暮らせるだけの生活基盤を作り上げるのは容易ではない。
その労苦に敬意を覚えつつ、無二は自身も木材や石を懸命に運んでいたのだった。
「薪運んできたッスよ」
「かまどは使えそう。火は命だから、これからの時期は特に」
家々の設備を見て回っていた穂垂が、集められた薪を前にして呟くように言った。
調理をするためにも、厳寒の季節を越えるためにも、火は欠かせない。
かまども建物そのものも、多少の修繕が必要な箇所こそあったが、それも無二が運んできた木材や石材でなんとかなりそうだ。
勿論、材料が用意されているというだけでも、移住する人々にとって大きな助けになる。
「これだけ集めておけばひとまず大丈夫っスよね」
無二が言い、畑を見やった。
冬にも収穫できる野菜が作付けされ、いつしか栄養に富んだ畑が広がっていた。
「建物の修繕もやっておくか」
土に汚れた手で額の汗を拭った仁は、それから荒れ果てた建物に目を向けた。
人が暮らすにはもちろん、家が必要である。
仁は一息つくと、休む間もなく建物の修繕作業に取り掛かる。
「ふむ……それなりに上手く行ったようだな」
カドレクスが手を加えた畑を見やった。
超常の力によって栄養素が撹拌され、作物が育つには好適な土壌が出来上がったのだ。
足りない分はやってくる人々に任せれば良い。
「これで水にも困ることはなさそうですね」
ハンマーの持ち手を地面に突き立てて紅花は言った。
水路を流れる水も浄化の風により清浄化され、村のあちこちに行き渡るようになっていた。
「何を育てるかは、あとからでも決められる。逆に言えば、何を育てるにしても、下地ができていないと、何も育てられない」
見違えるほどになった村の様子を眺めながら、穂垂は言った。
「火を熾すには、種火と、薪と、風が要る。命だって、村だって一緒」
だとすれば、穂垂はその下地を整えただけ。
それをどう用い、どう保ち続けるのかも、人の手に委ねられている。
ただの援助だけでは、大勢の人間を自活させることはできないのだ。
「ボクはただ、選べるようにするだけ。最後に選ぶのは、みんなであるべきだから」
あとはやってくる人々が知恵を尽くして、懸命に努力すること。
それこそが肝要だろう。
かくして復讐者たちの手により、村は見違えるように一新された。
畑は美しく整えられ、水路には、清らかな水が爽やかな音をたてて流れていく。
家並みも修繕され、人が住めるような状態にまで改善された。
村の再建はここに成った。
あとは森に留まっている指揮官に、この地で生きるという意思を固めてもらわねばならない。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV1が発生!
【水源】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
【士気高揚】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【ラストリベンジ】LV1が発生!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
カドレクス・フェニカルス
はじめに言っておこう。
人肉を貪るつもりがないのならやめておけ。著しく非効率だ。
狙いは痩せぎすの側近だな。片方を説き伏せられれば指揮官と共にもう一人を説得させることも出来よう。
故に示すは理、というわけだ
まずもって、略奪を許された兵が行儀よく食料だけを奪うかね?
断言しようか。ない。命じた瞬間に、君達は勇敢なる軍勢から単なる賊へと堕ちる。
それでも腹は満ちるか?それも否だ。奪った食料を皆が仲良しこよしに分配するかね?これも言い切ろうか。ない。無辜の村人に振り下ろされた剣は、次に肩を並べた仲間を切り伏せるだろうさ。
さて、そんな進退窮まる君達に森で兎を追うよりは遥かにマシな選択肢を持ってきた。聞くかね?
荻原・仁
アイルランド軍の指揮官への目通りが叶うように先ずは地位が上そうな者を探して、指揮官に会えるように計らってもらう。
「今の補給が来ていない状況はわかっている。このままじゃジリ貧だ。俺たちが兵士を受け入れる事が出来るだけの土地を用意した。」
先ずは土地を用意した事を伝える。次に、食糧の準備が出来ていることと、畑を準備してあることを伝える。
このまま待機していてもいずれは食糧不足から兵士達が暴徒になってしまうだけだと説得する。受け入れる事が出来るだけの場所と食糧の用意が出来ていることを再度伝え、穏便にすむように説得する。
●飢餓兵団
鬱蒼とした森は薄暗く、葉を伝って落ちてくる雫が土を湿らせていた。
飢餓に苦しむ兵士たちは泥に塗れ、襲ってくる虫にも苛まれながら耐えるしかない。
「生き残ったのにこれかよ……!」
「落ち着け、叫んでいたら余計に腹が減るぞ……」
なだめたのは、岩の上に座る壮年だった。
軍装からして小隊長らしく見えるその男も、折れそうな心を辛うじて保たせているに過ぎない。
だから荻原・仁(闇の中の光・g03118)が近づいても、虚ろな目で見上げただけだった。
「指揮官と話がしたいんだが。何処にいるか教えてもらえるか」
「……向こうだ」
壮年が投げやりに指差す。
仁が目を凝らしてみれば、木々の間に粗末な木こり小屋が見えた。
「助かる」
指揮官のもとへと歩いていく彼を、止める者はいない。
「憐れなものだ」
物資を欠いた軍隊の惨めな姿に、カドレクス・フェニカルス(ベドグレインの魔人・g03110)は小さく吐息した。
指揮官の居所を目配せで伝えてきた仁に、頷き返して、小屋へと向かう。
――説得に応じて活路を開くか、或いは頑迷に破滅の道を突き進むか。
兵士たちの行く末は二つに一つだ。
●会談
「早急にご決断を。これ以上は兵たちも黙っていませんぞ」
思い悩む指揮官に対して、痩せぎすの側近が詰め寄るように言った。
小屋の扉が開け放たれたのは、まさにその時だ。
「はじめに言っておこう。人肉を貪るつもりがないのならやめておけ。著しく非効率だ」
中へと踏み入ったカドレクスは、指揮官の決断を制するようにまず言った。
「何者か!」
「なんだ、何処からきやがった!」
側近の二人が鋭く誰何する。
「俺が何者かなど大した問題ではなかろう。多くの兵が賊に堕ちようとしているのだからな」
カドレクスの不遜な眼差し――眼鏡の奥に光る瞳は、頬がこけた側近の男に向けられていた。
「賊、だと?」
「そうだろう? まずもって、略奪を許された兵が行儀よく食料だけを奪うかね?」
まるで悪事を暴かれるような心地がしたのだろう。指揮官を含めた三人が絶句する。
カドレクスは返答を待たず、矢継ぎ早に言った。
「断言しようか。ない。命じた瞬間に、君達は勇敢なる軍勢から単なる賊へと堕ちるというわけだ」
「では、どうしろと言うのだ。他に方法がないとすれば……」
痩せた男が飢えた狼めいた目で、カドレクスを睨む。
「それで腹は満ちるのか? それも否だ。奪った食料を皆が仲良しこよしに分配するかね?」
理屈を重んじる人間は、より正当な道理の前に屈する。
「これも言い切ろうか。ない。無辜の村人に振り下ろされた剣は、次に肩を並べた仲間を切り伏せるだろうさ」
獣と化した人間に統制はきかない。
頬のこけた側近の男は渋面を作って呻いた。
「飯が食えなきゃ俺たちゃ死んじまうんだぞ」
太った側近の言い様に、カドレクスは口元に笑みを浮かべた。
窓外から入る篝火の明かりに眼鏡を光らせながら、彼は言う。
「さて、そんな進退窮まる君達に森で兎を追うよりは遥かにマシな選択肢を持ってきた。聞くかね?」
部屋の扉を開けて入ってきたのは、外で話を聞いていた仁だった。
●活路
「補給が来ていない状況はわかっている。このままじゃジリ貧だ」
誤魔化せはしないと、仁が揺るぎなき事実を指摘する。
そして次に口にした言葉こそ、兵団の唯一の活路となるものだった。
「俺たちが土地を用意した。兵士を受け入れる事ができるだけのな」
「土地を、だって?」
今まで話の成り行きを静観していた青年指揮官が言った。
「当面食えるだけの食糧も準備できている。作物を育てられる畑も、だ」
「そりゃすげぇ……本当だったら飢えなくて済みますぜ」
「本当であるならば、な」
太っちょの側近が活気づき、痩せぎすの男が腕組みをして言った。
「真実であれば、何ともいい話だね」
青年指揮官が仁に疑うような目を向けた。
「このまま待機していてどうなる? 食糧不足からいずれ兵士たちが暴れだすだけだろう」
そう言って仁はできるだけ具体的に、再建した村の様子を語って聞かせた。
果実を採取することができる森を。
住めるよう立て直された家並みを。
そして作物が育ちゆく肥沃な土を。
体験したことを語っていく仁の話は具体性があり、指揮官を含めた三人の心を揺さぶるに足るものだった。
つまるところ――仁は希望の道を指し示し、カドレクスは悲惨な末路を説いたわけだ。
さながら、飴と鞭。
「罠かも知れませんが」
「だったら行って見てみりゃいい。誰も行かねえってんなら、おれが行くぞ。兵隊になったのは腹が減って苦しむためじゃねえんだ。みんなそうだ!」
太っちょの側近が矢も楯もたまらずという風に言った。
「嘘かどうかはすぐ分かること、か」
指揮官が呟く。
どのみち、このままでは餓死か罪に手を汚すかである。
「……。ご決断を」
痩せぎすの男が言う。
そしてカドレクスと仁の前で、指揮官の青年は深く頷いたのだった。
「この二人の言葉を信じる。村の確認が取れ次第、兵を動かそう」
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【土壌改良】がLV2になった!
【操作会得】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV2になった!
火撫・穂垂
尖兵が来た……?
荒っぽい、傷つけ、呑み込むばかりの火。危険だな。
……けど、本能ばかり。だったら……。
行って、惑火。
この火は、注意を惹くモノ。命の火を飲み込まんと欲する者なら、これ以上ない疑似餌になる。
ふわり、ふわり、漂わせて、ある程度は村から逸らすことも出来る筈。
……あとは、意識の外から刈り取るだけ。
首筋に、鎌の刃を突き立てて、獲る。
……嵐が近そうだな。
けど、せっかく熾した火を、消させるわけにはいかない。
あまりに強い雨も風も、火を消すものではあるけれど……半端な水と風は、逆に火を強めるんだ。
下手に手を出すと、自分が焼かれるってこと……教えてあげなきゃいけないね。
「尖兵が来た……?」
後ろで結んだ黒髪をそよがせながら、火撫・穂垂(奉火・g00006)は呟いていた。
風が、肌を刺すような殺気と粗暴な喊声を運んできたのだ。
「森の奥――向こうからだ」
幸い、アイルランド軍が留まっている森とは真逆の方角からだった。
察知するや否、穂垂が身の丈ほどもある大鎌を手に、森のとば口へと走っていく。
山里の少数部族を出自とする穂垂にとって、この地形で先手を打つのは難しくない。
「荒っぽい、傷つけ、呑み込むばかりの火。危険だな」
静かなる炎を宿したような穂垂の瞳は、木の根や土を蹴って突き進んでくる竜鱗兵どもを捉えていた。
看過すれば再建した村が無残に破壊し尽くされてしまうだろう。
穂垂は雅な拵えの短刀を手にすると、躊躇いなく自身の左腕を切りつけた。
「――ッ」
鮮血が流れ、血雫が伝い落ちる。
と、朱が土に触れるより早く、それが見る間に蛍火へと変じていった。
ぽつりぽつりと浮かび上がった妖しの火が、穂垂の周囲を幻想的に漂い始める。
「行って、惑火」
美しくも儚い火が、森を突き進む竜鱗兵めがけて飛んでいった。
「ぐ、ぬ……?」
「なんだ……これは……」
喉を潰したような重々しい声をあげて、竜鱗兵が突如として現れた火に足を止めた。
その濁った橙色の瞳に、ゆらゆらと惑火が映り込む。
――火は命。
故に、村を破壊し『生命を奪おうと』する竜鱗兵を、その名の通りに惹きつけ惑乱させるのだ。
姿勢を低くして走り込んできた穂垂が、竜鱗兵どもの死角から迫り、首筋めがけて大鎌を振り抜いた――!
どさりと倒れていく竜鱗兵たち。
「……嵐が近そうだな」
木々の奥から、更なる敵兵どもの叫び声と足音が聞こえてくる。
「けど、せっかく熾した火を、消させるわけにはいかない」
半端な水も風も、却って火勢を強めるものだ。
そしてひとたび燃え上がればやがて燎原の火となり、ドラゴンの軍勢をも燃やし尽くすだろう。
「下手に手を出すと、自分が焼かれるってこと……教えてあげなきゃいけないね」
村はずれは、平原である。
森の中で迎え撃つか、或いは開けた場所で戦闘に臨むか。
どちらにせよ、しっかりと迎え撃てば、村への被害を防ぐことが出来るだろう。
穂垂の活躍により、復讐者が戦いの主導権を握ったのだ。
大成功🔵🔵🔵
効果1【現の夢】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV3になった!
荻原・仁
兵士達の方は上手く引いてくれるようなので、まだ倒しきっていない竜麟兵に向かうとするか。使えるパラドクスは遠慮なく使い、敵に攻撃をしかける。アイルランド軍の兵士達はこちらの用意した土地に行っただろうが、念の為残っていないかどうか周囲を確認しておく。残っていれば速やかに救出して避難場所に向かうよう指示。
残っていなければ、敵への攻撃に集中する。
「お前達の思うようにはさせない!」
敵を煽るように言葉を紡ぐ。冷静さをなくしたらこちらの攻撃が通りやすくなるからな。
他のメンバーと共に残っている敵を掃討する事に注力する。
※アドリブ・連携歓迎
カドレクス・フェニカルス
分断御苦労。殲滅する。
狐の一匹、兎の一羽でも使い魔にすれば、それで【追跡】は事足りる。
【殺気】を見せずにおくことに何か難しいことがあるか?その程度の【演技】は容易いことだ。
まして、既に森中は死地。
来るしかあるまいよ、この平原に
【不意打ち】【高速詠唱】。
飢餓もそうだが、停滞そのものが苦痛であったろうよ。
何事か動く理由があるならば、停滞は次の行動への待機、休息へと変わる。
先の見えぬ静止、いやぁ、よくも兵らは耐えたものだ。称賛に値する。
翻って竜の尖兵らよ。──まだ動くかね?結構。
では、重ねて深く深い停滞を。とこしえの休息を与えよう。
今迄散々に君等が与えてきたものだ、突き返されても致し方あるまい?
奴崎・娑婆蔵
●SPD
・攻防時効果2全て使用
穂垂のお嬢が先んじて鉄火場を塩梅して下すったものと伺いやした
この位置取り、せいぜい有難く使わせて頂くと致しやしょう
●森の中で迎え撃つ
・木々のあわいへ隠れ潜み(地形の利用)、敵群の到来を待ち受ける
・息を殺し(呼吸法)、足音を殺し(忍び足)、敵布陣を確認しながら(情報収集)、敵行軍の後尾を【追跡】
・静かに『ドス』を抜き【黒死斬】発動
・背後から咽喉や臓腑を刺し抉っての【暗殺】にて敵頭数を逐次減らさん
・敵に捕捉され交戦状況となったら『トンカラ刀』を抜刀し応戦
・敵集団に囲まれずに、分断しつつ立ち回れるよう、周囲の木々に適宜【一刀両断】を使用、木の幹をうまい方角へ蹴倒さん
霧原・瑶蓮
「ほう、自分の思い通りにならないからと駄々を捏ね出した連中の登場か。ひとつ試させてもらうとしよう」
「――我流喧嘩殺法、霧原瑶蓮。行くぞ」
向こうの反撃は叩きつけてくるんだろう?
威力は侮れないが軌道は読みやすいはずだ。
●達人、二人
木の枝を踏み割りながら、暴虐なる竜の兵が森の中を突き進む。
妖し火により陣容を掻き乱された軍勢は隊伍を乱しながら村を目指していた。
超常の力を持たぬ人々にとって、それは決して太刀打ちの出来ぬ恐るべき脅威と言えるだろう。
されど木々の間で彼らを待ち受ける者たちは、そうではない。
「穂垂のお嬢が先んじて鉄火場を塩梅して下すったとか」
全身に包帯を巻きつけた異相の侠客――奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)は、樹の幹を背にして身を隠しつつ、敵集団の動向を窺った。
穂垂の生じさせた惑火によって、突撃竜鱗兵の虚を突くのは容易くなっている。
「この位置取り、せいぜい有難く使わせて頂くと致しやしょう」
血に染め上げられたような二ツの目で敵軍を見定めると、娑婆蔵はじっと待ち構える。
果たして――足音を響かせながら、彼の目の前を竜鱗兵どもが走り抜けていった。
娑婆蔵は懐より白鞘のドスを抜くと、気配を殺して木々の間を駆け抜け、足音さえ殆ど響かせずに隊列後方へと迫った。
疾風のように駆け、白刃を閃かせる。
「……カッ!?」
声という声も立てられぬまま、伸び切った後方の竜鱗兵が突然倒れた。
頸部から流れる血が大地に染み込んでいく。
「は……?」
近くにいた者が咄嗟のことに呆然としている間に、その胸から鋭利な刃が突き出した。
臓腑を刳り、引き抜く。
「止まれ、構えろ! 襲撃だ!」
流石の竜鱗兵も異常事態に気付いて足を止め、一様に身構えた。
ドスの血を払って帯に差すと、娑婆蔵が鉄鞘に籠めたトンカラ刀に手をかける。
「何者だ! 殺されてぇらしいな!」
荒くれ者を体現したような竜鱗兵が凄みをきかせる。
「なァに、名乗るほどのもんじゃございやせん。……お前さんがた、お覚悟の程を」
これより命を散らしゆく異形の暴兵に、仁義など要らぬ。
打ちおろされる棍棒を、ゆらりゆらりと幻惑するような歩法で避けていく娑婆蔵。
と、敵の隊列前方から一体の竜鱗兵が投げ飛ばされてきて同胞を薙ぎ倒しながら地面に転がった。
「気をつけろっ! 一人ではないぞ……!」
「なッ……何だというのだ……!」
醜い声で言い合う竜鱗兵。
「ほう、自分の思い通りにならないからと駄々を捏ね出した連中の登場か」
挟撃するように逆方向から敵集団を突いたのは、霧原・瑶蓮(無銘の拳士・g04575)だった。
両の拳を打ち合わせて構えを取る。
「ひとつ試させてもらうとしよう」
一瞬、竜鱗兵どもがどちらに攻めかかろうか考えあぐねる。
「――我流喧嘩殺法、霧原瑶蓮。行くぞ」
その隙を見過ごす瑶蓮ではなく、炎のように高められた闘気を揺らめかせながら打ちかかった。
拳の一撃が凄まじい衝撃波を生じさせ、竜鱗兵を纏めて吹き飛ばす。
木の幹に背中からぶち当たって息絶える竜鱗兵たち。
「ガァァァ!」
「死ねぃッ!」
同胞の死に猛り狂った竜鱗兵が悪意と呪詛の滾る棍棒を瑶蓮に叩きつける!
「大振りだ。それでは当たらん」
身を反らした瑶蓮の目の前を棍棒がかすめ、盛大に地面を抉った。
大型の鈍器を力に任せて振るうならば、攻撃に失敗した時に大きな隙が生じるものだ。
鍛え抜かれた肉体と反射神経を駆使して、瑶蓮は集団に取り巻かれながらも一撃たりとて貰うことはない。
次々に振り下ろされる打撃を回避し、バランスを崩した者に拳を叩き込んでいく。
鈍器というものは、叩きつけるか、薙ぎ払うかである。
――威力は侮れないが、軌道は読みやすい。
如何に数で攻めかかろうとも、一手一手を正確に対処すれば喰らう筈もない。
無論、それは瑶蓮の鍛え抜かれた肉体と格闘技術あっての話である。
我流の喧嘩殺法は、使い手の身体能力も合わさって恐るべき絶技と化している。
奴崎組組員が一人――瑶蓮の戦いぶりを横目に、組長たる娑婆蔵は呪詛を湛えた妖刀を大上段に構えた。
「数だけは多いな」
「所詮は鉄砲玉。差し詰め烏合の衆といったところでございやしょう」
娑婆蔵の意志を具現化した斬撃が電光のような閃きを見せたかと思うと、木が音を立てて倒れていく。
倒木に邪魔されて敵集団が分かたれた。
「これにて分断。仕上げと洒落込みやしょうか」
「応、こちらは任せておけ」
微かな笑みを浮かべて瑶蓮が竜鱗兵に打ちかかる。
集団の利を活かせなくなった竜の兵たちを、娑婆蔵と瑶蓮が屠っていく。
●追撃
「アイルランド兵の方は大丈夫そうだな」
指揮官と側近への説得を成功させた荻原・仁(闇の中の光・g03118)は、戦場めがけて森を駆けていた。
アイルランド軍は兵の一部を村の確認に赴かせ、報告を待って移動を開始するようであったが――それは上手く行けば、彼らを復讐者とドラゴンとの戦いに巻き込まずに済むことを意味していた。
まさに上首尾であり、これで心置きなく戦闘に挑めるというわけだ。
「村に行かせるわけにはいかねー。ここで全滅させてやるぜ」
特殊金属製の籠手で覆った拳を握り込み、森を駆け抜けると、仁は突撃竜鱗兵の集団を発見。躊躇いなく隊列の横合いから突っ込んでいった。
「なんだ……!?」
竜鱗兵が棍棒を振り上げるよりも早く、仁は籠手に覆われたその拳を巨体の胸板に叩き込む!
体も軽く、振り抜いた拳にいつも以上の力が宿っていたのは、ここまで積み重ねてきた残留効果の賜物だ。
凄まじい衝撃波が、頑強な筋肉で覆われた竜の肉体を襲い、内臓を破壊し尽くしながら吹き飛ばした。
無残に転がり事切れる竜鱗兵。
余りの威力に驚き目を見開いた竜の兵が仁を囲む。
「総出で襲うつもりだったんだろうが、アテがはずれたな。お前らはここで終わりだ」
だが仁は微塵も気圧されることなく、却って挑発の言葉を放った。
「終わりだと……!」
「グハハハハ! 笑わせるなよ、たった一人で何ができる!」
「試してみるか? 後悔するぜ」
竜鱗兵はさながら粗暴な荒くれ者だ。
そんな者どもを相手にする戦闘(ステゴロ)は、仁の得意とするところ――!
「人間風情が、大口を叩くな!」
目論見どおりに激昂した竜鱗兵が、棍棒を手に殴りかかってくる。
パンク系のジャケットを翻しながら仁はそれを紙一重で避け、反撃の拳をぶち込んだ!
「お前達の思うようにはさせない!」
たった一人を包囲しようとした竜鱗兵が打撃音と共に次々に吹き飛び、木々や地面に叩きつけられる。
「くそ……つ、強すぎる……! 態勢を立て直すぞ!」
「逃がすかよ!」
後ずさりする竜鱗兵たちを、仁が容赦なく追撃する。
苛烈な戦いを繰り広げながらも、彼は他の復讐者と共に戦っているという事実を忘れはしない。
(「……追い込めそうだ」)
仁が竜鱗兵を追い立てていくその先には、復讐者の強大なる術師が待ち構えていた――。
●竜鱗兵の末路
森のあちこちで戦闘が繰り広げられ、突撃竜鱗兵の軍勢が乱れ立っていた。
狼狽えた異形の者どもは本能的に味方を探し、集団を形成して敗走する兵士のように駆けていく。
木々の下生えに身を隠した小狐が、ビードロのような二つの瞳でそれを見つめていた――。
「御苦労。では、殲滅するとしよう」
秋風が草木をそよがせながら吹き抜けていく。
平原に立ったカドレクス・フェニカルス(ベドグレインの魔人・g03110)は、森を駆け抜ける狐を介して敵軍の動向を掴んでいた。
森を抜ける途中に見つけた狐を、使い魔としたのである。
「既に森中は死地。来るしかあるまいよ、この平原に」
アイルランド軍の動きをも確認し、戦闘に巻き込まれる危険がないと判断したカドレクスは、平原にて敵を待ち構えることにしたのだ。
やがて愚かにも――突撃竜鱗兵は多くの犠牲を払いながら、森を突破してカドレクスの眼前にその姿を現したのだった。
「軍とも言えんな、あれでは」
鼻で笑いたくもなる。
寄り集まった残存兵力は、思考停止に陥ったまま突撃してきたのだ。
傲然と嗤笑したカドレクスは構築した魔術を励起させながら、一方で、今まで耐え続けていたアイルランド兵に思いを馳せていた。
――飢餓もそうだが、停滞そのものが苦痛であったろうよ。
それはさながら光の見えぬ暗がりに閉じ込められるような責め苦であったに違いない。
しかし希望があるならば。
――停滞は次の行動への待機、休息へと変わる。
「先の見えぬ静止、いやぁ、よくも兵らは耐えたものだ。称賛に値する」
それに引きかえ、眼前の暴兵はどうか。
「竜の尖兵らよ。──まだ動くかね? ……結構」
ようやく森を抜けた竜鱗兵が見たものは、手をかざすカドレクスの姿だった。
轟轟と音をたてて暴風が猛る。
吹き荒れる極寒の風は竜人を包み、その血をも凍らせる。
超凡な術士の手で紡ぎ上げられた猛吹雪が、竜鱗兵を包み始めた……!
「重ねて深く深い停滞を。とこしえの休息を与えよう」
豊富な魔術知識を持つカドレクスにとって、この程度の術の行使は実に容易い。凡百の術士がどれほどの労力を費やしても実現できぬほどの超常現象を、ただの一呼吸で作り上げたのだ。
「今迄散々に君等が与えてきたものだ、突き返されても致し方あるまい?」
葬送の言葉のように、カドレクスの声が響いた。
「ガ、グア、ァァ……」
不意を打たれた竜鱗兵に、反撃などできるはずもなく。
吹きすさぶ猛吹雪の中で、竜の兵士達は哀れな凍死体と化して平原に転がった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【建造物分解】LV1が発生!
【使い魔使役】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV3になった!
【命中アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
●大慈雨フミムーン、襲来
大空が俄かにかき曇り、暗雲の中に雷が光り始めた。
嵐を告げるような湿った風が平原を駆け抜けていく。
そして森から天高く飛翔した強大なる蒼竜が、開けた大地に降下して大息した。
「竜鱗兵どもめ、やられおったか」
老人めいた声は空気を震わせて響き渡り、知性を秘めた瞳が眼前の復讐者と、その背後にある再建された村を睨んだ。
「フゥム……我が手勢を打ち果たしたのだ。邪魔をするなと言うても無駄よな」
大慈雨フミムーン――雨を呼び轟雷を操る猛き竜だ。
その力で呼び起こす冷たい雨は生ける者を凍えさせ、情け容赦なく飲み込んでいく。
再建した村も、畑も、この竜の手にかかれば後に残るは荒れ地のみだ。
「どれ、少し遊んでやるとしよう。大地に這う虫けらどもよ」
フミムーンが重々しく告げ、その魔力を立ち昇らせる――!
荻原・仁
手下は倒したから、後はボスだけだ。
パラドクスはデストロイスマッシュをメインに、使える物は惜しげなく使用する。
「こいつを放っておいたら、被害が広がる。倒しておかねーとな。」
他のメンバーと連携を取って攻撃を行う。凍えるような技には当たらないように避けてみる。て、避けれるのか?
こちらからの攻撃は脳天から当たるように飛びかかっていく。敵の能力が強すぎるので、出来るだけ速やかに倒し切れるようにかかっていく。
アヴァタール級の敵は強いことは分かっているので、持てる力を全て使って倒しにかかるつもりだ。
奴崎・娑婆蔵
●SPD
・攻防時効果2全て使用
大将首は竜の首――よござんす
『大地に這う虫けら』ァ?
そちらさん、どこをどう見てやがるんで?
手前、姓は奴崎名は娑婆蔵
人呼んで『八ツ裂き娑婆蔵』
八ツ裂きにしてやりまさァ
・【エアライド】を駆使し、地表より上空目掛け鋭く機動
・雨雲の集合程度から落雷/敵攻撃射線を予期しつつ、その回避にもまたエアライドの歩数を使用
・エアライドを使い切った後は、風火輪『火車』をカッ飛ばしての【飛翔】にシフト
・【精神集中】し、骨と肉と腱の付き方を観察/検分(情報収集)
・雨雲直下を迂回しつつ敵へ接近ざま【黒死斬】発動
・妖刀『トンカラ刀』の切っ先を敵の体躯へ突き込み、侭、飛翔することで【両断】せん
カドレクス・フェニカルス
竜か。竜だな。
くたばれ。
地を這う虫ケラ、大いに結構。
我が物顔で空を塞ぐデカブツに取り付くには実に具合がいいものだ。
雷鳴、冷雨、既知程容易いものもない。
【氷雪使い】【電撃使い】【魔術知識】【高速詠唱】……嗚呼、そうとも。俺はお前を識っている。
雨には雪嵐を、雷鳴には雷撃を。
『対竜魔術師』カドレクス・フェニカルス──森深き城より来たりて貴様を打ち倒す者の名だ。
来たる雨には己が剣を。
最早貴様の慈悲は必要ない。
いずれ己が力で地を切り開き始めるだろう彼等がため。
否──
俺の為に、そっ首戴く。
嗚呼竜よ、竜よ──最期の言葉はそれで満足か?
『屠竜式』──"息吹断チ"。
緋薙・紅花
うーん、完全に出遅れ感
最後くらいはしゃきっと暴れてきますかね!
空を飛んでいる相手にはちょっと相性が悪いわたしですが
ちゃんと手はありますからね!
≪復讐の刃≫で投擲用のロングスピアを多数出現
『霊錬気功』使用
本来は拳打の補助に使うものですが多少は投擲の助けになるはず
【操作会得】も使って精度をあげていきましょう!
というわけで順番に槍投げ投擲で攻撃です!
雷に関しては避雷針が欲しいところですが!
『スカーレット』を全身に纏って【ガードアップ】でダメージ軽減
雨にも負けず雷にも負けず投擲です!
というかドラゴンのくせに偉そうなんですよ
遊んでやるとしよう、じゃなくて降りてこーい!!
そしたら蹴り飛ばしてあげます!
火撫・穂垂
雨は、命をもたらすもの。
風は、命を運ぶもの。
……でも、キミの嵐は、ただ命を弄ぶだけ。氾濫する川が総てを押し流すように。
だったら、堤防を作るだけ。ボクらは、キミを拒絶する。
雨は水流となって、地を押し流す。
だったら、話は簡単。上に行けばいい。
エアライドが発生してるなら、それだけで話は終わる。
猛火。
ボクの中の火で、身体能力を引き上げる。そんな雨じゃ、ボクの火は消せやしない。
一気に懐に飛び込んで、その首筋に、鎌の刃先を突き立てて、獲る。
これだけでかい相手なら、身体も足場になりそうだから、跳び放題だよ。
知ってた?虫って、強いんだよ。
身体の何倍もの高さを跳ね、自分より大きい敵も容易く打ち倒すんだ。
霧原・瑶蓮
――では改めて。我流喧嘩殺法、霧原瑶蓮だ。尋常にお相手仕る。
ところでお前、その図体で虫ほど小さいサイズの動きを把握できるのか? 対応できるのか?
今から試してやる。
【飛翔】と【エアライド】を小刻みに使用して攻撃の狙いを絞らせずに懐へ潜り込む。潜り込んだ先では【フェイント】を最大限活用。
部下たちみたいに大雑把な攻撃しかできないのか。ほら、把握もできない。対応もできない。
煽って向こうが怒ればしめたもの、冷静さを欠いて余計に攻撃は避けやすくなるはずだ。
大きければ強いと勘違いしたお前の負けだ。今度はこの鱗が俺の蹴りより強いのか、試してやるよ。
●徒手に八つ裂き、命の火
暗雲に稲妻が走り、雷鳴が轟く。
大自然の力をも捻じ曲げる蒼き竜は、風雲を纏いながら眼下の敵を睥睨していた。
対する復讐者の一人――巻き起こされた風に着物をはためかせる奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)は、包帯を巻きつけた総身から殺気を放ち、凄みを効かせる。
「大地に這う虫けらァ? そちらさん、どこをどう見てやがるんで?」
刃を思わせる眼光にドスの利いた声は、そんじょそこらの敵兵であれば竦み上がる程のもの。
舐めてもらっちゃあいけねぇと妖刀トンカラ刀に手をかけた娑婆蔵は、ひたと敵に視線を合わせたまま仁義を切った。
「手前、姓は奴崎名は娑婆蔵。人呼んで『八ツ裂き娑婆蔵』」
腰を落として抜刀の構え。
そして顔だけを上げて低く告げる。
「八ツ裂きにしてやりまさァ」
「抜かしたな青二才よ。が……その意気や良し」
「漸く骨のありそうな奴が出てきたな」
強大な竜を前にしてさえ少しも動じることなく、悠然と構えを取って霧原・瑶蓮(無銘の拳士・g04575)が言った。目の前に構えた拳を握り込み、それでいて余計な体の力は抜いて深く呼気を発する。
「――では改めて。我流喧嘩殺法、霧原瑶蓮だ。尋常にお相手仕る」
それは闘士としての礼儀であるとも、彼の肉体と精神を戦闘に没入させるための儀礼とも見えた。
「雨は、命をもたらすもの。風は、命を運ぶもの」
背丈程もある大鎌を両手で構えた火撫・穂垂(奉火・g00006)が表情を動かさぬまま、詠じるような言葉を口にする。
「……でも、キミの嵐は、ただ命を弄ぶだけ。氾濫する川が総てを押し流すように」
「身の程を弁えぬ者には然るべき鉄槌を下すのみじゃ。弱き者が立ち上がろうなど笑止千万」
自らが天災の化身ででもあるように、クロノヴェーダたる蒼き竜は平然とのたまう。
驕慢なる竜を見返して、穂垂は凛と告げた。
「だったら、堤防を作るだけ。ボクらは、キミを拒絶する」
降り出した雨に打たれながらも、少女のその魂に宿した炎が――生命の火が烈々と燃え盛る。
闘志は揺らめく陽炎となって、肌に触れる雨滴さえ蒸発させゆくようだった。
「ならばやってみるが良い。矮小なる人間ども」
言われなくとも――穂垂は火舞を、収穫の象徴たる大鎌を手に大地を蹴った。
娑婆蔵、そして瑶蓮も瞬時に散開する。
(「大将首は竜の首――よござんす」)
頭上にたちこめる雷雲が轟々と唸りをあげ、転瞬、耳を聾する豪雷が娑婆蔵を狙い迸る!
攻撃を予期して動き出していた娑婆蔵は、草履で平原の土を蹴って疾風のように駆け、雷槌に打たれるより早く跳躍していた。
虚空を更に蹴り飛ばして弾かれるように速度を上げ、立て続けに襲い来る雷霆を避ける。
「一度だけ、ってェのも心もとなくはありやすが……ものは使いようって奴で」
追いかけるように落ちてくる雷槌に加えて、前方から挟撃するように電光の蛇が娑婆蔵を襲ってきた。
「……チッ」
刹那、娑婆蔵の体は火と風の力で飛翔していた。
亡き者を攫い駆け抜ける妖異――火車の名を冠する彼専用の風火輪が両足で風を放ち、火を噴いたのだ。
「ところでお前、その図体で俺たちの動きを把握できるのか? 対応できるのか?」
片眉を上げて瑶蓮が問う。
「カッ、大口を叩いたものよ。余程腕に自信があるとみえる」
「今から試してやる」
土を蹴り、瑶蓮は蒼竜めがけ間合いを詰めた。
消えた――そう思わせるような疾さで。
「羽虫が、ほざきおる」
フミムーンは輝く蒼き宝珠を差し向けて瑶蓮を猛追させると、その頭上から豪雨を生じさせた。
雨滴は自然の域を超え、機銃掃射もかくやと降り注ぐ。
「雨と言うからどの程度のものかと思ったが……部下たちみたいに大雑把な攻撃しかできないのか」
平原を疾駆する瑶蓮は、しかし飛ぶように雨を避ける。
地を蹴ればその鍛え抜かれた体は軽々と宙に浮き、虚空を壁のように蹴って瞬時に方向転換して。
「ほら、把握もできない。対応もできない。それでよく偉そうな口を叩けたものだな」
超局地的豪雨の効果範囲から巧みに逃れ、且つ、瑶蓮は蒼竜を間合いに捉えてさえいた。
「雨は水流となって、地を押し流す」
そうしている間にも、超常の濁流が平原を呑み込んでいく。
「だったら、話は簡単。上に行けばいい」
けれど巻き込まれる筈だった穂垂の体は虚空に躍り、蒼竜めがけて更に空を蹴っていた。
跳躍は身体能力の爆発的向上も手伝って、天高く少女を運び、フミムーンを瞠目させる。
大風が吹こうとも大雨に晒されようとも、その胸に燃える炎は消えることはない。
火は命。
火は人々を温め、闇を照らし、しかして希望の光となる。
そして山里と共に生き、木々と共に在った火撫の少女は、自然を弄ぶ竜の傲慢を決して赦しはしない――!
「これだけでかい相手なら、身体も足場になる。跳び放題だよ」
羽織を翻し、宙返りするように蒼竜の背に着地するや、穂垂が敵の首に大鎌の刃を突き立てた。
豊穣の象徴たる鎌が、竜の鱗を刳って深々とその肉を切り裂く!
「グガアアァァァァァァァ――!!」
暴れまわる蒼竜が宝珠を操って邪魔者を払い除けようとしたが、穂垂は宙に身を躍らせて飛翔し、舞うようにその全てを回避してみせた。
雨に黒髪を濡らしながら空中で大鎌を構える穂垂。
吐く息は少女の内で燃える火を表すように熱く、白い。
「何故じゃ……何故捉えられぬ……!」
宙に浮かぶ蒼き巨体の周囲を、目に見えぬ影と化した瑶蓮が縦横無尽に駆け回り、翻弄する。
持てる術技を最大限に注ぎ込んだ攻撃に、蒼竜が歯噛みした。
フミムーンはその体躯と術の性質上、近接戦(インファイト)を苦手とする。
その上、瑶蓮に嘲弄されて自負心をいたく傷つけられ、攻撃に精彩を欠き始めた。
「大きければ強いと勘違いしたお前の負けだ」
がら空きになった左胴を見て瑶蓮が放ったのは、渾身の飛び蹴りだ。
砲弾めいた一撃が巨体に直撃。
硬い鱗が爆ぜるように吹き飛んだ!
「ガ、グゥッ……!」
余りの威力に骨を叩き折られ、体をくねらせながら吹っ飛ぶフミムーン。
「竜たァ言え所詮は肉も骨もある生き物。と来れば」
雷雲の直下を飛びながら、弧を描いて蒼竜の死角より迫る娑婆蔵。
両腕、背骨、そして首――骨格があれば筋肉があり腱がある。
組員二人の攻撃に乗じて死角より肉薄することに成功した奴崎組組長は、急降下しつつトンカラ刀を逆手に構えた。
「蒼竜の肉ってなァどんなもんでございやしょうかね」
呪詛を帯びた妖刀は竜の強靭な鱗を断ち斬ッて、火車の勢いのまま、首や背骨とともに左腕をも深く裂いていた。
「ガァ、ア……!? この、羽虫どもが、ァッ……!」
腱を断たれた腕は最早そこにぶらついているだけであり、抉られた骨髄に呪詛を流し込まれたフミムーンがのたくりながら、竜牙を剥き出しにして叫びをあげた。
「知ってた? 虫って、強いんだよ」
大鎌を手に飛翔し竜の眼前に躍り出た穂垂が、心火を燃え上がらせながら蒼き竜に言う。
「身体の何倍もの高さを跳ね、自分より大きい敵も容易く打ち倒すんだ」
矮小と思われていた者の苛烈なる抵抗。
命を侮った者に、容赦は要らぬ。
●屠られるもの
「小癪な虫けらどもめ、この儂を押しとどめようというのか……!」
大慈雨フミムーンが怒りに眦を裂き、天地を震わす咆哮を放った。
復讐者たちの攻撃を受けながらも依然としてその力は侮れず、自然法則さえ捻じ曲げて猛威を振るう。
冷雨は大地に生命の存在を許さず、轟雷は猛き竜の強大さを誇示するように平原を穿つ。
「竜か。竜だな。くたばれ」
睥睨する蒼竜を見上げながら、カドレクス・フェニカルス(ベドグレインの魔人・g03110)は短く言い捨てた。超常の力を振るうドラゴンを前に、魔術師の眼光は却ってその鋭さを増し、敵の心を逆撫でする。
「地を這う虫ケラ、大いに結構」
相手が『竜』である以上――カドレクスはその討ち取り方を心得ている。
「我が物顔で空を塞ぐデカブツに取り付くには実に具合がいいものだ」
戦闘の中でフミムーンの魔力を計測、自らの知識とそれに基づく予測の範疇から脱していないと彼は頷く。
……嗚呼、そうとも。俺はお前を識っている。
敵の手の内が判明していれば戦いにおいてこれほど有利なことはない。
カドレクスは操る魔力で風を喚び、氷雪を交えて吹雪と化させ、魔術杖より放たれた電撃は雷霆を迎え撃った。
「後はお前だけだ。ここで終わりにさせてもらう」
全てを奪い尽くそうとする蒼き竜の前に、荻原・仁(闇の中の光・g03118)は敢然と立ち塞がっていた。
いま食い止めなければ力を込めて再建したあの村も、兵士たちも無慈悲に蹂躙され尽くしてしまう。
どれほど強い相手であろうが――いや、その力が強大であればあるほど、ここを通すわけにはいかない。
(「こいつを放っておいたら、被害が広がる。倒しておかねーと」)
味方の援護で竜の注意が逸れた瞬間に、仁は平原を疾駆した。
その手に握られているのは、身長をも超える長柄の武器――青竜偃月刀である。
蒼き竜を狩るのに相応しい獲物を手に地を駆け、仁は透き通る金の瞳に強く闘志を燃え上がらせる。
「地を這う虫が! お主も我が前に屍を晒しに来たか……!」
「させねぇよ。傷だらけの分際で強がってんじゃねー」
敢えて挑発するような言葉を投げつつも、仁は蒼き竜を――大自然さえ改変するその力を侮るつもりなど、毛頭ない。
「カッカッカ、逃れられると思うなよ、小僧!」
「どうかな! やってみないと分からんぜ!」
フミムーンを取り巻く蒼い宝珠が光り輝き、降り注ぐ雨が、機銃掃射のように仁に襲いかかる!
(「避けられそうにもねーな、これは」)
青竜偃月刀を手に疾走する仁は、冷雨を避けきれないと見ると、果敢にもその中を突進していった。
蒼竜が思わず目を見開く。
「まさか……敢えて、じゃと」
「避けられねぇなら突っ込むだけだ!」
残留する効果が仁の力を増大させ、防御力もまた上昇している。
完全に避けられないのであれば、最短距離を駆け抜けて肉薄するのみ――!
仁は地を蹴って高らかに跳ぶと、強く一度だけ虚空を蹴って二段階跳躍(エアライド)。
無造作な赤茶の髪や纏うジャケットに風を受けながら、更に飛翔して竜の正面で青竜偃月刀を振りかぶる。
「おおおぉぉぉぉッ――!!」
縦回転するような勢いで叩き込まれる、渾身のデストロイスマッシュ!
青竜の名を冠する武器が、ドラゴンの頭骨に直撃して強かに斬撃した!
「グガアァァァァッ!」
頭蓋を破壊するほどの痛撃を見舞うと、暴れまわる竜の巨体を避けて仁は一撃離脱する。
復讐者は一人ではない。
戦いながら連携を意識していた仁が好機を作り出し、攻撃は次なる攻撃へと連鎖する!
「ちょっと出遅れましたけど……最後くらいはしゃきっと暴れますかね!」
平原を駆け抜け、赤い闘気に包まれた足で地面を抉り急制動をかけた緋薙・紅花(サージェナイト・g03888)は暴れまわる大慈雨フミムーンを見上げた。
電光石火の勢いで万難を排してきた復讐者たちであったが、眼前の蒼き竜は一筋縄ではいかない。
(「空を飛んでいる相手にはちょっと相性が悪いわたしですが」)
自在に空を駆けるドラゴンに対しても、勿論、紅花は打つ手を用意している。
吹き荒ぶ風の中で、その緋色の闘気(オーラ)が赤々と燃え立つ。
――霊錬気功。
総身を循環する気が霊力と渾然一体となり、術を行使する紅花を支える。
「好き勝手に暴れて、折角立て直した村も滅ぼそうとするなんて……そんなこと、赦すわけにはいきません」
精神を集中させた紅花に去来したのは、失われし家族の記憶。
心の奥底に滾る想念――理不尽と赦せざる敵への怒りは、油断をすれば噴き上がり暴走しかねないものだ。
紅花は強き感情の力を制御し、それさえ霊力に変えて練り上げる。
その身に纏う赤きオーラが光を放ち、胸の前で向かい合わせた両掌の間に幾本もの長槍が出現した。
身の丈を超すほどのそれは、投擲用のロングスピアだ。
幾つかを地面に突き立てると、紅花は槍の数本を足元に、一本を構えて投擲姿勢を取る。
霊錬気功と持てる技術を合わせれば、巨大な目標だ。外しはしない。
「そーーれっ!!」
助走をつけ、復讐者の力を以って渾身の大投擲!
空を裂いて飛んだ長槍は狙い過たずフミムーンの首筋に突き立った!
「ガァッ……! おのれ……それ以上はさせぬぞ!」
暗雲が瞬き、轟雷が紅花を襲う。
「あぐっ、くぅっ……! まだまだっ……!」
霊気と紅きオーラを全力展開して、凄まじい雷槌の威力を減衰させる紅花。
……ふと見れば、傍らに立てていた長槍が消し炭になっていた。
「あ、あれ……? もしかして役に立ちました……?」
雷が奇しくも紅花の突き立てたロングスピアに分かれて落ち、避雷針めいた役割を果たしたようだった。
「おのれ……小細工を弄しおって、小娘め」
「いや、これはそのですね……!」
まさか偶然とは言えずに口ごもる紅花だったが、蒼竜の言いざまに段々腹が立ってきた。
「というかドラゴンのくせに偉そうなんですよ! 降りてこーい!!」
そうしたら蹴り飛ばしてやるのにと怒りながら紅花は残った槍を投げつける。
竜鱗を裂いて、ぐざと突き立つスピアに、苦痛の叫びを上げるフミムーン。
「終わりだ、竜よ」
その視界を突如として砂嵐が襲った。
常理を捻じ曲げる魔術の行使に、蒼き竜は口から血の泡を吹き、血走った目を見開く。
「これは、お主が……」
――然り。
使い手は眼鏡の奥の瞳に竜を映し、首肯した後に自らの名を、そして自らの在り方を告げた。
「『対竜魔術師』カドレクス・フェニカルス――森深き城より来たりて貴様を打ち倒す者の名だ」
言葉はそれそのものが魔術のように響き渡る。
蒼竜が目を離せないでいるのは、眼前の魔術師に否定しようのない畏怖を抱いたからに他ならない。
「最早、貴様の慈悲は必要ない」
視界を覆うような砂塵は術師の目の前で音をたてて凝集し、巨大な一振りの刀剣へと変じた。
「いずれ己が力で地を切り開き始めるだろう彼等がため。否――」
対竜魔術師が黒き手套に覆われた手を掲げる。
「俺の為に、そっ首戴く」
「人間ごときが……よもや、これほどの……信じられん……」
「嗚呼竜よ、竜よ――最期の言葉はそれで満足か?」
渦を巻く黒き屠竜の大剣が振り上げられ――カドレクスの手に合わせて振り下ろされた。
『屠竜式』――"息吹断チ"。
斬――!
魔力を込めた大剣がフミムーンの首を切り落とし、巨体がどうと地面に墜落する。
それこそが蒼き竜が屠られた瞬間であった。
●新たな土地に恵みあれ
大慈雨フミムーンが討たれた後、暗雲は消えゆき、温かな日差しが大地を照らし始めた。
戦いを終えた復讐者たちの背後で、やがて歓呼の声が響き渡る。
それは村に足を踏み入れた人々から溢れた、喜びと感謝、そして称賛の声であった。
彼らはもう兵士ではない。
新たな土地で力強く生きゆかんとする、希望に満ちた民である。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【建造物分解】がLV2になった!
【一刀両断】がLV2になった!
【土壌改良】がLV3になった!
【操作会得】がLV2になった!
【水源】がLV2になった!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】がLV4になった!
【能力値アップ】がLV4になった!
【ラストリベンジ】がLV2になった!
【アヴォイド】LV1が発生!