キャメロット城攻城戦～防衛ラインを貫け！（作者 瀬和璃羽）

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リプレイ

●トループス級の護りを突破しろ！
「思えば二年以上このディヴィジョンで戦い続けてきたね。アイルランド、竜の花嫁、ダンジョン攻略、雨の止まぬ街、ロンドン……幾多の戦いがあって、幾多の竜との闘いがあった。それがもうすぐ終わるんだと思うと感慨はあるよ」
「この戦いって、そんなに大事な戦いなんだ……緊張するけど、このディビジョンを取り返す為にも頑張らなきゃね」
　アンゼリカ・レンブラント（光彩誓騎・g02672）が告げたこの一戦に賭ける想いに、ハニエル・フェニックス（第七の天使・g00897）は今になって緊張で振るえる手を見ると、気合いを入れるかのように頬を叩く。
「よし！　アンゼリカちゃんの想いも翼に乗せて、私は飛ぶんだよ！」
　緊張を振り払うように声に出し、拳を突き上げるハニエル。
　そんな彼女に、シル・ウィンディア（虹を翔ける精霊術士・g01415）が今からそんなに気合いを入れなくても大丈夫と声をかける。
「いま自分に出来る最高のパフォーマンスを目一杯すれば良いんだよ。ね、メルキディアさん！」
「ええ、ここまでは前哨戦。本当の戦いはここから……路傍の石はスマートに突破して行きたいわね」
　シルに話しを振られたメルキディア・セデクリエル（閃機術士のエンジェリアン・g03132）は、天使の羽根を広げ、右手で眼鏡の位置を直しながら彼女を追従しつつ同意する。
　メルキディアのキラーンと輝くレンズの光に、頼もしさを感じるハニエル。
　キャメロット城内……重要区画へと続く通路を【飛翔】を使った低空飛行で一気に進むディアボロスたちは、やがて奥に扉の見える大きな部屋へと出る。
「ここは……」
　眼鏡の蔓を掴みながら首を左右に振るメルキディア。左右は広く天井も高い。そして奥には……。
「お出迎えが沢山だなぁ……こんなに大勢で出迎えてくれなくてもよかったのに」
　肩を落としながら、シルがちょっと残念そうに呟く。彼女の視線の先には、大量に群れる『蒼炎のジャッカー』の姿が見えた。
『来たか、ディアボロス……ここから先は命により通さん』
「向こうも気合十分って感じだけど、私……私たちだって負けないよ！」
　蒼炎のジャッカーが炎と共に吐き出す言葉に、気合いでなら負けないとハニエルが威勢よく返した。
「大丈夫！　私たちは幾多の困難を乗り越えここまで来た。最後まで負けることはないさ、そうだろっ！　みんなっ！」
　アンゼリカの掛け声に同意するディアボロスたち。そして両者はそれぞれの命を賭けて一斉に動き出すのであった。

「さぁ、いくんだよ！」
　先陣を切るのは天使の翼を広げ、両手からパラドクスで光の刃を生み出したハニエルだ。
「光の剣で、やっつける！　ざぁぁぁん！」
　スラリとした体形を活かし超低空飛行をすると、蒼炎のジャッカーへと迫る彼女。
　蒼炎のジャッカーたちの間近まで近づくと、急転換しながら生み出した刃を投擲する。
「ほらほら、避けないならばっちり当てちゃうぞ！」
　空気を斬り裂きと放たれた光の刃は、急接近に驚き硬直した二体の蒼炎のジャッカーを輪切りにする。
「士気は高いけど、所詮はトループス級だね！」
　蒼炎のジャッカーたちが反撃で放つ炎の弾も天使のオーラで防ぎながら、ハニエルは仲間たちに続けとばかりにウィンクをしてみせる。
「そう言うことなら！　わたしも高速詠唱からの天翔残影砲で、群れの中心を撃ち抜いてあげるねっ！」
　その様子に頷いたシルは、詠唱を始めながら天井近くまで上昇する。
　彼女のその仕草に、蒼炎のジャッカーたちが集中砲火をかけるべく首を上にあげる……だがそれを待っていたとばかりに、低空で飛翔してきたメルキディアが無防備な蒼炎のジャッカーたちの腹に向かってパラドクスを放つ。
「アイオンコード：サキエル、ラファエル、シャルギエル、トリプルドライブ！　絶氷の雪崩に飲み込まれろッ！！」
　天使の術式を魔導機械に組み込んで開発した光線剣「刀閃機イオスラッガー」を振るい、その刃から絶対零度の吹雪を放つメルキディア。
『なにっ！？　もう一体いたか！！』
　慌てて口から炎の刃をメルキディアへ放とうと、隊列が乱れた蒼炎のジャッカー……そんな彼女の行動で生まれたチャンスを逃すほど甘いシルではなかった。
　まるで分身を残すかのように上下左右に揺さぶりをかけたシルは、力ある言葉を唱え終える。
「あなた達の護りは厚いけど……わたし達の想いはもっと熱いから！」
　背中から二対に光の翼を生やし、力強く羽撃たきながら両手の先に生み出した青い魔法陣を蒼炎のジャッカーへと向ける。
「光よ、我が手に集いて、すべてを撃ち抜く力を……。最大稼働、乱れ撃つよっ！」
　その言葉と同時に、ショートチャージの魔力砲撃が次々と放たれる。光の翼で素早く移動していることもあり射線が特定できない蒼炎のジャッカーたちは焦り出す。
『と、兎に角薙ぎ払え！　当たらなくてもいい、放て！！』
　天と地と、一斉に蒼炎のジャッカーが吐き出した炎が刃と化してディアボロスたちに襲い掛かる。
　だが、それは舞い降りたシルの光の翼が大きく広がり、そして彼女自身とメルキディアとを包み込むことで防がれる。
「簡単に通す訳にはいかないからね！」
「シルさん……ありがとうなの」
　攻撃を受け止め切ったシルが翼をバッと広げる。その影から、まるで光が乗り移ったかのように黄金のオーラを纏ったアンゼリカが弾丸のように飛び出た。
「私の雷光も、みんなと一緒だからさらに輝きを帯びるのさ！　さぁ最大まで輝け……《雷剣波紋衝》！」
　黄金で装飾された分厚い大剣「Day Braek of Leo」に雷光を集め、その身も電で輝きながらアンゼリカの刃が振るわれる。
「さあ、アーサー王へと続く道を、切り拓けぇーっ！」
『ネヴァン様、申し訳ございません！　主命、果たせず……』
　アンゼリカの雷剣が残る蒼炎のジャッカーを斬り裂く。主の命を果たせなかったことを悔やむように口にしつつ、地へと倒れる蒼炎のジャッカーたち。
　その姿を横目で見ながら、アンゼリカは呟く。
「私たちに課せられた想いは、願いは、お前たちより強かっただけだよ……あの世で主に誇るんだね」
　そう言うと、彼女は雷光が収まった大剣を背中に背負う。
　そして笑顔で仲間たちの方を向き直す。
「さぁ、次はいよいよ大物だね！」
「そうですね。いよいよ竜退治も佳境に入ってきたところ……円卓のドラゴンたち、待ってなさいッ！」
　埃で汚れたレンズをクロスで拭き終えたメルキディアが、眼鏡をかけ直しながらアンゼリカに同意する。
　この扉の先は何処に繋がっているのか。王座か、円卓の間か、それとも……それは進んで見なければ分からない。
「ま、何が出てもこのハニィちゃんに任せなさい！　ハニィちゃん、マジ天使なので！」
　エッヘン、とハニエルが薄い胸をこれ見よがしに張る。
　その姿に仲間たちから笑いが漏れる。
「あと少し……やっと手が届くところまで来たから。だから、待ってなさい、アーサー王っ！」
　笑い声が収まり、扉の前に立つディアボロスたち。
　運命の扉を開くかのように、ドアノブに触れるシルに緊張が走る。
　……そしてゆっくりと、扉は開いた。

最終結果:成功
完成日	2023年10月28日