リプレイ
レイ・シャルダン
連携・アドリブ歓迎です。
…そっか、出稼ぎに向かった人達が沢山居たのですね。
ボク達が護れなかった、グランダルメとしてのローマ。
今目の前にあるのはただの水面…それが悲しい。
残されてしまった人達がこの冬を越せる様に
ボク達に出来る事があるのなら力になりたいです。
海を前に佇む少年に声をかけましょう。
こんにちは。
本来あったはずの道が消えている。
そんな事、起こる訳がない、誰だってそう思いますよね。
でも、今貴方の目に映るこれが…現実です。
貴方は自らの疑問の答えが知りたくて1人でこんな所まで?
とても勇気がありますね。
もうお気づきかと思いますが、この先にローマはありません。
いつまで待っていても出稼ぎに向かった人達は帰ってこれないのです。
その事に誰かが気が付けなければ、幾つかの村は冬を越せなくなってしまう。
ですが、まだ間に合います。
村に戻ってこの事を報告し、冬を越す準備を行いましょう。
ボクはディアボロスのレイ
どうか、貴方の村を助けるお手伝いをさせてください。
七星・優希
連携、アドリブ大歓迎だよ。
本当にカルロくんは優しい子だね。ちょっとでも元気付けられるといいけれど。
海との境界線に立ち尽くしているところに横に立ってみてから話しかけてみようかな。
彼の力になれるように【友達催眠】を使って寄り添うように話しかけてみようかな。
出稼ぎに行った方が帰ってきてないんだね…それは心配だ。
うんうん、カルロくんは頑張り屋さんだねえ。
君が頑張ってることはお姉さんたちにはわかるから。悩んでること、全部教えてほしいな。
カルロくんの話をじっくり聞いて、カルロくん自身がこれからどうしたいかも聞いてから協力を申し出てみようかな。
こういう時は一人で悩まず、私達を頼ってほしいな!
少しでも自信が戻るといいんだけれどね。
●待ち人は海の向こうに
パラドクストレインを下車して進めば、大地がぷつりと途切れ、青い海が広がる境界線へと至る。これより先のイタリア南部は、蹂躙戦記イスカンダルに強奪された――それを改めて見せつけられて、レイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)は思わず俯いた。
「……そっか、出稼ぎに向かった人達が沢山居たのですね」
彼女らディアボロスが護り切ること叶わなかった、断頭革命グランダルメとしてのローマ。そこへ繋がっていたはずの道の先には、今はただ水面がゆらゆらと揺れていて。胸にじわりと悲しみの感情が広がるけれど、落ち込んでばかりはいられない。
(「ボク達に出来る事があるのなら力になりたいです」)
このイタリア北部に、取り残されてしまった人々が冬を越せるように。決意抱いて進むレイ、その横にはいつの間にかもう一人、ディアボロスの女性が合流している。七星・優希(気怠げなファッションデザイナー・g10433)だ。
(「ちょっとでも元気付けられるといいけれど」)
時先案内人の話を聞き、優希が件の少年に抱いた印象は『優しい子』。そんな彼が村の人々と協力し状況を改善させられるよう、心を砕こうと。想う優希の青い瞳は透き通る海を見つめ、それから海沿いの陸を眺めて――そこに、立ち尽くす少年を見つけた。カルロだ。
「こんにちは」
「えっ……!?」
レイが努めて穏やかにかけた声に、少年は驚き振り返った。見開いたカルロの瞳を見れば、淫魔や自動人形ではないかと警戒したことが伺える。けれどディアボロス二人の姿を確認すると、少年はほっと安堵のため息を零した。
優希がそっと彼の隣に立っても、抵抗はない。彼女のパラドクスがもたらした【友達催眠】のおかげで、警戒は解けたようだった。
「君、こんなところまで来てどうしたの?」
海風に揺れる藍色の髪を抑えながら、優希が尋ねる。すると、カルロは僅かに顔を伏せながら、ぽつりと零した。
「……村のみんなが困ってるんだ。この道のずっと先から、父さん達は帰ってくるはずだったのに」
「出稼ぎに行った方が帰ってきてないんだね……それは心配だ」
紡ぐ彼女の言葉は、優しい声音で寄り添うようで。この人達なら信じてくれる――そう思うことができたから、少年は堰を切るように話し始めた。
「俺、父さん達を見送ったから覚えてるんだ、絶対ここに海なんてなかった! ローマまで、陸地が続いていたはずなんだ! それなのに……なんでこんな! お姉さん達はなんでか知ってるの!?」
少年の問いかけに、優希とレイは顔を見合わせた。不可思議な現象を前に、『なぜ』と問う。それは、目の前の事柄を受け入れようと藻掻いているようで。現象の経緯を教えて余計に混乱させるより、落ち着かせる方がいい。そう判断したレイは、カルロと目線合わせるためにしゃがんで、ゆっくりと語り始めた。
「本来あったはずの道が消えている。そんな事、起こる訳がない、誰だってそう思いますよね。でも、今貴方の目に映るこれが……現実です」
「現実……」
銀髪の少女の言葉を反芻し、少年は顔をくしゃりと歪め泣きそうになった。
「貴方は自らの疑問の答えが知りたくて一人でこんな所まで? とても勇気がありますね」
続けてレイが言葉を紡げば、いよいよ少年はわっと泣き出した。レイも、優希も、涙の理由がわかる。彼ははっきりと理解したのだ。出稼ぎに行った村の人々は、この海の向こうから帰ってこないのだと。
たまらず、優希はカルロを抱き締める。小さな体の少年に、この現実は辛すぎるだろうから。そして泣きじゃくる子どもを宥めるように、彼女は口を開いた。
「私は七星・優希だよ。君の名前は?」
「ぐすっ……カルロ……」
「うんうん、カルロくんは頑張り屋さんだねえ。君が頑張ってることはお姉さんたちにはわかるから。悩んでること、全部教えてほしいな」
やや癖のある少年の髪を撫でながら、優しく語り掛ける。その言葉に、少年は鼻を啜りながらもぽつりと呟いた。
「ここからローマに行けないってことはさ……帰るはずだった父さん達は……」
やはり、理解したからこその涙だった。レイは彼の確かめるような言葉を受けて、静かに答える。
「……はい。もうお気づきかと思いますが、この先にローマはありません。いつまで待っていても出稼ぎに向かった人達は帰ってこれないのです」
「それじゃあ、村はどうなるの? みんな父さん達の帰りを待ってて、冬支度だってできてないんだ! このままじゃ……!」
「そうですね。このまま、この事に誰もが気が付けなければ、幾つかの村は冬を越せなくなってしまったでしょう」
でも、カルロは気付いた。それは、彼の勇気ある行動のおかげだ。まだ間に合うからと告げる少女の励ましに、少年はほっとため息を漏らした。
いくらか落ち着いた様子を見せるカルロを腕の中から解放して、優希はその肩に手を置いて尋ねる。
「カルロくんは、これからどうしたい?」
「……俺、村の大人達にこのこと教えなきゃ。でも……」
それをうまく伝えられるか、わからない。不安に表情を曇らせる少年に、優希とレイは敢えて笑顔を向けた。
「こういう時は一人で悩まず、私達を頼ってほしいな!」
「ボクはディアボロスのレイ。どうか、貴方の村を助けるお手伝いをさせてください」
彼女らの言葉が、暖かい心が、少年に勇気を与える。だからカルロは――大きく一つ、頷いた。
「……うん! 優希さん、レイさん、力を貸してよ!」
超成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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南雲・葵
俺達に出来る事…まずは思ったことを率直に伝えようかな
カルロの心が少しでも前に向けるように。
勇気を称えたいのは本心だしな
凄いな
現状を打破したくて1人でここまで歩いてきたんだろ?
まだ小さいのに立派な男だね
カルロの勇気と行動力は本当に凄いな
真実を知って、どうしたいって思ったか教えてよ
俺と梓は勇気のある行動ができるカルロの味方だ
仲間になって、カルロのやりたい事をサポートするからさ
力が足りないなら力を貸すし、説得させる言葉が足りないなら心を尽くして話をするよ
何もできなかった人達にさ、カロルの知った現状を教えてあげよう
今は無理でも、いずれ返ってくる人達を迎え入れる準備は必要だし
その為にはこの冬を越さないといけない
ここまで一人で来た勇気と行動力が有るなら、あともう一握り勇気を出してみない?
カルロの勇気をみんなに分けてあげようぜ!
●あと少しの勇気
レイと優希を案内するように、少年カルロは村へ繋がる街道を進む。父や村の男達が消えてしまった、青い海に背を向けて。
そうしてしばらく進むと、道に一人の青年と天使のような小さな少女が立っていた。南雲・葵(バールの人・g03227)と、オラトリオの『梓』だ。
「俺と梓も一緒に行っていいかな?」
尋ねれば、少年は彼を歓迎する。ディアボロス二人にここまでの経緯を聞いた葵は、カルロの頭をくしゃりと撫でた。
「凄いな。現状を打破したくて一人でここまで歩いてきたんだろ? まだ小さいのに立派な男だね」
それは、時先案内人に話を聞いた時に抱いた率直な想いだった。少年の心が少しでも前を向けるよう、彼にできるのは心を伝えることだ。
葵がかけた言葉は、カルロの自尊心をくすぐった。へへっと笑った少年に、彼は問いかけを重ねる。
「真実を知って、どうしたいって思ったか教えてよ」
村の大人達に、出稼ぎに行った人々は帰らないことを伝えて、それから?
訊けば、カルロは何事か考えて――それから、小さく声を漏らした。
「……大人達みたいに、笑わない?」
「笑わないよ。俺と梓は勇気のある行動ができるカルロの味方だ」
告げる葵の琥珀色の瞳は、真摯にカルロを見つめている。だから彼は後押しされて、もう一つの『望み』を口にした。
「俺も、冬支度をしたいんだ。いつもの子どもの『お手伝い』だけじゃなくてさ、父さん達の代わりにできること!」
ぐぐっと拳を握り締めて、告白した少年の頬は薔薇色に染まっていた。その真剣な言葉は、子どものわがままだなんて笑うものではない。自身の持てるものを、愛する村の人々のために使いたい――そんな眩しすぎる想いを聞いて、葵の表情は自然と緩んだ。この勇気を称えたい。心からの想いは、依頼を為す目的とは別に湧き起こる。
「カルロの勇気と行動力は本当に凄いな! よし、俺達が仲間になって、カルロのやりたい事をサポートするからさ」
告げながら同行するディアボロス達を見れば、二人も頷いた。
力が足りないなら力を貸すし、説得させる言葉が足りないなら心を尽くして話をする。けれど、それはあくまでカルロのサポートだと――葵が語れば、少年は頷いた。
「俺に、できるかな。今までも冬支度しようよって、大人達に言ってたんだけど。いつも聞いてもらえなくてさ」
語りながら、遠くに見えてきた村に気付いて少年が顔を上げる。あそこが、カルロの住む村だ。いつもみたいに、苦笑いされないか。不安に足が竦みそうになる様子を見て、葵は少年の手を取った。海との境界まで一人で来た、勇気と行動力。それで見て知ったことがあるし、それを証言するディアボロス達だって隣にいる。
「何もできなかった人達にさ、カロルの知った現状を教えてあげよう」
大人達を説得する材料は、十分にあるから。
「ここまで一人で来た勇気と行動力が有るなら、あともう一握り勇気を出してみない? カルロの勇気をみんなに分けてあげようぜ!」
葵が太陽のように笑えば、カルロのもう一方の手を梓がとる。青年とオラトリオ、その顔を交互に見てから、少年は再び歩き出した。
「ありがとう! 俺、頑張ってみる!」
●人手不足の村
カルロに導かれてやってきた村は、長閑な雰囲気に包まれていた。
「あれ、カルロ! いったいどこに行ってたんだい!?」
「そちらの方は?」
少年は行き先を告げずに村を出たのだろう、心配した顔の大人達が、帰還したカルロの元へ集まってくる。告げれば止められていただろうから、そこは仕方がない。
ディアボロス達がざっと見ると、村には確かに老人と子ども、それから女性しかいないようだった。力になる男手は、皆出稼ぎに行き帰れなくなっているのだろう。
説明するなら、早い方がいい。今ここで更に人々を呼び集めて、伝えるべきことを伝えよう。それには、ここまでの道で語り合った少年の協力も必要に違いないのだった。
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南雲・葵
これだけ人が集まったら良いかな?
冬支度を始めないと大変なのはこの村の人達だし
話を聞いて貰いやすくするために【士気高揚】を発動しておこう。
まずはカルロに今までの行動と見た事を話して貰って、俺はその補足。
出稼ぎに行った人が戻らない事、必要ならクロノヴェータや世界の状況を嚙み砕いて説明しよう
カロルの勇気と行動力を讃えて、まだ庇護下にある子供が未来を見据えて動き出してる事、
その思いを受けてみんなは何も感じないか問おう。
いずれ出稼ぎに出た人が戻ってこられるように、まずは冬を越せる支度をしよう
人手が必要なら俺達にも手伝わせて欲しい
…それに、カルロだって今は居ない男手の代わりに色々手伝ってくれる
ここまで村を思って行動できる人はなかなか居ないぜ?
みんなもさ、これからは自分たちの意思で行動しなきゃならないんだ
カルロが出来たように、絶対にみんなも出来るはずだよ
1人でも心を動かせれば後は続いて貰えると思うんだよね
反応が有るまではカルロや仲間達と冬支度を始める準備に取り掛かるよ。
七星・優希
連携、アドリブ大歓迎だよ。
引き続き【友達催眠】を使ってみんなの手助けをするね。
人への説明ってやったことないから上手くいくか心配だなあ…でも、カルロくんのためにもやらなくちゃ。
村の皆さんに軽い自己紹介をしてから「皆さ〜ん!カルロくんが伝えたいことがあるんです!」と村の皆さんに呼びかけるね。
その後はカルロくんに今までのことや、見てきたことを伝えてもらうように背中を押すね。
カルロくんが途中で言葉に詰まりそうになってたらわかりやすく説明したりと手助けもするよ。
今は戻って来なくても、いつか出稼ぎに行った方々が戻って来たときに冬への備えができてなくて帰る場所が無い方が……きっと、辛いはず。
ここにいる皆さんで冬を越す準備をしましょう!と呼びかけようかな。
もちろんディアボロスも雑用からなんでも冬への備えのお手伝いもさせてもらうことも伝えるよ。
できることからやっていこう。
●心よ届け
集まってきた村の大人達を見て、七星・優希(気怠げなファッションデザイナー・g10433)は思わず唇を引き結んだ。
(「人への説明ってやったことないから上手くいくか心配だなあ……」)
そこには、クロノヴェーダと戦うのとは違った難しさがある。けれどカルロのためにもやらなければと思うから、優希は思い切って口を開く。
「こんにちは、私は七星・優希です。街道の途中でカルロくんと会って、いろいろ話を聞いてついてきました」
柔らかく笑顔を浮かべて、丁寧に友好的に。優希の言葉は【友達催眠】の効果も手伝って、村人にはすんなりと受け入れてもらえたようだ。
「それはそれは、カルロが迷惑をかけたね。この子は無茶をするところがあるから……」
「街道? カルロ、あんたまさか村の外まで一人で行ったのかい!?」
丁寧に頭を下げる村人の後ろから、声上げ駆け寄ってくるのは一人の女性。母さん、とカルロが呟いたから、ディアボロス達は彼女が少年の母親なのだと理解する。
「本当にもう! 自動人形や淫魔に見つかっていたら、どうなっていたか!」
叱る母に、項垂れる少年。心配する親心もわかるけれど――南雲・葵(バールの人・g03227)は、カルロの味方だから。彼が前向けるようにそっと肩に手を置いて、言葉を紡ぐ。
「その心配はないよ。クロノヴェーダ……自動人形と淫魔は、イタリアからいなくなったから」
「え?」
「連中がいなくなった? どういうことだい?」
葵の話に、村人達は困惑の表情を浮かべ集まってきた。彼らは、村の外のことを何も知らないのだ。その辺りも説明する必要があるだろう。
「皆さ~ん! カルロくんが伝えたいことがあるんです!」
さらに人を集めようと、優希が声を張り上げて。何事かとやってくる村人達の姿に、葵は少年の背を優しく押した。
「これだけ人が集まったら良いかな? さあ、カルロ」
「う、うんっ……」
葵と優希、二人の顔を少年は交互に見つめる。琥珀色の瞳も、藍色の瞳も、カルロに優しい眼差しを向けていて。勇気づけられた少年は、村の大人達へと向き直って言葉を紡ぎ始めた。
「みんな、俺、南の街道をずっと歩いていってみたんだ。途中で出稼ぎから帰る父さん達に会えるかもって思ってさ。でも……いくらか歩いたら、街道の先は海になってたんだ!」
「海?」
カルロの声音が真剣なのは伝わっただろうが、それにしても事実そのものが奇妙すぎる。思わず首を傾げた村の人々に、優希はタイミングよく口を挟む。
「私も見ました。ローマへと続く街道は、途中で海にぶつかっているんです。だから……ローマに出稼ぎに行った人達も、帰ってくることができません」
「何だって!? それじゃ、出稼ぎの連中はいつになったら帰ってくるんだい?」
驚きと共に問いを投げかけたのは、一人の老婆だった。その言葉に、優希と葵は思わず顔を見合わせる。
いつになったら――真実をありのまま答えるのなら、恐らくは『いつまでも』帰ってこないと言うことになる。海と消えたイタリア南部の人々は、ここ断頭革命グランダルメが蹂躙戦記イスカンダルから大地を奪還しなければ、帰ってこない。けれどディアボロスにとっては、最終人類史への奪還が目標だ。出稼ぎの人々をこの地へ帰還させることは、ディアボロスにはできない。
(「でも、噛み砕いてでもこれを伝えて、わかってもらうには……」)
葵が眉を寄せ思案しながら、周囲の村人達を眺める。するとその時、老いた男性が声を上げた。
「男衆が帰ってこないんじゃ、冬支度はどうするかの?」
その問いに、村人達がはっと息を呑む。そう、人々が帰る心配より、まずは自分達の心配だ。彼らは男手をあてにして先送りにしてきた冬支度について、口々に言い始めた。
「まだ、作物の収穫も全然終わってないよ」
「羊小屋だって、このまんまじゃ隙間風で羊達が凍え死んでしまうなぁ」
「出稼ぎの連中が帰らないなら、隣村とも早いとこ物資の交換をしないと……ああでも、荷車はぜーんぶ壊れてるんだっけ?」
急に騒がしくなった人々の混乱を前に、カルロは動揺した様子で後退ろうとする。そこを背後から支えるのは優希だ。まだ、少年の話は終わっていないことを知っているから。
「大丈夫だよ。カルロくんの伝えたいこと、言ってあげて」
「……うん! みんな、大丈夫だよ! だから俺、この人達――ディアボロスさん達に、手を貸してほしいってお願いしたんだ! 俺だって、一生懸命手伝うからさ!」
「ああ、人手が必要なら、俺達にも手伝わせてほしい!」
カルロに続いて、葵も声を上げる。すると人々はぱっと喜びの表情を浮かべるが――数人は、眉を寄せて難しい顔をしていた。
「それはもちろん助かるんだけど……外の人に手伝ってもらって、それが連中に知られたら」
『連中』。それがクロノヴェーダのことであるとは、察しがついた。長く自動人形と淫魔の支配下に置かれていた北イタリアの人々は、彼らの顔色を窺って生活することに慣れている。
だから葵は、彼らをその支配から解放するために、言葉を伝えることにした。
「大丈夫だよ。さっきもカルロの母さんには伝えたんだけど、自動人形や淫魔は、もうこの辺りにはいないんだ。俺が聞いた話だと、あいつらはフランスの情勢が悪化して、みんなそっちへ撤退していったんだって」
「連中が、いなくなった!?」
それは、イタリアの人々にとっては南部が海となったことよりも驚くべき情報だったかもしれない。今の彼らは、自由なのだ。葵は【士気高揚】の効果も使って、もう怯えなくていいのだと語っていく。
「カルロはすごいよ、勇気と行動力で村の外へ出て、俺達と出会ったからこの話を知れたんだ。まだ庇護下にある子供が未来を見据えて動き出してるんだぜ、この思いを受けてみんなは何も感じない?」
葵の問いかけに、村人達は顔を見合わせて――それから、真剣な表情で頷いた。皆の瞳に、希望の光が灯っている。それを感じて、優希は言葉を重ねる。
「今は戻って来なくても、いつか出稼ぎに行った方々が戻って来たときに冬への備えができてなくて帰る場所が無い方が……きっと、辛いはず。だから、ここにいる皆さんで冬を越す準備をしましょう!」
「ああ、いずれ戻ってこられるように、まずは冬を越せる支度をしよう!」
葵が紡ぐ言葉も同様に。それが、偽りであっても――今いる人々を救うためには、必要な言葉であると二人は判断したのだ。
「みんなもさ、これからは自分たちの意思で行動しなきゃならないんだ。カルロが出来たように、絶対にみんなも出来るはずだよ」
ここまで村を思って行動できる人はなかなか居ないけどさ? そう言って笑った葵がカルロの頭を撫でれば、少年はくすぐったそうに声上げて笑う。
その姿見て――村の人々の動きが変わった。
「ああ、それじゃさっそく冬支度だ! カルロ、男に二言はないよね? こき使うから覚悟しな!」
「うっ、うん!」
「ディアボロスさん、だったかい? あんたらも頼むよ!」
「はい、雑用でもなんでも!」
忙しなく動き始める人々に、カルロが、優希が応える。
できることからやっていこう――優希の声に頷いて、小さな村は今、冬支度を開始したのだ。
●冬支度を終えるために
遅くなった冬支度を間に合わせるために、村の人々が動き出す。その様子を見て、ディアボロス達は改めてこの村で為すべきことを考えていた。
必要なのは、飼料となる作物の収穫、羊小屋の修復、それから荷車を修理し、近くの村と物資の交換すること。収穫や物資の交換にはきっと残留効果の【アイテムポケット】が役立つだろう。羊小屋や荷車の修復には、【修復加速】があるといいだろうか。
カルロは、母に連れられ荷車の修理に向かったようだ。他の子ども達はより人手の必要な作物の収穫へ行くから、彼は確かに『男手の代わり』としての仕事を任されたのだろう。修理が終われば、荷車を押して近くの村へと行くはずだ。
直接少年を手伝ってもいい。別の作業を手伝っても、人の配置が変われば結果的に全ての冬支度を早く終えられることになる。
村人達は明日、明後日も懸命に頑張るだろうが、何せ女子供と老人だけ。無事に冬を越すための準備は、ディアボロス達のいる今日のうちにあらかた終えた方がいい。
どこを、どう手伝うか。やり方は人それぞれだが――きっと、どんなやり方を選んでも、村人達にとっては助けになる。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【士気高揚】LV1が発生!
【友達催眠】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
七星・優希
連携、アドリブ大歓迎だよ。
【士気高揚】のおかげでみんながやる気に満ちてる…!これならパパッと作業が捗りそう!
これで村人さんと協力して冬支度ができるね!
荷車の修理はカルロくんがいるから彼を信じて作物の収穫を手伝おうかな。
カルロくん頑張れ〜!と応援してから他の村人さんのお手伝いさせてもらうよ。
実はここに来る前に新宿島から修理道具や農作業に使えそうなものを持ち込んできたんだよね。
【アイテムポケット】から軍手と収穫に使う新品の鎌を取り出してバリバリ収穫作業を手伝っていくよ〜
もちろん収穫したものは【アイテムポケット】に片付けて大量の作物を運んでいくよ!
基本的に他の村人さんが集中して作業ができるように収穫した作物の運搬をさせてもらおうかな。
走って運んでいくことになるけれど修理が終わった荷車があれば借りられると助かっちゃうな〜…って思ったり。
こういう地道なお手伝いが大きな力になると信じて頑張るよ!
南雲・葵
良かった、カルロの想いも届いた
よーし、こっからは俺達も頑張らないとな
大工仕事なら任せてよ!
実家の工務店で修業中だったんだよね
念のため【修復加速】で手の足りない所の補助をしておこう
声を掛けて必要な個所を修理して回るよ
まずは村に有る物を使って建物の修復
羊を怖がらせない様に注意しないとね
力仕事が必要な場所にフットワーク軽く動こうかな
後は生活に必要な道具で修理が必要な物が有れば出来るだけ直しておこう
梓(オラトリオ)には簡単な収穫の手伝いか、手伝いに参加出来ない小さな子供たちを見てて貰おう
一通り修理・修繕が終わったら、残留効果の【アイテムポケット】で収穫物交換の手伝いにも行くよ
梓にも持てるだけ荷物を持って貰って村の皆の手伝いをしよう
出来る事を終えたら名残惜しいけど村の人に声を掛けてから戻ろう
もう俺達が手を出さなくても、村の皆だけで大丈夫だろう
レイ・シャルダン
連携・アドリブ歓迎です。
すいません、合流します~。
皆さんが活気に溢れている様で安心しました。
お手伝い頑張らせて頂きますね。
ボクは【アイテムポケット】に入れて持って来た調理器具等台の上に広げて
簡易の休憩場所を設置します。
そこでコーヒーやミルク、果実ジュース等の飲料と、
パンやパスタ等の軽食を用意して提供しましょう。
はい、皆さんお勤めご苦労様です。
沢山ありますので、いつでもお立ち寄りくださいね。
数が足りなくなってきたら【口福の伝道者】で数を増やします。
必要なのは男手の代わり。なのでもちろん力仕事のお手伝いも手伝います。
収穫作業や小屋の修繕のお手伝いに人がたりているようなら
【修復加速】をお借りして荷車の修復作業を行いましょう。
お任せください、何せ車輛メーカーの人間ですので。
車の御先祖様の修繕もばっちりこなして見せます。
それらの作業が終われば空になったアイテムポケットに
物資を詰め込んで隣町まで一緒に行きましょう。
アイテムポケットに入りきらなければ是非荷車も使用してくださいね。
●手と手で励み
長閑だった村は、急に忙しなく動き始めた。ほぼ手付かずであった冬の準備を終えるために――時間はないけれど、村人達の顔に浮かぶのは『焦り』よりも『希望』で。自分達で手繰り寄せた説得の結果を目の当たりにして、七星・優希(気怠げなファッションデザイナー・g10433)の青い瞳にも希望の光が灯る。
「【士気高揚】のおかげでみんながやる気に満ちてる……! これならパパッと作業が捗りそう!」
「良かった、カルロの想いも届いた! よーし、こっからは俺達も頑張らないとな!」
優希の隣では、南雲・葵(バールの人・g03227)も拳を握り締めてやる気を見せていた。顔を見合わせ、頷き合って。ディアボロス達は、それぞれのやり方で村人達を助けようと動き出す。
優希は、作物の収穫作業に加わることにした。さっそく畑へ向かうと、途中で作業中のカルロを見かける。せっせと壊れた荷車達を並べる少年――その姿は頼もしく、優希は笑顔でエールを送った。
「カルロくん頑張れ?!」
「……あっ、優希さん! ありがとう、優希さんも頑張ってね!」
手を振り合い別れて、先を急げば辿り着く畑。そこに植えられた牧草は、それはそれは立派に育っていた。
「やっぱりねえ、ちょっと収穫の時期を過ぎちゃったわねえ」
「刈り取るのも大変で、追いつかなくてねえ……」
ばつが悪そうに、女性と老人が声を漏らす。本来ならば、ここまで育つ前に刈り取るべきなのだろう。そんな村人達に、優希は笑顔で声を上げた。
「大丈夫、バリバリ収穫するから任せて!」
言うや否や、優希は【アイテムポケット】から軍手と新品の鎌を取り出す。新宿島から持ち込んだものだ、この時代の農具よりも性能がいいことは間違いない。
牧草の刈り方は、村人達に教わる。鎌でざくりと刈り取っては、【アイテムポケット】に収納して。さくさくと進めていく優希を見て、村人は大人も子供も感嘆の声を上げた。
「すごいね、お嬢ちゃん。うちの男共より早いんじゃないか?」
「おねえちゃんの鎌、かっこいい! えっ、すごくよく切れるから触っちゃダメなの?」
優希の働きぶりに感心しながらも、村人達も負けじと収穫を続けていく。刈り取った牧草を少しずつ纏めて積み上げておけば、後で優希が【アイテムポケット】に詰めて運搬できる。運び出す時の手間を考えなくていいおかげで人々は刈り取りに集中でき、全体の効率は飛躍的に上がっていた。
けれど、農業は体力勝負だ。真面目に作業を続けた村人達だったが、まず老人達が音を上げてしまう。
「この姿勢、腰にくるわねぇ」
「ちょっと休ませてもらえんか」
言って人々はその場に座ろうとするけれど、その前に彼らにかかる声がある。
「皆さんお勤めご苦労様です。休憩ならこちらへどうぞ」
見れば、そこにいたのはレイ・シャルダン(SKYRAIDER・g00999)だった。畑の空いたスペースに組み立て式のテーブルを置いて、そこに保温ポットとカップを載せている。周囲に漂うは芳ばしい香り――淹れたてのコーヒーだ。
「やあ、ありがたい! 疲れた体に沁みるのお」
作業の手を止め人々が集まれば、レイは笑顔で一人一人にカップを手渡した。子ども達には、温かいミルクや甘酸っぱい果実ジュースもある。
「村の中に休憩場所を設置したんです。そちらにはパンやパスタ等の軽食も用意してありますので、いつでもお立ち寄りくださいね」
「へえ、そりゃいいね! そんじゃそれを楽しみにもうひと頑張りだ!」
疲れた人々にとって、食の楽しみはとびきりのご褒美となるのだろう。温かな飲み物と共に心が解れれば、彼らは再び気力を取り戻して収穫作業へと戻っていった。
優希も、レイからコーヒーを受け取りほっとひと息。
「レイさんありがとう! 修理の方はどう?」
「順調ですよ。そろそろ荷車は全部直る頃だと思います」
レイは語る、荷車の修理についてはカルロが張り切っていて、真剣に取り組んでいたのだと。男手にいつも任せていた村人達は修理の方法もいまひとつ理解していなかったようだが、そこはレイが丁寧にやり方を説明した。
「お任せください、何せ車輛メーカーの人間ですので」
胸を張って告げたレイは、車のご先祖様たる荷車だってばっちり修理できるし、どこを補強すれば壊れにくくなるかも教えられる。そうしてひとつふたつと修理をした後に、残りはカルロをはじめ村人達に任せて、自身は簡易の休憩場所の設置に取り掛かったのだ。調理器具は、【アイテムポケット】で新宿島から持ち込んだ。冬に備えた備蓄として持ち込めるものは排斥力の影響があるために限られるが、今日この日の疲れを癒すための飲食物なら、ディアボロス達がいる間は皆に美味しく口にしてもらえるだろう。【口福の伝道者】もあるから村人全員のお腹を満たせるし、それでも余れば近隣の村に持って行ってもいいかもしれない。
他の作業の状況を聞いて、優希は安心した様子で笑顔を浮かべた。それから、レイへ澄んだ青い瞳を向けてお願い事を切り出す。
「修理が終わった荷車、ひとつ借りられると助かっちゃうな? ……って思ったり」
【アイテムポケット】も便利だが、荷車があれば空いた手でも運搬ができて更に多くの収穫ができるだろうから。語ればレイは微笑んで、もちろんと請け負った。
「それじゃ、後でカルロさんに運んでもらいますね」
そうしてレイは、銀髪を風になびかせてそっと呟く。皆さんが活気に溢れている様で安心しました――と。
●輝き続けるスペランツァ
レイがカルロや他の村人と修復した荷車は、羊小屋の修復にも役立てられる。オラトリオの梓が木材載せた荷車を引いて羊小屋へ辿り着けば、作業中だった葵がそれに気付き声上げた。
「梓! ありがとう。それじゃ後は、小さな子供たちを見ててあげて」
頷き幼い子ども達の遊び相手となる梓を見送り、青年は小屋の状況をひとつひとつ確かめていく。
「ここんところ、隙間風がひどくてね。このまま冬になったら、羊達が凍えちまうよ」
「大工仕事なら任せてよ! 木材とか借りるね」
時代は違えど、工具を手に取れば懐かしい感触に実家にいた頃のことを思い出す。それは『刻逆』より前――葵は、実家の工務店で修行中だった。あの時覚えた技術が、今こうして役立っている。羊達を怖がらせないように気を配りながら、葵は丁寧に修復作業を行う。壁、扉、最後に屋根。彼の作業は、【修復加速】の効果も働き順調に進んでいく。やり方がわからぬままでは今後困るのは村人だ、ある程度は手伝ってもらって安全な修理方法を教えることも忘れない。
「兄さんすごいのう、職人さんかい?」
「そんな立派なものじゃないよ。ああ、他に修理が必要なものってある? できるだけ直しておこう」
そうして一通りの物の修理の目途が立てば、あとは村人達に任せて。葵はレイと合流して、【アイテムポケット】を活用して隣の村との物資の交換に向かうことにした。もちろん梓も一緒だ。
直ったばかりの荷車は、共に行く村人達に使ってもらう。村で採れた作物、羊の収穫物、それからレイが作った飲食物も。交換品として差し出せば、隣村の人々は喜んで応じてくれた。同時に、葵とレイはその村の人々にもクロノヴェーダがこの地より去ったことを告げる。皆驚いていたが、その瞳にはカルロの村の人々と同じ希望の光が灯っていた。彼らもまた、近隣の村と協力して新たな環境で懸命に生きていけることだろう。
「これでもう、村の皆だけで大丈夫かな」
交換品を持ち帰る道中、葵は安堵に表情を崩して呟いた。冬支度はあらかた終えた、後の細々したところは村人達だけでできるだろう。ディアボロス達の手出しが必要な部分はもうない――名残惜しさに後ろ髪引かれるけれど、村に帰還したらすぐに去ろう。そう葵がレイに語ると、それを聞いていた村人達が声を上げた。
「これで終わり? いやいや葵さん、まだひとつ残ってるよ」
「そうだよ、お嬢ちゃんが作ってくれた食事と飲み物、まだたくさんあるんだ。あれを全部無駄なく平らげるまでは、ディアボロスさん達に協力してもらわないとねえ!」
「えっ……?」
驚き瞳を瞬かせる葵とレイ、それから首を傾げる梓を見て、村人達は笑顔を浮かべる。皆、ディアボロス達に感謝しているのだと。引き留められぬならせめて――最後に共に今日を労いたいと。
語る内に近付いてきた村では、その入り口で優希が手を振っている。収穫作業に区切りをつけた彼女と村人は、先に休憩所で打ち上げを始めているようだ。
(「地道な手伝いが大きな力になるって、信じて頑張ったけど」)
結果、村の人々は協力し合い、今日一日で多くの冬支度を成し遂げた。その達成感が胸いっぱいに広がって、優希の表情も自然と綻ぶ。
感謝を告げる、村の人々。彼らの瞳に灯る希望の光はきっと、冬を越えても消えずに輝き続ける。そんな確信を抱きながら、ディアボロス達は村人との一時を楽しんだのだった。
超成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】がLV3になった!
【修復加速】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【ラストリベンジ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV4になった!
【ガードアップ】LV1が発生!