リプレイ
白水・蛍
アドリブその他諸々歓迎
……まずは人々の食料を配給するのが一番でしょうか。
だから、そうですね。【アイテムポケット】を使用して。新宿島内で保存の効く食料と薪などの暖房関連の資材。可能であれば医薬品も入れて持ち込みましょう。排斥力が働かなかない程度のものを選びますわ。
そして皆さんに配ります。
数はありますから、皆さん焦らないで。
と優しく伝えつつ食料に燃料も配ります。
……そして伝えます。人々に。今起こってる事を。
上位の吸血鬼族、穏健派と過激派の勢力争いの末に過激派が権力を握り、その結果。配給すら止めてしまっている事を。
ただ、何が問題かというと皇帝がその政策を認めてしまっている事。
……民をリソースとしてしか考えていない者が上にいるのです。
だから、我々が来ました。
信じてくれとは言いません。……行動で示します。我々はこの国を。この世界を。救います。この極寒の国に春を……もたらす為に。
峰谷・恵
「鉄道壊して最初に状態悪くしちゃったのはこっちだし、その分支援くらいはしていかないとね」
他のディアボロスの邪魔はしない。アドリブOK。
干し肉、乾パン、ドライフルーツなど保存の効く食料を持ち込んで口福の伝道者で可能な限り増やして村民に十分な量を配る。村民が食べている間に村の中で人目につきにくいところに穴を掘り、穴の底の外周部分に雪を詰め、仕切りを挟んで中央部分に残った食料を置いて簡易保存庫にして穴の入り口を覆いと更に雪を被せて隠し、バレて略奪されないよう簡易保存庫は隠しながら利用するよう村民に言い含める。
その後は村近くの森に入って村民では入りにくい深いところに落ちている薪に出来そうな枝を可能な限り拾い集めて村に持ち帰り村民に配る(その際森の浅いところの枝は拾っていないから不足したらそこに取りに行くと良いことも説明)
「ヴァンパイアノーブルのやつらに見つかったら奪いに来るだろうから、余裕ができてもあまり表に出さないでね」
●飢えから救え
空は晴れ渡り、吸血ロマノフにしては多少は寒さも和らいでいた。
冬将軍が寒気を弱めた影響だろう。
しかし本格的な冬が来れば、飢餓状態の人々は耐え切れないだろう。
「食糧支援と農地開拓……まずは食糧が一番でしょうか」
「鉄道壊して最初に状態悪くしちゃったのはこっちだし、そのぶん支援はしていかないとね」
雪道を歩く白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)と峰谷・恵(フェロモン強化実験体サキュバス・g01103)、2人の行く先には支援対象の村がある。
その村は外を出歩く者もなく、静まり返っていた。
外へ食糧を探しに出る気力も体力もなく、家の中で飢えを耐え忍んでいるのだろうか。
と、そこで。
1軒の家から痩せ細った男性が出てきた。
軒先に積んでいた薪を家の中へ運ぼうとしているようだ。
「はじめまして。私たちはディアボロスと申します」
「食べ物がなくて困ってるって聞いたの。食糧を持ってきたから、村の人たちを集めてもらえるかな?」
蛍と恵は、手始めに彼に声をかけた。
男性は彼女たちの申し出に目を丸くした。突然のことで、驚きのあまり頭が理解に追いつかなかったのかもしれない。だがすぐさま家の中に飛び込み、彼は声を張り上げた。
「ジーニャ、食べ物だ! ディアボロスの皆さんが食糧を持ってきてくれた!」
ディアボロスによる食糧支援の話は、瞬く間に村中に広まった。
「数はありますから、皆さん焦らないで」
「もし歩けなくて家から出られない人がいたら、食べ物を届けてもらえるかな?」
新宿島から持参した食糧は干し肉、乾パン、ドライフルーツなど、すぐに食べることができ、かつ保存の効くもの。それと鍋一杯のボルシチ。現地で火を起こして温め直せば、こちらもすぐに食べられる。
これらを【口福の伝道者】で可能な限り増やし、蛍と恵は村民へ配っていく。【アイテムポケット】から大量の食糧が出てきたり、それが【口福の伝道者】で見る間に増えていくのは、村民には魔法のように感じられただろう。
他に新宿島から運んできたのは医薬品と束ねた薪。これらの物資があれば、飢え、病気、寒さも当面は問題ないはずだ。
「さて、と」
村民が食事をしたり、支援物資を運んでいる間に、恵は村の人目につきにくいところへ穴を掘っていく。掘った穴の底の外周には雪を詰め、仕切りを挟んで中央に保存用の食糧を置き、簡易保存庫とする。穴は板で覆って更に雪を被せてしまえば、見た目は周囲の雪原と変わらない。
「ヴァンパイアノーブルのやつらに見つかったら奪いに来るだろうから、余裕ができてもあまり表に出さないでね」
村民に簡易保存庫の場所を説明する際、恵はそう付け加えた。
それが終われば、恵は薪に出来そうな枯れ枝を拾いに村近くの森へ向かう。
薪は新宿島から運べるだけ運んできたが、量が多くて困ることはない。
拾い集めるのは森の深くに落ちている枯れ枝。森の浅い場所の枯れ枝には手をつけず、もし薪が不足したならそこへ拾い行くよう村民に伝えておけば、彼らも苦労が少ないだろう。
「皆さま、少しだけ私にお時間を頂けますか?」
恵が森へ向かった頃、蛍は村民たちの前で語り始めていた。
「今、この地に起きていること。私が知る限りのことを皆さまにお伝えします」
上位の吸血鬼族、穏健派と過激派の勢力争いの末に過激派が権力を握ったこと。
その結果、配給すら止めてしまっていること。
皇帝がその政策を認めてしまっていること。
どれも村民には衝撃的な話だが、ショックを受け過ぎぬよう、穏やかな声音で蛍は伝えていく。
「……民を資源としてしか考えていない者が上にいるのです。だから、我々が来ました」
蛍の話に、村民たちは真剣な表情で耳を傾けていた。
「信じてくれとは言いません。……行動で示します。我々はこの国を。この世界を。救います。この極寒の国に春を……もたらすために」
話が終わると、村民の中で立ち上がる者がいた。
蛍たちが村で最初に声をかけた男性、イワノフだ。
彼の隣には妻のジーニャが寄り添っている。
「食べ物をありがとう。俺も、妻も、腹の中の赤ん坊も、ここにいる全員の家族が助かった……あんたたちのおかげさ。命の恩人を、疑うなんてことはできない」
イワノフに続き、次々と人々が立ち上がる。
「疑ったりしないさ」
「俺はディアボロスを信じるよ」
「食べ物をありがとう」
堰を切ったように彼らから感謝の声が溢れ出る。
こちらの思いが伝わったことに蛍は安堵した。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
フルルズン・イスルーン
目立たない畑とはなんぞや?
そんな問いを抱えて我々はロマノフの地に脚を踏み入れるのであった。
ま、徴税避けにちょくちょくあったりするけどね。
じゃ、土いじりの時間だ。プロト・ゴーレムくん。
畑の土質は【土壌改良】で問わないので、作りや場所の選定を重視しよう。
候補としては丘に囲まれた窪地や、都市部と直線で繋がない土地。木々で覆われてるとなおよし。飛んで見えるなら貴族の目に触れない離れた所を選ぼうというわけだ。
で、低めな所で遮蔽に堤を盛る。自然な地形に見えるようにして水路や水捌けも意識しよう。自然の地形に沿ってあまり四角四面な整地も避ける事。
獣も寄ってくることを予想して遮蔽の堤付近に罠も作りたい。くくり罠くらいが妥当かな。
で、農作業用具一式はトレイン経由で持ってきたり、現地の修繕したりだね。
ああ、何作ってるかも聞いて種苗があれば植え付けさせないとだ。
農地は作れるけど面倒はキミたちが見るのだぞよ。
ということで、農地を成すのだゴーレムくん!
細かいことはボクがやるけど、力仕事に開墾はゴーレムくんの仕事さ!
●農地を耕せ
「目立たない畑とはなんぞや? そんな問いを抱えてフルルズン・イスルーンはロマノフの地に脚を踏み入れたのであった」
見渡す限りの雪原に、荷物を背負ったフルルズン・イスルーン(ザ・ゴーレムクラフター・g00240)が立っていた。
「はあ」
彼女の隣に立つ、村から連れて来られた青年が、間の抜けた声を漏らした。
村民の中でも体格が良く、体力のありそうな青年だった。
「ま、目立たぬ畑は徴税避けにちょくちょくあったりするけどね」
「はあ」
見た目は少女なのに、それに似つかわしくない言葉遣いに、青年は戸惑っている様子だ。
「候補としては丘に囲まれた窪地、都市部と直線で繋がらない土地、木々で覆われているとなお良し。飛んで見えるなら貴族の目に触れない離れた場所を選ぼうか」
畑の土質は【土壌改良】で問わない。よってフルルズンは作りや場所の選定を重視する。
雪原を踏み締めながら、フルルズンは青年をお供にあちらこちら歩き回る。
しばらくして、ようやく条件に合った場所を見つけ、彼女は背負った荷物をその場に下ろした。
「低めな場所で遮蔽に堤を盛る。自然な地形に見えるよう水路や水捌けも意識する。地形に沿って、四角四面な整地も避けること。そんなところかな。じゃ、土いじりの時間だ。出でよ、プロト・ゴーレムくん!」
雪の下に隠れた土、石、砂を材料に、瞬く間にゴーレムが生成される。
雪原に起き上がったゴーレムの巨体に、青年は大きく口を開け、唖然とした顔で見上げた。
「ところでキミたちの村は何を作っているのかな? 植え付ける種苗はあるかな?」
「ああ、それでしたら……」
と、青年が答える。
作っている作物を聞き、フルルズンがふむふむと頷いた。
「なるほどなるほど。農地は作れるけど、面倒はまだ若いキミを始めとした村民たちで見るのだぞよ。ということで、農地を成すのだゴーレムくん!」
フルルズンの指示にプロト・ゴーレムは猛然と動き出した。
雪を掻き分け、土を耕し、雪原を開墾していく。自分たちの何百倍にもなろうゴーレムの能力に、青年は再び唖然とした顔になった。
「細かいことはボクがやるけど、力仕事はゴーレムくんの仕事さ! さて、青年くん。獣が寄ってくることを予想して遮蔽の堤付近に罠も作りたい。くくり罠くらいが妥当かな。道具と材料は荷物の中にあるから、手伝ってもらえるかな?」
「もちろんです、フルルズンさん! 荷物、俺が持ちます!」
ゴーレムの働きぶりと、それを造り出したフルルズンの力。これらを目の当たりにした青年は姿勢を正して返事をすると、フルルズンの荷物を背負った。
(農作業用具一式はトレイン経由で持ってきているから、他は現地の農具の修繕かな。今回もやること山積みなボクなのだった)
続く作業の段取りを、フルルズンは頭の中で固めていく。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【土壌改良】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
峰谷・恵
「畑の用意は向こうに任せて大丈夫みたいだね。じゃあこっちは住居の手入れしていこう」
他の参加者の邪魔はしない。アドリブOK。
住民の住居、特にストーブなど家の内側の傷んでいるところを修復、補強して回る。
同じ薪の消費でもより温まるように家々の薪ストーブの老朽部分を取り外し傷んだ壁や窓、ドアを外して建物復元を発動、より頑丈にしながら補修していく。外側からはパッと見わからないように外側の壁の見た目は補修していない部分と合わせる。
一通り建物とストーブの修復、補強を終わらせたら農地整備を手伝いに行く。罠設置や外から見つかりにくいよう囲いに針葉樹の枝葉を被せて遠目に判別つかないよう細工する。農作業用具修繕も手伝う。
「できる範囲で修理と補強は済ませたから少しは温まりやすくなると思う」
「隠し畑に近寄って罠にかかった動物も捌けば食料に困らなくなるかな。毛皮も防寒に使えそうだし」
●住居を修復して補強しよう
「畑の用意は向こうに任せて大丈夫みたいだね。じゃあこっちは住居の手入れをしていこう」
寒気が和らいでいるとはいえ、ロマノフの冬は厳しい。補修が必要な住居があれば、この際やっておきたい。峰谷・恵(フェロモン強化実験体サキュバス・g01103)はそう考えた。
「ちょっとお邪魔するね」
恵が訪れたのはイワノフとジーニャの家だった。
「ああ、ディアボロスさん。先程は食糧をありがとうございました」
イワノフが出迎えたが、室内は肌寒い。
妻であるジーニャは体を冷やさないように毛布に包まっている。
話を聞いてみれば、薪ストーブの調子が悪く、火を落としてこれから修理するところらしい。
薪ストーブ以外にも、建物そのものに傷んでいる箇所がいくつか目についた。
「それならボクに任せて。ちょっと寒くなるけど、少しだけ我慢してね」
恵は薪ストーブの老朽部分を取り外し、他にも住居の傷んだ壁や窓、ドアを外していく。
イワノフとジーニャが不思議そうな顔をしている前で、恵はパラドクスを発動、【建物復元】の効果で住居が修復されていく。
薪ストーブは同じ薪の消費でもより温まるように、住居の方はより頑丈に。
外側からはパッと見わからないように、外側の壁の見た目は補修していない部分と合わせてもいる。
「こんなところかな。できる範囲で修理と補強は済ませたから、少しは温まりやすくなると思う」
恵は薪ストーブに薪をくべ、火を点ける。
煌々と燃える炎。
イワノフとジーニャには、これまでよりも室内が温かくなるのが早くなったように感じられた。
「森で薪になりそうな枝も集めてきたから使って。軒先に積んでおいたから」
「何から何まで……本当にありがとうございます」
「ディアボロスさんのご厚意は、決して忘れません」
恵の言葉にイワノフとジーニャが深々と頭を下げる。
「気にしないで、ボクたちがやりたくてやってることだから。元気な赤ちゃん、産まれるといいね」
微笑み、恵は夫婦の住居を後にした。
まずは1軒、作業完了。
次の住居へ彼女は向かい、同じように補強を兼ねた修復作業を行っていく。
一通りの建物の修復を終えたところで、恵はうんと背伸びした。
日暮れまでにはまだ時間がある。
じゃあ農地整備の手伝いに行こう、と恵は村の外へと向かう。
「獣害対策に罠を設置したいな。隠し畑に近寄って罠にかかった動物を捌けば、食糧にも困らなくなるかな。毛皮も防寒に使えそうだし。罠には外から見つかりにくいよう囲いに針葉樹の枝葉を被せて……じゃあまた枝を集めなくちゃね」
外仕事は太陽が沈むまでには終わらせたい。夜になったら空き家でも借りて農作業用具の修繕をやっておきたいところだ。そこまで済めば、後は村民だけでもやっていけるだろう。
いや、ディアボロスの仕事はもうひとつある。
いずれ襲来する蚊の群れを、1匹残らず駆除する仕事だ。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【建物復元】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
●蚊
ぶおんぶおんぶおん。
太陽が地平線の向こうに沈む寸前。
赤く染まった雪原で、1匹の蚊が奇怪な羽音を立てていた。
蚊、と呼ぶにはサイズが桁外れに大きい。まるで猛禽類だ。
高速で羽ばたき空中に静止する蚊、複眼で見つめる先にあるのはひとつの村。
やがて蚊はくるりと向きを変え、雪原の彼方へと飛び去っていく。
そして、夜半。
月夜に照らされる中、竜巻のようなものが雪原の彼方に現れた。
それは蚊柱となって雪原を突き進む蚊の大群だ。
向かう先にあるのは先程の村。
そう、ディアボロスたちが援助を行った村だ。
●接敵
「敵さんはもう来ちゃってるかしらぁ?」
エルフリーデ・ヴァッセルマン(コールサイン『アドラーアイン』・g00556)は低空飛行で、支援対象の村へと向かっていた。
今のところ戦闘騒音のようなものは聞こえてこないが、もちろん彼女は周囲の警戒を怠らない。
低空でも飛行する以上、危険はつきものだ。
「空も色々と事情が変わってしまったけれど……航空突撃兵は飛んでこそよねぇ」
もし敵に先手を取られたとしてもどんとこい、そのまま戦闘へ移行するのみだ。
その時、彼女の瞳は、それを捉えた。
遠く地平線の向こう、赤黒い竜巻のようなものが見えた。
それは騒音とともに急速にエルフリーデとの距離を詰めてくる。
エルフリーデが機銃を構えた時、それは彼女の目前まで来ていた。
「うわっ……これが敵さん?」
赤黒い竜巻の正体は蚊柱だ。
トループス級・蚊の大群だ。
不快極まりない、巨大な蚊の群れだ。
「蚊を教育してやるなんてねぇ……ゲットセット! ゲットセットマニューバ! ゲッセマネ!」
エルフリーデは敵群の真上まで急上昇、そして急降下突撃に移る。
蚊柱の上から下へと機銃掃射し、根本には航空爆弾を叩きつける。
爆炎が蚊柱を呑むが、敵群の勢いは衰えず、エルフリーデへと反撃を繰り出した。
羽根を高速で振動させた波の刃だ。
エルフリーデは高速機動で波の刃の回避しつつ、敵の誘導も試みる。
ディアボロスが支援した村を敵が襲撃するのなら、そこに先行した味方がいるはずだ。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
峰谷・恵
「人を殺した数ならどんな類の吸血鬼より多い、キルスコアで決まるならブラッドサッカーの王でもおかしくないやつらだね」
可能な限り連携を取る。アドリブOK。
飛来する敵を敢えて前に出て迎え撃つことで敵を自分へ引き付け、敵が村へ向かわないようにする。
村に向かおうとしている村に近い敵から重力砲で攻撃、敵の注意を引き付けて味方が攻撃を仕掛ける機会を作る。
敵の反撃は横跳びしながらLUSTオーラシールドで防御し、心臓への直撃を防ぐ。
その後は重力砲で村へ向かおうとする敵を最優先、いなければダメージを多く負っている敵から重力砲で攻撃して敵の個体数を減らしていく。
「心臓まで届かなくても胸がしぼむくらい吸われそうでやだなぁ…」
「ボクらが居る限り村はやらせないよ。かかってくると良い」
ラウム・マルファス
うっわぁ、近づきたくナイ。でもあんなのが村に行ったらもっと大変ダ。味方と連携して、早いところ駆除しちゃおウ。
敵が村に近づかないよう、フライトドローンでなるべく高いところから観察するヨ。暗闇や物陰に紛れて移動されたら困るからネ。月明かりの影を頼りに探せば見つけやすいはずサ。
カラス型ドローンに爆薬と殺虫剤搭載。暗いから音感センサーも付けて、空中戦を挑ませよウ。動きが独特だから、避けられたら自爆させて、周囲に殺虫剤をバラまかせるヨ。
反撃で何か注入されたら、周りを縛ってから魔導ナイフで切り裂いて注入物を出そウ。あとで薬品で手当てすれば多分大丈夫カナ。毒ならともかく、変な病気とかだったらヤバイからネ。
蚊の吸血鬼が居るなら蛭とかノミとかもいるのカナ……出会わないことを祈ろウ。
●支援の仕上げに害虫を駆除せよ
航空爆弾の爆発と爆炎は、雪原で警戒中だったラウム・マルファス(研究者にして発明家・g00862)と峰谷・恵(フェロモン強化実験体サキュバス・g01103)の目にも映った。
そして2人は赤黒い竜巻、そそり立つ蚊柱を視認した。
「うっわぁ、近づきたくナイ」
「普通の蚊だって不快なのに……」
急速に近づく蚊柱に、フライトドローンに乗ったラウムはげんなりした声を漏らし、恵の肌には鳥肌が立っていた。
実際に敵群を目の当たりにした時の怖気は形容し難い。
竜巻じみた蚊柱を構成するのは巨大な蚊の群れ、それに集られるなど想像したくもなかった。
異常なサイズのため羽音だけでもやかましいことこの上なく、もはや立派な騒音公害だ。
「人を殺した数ならどんな類の吸血鬼より多い、キルスコアで決まるならブラッドサッカーの王でもおかしくないやつらだね」
蚊は病原体を媒介して最も人類を殺してきたシリアルキラーだ。
マラリア、脳炎、黄熱病、デング熱、他にも様々な病気の媒介者として人類を苦しめてきた。
忌避効果や殺虫効果のある薬剤の開発、蚊帳や網戸で住居への侵入を防ぐ、そもそも幼虫であるボウフラを発生させない、古来より人類はこの害虫と戦い続けてきた。
「あんなのが村に行ったらもっと大変ダ。早いところ駆除しちゃおウ」
「せっかく救援したのに、害虫風情に台無しにされたくないもんね」
巨体だけに血を吸う量も桁外れのはず、病気が蔓延する以前に村民が全滅してもおかしくはない。
迫り来る蚊の群れ。恵が前衛として敵群へ駆け、後衛のラウムは複数のカラス型ドローンを展開する。
月光が照らす中、戦いの幕が上がる。
「敵が暗闇や物陰に紛れての移動じゃないのは助かったヨ」
ラウムはドローン群を一斉に蚊の群れへと突撃させる。
蚊の羽音を音感センサーが拾って位置を把握、ドローンが空中戦を挑む。独特な動きで蚊に避けられたならドローンは自爆、周囲に殺虫剤をバラ撒いて敵群をまとめて葬っていく。
「パラドクスの爆薬と殺虫剤、お味はいかがカナ?」
蚊柱のあちこちで爆発が起こり蚊がバタバタと燃え落ちていく中、地上の恵も仕掛けた。
「ボクらが居る限り村はやらせないよ。かかってくると良い」
村に近い蚊から重力砲で攻撃、また彼女は前衛として動き回ることで、敵の狙いを自分へ引き付ける。
真っ向から迎え撃つディアボロスに対し、蚊の群れも反撃に出た。
クロノヴェーダの蚊にとって、ディアボロスの血は人間よりも美味なのかもしれない。群れなす蚊がラウムと恵に殺到し、夥しい量の鋭い口吻が突き出してくる。
間近で見れば、その赤黒い体と猛禽類の如きサイズは醜悪でしかない。
と、そこで蚊の群れに変化が生じた。
「2つに分かれタ?」
蚊柱が2本になったのをラウムは見た。
「村に向かうつもり?」
弧を描いて移動を始めた2本目の蚊柱を、恵は目で追う。
それは村を目指す動きではなかった。ディアボロスたちを前後から挟もうとする動きだった。
2本の蚊柱の中に呑み込み、四方八方から集って血を吸い尽くすつもりか。
だが蚊柱が2本になったことで、1本あたりの蚊の密度は薄くなった。
ラウムと恵は、ダメージを負った個体から狙い撃ちしていく。
「あとで薬品で手当てすれば多分大丈夫カナ」
蚊の反撃で腕に液体を注入されたラウムは、縛ってから魔導ナイフで切り裂いて血液ごと注入物を取り除く。
「毒ならともかく、変な病気とかだったらヤバイからネ」
それが蚊の怖いところだ。
姿は蚊でも立派なクロノヴェーダ、用心するに越したことはない。
「心臓まで届かなくても胸がしぼむくらい吸われそうでやだなぁ……」
集ろうとしてくる蚊を横跳びしながら避けつつ、恵はLUSTオーラシールドで防御を固める。
そして近い蚊から重力砲で撃ち落としていく。
彼女の頭上ではラウムの放ったドローンが空中戦の末に、自爆で蚊の群れをまとめて葬り去った。
群れで襲われると面倒な敵であるが、個体ならば難敵ではない。
ラウムと恵は連携して敵を叩き落していき、やがて蚊の群れは蚊柱も維持できぬほどに数を減らしていた。
もう、一息。
ドローンの自爆と同時に散布された殺虫剤が、霧状になって残る敵群を包み込んだ。
薬液の霧の中で蚊の群れはまとめて落ちていく。
1匹だけ、弱々しく舞い上がろうとした蚊がいたが、これを恵の重力砲が呑み込み跡形もなく消し去った。
もう羽音はしない。
夥しい量の死骸が雪原に散らばるのみ、だ。
雪原を見渡しながら、ラウムは傷口に治療薬を塗る。
「蚊の吸血鬼が居るなら蛭とかノミとかもいるのカナ……出会わないことを祈ろウ」
巨大な蛭やノミのヴァンパイアノーブル、もし存在するのなら、大戦乱群蟲三国志の巨大昆虫とはまた別種のおぞましさがあるだろう。
ともあれ害虫駆除は完了だ。
「ボクたちにできることはここまで」
恵は振り返り、守り切った村へと目を向けた。
彼女の瞳に、村の家々の暖かな灯りが映る。
「あとは村の人たちで乗り越えていく……がんばって、ね」
心からのエールを、恵は村へと贈った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【泥濘の地】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!