蒼穹のサルヴァトーレ(作者 真魚
8


#蹂躙戦記イスカンダル  #イタリア蹂躙戦団を叩け  #イタリア半島  #砕城者・デメトリオス 

●蒼穹の下の平和
 その大地に広がるのは、のどかな田園風景だった。
 畑には黄金色の小麦が、重い穂を揺らしてさわさわと音を立てている。収穫期を迎えた小麦達は、刈り取られ、乾燥のために運ばれていく。
 せっせと農業に務めているのは、周辺に見える集落の住人だろう。小麦畑の向こうには、低木が整然と並んでいる畑もある。ブドウ畑だ。こちらは収穫期はもう少し先、手の空いた者は小麦の収穫を手伝って、皆で今年の実りを蓄えとするべく動いていた。
 人々の、平凡で平和な営み。それを遠くから眺めて――眼鏡の奥の瞳を光らせる、亜人が一人。
「なるほど、デメトリオス様のおっしゃる通りですね。ここには、隠れもせず暮らす人間がたくさんいる」
 亜人の身を包む聖銀の武具が、陽の光を受けて輝く。彼は、砕城者・デメトリオスに差し向けられた『蹂躙戦団』の一隊長だった。
「『お前ら喜べ、この先は、誰も蹂躙していない、まっさらな土地だ』……そんな場所を蹂躙できるなんて、ああ、たまりませんね」
 クックッと喉の奥で笑う『トロル兵団』ヒュパスピスタイ。その立ち振る舞いは冷静だったが、浮かべた表情は残忍なもので。
 後ろに控えた猪オーク達と前進する蹂躙戦団。彼らがあの畑に到達した時、住人の平和が容易く破壊されてしまうことは、明らかだった。

●蹂躙を阻むために
「《七曜の戦》、お疲れ様。あなた達の奮闘のおかげで、最終人類史に多くの大地を奪還することができた……本当に、よく頑張ってくれたわね」
 新宿駅グランドターミナル、蹂躙戦記イスカンダル行きパラドクストレインの前で。
 集うディアボロス達へ深く、深く頭を下げたアンナ・ローザ(ヴェンデッタの糸・g03283)は、けれどどこか浮かない表情をしていた。私達ディアボロスの戦いは、まだ終わっていないから。そう呟いた時先案内人は、薄紅色の瞳に変わらぬ復讐の炎を燃やしながら、此度の事件について語っていく。
「《七曜の戦》が終わり、世界は再びディヴィジョンに分割された。蹂躙戦記イスカンダルが断頭革命グランダルメから強奪した地域があることは知っているわね? ……イタリア南部よ」
 イスカンダルの地域となったイタリア南部には、『共和制ローマ』時代の一般人が暮らしているようだ。彼らが持つ知識は『共和制ローマ』の時代のそれと同じであり、改竄された歴史の知識は持っていない。クロノヴェーダのことを知らず、ウェアキャットなどの亜人も存在せず、ディアボロスも存在していない。そんな人々が、何も知らずに生活している。
「……恐らく、『どうせ蹂躙して殺し尽くすから、歴史を改竄する必要はない』ということなのでしょうね。ひどい話だわ、本当に」
 クロノヴェーダの侵攻など想像もしていない、一般人の人間達。そこに突然襲い掛かるのは、亜人の『蹂躙戦団』だ。何も知らぬ人々を追いかけ、殺し、自分らの繁殖のために利用する。そんな地獄のような光景が『視得た』から、アンナは大きな勝利の後だと言うのに唇を噛みしめていたのだ。
 彼女の瞳が、ぐるりディアボロス達を見る。そして、はっきりと言葉を紡ぐ。
「……あなた達に頼みたいのは、一般人の避難の手助けと、この蹂躙戦団の撃破よ。……どうか、お願い」

 蹂躙戦団の亜人達は、人間がいる場所の気配を頼りに、襲撃を仕掛けてくる。農村は各地に点在しているから、このままでは全てを同時に守り切ることはできないだろう。
「だからあなた達には、蹂躙戦団がやってくる前に手分けして農村部の人々を避難させてほしいの。このパラドクストレインが到着する付近には、いくつかの農村があり、徒歩で行けるところに中核都市がある。ここへ皆を誘導すれば、ばらばらに襲撃されることはなくなるでしょう」
 共和制ローマの時代、戦争となれば農民も武装し戦地へ赴いていた。戦いが身近な時代だし、敵が襲ってくるから逃げろ、と言えば善良な農民達はそれを信じてくれるだろう。とは言え、季節は秋目前。収穫したばかりの小麦、いよいよこれからというところのブドウ――彼らの財産とも言える収穫物をそのまま、住処を離れることには抵抗があるかもしれない。
「彼らの気持ちに寄り添ったり、持ち出したい物を持ち出せるよう手伝ってあげたり……ただ避難を促すだけでなく、手を貸してあげる方法も考えてちょうだい」
 避難先となる中核都市にも、根回しは必要だ。都市を支配しているのは貴族――農民が大挙して押し寄せるとなれば抵抗を見せる者もいるかもしれない、けれど幸いなことにこの都市で一番権力を持つ貴族は心優しい人物らしい。
「事情を話せば、気持ちの上では受け入れようとしてくれるでしょう。あとの問題は、農民達の食料と、住む場所ね。共和制ローマでの一般的な食事と言えば、固いパンをワインに浸して食べるもの……ええ、それらを増やすのに適したパラドクスの効果もあるわよね」
 農村部から備蓄を持ち込んだり、都市部にある備蓄を増やしたり。それを受け取れば農民だけでなく都市部の貴族達にも恩恵がある――そう思わせることができれば、他の貴族達も農民の受け入れに応じてくれることだろう。
「このパラドクストレインが現地に到着するのは、蹂躙戦団が到着する半日前。敵がやってくるまでは自由に動けるから、どうかできる限りの救援を行ってちょうだい」
 無事に農民達の避難が間に合ったなら、蹂躙戦団はこの都市部へと向かってくる。内部へ入る前に、撃破すれば此度の作戦は完了だ。全力で戦ってほしいと、時先案内人の少女が告げる。
「敵のリーダーは『トロル兵団』ヒュパスピスタイ。怪力と魔術を操るから気を付けて。亜人らしく残忍だけれど、戦いにおいては冷静に立ち回るようよ。……部下として連れている『オーク攻城兵』は猪突猛進だから、彼が知能を働かせたところで襲撃先は変わらないけれど」

 全ての情報を語り終えると、アンナは深く息をついた。同時に、パラドクストレインの扉が開く。
 その中へとディアボロス達を導きながら、銀髪の少女は震える声で呟いた。
「……祖国がクロノヴェーダに襲撃されるのは、もう嫌なのよ。だから、どうか……」
 農村部の人々も、都市部の貴族達も。皆が暮らしを繋げていけるよう、力を尽くして。祈るように言葉紡いだ時先案内人は、最後にもう一度、深く深く頭を下げた。

●コンクイスタは突然に
 黄金色の小麦畑は踏み荒らされ、ブドウの木達は根本から折られた。
 先端を尖らせた丸太を抱えた『オーク攻城兵』。彼らはその丸太を木へと突き立て、なぎ倒しながら進んでいく。
「人間ダ! 人間ダ! オトコ、コロス! オンナ、オンナハ……!!」
 鼻息荒い猪オークは、逃げ惑う農民達へ追いすがる。揮う丸太が、男の頭を吹き飛ばした。遠くへ逃げ延びようとした者には投擲された丸太が槍のように降り注ぎ、その身を串刺しにする。
「その調子ですよ、オーク達。この地を蹂躙に染め上げ、新たな亜人の軍勢を産み出しましょう」
 楽しそうに言葉紡ぐは、『トロル兵団』ヒュパスピスタイ。その亜人の手は、一人の人間の女性の腕を掴んでいた。錯乱に近い悲鳴を上げる女性だが、ヒュパスピスタイは手を緩めるどころか、彼女を力ずくで組み伏せた。
 ――征服は、蹂躙は、突然だ。しかしこの地獄を、ディアボロスならば未然に防げる。


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


→クリア済み選択肢の詳細を見る


●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わる。全力で力仕事をするならば「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げる事が可能になる。
【避難勧告】
1
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【プラチナチケット】
1
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【隔離眼】
1
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【修復加速】
1
周囲が、破壊された建造物や物品の修復が容易に行える世界に変わる。修復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」する。
【液体錬成】
1
周囲の通常の液体が、ディアボロスが望めば、8時間冷暗所で安置すると「効果LV×10倍」の量に増殖するようになる。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【口福の伝道者】
2
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【アイテムポケット】
2
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【水中適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が水中で呼吸でき、水温や水圧の影響を受けずに会話や活動を行える世界に変わる。
【防衛ライン】
1
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。
【防空体制】
1
周囲が、飛行する存在を察知しやすい世界に変わる。ディアボロスが屋外を飛行中の敵を発見するまでに必要な時間が、「効果LVごとに半減」する。

効果2

【能力値アップ】LV2 / 【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV3 / 【ガードアップ】LV2 / 【凌駕率アップ】LV1 / 【反撃アップ】LV3 / 【アクティベイト】LV1

●マスターより

真魚
 こんにちは、真魚(まな)です。

●シナリオの流れ
 ①and②→③→④の順に展開していくことを想定しています。
 ①②は半日の間に同時進行で行われますが、リプレイは順にお届けする形になります。

●その他
 有効なパラドクスの効果がいくつもあると思われます。必要でしたらぜひ相談所などを活用して、皆様で持ち寄ってください。続く選択肢に向けて事前に効果を使っておく、という使い方もできます。
 また、《七曜の戦》の結果、クロノヴェーダのディアボロス対策が強化されています。③④の際に使用すると不利になる効果1がありますので、説明書などを改めて確認いただいた上で作戦を練ってください。

 それでは、皆様のご参加、お待ちしております。
39

このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


南雲・葵
【箱家】
悲惨な未来が未来が見えるって、かなりしんどいだろうな…
この土地に住む人の命を守るために、未来の悲劇は未然に防がないと!

俺達も事も、亜人の存在も知らない人だから、話の切り込み方は難しいよな…
時間も限られてるから、まずは村の代表の人を聞き出して話をするよ
理解を得るために、普通の人には無理なパラドクスを披露
何もない空間に【粉塵爆発】を起こしたり、オラトリオの『梓』にオラトリオフラワーでこの土地にに咲かない花を作ってもらおう

一定の理解を得られたら、【避難勧告】を発動させて、代表の人と一緒に住人に避難の呼びかけ
収穫後の小麦や持てるだけの食糧とかを持って貰い避難を進めるね
勿論俺達も避難の手伝いに回るよ
持てるだけの物資を抱えて避難の手伝いをするね
小さい子の誘導は梓に傍に居て貰って、少しでも安心して貰えるようにしよう

ミレイ達はうまくいってるかな?
シャルロットやフウガも居るし、俺達はここの人達を安全に移動させる事に集中しよう。


九重・古安
【箱家】

イタリア半島に向かう亜人、か。ここでの略奪を許せば歯止めの効かない蹂躙が起きるのは目に見えているな。
時先案内人の事情を詳しく知っているわけではない……が、戦う理由には十分すぎるくらいだ。この手の理不尽に立ち向かうためのディアボロスだと、ローマの人々に示すとしよう。

まずは住民の避難誘導だな。持って逃げるには難しい大事なものがあれば、小さいものであれば【アイテムポケット】で持ち運ぶこともできるし、大きなものも一纏めにしてもらえれば【隔離眼】で隔離しておける。
前者は容量には限りが、後者は生き物に使えず重量に限りがあり後で取りに戻る必要があるが、そこを説明したうえで住民の説得に当たろう。俺一人では限りがあるが、仲間と手分けしてあたればより多くの生活の糧を略奪から守れるはずだ。
特に今後の生活に必要なもの……当面の食糧と来年からの農業に必要な種もみ、あとはぶどうの樹など隔離できれば良いのだが。

手助けが必要な住民がいれば直接手を貸そう。なに、こう見えても腕力には自信があるからな。心配は無用だ。


東雲・椿樹
【箱家】
目の前に救える命が、変えられる未来があるっていうんだ。
惨い未来は俺らで変えていこう。

戦いが身近にあるってあまりいいものではないな…。だけどその分理解が得られればスムーズな避難誘導出来るかもしれない。葵や古安と協力しながら進めていこう。

避難するにしてもただ単に逃げて下さいじゃ、なかなか気持ちに踏ん切りがつかない部分もあると思う。
口下手な俺には説得が難しいかもしれないけど、それならちゃんと誠意を見せることが大事だよな。
この土地の人達が丹精込めて作った大切な収穫物たちを【アイテムポケット】に詰め込めるだけ詰め込んで避難しよう。
これで憂いが少しでも無くなればいいな。

避難するにあたって、高齢の方や子供だっているかもしれない。
避難するのに大変そうな人達には積極的に手を貸していこう。
毛玉なんかは子供に人気そうだもんな。お前がいると安心材料になるだろうから毛玉も避難誘導の手伝いよろしく。

他のみんなは大丈夫だろうか。
いや大丈夫、何とかなってるって絶対。


●蹂躙より逃れて
 パラドクストレインより降り立つと、早朝の爽やかな風が吹き抜ける。
 周囲に見えるは黄金色の大地。収穫期を迎えた小麦畑には、すでにちらほらと農民の姿があった。
 のどかな田園風景――その平和な光景に南雲・葵(バールの人・g03227)は思わず微笑むが、同時にこの地に『視得た』という未来を思い出して眉寄せる。
「悲惨な未来が見えるって、かなりしんどいだろうな……」
 出発前、蹂躙戦団に襲撃されるこの地について語った時先案内人の少女。その姿思ってぽつり呟けば、隣で九重・古安(巻き戻り路逸れる針・g02347)が頷いた。
 イタリア半島へ乗り込んでくる亜人達。ここでの略奪を許せば、歯止めの効かない蹂躙が起きるのは目に見えている。力を貸してと頭を下げた、時先案内人の事情を詳しく知るわけではないけれど――。
「戦う理由には十分すぎるくらいだ。この手の理不尽に立ち向かうためのディアボロスだと、ローマの人々に示すとしよう」
「ああ、目の前に救える命が、変えられる未来があるっていうんだ。惨い未来は俺らで変えていこう」
 古安の言葉を肯定するように、続けて語ったのは東雲・椿樹(デーモンのレジスタンス諜報員・g06911)だ。肩の上ではモーラット・コミュの『毛玉』も訳知り顔でもきゅもきゅ頷いている。
 見知った仲間達の、頼もしい言葉。それらを聞けば葵の表情も再び明るくなり、彼はオラトリオの『梓』と共に一歩を踏み出した。
「そうだな、この土地に住む人の命を守るために、未来の悲劇は未然に防がないと!」
 紡ぐ言葉が、力になる。一歩、二歩、進む足は速くなって、彼らはそのまま小麦畑へ向かって駆け出していた。
「おーい!」
 声をかければ、農業に励んでいた人々の手が止まる。顔上げた人々は、何事かとディアボロス達の方へ集まってきた。
「どうしたんだい、お兄さん達。見ない顔だね」
 額の汗を拭いながら、壮年の男が言う。ぐるり周囲を確認すれば、他にいた農民も皆男性だった。老いも若いもいるけれど、とりあえず声掛けてくれた男が一番代表らしいだろうか。
「ええっと……」
 物珍しそうに見てくるローマの農民達に、思わず葵は言い淀んだ。頭の中で、懸命に話を組み立てる。
(「俺達の事も、亜人の存在も知らない人だから、話の切り込み方は難しいよな……」)
 今までのディヴィジョンで通用した説得とは、違う切り口が必要かもしれない。思考を巡らせるけれど、時間が限られていることへの焦燥もあって。
 切り出し方に迷っていると、椿樹が進み出た。紅い瞳で壮年の男をじっと見据えて、彼は短くこう伝えた。
「これから、ここに敵が来るんだ。早く逃げた方がいい」
「敵だって!? どこのやつだ!」
 口下手故の手短さだったが、だからこそインパクトがあった。緊張に拳を握り締めた人々の表情を見て、椿樹は彼らも戦士なのだと思い知る。
(「戦いが身近にあるってあまりいいものではないな……」)
 こんなにのどかな景色にある彼らだって、必要となれば農具の代わりに武器を取るのだ。そして、だからこそ彼らは続けてこう言った。
「ようし、それなら動けるやつは家族と畑を守ろう! 今日の仕事はやめだ、さあ武器の準備をするぞ!」
「あ、待って、戦って勝てる相手じゃないんだ!」
 奮起して動き出そうとする人々を、葵が慌てて止める。クロノヴェーダの桁違いの脅威を知らない人々だ、まずは恐れ、近付かない方向に持っていかなければならない。
 葵は『動かないで、見てて』と農民達に告げてから、バールのようなものを取り出し、畑とは反対の方向に向けて、それを揮った。
 バチンッ!
 動くと同時、何もなかったはずの空間に火花が散り、爆炎が起こる。パラドクスによる粉塵爆発――改竄されぬ歴史を生きる彼らにとって、それは非日常の出来事だった。
「なっ、なんだ!?」
「幻か……? いや、でも今、確かに一瞬熱かったぞ!」
 驚き口々に声を上げる人々。火とは、時に恐れの対象となる。古来より人々は火を恐れ、そしてそれを利用してきた。そんな本能的な恐怖心に訴えかけて――葵は、できる限り深刻な表情で言葉を紡ぐ。
「熱かっただろ? 直接当たったら火傷どころじゃない。今こっちに向かってる敵は、これよりもっと怖い力を持ってるんだ」
 畑は荒らされるだろう。男や老人や子供は殺されるだろう。女は死より酷い蹂躙に遭う。そういう、脅威なのだと。語れば農民達がサッと青ざめていくのがわかった。
「そ、そんな……俺達は、どうすれば……」
「安心しろ、敵は俺達が相手する」
 動揺する人々に、きっぱりと言い切ったのは古安だ。無造作に揺れる白髪の奥で、黒い瞳が鋭い光を放っている。見た目は少年と言っても通る姿なのに、その眼光は長く経験を積んだ者のそれだ。その違和は不思議な説得力を持ち、農民達はディアボロス達の言葉を受け入れた。
「とにかく、逃げればいいんだな!」
「俺、あっちの畑のやつらにも話してくるよ!」
 理解が得られれば、行動は早い。周辺の集落にも情報共有を名乗り出た農民へとついていくことにして、葵はほっと安堵の息を漏らした。
 そうして、ディアボロス達はそれぞれ各地の住居で、避難のための手伝いを始める。家にあった台車などを使い、できる限り持ち出しやすいように。
 家財道具をかき集める人々を手伝いながら、椿樹はその家の家族達が不安げな表情を浮かべていることに気付いた。住み慣れた家を手放し、避難する。亜人達の蹂躙戦団は今回限りとはならないだろうし、避難すればしばし帰ることができない。なかなか踏ん切りがつかない部分もあるだろう――農民達の想いに寄り添った椿樹は、荷造りをやめて小麦畑へ案内するよう彼らに頼んだ。
「何をするんだい、兄ちゃん?」
「この小麦、持って行こう」
 言って椿樹が手に取ったのは、農民達が丹精込めて作った大切な収穫物達。刈り取り並ぶ中でもよく乾燥したものを選んで、彼は【アイテムポケット】にどんどん詰め込んでいく。
 別の集落では、古安もまた彼らの仕事に関わるものを運び出そうとしていた。主に持ち出すのは、小麦の種。来年再び農作業をする時に、また種を撒き育てられるように――それは、必ずまた戻ってきて日常を過ごすのだと言う、勇気に繋がるだろう。
(「ぶどうの樹も隔離できれば良いのだが……」)
 遠くに並ぶ低木を眺め、古安は思い悩む。【隔離眼】は生物には使えないし、ディアボロス達が帰還すればその効果もなくなる。今、実を付け始めた果樹達にできることは残念ながら思いつかず、古安は農民達が保管していたワインの方を【アイテムポケット】に詰めていくことにした。
「もっと【アイテムポケット】があれば楽だったか」
 あれもこれもと選んでいけば、一つのポケットはあっという間にいっぱいになってしまった。とは言え、時間はまだある。農民達を避難させ終えたら、ディアボロス達が再び往復して追加で運び出してもいいだろう。
 そうしてそれぞれの集落から、人々は避難を開始した。台車を引き、荷物を背負い、人々は中核都市目指して歩いていく。夏の太陽は高く昇り始め、暑さも増してくる――過酷な道だが、懸命に行く彼らをディアボロス達も手伝う。
「兄さん、大丈夫だよ。もうそんなに持ってくれてるんだ、その荷物は俺が……」
「なに、こう見えても腕力には自信があるからな。心配は無用だ」
 ぱんぱんに詰まった袋を辛そうに持ち直している農民を見て、すかさず代わった古安は涼しげな顔で言う。その姿に『若いやつはすごいなぁ』と呟いた農民は、空いた手で子供の手を引き進み始めた。その近くでは、椿樹が老人に手を貸しゆっくりと歩いている。
「もっきゅー!」
 元気に声上げる毛玉は、子供達の誘導担当だ。ふわふわの毛並みを風に躍らせ、こっちこっちと誘えば子供達がそれを追いかける。
「まってー、けだま!」
「ふわふわかわいいね!」
 きゃっきゃとはしゃぐ子供達は、進む大人達を追い越して……そこで、一人が転んだ。
「おっと。梓、頼んだ」
 ちょうど合流した葵が、オラトリオの少女に声掛ける。梓はふわふわと転んだ少女へ近付いていき、その手を取って助け起こした。彼女の微笑みは子供達にも広がって、避難しているとは思えぬほど彼らは明るい表情を浮かべている。
「ミレイ達はうまくいってるかな?」
 椿樹の隣へとやってきて、葵は先に都市へと向かった仲間達のことを零した。ちょうど同じように仲間の心配をしていた椿樹は、自身も葵も勇気づけるように言葉を紡ぐ。
「いや大丈夫、何とかなってるって絶対」
「そうだよな、俺達はここの人達を安全に移動させる事に集中しよう」
 言葉交わせば、本当に心配などない気がしてきた。彼らはにっと笑い合うと、真っ直ぐに都市目指して歩いていく。
 彼らの避難誘導はうまく進み、農村部の人々は日が高いうちに中核都市へと辿り着いた。その後もディアボロス達は時間が許す限り備蓄や収穫物を運び続けたが、【避難勧告】の音と光が発せられる頃には誰も農村部には存在しなかったのだった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
効果1【避難勧告】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!

ミレイ・ドリムータ
【箱家】
まっさらな土地を蹂躙できるのがたまらない?
ふざけんじゃないわよ。クロノヴェーダ共が踏み荒らしていい土地なんて、世界のどこだろうとどの歴史だろうとありはしないんだよ!
農村の避難は葵達に任せた!
奴らの蹂躙を防ぐ為にも、こっちは都市の受け入れ準備を万全にしとかなきゃね。

権力のある貴族に事情を話し、ワイン蔵に案内してもらえるよう説得する。
必要であれば新宿島から持ち込んだラピスラズリ等の安価な宝石や銀細工と【液体錬成】で増やす元になる分のワインを交換してもらう。

ワイン蔵に付いたら【液体錬成】でワインを増やす。
「クロノヴェーダ共が来るまで半日だっけ。だったら液体錬成を行うには充分な時間がある。避難民も受け入れてくれた都市の人々も、飢えさせたりはしないよ!」
液体錬成が完了したらフウガ達の手伝いをする。

絡み、アドリブ歓迎


フウガ・ミヤビ
【箱家】

避難誘導は葵さん達にお任せしましょう。
ボク達は、避難をしてくる方達を迎え入れて貰えるよう交渉に行きましょう。

突然の訪問になるので、きちんと挨拶をしてから交渉に入ります。
シャルロットさんのサポートに回る形でお話を進めますね。
これから起こる事と、頼み事を真摯に話します。
避難してくる方たちも、持てるだけの小麦の持参が有る事、
ボク達も多少の援助が出来るので手伝わせて貰いたいとも伝えます。

ワインについてはミレイさんにお願いします。
準備が終わったらお二人にも手伝って貰って【口福の伝道者】でパンの在庫を増やします。
半日有れば、2食分くらいの食事は出来ると思うので、
固いパンを食べやすくするために、持参した牛乳に浸して黙々と食べます。
これで当面の食糧確保は出来ると思うんですが。

後は簡易のテントを立てたり、少しでも避難してきた方の力になれるように準備を整えます。


シャルロット・アミ
【箱家】
農村の避難は南雲さんたちに任せます
円滑な受け入れは、人々に安心をもたらすわ
少しでも避難してきた人が安心できるように尽力しましょう
この地を守るために、できることは沢山あるはず

まずは【プラチナチケット】を利用して支配層にコンタクトを
丁寧にまず事情をお話しましょう
このままでは多くの命が喪われてしまうこと
そのためにもここに人々を受け入れてもらいたいこと
私たちも精一杯尽力すること

ミレイさんの増やしてくださったワインと
フウガさんの増やしてくださったパンを証明としてお見せするわ
農村部から持ってきた備蓄もこうして増やせるとお話して

全貴族が納得くださるまで私も残留効果を使用して
真摯にお話するつもり
双方納得での受け入れでなければ、すぐに避難も瓦解するわ

話がついたなら【アイテムポケット】で持参した道具などで
簡易住居を作るつもりよ
テントなど持ち込めれば一番いいかしら

アドリブ、連携、歓迎です


●その人々を迎えるために
 避難誘導を行ったディアボロス達がいる一方で、農民達の受け入れ準備のため中核都市へ向かった者達もいた。
 のどかな農村部の景色を横目に通り過ぎ、真っ直ぐ都市を目指す。ミレイ・ドリムータ(新宿島で暮らすもの・g01550)の心に燃えるのは、蹂躙戦団への怒りだった。まっさらな土地を蹂躙できるのがたまらない――そのようなことを語ったと言うクロノヴェーダが、この地の平和を破壊しようとしているのだ。
「ふざけんじゃないわよ。クロノヴェーダ共が踏み荒らしていい土地なんて、世界のどこだろうとどの歴史だろうとありはしないんだよ!」
 思わず言葉を吐き出したミレイは、金髪のポニーテールを風になびかせて先を急ぐ。農民達の避難は仲間に任せた、こちらは都市の受け入れ準備を万全にしておくべきだろう。それが、亜人の蹂躙を防ぐことに繋がるのだから。
 そうしてやっとたどり着いた中核都市。中へ入ろうとすると、武装した男に呼び止められた。
「こんな朝早くに、何者だ?」
 都市の出入り口で、不審な人物が侵入しないよう見張っているのだろう。疑わしげに見てくる男へと、シャルロット・アミ(金糸雀の夢・g00467)は深々と頭を下げた。
「私達は、農村部の様子を見に行っていたのです。恐れ入りますが、この一帯を脅かす火急のお知らせが……」
「農村部……ですか?」
 深緑色のワンピースを翻さず、優雅な一礼。その立ち振る舞いと【プラチナチケット】の効果で、門番の男はシャルロット達をどこぞかの貴族と解釈したのだろう。訝しげな顔をしつつも、仲間へ声掛け、ディアボロス達を都市の中へと通してくれた。
 案内されたのは、立派な石造りの建物だ。ここでお待ちください、と告げて門番が立ち去ると、フウガ・ミヤビ(風来楽師・g06359)はほっとため息を零す。
「うまく取り次いでもらえそうですね……」
 最初の関門はクリア、しかし重要なのはここからだ。気を引き締めようと、フウガは待つ間も背筋伸ばして立っていた。想うのは、避難誘導に奔走しているであろう仲間のディアボロス達のこと。
「避難をしてくる方達を迎え入れて貰えるよう、ボク達で頑張って交渉しましょう」
「ええ、円滑な受け入れは、人々に安心をもたらすものね」
 相槌を打ったのはシャルロットだ。この地を守るためにできることはたくさんあるはず。だから避難してきた人々が少しでも安心できるように――。
 ディアボロス達が互いの想いを語り合っていると、そこへ数人の男がやってきた。
 中央にいるのは、人のよさそうな貴族の男性。その周囲へついている数人の男達も貴族であろうが、明らかに中央の一人は身なりが豪華だ。時先案内人が語っていた、『一番権力を持つ貴族』がさっそく出てきたのだろうか――思えば緊張に顔を強張らせる三人を見て、中央の男は朗らかに笑った。
「お待たせいたしました。ああ、どうぞお掛けください。この都市のことであれば窓口は私になっておりまして……ええ、火急の知らせがあると伺っておりますが、さて?」
 ディアボロス達に席を勧めて、本人も座る。取り巻きらしき貴族達もさっと席に着いたのを見て、ディアボロス達はそれに倣うように着席した。
 初めに口を開いたのはフウガだ。
「突然の訪問、お許しください。こうしてお話しの場を用意していただき、感謝します」
 深く頭を下げれば、シャルロットとミレイもそれに続いた。まずは丁寧な挨拶。それから本題に――顔上げたシャルロットが、真剣な表情で貴族へと切り出す。
「農村部に、敵が迫っているとの情報を得ました。敵は恐ろしく強く……太刀打ちできない農民の人々が、こちらの都市へと避難してまいります」
「敵だって!? この都市も狙われると言うのか!」
 驚き声を上げたのは、取り巻きの一人だった。周囲の人々もざわめいている。しかし中央の貴族だけは冷静に人々を手で制して、『続けてください』とディアボロス達へ告げる。
「ご安心ください、この都市へ侵入する前にボク達が撃退します。けれど、農村一つ一つを巡り守ることは困難です。ですから……皆さんに、避難してくる方達の受け入れをお願いしたいのです」
「このままでは、多くの命が喪われてしまいます。私たちも精一杯尽力します、どうか人々の受け入れを」
 フウガとシャルロットが真摯に説明すると、中央の貴族はふうむ、と唸り顎髭を撫でた。
「農民らこそ力ですからな。困っているなら受け入れたいと思いますが……」
 考えながら言葉紡ぐ。すると、取り巻きの貴族が立ち上がり口を開いた。
「ルキウス様! 確かに農民らなくして都市は成り立ちませぬが、こちらも全て受け入れられるほどの余裕はございませんぞ! 住む場所は、食料は、一体どこから提供すると言うのですか!」
 その言葉には、強い拒絶が滲み出ていた。自分が協力するのは御免被る――そんな想いを隠しもしないその者を、周囲の貴族達は咎めもしない。彼らもまた、多少なりとも同じ気持ちなのだろう。
 そんな取り巻き達の様子に苦笑いして。ルキウスと呼ばれた貴族の男は、ディアボロス達へ語り掛ける。
「……この通り、我らもそれほど余裕のある暮らしをしているわけではありませんのでな。せめて食料の確保ができれば話は違うのですが」
 ルキウスの言葉には、含みがあった。『食料さえ提供してもらえるなら、ここの貴族も説得できる』。――なるほど、この都市の貴族は直接的な物言いを避けるらしい。
 裏の意味を汲み取って、シャルロットは言葉を返した。この都市の食料を増やす手段が、彼女達にはあるのだと。
「お時間をいただければ、その証明をお見せすることもできるわ」
「避難してくる方達も、持てるだけの小麦の持参があります。ボク達も援助が出来るので、手伝わせて貰いたいです」
 ここは、謙遜などせず自信を持って。告げれば取り巻きの貴族達がひそひそと相談を始めるが、ルキウス一人は満足げに頷いていた。
「……最後に確認なのだが。この都市が、その敵共に襲われることはなく。我らが兵を出す必要もないのだね?」
「ええ、そこはアタシ達に任せて」
 青い瞳に真剣な光灯して、ミレイが言う。するとルキウスはニコニコと笑顔を浮かべて、こう答えた。
「それはよかった。兵の犠牲を出さず、食料も提供いただけると言うのなら私はその話に乗りましょう。ええ、すみませんが私の私有地だけで全ての農民を受け入れられるかはわかりませんが……きっと、この都市の貴族達も力を貸してくれることでしょう」
 それは、取り巻き達がどう言おうと自分だけは決めたのだと言う宣言だった。権力者であるルキウスがそう言えば、『ならば私も……』と声を上げる者もいた。ディアボロス達がこれから実際に食料を増やせば、更に追随する者もいるだろう。
「……ありがとうございます!」
 心優しき権力者の言葉。それに感謝の想いをしっかり述べて、ディアボロス達は農民受け入れのための細かい相談を始めるのだった。

●生きるために必要なこと
 ルキウスとの相談の後、ミレイはワインの保管庫へとやってきていた。飲食物の貯蔵庫と言うのは重要な場所であるが、新宿島から持ち込んだ安価な宝石や銀細工を交換材料として提示すれば、彼はワイン数本をミレイへと譲ってくれたのだ。
「空のボトルも貸してもらえる?」
 案内してくれた者に頼めば、いくつものボトルが並べられる。共和制ローマの時代、ワインの保管に使われていたのは陶器のボトルだ。空のそれにミレイはワインを少しずつ移し替えていく。
「クロノヴェーダ共が来るまで半日だっけ。だったら液体錬成を行うには充分な時間がある」
 元からワインを保管しているこの場所なら、冷暗所として利用できる。このまま八時間が過ぎれば、ボトルの中はたっぷりのワインで満たされることだろう。
「避難民も受け入れてくれた都市の人々も、飢えさせたりはしないよ!」
 ずらり並べたボトルを前に、腰に手を当て笑顔で宣言する。そして満ちる時を楽しみに、ミレイは保管庫を後にするのだった。
 彼女が移動した先は、フウガの元だった。彼はルキウスに用意してもらった一室で、パンを増やす作業をしているはずだ。
「フウガ、手伝うわよ」
 部屋へ入ってミレイが告げれば、顔を上げたフウガが微笑んだ。彼がつくテーブルには、固いパンの載った皿と、コップが用意されている。【口福の伝道者】。これでパンを増やすためには、ディアボロス達が食事として摂らなければならない。
「助かります、ミレイさん。このパン食べるのちょっと大変で……」
 言いながらも、フウガは持参した牛乳をコップに注ぎ足し、そこにパンを浸して口に運んだ。共和制ローマの時代のパンは、現代のパンとは違う。保存がきくように水分が少なく作られているため、飲み物に浸して食べるのだが――それでももそもそしていて、食べ進めるのは中々大変な作業だった。
 ミレイも隣の席に着いて、二人は黙々と食事を進める。なんとか数個のパンを胃に流し込めば、しばらく動けそうにないくらいにお腹がいっぱいになってしまった。これで一食――時間を置けば、もう一食分くらいは増やせるだろうか。
 二人が休んでいると、そこへシャルロットがやってきた。入り口からひょこりと覗き込んだ彼女は、フウガとミレイを見て、それから増えたパンの山を見つける。
「フウガさん、ミレイさん、お疲れ様。無事にパンを増やせたのね」
 言葉紡ぎながら、ちらり背後を見る。シャルロットの後ろには、貴族が数人ついてきていたのだ。彼女は、ルキウスとの交渉が終わった後も都市内の貴族を訪ねて説得を続けていた。
(「双方納得での受け入れでなければ、すぐに避難も瓦解するわ」)
 だから、一人一人と真摯に会話して――するとやはり、備蓄の話になるのだ。百聞は一見に如かず、と思ったシャルロットは、貴族達に【口福の伝道者】の効果を見せるためここまで連れてきたのだった。
 部屋へとやってきた貴族達は、皆揃って目を丸くしていた。急に八百人前のパンが増えているのだ、彼らにとっては想像を遥かに超える量の備蓄提供となっているはずだ。
「これは……どうやってこんなに運び込んだんだ」
「まるでこの場で増やしたようではないか。奇跡が起きたのか……?」
「これだけあれば、確かに農民の受け入れも可能……我らが兵糧として使うこともできる」
 口々に感想を漏らした貴族達は、皆表情が一変していた。自分達の利益となるかどうか、それが最優先事項の彼らにとっても、此度の農民の受け入れは大きなチャンスとなったのだ。
「ワインも今増やしているところよ」
「農村部から持ってきた備蓄もこうして増やせるわ」
 ミレイとシャルロットが告げれば、貴族達は我先にと協力を申し出てきた。これだけの貴族の私有地を提供してもらえれば、これから来る農民達も住まわせることができるだろう。
 ――そして、このパンとワインの話は瞬く間に貴族間に広まり、最早文句を言う者はいなくなったと言う。

●尽力の果てに
 朝から奔走した甲斐あって、陽が低くなる頃には都市の受け入れ準備は完了した。
 三人のディアボロス達は、最後に貴族達が提供してくれた私有地のひとつへとやってきていた。そこには、農村部から避難してきた人々が体を休めている。
「どうぞ、使ってください」
 農民達に声掛けながら、フウガが布を配っていく。シャルロットも【アイテムポケット】で新宿島から持ってきたものから、布を探して配っていた。テントを持ち込むことも考えたが、ここは紀元前の古代ローマだ。排斥力の影響で使えなくなる恐れがあることを考えれば、布の方が長く使えるだろう。
 そうして都市への移動で疲れの見える人々を助けていたところに、見知った顔が現れる。
「葵!」
 ぱあっと花咲くように笑って、ミレイが名前を呼び駆け寄る。やってきたのは、避難を担っていたディアボロス達だったのだ。
 互いの顔を見れば、成果は明らかだった。安堵に表情を崩して、彼らはこの半日の奮闘を称え合う。
 しかし、その詳細を語り合う時間はもう残されていなかった――夕暮れの大地を、蹂躙戦団はやってくるのだ。

●夕暮れの戦団
 大地を行く蹂躙戦団。トループス級『オーク攻城兵』達は、殺気立っていた。
 ここまでいくつもの農村を通ってきたが、人っ子一人見つからない。繰り返し蹂躙できる歓びに胸躍らせていたというのに、半日かけて成果はひとつもなしなのだ。
「人間……ドコダ……コロス、コロスゾ……」
 目を血走らせた猪オークは、気配を頼りに中核都市へと近付いている。
 辿り着いてしまえば、飢えた蛮族達は残虐の限りを尽くすだろう。
 それを阻止するため――ディアボロス達は力を使う。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【液体錬成】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!

九重・古安
【箱家】

住民の避難は終わっているとはいえここが生活の場であることに変わりは無し。早々に片づけて人々が農村での生活に戻れるようにしたいところだ。
蹂躙のために攻め込んでくる亜人たちに小麦や葡萄畑の価値が分かっているとは思えないが、だからこそこれ以上奴等に踏みにじらせるわけにはいかん。

敵の先鋒は攻城兵か。都市を背に守る側としては厄介な相手だが、だからこそ真正面からの力比べに応じてやる義理はないな。相手が考えなしにこちらに突っ込んできてくれるというのなら、それを遮るように【防衛ライン】を引いてやるまでだ。
まずは敵の足並みを崩せれば良し、飛び越えるために隙を晒すのであればそこに『衝打の繋装』でフルスィンガーを叩きつけてやるまでのこと。戦槌を担いでいるからといって飛び道具が無いと思わないことだ。
あとは味方と連携して一体ずつ確実に仕留めていけば敵の攻勢も削ぐことができるだろう。下手に残せば逃げる道中で蹂躙に及びかねん。徹底的に叩かせてもらおう。


フウガ・ミヤビ
【箱家】
避難誘導も、避難場所の確保も無事に済みましたね。
ボク達は露払いに向かいますので、この後は宜しくお願いします。

さて食後の運動に下衆な猪を狩に行きましょう。
幸い、今回女性陣は下がっていて貰うので、ボク達で獣を狩るだけです。

少しでも避難した村の皆さんの為になるよう【修復加速】を展開しておきますね。
小麦やブドウもですが、建物だって村の方の大事な財産です。
……さあ、叩き潰しに行きましょう。
こう見えて、ボクも腹に据えかねているんです。

知性も品性もない獣が来たみたいですね。
貴方たちの求める女性も、蹂躙できる人間も居ませんのでお帰り下さい。
……ああ、言葉は通じませんね、実力行使で土に還して差し上げましょう。
多少のダメージは覚悟の上、パラドクスを展開し、間抜けにも丸太を拾いに来た敵を1体ずつ迎撃します。
他のディアボロスの仲間と連携や共闘で1体でも多くの敵を倒します。
なるべく村への損害と、ゴウトさんや椿樹さんに攻撃が集中しない様に立ち回ります。


東雲・椿樹
【箱庭】
みんなのおかげで無事農民達の避難は出来た。
とはいえ生活拠点が戦いの場になってしまうことには変わりないわけだ。
そう考えると胸が痛むな…。
邪魔なデカブツを片っ端から叩いて少しでも早く元の生活に戻れるようにしよう。

さすが猪、まさに猪突猛進ってやつか?
確かに一撃一撃の重さは馬鹿にならないな。だが、だからといってこっちがまともに力比べしてやる必要も無い。
仲間達と連携をとって各個撃破していくか。

本当はこれ以上被害が出ないように、上手く立ち回っていければいいんだが…。
俺たちがいま出来うる最善を尽くそう。

ちょうど敵さんが親切に投げて寄こしてきた丸太があるな。別にこいつを俺がぶん投げたって良いわけだよなぁ。
せっかくだ、その身をもって丸太の威力でも確かめて見るんだな。
あ、いま間違えて毛玉投げたか?…まあ何とかなるか。

連携アドリブ歓迎


ゴウト・カスリメティ
【箱家】

綺麗な麦畑と葡萄の木が荒されちまって……。酷えもんだな。
うまい食材を作るにはたくさんの人の手と時間がかかるんだ。それを踏みにじった奴らは特級厨師の俺が許さん!

さて、戦いの前にまずは腹ごしらえか?
硬いこの時代のパンでも、仲間のフウガが受け入れ準備用に持参してきた牛乳をちょいとわけてもらって工夫すりゃ……
ほい!ゴウト特製フワフワフレンチトーストの出来上がり。
欲しいやつはレーション(野戦食)代わりに食ってくれ。これで元気100倍!敵をやっつけていきまっしょい!

まっすぐ襲ってくるオークたちを、古安が作ってくれた防衛ラインギリギリまで引き付けて
「食らえ!俺のスペシャリテ【美味三昧砲】!」
あとは威力のある仲間の攻撃がうまく当たるよう、フライパンをガンガン叩いて敵の気をひいてサポートするぜ。

それにしてもオークってのは……面白い攻撃をするんだなあ。
丸太を投げたあと、拾いに来るっておまぬけさんかな?
うーし、ウロウロ丸太探してるところを一匹ずつ囲んでやっつけてやるか!

連携アドリブ歓迎


●人々掬う壁となり
 ディアボロス達が都市の出入り口より外へ出ると、こちらへ向かうクロノヴェーダの集団が遠くに見える。
 夕日を背に迫るオーク攻城兵の蹂躙戦団――その姿に表情を引き締めながら、フウガ・ミヤビ(風来楽師・g06359)は門番の男にも都市の中にいるように告げた。その近くには、ここまで共に行動した仲間達もいる。
「ボク達は露払いに向かいますので、この後は宜しくお願いします」
 そう言って、ディアボロスの仲間達とこの地の人々に下がっていてもらって。後は、フウガ達で蹂躙の獣を相手するだけだ。
「さて、食後の運動に下衆な猪を狩に行きましょう」
 涼やかに告げながら前行く仲間の列に加われば、彼らはオーク攻城兵達を睨んでいた。敵は、真っ直ぐにこちらを目指している。途中にある畑は最早人がいないものと、小麦もブドウの木もなぎ倒して進んでくる。
「綺麗な麦畑と葡萄の木が荒されちまって……。酷えもんだな」
 ゴウト・カスリメティ(ウェアウルフの特級厨師・g10381)は、ため息交じりに呟いた。料理人である彼は知っている、美味しい食材を作るのにどれほどの人の手と時間がかかっているのかを。その手間を、想いを、踏みにじるクロノヴェーダに、抱く怒りが膨れ上がる。
「奴らは特級厨師の俺が許さん!」
 大包丁を握り締めながら声を張り上げれば、隣で九重・古安(巻き戻り路逸れる針・g02347)も頷く。
「ああ。亜人たちに小麦や葡萄畑の価値が分かっているとは思えないが、だからこそこれ以上奴等に踏みにじらせるわけにはいかん」
 言葉紡ぐ彼の視線の先では、猪オークが暴れている。住民の避難は終わっているとはいえ、敵が破壊し進む場所が人々の生活の場であることに変わりはない。早々に片付けて人々が農村での生活に戻れるように――思えば黒い瞳にも熱が篭もり、古安は手にした大きな鉄鎚を担ぎ上げた。
 古安と同じことを思って、表情を曇らせるのは東雲・椿樹(デーモンのレジスタンス諜報員・g06911)だ。
「生活拠点が戦いの場になってしまうことには変わりないわけだ。そう考えると胸が痛むな……」
 ぽつり、零しながらも目の前の凶行からは決して目を逸らさない。皆の奮闘のおかげで無事に農民達の避難はできた。けれど農村は、畑は守り切れぬのだと思い知らされる。眉を寄せながら、それでも彼らにできることは――。
「邪魔なデカブツを片っ端から叩いて少しでも早く元の生活に戻れるようにしよう」
「もきゅ!」
 椿樹が決意語れば、傍に浮かぶ『毛玉』も気合十分と言うように鳴いた。頷き合うディアボロス達は、都市を、人々を、守るために前進する。
「……さあ、叩き潰しに行きましょう。こう見えて、ボクも腹に据えかねているんです」
 低く声を発したのは、フウガだ。ここまで穏やかだった彼の青い瞳にも、今は復讐の炎が燃えていた。
 そして――彼らの前に、猪オークの軍団が迫る。
「見ツケタ! 人間!」
「コロス! コロスゾォ!」
 鼻息荒く、興奮したオーク攻城兵達はディアボロス達目指して真っ直ぐに駆けてくる。目の前の彼らが共和制ローマの一般人ではなくディアボロスであることはクロノヴェーダであればわかっているはずだが、蹂躙に飢えた彼らは止まらない。『破城追』と名付けた先端を尖らせただけの丸太を抱えて、暴風のように迫る――しかし、その歩みはディアボロス達に至る前に強制的に止められた。
「ナンダ!?」
 まるで、見えない壁があるかのように先に進めない。狼狽える猪オーク達に、彼らの足元――白線引いた大地を見遣るのは、古安だ。
(「敵の先鋒は攻城兵。都市を背に守る側としては厄介な相手だが、だからこそ真正面からの力比べに応じてやる義理はない」)
 考えなしに突っ込んでくる敵。それを遮るように彼が用意したのは、【防衛ライン】だった。理解されれば猪オーク達も白線を避けて進むだけだが、一瞬でも足並みを崩せればそこを攻められる。
 担いだ鉄鎚『フルスィンガー』を、勢いよく振り上げる。敵との距離はまだ開いている――けれど構わず、古安はそれを揮った。瞬間、彼のパラドクスが彼と鉄鎚を伸縮自在の鎖で繋ぎ止める。握り締めた鎖を大きく振り回せば、真っ直ぐに飛んだ鉄鎚が猪オークの一体に叩き込まれた。
「ガアッ!?」
「戦槌を担いでいるからといって飛び道具が無いと思わないことだ」
 冷静な声で告げて、鎖手繰って鉄鎚を手元に戻す。不意打ちの攻撃を受けた攻城兵は、反撃する余裕もなくその場に崩れ落ちた。
 続けて動いたのはゴウトだ。防衛ラインを理解し迂回しようとする猪オーク達を見て、彼はフライパンを振るう。
「さて、戦いの前にまずは腹ごしらえか?」
 特級厨師の彼にとって、料理は武器だ。パラドクスの力を借りて、彼は得物を揮うが如く高速で料理を作り上げていく。用意したのは、フウガが備蓄を増やすために食べていたと言う固いパンと、牛乳。そこに卵、砂糖に蜂蜜、それからゴウトの技術による様々な工夫が凝らされて――バターの融ける芳ばしい香りが広がれば、あっという間にフワフワのフレンチトーストが出来上がる。
「これで元気100倍! 敵をやっつけていきまっしょい!」
 仲間達にレーション代わりにどうぞと勧めながら、自身もそれを口にする。口の中でふわっと解ける幸福感。この美味こそが、彼の力。
「食らえ! 俺のスペシャリテ【美味三昧砲】!」
 張り上げた声と共に、高めた闘気を敵へと撃ち出す。美味なる力は猪オークを襲い、三体の身へ叩き込まれるが――。
「グウッ! オマエ、コロス!」
 敵は身を捩ったものの、瞬時に殺気を膨れ上がらせた。敵の体がぶれる――そう思った次の瞬間、三体のオーク攻城兵はゴウトの目の前に迫っていた。逆説連鎖戦は、時間・空間・世界法則を書き換えながら行われる。ただ進むだけの行動なら阻める【防衛ライン】だが、敵の反撃は止められない。
「っ――!」
 丸太の先端が、ゴウトの腕に突き刺さる。突進の勢い乗せた一撃、『破城追』の名は伊達ではない。痛みに息を詰まらせたウェアウルフの男へと、更に二体の攻撃が揮われる。
 しかし、その丸太が貫くより先、割って入ったフウガがゴウトを守る。
「大丈夫ですか、ゴウトさん」
「ああ、助かったぜフウガ!」
 血を流し合いながら、二人は言葉を交わす。一体一体の攻撃力にそう差はない。けれどゴウトとフウガ、受けた側の疲弊の度合いは違っていた。これが、戦いの経験の差と言うことか。
「ボクが守ります、攻撃を続けましょう」
 ――元から、多少のダメージは覚悟の上でこの戦場に立っているから。フウガは前に進み出て、オーク攻城兵達の気を引く。敵へ投げかけるは、挑発的な言葉だ。
「知性も品性もない獣が来たみたいですね。貴方たちの求める女性も、蹂躙できる人間も居ませんのでお帰り下さい」
 凛と響く声に、オーク達が一斉にフウガを見た。そして彼らの一体は鼻息荒く、フウガ目掛けて『破城追』を投擲する。オークの筋力で投げられた丸太は、鋭い槍のように降り落ちるが――同時に攻撃後のそれを拾おうと走り出した敵へと、フウガはパラドクスを展開する。
「……ああ、言葉は通じませんね、実力行使で土に還して差し上げましょう」
 紡ぐ言葉まで、歌のように。『龍笛』へそっと唇添えて音色奏で、その音色に合わせくるりと舞い踊る。涼やかな笛の音、優雅な舞い。それに心奪われた猪オークの目には、フウガの分身が見えている。
「オオ……ドッチ、ドッチダ……ドッチモ、コロス!!」
 視覚と聴覚を惑わされ、攻城兵はうわ言のように叫んだ。しかしその殺気が向けられたのは分身の方で――背後に回り込んだフウガが、仕込み刀を静かに揮う。
「ガア……ッ!」
 閃く刃、倒れる敵。刀を鞘に納めてフウガが一つ息を零せば、その前に椿樹が進み出た。
「さすが猪、まさに猪突猛進ってやつか?」
 傷負った仲間達を見れば、敵の一撃の重さが馬鹿にならないことはよくわかる。ならば、まともに力比べをしてやる必要もないし――こちらは仲間達と連携し撃破していくだけだ。
 椿樹は落ちていた『破城追』を拾い上げ、持つ手にパラドクスの力を篭める。
「別にこいつを俺がぶん投げたって良いわけだよなぁ。せっかくだ、その身をもって丸太の威力でも確かめて見るんだな」
 にやりと笑って敵へ告げ、大きく振りかぶって――投げた。他にも転がる丸太、石、それから何かもふっとするもの――。
「もっきゅー!?」
「あ、いま間違えて毛玉投げたか? ……まあ何とかなるか」
 赤髪の頭を掻きながら、放物線描き飛んでいくモーラット・コミュを見送る。彼が投げた全てのものはオーク攻城兵達へと降り注いで、ゴウトによるダメージを受けていた二体が大きくよろめいた。けれど最後の力でもって、敵は椿樹へと接近し丸太を振り回す。
『ディアボロス! コロス!!』
 死なばもろとも――殺意の高い攻撃は脅威だ。力任せに揮われる丸太に、椿樹は慌てて体を捻る。なんとか急所は外したが、完全には避けられない。受けた衝撃で後退しつつも何とか踏みとどまれば、先にオーク達が力尽きてその場に倒れた。敵の撃破を確認して、毛玉が慌てて椿樹の元へ戻ってくる。尻尾の赤いリボンがへんにょりどこか物言いたげだが、毛玉なりに椿樹を心配している様子だ。
「俺は平気だぜ、毛玉」
 ふかふかの毛並みを撫でてやれば、安堵するモーラット・コミュ。複数纏めて攻撃すれば、反撃も複数受ける。一つ一つも痛い攻撃、喰らえばこちらも傷を負うが――それでも、敵を早期に屠りたい想いが彼にはある。
(「本当はこれ以上被害が出ないように、上手く立ち回っていければいいんだが……」)
 周囲を見れば、都市へと続く道や植物がクロノヴェーダによって滅茶苦茶にされている。ディアボロス達の猛攻受けて、敵には怯む者もいるが……。
「下手に残せば逃げる道中で蹂躙に及びかねん。徹底的に叩かせてもらおう」
 古安が冷静に語ったのは、椿樹が考えていたこととよく似ていた。そう、蹂躙はここで終わらせなければならない。そのためなら――多少の傷を気にしている場合ではない。
「ああ、俺たちがいま出来うる最善を尽くそう」
 椿樹が頷けば、毛玉もやる気満々に跳ねている。そうして再び敵へと警戒向けた彼らの目の前で、転がる丸太へと近付く攻城兵が一体。
「それにしてもオークってのは……面白い攻撃をするんだなあ。丸太を投げたあと、拾いに来るっておまぬけさんかな?」
 『破城追』を持たぬ猪オーク。雑に投げてどこかへやってしまえば、手近な丸太を拾いに来ることもあるようだ。その習性にゴウトが感想を漏らせば、周囲のディアボロス達が顔を見合わせた。
 ――そして、彼らは敵の落とした『破城追』を利用することを思いつく。丸太拾おうと近付いてくる敵を、各個撃破するようにパラドクスを展開する。
 そうして攻撃繰り返す彼らは、相応の傷も負ったけれど――やがて、一体も逃がすことなく全てのオーク攻城兵を、撃破することに成功したのだった。

●聖銀のトロル、現る
「ガアア……クソ、モット暴レタカッタ……!」
 最後に倒れたオーク攻城兵が、地に伏せながら恨み言を零す。最後の力を振り絞り、地に両手ついて起き上がろうとするが――突然、その手を踏みにじる足が現れる。
「全く……所詮は前進するしか能のない猪と言うことですか。使えませんね」
「!?」
 危険を感じたディアボロス達が、一斉に後ろに跳んで距離を開ける。
 見れば、瀕死のオークに止めを刺したのはアヴァタール級『トロル兵団』ヒュパスピスタイだった。
「これはこれは。あなた達がディアボロスですね? 余計なことをしてくれた……」
 冷静な物言いを続けて、ヒュパスピスタイは眼鏡を指で押し上げる。しかしディアボロス達は見逃さなかった、その眼鏡の奥の瞳に篭められた残忍な光を――。
「私もオーク攻城兵達も、このまっさらな土地を蹂躙し尽くすことをそれはそれは楽しみにしていたのですよ? それを邪魔したのですから、あなた達が楽しませてくれるのですよね?」
 トロル兵が言葉を紡ぐうちにも、身に纏う聖銀の武具は光を増していく。この装備は、ヒュパスピスタイ自身の膨大な魔力を増幅すると言う――つまり、彼はすでに臨戦態勢なのだ。
「殺しましょう、嬲りましょう。ああ、ディアボロスの上げる悲鳴はどのようなものなのか!」
 手にした棍棒を揮うクロノヴェーダは、歓喜の声を上げる。この狂気のトロルを撃破できるのは、ディアボロスだけだ――!
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【防衛ライン】LV1が発生!
【修復加速】LV1が発生!
【アイテムポケット】がLV2になった!
【口福の伝道者】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【能力値アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV3になった!
【ガードアップ】LV1が発生!

南雲・葵
【箱家】
フウガ、椿樹、ゴウトさんもありがとう
後は俺達に任せてくれ!
古安は引き続きよろしく頼むね

お前達の楽しみの為に、人の命も生活基盤も蹂躙なんかさせない
邪魔者はお前達の方だってわからせてやるよ!

俺達の後ろには避難してきた人も、そこで生活している人達も居る
絶対に引けない、負けられない戦いだ
使える残留効果は全部使って、最初から飛ばして最大火力で攻撃しよう
梓、力を借りるよ…!

ネメシス形態を取り、瞳を塞ぐ包帯を引きちぎってバールを構える
火球をバールのようなもので打ち返しながら距離を詰め
梓が作り出したオラトリオフラワーで敵の視界を妨害して貰い
飛び込んできた棍棒攻撃を相殺するようにパラドクスを展開
これが俺の、俺達の全力だ!

戦いが長引くなら体力の低い仲間を庇う様に立ち回り
仲間への被害を軽減させるよ

無事に敵を倒せたら都市の人達の元へ
当面の危機は去った事を告げる
月並みな事しか言えないけどさ、生きてればまた未来に踏み出せるんだ
ああいった脅威は俺達が掃うから、みんなは未来に向かって歩みを進めてね


ミレイ・ドリムータ
【箱家】
オーク共相手にした皆はお疲れ様、後はアタシらが指揮官をを倒せば終わりだ!

蹂躙しか楽しみ無いなんてずいぶん哀れだこと。楽しい事なんて世の中いくらでもあるのに!
まぁ、所詮亜人の品性なんてそんなものだろうけどさ!

仲間と連携して攻撃する。
高速飛翔しながら火球撃ってくるのは厄介だね。チャンスは棍棒で殴りかかってきた時だ!
火球攻撃の時は【地形の利用】しつつ躱すことに専念して、棍棒で攻撃してきた時に武器を投げて【ギガンティックウェポン】を発動、攻撃しつつ敵の視界を塞いでチャンスを作り、仲間の攻撃に繋げる。
まんまと降りてきたね。食らいな!

デュークは敵の攻撃動作を見て、攻撃できるチャンスの時に鳴き声や杖を振る仕草で合図する。

無事に敵を倒したら都市へ戻って報告。
アイツ等は無事倒せたよ。ただ……畑とぶどうの木は荒らされてしまった。
それでも村から持ち出せた麦もある。時間はかかっても、きっと元の豊かな畑を取り戻せることを信じてるよ。


イツカ・ユメ
【箱家】
いよいよ指揮官のご登場だね!
遅くなっちゃったけれども、わたしも手伝うよ!

飛翔する相手なら【防空体制】で警戒を強めて、相手の動きに少しでも早く対応できるようにしつつ。
わたしの魅力(【大声】【誘惑】【精神攻撃】【挑発】)とキットの可愛さで相手の注意を引き付けて、皆が攻撃し易い位置へ誘い込むね。
女の子は、力ずくで捻じ伏せるよりも甘い言葉で口説いた方がスマートだと思うんだけど……ぁ、知性も品性も無い亜人には無理だよねぇ。

巨大化した棍棒は殴られたら痛そうだけれど、大きい分振り回したら隙も大きそうだよね。
しっかり【観察】して、相手の攻撃の合間を縫って「聖銀の武具」を狙って一撃叩き込むよ!
破壊は難しいかもしれないけれど、傷のひとつでも付けられれば魔術の効果も弱まるんじゃない?
あとは皆と連携を取ってぼこぼこにしてやるんだよ!

…今回の脅威は退けられても、まだまだ不安も多いよね。
でも、いつか、きっと。
平和になったこの地で、皆で笑い合える日が来るから。
わたし達も頑張るから、皆も希望を信じて生き抜いて!


九重・古安
【箱家】
ようやく指揮官のお出ましか。都市の蹂躙よりこちらの相手を優先してくれるなら好都合、逆にこちらを無視しての突破や逃亡をさせないために一つ煽っておくか。魔術の威力と賢さは比例しないのだな、と。

とはいえあの鎧と空を飛べることは正直厄介だな。だがむしろ自分が一方的に嬲る側だと驕っている状況こそ好機、いかに早く飛ぼうと届く手はこちらにもある。
貴様の苛立ちとは別物だが、こちらも全身全霊の怒りを込めて『残響の嘆奏』の一撃を振るってやろう。貴様らに生活を荒らされた人々の分を上乗せして、な!
誰か一人に攻撃が集中しそうなら挑発を交えつつ前に出て壁になろう。この手の輩は後衛から狙ってくるくらいの小賢しさはあるからな。そして相手が高度を落として接近戦に切り替えてくるなら一斉攻撃の好機、遠慮なく叩きのめすのみだ。

連中に荒らされた土地の復興も手伝いたいところだが、流石にそこまでの時間は無いか。だが今後も襲撃に備える必要があるという警告は伝えておこう。それと、奴らと戦う者が俺たち以外にも大勢いるということも。


●打ち破れ、聖銀のヒュパスピスタイ
 降り注ぐ夕日を受け、輝く聖銀の武具。『トロル兵団』ヒュパスピスタイは、眼鏡の奥の瞳に残忍な狂気を滲ませている。
 共和制ローマの人々を逃がした代わりに、蹂躙させろ。そう宣言したアヴァタール級を前に、ミレイ・ドリムータ(新宿島で暮らすもの・g01550)は敵を真っ直ぐに見据えながら一歩進み出た。
「蹂躙しか楽しみ無いなんてずいぶん哀れだこと。楽しい事なんて世の中いくらでもあるのに!」
 まぁ、所詮亜人の品性なんてそんなものだろうけどさ! 彼ら亜人への怒りを篭めてミレイが戦場に声を響かせれば、ヒュパスピスタイは眉を跳ね上げる。――それが、開戦の合図だった。
「言ってくれるではないですか。いえ、構いませんよ。そういう減らず口をねじ伏せてこそ、楽しめるというもの!」
 嗤いながら、聖銀のトロルは夕空へ舞い上がる。魔術による高速飛翔。それからは決して目を離さずに、ミレイは背後にいる仲間達に声を掛けた。
「オーク共相手にした皆はお疲れ様、後はアタシらが指揮官を倒せば終わりだ!」
「ああ。後は俺達に任せてくれ!」
 ミレイの声に力強く頷いて、都市の中へ戻るよう促すのは南雲・葵(バールの人・g03227)だ。フウガ、椿樹、ゴウトに感謝を、そして九重・古安(巻き戻り路逸れる針・g02347)には引き続きよろしくと。頼もしい旅団仲間一人一人に言葉を送れば、更に力が湧いてくる。
(「俺達の後ろには避難してきた人も、そこで生活している人達も居る」)
 絶対に引けない、負けられない戦いだ。葵は持てるものを全て使って、最初から全力で戦うことを心に誓う。だから――。
「梓、力を借りるよ……!」
 声を張り上げれば、オラトリオの『梓』がふわり葵へ近付いて、その手を伸ばし彼を優しく抱き留める。次の瞬間、葵の姿は一変していた。いつものカジュアルな装いではなく、黒き祭服を身に纏って。その衣の下から覗くのは、翼のように広がる白い骨格だ。瞳は包帯で覆われ、梓と同じように顔半分が見えなかった。けれどそれは、葵自身が引き千切る。茶色の瞳で仰ぎ見れば、ヒュパスピスタイは火球を放ったところで。
「葵、気を付けて!」
 ミレイが声掛けながら、戦場を転がり火球を避ける。斜面を利用し加速して、逃れれば火球は彼女の背後に落ちる。しかし敵も、ミレイの動きを読んでいた。気付けば、彼女が進むその先からヒュパスピスタイが接近している。先回りした聖銀のトロルは、無骨な棍棒を振り上げて――。
 次の瞬間。ガギン、と金属音が響き渡り、棍棒はバールのようなものに止められていた。
「ミレイこそ、無理しないでくれよ!」
 明るく声を発しながら、敵の攻撃を受け止めた葵がそのまま武器を揮う。
「お前達の楽しみの為に、人の命も生活基盤も蹂躙なんかさせない。邪魔者はお前達の方だってわからせてやるよ!」
 凛と声を張り上げて、叩き込む強打はトロルの男の胴体を狙う。しかしギィンと再び金属音が立てられて、その攻撃は聖銀の武具の魔術で軽減されたようだった。
 それでも、確かに一撃入れられた。顔を歪めて舌打ちしたトロルの男は再び空へ飛ぼうとするが、それはミレイが逃さない。
「まんまと降りてきたね。食らいな!」
 言葉と共に、宙へ投げるのは愛用の古びたバール。放物線を描いたそれはパラドクスの力で見る間に巨大化し、そのままヒュパスピスタイの頭上へと落下した。
「ぐっ……!?」
「頭上注意ってね!」
 キャップを手で押さえながら、ミレイは言葉残して後退する。忌々し気に彼女を睨む敵へと、次に声掛けるのは古安だ。
「魔術の威力と賢さは比例しないのだな」
「なっ!? 失敬な、私は怪力と魔術、そしてそれを有効に使う知恵を持ってここまで活躍してきたのですよ!」
 頭への衝撃でずれた眼鏡を直しながら、トロルの男は反論する。そしてそれを証明して見せようと、敵は空へと飛んでいった。
 ――狙い通りだ。古安は黒き双眸を細めて、敵の動きを追う。ようやくお出ましの指揮官だ、被害なく倒すためには、背後に守る都市への蹂躙よりもこちらの相手を優先してもらう必要がある。彼の言葉は、そのための煽りだった。
(「とはいえあの鎧と空を飛べることは正直厄介だな」)
 高速で飛翔する敵が降らせる火球は、まるで隕石が落下するようだ。ひとつひとつの威力も大きく、それがいくつも迫ってくる――何とか回避を試みる古安だったが、全ては避け切れず黒衣が魔術の火に包まれる。
「ほらほら、どうですか! 私の魔術で囲い込んであげますよ!」
 頭上より降るのは、ヒュパスピスタイの驕った声。その笑い声聞きながら、これは好機だと古安は思う。自分が一方的に嬲る側であると、敵は思っているのだろう。――彼がいかに早く飛ぼうとも、こちらにも攻撃を届かせる手はあるというのに。
 古安は『フルスィンガー』を振り上げる。そこへ篭めるは強い感情。ヒュパスピスタイがディアボロス達へ抱く苛立ちとは別物の、全身全霊の怒りだ。彼の、仲間の、そして亜人達に生活を荒らされた人々の分を上乗せして――。
「そろそろ黙る時間だ。……いや、黙らせるとも!」
 苛烈な言葉と共に渾身の力で振り下ろされた鉄鎚は、強力な音波を発生させた。それは見えない衝撃波として、空を行くヒュパスピスタイへ襲い掛かる。
「くっ……何だと!?」
 迫る衝撃に、慌ててトロルが方向転換を試みる。しかし、遅い。古安が放った怒りの音波は、見事ヒュパスピスタイの体を叩いて地に落としたのだ。
 手応え感じて武器を持ち直した古安に、イツカ・ユメ(いつかかなうゆめ・g02834)が笑顔で近付く。
「古安くん! わたしも手伝うよ!」
 遅くなっちゃったけれども、と続けながら、駆けつけたサキュバスの娘はソードハープ『smile song』を手にヒュパスピスタイを見据えた。
「女の子は、力ずくで捻じ伏せるよりも甘い言葉で口説いた方がスマートだと思うんだけど」
 鮮やかな緑色の髪を夕日に染めながら語れば、ヒュパスピスタイがイツカを睨み――そして目を奪われた。サキュバスである彼女の姿は、亜人にとっても魅力的で。魅せるように振る舞いながら、しかしイツカは笑顔で告げた。
「……ぁ、知性も品性も無い亜人には無理だよねぇ」
「も~きゅ~」
「っ……あなたもですかっ……!」
 モーラット・コミュ『キット』と共に挑発すれば、敵は容易く感情を乱した。怒り込めて握り締めた棍棒が、魔術を受けてどんどん大きくなっていく。
(「わあっ、殴られたら痛そうだけれど……」)
 考えながらも、イツカは自身へ攻撃繰り出そうとする敵をしっかりと観察する。振り上げられる巨大化棍棒――物理法則も無視した逆説連鎖戦では重量も関係ないけれど、それでもカウンターを仕掛ける隙はあった。
 駆け出すヒュパスピスタイを迎え撃つ形で、イツカは息を吸い込み歌を歌う。
「いつか叶う、夢はきっと叶う……油断せずに、一歩ずつ進んでいこう!」
 それは、いつかどこかで聴いた歌。アレンジした旋律は、刃物のように鋭くて。
「くっ……!?」
 亜人の男の、足が止まる。イツカのパラドクスを耐えようとする彼だが、ここまで蓄積されたダメージもある。戦場に歌が響く中――ヒュパスピスタイの聖銀の武具には、ついに耐え切れずひびが入った。
「!? ……私の聖銀の武具が!」
 トロルの男の声に、明らかに焦りが生まれた。武具を破壊するほどのディアボロス達の攻撃力をただ恐れたのか、武具破壊により彼の魔術になんらかの影響があるのか、そこはわからないけれど――今が畳み掛けるチャンスであることは、明らかだった。
  ミレイのスフィンクス『デューク』が、鳴き声上げて杖を振る。それは、攻撃の時であることを告げる声。ディアボロス達は即座に、ヒュパスピスタイへとパラドクスを重ねた。ミレイが古びたバールを敵に降らせ、古安が音波を飛ばす。後方からはイツカの歌声が、『イツカノウタ』を紡ぎ続ける。聖銀のトロルも都度反撃してくるが、体力に余裕のない者を庇い合えば脅威と言う程のものではない。飛んでくる火球をバールのようなもので弾き飛ばしながら、ネメシス形態をとった葵はヒュパスピスタイへと迫った。
「しつこい……!」
 亜人も棍棒振り上げ応じようとするが、瞬間彼の視界がオンシジウムの花に埋め尽くされる。それは、梓が作り出した応援の花吹雪で。
「っ――!」
 不意を突かれて硬直するヒュパスピスタイへと、葵の攻撃が届く。バールのようなものを振りかぶり――。
「これが俺の、俺達の全力だ! 場外まで吹っ飛びな!!」
 バットのようにフルスイングすると、その強打は敵の懐へ叩き込まれる。聖銀の武具を砕き、胴まで届いた一撃にヒュパスピスタイは大きく体をよろめかせた。
「そんな、私が、この私が負けるだと――!?」
 苦痛に顔を歪めながら、亜人の男が悲鳴を上げ――そして、蹂躙戦団の最後の一人は、ここに消滅した。
 勝利の実感は、少し遅れてやってくる。ディアボロス達は互いの顔を見合わせて、それから達成感に満ちた笑顔を浮かべたのだった。

●サルヴァトーレ
 戦い終えて中核都市へと戻る頃には、周囲は暗くなり始めていた。
 戦果を伝えようと戻ったディアボロス達だったが、彼らを迎えたのは熱烈な感謝の声だった。
「ああ、帰ってきた!」
「兄ちゃんも姉ちゃんも、すごいな! あんなに不気味な怪物をやっつけちまった!」
 わっと歓声上げて、避難民も都市の住民もディアボロス達を労う。都市の中から、戦いを見ていたと。貴族達も彼らへ感謝を告げ晩餐会へぜひと語るが、それは辞退した。――もう、パラドクストレインで帰還する時が近い。
「本当にありがとうございました。あなた達の助けがなければ、ここも無事ではなかった」
 声を掛けられて振り向けば、いつの間にかそこにはルキウスが立っていた。交渉した時の、朗らかながらどこか試すような視線ではなく、心からの信頼を篭めて。語るこの都市を代表する貴族は、それからディアボロス達へ深々と頭を下げた。
「避難の誘導、備蓄の提供、そして蛮族の退治。ああ、何をもって礼としたらいいでしょうか」
「お礼なんて、そんなのはいいよ。それに、これは当面の危機が去っただけだし」
「ああ。今後も襲撃に備える必要があるだろう」
 葵と古安が語れば、周囲の人々から不安げな声が上がった。ならば引き続きこの都市を守ってくれないか、と頼んでくる者もいる。けれど、彼らはもう行かなければならないのだ。
「奴らと戦う者は、俺たち以外にも大勢いる。この都市に避難していれば大丈夫だ」
 古安は人々に声を掛けながら、ひっそりとため息を零した。本当は、亜人達に荒らされた土地の復興も手伝いたい。しかし、もう時間が残されていない。
 ミレイも、避難してきた農民達に向けて申し訳なさそうに語り掛ける。
「アイツ等は無事倒せたよ。ただ……畑とぶどうの木は荒らされてしまった」
 戦場とした地へ至るまで、蹂躙戦団が立ち寄った農村部。荒らされた土地は農民達も心配だろうが、まだすぐに避難解除とはならないでほしい。だからミレイは、村から持ち出した黄金色の小麦を取り出して言葉を続ける。
「村から持ち出せた麦もある。時間はかかっても、きっと元の豊かな畑を取り戻せることを信じてるよ」
「……今回の脅威は退けられても、まだまだ不安も多いよね。でも、いつか、きっと」
 イツカは、優しい笑顔を浮かべて人々に語る。平和になったこの地で、皆で笑い合える日がくるのだと。
「わたし達も頑張るから、皆も希望を信じて生き抜いて!」
「ああいった脅威は俺達が掃うから、みんなは未来に向かって歩みを進めてね」
 月並みなことしか言えないけどさ、生きてればまた未来に踏み出せるんだ。葵も続けてそう語って、ディアボロス達は人々を見た。少しでも不安を取り除けるように。この都市で貴族も農民も安心して暮らしてほしいと。すると――返ってきたのは、明るい言葉と笑顔だった。
「ああ、あんた達に救ってもらった命だ、村に戻れるまで頑張るよ!」
「こちらも、長引く避難でも困らぬようにもろもろの整備を行いましょう」
 農民が、貴族が、ディアボロス達の言葉を信じ頑張ると言ってくれた。口々に上がる声を耳にして、ディアボロス達はほっと安堵のため息を漏らしてから笑い合った。
 ――そうして、ディアボロス達はこの地を後にして帰還する。
「ありがとう、サルヴァトーレ!」
 夜の道を去っていこうとする彼らに、背後から投げかけられるのは感謝の言葉ばかり。
 サルヴァトーレ――それは、イタリア語で『救済者』を意味する言葉。排斥力が働きディアボロス達との関わりを忘れたとしても、きっとその存在は彼らの心に勇気を与え続けるだろう。
 彼らの命を救えたことを誇りに思いながら、ディアボロス達は笑顔で最終人類史へと帰還するのだった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【建造物分解】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【防空体制】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【能力値アップ】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2023年09月29日

イタリア蹂躙戦団を叩け

 《七曜の戦》でイスカンダルが強奪したイタリア半島南部は『共和制ローマ』の時代へと変貌しています。
 この『共和制ローマ』の人々が、砕城者・デメトリオスが率いる亜人軍団の襲撃によって蹂躙されようとしています。

 共和制ローマの人口は、数百万人(ローマ周辺だけで数十万人)となり、亜人戦力増大の為の絶好の狩場となっています。

 ディアボロスが、砕城者・デメトリオスが率いるイタリア蹂躙戦団の迎撃に失敗すれば、数百万人が犠牲となり、数十万体以上の新たな亜人が生まれる事になるでしょう。

 この作戦に成功すれば、砕城者・デメトリオスに決戦を挑み、イタリア蹂躙戦団を撃退する事が可能です。
 撃退に成功すれば、次の軍団が編成されるまで、最低数か月はイタリアの安全を確保する事が出来るでしょう。


砕城者・デメトリオス


タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#蹂躙戦記イスカンダル
🔒
#イタリア蹂躙戦団を叩け
🔒
#イタリア半島
🔒
#砕城者・デメトリオス


30




選択肢『拠点都市への避難』のルール

 共和制ローマ時代のイタリア南部の農村部などを巡り、一般人を地域の拠点となる都市へと非難させてください。
 亜人による略奪の噂を聞いている住人もいますが、多くの住民は、住み慣れた土地や、自分達の畑から離れる事を嫌がるので、ディアボロスの説得が必要になるでしょう。
 説得に失敗した場合は、残った住民が亜人に襲われる事になるかもしれません。

 詳しくは、オープニングやリプレイを確認してください。


 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『👿をクリアするまでに、この選択肢の🔵が👑に達すると、このシナリオで一般人に死者を出さずに済む。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢『拠点都市の受け入れ準備』のルール

 周囲の農村などの人々を収容できる拠点都市側の受け入れ準備を行います。
 避難民が暮らせるだけの水や食料の確保や、都市を支配する貴族の説得など、必要と思われる行動を行ってください。
 詳しくは、オープニングやリプレイを確認してください。


 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 なお、この選択肢には、特殊ルールはありません。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾一般人を襲うトループス級『オーク攻城兵』のルール

 周囲の一般人を襲撃するトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 放置すると村や町を破壊したり一般人を虐殺してしまうので、被害が拡大する恐れがあるでしょう。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『『トロル兵団』ヒュパスピスタイ』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、450文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★1個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は600文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 🎖🎖🎖 🔵🔵🔵🔵🔵
 超成功 🔵🔵🔵🔵🔵
 大成功 🔵🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔵🔴
 善戦 🔵🔵🔴🔴
 苦戦 🔵🔴🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「冰室・冷桜」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。