リプレイ
黒城・廉也
パラドクスも使えず、自分の肉体で迷宮を踏破しなきゃしけないんですね
それに、最後の扉には別の条件まで……
ちょっと大変そうですけど、やるしかないッスね
それに、懐かしい――いや、むしろ身近に感じるような魔力の残滓を感じるような……進めば、わかるんでしょうか
幸運なのは相手もさほど干渉できないって所ですかね
復讐者としての体で良かったです
うーん、正直あらかた封じられるとパワープレイで片付けるしかないッスよね
トレインから、携帯食料を数日分くらいは持ってきて長期戦覚悟で挑みます
後、使えるかわからないけれどコンパスに迷宮のマッピングの為の用紙と筆
も持っていきましょう
記憶術、またすでに通ったところには壁か床に印をつけて二度同じ道を通らないように
あと、入った時に感じた魔力の残滓と冷気に関しても意識しましょうか
俺にだって少し位魔術知識はありますし、上手くいって情報が増えれば儲けものッス
●凍える
「やるしかないッスね」
黒城・廉也(後輩サキュバス・g02175)は小さく呟く。新宿島の季節は真夏だと言うのに、このキャメロット城壁内に潜む迷宮ないは吐く息が白くなるほど寒い。そして、周囲は壁も床も天底も分厚い氷に閉ざされている。全くのアウェイだしこの地に既知の何かがあるわけではない。あるわけではないのに、理性ではわからないノスタルジックな想いが胸の奥底から湧き上がる。もっと自分に近いような、昔遊んだことのある従兄弟の残していった壊れた玩具が残っているかのような、そんな追憶を掻き立てる感覚だ。だからと言うわけでもないのだが、この面倒臭そうな迷宮から『回れ右』をするつもりはない。
「この感じ……進めば、わかるんでしょうか」
ぼんやりとそう呟くと、廉也は自分の頬を両手でパンと叩いた。
「よし、気合いも入ったッス!」
必要な荷物は持ってきている。廉也の姿は難易度の高い高山に行くときのような装備担っている。暖かい着衣、携帯できる食料、野営道具、コンパスに筆記用具などの手書きのためのマッピング道具、サバイバル用の握りが厚いナイフ……他にも色々細々と準備している。何せ、ここではパラドクスが使えないのだ。ただ、ディアボロスは心身ともに強健だ。普通の人間ならばあっという間に遭難しかねない場所でも余裕を持って行動できる。
「うーん、正直あらかた封じられるとパワープレイで片付けるしかないッスよね。出来る限りの準備はしましたから、それじゃあ行くっすか」
廉也は1歩踏み出した。登山用のゴツゴツした靴の下でジァリと氷が崩れる音がした。
「ここは……もう3回通った場所ッスね」
サバイバルナイフで既に刻んだ印の隣に同じような印を刻む。永久凍土のような硬い氷に散った花びらのような跡が3つ並ぶ。
「あれ?」
周囲の冷気に負けないようにと力一杯刻んだ印の奥に何かが見える。
「えっと、ずっと前にここに放り出されて凍った何か、でしょうか?」
それは単純な興味だった。小さなピッケルのような道具で印の下を大きく掘り下げる。見る間に鈍い金色の塊が見えてきた。宝飾店や博物館で見るものとは違っていたけれど、なんとなく廉也にはこれが黄金ではないかと思った。直感だった。
「もしかして、お宝を掘っていけば迷宮の向こう側の出口に着くんじゃでしょうか。ドラゴンに迷宮と言えば、昔からお宝が眠っていると言うのが通説ですからね」
廉也の言葉は独り言のように小さくて、口調もいつもとは違っている。他者を気にしていない時にでる癖だろうか。思案顔をしていた廉也だが、急に笑顔が浮かんでくる。
「この迷宮制覇のヒントになるかわからないッス。でも、俺は今、この時からトレジャーハンターにもなるっすよ。ディアボロスにしてトレジャーハンター、それが俺、黒城廉也ッス!」
道具がたくさん入った荷物から大小様々なピッケルが何本も出てくる。
「それじゃあ、さくっとお宝ゲットして迷宮のマッピングも進めていくッス!」
なんとなくだが、もう廉也には氷の下に埋まっている黄金の色がわかるような気がしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
雪定・千草
暑さにうんざりしていた所なので、寒いのは嬉しいですね
…とはいえ、舐めてかかると痛い目に遭いそうです
防寒機能の高い服装を確り着込み
マッピング道具と携帯食料を重くなり過ぎない程度に
そういえば俺、迷子常習犯なんですけど…
迷宮なんか入って、大丈夫ですかね…?
おや、なんだかキラキラしています
価値とかよく分からないですが、綺麗ですねえ
氷の中に入っているのもまた良いです
ゴミ捨て場、と呼ぶには勿体ないような…
ちょっと色々目移りしつつ、目印をつけていきながら進みましょう
こういうのって変に触ったり持って帰ると
罠が発動したりしないでしょうか…
でも最後の謎を解く為にも、ピンときた物は持っていきたいですね
看破できるように頑張ります
迷宮に、お宝…なんだかワクワクしてきました
多少迷子になっても、へこたれません
迷子常習犯の心は簡単には折れないのです
コンパスで方角を確認、来た道を戻らないように気を付けて
何か可笑しな所はないか、よく確認します
疲れたら少し休憩を取り、集中力の維持も大事に
次へと続く大事な探索ですから
●誰かの遠い宝物
こんなところに来てしまって良かったのか。もう随分と迷宮で歩き回った後で雪定・千草(霞籠・g03137)はふと、考えた。
「そういえば俺、迷子常習犯なんですけど……いくら暑さにうんざりしていたところだったとしても、迷宮なんか入って……大丈夫ですか……ね?」
若干語尾をあげて疑問符がついているような発音になる。けれど、千草の周囲には人も魔物もクロノヴェーダの気配もなく、返事が返ってくることもない。
「まぁ、そうですよね。自己責任ってやつですよね」
返事がないのもわかっていたし、自分が選んだことなのもわかっている。わかっていても、言葉にしてみたくなるものなのだ。
「さて、そろそろ休憩も終わりにして進みましょうか」
丸椅子に似た形に突き出た氷の柱から腰を上げる。白くて暖かい防寒装備を着込んでいると千草は大きな白兎が人の形を取ったかのようにも見える。その癖のある柔らかい髪は触ったらモフモフしているのではないか、とモフモフ好きに耐えれない甘美な誘惑にも見えるが、幸いここには千草以外誰もいないので、ある意味、安全だ。その足元には千草が持ち込んだリュックサックがあル。中には高性能なサバイバルグッズと食料が入っている。手には休憩前にリュックサックから出したマッピンングの道具があって、ここまでも道程が書き記されている。迷子体質を自認している千草としては、ここまでは非常に順調だと言っていい。
「ここはずっと一本道ですからね、迷う危険はありませんね」
意気揚々と足取りも軽く、しかし凍った地面に滑ったりしないように進む。いろいろなものが氷の中に埋まっているので、地面にも壁も天井も凸凹していて歩きにくいのだ。しかし、そんな瑣末なことで千草の冒険者魂を挫くことはできない。なぜなら、迷子常習者の精神はとてつもなく強靭だからだ。今、どんなに先が見えなくても進めば絶対にゴールがあることをこれまでの経験でわかっている、多少時間がかかるとしても、だ。
「……おや」
千草は歩みを止めた。そっと壁と地面の間ぐらいの場所に近寄り、氷の奥を覗き込む。氷は白く濁っていて中身が何かは分かりにくい。
「なんだかキラキラしています」
ぼんやりと薄暗い迷宮の中で、それは氷の中から淡い光を放っているように見えた。
「価値とかよく分からないですが、綺麗ですねえ。氷の中に入っているのもまた良いです」
なんだか分からないから美しい、ということもあるだろう。ただ、ぼんやりと氷の中に何年、もしかしたら何十年もひっそりとそこにあるだけの美しい様を眺める。そう思いを馳せるだけでなんとなくワクワクする。
「ゴミ捨て場、と呼ぶには勿体ないような……」
もっともっと、ただ眺めていたい衝動をグッと抑えて千草は氷に目印をつけながらゆっくりと進む。進む、進む……進むはずが立ち止まり、そしてくるりと向きを変えると1番最初に見たキラキラと場所へと走る。
「あった!」
白とも金色とも判断できない純然たる光が白く濁った氷を通してぼんやりと輝いている。わかっている。こういうお宝系は変に触ったり、持ち帰ろうとして触れたり、持ち上げたりすると盗掘を防ぐための罠が発動したりすることを。しかし、ここはゴミ捨て場だ。それに……。
「でも最後の謎を解く為にも、ピンときた物は持っていきたいですね」
1秒も考えず千草は腹を括った。罠があるならあるでいい。看破すればいいし、発動したら回避すればいい。
「大丈夫。俺は……できる」
千草はピッケルを大きく振りかぶって氷に突き刺した。ゴロっとあっけなく氷の塊が砕け、内部が顕になる。それは大きな鶏卵ぐらいはありそうなコロンとした赤い宝石だった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【アヴォイド】LV1が発生!
糸織・編斗
(トレインチケット)
●大掃除のススメ
紆余曲折、色々あって糸織・編斗(あみぐるみ大好き・g03368)はキャメロットを守る城塞、その内部に広がる迷宮に立っていた。手には手製の熊や猫を愛らしくデフォルメした編みぐるみを抱えている。
「わー、寒いですね」
編斗の周囲は硬く凍った分厚く歪な氷が地面も壁も瘤のようにゴツゴツと出っ張っている。見た目にも美しくはない光景だ。
「本を読んで知らない知識を得ることは楽しいのですけど、地道な調査は甘利得意ではないんですけどね」
いかにも自信なさげに独り言を言う。いや、なんとなく抱えたあみぐるみ達に語りかけているようにも見えなくもない。
「みんなにも手伝ってもらって大掃除をしたかったんですけどね。聞くところによるとここでパラドクスを使うと強制退去させられるみたいなんです。残念です」
はぁと大きくため息をついた編斗は比較的高い場所にある氷の出っ張りにあみぐるみ達を丁寧に並べて、自分は持ってきた箒を手にする。
「何事も整理整頓、清掃が大事ですから、まずはこの場所の掃除ですよね。一人でも頑張りますから、みんなで見守っていてください」
編斗は気になる場所を片っ端から分厚い氷を排除してゆく。そうして氷を片付けていくとそれ相応に内部から気になるものが出現してくる。
「これは綺麗ですね。あみぐるみの目に使ったら可愛く仕上がるかもしれませんね」
それは、人の手で研磨された黒い2つの石だった。研磨されてから随分時間が経っているようだが、それでも石の美しさは損なわれていない。
「もしかすると、氷の下はもっとこんな石が埋まっているかもしれませんね」
なんとなくある一定の方向を見る。
「あちらの方がなんとなく気になりますね」
黒い石を手にしたまま、編斗は迷宮の奥へと視線を走らせた。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
●最後の扉
黄金も宝石も廃棄すべきものではない。それは人にとってもドラゴンにとってもだろう。だから誤って廃棄処分となっても、長く氷に浸かっていたとしても、黄金や宝石は出口を知っている。それを持つ者も、迷宮に迷うことなく最後の扉に辿り着くだろう。鈍く黄金色に輝く扉には一体化された石の荷物置き場があって、いかにも『宝を置け』という風であったが、もう随分長く使われていないようで、扉も石の置き場もすっかり氷漬けになっている。
砂子・深彰
(トレインチケット)
天塚・総司
(トレインチケット)
●扉は開かれる
氷に閉ざされたような迷宮はドラゴンにとってはどうでもいいゴミ置き場のような場所だったらしい。ただ、ゴミではない物がまぎれ込んだ時のためか、非常用の扉が迷宮の奥に存在している。それが今、砂子・深彰(烏有・g00137)と天塚・総司(天使を操るデジタルサマナー・g04706)の前にある。
「ドラゴンが使うにしては小さい扉ですね。つまり、ここを管理しているのは私たちと似たようなサイズのクロノヴェーダなのでしょうね」
言いながらも深彰はスマホで動画を撮影している。今はまだパラドクスを使えない状況だが、いずれは情報として共有することができるかもしれない。
「見たところ古い、年代物って感じの扉だね。僕たちディアボロスを罠にかけるために新しい扉を急いで作ってここに置いたというわけではなさそうだね」
扉には手を触れず、総司はギリギリまで扉に顔を近づける。そうしていると扉の表面が年月にさらされて摩耗していることや、扉と壁の間が長く開閉されていないようなこともわかってくる。ただ、扉にはノブはない。ノッカーもない。ただ、何やら荷物を置けるようなガランとしたスペースがあるだけだ。
「絶対にここに何かを……迷宮で見つけてきたお宝を置けってことですよね」
「絶対にここに置けってことだね」
深彰と総司の意見は一致する。ここがゴミ置き場なのだとしれば、その性質上、罠を仕掛ける必要はない。作業するモノの仕事がしやすいようにシンプルな作りとなるはずだ。
「まずは置いてみましょうか」
ここにはもう迷宮から集められた金や宝石が集まってきている。深彰は10キロの米の袋ほどの金塊を扉の前に置いてみた。ガタンと音がして扉が下に少しスライドした。その分、上の方に隙間ができる。
「どうやら向こう側に行けそうだね」
総司はメガネの奥の青い瞳を嬉しそうに輝かせる。そして、深彰が置いた金塊よりも倍ぐらいはありそうな塊を扉の前に置く。更にガタンと音がして扉が地面にめり込み隙間がさらに広くなった。
「……成程、理解した」
「決まりですね」
「どんどん載せよう」
「わかりました」
深彰はポニーテイルをギュッと結び直す。左右に分かれてどんどんと迷宮から集められた金や宝石を積んでゆく。その度に扉は埋まり隙間がどんどん広がってゆく。あらかた積んでしまうと、人一人なら十分に通過できるだけの空間が扉とそうではない部分との間にできている。
「どうしましょうか。いきなり潜り抜けるのは危険かもしれません」
動画を撮影していたスマホを取り上げ、深彰は小首をかしげる。
「そうだね。あ、そのまま撮影ていてくれるかな?」
総司は手にしていた小さな金の塊をヒョイっと隙間から向こう側へと投げた。電撃が走るわけでもなく、バリア的なものに阻まれることもなく金は小石のように向こう側に落下し軽い音がして転がったようだ。
「行こう。僕が先に行くから深彰さんは……」
「見守ってます。よろしくお願いします」
「はい」
総司は積み上げたお宝を足場に駆け上がり、隙間から向こう側へとすり抜けた。
そこはもう迷宮のではなかった。雰囲気も圧も何もかもが違う。
「迷宮ではないみたいですが、キャメロット内部というわけでもなさそうですね」
「嫌な予感しかしないけど……」
総司の言葉に風が鳴る。それは冷たく吹き荒ぶ極寒の風だった。
善戦🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
効果1【操作会得】LV1が発生!
【平穏結界】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【グロリアス】LV1が発生!
黒城・廉也
あれ、開いてるッス
一番乗りだと思いましたけど、他の方が先に来たんスかね
折角お宝持ってきたのに……これどうしましょう
銀プロに持って行って経費の足しにしてもらうとか?
……まぁ、そこら辺は後で考えますか
さっきの迷宮はただの迷宮でしたけど、あからさまに雰囲気違いますし――先に進む為にも、この集団片付けちゃいましょう!
さ、二人……もとい一人と一匹でガンガン攻めていくッスよ
後から駆け付けた方が居た時に備えてパラドクス通信はいつでも使えるようにしておきましょうか
地中から現れるって話なので、敵の姿が見えない時は待機
敵の姿が出現したらダブルを使い、敵を攪乱しつつ迎撃ッス
雷狼が消滅させられたら高速詠唱で再び呼び出すつもりッスけど
互いにカバーしてそもそもそういう場面もなるべく避けましょう
しかし、大きな鱗ッス……狙うなら、やっぱり目や口ッスね
フライトドローンを使い捨てるように動き高低差を活かしながら
その辺を重点的に狙っていきましょう!
攪乱中に弱点部位が見抜けたらそちらも狙っていく形で!
「あれ、開いてるッス」
黒城・廉也(後輩サキュバス・g02175)は7割ぐらいが地面にめり込んだ扉を見つめて、そのままの感想を言った。しかし、周囲に扉を開いただろうディアボロスの姿はない。
「一番乗りだと思いましたけど、他の方が先に来たんスかね」
扉の前には迷宮のあちこちから集められたらしい金塊や宝石が積まれている。そして廉也も腕に一抱えの金銀財宝を抱えているのだ。
「折角お宝持ってきたのに……これどうしましょう。銀プロに持って行って経費の足しにしてもらうとか?」
とりあえず今は扉前に積まれているお宝の上に乗せて両腕を空ける。どう処分するのかは後から考えてもいいことだ。扉を潜り抜けた廉也はそこがもう迷宮ではないことを実感する。
「こっち側はあからさまに雰囲気違うッスね。それにここには敵がいるッス! 先に進む為にも、この集団片付けちゃいましょう!」
言葉が終わるか終わらないかのうちに、土の壁を破壊して飛び出してきたのは巨大なミミズのような外見を持つ『穿孔竜ワーム』だった。だが、ワームが出現した場所にもう廉也はいない。敵の接近を座して待つ必要なく、自分が好きな間合いを取る。
「さ、二人……もとい一人と一匹でガンガン攻めていくッスよ!」
廉也にとってはいつだって自分は一人であって一人ではない。二人のような、一人と一匹のような、でもこうやって言葉にしても怒らないのだから、きっと認めてくれているのだろう。それとも一匹は廉也のことだと思っているのだろうか。
「我と共に高らかに吠えろ、閃光の如く駆ける勇ましき雷狼よ。仇なす全てを喰らい尽くせ」
廉也の魔力が雷の狼を作り出す。一瞬で出現した狼は廉也の風槍にともにワームへと飛びかかり、雷牙で喰らいつく。
「がわああ!」
土中から出た直後に攻撃を受けると思っていなかったのか、ワームは悲鳴のような咆哮を轟かせる。1体目のワームの背後にいたもう2体にも狼たちは痛烈な攻撃を仕掛け、ろくに土中から出ることも出来ずに悶え苦しむ。敵からの反撃はない。
「しかし、大きな鱗ッス……狙うなら、やっぱり目や口ッスね」
灯火のように光る目か、ギザギザの歯が並ぶ大きな口か。敵に弱点があるのならばそのどちらかだろうと予想して廉也は動く。
「狼達にも、もうひと働きしてもらうッスよ!」
再びやや早口で詠唱を終えると、雷狼たちと共に獲物を振るう。自分自身のような『月夜・翠風』は荒れ狂う風雷を帯びて、眷属のように雷狼を従える。敵に肉薄した廉也が放つ刃はあっさりとワームの目に突き刺さった。
「ぎゃわああああっ!」
一瞬で刃を抜き空中で反転して飛びのいた廉也の背後でワームがのたうつ。刃を食い込ませた狼がぶらんぶらんと揺れている。
「これは目が弱点っぽいッスね」
すかさず廉也はもう片方の目にも風雷の刃を突き立てた。反撃はない。
成功🔵🔵🔵🔴
効果1【パラドクス通信】がLV2になった!
効果2【ダブル】がLV2になった!
黒城・廉也
アドリブ連携可
ネメシス発動による人格交代
……ダメだ、変われ
ここから先はオレがやる
(控えているのは、恐らく……。お前を対面させたくねぇのはオレの我儘だ、悪いな)
増援――いや、味方か
お前は……まぁ、いい。
フォローはしてやるから、死ぬなよ。
味方が被害を受けそうな時、ディフェンスが有効なら肩代わりを行う
怪我を負われても目覚めが悪いし、オレが受けた方がマシだろう。多分
入れ替わる時に多少は弱点については聞いた
その目障りな瞳含め、一切合切凍てつかせてやる
逐一地中に潜るってるのがウザいが、逆に言えば地表の様子を注意深く観察すれば敵の攻撃に備えやすい
戦闘知識を活かし、敵が攻撃をするならどの場所から現れるかを予測し、地表の異常を見逃さないようにしよう
巨体からの突撃をなるべく避けて当たりそうな場合は側面を蹴り飛ばして軌道を逸らす
好機を待ち、攻撃出来そうなタイミングで飛翔のスピードで顔面へ
パラドクスを使い瞳から一気に魔力を流し込める
白銀の世界では精々静かに眠るんだな
遠原・いぶき
アドリブ、他連携◎
地鳴りのような音を聞いた気がして急いで移動すると…おっと、敵が暴れてたか
【パラドクス通信】を利用して周囲に仲間がいないか確認だ
おい!誰かいるのか!?
…ん?廉也(g02175)……に、よく似た奴だな
雰囲気全然違うし、他人の空似、…か?
ま、悪い奴じゃないだろ
死なないように立ち回ってみせるさ
さて、俺の武器は召喚した短剣
竜相手には分が悪いか?
まずは相手の動きと、地中で這い回る音が聞こえないか【観察】
竜なら身体の何処かに逆鱗があるんじゃないか
…って鱗多すぎだろ!?喉元とかよく言うけどな!?
【ロストエナジー】でじわじわと体力を削りつつ、【アヴォイド】と周囲に多数展開した【フライトドローン】を利用して、パルクールのように動いて直撃から逃げよう
絶対に俺の顔には傷は付けさせない
他の身体部位を盾にしてでも守るぜ
もし逆鱗を見つけたら、そこを目指して
見つけられなかったら目玉に対して【突撃】
たっぷりとここまで遊んでくれた礼と言う名の呪詛を込めて短剣をぶっ刺す!
足りなければ何度だって繰り返すぜ!
そこは迷宮ではない。だからパラドクスは使える反面、敵も出現するし敵側からの攻撃もある。とはいえ、ここはキャメロット内部ではない。どちらにも属さない狭間の場所、境界の隘路……それがこの名もなき場所であった。その特異な場所で黒城・廉也(後輩サキュバス・g02175)は静かに変化を迎えていた。漆黒の髪は光が凝ったような長く内側から輝く白へ、何よりその身体に宿るパーソナリティが大きく違う。
「ここから先はオレがやる」
ネメシス形態へと変化した廉也は誰かに聞かせるように低い声で宣言する。心の中の想いは……きっと言葉にしなくても伝わるはずだ。
どこかで地鳴りのような音がしているような気がした。遠原・いぶき(開幕ベルは鳴り響く・g01339)は迷宮であった細い道を走る。迷宮はもはや迷宮として機能しておらず、砕けた氷や溢れた黄金と辿っていけば最奥の扉に到達する。潜り抜けると、そこは戦場だった。
「おい! 誰かいるのか?」
パラドクス通信を使えばそこにディアボロスがいるのかはすぐにわかる。反応はあった。しかし、そこにいる長い白銀の髪を背に流した峻烈な雰囲気を持つ男性には……会ったことがない。似てる奴はいるのだが……。
「他人の空似……か? ま、悪い奴じゃないだろ」
独り言のようないぶきの声を聞いたのか、パラドクス通信を通して声が響く。
「敵の増援? いや、味方か。お前は……まぁ、いい。フォローはしてやるから、死ぬなよ」
傲慢なようでどこか親身で初対面とは思えない言葉と口調にいぶきは不思議な感覚を覚える。けれど今は敵の撃破だ。
「言われなくても! 死なないように立ち回ってみせるさ」
手にしているのは召喚された『短剣』。それは竜を相手にするのには分が悪いだろうか。でも、いぶきの磨き上げた黒曜石のような瞳はキラキラとした光に溢れている。
斃れてもう動かないワームの体を乗り越えて、壁の向こうから別のワームが顔を出す。灯火のような目、ギザギザの歯、びっしりと体を覆う鱗たち。すでに手負のように見えたのはいぶきの気のせいだろうか。
「その身に刻め、十二の刺傷。あの子を殺したお前を、私は決して許しはしない。死をもって罪を贖え」
ギュッと握りしめた短剣にあらゆる負の感情を叫び撒き散らしながらワームを刺す。次々と刺す。ディアボロスだからこそ行える脅威の身体能力を駆使した攻撃だ。その8回目の攻撃で短剣はズボッと深くめり込んだ。いぶきの腕までワームの体に突き刺さる。
「わかった。ここが逆鱗?」
狂ったようにワームが声なき絶叫を放ち、反撃をする余裕もないほどの激痛にワームの体がのたうち、いぶきが弾き飛ばされた。ドラゴン戦を行うのには手狭な場所だ。思いっきり土壁に叩きつけられる……しかしいぶきは白銀の髪の男に抱き止められ、壁に激突したのはその男—ネメシス状態となった廉也だった。
「え?」
助けられたいぶきは驚きを隠せない。そして間近で見る男はやっぱり知り合いによく似ている。雰囲気ではなく温もりが。
「目も弱点のはずだ。そこを狙うぞ」
ぞんざいの一歩手前ぐらいの優しさで身体を離した男がワームの弱点を教えてくれる。
「わかった」
短く答えていぶきも体勢を立て直す。
「その目障りな瞳含め、一切合切凍てつかせてやる」
いぶきの痛烈な攻撃を受けたワームは地中に戻る気配もない。叩くなら今が好機だが、ランダムに激しく動いていて狙いが付けづらい。緋い廉也の瞳が、視線が敵を見通す。
「今だ!」
空を駆けるかのように高速で接近する。見る間にワームの巨大な目が視界いっぱいに広がってくる。
「我、氷王の名において命ず。白き世界に安寧を」
言葉には力が宿る。詠唱と同時に辺り一面は凍りつき、土壁も地面にも凍える白銀の世界へと変わる。その膨大な魔力によって生み出された光と氷の奔流がありとあらゆる方向ワームの眼へと集中した。
「我が温情と共に白銀の棺を授けん」
優しく包み込むとワームの双眸は白い氷に閉じ込められる。再び声もなくワームが叫ぶ。目をつぶされ、頭部から魔的な力が失われている。反撃はない。
「すご! 畳み掛けるぜ!」
まだワームは倒れてはいない。自分自身とも言えるほどの親和性を持つ短剣を手にいぶきがワームに襲いかかる。のたうつワームからはいぶきと同じ大きさほどの礫が飛ぶが、それらをパルクールの要領でアクロバット的に回避する。
「言ったはずだ。全ての罪を死を持って償え!」
再び、同じ場所へと深く、深く短剣を突き立てる。空気が震えるような悲鳴がワームの喉から広がり、そしてバタッと地響きを立てて倒れ伏した。
「白銀の世界では精々静かに眠るんだな」
ネメシス状態の廉也は壁の奥にいたもう1体のワームへも無慈悲に優しい氷と光の本流を放ち、そして頭部を穿たれ失った最後のワームも地面に伏す。
「終わった……のか?」
ワーム達が出現した穴をいぶきが覗いた。真っ暗な何もないような穴で新たなワームは気配もない。
「終わった。そして始まりだ」
廉也にはわかる。誰よりも先にどこにいてもわかるだろう。『アレ』がここへと向かっている。もう一人、氷王を名乗るモノ。白銀の長い髪、鎧、大剣を持つモノ。因縁深き、けれど本物のアレではない影のようなアレ。
「来るな」
いぶきにもそれはわかる。凍える空気がさらに温度を急激に下げる。この場所を任されたアヴァタール級クロノヴェーダが出現しようとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV1が発生!
【悲劇感知】LV1が発生!
効果2【グロリアス】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
天夜・理星
(トレインチケット)
「あれ? 迷ったかな?」
迷宮は言うほど迷う道ではなかったし、出口は1つしかない。それでも迷宮を踏破した天夜・理星(復讐の王・g02264)はディアボロスがいない場所に辿り着いていた。
「他にも誰かいると思ったんだけどな?」
そう遠くない場所になんとなく味方がいる気配はある。けれどそれよりも濃厚にでクロノヴェーダの存在を強く感じる。
「あぁ、そういうことかな?」
すぐに仄暗い感情が湧き起こり、感情は大切な戦うべき武器となって形作られる。
「敵がいる。だからアタシは敵によってここに導かれたんだよね。それがどうしてなのかわからないけど、返り討ちって言葉をその身に刻むように教えてあげるよ」
理星は屈託ない笑顔を貼り付け、存在感が漂う方向を見る。大切な人、時間、場所、記憶……それらは唐突に、理不尽に奪われてまだ多くが戻ってこない。だから理星はいつでも瞬時に復讐者として敵と対峙できる。手には相応しい武器が出現してくれる。
「先制攻撃、させてもらうよ!」
激情に心が共鳴し聖剣は解放されてさらなる力を発動する。燃え上がる激情の炎が刀身を、さらには柄から理星までもを包み、燃え上がる。
「聖剣解放。激情は此より、焔となれ」
それはまさに正しい選択であった。理星の攻撃対象、暗い土壁が続く奥から出現したのは氷を纏い、氷そのものが凝ったかのようなクロノヴェーダであった。炎と氷が激しくぶつかり合う。
「アタシは赦さない! 切り裂く!」
業火に燃える剣がクロノヴェーダの肩口辺りの防具を砕き、キラキラと炎に乱反射しながら四散する。
「……強いな。何者だ?」
クロノヴェーダは氷雪が舞う夜風のような低い声で問う。
「まず自分が名乗れってマナー違反は許してあげる。アタシは世界を取り戻して、最高の王様になる者だぜ♪」
理星はニヤッと笑った。
善戦🔵🔵🔴🔴
効果1【怪力無双】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
黒城・廉也
アドリブ連携可
ネメシス継続
クソッ、能面貼り付けたような忌々しい面だ
本能と仮面風情が不特定多数の人間に直接被害を出してない点は褒めてやる
……影として出てきた時点であまり意味の無い言葉だが
手助け?……まぁ、好きにしろ
実際手を組んだ方が色々楽だろう
判断は任せる
流石にあっちの肉体が万全なだけあって無駄に魔力がデカい
一気に押しつぶされちゃたまらねぇから
こっちは出来る限り的確に一撃を与えた方がいいだろう
そして氷王の献花で押しつぶそうとするのであれば、凍らせる前段階の水で囲む工程で多少なりとも行動を読めるはずだ。
水流はパラドクスに氷雪使いや連続魔法を活かし凍らせるタイミングをずらす。また、飛翔のスピードやアヴォイドを活用し出来る限り回避に徹し、被害を受けたならグロリアスで少しでも体を癒しながら機会を待つ。死ななきゃ安いさ。
また、飛翔で飛び回りつつ水源を形成する。
敵の移動力制限もあるが、オレが攻撃に移る際にあらかじめ水を出していた方が都合がいい
伺っていた機会が来たら一気に封じ込めて凍らせてやる
遠原・いぶき
アドリブ、他連携◎
敵の顔姿を見れば、やっぱり何処かで見た姿だなと思うだろう
廉也に似たあいつ(g02175)と、この敵と…
まさか…ドッペルゲンガー?3人同じ顔見たらなんとやら…
【パラドクス通信】を頼りに朔太郎(g04652)と合流したら、廉也に似た奴の事を伝えておく
あのクロノヴェーダ、多分あいつと縁ある敵なんだと思う
詳しい事は俺達にはわからないが、…さっき助けられた礼もある
出来る事ならサポートしてやりたいんだ、手伝ってくれるか?
氷霧に対しては召喚した幻影を突撃させながら【飛翔】で突っ込む
風速と幻影の勢いで少しでも霧を晴らせれば突破口を開けるだろうか
どうしても俺の心の内を覗こうとするなら
【精神集中】させて【演技】で対抗しよう
俺の演技は見た目だけの物じゃないって事を教えてやるよ
絶え間なく攻撃を仕掛けつつ、決定的な一打は避ける
それは俺の役目じゃないからな
フィナーレはかっこよく決めてくれよ
朔太郎がそう思うのなら、俺の勘は外れてるのかもしれない
帰ったら冗談混じりで今回の事、廉也に話してみるか
大崎・朔太郎
アドリブ連携可
いぶきさん言ったじゃないですか、
僕の倒すべき敵を皆で倒した時に「恩は返す」って。
でもいぶきさんの縁じゃなくて同じ顔の人が居るからその縁なのでしょう。
サポートは構いませんが、そちらの意志も聞いておきますか。
献花は【ウォータースライド】で相手の出した水にサキュバスミストで作った水を放出しながら動き回る事で、お互いの支配下にある水をぶつけ合う事によって凍るのにラグが出来るはず。
その隙にその水流の勢いを使って接敵して一撃食らわせてやりますか。
それで相手の意識がこっちに持って行かれたら次の人のチャンスという事で。今回はあくまでサポートして欲しいってお願いですしね、最後は任せますよ…えっと、白い人!
多少相手の攻撃で凍ったら【ダンス】で培ったターンや動きで壁や床に落下や追突して多少のケガしてでも氷花になる前に剥がしていきますか。ケガより命って事で。
いぶきさんの中ではあの人は廉也君に似た人って感じなんですね…似てない気がしますけどね。でもいぶきさんの勘を信じるなら後で本人に聞いてみますか?
●出遭い
視認する前からわかっていた。アレがそこにいるのだと。もちろん、眼前の敵はアレの影、出来の悪いコピー、中身の伴わないハリボテだとわかっている。それでも、ソレを見れば心は騒ぐ。ネメシスモードの黒城・廉也(後輩サキュバス・g02175)は苦い顔をした。
「……グレイシア」
廉也は低く呟いた。二度と呼びたくはなかったけれど、そうとしか呼べないモノだ。鋭く冷たい永久氷壁から創り出されたかのような武器防具、細い氷で出来たような長い髪、異形の角と翼が頭部と背を飾る。
「忌々しい面だ。不特定多数の人間に直接被害を出してない点は褒めてやるが、……影として出てきた時点であまり意味の無い言葉だがな」
不愉快そうに廉也は朱い目をすがめて言う。
「俺のことか?」
グレイシアと呼ばれたクロノヴェーダは振り返った。そうしてネメシスモードの廉也と対峙すると、驚くほど彼らは似通っていた。翼の感じは違えども、風もなくなびく髪も、装備も血の様に赤い瞳もまるで同じ鋳型で創られた生き物であるかのようだ。
「まさか……ドッペルゲンガー?」
遠原・いぶき(開幕ベルは鳴り響く・g01339)は内心ではとてもとても驚いた。けれど、ここは戦場だ。感情を全て出していい場所ではない。それでも心の中は視覚からの情報と感情が渦潮のように逆巻いている。
(「あの敵と、この目の前にいる不機嫌そうな銀色長髪、そして廉也で……3人同じ顔をみたらなんとやら!」)
「あーまだ間に合っていますよね、いぶきさん」
緊迫した空気を意に介していない様子で最後に現れた大崎・朔太郎(若返りサキュバスアイドル・g04652)が言った。
「まったく、急にパラドクス通信で呼ばれても大人は行けるかどうか、間に合うかどうかわからないんですよ。まぁ、僕といぶきさんとの色々と親密な仲ですから……でも、どうやらこの案件はいぶきさんじゃなくて、そちらの同じ顔をした方々、その縁なのでしょう」
朔太郎はいぶきを、そしてその先に居る廉也とグレイシアにも視線を向ける。
「詳しい事は俺にはわからないが……さっき助けられた礼もある。出来る事ならサポートしてやりたいんだ。手伝ってくれるか?」
「サポートは構いませんが、そちらの意志も聞いておきますか。僕達の手助けは必要ですか?」
いぶきの視線、朔太郎の視線が廉也へと向く。こうしてディアボロス達が会話していても、グレイシアを呼ばれたクロノヴェーダは戦いを仕掛けてこない。ただ、じっと立ち尽くしている。グレイシアを凝視していた廉也は小さくうなずく。
「手助け?……まぁ、好きにしろ。実際手を組んだ方が色々楽だろう。判断は任せる」
静から動へ、その言葉が合図であったかのように廉也が動いた。
「軍議は終わったか!」
ほぼ同時にグレイシアも動く。こちらの相談が済むまで待っていたとでも言うのだろうか。
「我が氷王に捧ぐは清浄なる祈り、悪しき者へ氷華と共に安らかな眠りを」
廉也の詠唱が終わるタイミングでグレイシアは立ち上る水の壁に取り囲まれ、すぐに水は氷結する。と、同時に水と氷の礫が全方位からグレイシアへと襲いかかった。もちろん、氷壁に囲まれたグレイシアに逃げ場はない。
「むっ!」
グレイシアの身体を背の翼が守るように丸く広がり礫を受ける。正面からの礫も氷の防具がほぼ弾くのだが、それでも顔や手の先、防具や翼には無数の傷が数限りなく記される。
「この力は、こう使うのだ……氷王の献花」
グレイシアからの反撃が廉也を襲う。廉也の周囲に水が壁のように噴出し氷壁へと変化する。花が咲き乱れるようにそこかしこから花びらのように氷が舞い、それが廉也へと襲いかる。
「廉也!」
思わずいぶきはそう友の名を呼んでいた。二人の血に染まった氷が風花のように自然の風など吹かないここで舞っている。返事はない。
「さあ、アイドルになって覚えたスケート技術。魅せてあげますっ!」
水と氷の競演に介入したのはやはり水を操る朔太郎だった。変容したサキュバスミストが朔太郎の至るところから魔力のこもった水流を放出し、その流れにのって朔太郎自身も敵へと迫る。
「失礼!」
廉也の水を飛び箱のように越えて、グレイシアへと回し蹴りのように胴のあたりを蹴りつける。
「いぶきさん!」
「各々がた、討ち入りで御座る」
朔太郎が叫んだ時にはもういぶきは世にも名高い浪士たちの幻影を召喚していた。新宿島が遠い過去に江戸と呼ばれていた時代、消防を担う人々が着たという装束をアレンジした名入りの舞台衣装、史実と芝居、現と幻、その狭間でどちらでもありどちらでもない侍がグレイシアへと群がり攻める。
「そしてそれは囮だ!」
魔楽器を手にしたいぶきは空中を滑りグレイシアへ体当たりをする。
「ぐっ」
「わあぁ」
体当たりの衝撃と同時に発生した氷霧がいぶきへと向かってくる。むせかえるような、息も出来ないような濃密な氷霧がいぶきの心、感情や記憶、理性へと忍び寄る。
「ううっ……」
その場にしゃがみ込み頭をかかえるいぶき。王の名を冠しながらもグレイシアは酷薄そうな嗜虐の笑みを浮かべていぶきを見る。
「余所見が出来る状況か!」
その背後には音もなく廉也が飛び迫っていた。時間差で立ち昇る水の壁がグレイシアを封じながら順々に氷壁へと変化する。その瞬間、刹那の氷花が舞散って全方向からの攻撃となす。
「俺の方が強い!」
グレイシアのほぼ同一の攻撃が廉也へも跳ね返る。双方が自分の血で身を染め、静謐な氷の装備は血色へとにじんでゆく。
どれほどの攻撃が双方を駆け巡ったのか。
「もう、ダメ……」
力尽きたかのようにがっくりと両膝をついたいぶきは、そのまま両手も地面についた。もう動けない……そんな風情だ。
「お前から仕留めてやる!」
頭も顔も血に染まったグレイシアがいぶきへと大剣を振りかぶって走る。必殺の剣がいぶきの頭上に振り下ろされ……そこにもういぶきはいない。
「え?」
深く地面をえぐりめり込んだ剣を抜く暇もない。激しい魔力を帯びた水流に乗った朔太郎がキラキラとしたアイドル仕様の武器でグレイシアの後頭部を叩き、背からはいぶきとその幻影の浪士たちが痛烈な一撃を繰り出す。
「ば、バカな?」
グレイシアは血に濡れた目を見開く。
「いぶきさん、相手は混乱してますよ。たった今まで瀕死だったじゃないかって」
「え? 俺の演技はその場しのぎの付け焼き刃じゃないってことだ。わかったか!」
朔太郎にもいぶきにもグレイシアはもう反撃を繰り出せない。
「フィナーレはかっこよく決めてくれよ」
「最後は任せますよ……えっと、白い人!」
グレイシアの視界を覆うように肉薄したのは廉也だった。
「一気に封じ込めて凍らせてやる」
再び、水が召喚され二人の氷王によって支配の均衡が生じる、しかしそれはほんの一瞬だった。周囲の水、それが廉也に従い水の壁がグレイシアを封じ込め、そして氷へと変わる。
「終わりだ」
壁となった氷は炸裂して無数の刃となり、もはや身を護る力も失ったグレイシアの身体を難なく貫通してゆく。血まみれ、ボロボロになったグレイシアは倒れ、そして完全に力を失い、もう2度と動かなかった。一つの影がこの場から消え、細いゴミ捨て場のようであった迷宮からも力は失われた。
「……あっけないな」
アヴァタール級を倒した廉也はつぶやく。そして何も言わずに戦場を去ってゆく。
「朔太郎、ありがとう」
いぶきは倒れた時についた埃を払いながら言う。
「後で本人に聞いてみますか?」
朔太郎はニコニコとニヤニヤの間ぐらいの表情でいぶきを見る。
「そうだな。帰ったら冗談混じりで今回の事、話してみるか」
そしていぶきは帰ろうと言う。
キャメロットを守る防御の力がまた1つ、失われたのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水源】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
【水中適応】LV1が発生!
効果2【ラストリベンジ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【ダブル】がLV3になった!