ディアボロス東方遠征~スサへ

《七曜の戦》により、バビロンを含めた広い地域が、最終人類史に奪還された事で、蹂躙戦記イスカンダルの東西の流通を大きく阻害する事に成功しました。
 この緊急事態に対して、イスカンダル大王がいるインド方面からは、状況を確認する為の部隊が矢継ぎ早に繰り出されているようです。
 防衛に成功したミウ・ウルを駆り、バビロンに向かってくる部隊を撃破しつつ、当初の予定通り、インド方面への進軍を続けましょう。

 バビロンの奪還に成功したので、次の目的地は『スサ』、そして、ペルシャ帝国の首都であった『ペルセポリス』へと向かいます。

 このシナリオが期間までに成功した場合『スサ』での冒険が待っています。

目には目を、歯には歯を(作者 唐揚げ
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●蹂躙戦記イスカンダル:バビロンへの途上
「……我が魔術の智慧も、亜人どもでは持て余すか」
 アヴァタール級マミー『『暴威を振るう者』セヘジュ』は嘆息した。
 《七曜の戦》で受けたダメージは大きい。未だ奪われた領土の確認もままならず、自分はこうしてバビロンの安否を確かめるため使い走りをさせられている。フィールドワークが億劫なのではない、己という人材の正しい使い方を知らぬ亜人どもに辟易しているのだ。
「如何なされたか、神官殿」
 何より気に食わないのは、配下にあてがわれたこいつらだ。『アンティゴノス・イアペトゥス』。
 奴ら自身は、己を「旧人類を不要化した新人類」と定義しているらしい。それが事実かどうかはこの際どうでもよかった。
「……なんでもない。索敵を続けろ」
 奴らの眼には狡知と悪意がある。セヘジュが忌み嫌う、人間の悪性が。それが癪に障るのだ。
 亜人の中ではマシな手駒、というのがなおさら忌々しかった。歪んだ復讐心がいや増しに燃えた。

 セヘジュは復讐する者である。だがそれ以前に奴はクロノヴェーダでもある。
 その苛立ち、憤懣がどこへ向かうのかと言えば……当然、見つかってしまった哀れな人々なのだ……。

●新宿駅グランドターミナル
「先輩、まずは《七曜の戦》、ハイパーお疲れ様ッス!」
 七田・ナナ(エンジョイガール・g05125)は元気よく労った。むしろ戦いの前より溌剌に見える。
「ん? ウチッスか? ウチはもう、やる気満々ッス! なんせこれからが本当の戦いなんスから……!」
 最終人類史は多くの大地を奪還したが、全てではない。そして新たに深まった謎、変化した勢力図、未確認の敵。
「これからは戦い方も変化していくと思うッス、いつも以上にウチの言葉を覚えといてほしいッスよ!」
 聞き逃さないようしっかりと言い含めた上で、ナナは愛用のメモ帳を取り出した。

 まず最初に、彼女は目的地が蹂躙戦記イスカンダルであることを伝える。
「ウチらがバビロンを取り戻したことで、亜人のヤツらハイパー慌ててるみたいッス。
 バビロンがどーなったかもわかってなくて、それを確かめるために色んな部隊を動かしてるんスよ。
 つまり、それだけ動きも活発ッス。その間にウチらは、バビロン攻略中だった『ミウ・ウル』を動かすことにしたッス」
 ナナはタブレットに世界地図を表示させ、ペンでバビロンからインドへ矢印を引き……その途上に丸をつけた。
「まず最初の目的地はここ、『スサ』ってとこッス。その次が、えーと……『ペルセポリス』っていう街ッスね」
 どちらもアケメネス朝ペルシャ時代に王都・首都として栄えた都市だ。

「さっきも言った通り、亜人の部隊がバビロンの状況を調べようとあっちこっちをうろついてるッス。
 いくらなんでも『ミウ・ウル』は隠せないから、見つかって攻撃されたりする前にやっつけてほしいッス」
 ナナは予想される接敵対象――つまりセヘジュとアンティゴノス・イアペトゥスについてかいつまんで説明する。
「アヴァタール級もトループス級も、どっちも頭脳タイプだけど戦闘も得意な厄介なクロノヴェーダッス。
 下手に挑発してやる気を出させたりすると、余計やりづらくなるかもしれないッスよ。要注意、ッス」
 ナナは注意深く警告する。
「ただその分、隠れて行動したりはあんまり得意じゃない奴らッス。だから探し回るときは、隠れられそうなところを虱潰しに探して回るよりも、とにかく広い範囲を手分けして哨戒するほうがいいかもしんないッス。ローラー作戦ってやつッスね」
 そうそう、と思い出したように一言付け足す。
「向こうも夏真っ盛りで、特に陽射しがハイパーヤバいみたいッス。いつもより暑いんで、それも注意ッスよ!
 あっちこっち探し回って動いてたら、戦う前にスタミナ切れ……とか、目も当てらんないッス。水分補給大事ッス!」
 それは熱中症対策な気がしないでもないが、まあ間違ってはいなかった。

「あとあと、『スサ』までの道のりには、隠れて暮らしてる人たちもいるはずッス。そっちの救援も忘れないようにしてほしいッス。こっちは逆に、人が隠れられそうな……木とか岩がたくさんあるトコなんかが狙い目だと思うッス」
 つまり敵の哨戒と一般人の救援とは、真逆の地形を探し回るのが効果的、ということになる。
 相互に連携を取りやすくすれば、それだけどちらの小目標も達成しやすくなるはずだ。
「毎日亜人の狩りから逃げ回って、きっと疲れ果ててると思うッス。なんとか助けてあげてほしいッス……!」
 大きな戦いを経ても、やることは変わらない。簒奪者の手から、大地と人類を救い出す。それが復讐者の使命なのだ。

「……にしてもこう、ウチらが逆に警戒されるようになったってのは、ざまーみろな反面フクザツッスねぇ」
 ナナは溜息をついた。
「ウチらのやり方も『ヘルヴィム直属軍』のせいで広まったから、亜人に限らず対策を取られてる可能性が大きいッス。
 もともと目立ちやすい【飛翔】とかはさらに見つかりやすいだろうし、【光学迷彩】も絶対安全ってワケじゃないし……先輩がたはきっと、今まで以上に手強いヤツらを相手にすることになると思うッス」
 ゆえに気を抜かないよう、ナナは改めて忠告した。
「けど、カッケー先輩がたはそんなのに負けるはずないッス! ご武運、お祈りしてるッスよ!」
 目指すはスサ。ハムラビ法典碑が発掘された、古代ペルシャの王都。
 その道程に待つのは、復讐者を驕る簒奪者との戦いだ……!

●蹂躙戦記イスカンダル:スサ方面
 じりじりと、地獄の釜の底を思わせる熱光が放浪者を苛む。
「もう少し、もう少しだ……」
 頬のこけた若い男は、ふらふらとした足取りで歩く。すでに肉体は体力の限界に達しており、いつ倒れてもおかしくない……しかしその表情はどこか晴れやかだ。
「もう少しでたどり着ける。あそこまで行けば安心だ……」
 彼の目指す先には、堅牢な石の城砦で守られた絢爛な都がある。この赤茶けた砂漠めいた土地に似つかわしくない、緑の沃野がはっきりと見えた。
「あそこまで行けば安全だ、もう飢えることも渇くこともない……!」
 男の足取りは、都を目指してまっすぐ進む。

 無論、幻である。
 それが陽炎の見せた虚像であることを、男は認識していない。
「おい、あんた大丈夫か? おい!」
 呼び声にも気づかず男は歩き続け……そしてふらりと、前のめりに倒れた。
「倒れたぞ!」
「こりゃひどい……里まで運ぼう」
「しかしもう食い物も飲み物も」
「だからって見捨てられないだろ」
 誰かの声がする。男は薄れゆく意識の中、他人事のように感じ……そして、目を閉じた。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
3
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【狐変身】
1
周囲が、ディアボロスが狐に変身できる世界に変わる。変身した狐は通常の狐の「効果LV倍」までの重量のものを運べるが、変身中はパラドクスは使用できない。
【未来予測】
1
周囲が、ディアボロスが通常の視界に加えて「効果LV×1秒」先までの未来を同時に見ることのできる世界に変わる。
【動物の友】
1
周囲の通常の動物がディアボロスになつき、意志の疎通が可能になる。効果LVが高い程、知能が高まり、友好的になる。
【隔離眼】
1
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【平穏結界】
1
ディアボロスから「効果LV×30m半径内」の空間が、外から把握されにくい空間に変化する。空間外から中の異常に気付く確率が「効果LV1ごとに半減」する。
【スーパーGPS】
1
周囲のディアボロスが見るあらゆる「地図」に、現在位置を表示する機能が追加される。効果LVが高ければ高い程、より詳細な位置を特定できる。
【無鍵空間】
1
周囲が、ディアボロスが鍵やパスワードなどを「60÷効果LV」分をかければ自由に解除できる世界に変わる。
【完全視界】
2
周囲が、ディアボロスの視界が暗闇や霧などで邪魔されない世界に変わる。自分と手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人にも効果を及ぼせる。
【活性治癒】
1
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【土壌改良】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の地面を、植物が育ちやすい土壌に変える。この変化はディアボロスが去った後も継続する。
【口福の伝道者】
1
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【パラドクス通信】
2
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【建物復元】
1
周囲が破壊を拒む世界となり、ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の建造物が破壊されにくくなり、「効果LV日」以内に破壊された建物は家財なども含め破壊される前の状態に戻る。
【アイテムポケット】
1
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【防衛ライン】
2
戦場が、ディアボロスが地面や床に幅10cm、長さ「効果LV×10m」の白い直線を出現させられる世界に変わる。敵はこの直線を突破できず、上空を飛び越える場合、最低「効果LV」分を要する。直線は戦場で最初に出現した1本のみ有効。

効果2

【能力値アップ】LV5 / 【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV3 / 【凌駕率アップ】LV1 / 【反撃アップ】LV2 / 【先行率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV2 / 【アヴォイド】LV1 / 【ダブル】LV2 / 【ロストエナジー】LV1 / 【グロリアス】LV1

●マスターより

唐揚げ
 唐揚げです。《七曜の戦》に参加された皆さん、お疲れ様でした。
 そして初めましての方、あるいはお久しぶりの方、改めてよろしくお願いいたします。

 さて、《本編》開始最初のシナリオは、亜人部隊との戦いです。
 巨大砂上船『ミウ・ウル』での移動を確実にするためには、先んじて敵を哨戒し撃破する必要があります。
 もちろん、救うべき一般人のことも忘れてはいけません。彼らを見つけ、船に収容することも任務の一つです。
 それぞれの選択肢で適した残留効果があると思いますので、ぜひ考えてプレイングしてみてください。
202

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


ハーリス・アルアビド
セヘジュ…その名とあのお姿…私が死んだ頃より成長していらっしゃいますが、見間違えるわけない。まさか主だけでなく主の御子までもがクロノヴェーダに…。
いけませんね、心を鎮めねば。私がここにいるのは亜人の手からミウ・ウルと人々を守るため。私情で先走ることはできないのです。

心を落ち着けるためにも【祈り】を捧げて【幸運】を願い、【動物の友】で周囲にいる動物達に協力を頼みましょう。万が一のことも考えて小柄で目立ちにくく、必要な時に素早く逃げられる方にお願いします。

敵は身を隠すなどの密やかな行動は苦手なようです。この開けた場所で一つの群れを作り移動する亜人達は目立ちます。不審な砂埃や見慣れぬ色を纏った者がいないか【観察】してもらいます。
何かを見付けたらすぐにこちらに戻ってください。ディアボロスの存在が知られている今、長く留まれば怪しまれるでしょう。

動物達にお礼に飲み水と干し果物か干し肉を用意してあります。
ディアナさんもどうぞ。こちらはきちんと人間用ですから。…来てくださりありがとうございます。


ディアナ・レーヴェ
予め決めたミウ・ウルの走行経路を中心に、まず哨戒範囲の分担をざっと決めましょう!
全方位、漏れなく手分けね
…と、目立つ物ない砂漠だと、現在地の共有が難しいかしら?
でも基本は「私達の視界の隅には常にミウ・ウルがある」し、【パラドクス通信】で連絡を取り合う際に「ミウ・ウルの見え方、その太陽との位置関係」みたいな所を伝え合えば、位置共有&探索範囲の重複回避はできるはず!
ミウ・ウルの移動に一定の距離を保ってついていきつつ哨戒

敵は余り隠れないのね?
日除けも兼ねて砂漠地形に紛れられそうな大判の布でも被った上、速度と範囲重視で哨戒していくわ!
オアシスとかあれば敵も寄るだろうから、痕跡が無いか確認
装備のオペラグラスは広範囲の探索には向かないけど、動く物を見つけたときの初動には多分使える

え、暑さ対策?
「大ー丈ー夫っ!こんな少しの間、軍人はド根性で我慢――あっ駄目?漂着する??(苦笑」
「ちぇ。なら冷気の支配者あれば使うし、水と塩は十分持ち込むわ!」

なんて
そんな冗談交じりの会話で、ハーリスの様子を実は伺ってる


●荒野をさすらう
「……セヘジュ」
 ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)の目は荒野に向いていたが、見ているのはもっと遠くの場所だった。ここではない、ずっと昔の何処かだ。郷愁と寂寥が綯い交ぜになった横顔を見れば、ディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)にもよく分かる。
 敵の指揮官が名乗るその名を、ハーリスは確かに呟いた。ディアナは聞いてはいたが、すぐその場で問うようなことはしなかった――もし口に出したとしても、心ここに在らぬハーリスでは、右から左に聞き流していたことだろう。

 一方で当のハーリスは、短く嘆息して頭を振った。
(「いけません。心を鎮めねば」)
 ざわつく心のゆらぎを、深く静かに無意識の海に沈める。己はなんのためにパラドクストレインに乗った? 言うまでもない、亜人の脅威から人々を、そしてミウ・ウルを守るためである。その気概がなければ、ディアボロスはパラドクストレインに乗ることは出来ないのだから。私情で先走るなど以ての外、そもそも敵はアヴァタール級なのだ。ハーリスの胸中によぎった思いが事実だったとして、それを確かめる術などない。

 ……そうした道理をいくら己に言い聞かせても、ハーリスは心休まらなかった。ならばと、彼は幸運を祈る形で信仰に頼った。本来の信仰心とは、こうした精神の安寧をあるためにこそある。その点では正しい祈りだと言えよう。
「ねえ、早速だけど哨戒範囲の分担を決めない?」
 そこで、ディアナが口を開いた。ハーリスの憂いを帯びた翠眼が彼女を映す。瞬きとともに、靄めいた憂いは――少なくとも今は――失せていた。
「そうですね。動物たちに協力を頼んでみるつもりですが、それでも限界はあります。妙案かと」
「どこから敵が来るかわからないものね。全方位、もれなく手分けできるようにしましょう」
 ディアナはミウ・ウルを振り返った。
「私たちの目的は、あくまで敵を近づけないこと。だから常にミウ・ウルを視界の隅に置いておけば、太陽とミウ・ウルの位置関係でお互いの居場所を伝えあえるはずよね」
「ふむ……考えましたね。星を読むは夜空のみに非ず、と」
 ハーリスは顎に手をやり、ディアナの言葉に感心した。そして同時に己を叱責する。迷いを抱いた己に対して、彼女のなんと聡明で見識深いことか。見習わねばならぬと。

 かくのごとく入念に打ち合わせを行い、【パラドクス通信】で出現した通信機を使って、二人はくまなく周囲を哨戒した。
 荒野には身を隠せそうな障害物はほとんどない。つまりミウ・ウルが敵に見つかる確率は極めて高く、逆に隠れ里の目星をつけるのも容易い。といっても、後者は別働隊の仕事だ。
「動物たちも、この陽射しは辛いようです。ディアナさんも対策はお忘れなく」
「大ー丈ー夫っ! 少しの間なら、軍人はド根性で我慢」
「……新宿島に漂着しても知りませんよ?」
 冗談めかそうとしたディアナは、ハーリスの穏やかな声に苦笑した。
「あっ、ダメ? そりゃそうよね。熱射病で倒れて最終人類史に逆戻りだなんて、笑い話にもならないか」
「そういうことです。私たちの仕事は、敵を見つけてからが本番なのですから」
 足元に駆け寄ってきた小動物を抱えてやり、ハーリスはその背を撫ぜた。傍らに置いた水張り済の桶には、他の動物たちがこぞって首を突っ込み喉を潤している。
「ディアボロスの存在が知られている今、長くとどまれば怪しまれるでしょう。無理はせず、何か見つけたらすぐに戻ってください」
「それこそ心配ないわよ。私、そんな無理をするタイプに見える?」
 ディアナはいつも通りのあっけらかんとした調子だ。ハーリスは嘆息するが、窘めはしなかった。

 彼女が、自分の様子を伺っていることを、なんとなく察していたからだ。
「ありがとうございます、ディアナさん」
「へ、何が??」
「それは……」
 言いかけ、間を置く。彼女がしらばっくれたということは、「そういうこと」だ。それをわざわざ自分から指摘するのは無粋の極み。彼女の思いやりを無下にしてしまう。
「……来てくださったことに、感謝を。頼もしいですよ、心からそう思います」
 通信機の向こうから、苦笑いの気配。少し呆れたような、あるいは安堵したような。
「その言葉は、全部終わってからもう一度聞かせて」
「わかりました。では代わりに、干し果実はいかがです?」
「いいわね! ……って、もしかしてそれ動物用じゃ」
「大丈夫、人間用ですよ」
 二人はそれ以上、妙なことは言わなかった。ハーリスの瞳には荒野が映っていると、ディアナにもわかったから。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​
効果1【動物の友】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【ダブル】LV1が発生!

リブシェ・レッドスケイル
まずは食事だわ。隠れ住んでいると言うことは、食事もろくにとれていない。
こんな暑い中では疲弊もひどいでしょうし、理性的にも考えられないでしょ。
それに人は食べ物に弱いわ。信じてもらうにはそれが一番。
だから、食事。【口福の伝道者】と錬金術での「発明」でたくさんの料理を作り出しましょう。
こちらの料理は詳しくないけれど……そうね、栄養のありそうな、蜂蜜を落とした牛乳と麦の粥を。
それに、コトコト炊いた鶏肉に野菜。大人達には滋養のある黒エールもわたしましょう。
こうやって、おいしそうな料理で信用をもらう、という訳よ。
信じてもらえそうになかったら、料理を自分で食べましょ。毒は行ってないし、わたくしたち、怪しいかも知れませんけど。腕に自信はあるのよ。

その上で各々に話を聞いていくわ。思い込みや偽情報かどうかは、「看破」して絞っていきましょう。
時間はかかるけど、大事なことよ。


アルラトゥ・クリム
哨戒は勿論重要だけど、亜人との接触前に難民を保護したいかな。
相当切羽詰まってる様だし、支援物資も持って行こう。

アイテムポケットにデーツを始め、現地仕様の食料や塩に
医薬品やポリタンクの水、包帯等を詰め込めるだけ詰め
岩場や木々などの遮蔽物のある場所に目を付けて探索
難民を発見したら両手を挙げ、害意のない旨を示しつつ接触
「私達は冒険者の様な事をやってる者でね。
貴方達の様な人達を、亜人から保護して回ってるんだ。
当座の食料や薬も持ってきた。とりあえず一息つこう?」

アイテムポケットから物資を取り出し
水は現地の水筒に詰め直した上で、全員に物資を配給して
治療が必要な人には出来る処置を施し
一通り落ち着いた所で改めて話を切り出す
「先程も言った通り、私達は貴方達の様な人達を保護して回ってる。
亜人の来襲のない土地へも連れて行ける。約束するよ。
だから私達を信じて、一緒に来てくれないかな?」

もし説得が成功したら、哨戒組とパラドクス通信で連絡を取り
亜人に発見され難い進路で難民をミウ・ウルへ誘導する

アドリブ&絡み連携歓迎


菱神・桐梧
我ながららしくもない事に手ェ出したもんだ。
……俺の目的はここじゃないしな、さっさと済ませちまおう。

隠れ住んでるとなりゃ、そう簡単には見つけられなさそうだ
虱潰しよりはある程度当たりを付けておいた方が良いな
瓦礫や岩陰、蔦や葉で覆われた辺りが怪しそうだ
それが済んだら手早く探して行くか

首尾良く見つけられればあとは説得か?
俺が首突っ込む事も無いし、その辺りはお人好しに任せておくか
話がついて連れ出すまでは一応周りを警戒しておく

ミウ・ウルまでの道のりでは平穏結界を使い
なるべく開けた場所は避け目立たないように進む
パラドクス通信が使えそうなら哨戒中の味方から逐一敵の位置を確認して迂回して行く


モロク・アルデバラン
暑いな。吾輩は魔術で幾分か身体を冷やせるが難民たちはそうはいくまい
早く見つけてやらねば亜人共に見つかる前に手遅れになりかねん
だが急いで飛び回れば敵哨戒に引っかかる。とすれば、足で稼ぐか。
全く、動きにくくなったものだ。

日差しを避けて林や岸壁の影で身を寄せ合っておるかもしれぬ。岸壁に沿って、獣道や僅かな水場の周辺を中心に捜索しよう。
調査箇所が他の者たちと重複せぬように【スーパーGPS】で位置情報を共有。各地で得た情報は【パラドクス通信】で伝達すれば調査効率も多少は良くなるであろうか。他の場所で難民が見つかればすぐに合流する

難民たちに同情しつつ『氷雪使い』の術で氷嚢や冷気を作り、怪我や熱中症の者の応急処置にあたろう。重篤な者はすぐにでもミウ・ウルに連れていきたいが説得が必要であるな。
ここに至るまでに悲惨なものを何度も何度も目の当たりにした。吾輩らも汝らと同じく怒りに震えておる。亜人共に一泡吹かせたいとは思うならば、吾輩らについて来てはもらえぬか。

アドリブ&絡み連携歓迎


●隠れ里の人々
 哨戒班からの定期的な報告のおかげで、隠れ里のありそうなポイントはすぐに狭まった。そもそも、荒野に複数の人間が隠れ潜めるような場所などほとんどないのだ。かろうじて存在する雑木林や枯れかけたオアシスですら、劣悪な環境である。この地は、そもそも人が住むように出来ていない。
「まずは食事だわ」
 足早に荒野を歩きながら、リブシェ・レッドスケイル(愚者の緋金・g09919)は仲間たちに熱弁した。
「こんな暑い中では、動かなくったって疲弊してるでしょ。着るものや住む場所も大事だけど、何より食事よ。信じてもらうにも一番でしょうし」
「相当切羽詰まってるみたいだからね。幸い、二人のおかげで哨戒は順調みたいだし、こっちは私たちでなんとかしよう」
 アルラトゥ・クリム(現代の魔法使い・g05088)は張り詰めた顔で頷いた。新宿島から持ってこられるだけの支援物資――たとえば医薬品や水に食料、包帯、塩……【アイテムポケット】に詰め込まるだけの量をありったけ詰め込んできた。だがそれでも不安は残る。イスカンダルの窮乏を何度も見てきた彼女は、スサの環境が想像以上に過酷なことに驚きを隠せなかった。
「あー、捜索はこっちでやるからよ。そういう細々としたこた任せる。俺ぁ向いてねェんだ」
「ほう。ならばなぜ志願したのかね? 察するに、敵との死合を愉しむタイプであろう」
 モロク・アルデバラン(誇り高き砂暮らし・g01160)に図星を突かれ、菱神・桐梧(喧嘩屋・g05613)は頭をかいた。彼自身、その理由がわかっていないような顔だ。
「我ながら、ホントなんでだかね。それらしい答えがありゃ教えてほしいくらいだ」
「必要ならいくらでも知恵を貸してさしあげよう」
 モロクは視線を彼方に向けたまま言った。彼の見つめる先には、やせ細った木々がこじんまりと集まっている。向こうは姿を隠しているつもりだろうが、明らかにこちらを注視する気配があった。
「面倒事が片付いてから、だが」
「……落ち着いていきましょ? わたくし達に、後ろめたいことなんてないんだから」
 リブシェはリラックスした様子で言い、率先して歩み寄った。


 隠れ里の人々は、半ば諦めていた。見つかったが最後、彼らには逃げる先も気力も、体力も資源もない。だからディアボロスを見つめるその表情は、警戒というより緩やかな絶望に満ちていた。これからどんな奴らに略奪され蹂躙されるのか、せめて一目見てやろう、といったふうに。
「えっと……私たちは敵じゃないよ。冒険者のようなことをやってる者で、あなたたちのような人々を、亜人から保護して回ってるんだ」
 アルラトゥは堂々としたリブシェに倣い、小柄ながらに胸を張りはきはきと喋った。そしてデーツを始めとする、スサにあっておかしくない食料を取り出してみせる。
「た、食べ物だ」
「水もあるぞ」
 どよめきが走った。いちいち様子を伺うまでもなく、動揺が広がっている……さもありなん。腹芸をするには彼らは飢えすぎている。
「念のため、吾輩は他に隠れている人々がおらぬか周囲を見回ってこよう。貴殿はいかがする?」
「ありがたく流れに乗らせてもらうぜ。説得だ交渉だのは、お人好しにお任せだ」
 桐梧はぷらぷらと手を振って、すげなくその場を後にした。リブシェは肩をすくめ嘆息する――皮肉めかした言葉は、自分が悪者のように振る舞うことでこちらをより信用させようという、桐梧なりの「親切」なのだろう。悪い警官というには、ぶっきらぼうすぎるが。
「そういうことだから、ね?」
 リブシェは立つのもやっとの人々に視線を合わせ、たおやかに言った。
「わたくし達は、何も奪いはしないわ。信用できないなら、いくら時間をかけてもらってもいいの」
「……一息つこうよ、まずはさ」
 アルラトゥの言葉に、否を唱える者は誰もいなかった。

 一方、その場を離れたモロクはというと。
「やはりか」
 しゅう、と蛇を思わせる溜息が漏れ出した。彼が見つけたのは、岩場の影でぜひぜひと荒い息をつく男性だ。すぐに駆け寄り、アルラトゥから借り受けた氷嚢を首筋に当ててやる。
「無事であるか。警戒せずともよい、吾輩は味方である」
「……み、水……」
 モロクはこくりと頷き、懐から水袋を取り出し男の口に含ませてやった。終末医療の老人患者めいて、おぼつかない様子でちうちうとゆっくり嚥下する男性。モロクはその背を抱えるようにして、水が逆流しないように支えてやる。あまりの痛々しさに同情の念が湧き上がった。
「隠れ里の者か? あそこには食料もある。活力を取り戻したら、吾輩とともに向かおう」
「あ、ああ……本当にあったんだ、人がいる場所、が……」
 途切れ途切れの言葉に、モロクは目を眇めた。どこかの集落から逃げ延びたか、はたまたずっと流離ってきたのか……こんな近くにまでやってきた男にも気付かないほど、あの里の生活は困窮していたのだ。
「安心せよ。もう大丈夫である」
 モロクは心から男に語りかけた。やがて男が安堵から嗚咽を漏らすと、その背を叩いて慰めてやる。
「……ああ、もう心配は要らぬ。要らぬのだよ」
 誇り高き竜の穏やかな声には、熾火のように燃える怒りの色があった。


 怪我人、病人、栄養失調や脱水症状を起こした衰弱者。
 そうした人々を手分けして介助し、食料を配り、水を行き届かせた時には、あたりにはしくしくと押し殺した嗚咽が漂っていた。
「……ひどいね。こんな光景、もう何度目かな」
「でも、助けられたわ」
 アルラトゥは、リブシェを見上げた。貴婦人のかんばせは毅然としていて、同時に赤茶けた岸壁のように厳しくもある。
「……まずはそれを喜ぶべきでしょう? 間に合ったのだから」
「そう、だね。この様子なら、きっと話も聞いてくれる」
 アルラトゥの翳った表情は幾分晴れ、躊躇いがちながらも笑顔が戻る。手当をして回っていたモロクは、二人の様子を肩越しに振り返りひとつ頷いた。
「吾輩もだ。ここに至るまで、悲惨なものを何度も何度も目の当たりにした。ゆえに――」
 モロクは難民たちに体を向け、目を細めた。人々はそこに、巨きな竜の姿を幻視した。
「ゆえに、怒りに震えておる。おそらくは汝らと同じように」
「「「……」」」
「わたくし達は知りたいことがあるの。でもそれを聞くのはあとでも構わないんです」
 リブシェが言葉を継ぐ。
「今は、ここよりも安心して過ごせる場所にあなたたちを連れて行こうと思っているの。そこならもう、飢えたり渇いたり心配はないわ」
「か……粥も、もっともらえるのか?」
「ええ。黒エールだって、わたくし達が振る舞った鶏肉と野菜だって。もっと手の込んだ、美味しいものを約束するわ」
 人々はリブシェやアルラトゥから手渡されたそれらを見下ろし、困惑の顔でお互いを見た。あまりに都合がよくて、現実感がないのだろう。その様が、余計に彼女の心の怒りを燃やす。
「……すべては亜人を倒すため、わたくし達は、そのために此処へ来ました」
「だから、お願い。私たちを信じて、一緒に来てくれないかな」
 今更な問いではあった。こうまで振る舞われ、命の危機を救われ、こと此処に至って首を横に振るような愚か者はいない。
「そ、そうだ。あいつらなんて、ぶっ殺してやりてえよ!」
「その意気である。言ったはずだ、汝らと同じだと」
 モロクは不敵に微笑んだ。
「亜人どもに一泡吹かせてやろうではないか。吾輩らが、汝らの想いを背負って戦う。だから汝らは……生きてほしいのだ。今は」
 慈悲が心を潤し、食事が腹を満たした。消えかけた生命の火が燃えるにつれ、疲れ果てた人々は生き延びようとする気概と敵への怒りを思い出し、弱々しくも燃え上がらせた。それこそがディアボロスの原動力だ。目に見えず聞こえずとも、復讐者たちには己の背中と双肩に宿る思いの力が、はっきりと感じられた。

 それは、荒野を一人歩く桐梧も同じだ。
「……やれやれ」
 すう、と大きく深呼吸。閉じた瞳を再び開けば、そこには戦士の貌がある。睨みつける先には幾つもの影――通信機にザリザリとノイズが走り、哨戒班の声を届けた。
「俺だ。こっちでも確認した。この距離ならこっちから仕掛けられるぜ」
 砂嵐の向こう、陽炎めいて揺らめく影は亜人のあかし。倒すべき敵、遂げるべき本懐がそこにある。
「……せいぜい派手にやってやろうじゃねえか。目には目を、歯には歯をってやつだ」
 桐梧の口元には笑みが浮かんでいた。それは嗜虐的であり獰猛で野卑で、獣のような笑み――ただし、誇り高い獣の笑みだ。群れを守るため、敵対者に牙を剥く狼の如く。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
【平穏結界】LV1が発生!
【スーパーGPS】LV1が発生!
効果2【凌駕率アップ】LV1が発生!
【先行率アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV2になった!

アルラトゥ・クリム
さてと…招いた覚えの無いお客さんには、丁重にお引き取り願わないとね。
場合によっては、力尽くで!

砂嵐対策に、完全視界を用いて視界を確保して
可能なら、砂嵐と遮蔽物になる地形や起伏を利用して奇襲を仕掛け
不可なら砂嵐を突破して一気に強襲し先手を取る

「さあ、ショータイムだ!一気に押し通るよ!」

精神集中して、周囲の存在を情報として捉え
この場全ての情報の流れを把握
更に敵の挙動を観察して情報収集し、敵の仕掛けた罠の位置と種類を看破
残像を帯びた超高速移動で敵を惑わしつつ
伸長した魔力刃を纏わせた剣形態ブレードガンで、敵陣を薙ぎ払っていく
敵の攻撃は、罠にかかるフリをして攻撃を誘い
XMA宜しき体捌きにて体を躱し、攻撃のタイミングや焦点をズラすか
可能なら魔力刃で闇を斬り払って霧散させ
敵の魔術?を躱すか、負傷を軽減して継戦する

「なるほど。脳筋と欲望直結とがウリの亜人にしては、理知的な方かなあ…
別に感心なんかしてやらないけど」

アドリブ&絡み連携歓迎・使用可能残留効果全使用


ハーリス・アルアビド
亜人は総じて欲望を隠さぬものばかりでしたが、あの狡猾と悪逆は不愉快です。我が御子に何が起きクロノヴェーダになってしまわれたのかは分かりませんが、それを確かめるためにも退けます。

豊穣の神にして軍神たるセベクよ、お力添えを。悪逆たる者を打ち砕くため恐るべき牙の力をお貸し下さい。
【残像】を生み出す速度で駆け抜けながら敵の様子を【観察】し、こちらに注意を向けていない敵を狙って突撃します。
舞い上がる砂埃を【砂使い】で巧みに操り残像と共に正確な攻撃ができないように【攪乱】しながらこちらの動きを把握しきれていない敵を狙って行きましょう。

陣形を乱せば乱戦にもなるでしょうが、毒の苦痛など構いません。【忍耐力】で耐え抜いてみせましょう。味方と連携しセベク神の牙の【連撃】と【一撃離脱】の緩急で敵を翻弄しながら戦います。


モロク・アルデバラン
単純な奴らだ。正面切って奴らと撃ち合い、釘付けにする
側面、背後からの奇襲も有効となろう
機を見て秘術「ライディーン」で焼き尽くす

【パラドクス通信】で敵の動向を味方と共有して歩を進めたい。亜人どもめ、そわそわしおって。見え透いた罠であるが、吾輩が囮となろう。ディアナ殿の水鉄砲トラップの様にタダでは乗らぬよ

奴らは罠へ陽動するだろうが、吾輩が無様に罠にハマる瞬間はじっくり見たいはずである。吾輩だったら見たい。しまったな、キャメラを忘れた。それはさておき、奴らを釘付けにして油断させるならその瞬間。カウンターの一撃で一泡吹かせてやろう。気休めだが、クリーンヒットを受ける可能性を考慮し「ステューパ」の【結界術】も忍ばせておく

敵に陽動がうまくいっておると思わせ、疑いを与えぬのが肝。吾輩の演技力が光るな
ええい、逃がさぬぞー!(演技力はないが【情熱】はある)

これで罠は終いか?万策尽きておるぞ
人々が受けた屈辱の礼は吾輩らで返させてもらおう
遠慮するな。死ぬほどおかわりを用意してあるのだ

アドリブ&共闘大歓迎


ディアナ・レーヴェ
わかりやすくミウ・ウルに向かってくるのね?
まだ距離が十分あるなら、その反対方向から回り込むようにして背側から仕掛けましょう!

技は【隣人墜落の計】
ハーリスがやりやすいよう、わざと砂埃を立ち上げたり、彼が狙う敵を同時に別方向から撃ったり連携を
あと砂の立ち上げついでに地面の様子は広く気にする。罠っぽい怪しい所があったら、アルデバランにパラドクス通信しておきましょう!
…ふふっ、こっちも多少【罠使い】としての知見はあるわよ?
何せ水着コンテストの時なんて、あの公園に散々――おっとごめん、雑談はまた後でっ!
(※自旅団の話。多分ハーリスとアルデバラン位しか分からない)

極力敵をバラけさせるよう押し込んで、連携から切り離しては撃破しましょう!
【防衛ライン】は分断、またはミウ・ウルへの攻撃抑止に状況を見て利用ね

…そうね。悪逆をしたから、悪逆になるのよね?
最初からそうだったわけじゃない、と!
なら私も、一杯葬ってきたからこうして「軍人」になったのかしら?
悪くないわね!
ねえ――また一歩、私を「軍人」にさせて頂戴?


菱神・桐梧
そんじゃあ、悪どさ比べと行こうじゃねえか。
生温いやり方は勘弁してくれよ?

まずはその戦術とやらに乗ってやろう
真っ正面から仕掛けに行くぜ
ハンマーを盾にダッシュで接近
距離を詰めるまでに相手がどう動くか見ておく

攻撃してくるならハンマーで防ぎつつ
至近距離まで近づいた所で地面をぶっ叩き砂塵を巻き上げ視界を塞ぎ
同時にハンマーを捨て側面、背面へ回り組み付く

組み付ければあとは使えそうな所……
ツノか、ご自慢の毒を掻っ払ってみるのも良さそうか
ツノをへし折りそいつを脳天へ、毒を奪い口ん中にでもぶち込んでやろう
こいつ自身は毒に耐えられんのか見ものだな

一体仕留められればそいつを次のへ向けて蹴り飛ばしもっぺん攻め込むための布石にする
大太刀や回収出来そうならハンマーも投擲して撹乱に使っておこう

ちまちま毒使うなんざ、随分とお優しいこった。
どうせ学ぶなら、もっとえげつねえのにしとけよ。


リブシェ・レッドスケイル
亜人にしてはヒトくさく、ヒトにしては亜人くさく。一体この者達は何なのか……まあ、蹂躙するだけですけども。

罠を仕掛けるつもりならば、こちらも知恵比べと参りましょう。
竜の財宝から飢えた白荊の種を手にしましょう。
相手が誘導するならば、ギリギリまでわたくしも引っかかって、場所を看破。他のもの達に【パラドクス通信】経由で伝えるわ。

様子をうかがっていると言うことは、動いていないか、動きは鈍いか。
とはいえ、わたくしが罠にかかりそうになったら動くわよね。

あちらの罠を避けながらわたくしの方の罠を移動経路に置きましょう。そうねえ、見え見えなのと、そうでないのと。
わたくしの経験からして、悪辣な者ほど、自分の考えた予測にハマりやすい。どちらを選ぶべきか悩んでいるうちに、動きは鈍くなる。

そのすきに足下に本命の罠を投げて捕らえてしまいましょ。
竜の財宝、限りがあると思って?


●悪意によって進化した者たち
『アンティゴノス・イアペトゥス』は、亜人のトループス級とは思えないほどに理性的だ。少なくとも目先の女や食料につられるほど考えなしではない。あからさまに餌をぶら下げられたら、逆に敵の罠を警戒する知能さえある。亜人にはありえないことだ。

「……ああ、"あれ"はそういう意味で亜人らしい奴らなのね」
 向かってくる敵集団を見た時、ディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)は即座に察して呟いた。奴らの顔を見れば一目瞭然だった。
 アンティゴノス・イアペトゥスは他の亜人より遥かに知能が高く理性的だ――しかし倫理や義理人情など無縁である。ともすれば、他の亜人以上に残酷で悪辣とさえ言えた。
 そういう顔をしている。嗤っているわけではないが、ぎらついた双眸は遠目に見てもはっきりわかるほど獲物の死に飢えていた。苦しみ、喘ぎ、絶望して死ぬ愚者が見たくて見たくて仕方ない、そういう飢餓が燃えるように滾っていた。
「……不愉快ですね。他の亜人にない狡猾と悪逆があるからこそ余計に癪に障ります」
 ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)は吐き捨てた。そして同時に思う――あれらは、絶対にミウ・ウルに近づけてはならないと。そこには人間世界の悲惨が待つ。

「ならば、逆に吾輩らが亜人らしく振る舞うというのはどうかな?」
 一方、飄々と髭を撫でつけながら提案するモロク・アルデバラン(誇り高き砂暮らし・g01160)。眼光は刃のように鋭く、この状況を面白がっているわけではないことはよくわかった。
「亜人らしく振る舞う? それって、どういうことかな」
 アルラトゥ・クリム(現代の魔法使い・g05088)は意図を掴みかね、些か怪訝な表情を浮かべる。
「奴らは狡猾で悪辣なのであろう。ならば、吾輩らが罠にかかるところをじっくりと見たいはずだ。少なくとも吾輩だったら見たい」
「おいおい、本音が漏れてるぜ旦那。いい趣味してやがる」
 などと言いつつ、菱神・桐梧(喧嘩屋・g05613)は片頬を吊り上げるように不適で皮肉げな笑みを見せた。モロクは目を細めてふふん、と意味ありげに含み笑う。
「……亜人にしてはヒトくさく、ヒトにしては亜人くさく。両方の長短を併せ持つなら、簡単に釣れそうですね」
 リブシェ・レッドスケイル(愚者の緋金・g09919)は扇で口元を隠しながら言った。
 嫌悪を浮かべるハーリスとは違い、リブシェの目元は凪いでいた。

 何故なら、どのみちやることは決まっているのだ。
「どうあれ蹂躙するだけです。手っ取り早く確実に仕留められるなら、協力しますとも」
「蹂躙を目論む亜人を蹂躙する、ね。皮肉めいてていいんじゃないかな」
 アルラトゥはようやく彼らの意図を理解し、ブレードガンを握りしめた。刃部分を魔力が覆い、臨戦態勢を整える。
「さて、それじゃ分かれて作戦開始だね。招いた覚えのないお客さんには丁重にお引取り願わないと」
「……欲望を隠しもしない亜人どもには、相応しい報いを与えてやりましょう」
「悪どさ比べといきますか。生温いやり方で興ざめさせねえでくれると嬉しいんだがねェ」
 桐梧は鮫のように笑った。獰猛で野卑なそのかんばせを、ハーリスは恐ろしさ半分頼もしさ半分に一瞥する。蛇の道は蛇とでもいうべきか、目には目をと言うべきか……今は、仲間たちの無慈悲で容赦ない怒りは心強い。彼らを見習い、目的を見失わないよう改めて己を律する。
「楽しみね? あいつらが、最後にどういう表情を見せるか」
 その中で、ディアナの雰囲気は浮いている。彼女は少女のようにはにかんだが、その瞳は乾いていたからだ。


 通常の亜人が食いつきやすい「女」や「食料」の代わりに、無様に罠にかかってしまったディアボロスを餌にする。生理的欲求でなく、悪意を進化させた亜人ならば通じうるという確信が、復讐者たちにはあった。
 事実、それは正しい。アンティゴノス・イアペトゥスは、たとえ知能が高かろうが理性的だろうが亜人である。その行動は蹂躙に直結し、種類が違うとしても見境なく求めずにはいられない欲望がある。獲物を罠にかけたがる知恵者気取りを、二重三重の罠でかけ返して仕留める。
 言葉にすれば単純だが、実際は複雑で精妙な連携を要する作戦だ。しかしそこに不安を抱く者はいなかった。
 もともと知己であるディアナやハーリスらは当然として、6人は互いが互いの力量を察し、そして任じていたからである。

「見つけたぞ、亜人どもめ。この先には行かせぬ!」
「先手必勝、ってな! どっちが狩る側なのか、教えてやるよ!」
 乾いた野に、モロクの憤懣が轟いた。ほぼ同時に巨大な槌を構えて突撃する桐梧。ロケットのような勢いで地面を踏みしめ、砕きながら疾駆する。あまりの踏み込みの強さで間欠泉を思わせる土煙が上がり、桐梧のスピードで吹き飛ばされて空を土色に染めた。
「ディアボロス。やはりいたか」
 アンティゴノス・イアペトゥスは冷静にそれを受け入れる。動転して連携を乱すようなこともなく、桐梧の「先制攻撃」を散開してダメージ軽減。ズシン! と誰も居ない場所を叩いたハンマーが、再び土煙を上げた……ただし今度は、空を染めるのは土色ではなく毒々しい紫だ。散開と同時にばらまかれた毒霧だ!
「チッ、こいつはハンマーじゃ防ぎようがねえな……!」
 桐梧は顔を顰め、怒りに目を見開いた。いかにも「搦手に腹を立てて猪突猛進する」かのように……そういう直情的で単純な敵は、アンティゴノス・イアペトゥスのいわば「好物」だ。奴らのぎらついた目がぴくりと反応するのを、モロクは見逃さなかった。
「あの破壊力、喰らうと厄介だ。後ろの男にも注意しろ。後退しつつ様子を見る」
「引け腰で吾輩らを相手取れるとでも? 愚か者どもが」
 モロクは自尊心を傷つけられたかのように、しゅるると蛇のような歯擦音を漏らした。アンティゴノス・イアペトゥスは二人の怒気に警戒したふりをして、じりじりと戦線を後退させる。桐梧が前衛を務め、モロクが急き立てるように後ろから援護する。その連携もちぐはぐで、お互い怒りのあまりにコンビネーションが乱れているように見せることも忘れない。

(「莫迦め」)
 ある個体が嗤笑した。奴らからすれば、二人の振る舞いは血が滴るステーキのようなものだ。言葉で玩弄し、徹底的にプライドをへし折って貶め、絶望の中に猛毒を味わわせてやりたい。いや、味わわせなければ満足できない。付け焼き刃の理知では抑えきれない亜人の本能が、むくむくと鎌首をもたげていた。
(「まんまとかかっておるな。そわそわと、集中して見んでも一目瞭然である」)
 モロクには、亜人が心のなかで己を嘲る言葉さえも、まるで読心術を身につけたかのように聞こえていた。つまり奴らは、すでにディアボロスの術中にかかっている。
「退け、近づきすぎるな。奴らのような手合いがもっとも恐ろしいのだ……!」
「ええい、逃さぬぞー! 桐梧殿、早く追わねば逃げられてしまうではないか! 急げ!」
「わぁってるよ、うるせえな!」
 桐梧は声を荒らげた。もちろん「フリ」だ。彼はただの猪武者ではない……怒りにかられて敵の陽動にかかるふりをしながら、何気なく周囲をチェックしている。散開したディアボロスたちが、気付かれないように包囲を形成できているかを。

 すでに襲撃班の準備は万端だった。敵はモロクと桐梧を飲み込むようにコの字型の陣形を巧妙に形成しているが、そのさらに外側にはディアボロスたちの包囲陣形が待機しているのだ。
「アルデバラン、演技力あんまりないのね。でもひっかかってるみたい」
「あの憤慨だけは演技ではありませんからね。逆に生々しく真に迫っているのではないかと」
 ハーリスの言葉に、ディアナは吹き出した。
「たしかにね。水着コンテストの時なんて、あの公園で……」
「はいはい、雑談はほどほどに。そろそろ私たちの出番だよ」
 通信機越しに、アルラトゥが窘めた。ディアナはぺろりと小さく舌を出す。
「ごめんごめん、ついね。でも傑作だったのはホントなのよ」
「これからあいつらが見せる「ざま」とどっちが笑えるか、あとで聞くのを楽しみにしておくよ」
 アルラトゥは通信を切り、砂に紛れて魔力刃を伸長した。視界の端からリブシェがしめやかに飛び出すのを確認し、こくりと頷く。リブシェもアイコンタクトを返し、囮役に加わった。
「わたくしどもを見くびってもらっては困ります。敵を逃さぬためのパラドクスなら、こういったものもあるのです」
 リブシェはこれみよがしに白荊の種を誇示し、それを擲とうとした。地に落ちれば、種子は即座に芽吹き白の如き檻を生成する――そう、地に落ちれば。
「かかったな」
 アンティゴノス・イアペトゥスは勝ち誇った。口元には、悪辣で歪んだ笑み。
「足止めのためにパラドクスを出してくると読んでいたぞ。地面にはすでに、我々が特別に調合した猛毒を仕込んである」
「植物など芽吹くものか。ここに誘い込まれた時点で、貴様らは終わりだ」
 種子は地に落ちた。だがすでに地を冒していた毒素は、白荊の種を腐らせてしまう。病んだ地面に苗が実ることはないのだ。これがお前たちの末路だと言わんばかりの、げらげらという耳障りな哄笑……!

「いかん、キャメラを忘れた」
 モロクは残念そうに顎を掻いた。
「この勝ち誇った顔が歪むのは、さぞかし見栄えがあろうになあ」
「……何を言」
 訝しむ声は横合いからの猛烈な斬撃で遮られた。というよりもその首を刎ねられたので、もう二の句が継がれることはないのだが。
「さあ、ショータイムだ! 一気に押し通るよ!」
 斬撃はアルラトゥによるものだ。潜んでいた場所から一気に魔力刃を延ばし、横斬撃を繰り出したのである。意識外からの一撃が、文字通り亜人の命を刈り取った!
「な!?」
 驚愕がさらに一手遅れを生む。土から目に見えず立ち上る毒素でうずくまっていたはずの桐梧は、次の瞬間亜人の目の前にいた。瞬間移動と見紛うほどの、先の突撃よりも疾い接近……!
「ちまちま毒使うなんざ、随分とお優しいこった」
「がッ」
 かと思えば桐梧は蛇のようにしなやかに亜人に絡みついた。喉笛を鷲掴み、腕を起点にぐるりと回転。背後を取りながら両腕の自由をもう片手で奪い、喉笛を掴んでいた手はヘッドロックに移行している! あまりにもなめらかなグラップリング!
「どうせ学ぶなら、もっとえげつねえのにしとけよ。そうさなたとえば……」
 桐梧はあえてすぐにはとどめを刺さなかった。後ろからがっちりと頭部および両腕を固定されたアンティゴノス・イアペトゥスは、顔を逸らせずその光景を目の当たりにする。

 つまり、ディアナとハーリスが加わり、めくるめく連撃で同族を追い詰めているところを。
「こいつら、どこに潜んでいた!?」
「罠をかけるときには、それ以上に罠にかけられることを警戒しなきゃダメよ? ま、いまさら遅いでしょうけど!」
 ディアナは軽く言い、無造作に射撃する。弾丸は舞い上がった小石にぶつかって反射し、後から攻撃したはずのハーリスの攻撃に合わさって命中するのである。
「豊穣の神にして軍神たるセベクよ、お力添えを」
 ハーリスは駆けながら口訣を唱えた。スピードが一瞬前の空間に像を焼き付かせ、ハーリスを二重にダブらせる。眼光は夜明けのハイウェイに描かれたテールライトのように、淡く輝いていた……怒りに。それは熾火を思わせる、静かで苛烈な色だ。
「悪逆たる者を打ち砕くため、恐るべき牙の力をお貸しください……!」
 煙幕代わりに舞い上げられた土が、飛沫のように拡散してハーリスの肺腑を脅かす。呼吸を止めても、病んだ土は肌に触れるだけで毒素を浸透させる。突っ込むのは自ら負傷しに行くようなもの。耐えられるはずがないのだ。少なくとも、アンティゴノス・イアペトゥスが知る限りは!
「な、何故だ、何故一切足を止めない……!?」
「毒の苦痛など」
 ハーリスの両手が霞んだ。二刀一対の剣は蛇の牙を思わせる鋭利な軌道を描き、袈裟と逆袈裟を同時に裂く。びりびりと、しなやかな布を力任せに引き裂くような音がした。もっともバツ字に切り裂かれ、脳天を撃ち抜かれて即死するのは亜人なのだが。
「今の私を止めるには、痛痒にすらなりません」
 それは斬撃とは言い難かった。儀礼剣の鋭さではなく、強化された腕力で敵の骨肉を圧し潰しバラしているからだ。鰐神セベクの祝福は、かくも無惨なる剛力を術者にもたらす。
「こいつ、動きが決断的すぎる。理解出来ん……!」
「よそ見はダメよ。こっちを見て?」
 ディアナは蠱惑的な声で囁いた。ぞくりと本能的な恐怖を抱いたアンティゴノス・イアペトゥスは、飛び退って距離を取ろうとする……警戒は正しいが、ディアナに意識を取られた時点で詰んでいる。飛び退ったその背中を、ありえないはずの白荊の檻が遮り、棘が食い込んで苦痛を齎した。
「ぎ、っ!?」
「竜の財宝、限りがあると思って?」
 リブシェは嘲りに目を細めた。種子はびきびきと金属質な音を立てながら反自然の蔓を延ばし、とぐろを巻く世界蛇のように戦場を徐々に囲んでいる。鋭角的に斜めに突き出したそれらは、檻というより馬防柵に近い。もはや逃れるための後背が、敵にはなかったのだ。
「毒で土を病ませてしまうというなら、その毒も食らって蔓延らせるまで。
 敵の動きに気を取られて手をこまねいている時点で、わたくしには後手も後手よ」
 通常、大地が恵みを与え種子を育ててやる。竜の財宝はそれに反する。種は獰猛に土を喰らい鎌首をもたげるのだ……のたうつ荊が竜の尾を思わせるのは錯覚ではあるまい。

 竜。今一人の竜――つまりモロクは。
「さて、次は何を出す? 毒か? それともこの粗雑な仕込み刃で吾輩らを分断するか?」
 モロクはひしゃげたトラバサミめいた罠をぽいと放り捨てた。それは万が一に備えて敵が用意していた代物である……今はもうただの鉄屑だ。
「バ……」
「然り。万策尽きておるぞ」
 モロクの爪先にばちりと電光が火花を散らした。
「しかし案ずるな。人々が受けた屈辱の礼、そう簡単に死なれては返し尽くせぬ。"死ぬほど"おかわりを用意してあるのでな」
 バチ、バチバチ……それは死刑囚に見せつける電気椅子のデモンストレーションだ。完全詠唱で火山の噴火の如き威力を実現しうるなら、逆にギリギリで生かさず殺さず、臓物をじわじわ焼いていく火力に留めることも容易。猫に追い詰められた窮鼠の如く、土壇場で覚醒して牙を剥くような生意気な輩には、アルラトゥの刃かハーリスの牙が即座に振り下ろされ可能性を断つ。力と智慧が合わさった連携は水も漏らさぬ。いわんや亜人をや。
「後退するふりをして罠にかけようだなんて、脳筋と欲望直結がウリの亜人にしては理知的な方だけどね」
 アルラトゥはとんとんとブレードガンの背で肩を叩いた。
「けど、別に感心なんかしてやらないし、お前たちの強みを生かさせもしない。全部ご破算にして、その上で思い知らせるよ」
「ぐ、ぎ……シャアア!」
 びきびきと毒の爪を延ばした亜人が、横合いから襲いかかる。アルラトゥはそちらを見もせずに体捌きで躱すと、小柄な体躯を生かしたショルダースルーで敵を宙に放り投げた。敵はなおも爪を振るい、毒液を遠当てめいて飛ばすが、返す刀の魔力刃が接触前に焼き尽くす。横薙ぎは刺突に繋がり、亜人が地面に落ちることすら許さず射抜いた。
「ほら、追い詰められたらこれだ。結局どこまでいっても、ただの亜人なんだから」
「ああ……つまりあなたたちは、最初から"そう"じゃなかったんだ?」
 ディアナは寂しそうな、だがどこか嬉しそうな声で嘆息した。
「それも悪くないわね。だってつまり、私も一杯葬ってきたから「軍人」になったってことだもの」
 両手で頬を撫でうっすらと微笑むさまは、アンティゴノス・イアペトゥスをして震えを起こさせるほどに恐ろしい。
「ねえ――また一歩、私を「軍人」にさせて頂戴?」
 すでに罠を罠が覆っていた。荊の檻をこじ開けてでも逃げようとした個体は、ディアナが仕込んでいた落とし穴に足を取られ、無造作に前から歩み寄るハーリスに恐怖しながら引き裂かれて死んでいる。

「……な? いい教科書になりそうだろ」
 脂汗を流す亜人に、桐梧がにこやかに語りかけた。ぴしりと、丸太のような二の腕が緊張し締め付けを増す。ひねった手首ががっちりと角を掴み、根本からへし折った。頸動脈を締め上げられたアンティゴノス・イアペトゥスは呼吸を求めてぱくぱくと魚のように口を開けざるを得ない。毒素をたっぷり含んだ角が、ゆっくりと口の中に押し込まれ、先端が舌をぷつぷつ貫く。
「ぐ、が……がぼ、ぼぼぼ!!」
「残念だよな。生かしようがねえんだ。ま、自業自得ってやつだな」
 めりめりと顎が外れ、頬が裂ける。毒と痛みで痙攣する亜人の顔に、ハーリスに引き裂かれた同胞の返り血がべしゃりと降り掛かった。
「……悪逆には悪逆を以て報いるべし。それが、私たちの"復讐"です」
 声音は意外なほどに落ち着いていた。透明な色を思わせるくらいに。
 ディアボロスに歪な愉悦も高揚もなかった。彼らの戦いに悦びはないし、アンティゴノス・イアペトゥスがそれを真の意味で理解することもない。奴らの抱く怒りと、復讐者たちのそれはあまりにも乖離している。
 おそらく勝敗は、その時点で決していたのだろう。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​
効果1【完全視界】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【パラドクス通信】がLV2になった!
【防衛ライン】LV1が発生!
【狐変身】LV1が発生!
【土壌改良】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【ドレイン】LV1が発生!
【ダブル】がLV2になった!
【反撃アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV3になった!

「似合いの死に様だな」
 『暴威を振るう者』セヘジュは屈辱への怒りも、部下の死に対する悲しみなど欠片もなく、淡々と言った。
 道端に転がる石を眺めるような、至極どうでもよさそうな声だ。実際そんなものなのだろう。

 空虚だ。
 セヘジュは怒りを燃やしている。ともすれば復讐者の敵愾心に匹敵、あるいは凌駕しえぬほどに。
 しかしそれは熱量がない炎だ。何に対して、何のために怒りを燃やしているかも曖昧なのかもしれない。
 アヴァタール級とはその名のごとく写し身である。つまり「この」セヘジュが怒るのは「我は暴威を振るう者である。ゆえに怒るのだ」とでもいうようなもので、根拠や求める目的がない。怒るから怒る、そういうどん詰まりで無意味な憤怒だった。ただ己と敵と、敵でないすべてを傷つけるだけの炎。なるほど暴威と言うにはある意味正しい。

「死んでもらうぞ、ディアボロス。我が復讐のために」
 魔力が励起し、緋色の髪を波打たせた。その瞳は寂々としていて、燃え尽きた炭のように昏い。
 ……だがその炎は、強い。理由も目的もないからこそ、何物をも焼き尽くす。慢心して挑める相手ではなかった。
アルラトゥ・クリム
焼べるべき燃料も無く燃やす復讐の炎か…
無軌道な魂で力を扱うのは、お勧めしないな。

まあ尤も、私も割と似てるんだよね…
私の手の中には何も無い。家族も友達も相棒も、愛するべき物など何一つ。
でも、求めても何も掴めないなら…この手で与えて取り戻そうと思ったんだよ。
それが私の『復讐』なんだ。ある意味、この世界に対するね。
アヴァタールに聞いても仕方ないけど…
貴方は全てを焼き尽くす復讐の先に、何を得たいんだろうね?
さあ、ショータイムだ。付き合ってあげるよ。貴方の復讐とやらに。

白銀の聖鎧を纏い成長した姿(ネメシス)を取り魔力を高めてPDを起動し
世界その物を侵蝕して、敵が発生させた雷雲にハッキングを仕掛け
情報収集して雷撃の制御を看破した後、そのプログラムを一部書き換え
雷撃を自身と敵双方に降り注がせて
実ダメージと同時に、多少なりとの精神的衝撃を与える様試みる

これが世界を侵蝕して改竄する、魔法使いの趣向。
自らをも焼く復讐の雷…洒落てるでしょ?

アドリブ&絡み連携歓迎・使用可能残留効果全使用


菱神・桐梧
上等、上等。
どうせ殴り合う相手だ、まだるっこしい理由なんざ要らねえよなァ。
目的だの何だのは二の次……結局の所、重要なのはやる気があるかどうかさ。
さあ好きなだけ掛かって来な……遊んでやるぜ!

ダッシュで距離を詰め接近戦だ
炎でこんがり焼かれんのは嫌だしな、ハンマーを盾に身を覆い一気に突破しちまおう

折角の殴り合いで下手に逃げられるのは困る
ガンガン煽ってキレ散らかしてもらおうか

気に入らねえ手下に使いっ走りと来たら
そりゃ面白くは無えだろうよ
だがまあ、お似合いだぜ?
俺達が居なけりゃ、他所へ当たり散らすしか出来ねえ奴にはな

さあさあ余所見はしないでくれよ?
俺はお前をぶん殴りに来てんだからな
しばらくは付き合ってもらうぜ

温い炎……と言いたいとこだがそう甘くも無えか
持ってるもん全部ぶん回してパラドクスをお見舞いだ
手ぶらになるまでに奴の炎を吹っ飛ばしゃあとは一撃ぶち込むだけだ

ま、俺には何の因縁も無えしな……所謂繋ぎ役ってやつだ
楽しく削り合いと行こうじゃねえか!


●たったひとつの冴えた応報
 魔法使い、魔術師、魔道士……形はどうあれ、そう呼ばれる者たちが肉弾戦に不向きだというのは、カリカチュアされた虚像のイメージに過ぎない。真に秘奥を究めた者はむしろ遠近をカバーし死角を持たないものだ。魔なる一つの法を以て世界を統べるからこそ魔法使いと云う。

 セヘジュと名乗るモノが統べし法は、それはまさしく暴威である。炎を生み雷を落とし光を刃とする、どの術も災害の域にまで高められている――同じ「魔法使い」たるアルラトゥ・クリム(現代の魔法使い・g05088)は、皮膚感覚によってそれを確信した。たとえるなら、剣術を究めた達人が、立ち会わずして彼我の力量差を悟り悟らせるように。
「……無軌道な魂で力を扱うのは、おすすめしないな」
 その上で、彼女は「助言」した。術を以て法則を従え、理を以て世界を解き明かす使い手の言葉は、単なる言葉以上の重みを持つ――ようは、「自分が助言する側だ」と示したのだ。
「我を諭すか。思い上がった小娘だ」
 セヘジュは端的に吐き捨てた。プライドばかりが高い小物のように苛立ったりはしない。さりとて口だけの俗物と狭い見識で見下しもしない。じわりと滲み出るような殺意が色を増し、空気をさらに張り詰めさせる。「殺す」というまっすぐで確定敵な殺意が、質量を得そうなほどに濃くなる。アルラトゥのこめかみを一筋の汗が流れた。

「……そう邪険にしないでほしいな。私的には似た者同士のつもりなんだよ」
 アルラトゥは不敵に微笑んだまま言った。
「ただ、あなたの復讐と私の『復讐』はやり方が違う。それだけだよ」
「復讐に種類などない。すべて焼き尽くし打ち払い切り刻んで滅ぼす。それだけだ。それこそが復讐だ」
「あなたは、その先に何も求めてはいないんだね」
 アルラトゥにとっての復讐とは、ただ求めて破壊するのではない。
 己の手にないものを、奪うのではなく与えることで取り戻す。簒奪によって滅亡の絶対零度に迫った人類史に、己の熱を与えて生かそうとする。彼女の戦いは常に未来に向かって前進しているのだ。

「ハッ。俺にとっちゃ、目的なんざどうでもいいさ」
 バキボキと指を鳴らしながら、菱神・桐梧(喧嘩屋・g05613)は野卑に笑った。
「どうせ殴り合う相手なんだ。まだるっこしい理由は要らねェ。やる気があるかどうかが重要だろ?」
「それも一つの在り方だろうね。私もそのぐらい割り切れたら楽なんだけど」
「なァに。こうして野郎をブン殴るって決めてんだから、十分だろ」
 桐梧は片頬を吊り上げるように、アルラトゥに笑いかけた。彼の言葉通り、その評価基準は「戦う気概があるか否か」……ならば、与えることで取り戻そうとするアルラトゥの気概は、仲間として認めるに足るものだったということだ。肩を並べ立つのがその証。余計な言葉がないからこそ、まっすぐな信頼と敬意がアルラトゥを励ましてくれた。
「そんなに復讐とやらがしてェならいくらでもかかってこいよ。"遊んでやる"からよ!」
「……」
 セヘジュの殺意が増し、奴の周囲がどろりと飴のように濁って見えた。すさまじい重圧がもたらす錯誤だ。
「上等、上等。そうこなくっちゃあな……!」
 桐梧は頬を垂れ落ちた汗を舌で拭った。じりりと前足に体重をかければ、それに応じて空気は張り詰めていく。

 はたして三者の間に流れた静寂はどれほどか。数秒か、数分か――当事者にとっては数時間にも感じられただろう。
「……さあ、ショータイムだ! 付き合ってあげるよ、あなたの復讐とやらに!」
 アルラトゥは高らかに言い、一瞬にしてその背と銀髪とを伸ばした。身を鎧うは聖なる白銀の鎧!
「いいだろう。せいぜい徒花を派手に咲かせろ!」
 セヘジュの魔力が文字通りに爆発する。三者の姿は霞の如くかき消え、そして砂嵐が戦場を包み込んだ!

 帳のように膨れ上がった砂嵐は、二度目の烈風で切り裂かれ霧散する。それは、空気を灼くほどの熱量を孕んだ炎の飛礫と、天から地の底までを穿つ神の矛じみた天雷が起こした衝撃だ。
「ハッ、この程度ぬるい……なんてのは、ちと楽観が過ぎるか!」
 炎熱球体は、桐梧の動体視力をもってしても完全には追いきれないほどのスピードで荒れ狂う。それ自体の熱量は無論のこと、球体の移動で起こる灼熱を伴った衝撃波も破滅的な威力を宿していた。触れれば蒸発粉砕必至!
「気に入らねえ手下に使いっ走りと来たら! そりゃ面白くはねえよなァ!」
 ごう、ごうう! とすぐそばを通り過ぎる炎熱球体を勘で躱しながら、桐梧は接近を試みる。口から飛び出すのは痛罵だ。
「だがまあ似合いだぜ、俺たちがいなけりゃ他所へ当たり散らすしか出来ねえ奴にはなッ!」
「……ほざけ、ディアボロス!」
 炎熱球体がぐんと急なターンをした。桐梧を跡形もなく滅殺せしめようというのだ、逆に言えば彼は動く必要がない!
「そうこなくっちゃあなあ!」
 ハンマーを振るう。質量と炎熱がぶつかり、ハンマーはほぼ半分が溶解。残った部分も赤熱し融けているそれを、桐梧は手首までが灼けるのも構わず投げ捨て、次の武器を振るう。衝突、融解、衝突融解衝突融解! 一合ごとに皮膚が灼け肉が爛れる! だが彼は止まらぬ!
「そうだそうだ、よそ見はすんなよッ!」
「……ッ!」
 単純な腕力で魔術に対応しようという不遜。それこそが魔術師の逆鱗に触れた。

 彼の怒りを表すかのように、天雷は激しさを増す。雲は戦場を覆い、つかの間の夜を齎していた。
 ガガァン! と世界を白黒に切り裂くたび、炎熱球体を躱して右翼から接近するアルラトゥの影が躍動的に浮かび上がる。雷は当然桐梧とアルラトゥに向けられている……だがセヘジュは本能的な危険を感じ、飛び退いた。ガガァン! その足元を爆ぜさせる天雷!
「これは……!?」
「"イグジスト・ハッキング"」
 左手を突き出したまま、アルラトゥは不敵に笑った。
「これが、世界を侵蝕して改竄する魔法使いの趣向――自らをも灼く復讐の雷、洒落てるでしょ?」
「我が術式を改竄したのか、小娘ェッ!!」
 ガガァン!! アルラトゥの真上から降り注いだ極太の天雷は、しかし彼女の1メートル横に着弾! バチバチと飛散する火花が、砂嵐になびく銀髪を焦がす! ガ、ガ、ガ、ガ、ガガァン!! もはや天雷は誰にも制御できぬ暴君と化した!
「言っただろう? ショータイムだよ」
 凄まじい笑みを浮かべたアルラトゥは、素早く戦場を跳び周りながら言い放った。
「この戦場が舞台で、私たちみんなが役者だ。リスクは等価でなきゃ!」
「ふざ、けるなァッ!」
 2つ目の炎熱球体がアルラトゥを追う。アトランダムな雷撃は双方に執拗な回避を強いる。つまり球体制御にフルリソースを避けない!

 ……ならば、魔の術理なくとも肉体の術理を究めた桐梧がこの場では紙一重で勝る!
「今なら捉えられるはずだよね!」
「当然だァ!」
「……!」
 ガァン……銅鑼の如き轟音がスローに聞こえる。桐梧は雷の命中を承知で踏み込んだ。拳が落ちていく軌道上に、セヘジュは飛び込まざるを得ない。即席の連携にしてはあまりにも!
「よそ見はすんなって、言ったろうがッ!!」
「がッ!!」
 雷撃の残滓を纏った拳が脳天を叩きのめす! 頬一枚まで迫った炎熱球体は制御を失いスクリュー回転して空中で爆散! 桐梧の左拳は骨が露出していた。
「さあ、まだまだ楽しく削り合いと行こうぜ」
「舞台の幕が降りるには、早すぎるからね」
 二人は頷き合う。包囲は、完成しつつあった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【無鍵空間】LV1が発生!
【建物復元】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV4になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!

ニーニ・ニニ
…復讐のために生きて、復讐のために怒りを燃やして、復讐のために命を奪うのですか。
クロノヴェーダは、強くて、怖くて、恐ろしいと思っていましたが。
ぼくには、きみが……迷子の子供のような。とてもとても、寂しい人に見えるのですよ。
その復讐心を鎮める術が無いのなら、せめて。
きみが、きみの大切なものや、きみ自身を傷つけてしまう前に。
ここで、止めます!

ぼくも多少は【魔術知識】がありますので、
相手の動きや魔力の流れ等から、行動を先読みして。
危険な予兆があれば皆に伝えて警戒を強めたり、
状況に応じて適切な対処や連携が取れるように【臨機応変】な行動を心掛けますね。
相手の攻撃は、ペペンと力を合わせて【氷雪使い】の【魔力付与】をした【結界術】の盾で防ぎます。
なるべく多くの味方を守れるように頑張りますね。
ちょっとくらい痛くても、怖くても、泣かない、です!


飛び立つハーリスには、とっておきのおまじないを。
翼が、心が、折れないように。
痛いの、痛いの、とんでいけ。
ハーリスの想いが、言葉が、どうかセヘジュに届きますように。


モロク・アルデバラン
かの御仁の御子。なるほど、風格、瞳の色に面影がある。
身を焦がすほどの憎しみ、苦しみ。吾輩には理解してやることはできぬ。
汝を挫くほかにやり方を知らぬ。許せ。

秘術「ラムル・サファン・カルトゥーナ」により周囲に【結界術】および【防衛ライン】を展開。守りを固める。皆無事に帰還してこそ勝利であろう。
さらに【飛翔】しつつ結界の刃とエネルギー弾で乱戦に持ち込み、かく乱。他の者の攻撃とタイミングを合わせることでかく乱の効果を高めていきたい。魔力の高まりを感じれば率先して妨害するのだ。

如何に結界と言えど限度はある。かく乱攻撃の最中も常に結界の強度を気にしつつ、直撃は避けるようにしたい。多少の傷は歯を食いしばって耐える。ハーリスの嘆きと痛みに比べればなんてことはないのだ。

さて本命であるぞハーリス。やってやるのだ。吾輩も祈ろう。
苦難を乗り越える風よ、友へ。


ハーリス・アルアビド
ああ、やはり…我がもう一人の主、大切な御子よ…主ばかりでなくあなたまでもがクロノヴェーダに…。
御子がまだ幼い頃に死に成長を見守ることも叶わなかった私に思う資格はないかもしれませんが、何故このような…。

しかし欠片では答えることもできないでしょう。今は民を守るためあなたを倒します。
天空の神ホルスよ、お力添えを。我が御子を民の血で染めぬため、あらゆる脅威にも揺るがぬ翼をお授け下さい。

皆さんのお力もあれば何を恐れることもありません。連携を取りながら最高速度で【飛翔】し御子に接近戦を仕掛けます。
【残像】で攻撃を別方向へ誘導し、直撃を受けて致命傷を避け速度と【忍耐力】で突貫します。

あの佇まいから予想するに、魔法を突破し接近された時の対策もなさっているでしょう。
直前で【残像】を残し軌道を変えて死角からの不意打ちに見せかけ、正面からの【捨て身の一撃】を全力で叩き込みます。
…幼い頃は奥方様にそっくりでしたが、成長なされると主にも似ていらっしゃるのですね。


鳴・蛇
大荒舊錄を使い、四翼大蛇の変貌する

「无明火(怒りの炎)が旺盛な敵だのう。理由なきの怒火は、他人にとっても、自身にとっても、危ういもんだぞ。」
悪風を巻き起こすの同時【飛翔】で昇空。その悪風で飛んできた火の雨を吹き飛ばし、急速に揺るぎなく落ちてきた三日月は悪風と共に吹き荒れる烈炎で焼き尽くす。
仲間へ落ちる雷光は巨大化した身体で受け止め、【忍耐力】で耐える
こうして仲間を援護しつつ、【完全視界】を使って迅速かつ確固と敵に向かって突撃

敵に近づく後
「焼けた空に轟く雲、そして鋭い落月か、まるで神罰みたい光景だのう。だが、汝が信仰する神々は既に我らディアボロスの手で落ちた…偽物の神罰など、我々の前進を阻むことができる訳ないぞ」
と挑発しながら烈炎で身を包み敵へ突き飛ばす

「ハーリス!道は、切り開いたぞ!後は…進むだけだ…」


ディアナ・レーヴェ
(ハーリスの主さんと、主の奥さんとの間に生まれた可愛い御子さんの話。旅団でも度々聞いた)
(聞きながら、私はいつも内心思っていた。「それってあなたにとっても子供みたいなものね」って)

死に別れた子の成長した姿を見る奇跡と、実際別存在とはいえそれを葬る皮肉――
どうしてか、想像すると私まで気持ちがぐちゃぐちゃしてくる。
薄く微笑んで誤魔化すけれど。


まあ、ともあれ!

数を生かして、囲んで、同時に仕掛けて、避けにくいよう確実に。

嵐みたいな炎は息を止めてただ耐えるわ!
肺と脚さえ残れば軍人は倒れない、そういう根性で。

舐めるように広い炎魔術は近づくのも一苦労だけど、
怒りを込めて狙う対象がこうも多数なら――ほら、そこっ!
炎の間隙を看破し【Rat】、ハーリスが接近できるよう支援するわ(【完全視界】利用)

そう。彼はやるべきだ。
他の誰でもなく、家族だからこそ。

…。散り際のセヘジュはどんな顔をする?
空転する物語の続きは、もうおしまいよ。
ねえ。
楽に、なれた?

ハーリス。手紙、また書きましょうよ。
御子さんにも、主さんにも。


音無・サカハ
これが宿敵、これが宿命か
分からない、初めてだから分からないけど、ここで行くしかない、彼の力に成らないといけない

彼のために、ここは皆の力を合わせて、道を切り開く
俺は他の皆のように、ここで活かれるスキルはもっていない、だったらここでお前進むしかないだろ。

まずはここで契約獣のプロミネンス・ドラグナーを【召喚】、【火炎使い】と【斬撃】を使い、攻撃しならが一緒に前進、傷など上等、これが俺たちの役目だ

「ここで道を作る…!!」

新しいとっておきを見せてやる、ここで未来を繋ぐ無垢なる刃(プロミネンス・パニッシャー)を使用、巨大のエネルギー剣を作成、一発だけでもいい、当たればいい!
俺たちはあくまで敵の注意を引くための餌に過ぎな、本命はあの人だ

さぁ、行けハーリスさん、今回の主役は君だ…!勝って!勝って、皆の所に戻って来い!


セリュカド・ネア
▼アドリブ歓迎
【普段は】一人称セリュ、二人称~くん
【偉い人には】一人称我、二人称~様

▼この人がセヘジュ、メルセトラー様の御子さん…ちょっと目元が似てるかもぉ。ハーリスくん、どう?
人に苛立って、味方に苛立って、自分にも苛立っているのかなぁ。
セリュ達になら苛立っても、復讐しても良いよぉ…それでも止まらないから。

▼他の皆と足並みを揃えて、同時に仕掛けるよぉ
パラドクスを使って風使いの力を込めた翼と尾を大きく一振りして竜巻を起こして牽制、みんなが接近する助けになれば良いなぁ
竜巻を起こすと同時に【飛翔】で空へ行って、翼を広げて目立つ形でセヘジュくんを見下ろす形
追加で竜巻を起こしてとにかく牽制、みんなと連携して嫌がらせして行こぉ
反撃の雷は避けられそうにないし、撃ち落されるかも知れないけどぉ…それも織り込み済み
セリュはこれでも、忍耐力はある方だし…それに本命はセリュじゃあ、無いからねぇ…?

▼このセヘジュくんは欠片ってことだよねぇ、これからも大変そ…。
…でも、ハーリスくんなら成せるよぉ。一人じゃないもの。


●復讐の終わり、終わらぬ戦い
 セヘジュは囲まれていた。7人のディアボロスに。
 怒りのままに魔力を奮い荒ぶる力は凄まじい。だが、同時に目を曇らせる……己を確実に滅ぼすために盤石の布陣を整えたのだと気付いた時にはもう後の祭りだった。
「……ふん、そうまでして亜人どもを滅ぼしたいか。あるいは我を、か?」
 セヘジュは冷静さを取り戻し、傷を抑えながら不遜に振る舞った。
 クロノヴェーダである以上、その行動はすべてが人類史と敵対し、人類を虐げる方へ向く。だが個人として何を思うかは別の話だ。
 醜悪で浅はかな亜人に対して、セヘジュが抱くのは侮蔑と屈辱。ディアボロスたちの苛烈な敵意は、従う身でありながら「ざまあみろ」と言ってやりたい気分だった。

「……ええ、そうですとも」
 黒髪の男……ハーリス・アルアビド(褪せる事を知らない愛・g04026)が一歩進み出し、肯定した。
「あなたを……あなたをこそ滅ぼすために、私はここへ来ました」
「……?」
 セヘジュは訝しんだ。ハーリスの言葉は揺るがぬ敵対を示している。それは虚勢や偽りでないことが、まっすぐとこちらを睨み据える眼差しから感じられる。

 だが、なんだ?
 何故あの男は、己をああも慈悲深くそして哀しい瞳で見ている。
 侮蔑。
 憤懣。
 あるいは憎悪。
 そういったどす黒い感情ならばわかる。それはセヘジュを駆動させる潤滑油であり動力源でもあるからだ。
 ディアボロスとは復讐者なのだという。何を以て我々に復讐するつもりなのかは知らぬが、奴らがそう名乗るからにはそうなのだろう。
 事実、先ほど己を追い詰め足止めした二人は、そう名乗り同時に納得させられる敵愾心を燃やしていた――己の心に燃えるものとは随分違っていて、それが腹立たしくもあったが。

 だから、ディアボロスが復讐者であることに疑いはない。
 しかしこの男は……何かが、違う。あの表情はまるで、敵ではなく……。

「……ふう」
 ディアナ・レーヴェ(銀弾全弾雨霰・g05579)の嘆息と、剽げた笑みがセヘジュの思考を遮った。まるで何かを押し殺しているような薄い笑み。妙に癪に障る。
「あら、随分睨まれてるわね。私、あなたの気に障るようなことしちゃったかしら?」
 ディアナは肩をすくめ、わざと神経を逆撫でするようなしらばっくれ方をした。
 奴が嘲り邪険にしていたとはいえ、手勢を屠り此処まで追い詰めたのは自分たちである。敵として殺意を抱かれるのは当然のこと。「私はわかった上であなたを挑発しているのですよ」と顔に大きく書いて、おっかなさそうに身を震わせる。セヘジュの疑問は煮えたぎるような怒りに塗り潰され、「らしい」殺意がディアナを貫く。実際、恐ろしくて仕方がないのは本音のままだ。

(「言えないわよね、私の気持ちまでぐちゃぐちゃしてるなんて」)
 わざとらしくついたため息は、自分の気持ちをリセットしてスイッチを切り替えるためのちょっとした儀式。
 これは数ある戦いのなんてことない一つに過ぎず、敵は――少なくとも己にとっては――撃破すべきクロノヴェーダに過ぎない。何も変わらないし、結果が異なることもない。
「確実に倒させてもらうわ。数を生かして囲んで、みんなでね」
 ちらりと、ディアナの視線が仲間たちを見やった。
「……復讐のために生きて、復讐のために怒りを燃やして、復讐のために命を奪うだなんて」
 ディアナの視線を受けたニーニ・ニニ(雪陽の子猫・g08923)が、やはりセヘジュには理解しがたい謎めいた表情で、何やら知らぬ感情を込めて呟いた。
「クロノヴェーダは、強くて、怖くて、恐ろしいと思っていましたが……ぼくにはきみが、迷子の子供のような、とてもとても、寂しい人に見えるのです」
「寂しい、だと?」
 セヘジュは眉根を寄せた。寂しい?
 奴は知らぬ。知らぬし、わからぬ。ニーニが声音に籠めた感情を、その切なげで寂寥感に溢れた表情をなんと呼ぶのかを。
「その復讐心を、鎮めるすべがないのなら、せめて――」
 暴威を振るう者は、哀愍を知らぬ。そんなものはとうに捨て去ったがゆえに。
「ここで、止めます」
 復讐者でありながら……いや、「だからこそ」というべきか……大切なものを己が意図せず傷つけてしまうことの悲しさと愚かしさを知る少女は、はっきりと「敵」を見据え、言い放った。

「理解できぬのであろう?」
 続けて。モロク・アルデバラン(誇り高き砂暮らし・g01160)が出し抜けに言った。
「彼らが何を思い、何を抱き、汝をどう見ているのか」
「……」
 沈黙は肯定を意味する。答えてやる義理などセヘジュにはない。そう言いたげな酷薄な眼差しを、モロクは砂漠のように乾いた瞳で受け止めた。
 乾いた、というと、無感情で虚無的なものを想像するかもしれない。しかし違う。
 砂漠は乾き過酷な土地だが、その分腐敗が存在しない。高熱と極低温の繰り返しは微生物さえ滅ぼすからだ。
 つまりモロクの眼差しは、吹き荒ぶ砂のように厳しく、だが悪意や昏い影を抱いてはいなかった。そういう眼差しだった。
「吾輩も知らぬし、理解できぬよ」
 モロクは平坦な声音で言う。
「汝の身を焦がすほどの憎しみ、苦しみ。侮蔑する亜人に従ってでも己の復讐を成さんとするその執念。
 ……皮肉なものだ。その風格と瞳の色に面影を確かに感じるというのに、こうも別物であるとは」
 嘆息は無念に満ちている。己を嘲り貶める皮肉や挑発のように聞こえるが、そうではないらしい。セヘジュはなぜかそれが理解できて、だから余計に謎が増えた。奴は何を残念がっている?
「ゆえに吾輩は、汝を挫く」
 きっぱりと、竜は告げた。
「ほかに、やり方を知らぬ。許せ」
 その言葉はセヘジュに向けられてはいたが、セヘジュは己に向いた言葉ではないような奇妙な感覚を抱いた。

 わからないならば、どうする? ――簡単だ、憎めばいい。
「どうあれ」
 セヘジュは滴るような声で言った。
「貴様らは我を阻む。であれば滅ぼすのみ。それだけだ。それだけでいい」
「おう、无明火が旺盛な敵だのう」
 鳴・蛇(墓作り手・g05934)はぐるぐると喉を鳴らした。笑っているような、憐れんでいるような、両方のような。
「要らぬ世話かもしれぬがひとつ忠告してやろう……理由なき劫火は、他人にとっても自身にとっても危ういもんだぞ?」
「それは好都合だ」
 悪鬼は鮫のように嗤った。
「つまり我が滅ぶ前に、貴様ら全員を消し炭に出来るということだろう」
「……なるほど、なるほど」
 蛇はしきりに頷いた。セヘジュという空虚な鬼の本質を、彼なりに得心したらしい。
「ああ、やはり汝はここで斃さねばなるまいよ。我々の任務がゆえ、というだけではなくな」
 瞳をきゅうと細める。爬虫類が目を細めるのは、決まって獲物を逃すまいと捉えた瞬間だ。
 やはり同じだ。確かに己に向けられているのに、己を向いていない奇妙な感覚。セヘジュは無性に腹が立った。
 クロノヴェーダとディアボロスには絶対に埋まらない断絶がある。その中でも、セヘジュは「復讐を為すモノ」という共通項において"近い"存在と言えた。だからここまで腹が立つのか? それもあるかもしれない、しかし何かもっと別の……思索は唐突に終わる。

 無駄だからだ。
 ディアボロスの内心を窺い、考え、理解しようとする試みがそもそも無駄である。
 どのみち殺す。向こうも滅ぼすつもりで来ているのだ。
 何をいちいち言葉に耳を傾け、思索している? わけがわからなさすぎていよいよ己まで狂ったか?
「くだらん」
 セヘジュは吐き捨てた。籠められた怒りのあまり、声音自体が陽炎をどよもしそうなほどに、殺意の熱を孕んでいる。
「人に苛立って、味方に苛立って、自分にも苛立だっているのねぇ」
 セリュカド・ネア(睡の錬金術師・g08767)は悩ましげな表情を作った。
「いいよ、もっと苛立って、殺意を抱いて、憎んでもぉ。復讐したって構わないから」
 眠たげな瞳を半ば伏せ、ふにゃりと微笑む。赦す者の微笑だ。

 だが強い……そう、とても強い意思を秘めていた。半分だけ開かれた瞳は、煌めくほどの堅く気高い覚悟と信念を光らせる。
「それでも、止まらないよ。だから、セリュたちにならどれだけ苛立っても」
「……ふざけるなよ」
 セヘジュの身体から噴き出す魔力が、その髪をぶわりと膨らませた。
「揃いも揃ってわけのわからないことをべらべらと並べ立て、挙げ句に我を下に見る。どこまで小馬鹿にすれば気が済む、ディアボロスども……!!」
「……っ」
 音無・サカハ(過去を探す旅人・g10149)は、瞬間的に叩きつけられた殺意と憎悪と憤怒に呑まれかけた。
 サカハは決して弱くはない。だが潜り抜けた修羅場の数、そして単一の存在としての戦闘力においてはセヘジュが上だ。なにより、目的も手段も擲ってまで憎悪のままに復讐をなそうとする虚無的な在り方は、サカハにはまさしく理解も真似も出来ない狂気の沙汰。ゆえに呑まれかけた。

 彼を支えたのは、仲間の――特にハーリスのために戦おうという、利他的な覚悟だった。
(「わからない。でも、個々で行くしかないんだ」)
 サカハは、強い。友のため、誰かのために戦おうとする時は特に。
 ざり、と両足でしっかと大地を踏みしめ、腹に力を籠めて睨む。敵を。斃さねばならぬ、滅ぼさねばならぬ敵を!


「すべて滅びろ」
 呪いの言葉は口訣に通ず。魔力が世界を歪め、現象は荒ぶるままに暴威と化した。
「跡形も残さず消え失せろ! 愚か者どもッ!!」
 まず炎が来る。灼熱の球体は、セヘジュを中心に狂い舞った。殺意になびく赤髪は、まるで己を灼く太陽の如く。であれば尽くを焼き尽くす炎の球体は、その周囲を回遊する衛星だろうか。
 はたして月光が差し込んだ。空を仰げばそこには巨大な船が君臨している。冥界より昇る月が、浚い乗せゆくべき愚者どもを睥睨していた。無数の鋭い刃が、月輪の死が降り注ぐ!
 そして稲妻である。月の船が征くは闇色の雲海。戦場を覆った全力全開の天雷は、どこへ逃れようと防ごうと確実な死をもたらさんがため、破滅を大地に齎した。

 万軍であろうと鎧袖一触に帰する。そう思わせるほどの大魔術の連打。
 セヘジュは瞠目した。雷降り注ぎ、月の刃が吹きすさび、炎荒れ狂う大地に7つの影あり。誰一人とて斃れていない――否、それどころか!
「無傷、だと!?」
「皆さん、散開してください! 空からの攻撃が激しくなります!」
 ニーニの鬨の声だった。
 全神経を集中させ、見えない魔力の流れを読む。起こりうる天才じみた破滅の波濤を先読みし、仲間が進みあるいは退くべき道を示すのである。少女とは思えない慧眼だった。
「小娘、貴様」
「怖い、ですよ」
 ニーニは燃えるような凝視に対し、震えながら『ペペン』のヒレをぎゅっと掴んだ。
「それに、痛いです――ぼくは、ずっと心が痛いんです。それでも……泣いたり、しません!」
「っ」
 少女の気迫が暴威を押し退けた。僅かな間隙をモロクが突く。エネルギー弾が散弾のようにばらまかれ、結界の刃が月輪を弾いて肉薄。セヘジュは自らも魔力を纏いこれに応じた。
「夜雲に漂う青き幻影、砂塵の楽園鎖す翼――」
「結界術か、小賢しい!!」
 ばきんと甲高い音を立てて結界が砕けた。割れたガラスのような結界片はチャフグレネードのように魔力の流れを乱し、大魔術を狂わせる。アトランダムな稲妻はてんで見当違いの場所を薙ぎ払った。
「何故だ……何故貴様も、そこまでして……!」
「この程度の痛み、吾輩が音を上げるわけにはいくまいよ」
 その身を灼かれながら、モロクは唸った。
「ハーリスの嘆きと痛みに比べれば、なんということはない……!」
 ハーリス。あの黒髪の男。奴は一切恐れのない落ち着いた表情を浮かべ、モロクとは別の方角に回り込んでいる。
(「仕掛けてくるか、愚かな」)
 ハーリスはまっすぐ突撃してくる。セヘジュには確信できた。ならばその起こりを潰してやればよい。
 モロクの狙いがこちらの撹乱であることなどとうに看破している。復讐のため亜人にさえ恭順した己を、こんな甘ったるい奴らが上回るだと? 有り得ぬ! 焼き尽くしてしまえばいいのだ、己も敵も、すべて!!

「年寄の助言は聞いておくべきであったなあ」
 どうっ! と、砂が爆ぜた。巨躯と化した蛇が、悪風を噴射剤代わりに加速し、射線を遮った残滓だ。
 巨体である。自らの身体を盾とし、魔力の暴威を防いでみせたのだ!
「貴様」
「灼けた空に轟く雲、そして鋭い落月か。まるで神罰みたいな光景だのう」
 だが、と蛇は言う。
「汝が信仰する神々は、すでに我らディアボロスの手に落ちた――偽物の神罰など、我々の前進を阻には足りぬ」
「貴様ァッ!!」
 2つの炎が瞬間的に噴出し炸裂した。かたや灼熱の星、かたや大早災を起こす烈炎。
 衝突が拮抗を起こし、拮抗は蛇の勝利で崩れる。悪風という追い風を得た烈炎が灼熱を飲み込み焼き払ったのだ!
「ぐ……!」
「さあ、道は切り開いたぞ! あとは……」
「進むだけ、よねっ!」
 蛇の巨体がミスディレクションの役割を果たした。生まれた間隙を潜り抜け、懐に飛び込んだディアナ!
「ほら、そこっ!」
 MG13-G機関銃が火を吹く。
 人を殺すために人が鍛えた殺意の象徴が、人ならざるモノを滅ぼすために咆える。弾丸は月輪に弾かれ切り払われ防がれ……足りない、弾幕がセヘジュの肉をえぐり取る!
「がは……ッ! 我の、魔術が……!」
「あいにくね、肺と足さえ残れば軍人は斃れないのよ」
 炎の残滓に身を灼かれながら、ディアナは相変わらず飄々と笑っていた。炎に照らされた「いつも通り」の笑みは、照り返しが生んだ影のせいか余計に恐ろしい。
「言ったでしょう、確実に仕留めるって。絶対に避けさせないし、逃さない!」
 BRATATA! 弾丸が鋼の如き筋肉を切り裂き、背中から貫く。燃えるような痛み。燃えるような? ふざけるな。我が身体は炉。燃やすは復讐の炎。魂などとうに焚べた! セヘジュはなおも立つ。妄執を支えとして!

「う、お――おおおおお!!」
 アヴァタール級とはこれほどの魔力を有するのか? 一同の脳裏にそんな疑念が生じた。膨れ上がる暴威はそれほどの規模だった。
「ここだ――ここで! 道を、作る!!」
 真っ先に飛び込んだのはサカハだった。
 新たな炎に肌を灼かれ、月輪に切り裂かれ、天雷を浴びても足は止めぬ。契約獣が、決意と覚悟が! 前に進む力を両脚に与えてくれる!
「新しいとっておきを、見せてやる!」
 プロミネンス・ドラグナーの力が純粋なエネルギーに還元され、両手で握りしめても足りないほどの巨大剣と形成した。裡なる決意が燃え盛る蒼炎となって現れ、邪悪なる灼熱を退ける。サカハは倒れ込むような前のめりで巨大剣を振るう!
「闇に属するものよ、此処に汝らの住まう場所なし!!」
 断罪の一撃は、地平線の彼方まで届くかと思われた。生命を賭した一撃は一瞬だけ暴威を完全に切り裂いて空白を生み、セヘジュをも叩きのめす。ぼたぼたと、もはやどちらのともわからない熱血が砂漠を汚した。
「ああ――」
 空から、セリュカドが見下ろす。ため息は嘆くよう。
「"欠片"でこれだなんて、これからも大変そ……けど」
 ばさり、と翼が羽ばたくたびに、のたうつ龍の如き竜巻が生じる。
 己のみをくねらせた荒ぶる風は、ひとつひとつが天と地を繋いでセヘジュを取り囲んだ。
「でも、ハーリスくんなら成せるよぉ。だって、一人じゃないもの」
 空からはよく見える。
 灼かれながらも弾丸で敵を縫い留めるディアナ。
 一撃に全てを賭し、もはや立つことも叶わぬサカハ。
 まるで鎖で繋がれたかのように執拗に食らいつき、撹乱するモロク。
 灼熱をねじ伏せ仲間を護る蛇。彼らの行く先を言葉と身振りで指し示し、目を見開いて涙をこらえるニーニ。
「みんな、一緒だものねぇ」
「……そうです! 痛くたって怖くたって、みんな一緒なら!」
 きらきらと、氷の花弁が舞った。ふわりと暴威など素知らぬ顔で柔らかく舞う花弁が、ひとつの道を作る。

 道の入り口に立つのは、筆舌に尽くしがたい思いを無言のうちに飲み込んだ男。
「痛いの、痛いの――とんでいけ」
 ねがいが、翼と心に力をくれる。ハーリスは見えない大きな手で、ぐっと背中を押されたような頼もしさを感じた。

 一瞬の瞑目。

「やってやるのだ、ハーリスよ。吾輩も祈ろう」
「ハーリス、あなたがやるべきよ!」
「……さあ、進むときだ」
「行けハーリスさん、勝ってこい!」

 再生した死者は目を開いた。炎も雷も月の光も関係なく、その姿はよく見えた。
「天空の神ホルスよ、お力添えを」
 呟きは口訣に通ず。
「我が御子を民の血で染めぬため、あらゆる脅威にも揺るがぬ翼をお授けください」
 そして――駆ける。炎が、雷が、光が、砂漠が。暴威が! まっすぐな矢の如き速度にぶわりと吹き飛ばされ、一筋の道を刻んだ!
「ディアボロス――!」
「この一撃」
 魔力が貫いたのは残像である。しかしてその声は間近から聞こえた。

 つまりすでにハーリスは、セヘジュの眼前に到達していた。
「……天空の神と、我がもう一人の主に捧げん」
 血を吐くような声音で彼は言う。その腕は、セヘジュの心の臓を貫いて背中から抜けていた。
 復讐鬼は、ごぼりと、赤黒い血を吐いた。致命傷だった。
「何故だ、何故――」
 疑問はどのようなものだったのだろう?
 ディアボロスたちが何故己を理解しがたい感情で見るのか。
 ハーリスは何故辛く痛ましい顔をしているのか。
 あるいは、己がここで負ける理由を疑問に思ったか?

 答えはわからぬ。
 あてどなく伸ばされさまよった手がだらりと垂れ下がり、いのちの熱が失われる。砂塵が風とともに一時ハーリスを覆い隠し、去っていけばもはや復讐鬼の姿は跡形もない。滅びたのである。

「……ハーリス」
 ディアナは、腕を突き出したまま佇む男に後ろから囁いた。
「手紙、また書きましょうよ。御子さんにも、主さんにも」
 散りゆく邪悪の見せたかんばせは、とても楽になったとは言い難い。所詮あれは、虚無に向かって駆動する復讐装置に過ぎぬ。
 それは、復讐者たる己らのカリカチュアされた未来像にも思えた。目的と手段が入れ違い、奪い返すべきものを見失った時、己もああなるのではないかと。
「…………そう、ですね」
 ハーリスは長い長い沈黙ののち、ただそれだけ答えた。

 風はひゅうひゅうと吹き続けている。
 ひどく乾いた、寂しい風だった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV3が発生!
【防衛ライン】がLV2になった!
【隔離眼】LV1が発生!
【完全視界】がLV2になった!
【未来予測】LV1が発生!
効果2【グロリアス】LV1が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
【反撃アップ】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV5になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
【ドレイン】がLV2になった!
【命中アップ】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2023年09月28日