防衛はあげあげで（作者 凪未宇）

10

リプレイ

●欲望の亜人
　何が悪いって、きっと亜人が悪い。そして彼らの性格が。
　余程枯れているのか発散できていないのか。男でもいいんだという突っ込みの声があったりなかったり、かくしてディアボロス達を迎え撃って、美味しい思いをしようと企んでた彼らの祭りは始まった。

「ふむふむ、挑発をして、誘き出せばいい、と。男性でも構わずって相当溜まってるんですかね？」
　身内で発散できないからかななんて湯上・雪華（悪食も美食への道・g02423）が考えていると、考えるより行動とストロベリー・メイプルホイップ（デンジャラスデカメロン・g01346）が率先して前に出ていった。
「敵さんは頭もお腹も欲望たっぷりさん、と。それなら個人的には楽しみだけど……」
　ほぼ竜の特徴が前に出ている彼女は、亜人と大きく変わらない印象なのではと思ったが。
「そんな所に籠ってるしか出来ないのかしら。図体ばかりで体力ない、ブタさーん❤」
　豊満な彼女のボディを、惜しげもなくアピールするようなポーズをとって挑発すれば即座に鼻息荒く砦の扉が開いた。
「やーい、私でも簡単に簡単に勝てちゃうぞー❤　私を捕まえられたら何しても良いし、されても文句言わないよ？」
　なんて言えば、もうたまらんとオークが興奮しはじめる。
「あれもディアボロスなのか？　人間じゃねーじゃねーか」
「でも超乳だぞ、スイカどころじゃねー、両手で抱えることも出来ないぞ」
　全部の会話が聞こえてきたわけではない、だがそれを察することのできる何か掬いあげるような動きと、だらしない表情で充分だ。
「う、うわぁ……どうしましょう、コメントに困りますね……とりあえず亜人大っ嫌いです」
「種族関係無く、思想が嫌いっすね……」
　欲望駄々洩れの亜人に引いているレイ・シャルダン（SKYRAIDER・g00999）の言葉に被せるように、鳴海・蒼葉（💖爆殺天使💖・g09783）は言い切った。
　レイパイセンと乱入とトレインにのってみたわけだが。何だか頭もそれ以外もネジが足りなそうな相手だ。
　亜人は姿を見せたもののこの位置では、直ぐに砦の中に退避出来てしまう。
　やはり誘い出す必要があると、青葉は携帯スピーカーで軽快なBGMかけながら飛翔し、目立つようにギラッギラな〈ゲーミング天使の輪〉を輝かせ、拡声器を手にした。
　勿論スカートの丈は、計算された絶妙なギリギリまでウエストで調整して短くしてあり、中はホットパンツとスパッツの二重ガードである。
　分かりやすくオークが目を凝らし身体を低くしたり覗こうとしてるが、気にせず高めに飛翔し。
「見たいなら来いよヘタレ～」
「色気を振りまくのは得意では無いのですが……蒼葉さんは一体どうし……て……っ！？」
「美少女が揃えばオークなんてイチコロっしょ☆」
「やりますねっ……！」
　何だかいい感じにノせられたような気もするが、ボクも負けてられませんとレイは、カラフルにライトアップされたフライトドローンを、幾つも放った。
「いや、別に負けててもいいのですが……やるならしっかりやる、任務に手は抜きませんとも」
　まずは敵の注目を。音と派手な光で、砦の中に居る亜人全部の注意を引くつもりで。
「うぇーい。何だか、ソウルな感じじゃね？　hooー！！」
　賑やかな音楽に、インドラジットまで塀の上に顔を出してきた。
「遊び相手をご所望ですか？　強い人と遊べるなら嬉しいし、たくさん遊んでほしいんですよね」
　ミニスカートにノースリーブのタートルネックで、生足をアピールしながら雪華は笑みを浮かべる。
　この場合の雪華の遊びは命のやり取りだが、亜人にそこまで読める思考はない。
「マジか！？　遊んでいいって、あの細腰壊れるまで蹂躙してもいいのかな」
「馬鹿野郎、ちゃんと孕ませないと勿体ねーだろ。壊すんじゃなくて、いっぱいみんなで可愛がって楽しまねーと」
「なあ、でも雄の匂いもしないか？」
「そうか、でもあの顔は好みだ」
「それならそれでいいだろ、沢山愉しんで蹂躙して壊れるまで味わえばいい」
　今にも突撃しそうな興奮状態で、それはストロベリーが『誘惑の吐息』を風にのせたせいもあるのだが。
「私の性別、知りたいんですか？」
　オーク共は雪華の言葉に耳をたて、前のめりになった。
「なら、もっと近くに来てくださいよ。知りたければ、こんな布切れ引き裂いて直接確かめたら良いじゃないですか……ね？」
　雪華がわざとらしく服のラインをなぞり、スカートの端をつまんでみせた。
　オーク共はゴクリと、その指先を追う。
　そして、こちらでは青葉に触発され、慣れない雰囲気で身体をくねらせるような、この地域のベリーダンスの動きなどを取り入れアピールし投げキッスをすれば。
　オークから歓声があがった。
「恥じらう女を従わせるのもいいな」
「何だあの服、胸や腰つきがすげー分かるぞ」
「あの服、引き裂きてぇ」
「お前、何でも破りたがるよな」
「わかってねーな。それがいいんだよ、あの女良い顔しそうだ」
　舌なめずりをするオークの視線に、悪寒がはしるほどレイが思っていた以上に、効果は絶大だった。
　考えて見れば、この地域露出の高さはある程度慣れもあるので、ボディスーツは新しい嗜好を刺激したようだ。
「うぬぬ、パイセンの魅力がレベち……ま、負けてらんないっす！」
「ｸﾞｪｯ、ｸﾞﾜﾜ！」
　スカートに手を伸ばす青葉に、ダンジョンペンギン『軍曹』が保護者のようなテンションで、その手をペチンと止める。
　これはあくまでも敵を誘い出す罠。魅力対決などではない。
　鼻息荒くオークは砦の護りも忘れ、動き出す。
　やれ、俺は誰を狙うと好みを口にし。最初に捕えた奴のもんだと競い合って。
　そんな充分あったまったオークに、駄目押しと雪華は小悪魔に笑む。
「何より、滅茶苦茶にされてみたいんですよね。私よりも強い人、いませんか？」
「うおおおお！！！」
　オーク共は、我先にとディアボロス達へ。欲望と下心丸出しで砂煙をあげ突進していった。　
「おいおい、おめぇーら全員いっちまうのかよー。しょーがねーなぁ」
　インドラジットは砦から飛び降りると、サングラスの位置を直しディアボロス達に向かってビシッと指さす。
「覚悟しな、俺っちが蹂躙してやるぜ！」
　カッコ良く決めていたが、その間にもオークの突撃は止まらず、置いていくなよと慌てて後を追うのであった。












●トンで亜人
　鼻息荒く『オーク攻城兵』が我先にと突撃してくる。
「予想通りというか、予想以上に素直に突っ込んでくる！　そして、こっち側の味方は……うん、特に援護も必要なさそう感強強だ！」
　そのままオークの動きを誘導しようと、ストロベリー・メイプルホイップ（デンジャラスデカメロン・g01346）は『乱交の吐息（ハーレムブレス）』で、幻へと包み込む。
「私に欲望丸出して突っ込んで来たオークたちは、存分に楽しませてあげないとね！」
　だらしない顔で夢の世界に囚われたオークは、無防備に立ち尽くす。
「亜人はやはり下劣だな……だが、今はその下劣さに付け入る隙がある。のこのこと出て来るとはな……」
　足を止めた亜人は、格好の的でしかない。
　ヴィオレット・ノール（北の菫・g09347）は、杖〈星月〉を振るい『雷の招き（サンダーボルト）』を放った。
「出て来た亜人は残らず殺し尽くそう」
　１体ずつ確実に狙いを定めていく。
　仕留められなければ反撃が来るのは覚悟し、身構えていたのだが。
「あっちいな。やけに女みたいな顔をした奴じゃねーか。どっちか丁寧に確かめてやる」
　ニヤニヤと笑みを浮かべ、オークは『猪突猛進破城追』で一気に迫る。
「女なら蹂躙して孕ます、男なら蹂躙して弄ぶ！」
「男も……えっ。男も？　亜人は繁殖しなければ意味がないものかと思っていたけれど、蹂躙さえ出来れば力自体は増すのだったか……」
　オークの一撃はすさまじく、深く突き刺さるように。
「ぶふぉ。その綺麗な顔を歪ませてみたいぜ！」
「僕はイケメンだけど、君らのお相手はごめん被るよ」
　間近で降りかかるオークの鼻息からヴィオレットは顔を反らし、間にストロベリーの吐息が流れ込みオークを幻の世界へ。
「貴方達が見たい幻と私と誘惑と現の夢で、たっぷり吸い尽くしてあげる！　大丈夫、私たちしか居ないから、存分に楽しんで逝ってね！」
　力の抜けたオークから即座に距離を取ると、ヴィオレットは再び雷を落とした。
「……全く、反吐が出るね」
　一体、どんな幻を見ているのか。
　だらしのない顔を浮かべるオークに、ストロベリーが身体を寄せ妖艶に対応しその生命力を奪っていく様子を見るに、彼らの欲はろくでもないのだろう。

　誘い出しの成功に安堵したものの、レイ・シャルダン（SKYRAIDER・g00999）は微妙な表情を浮かべた。
「オークに人気があると言うのは、複雑な気持ちですが……」
　同じ人気を得るのなら、普通の相手にと思うのは当然である。
「折角出て来てくれたのでお出迎えが必要ですね」
「ガッテンショウチィ！　らっしゃっせ～、素直でいい子な団体さんを天獄へご案内～♪」
　ドスッと鈍い音と共に鎖に繋がれた鉄球が、鳴海・蒼葉（💖爆殺天使💖・g09783）の足元に落ちる。
「ですけど、あなた達の好きにさせる気は毛頭ありませんので……」
　AI搭載ゴーグル型デバイス〈Boeotia〉を起動し、向かってくるオークの姿を捕える。
　聞くに堪えない事を言っているが、ここは全力で無視だ。
「おっと、お代はお一人ワンソウル☆（お前の命）もれなく全員逝かせるZe☆」
　その細腕のどこにと思うような勢いで鉄球を振り回し、青葉は正面からオークを迎え撃つ。
「ばいぶすアゲアゲで行くよ軍曹！」
「ｸｪｯ！　……ｸｪ」
　青葉に頼もしく応じるも、ダンジョンペンギン『軍曹』の声には戸惑いが滲む。
「よく分からんがくらえー！！！」
　鉄球をフルスイングし、『☆キューティースペシャルアオバちゃんアタック☆』を正面から食らわせれば、当たった瞬間爆発しカラフルな爆煙をがあがる。
　今回は赤い煙。怒りたっぷりの色だ。
　爆煙に目を凝らすように機械魔導弓〈ACRO〉に矢を番え、大口を開けふんすと鼻息を吐き出すオークが煙から飛び出して来れば『人機接続：超視世界（リンクスオブボイオーティア）』が、その四肢を狙う。
「……人機一体の極点を此処に」
　放たれた矢は、鋭く真っ直ぐにオークの身体を貫いて。
　怒れるオークが先端を尖らせただけの丸太を振り上げ『破城追乱打』を繰り出す。
「ぶふ、ぶふ、ピチピチ！　ビリビリ！！」
「……蒼葉さん、やっちゃってください。どがーんと強烈なのを」
「レイパイセンに邪念を向ける悪い子には、爆発でお口チャック💖」
　軍曹の補充してくれた鉄球爆弾を、全力でぶっ込む！
　口に収まらないほどの鉄球が突っ込まれ爆発すれば、さすがのオークの頭も無残なミンチに。
「ん〜強烈すぎぃ……」
　何て後輩の雄姿を眺めていれば、追い付いて来たオークによって丸太が振り下ろされる。
　その重い一撃を幾何学模様浮かぶ２重の結界で威力を殺しながら、衝撃に逆らわず推進力を活かし、その場から飛翔した。
「絶対に捕まってなるものですか」
　攻撃には耐えれても、それ以外には耐えるどころか触れられたくもないだろう。

　そして、こちらでも。
「これだけ釣れれば十分ですね。じゃあ、遊びましょうか？」
　足を止め、湯上・雪華（悪食も美食への道・g02423）がさて、蜂の巣に……と振り返れば、素早く駆け寄った括毘・漸（影歩む野良犬・g07394）が、彼の着ていたオレンジの上着を雪華に羽織らせ、その肌を隠し前へ。
「あ、漸も来てくれたんですか。ありがとう」
　彼の匂いに包まれ雪華がハニカムも、既に漸の意識は、目の前の有象無象のオークに。
「あ“あ“？　てめぇ、今なんつった？　蹂躙？　壊す？　てめぇ等、人の番に手ぇ出す気か！？」
　その声は低く空気を震わすように響き、額に浮かぶ青筋が怒りを露わにしている。
「…………消してやる」
　獲物に狙いをつけ、口に〈血払いのサーベル〉を咥え、両手にナイフを携えオークに斬りかかっていく。
「……って行っちゃった。これはかなりおこ、というかキレてますね」
　羽織らせてもらった上着に袖を通し、カッコいいなぁと漸の姿を眺め。
「っと、見惚れてる場合じゃないですね」
　援護をと『貪り喰らうモノ（ボウショクノケシン）』を実体化させ、オークの足元へと忍ばせる。
「ぶぶ、ぶほぉ」
　欲望露わに突撃していたオークを待ち構えていたのは、憤怒の形相で殺気を振り撒く猟犬。
　唸り声をあげながら、漸は『猟犬参首·地獄番犬（ミツクビ・ケルベロス）』を。
「てめぇか、雪華の姿を見たのは」
　オークの懐に低く飛び込み、斬り上げる一閃は目を斬りつけ視力を奪い。
「お前か、雪華の声を聞いたのは」
　切り抜ける二刀は、耳を削ぎ落し。
「コイツか、雪華に邪な声を掛けたのは」
　最後に三刀目で、喉を斬り裂いた。
　その間、雪華の操る呪詛の黒手が、他のオークの太い足を掴み近づけないよう阻んでいる。
「お前等の手には、髪の一筋すら触れさせない」
「大切な番以外に触れさせるわけないじゃないですか」
　駆け付けてくれたことを嬉しく、そして頼もしそうに漸の隣に雪華は並んだ。
　さて、後は残るオークを綺麗に片づけるだけ。
　ディアボロス達は、力を合わせオークを完膚なきまで撃破するのであった。








●羅刹の悪魔
「うぇーい、遅かったんだよ。それとも主役は後からやって来るってやつ？」
　何だかトループス級の返り血でベットリな、鳴海・蒼葉（💖爆殺天使💖・g09783）が前に出て『羅刹天イントラジット』に挑発するように絡めば、向こうからも「うぇーい」と返事が返ってきた。
「おいおい、マジかよー。うちのブタくんたち、やっちゃった？」
「やっちゃった💖　そして、今からパイセンたちとフルボッコターイム💖」
　青葉の返答に、イントラジットは大袈裟に天を仰ぎ嘆いた。
「そりゃないぜー。あれでも、チャンオレの大事な部下だぜぇ」
「部下は皆倒れましたよ。次は貴方の番……です。今まで好き勝手蹂躙してきたのでしょう？」
　サイバーレイピア の煌剣〈シュトライフリヒト〉をレイ・シャルダン（SKYRAIDER・g00999）が向けると、軽い調子で口笛が返ってくる。
「ひゅー、その恰好イカスじゃん、あげあげじゃん」
「……もう十分です、死んでください」
　またオークと同じようなやりとりに持ち込まれるかと、危惧したというのもあるが、何より言葉がまともに通じる相手に思えない。
「これ以上レディに不愉快な思いをさせたくもないし、手早く殺そう」
　これ以上、言葉を交わす必要も無いだろうと、ヴィオレット・ノール（北の菫・g09347）は『熱愛の契約』を放った。
「さっきのオーク共は、見境がなかったようだけれど、君はどうかな。こっちもイケるクチだったりする？」
　相手の魂を縛るように、ヴィオレットは彼が思い付く限りの色香を振り撒いてアピールする。
「あー、まあどっちかっつーと、イケンじゃね。男も女もぶちあげうとこっしょ！」
「『遊び』をお望みなら、付き合っても良いよ……貴様が死に果てるまで」
　そう縛れば、イントラジットは自由を失い訝しそうに首を動かした。「マジカー」と暢気に口にしているが、そこに銀猫が飛び込み〈神護の長槍〉で貫く。
「後れ馳せながら、ここからはわたしも加勢いたします」
「いってーじゃん。やってくれんねー子猫ちゃーん」
「……今回の部隊の頭目は、亜人にしては姿も名前の響きも奇妙ですね」
　エイレーネ・エピケフィシア（都市国家の守護者・g08936）は相手を確認しながら、反撃に備え〈神護の輝盾〉に身体を隠した。
　イントラジットの名は、本来であればインド神話の悪魔だっただろうか。
「とはいえ、何が相手だろうと討ち果たすまでです！」
「だけど、悪い子猫ちゃんは、良くないぜぇ」
　そう放たれた『重力砲』による波動が、エイレーネに襲い掛かり重くのしかかる。
　それはまるで頭を下げさせ、その場にひれ伏させようとしているかのようだ。
「分かってんだろ。猫が亜人に逆らってんじゃねーよ」
　屈辱的な行いにエイレーネは耐え凌ぎ、何とかその波動から逃れ、入れ替わるようにフライトデバイス〈アクロヴァレリア〉の推進力で一気に間合いを詰めたレイが『精閃縫い（ゴットハウトネーエン）』で護りの切れ目を見極め、突き出された。
　それは針の穴を光が通り抜けるかのような正確さで、シュトライフリヒトでイントラジットの胸を狙う。
「一条の光がボクを導く、――見極めたよ、その守り……貫く！」
　精密な一撃は胸を貫き、オーラを流し込み内部から破壊していく。
「がはっ……ひゅー、やっべぇじゃん。これマジもんじゃん。ちゃんかわ、やっるぅ」
　盛大に口から血を吐くも何だか余裕に見えるのは、口が達者なせいだろうか。
「じゃ、チャンオレもいいとこ見せちゃうよー。やっちゃうよー」
　そう片手を天に掲げ、空間を歪め魔術で無数の矢を出現させ、サングラスを輝かせた。
「『バルバーディ・キ・バーリッシュ』じゃん」
　言葉が終わると共に、矢の雨が降り注ぐ。
「大丈夫なんだよ、天獄直行便はキミのために一枠残ってるし、たっぷり血渋きぶちあげてこーぜ💖」
　ニッコリ笑う青葉に気ぃ抜くなよと言いたげに「ｸﾞｪ」とダンジョンペンギン『軍曹』が足元で鳴き。
「ああ……えっと……あげあげですね？」
　戸惑いながらレイは乗ろうとする。
　派手にコウモリの如く飛んでいく『デモニックボム』を放ち、爆発がインドラジットを襲う。
　しかも特製粉とインク入りで、緑の半身が蛍光ピンクに。
「爆殺完了💖」
　決めポーズと共にフレームに蛍光ピンクカメレオンのインドラジットが入るよう、スマートフォンのカメラでパシャと自撮り。
「うぇーい、まだ死んでないじゃーん」
　いつの間に近付いたのか、『アドリッシャ・パンジェ』を繰り出し身体を透明に消して忍び寄った……いや、蛍光ピンクレオンが不自然に宙を移動し青葉に迫り、その鋭い爪をふりあげる。
　だが、見えみえの一撃なら直撃させないよう避けるのも、そう難しくない。
　青葉が辛うじて身体を反らした所に、再びヴィオレットが攻撃を仕掛ければ、ニヤリとインドラジットは嗤いすかさず反撃してくる。
「広範囲の重力波……不可視の攻撃というのはどうにもやりづらい」
　だがそこは仲間との連携が、敵を撃つ。
　『奮い立つ正義の一閃（アペルギア・ディケオシニス）』で薙ぎ払うように、一閃。
「アテーナー様！　どうかこの槍に、悪しき王を討つまでの道を拓く力をお与えください！」
「ひゅぅ〜……きょーれつ……」
　エイレーネの一撃が、インドラジットを仕留め永遠に沈黙させるのであった。










●塵も残さず
　砦に常駐していた亜人が倒れたのを、目ざとく砦の物陰から窺っていた小間使いのウェアキャット達が蜘蛛の子を散らすように、物凄い勢いで方々へ逃げていった。
　やっぱりいたのかと逃げる背を遠くから眺め、エイレーネ・エピケフィシア（都市国家の守護者・g08936）は、軽く息をついた。
「最初から最期まで騒がしい亜人でしたが、これで静かになりました」
「いやぁ……死ぬ時もあのキャラを通せてたのは凄いですねぇ……」
　亜人としての矜持を見た気がしますとレイ・シャルダン（SKYRAIDER・g00999）が口にすると、あれは特殊じゃないかなと、ヴィオレット・ノール（北の菫・g09347）が苦笑する。
「ここに籠もっていた亜人は、これで全部かな。皆が無事で何よりだ。何がとは言わないけれど。うん、言わぬが花というものさ」
「さあさやってまいりました、全国津々浦々北は南極南は北海道！　mankindお待ちかねの打ち壊しタイムだぁーーーっ！！」
　お手伝いしますよと元気よくライカ・ネイバー（エクストリームお手伝い・g06433）が声をあげれば、鳴海・蒼葉（💖爆殺天使💖・g09783）も元気に応える。
「レイパイセン、ライカパイセンと砦壊してばえっばえなドデカい花火を打ち上げるんだぜ☆」
　ここまでの鬱憤も、いい具合に相当溜まっている。
「さて、それじゃあお待ちかねの砦破壊だね。先の鬱憤を晴らすのには実にお誂え向きのデカブツだ。破壊の限りを尽くそうじゃないか」
　そんなの分かってるよと、ノリノリで青葉は慣れた手際で柱や建物を効率よく壊せるポイントに印をつけ亀裂をつくり、爆弾を捻じ込んでいく。
「やっぱ、点火するまでのワクワク感が一番たまらないんだよ♪」
「さぁ、先程までのうっぷんを晴らしましょう」
　あいあいさーと、『召喚：不死射手隊・大虐殺（サモン・アンデッドガンナーズ・ブラッドバス）』で、ライカはあらゆる銃器を構えた盛り沢山の骸骨ちゃん部隊を召喚〜。「君んとこは迫撃砲？　よしよし。あっちは榴弾砲かな〜？　良いですねぇ〜」
　ほくほくと骸骨の構える銃器をチェックし、ライカは自らもロケットランチャー〈シアン・ホエール〉を構え。
「そんじゃ残りはロケラン構え〜！　あいシューーーート！！」
　号令と共に、一斉斉射。
「うんうん。勿論アンティオキアへと攻め上がるためにね」
　などと言いながらヴィオレットも砂を操り『砂漠の手』を作り上げ、亀裂の入ったところなどを狙い一気に叩き潰す。
「うん、良い感じに壊せるね。はじめて使うパラドクスだけど悪くない」
「今日のヴィオレット様は、普段とは違う技をお使いになりますね。多芸なのはよいですが、亜人を誘惑した時は流石に驚きましたよ」
　エイレーネは、ふふっと揶揄うように微笑んだ。
「……う、うん。情熱的な言葉が必要となるらしいからね、ああなった」
　だが相手の姿を思い浮かべれば、サングラスしか浮かばない。
「次に使うときは、せめて見た目だけでも美女であって欲しいかなあ……」
「さて……わたしも砦を破壊してゆきましょう」
　祈りは無数の光の矢を。『狩猟者の祝祭（ヨルティ・キニゴン）』を砦に降り注がせる。
「さて、アンティオキアへの関門を開くための仕上げと参りましょう。道はまだ半ばです」
　二度とこの砦の再建が叶わぬようにと、打ち込み続け。
　フライトデバイス〈アクロヴァレリア〉を点火し飛翔したレイは、正面扉に向けて『グラウンド・ゼロ』で全武装を一斉に起動した。
「ありとあらゆる攻撃をもって、この砦を破壊しつくします」
　これは私怨ではない。れっきとした破壊作戦である。
「Tanzende Walküre　Löwebrüllen　Neunundneunzig Jäger　照準良し……！」
　全ての武器が、自動制御の元点火する。
「撃てーーーーー！！！！」
　遠距離より、次々に放たれる砲撃が砦に降り注ぎ。
　ささっと、ダンジョンペンギン『軍曹』に青葉は爆弾を巻き付けていく。
「ついでにロケット花火も使うぜ☆」
「ｸﾜ-、ｸﾜﾜｸﾜｯ……」
　不安そうに鳴く軍曹の声に、青葉はにっこり。
「よし、準備は出来たぜ軍曹」
「ｸﾜ……」
　笑って青葉は軍曹を掴むが、サーヴァントは一心同体一蓮托生。ダメージを受ければ主に返ってくる。
　そういう意味では、物凄く身体を張っているといえよう。
「軍曹！　後は任せた！」
「ｸｪｯ！？　ｸ、ｸｪｪｪｪｪ！！」
　後は思いっきり『必殺☆軍曹落とし』と特攻させるだけ。
　いい感じに花火が打ちあがり、間一髪爆発寸前に軍曹は手元に再召喚。
「うーん。ド派手な花火と相まって、さしずめ荒野に咲く一輪のうんたらかんたらってやつですね」
　そんな風にライカが振り返り。
「ｸｪ~……」
　疲れたような軍曹の溜息と、荒野に響く花火の下、ポツリと小さなつぶやきが落ちる。
「……パパがね、言ってたんだ。どんな命にも疎かにして良いものは無いって……だからね、同じ亜人としてこの花火は追悼の花火なんだよ……」
　火花が魂を送るように砦の残骸に降り注ぎ終われば、後は帰還するだけ。
「さぁ、帰りましょう？」
　何でもなかったかのように、レイが青葉を背後からポフッと抱きとめ、ライカが笑顔を浮かべる。
「頑張ったらお腹空きました。ここはひとつ景気付けに肉食って帰るぞぉ！」
　明るい声が荒野に溢れ、ディアボロス達は帰路へとつくのであった。

最終結果:成功
完成日	2023年06月27日