リプレイ
エイレーネ・エピケフィシア
わたしはウェアキャットです
この出自によって出来ることをしましょう
目立たない服で同族の使用人に溶け込みます
果物屋の近くに張り込み、女性の管理人を探して声をかけます
お初にお目にかかります
わたしは普段料理番をしている者でして
自慢ではありませんが、腕前をよく褒められるのです
この技が本物なら、人間の女が喜んで食べる料理を作り、太らせることが出来るかと
どうか品定めしていただけませんか?
承諾を得られたら共に収容所に赴き、厨房を借りて調理
わたしの料理術は人並みですが
【おいしくなあれ】を使えば天才料理人と誤解させることも可能でしょう
収容所で働ける約束を取り付けたなら案内をお願いし
侵入しやすい時間や経路を探ります
●栄養のある食事
(「来ました、あの方ですね」)
エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)のウェアキャットの耳がぴくりと動く。彼女の琥珀色の瞳が映すのは正面の雑貨屋の棚だが、その意識は背後の果物屋に向けられている。
「……それではいつも通りにお願いします」
「はい、毎度ぉ!」
中年女性のウェアキャットを果物屋の店主がへこへこお辞儀をして見送っている。あれが略奪された人間の女性たちを管理している収容所の管理者だ。立ち去ろうとする中年女性をエイレーネは追いかけた。目立たないよう住民たちと同じように扮した服の裾がはためく。
「もし、よろしいですか?」
「はい、私に何か?」
エイレーネに呼びかけられた中年女性は振り返る。不思議そうな表情ではあるが不信感の色は見えない。
「お初にお目にかかります。わたしは普段料理をしている者でして……」
エイレーネは名乗り、自身の料理の腕前が評価されていることを語る。
「この技が本物なら、人間の女が喜んで食べる料理を作り、太らせることが出来るかと」
収容所で料理版として働けないか品定めをしてほしいというエイレーネに、中年女性はしばし考え込む様子を見せる。
「……彼女達は亜人様への献上品に過ぎないので、別段日々の食事で喜ばせる必要はありません。太らせすぎるのも御子を育てる母体の健康としては問題があります」
ですが、とそこで中年女性は破顔する。
「美味しい食事なら彼女達が自主的に摂取するので手間が省けるでしょうし、運動でバランスをとれるぐらいの肉付きはあった方がいいでしょう」
一度腕前を確かめさせてほしいと、中年女性はエイレーネを収容所まで招く。
(「実際は、わたしの料理術は人並みですが」)
案内された収容所の厨房にて、並べられた食材を前にエイレーネは深呼吸。ここで嘘がばれるわけにはいかない。彼女はどこまでも余裕があるように振る舞った。
「さぁ、おめしあがりください!」
しばらくして、中年女性の座る卓にエイレーネの作った料理が並べられる。笑顔で両手を広げるエイレーネ。その瞬間にパラドクスを発動させる。一般人である中年女性は眼前の料理に通常の法則をを超越した変化が起きたことに一切気付かない。
「……まぁ! これなら私たちの食事もお願いしたいくらいだわ」
料理を口に運んだ中年女性は大きく目を開いて美味しさに驚きの声を上げる。
(「あぁ……やはり」)
エイレーネは確信する。この女性は悪辣なのではない、むしろ比較的善人で道徳もわきまえている。その上で人間をヒトとみていないだけなのだろうと。
斯くしてエイレーネは収容所の管理者の胃袋を掴み、施設の料理版として潜入に成功する。
その立場を利用して、人間の女性たちに日に三度の食事が与えられる事。料理を運び入れる時に部屋の施錠が外される事を掴んだのだった。
成功🔵🔵🔴
効果1【おいしくなあれ】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!
巴屋・萩
なるほどなるほど。
私もウェアキャットなので、それなりに一般ウェアキャットとはお話しできるかも知れません!
でも亜人が来たら光学迷彩も使ってしゅばっと早業で隠れちゃうのであります。
お手洗い行ってきまーすとか言って!
どうお話するかですが、ここは新入りお世話係のふりして先輩猫についていくのはどうでありますかね?
面倒見が良くて親切な感じの、だましやすそうな猫を上手く見つけられるといいなぁ。
そしたら人間の収容所の場所とか、生活のルーチンとか、色々教えてもらえると思うのであります!
向こうから鍵を開けて、人間を外に出してくれてる瞬間を狙いたいですね。
手間が色々省けるのであります!
●健康的な運動
「わりっ、ちょっと急用でさ!」
「えぇ、どうすんだよこの配達荷物……収容所まで運ばなきゃいけないんだぞ」
(「なるほどなるほど」)
果物屋の裏で沢山の木箱を積んだ台車を前に話し合う二人のウェアキャット青年を、巴屋・萩(迷猫魔忍帳・g09008)は物陰から観察していた。
そのうち、片方が言いくるめられ一人残される。いかにも人の良さそうな親切そうな彼が、諦めて一人で運ぼうとしている所に萩は突撃した。
「せんぱーい、遅くなりました。ただいま到着であります!」
「え、あ、君は? 新しい雇われの子、かな?」
「はい! 色々とご指導ご鞭撻のほど、よろしくおねがいするであります」
あっけらかんと言う、黒い猫耳をぴくぴくと動かしながらウィンクする萩の金色の瞳に見つめられ、青年はそうなのかとコロリと騙される。
斯くして萩は青年と共に台車を押し始める。
「それにしても凄い量でありますね」
「あぁたっぷり食べさせるんだってさ」
「これだけ食べると太ってしまいそうでありますな」
「その辺は外できっちり運動もさせてるらしいな」
雑談から始まり青年がこちらに気を許したあたりで萩は、自分たちが運んでいる荷物をとっかかりに収容所について聞き込みを始める。
青年によれば収容所の女性たちにはきちんと食事が与えられているらしい。そして、朝食後には所内での軽い運動。昼食後には庭に出て本格的な運動も行われいるのだとか。
「逃げたりしないんでしょうか?」
「うーん、頭の悪い亜人にうっかり『間違い』をされちゃ不味いんで、もっと上の亜人から近づかないように命令されているから、確かに巡回の亜人は収容所の近くにはいないんだけどね」
それでも、街中にはウェアキャットと亜人しかいないのだ、逃げた所でこの街を脱出することなど不可能だとわかっているのか、そういう話は聞いたことがないなと青年は笑う。
(「手間が色々省けるのであります!」)
最も、それはディアボロスという異分子のいない前提での話だ。萩は都合よく向こうから鍵を開けて人間を外にだしてくれる瞬間を聞き出すことができて、内心上機嫌だった。顔には出さないが尻尾は起源良さそうにゆらゆらと揺れている。
「げ、亜人だ。いいか? 目を合わさないようにするん……」
「あ、お手洗い行ってきまーす」
「え!? もういねぇ!?」
道の向こうから歩いてくる巡回警備中の亜人を見つけ、青年が親切にも萩へアドバイスしようとしたとき、既にそこに萩の姿はなかった。
(「救出に行くのはお昼の運動している時がベストでありますかね」)
路地裏に隠れ、半泣きになりながら必死に視線を逸らして、無事に亜人から因縁をつけられずにその場を切り抜けている青年を見守ってから萩はその場を後にするのだった。
成功🔵🔵🔴
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
クロエ・アルニティコス
カナンの地はプトレマイオスが亜人を引き連れていった後であったためかまだマシでしたが、どこも変わりませんね。
……ここより北、そして東はどうなっているのでしょうね。
新宿島でシトロンを仕入れて籠へと入れ、町へ入ります。
新宿島は快適ですね、欲しいものがすぐに手に入ります。
【モブオーラ】を使用して目立たぬようにし、ウェアキャットへ話しかけます。
健康に良いという果物を手に入れまして収容所の女たちにも与えようと思うのですが、普段は収容所に行くことがなく。
途中で亜人に見咎められ、この果物を奪われることがなさそうな道をご存じではないでしょうか。
話を聞けたらお礼にウェアキャットにも果物を渡しておきましょう。
●脱出の障害
視線の片隅で、亜人の理不尽な暴力によりウェアキャットが命を落としていた。
(「どこも変わりませんね」)
クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)はその様子を視界の端にとらえつつ、心の中で嘆息する。カナンの地はプトレマイオスが亜人を引き連れていったから、まだマシだったことを改めて実感させられてしまう。
「……ここより北、そして東はどうなっているのでしょうね」
クロエの青き瞳が映す彼方の空は、彼女の瞳のように晴れ渡ってはいないようだ。
気持ちを入れ替えて街の中を進むクロエ。自然と籠を持つ手にも力がこもる。
(「新宿島は快適ですね、欲しいものがすぐに手に入ります」)
同じ街でもこことは異なり、厳しい状況でも人々の笑顔が溢れるクロエにとっての今の拠点を思い返す。砂埃を防ぐための布を捲れば、黄色い皮が覗き柑橘系の香りが鼻をくすぐる。
「もし、少しよろしいですか?」
「ん?」
クロエは街中を見まわし、手近なウェアキャットに話しかける。
「健康に良いという果物を手に入れまして収容所の女たちにも与えようと思うのですが……」
「自分の仕事でも無いのに態々? ゴマすりも結構だけど、下手したら失うのはそんな果物どころじゃないだろうから気を付けなよ?」
収容所への行き方を知らず、亜人に見咎められて果物を奪われないような道を聞くクロエに、己の首を描き切るような動作を見せる住民。もちろんクロエも彼もこの周囲に亜人が居ないことを確認したうえでだ。
「……まぁ、そうじゃなくても収容所の場所は折角だから覚えておくといいよ、あそこ、丁度いい息抜き場所なんだよね」
住民の話によれば、収容所の周囲には亜人は近寄らないのだという。万が一にも女を襲うことの無いよう、より上位の亜人からきつく命令されているのだとか。その結果、亜人の目から逃れてさぼりたいウェアキャットの憩いのエリアと化しているらしい。
クロエは住民に礼として果物をを渡し、生ではなく甘く煮たり果汁を飲むのがお勧めだと伝えて立ち去る。亜人に警戒しつつその足は教えられた通へと向かっていく。
もともと亜人を避けつつ移動していたクロエだが、段々と亜人自体の目撃が減っていく。反して行違うウェアキャットの数は増えていくように思える。
(「あれが収容所ですね」)
やがてたどり着いた一角には、それほど大きくない柵に囲まれた庭を持つ大き目の建物があった。丁度果物を積んだ台車が通って角を曲がる。おそらく庭の反対側に建物の入り口があるのだろう。
そして目を引くのは、やはりウェアキャットの数だ。亜人の目を逃れて羽を伸ばしたいウェアキャットの数は、収容所周辺の道にそこそこいる。脱出を行うならば彼らの注目も避ける方法が必要だろうと思われた。
成功🔵🔵🔴
効果1【モブオーラ】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
●
街に潜入しディアボロス達は収容所に関して情報を集めた。
襲撃と救出を行うのに必要な情報が集まったところで、それらを終了し、ディアボロス達は集合して情報の共有を行う。
1.人間の女性達は日に三度の食事を与えらえる。その際には部屋のドアの施錠が外される。
2.昼食の後で庭で運動をさせられる。庭を囲う柵は低く、外から庭の様子は一目で確認できる。
3.収容所周辺に亜人は近づかない。代わりに亜人の目を避けたい一般人のウェアキャットがそれなりにたむろしている。
4.亜人があまり通らない収容所からのルートがある。ただし収容所から離れれば離れるほど亜人との遭遇確立は上がるはずだ。
収容所には一般人のウェアキャットしかいないので、襲撃することは全く問題なく行えるはずだ。だが、複数女性を救出し脱出するためには、可能な限り亜人に見つからず、騒ぎにならないようにしなければならない。
クロエ・アルニティコス
必要な情報は集まりました。
後は決行するのみです……これ以上亜人と同じ街にいると、私は衝動を抑えきれそうにありません。
【モブオーラ】【光学迷彩】を使用し亜人の目をすり抜けて収容所へ移動。
時刻は昼か、もし誰かの【完全視界】があれば夜でも構いません。
収容所は大勢のウェアキャットがいます。見られないことも説得することも不可能でしょう。ならば【罪縛りの鎖】で捕らえ、口を塞ぎ、追いかけるのも亜人を呼ぶのも阻止しした上で女たちに話しかけます。
私たちは「冒険者」です。
ここより西に安全な地があります。少なくとも、ここよりは人間らしく暮らせる地が。
嘘は言いませんよ。付いて来ますか?
巴屋・萩
さて、今の私は新入りお世話係であります!
お料理だってお手の物、ウェアキャット用のいい感じのお昼ご飯を作って先輩方を食堂に集めちゃいます。
先輩方が食べてる間に新入りの私が人間を運動させます、って言って鍵も開けてっと。
【おいしくなあれ】があれば、見た目を整えるだけで済むのでありがたいですねぇ。
一所にウェアキャットを集めれば【罪縛りの鎖】で拘束するのも楽であります。
後は亜人の少ないルートで人間を逃せば良いですかね。
ウェアキャット相手なら見咎められても、今日は外でジョギングなので亜人のいない道教えて下さい!って言って逆に情報を集めながら移動しちゃいましょう!
エイレーネ・エピケフィシア
わたしは収容所の内側から手引きしましょう
萩様を同じ流派の料理人として紹介し、作戦決行の昼まで共に働きます
クロエ様がウェアキャット達を拘束したら、女性達を説得して脱出です
我々冒険者は、カナンの地より亜人とその使用人を追放しました
わたしや萩様はウェアキャットですが、亜人とは敵対する身です
皆様が脱出に賛同して下さるなら、命を懸けてお守りいたします
未来のために、どうか善きご決断を
脱出時、女性たちには猫耳ヘアバンドをつけさせて表面上だけでもウェアキャットに見せかけます
【平穏結界】を展開して周囲の視線をかわし
亜人があまり通らないルートで市街の外へ
出来るだけ街の中心部から離れた場所で追手と戦えるよう急ぎます
●正午の脱出劇
「ふんふんふ~ん♪」
収容所の厨房でトントントンと包丁の小気味よい音と共に巴屋・萩(迷猫魔忍帳・g09008)の鼻歌が聞こえてくる。ゆらゆらふらふらと黒い尻尾がリズムをとっていた。
(「【おいしくなあれ】があれば、見た目を整えるだけで済むのでありがたいですねぇ」)
数人分の料理を皿に盛りつけた萩は残留効果を発動させていく。その時厨房にエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)が顔を出した。
「萩様、お昼ご飯運びますね」
「エイレーネ殿、ありがとうございます。ではわたしくは先輩方をお呼びして~」
エイレーネへ礼を言うと萩は小走りに厨房を出て、昼食が出来たと収容所内を伝えて周る。
施設の料理番として雇われることになったエイレーネと同じ流派の料理人であると萩も紹介し、二人のディアボロスは収容所の内側に入り込んでいた。
やがて萩の声を聞いて、あるいは美味しそうな香りに誘われて、所員のウェアキャット達が集まってくる。席に着き料理を口に運べば、残留効果によって美味しくなった昼食にウェアキャット達は歓声をあげる。
「これは美味しそうですね。では人間達の分を運びましょうか」
やがてこの収容所の管理者である中年女性のウェアキャットも現れ、喜んで料理を食べている所員達を見てにこやかな笑みを浮かべる。
「それなら新入りの私が、運動もさせます」
戻ってきた萩がすかさず手を挙げてアピールすると、中年女性はそれではお願いしますね、と人間の女性達がいる軟禁部屋へ向かって歩き出す。
その後を料理を運びながら追いかける萩は一瞬だけエイレーネと視線を交差させる。かすかに首肯するエイレーネ。ここまではおおむね手はず通り。
エイレーネは調理器具を片付ける風を装って厨房に入るとそのまま勝手口のドアを静かにあけた。
「集まっていますか?」
「ほぼ全員。管理者の方は萩様と共に女性達の方へ」
そこに残留効果で迷彩状態になったクロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)が滑りこんできた。囁き声での彼女の問いに永レーナもまた小さな声で答える。
答えを聞いたクロエはそそくさと厨房を抜けて所員達が食事をしている部屋に飛び出す。その様子は心なしかせわしない。
(「これ以上亜人と同じ街にいると、私は衝動を抑えきれそうにありません」)
突然の侵入者に所員達が驚くその瞬間、クロエはパラドクスを発動させる。食卓を中心とした周囲一帯に、まるで蛇のようにのたうつ枷が付いた鎖の群れが現れ、一瞬にしてクロエの視界の中にいる所員達全員が手足を拘束される。
「う、うわなんだこもごもご!」
「申し訳ないですが、しばらく静かにしていてもらいます」
動けない所員達の口を、クロエとエイレーネが手話して塞いでいく。こうすればこれから逃げ出す己たちを追いかけることも、亜人を呼ぶこともすぐにはできないだろうというディアボロスたちの作戦だ。
食事で呼び寄せたおかげでほとんどんの所員達は一気に拘束ができた。二人は先行する萩の元へと急ぐ。
「な、なにを!?」
二人が萩の元へ辿り着いた時、女性達の部屋のドアはあけられていた。即座に管理者の手足も枷で拘束され、彼女は突然の事態に目を白黒させる。
驚いているのは人間の女性達もまた同様だ。そんな彼女達の前にクロエは達、静かに宣言する。
「私達は『冒険者』です」
「ぼ、冒険者
……!?」
「それっておばあさんが話してた……」
「でも、もうずっと昔にみんな殺されてしまったって」
この地で隠れて暮らし、そして捕まった彼女達はカナンの地でのことを知らない。そこでクロエの隣にエイレーネが立つ。
「我々冒険者は、カナンの地より亜人とその使用人を追放しました」
「ここより西に安全な地があります。少なくとも、ここよりは人間らしく暮らせる地が」
「ええ!?」
エイレーネとクロエの言葉に女性達の間を衝撃が走る。そんなことがあり得るのだろうか……けれど、今まさに彼女たちは不思議な力で管理者を拘束してみせたのだ。もしかして、本当に……?
「嘘は言いませんよ。付いてきますか?」
クロエの何でもないことのようにいう口調には、けれどだからこそ彼女の強い自信が感じられ。
「皆様が脱出に賛同して下さるなら、命を懸けてお守りいたします……未来のために、どうか善きご決断を」
真摯に誓いを立てるエイレーネの言葉もまた逃げて失敗する事へ恐怖する彼女達の心を強く支える。
「あぁ、何を世迷言を……亜人様に勝てるものなどいるわけがありません」
廊下で拘束される管理者は心底憐れむように嘆く。逃げた所ですぐに捕まるか、下手をすれば死んでしまうだけだ、と。
「そもそも逃げて何になるのです? ここに来た時の貴方がたは食事もまともに得られずガリガリで今にも死にかけていた。外に出ればまたそんな生活ですよ? ここにいれば貴方方は何不自由なく食事もとれて安全だというのに」
「でも、それは『道具』として生かされるだけ……確かにここにいれば食べることには困らないかもしれないけれど、ここから逃げたたらまた飢えて、怯えて、逃げ惑う日々かもしれないけれど……どうせ死ぬのなら、私は『人間』として生きて、死にたい」
一人の女性が、エイレーネをじっと見つめ返しながら管理者へ告げる。そして、エイレーネの手をぎゅっと握った。
「私たちを、逃がしてください! お願いします!」
そしてディアボロス達と五人の女性達の姿は、街の外にあった。収容所から離れれば離れるほど亜人と遭遇する可能性は高まる。だがディアボロス達は事前に聞いていた、なるべく亜人が近づかなそうなルートで、可能な限り姿を隠しながら進んだ。
更に収容所の中で迅速にウェアキャット達を拘束し、声も出せないようにしたことが大きな時間稼ぎとなり、何とか街を出るまで女性奪還の事実は気づかれずに済んだのだ。
吹き荒れる砂塵が逃げ出した女性達を容赦なく吹き抜けていくが、彼女達の足取りは、早くなくともしっかりと、確かに、『人間として生きる』為に一歩一歩踏み占められていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【光学迷彩】がLV2になった!
【平穏結界】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【アクティベイト】がLV2になった!
【能力値アップ】LV1が発生!
●
カナンの地へ向けて、ディアボロス達と五人の人間の女性達の逃避行は続く。
ディアボロス達の活躍により、脱出の事実は彼らが街を離れるまで発覚することはなく。それは同時に追撃部隊の出発が遅れたことを意味した。
結果、ディアボロス達はカナンの地まであと半分と言った所まで逃げ続けることができた。
「いたぞぉ! 女共だぁ!」
背後から聞こえる怒号。振り返れば槍と盾を構える筋骨隆々のオークの集団が迫ってきている。
「ええい、こんな所まで逃げていやがったか。全く手間をかけさせるぜ」
オークのファランクス兵の後方から現れたのは、豚のような頭部をした大柄のオークだった。一見すればただ太っているようにみえるが、巨大な剣を握るその腕の盛り上がりをみれば実際には筋肉の塊であることが容易に見て取れた。
「隊長! あの女共を捕まえたら俺達のものにしていいんですか!?」
「馬鹿野郎!、ありゃ上の方に献上する女だ! ……とはいえまぁ、五匹もいるんだ、ここまで苦労させられた手間賃で二人くらいいただいても、あのウェアキャットのばばぁも文句はいえまい!」
一人は俺が、もう一人はお前らの中でいい戦働きをした奴にくれてやる。オークの剣士の言葉にファランクス兵は色めき立つ。
公私様々な理由で、敵は人間の女性達を傷つける事はしないだろう。彼女達も、オークの言動に恐怖で青ざめつつ、それでも『生きた』瞳でディアボロス達を信じて見守り続けている。
敵はアヴァタール級であるオークの剣士さえ倒せば瓦解するだろう。だが、ファランクス兵が残っていれば剣士との闘いで余計な横やりが入る可能性もある。
どのように戦うべきか、ディアボロス達は己の戦術に合わせて各々立ち回り始めた。
巴屋・萩
あっちゃー、見つかっちゃったかぁ。
どれも大きくて強そう……私じゃ正面からまともにぶつかっても
勝てなそう。
仕方ないのでここは女の人には走って逃げてもらって、私はまず【光学迷彩】で隠れちゃうのであります。
オークの人も女の人狙ってるので、寧ろそっちが気になるんじゃないでしょうかね?
その隙をついて飛び出して攻撃を試みるのであります!
盾に長槍とか厄介なので、出来たら背後を突きたい所でありますね。
それなら脇差や針でもさっさと倒せるはず!
残像の方を狙ってくれたりするとより安全に戦えるんだけどなぁ。
とにかく目指すは不意打ちして初手暗殺決めて敵の陣形を崩して各個撃破!これでありますね!
エイレーネ・エピケフィシア
勝つ前から盛り上がっているようですが、明け渡す命は一つもありませんよ
あなた達に勲功などなく、骨は永遠にこの荒野に埋もれることになります。お覚悟なさい!
敵の数の多さと密集陣形が厄介ですね
ここは『精霊の喚起』の手数の多さで、なるべく多くの敵を襲い陣形を崩すとしましょう
アテーナー様、御身の聖なる眷属をお借りします
《静羽の腕輪》と《智鱗の腕輪》からフクロウと蛇の形をした精霊たちを召喚
フクロウの蹴りで首をへし折り、空に意識が向かい足元がお留守になった敵には蛇が噛み付き
敵の注意を分散させて連携を乱しながら数を減らしていきます
反撃の槍は《神護の長槍》で絡めとったり
《神護の輝盾》で受け止めることで身を護ります
●瓦解する陣形
(「あっちゃー、見つかっちゃったかぁ」)
盾を構え陣形を組みこちらへ向かってくるオークたちを見て巴屋・萩(迷猫魔忍帳・g09008)思考を巡らせる。どの個体も鍛えられた大きな体で、己では正面からまともにぶつかっても勝てそうにない。
「……仕方ない。みんな、先に逃げてほしいであります」
「……っ! はい!」
萩の言葉を聞き、囚われていた女性達は彼方へ向かって駆けだす。
「あ! 女共待ちやがれ!」
オークからすれば一般人の女性達がどれだけ逃げようと、ディアボロスが居なければ捕まえることは容易だ。けれどディアボロスを倒して捕まえた後の事などを考えていたせいか、それとも単に『道具』ごときが自分たちの思い通りにしないのが気に入らないのか、オーク達は一瞬逃げる女性達の方を見る。僅かな時間だが、そこに確かに大きな隙が生まれていた。
「む、あのやろうどこに……ぐあっ!?」
(「やっぱり寧ろそっちが気になるんでありますね!」)
萩が女性達を逃がした狙いはそこにあった。ミスディレクションによって己からそれたその一瞬で、彼女は身を低くし地を蹴って回り込む。
オーク達が視線を戻せば萩の姿は無く、まるで消え失せたかのよう。そしてオークが己の横に屈む萩は残像を生み出し両手に針剣を握ってオークの胸を深々と貫いた。
「く、くそう、てめぇ!」
「馬鹿野郎! 陣形を崩すんじゃねぇ!」
見事に決まった暗殺術で一体が崩れ落ちる。浮足立ったオーク達が槍を突き出そうとして密集陣形が乱れそうになると、炎剣士の怒号が飛ぶ。
そこで我に返ったオーク達は盾を構えなおそうとする、だが。
「女神に仕える聖なる獣よ、穢れし者らを清めたまえ!」
エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)の高らかな祈りが響き、彼女の腕輪から二つの影が飛び出した。
「勝つ前から盛り上がっているようですが、明け渡す命は一つもありませんよ」
「ちっ、なんだこりゃ、ぐあっ!」
遥か空から人ほどの大きさがある梟が急降下する。質量と速度を乗せた巨大な足から繰り出さ多蹴りがオークの首をへし折った。
「くそ、上から来やがる……ぎゃあっ!」
空からの強襲、それに対して他のオークが頭上を警戒した時。彼らの足元に這いよった大蛇が屈強な足をかみ砕く。
ファランクス兵の密集陣形をう厄介だと考えたエイレーネは、初手で暗殺を成功させ陣形を崩しかけた萩の成果が、炎剣士に建て直させられるのを防ぐべく動いたのだ。
「あなた達に勲功などなく、骨は永遠にこの荒野に埋もれることになります。お覚悟なさい!」
「く、くそぉ!」
浮足立って不完全な状態の陣形から繰り出される反撃の槍を、籠を宿す槍で絡めとり、盾で受け止め、エイレーネは迫る。
反撃を抑え込まれたオークの胸を萩と彼女の残像が貫き、突き出された槍が散らす残像を割って梟が強襲する。
「ちぃ、使えねぇ奴らだ……!」
炎剣士は率いてきた部下たちの醜態に苛立ちを隠さず罵る。
萩とエイレーネによって、ファランクス兵の最大の武器である統率のとれた密集陣形は機能不全に近い状態に陥った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】がLV3になった!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】がLV3(最大)になった!
【ダメージアップ】LV1が発生!
クロエ・アルニティコス
欲にまみれた、お前たちらしい啖呵ですね。
お前たちのことを考えて、姿を見て、声を聞いて。
そうしているだけで、色々な感情が入り混じる。
私の安寧のため、死んでください。
【カリュブディス・ネペンテス】を使用し、カリュブディスを象った怪物を作り出し、間合いを保つ敵を蔓を伸ばして捕縛、捕虫器の中へと放り込み捕食させます。
警戒しているつもりですか?
構いませんよ、そのまま遠巻きによく見ていてください。
お仲間が喰われるところを。
その後も魔法の長槍を蔓で牽制しつつ、敵の足を蔓で捕縛、捕虫器へと投げ入れていきます。
それなりに気分は晴れましたよ……まだ足りませんが。
宝心・ライラ
アドリブ台詞、連携歓迎
「みんなー!助太刀に来たわよ!」
逃げてきた仲間達を出迎える形で戦場へ
女の人たちに毛布を手渡して「少しだけ待っててね」とウインクしてから参戦するわ
「残念だけどこの人達は渡せないの。私のダンスだけで満足してくれないかしら?」
腕輪型に縮めて携行しているフープを展開し、蠱惑的な舞でオークさん達の視線をこちらに釘付けにするわ
でも踊り子には手を振れないのがマナーよ
近寄ってきたら光と熱を纏ったフープで一刀両断しちゃう
間合いをとって攻撃してきたらジャグリングで投擲攻撃しつつ舞踊のステップで距離を詰めるわ
「これがあなたのハッピーエンド。せめて夢の中で私に好きなダンスを踊らせるといいわ」
●二つの終焉
女達は逃げる。己たちを助けれくれたディアボロス達の、戦いの邪魔にならないために。
「きゃっ」
「大丈夫?」
突如現れた人影に、先頭を行く少女がぶつかる。見上げた少女の目に映るのは青の瞳。宝心・ライラ(ミス・ハッピーエンド・g01071)だった。
「頑張ったわね、少しだけ待っててね」
ライラは持ち込んだ毛布を女性達へ手渡すと、パチリとキュートにウィンクを残し、彼女達が逃げてきた方向へ駆け出す。
「みんなー! 助太刀に来たわよ!」
「ちっ新手のディアボロスか!」
他のディアボロス達によって、陣形を乱されながらも槍を構えるオーク達。対するライラは、笑顔を崩すことなく腕を振るう。すると、填められていた腕輪が大きくなり、丈夫なジャグリングフープへと変化した。
「残念だけどこの人達は渡せないの。私のダンスだけで満足してくれないかしら?」
そう言うとライラは、フープを回しながら踊り始める。まるでそれ自体が独立した生き物のようにフープが回り、それに合わせてどこか蠱惑的な彩を含んだライラのステップが披露される。
「な。なんだありゃぁ」
突如始まったショーに、オーク達も思わず視線を奪われる。寒々とした荒野の中で、まるでライラだけがスポットライトを浴びているかのよう。彼女の踊りが、笑顔が、世界を塗り替えていく。
「……はっ! くそ、時間稼ぎか何かのつもりか!」
我に返ったオークの握る槍が、魔法の力で伸びてくる。ライラは舞踏のステップのまま、瞬く間にオークの眼前に迫った。
「踊り子には手を振れないのがマナーよ」
「ぐはぁっ!」
ウィンク。そして一閃。ライラの手の中で、フープは日輪の如き光と熱を放ち、オークを一刀両断していく。
「てめぇ!……な、なんだ!?」
仲間を倒したライラに、別のオークが槍を向けた時、その体に蔦が絡みついて地面から遠ざけていく。
「離せ、離せくそぉ!
「欲にまみれた、お前たちらしい啖呵でしたね」
クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)が吊り上げられたオークを見る瞳は、どこまでも冷たい。けれどその深奥には、闇の熱がぐつぐつと蠢いている。
オークのこと考え、姿を見て、声を聞いて。そうしているだけでクロエの中に色々な感情が入り混じる。
「私の安寧のため、死んでください」
「離せ……ぎゅあああああ!!」
暴れるオークの願い通り、蔦は緩み離れた。そしてオークの体は、クロエが作り出した巨大植物の捕虫器へ消えていく。続く絶叫。捕虫器の中には強力な溶解液が並々と蓄えられていて、強靭な亜人の肉体も骨すら残さず生きたまま溶かしていくのだ。
「く、くそ、なんてことしやがる」
さすがのオーク達も、仲間が生きたまま溶かされていく恐怖と激痛から挙げた悲鳴に、思わずじりじりとクロエ達から距離を取る。
「警戒しているつもりですか?」
離れた距離から槍を伸ばそうとしているオークに、クロエはどこか嘲笑を含んだ声色で尋ねる。
「構いませんよ、そのまま遠巻きによく見ていてください。お仲間が喰われるところを」
「う、うるせぇ! そんなもんディアボロス如きに足を掬われる方がわりぃ!」
クロエの挑発に、怒鳴り返しながらも近づこうとしないオーク。しかしそこにライラが迫る。
「これがあなたのハッピーエンド。せめて夢の中で私に好きなダンスを踊らせるといいわ」
「ぐぎゃっ!」
「まぁ、離れていたからって捕まえられない等とは言っていませんが」
「ひああああっ!?」
地面を這って忍び寄った蔦が、ライラに蹴散らされるオークの足首に絡みつく。そのまま引き倒し荒れた大地を引きずられたオークが、また一人捕虫器へ放り込まれる。
「それなりに気分は晴れましたよ……まだ足りませんが」
クロエの瞳の奥の熱は、まだ収まる気配を見せない。
最初に陣形を崩されたオーク達は、そのままディアボロスの猛攻に押し切られる形で殲滅されていくのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【水源】LV1が発生!
【現の夢】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV2が発生!
●
風が駆け抜ける荒野に、いくつもの死体が倒れている。亜人。オークのファランクス兵。
それは亜人が支配するこのディヴィジョンであってはならない光景。それを前に、炎の剣を構えるオークは不満げに鼻を鳴らした。
「だらしねぇ……だらしねぇ奴らだ」
剣から放たれた炎が、部下達の骸を瞬く間に燃やし尽くす。それは弔いなどではない。ただ単にこれから戦う己の足元のゴミを処理したに過ぎない。
助け出した女性達を追ってきた追跡部隊は、隊長である炎剣士のオークを残すのみ。けれど、その実力は先ほど倒したトループス級とは比較にならない。ここが正念場だと、ディアボロス達は気合を引き締めなおして対峙するのだった。
陳・桂菓
『だらしねぇ奴ら』などと、どの口で言うのやら。贅肉で膨れたその面や腹も、十二分にだらしないと思うがな。
弱者の血肉をしゃぶるしか能のない愚物が、伊達ぶった台詞を吐かないでほしいものだ。耳が腐る。
使用武器は朴刀『驪竜』
【娥影幻攻刃】による幻惑効果で突進をいなし、すれ違い様に斬り裂く。
仮に幻惑を破るようなら大剣との打ち合いになるわけだが、朴刀の重量と頑強さをもってすれば対抗できるはず。渾身の膂力と速度でもって、即座の反撃の一閃を見舞う。
そして【温熱適応】は直接炎を防ぐのは無理でも、まき散らされた炎で気温が上がった中を動き回る一助にはなるだろう。まあ、多少体を炙られた程度で止まってやるつもりはないが。
●折れぬ者
「『だらしねぇ奴ら』などと、どの口で言うのやら。贅肉で膨れたその面や腹も、十二分にだらしないと思うがな」
敵意を秘めた紫水晶の如き瞳を細く鋭く、陳・桂菓(如蚩尤・g02534)は炎剣士を睨みつけ言葉を吐くと、その手になぎなたと刀の間のような朴刀と呼ばれる武器を構える。
「弱者の血肉をしゃぶるしか能のない愚物が、伊達ぶった台詞を吐かないでほしいものだ。耳が腐る」
「言うじゃねぇか、気に入ったぜ……ぶっ潰してやる!」
炎剣士はいきり立ち駆け出す。分厚い脂肪の奥に潜む両足の筋肉で、荒野を踏み砕きながら驀進する様は暴走特急のようだ。
「惑え……」
対する桂菓は握る朴刀にオーラを纏わせる。刃部分が怪しげな輝きを放ち始めた朴刀を、手首のスナップだけで振り回し構えを取る。怪しげな光が尾を引きながら空を描いてゆらゆらと揺らめいていく。
「読みづれぇ!」
「はあっ!」
不規則に揺れ動く桂菓の朴刀。放たれる光も相まって、炎剣士は彼女の剣筋を捉え損ねていた。そこに放たれる鋭い剣閃。桂菓がすれ違い様に炎剣士の体を切り裂く。
「ぶはははあ! やりやがったなぁ!」
炎剣士は刃から炎をまき散らし、振り向いて桂菓へと大剣を振り下ろす。
「甘いっ!」
桂菓も一瞬で向き直り朴刀を構える。真向から大剣を受け止めるつもりなのだ。
金属と金属が激突する、凄まじい音が戦場に響く。
「っ!!」
脳天を狙って振り下ろされた刃は、桂菓の額の眼前で朴刀によって止められる。炎剣士の膂力は決して侮れるものでは確かになかった。桂菓の両の足が踏みしめる大地が即座にひび割れ、砕け、足首まで沈んでしまうほどの衝撃が彼女を襲っていた。されど。
「ふんっ!」
されど、鍛え上げているのは桂菓も同じ。そしてその手にある朴刀の重量と頑丈さもあれば、こうして何とか対抗もできる。彼女はそこから横に力をいなして、即座の反撃を見舞う。
「ぐはは、なら炎はどうだ!?」
炎剣士の刃から噴き出した炎が、桂菓の体を焼く。熱さと痛みが彼女を襲う、だが、桂菓の瞳に宿る闘志は萎えるどころからより一層の強気輝きを宿していく。
「多少体を炙られた程度で止まってやるつもりはない」
まき散らされた炎の中でも桂菓は一切ひるむことなく、朴刀の鋭い一閃を更に炎剣士へ繰り出していくのだった。
成功🔵🔵🔴
効果1【温熱適応】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
宝心・ライラ
アドリブ台詞連携歓迎
炎剣士が死体を焼き払う姿には一切無感情
ハッピーエンドを終えた者にはもう興味はない
それよりも次なるお客様の幸せな結末を考えなければ
「さあ、あなたの幸せを教えて?」
炎は【水源】で呼び出した川に飛び込んで回避
近寄る時はバケットから溢れるインクで消火を試みる
「貴方の幸せを叶えるのは難しそう。だから無理やりにでも心から笑ってもらうわ」
攻撃の隙をついてオークの腹にハイファイブを抉るように突き刺し、そのまま旋律を奏でる
私の喜びの旋律は対象を釘付けにするわ
例え体が貫かれていても、この状況が幸せすぎて動きたくなくなる程に
「脳が焼き切れるまで聞かせてあげる。幸せの絶頂へ行ってらっしゃいませ♪」
●『笑顔』の音色
宝心・ライラ(ミス・ハッピーエンド・g01071)は楽し気な笑顔で、炎剣士へ歩み寄る。その足元には、炎で焼かれ炭と化して崩れるも、僅かに形を残していたオークの手だったもの。ライラは一瞥をくれることもなく、躊躇せず『ハッピーエンドを終えた者(それ)』を踏み潰し炎剣士へ向かう。もう興味はないから。
ライラの青い瞳に映るのは赤き炎纏う『次なるお客様(炎剣士)』の姿だけ。幸せな結末を考えなければ。
「さあ、あなたの幸せを教えて?」
「幸せねぇ、お前らがとっととここで焼け死んでくれるなら、すぐに女共を捕まえられるからハッピーかもなぁ!」
炎剣士が振るう刃から噴き出した業火がライラを襲う。対するライラは残留効果で生み出された川にその身を預け、極彩色のインクが蓄えられたバケットを取り出す。
「~♪」
鼻歌交じりにライラが取り出した扇。その先端にインクを付ければ筆代わりに空を踊り、描き出されるのは幾つものスマイリーシンボル。
炎剣士の繰り出した業火は、浮かぶカラフルなシンボルを蒸発させ、ライラの水に濡れた肌を焼く。いかにインクと大量の川の水を活用しているとはいえ、炎は彼女の肌を焼き傷つける。間違いなく熱さと苦痛が襲っている筈だ。なのに、それなのに。
「……何を、『笑って』いやがる、てめぇ……」
「~~♪」
炎の中でライラは笑っている。苦痛を感じていないはずはなく、その肌には火傷が汗が滴っている。にもかかわらず、彼女の顔には笑顔が溢れていた。
「私達が死ねばかぁ……貴方の幸せを叶えるのは難しそう。だから無理やりにでも心から笑ってもらうわ」
ライラは炎の中でバンジョーを構えた。指先から紡がれる音色は、戦場にとっては場違いにも感じるほどの、陽気で踊りだしたくなるような素敵な音楽。
「なんだそりゃ……死ぬしかなくて諦めたのか? ガハハハハ!」
ライラの演奏を聞き終えて、首をかしげて笑い飛ばす炎剣士。とどめを刺そうと笑いながら剣を振りかざして。
「ガハハ! グハハ!……あ?」
笑顔が止まらない、そんな自分の異常に気が付いた。
「素敵な笑顔ね!」
「グッ! ハハハハ! てめぇ、何をしやがっブハハハハ!」
炎剣士の意識が己の異常にそれた一瞬を突いて、ライラはバンジョーに付いている刃を、深々と炎剣士の腹に突き立てる。否逆だ。バンジョーに剣が付いているのではな、これは柄がバンジョー型の剣、本来の役目はここからだ。
「グハハハ! なんだ、なんだこれは!?」
ライラが弦を弾く。音は振動として刃を伝い炎剣士へ。腹を貫かれた痛みや怒りを上塗りするような、強烈な喜びの感情が、炎剣士を精神を覆い尽くす。異常。あまりにも異常な事態に、炎剣士は笑いながら困惑する。
「私の喜びの旋律は、対象を釘付けにするわ。例え体が貫かれていても、この状況が幸せすぎて動きたくなくなる程に」
ライラは笑顔で、どこまでも笑顔で炎剣士の疑問を晴らす。そう、『ハッピーエンド』に些かの曇りもあってはならぬから。
「脳が焼き切れるまで聞かせてあげる。幸せの絶頂へ行ってらっしゃいませ♪」
「グオアアハハハハハハハ!!」
苦痛の叫びと笑い声が混じる、奇妙な咆哮。反撃の業火に包まれながら、ライラは己の体力の限界まで弦を弾き続け、炎剣士の『笑い声』に『笑顔』を浮かべ続けるのだった。
成功🔵🔵🔴
効果1【液体錬成】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
巴屋・萩
女の人達は上手く逃げてくれてますかねぇ。
大丈夫そうなら、後はこの敵を倒して終わりでありますね!
とは言え私も炎はあんまり好きでは無いので、遠くから手裏剣投げたりして攻めるのであります。
勿論パラドクスではないので全然効かないのですが、戦い方を印象付ける事くらいは出来るでしょう。
後は大技っぽく大袈裟にかざぐるまを投げてみて、そちらに一瞬でも気を取られてくれたら良いですね。
その隙に静かに駆け寄って、ソニッククローで引っ掻いてやるのであります!
気を反らせた瞬間に【光学迷彩】で隠れられたら、近付くにも苦労が無くて良いのですけどね。
服に刃物を隠してますし、それで敵の反撃の威力を弱めるくらいは出来るでしょう!
●その一撃を届ける為に
(「女の人達は上手く逃げてくれてますかねぇ」)
巴屋・萩(迷猫魔忍帳・g09008)がちらりと背後に目をやる。姿は既に目視出来ない。ディアボロスであれ亜人であれ、邪魔が無ければ追い付けてしまうだろうが、それでも彼女達はしっかりとこの場から逃げてくれた。それならば。
「後はこの敵を倒して終わりでありますね!」
言葉と放つ共に萩は懐から取り出した手裏剣を投げる。最もそれは。
「なんだこれは、ガキの玩具か?」
どれだけ鋭く、急所を狙って正確無比に放たれても、炎剣士の一振りで全て打ち払われる。
尤もそれは萩自身も承知の光景。勝利を導くための布石。『飛び道具ばかり使う』という印象を植え付けるための意識誘導。
「それなら、これでどうでありますか!」
故に徹底する。次に手に取るのは巨大な四方手裏剣。刃一つが萩の上半身程の大きさもあるそれを、つけた銘のように、激しく回転させる。いかにも大技であるかのように、存分にアピールして投擲。
「無駄だ!……何!?」
迫りくる大手裏剣を叩き落とした炎剣士の眼前に、萩が飛び込む。投げつけた大手裏剣に炎剣士の意識が向いたその一瞬、彼女は全力疾走し間合いを詰めたのだ。
全ては子の一撃を届かせるために。
「せいやあっ!」
「ぐあっ! ふざけやがってっ!」
萩の指先に、鋭い鍵爪状のオーラが宿る。瞬時に振るわれた爪がのけ反る炎剣士の頬を裂く。怒りのままに振るわれた大剣は萩の横腹に吸い込まれるように叩きつけられる。
「ぐうっ! まだまだですっ!!」
走る激痛。服の下に隠し持ついくつかの武器が、ある種の装甲のように多少は勢いを減じてはくれたが、それでも尚、その体には無視できぬダメージを負う。
けれど、萩は止まらない。止まれない。
「はああっ!」
「ぐあああっ!?」
萩の周囲で加速していく時間。頬を切り裂いた一撃から逃れた炎剣士の顔へ、反対の手を突き出す。オーラの鍵爪が深々と炎剣士の片目に突き刺さった。
炎剣士は暴れ萩を突き飛ばす。再び距離を開けられてしまった萩だが、痛む横腹を抑えながらも、相手に確かな痛打を与えられた手ごたえを感じて、喜びと共に拳を握るのだった。
成功🔵🔵🔴
効果1【猫変身】LV1が発生!
効果2【ダブル】LV1が発生!
エイレーネ・エピケフィシア
部下の骨が、荒れ地の砂に飲まれることを憂いた……わけではありませんね
もっとも、亜人が部下に甘かろうが厳しかろうが、人々を虐げることには変わりません
今ここで奈落の底へと去っていただきましょう
≪ニュンペーの剣≫と≪神護の輝盾≫を手に敵と対峙します
火炎剣での薙ぎ払いを仕掛けてくる敵に対し
ダッシュからのスライディングで振るわれる刃の下を潜って接近
掠りそうになる刃や炎は盾で受け止めます
あなたの技は恐ろしいですが、大振りすぎますね
歩みを止めずに突撃し、『勇武勝呼撃』を仕掛けましょう
逆手に持った剣を敵の眉間に突き込み、脳まで穿つ貫通撃を狙います!
今、災厄の火を消し去りましょう。あなたの命の灯火と共に!
●勇気の突撃、勇気の一撃
(「部下の骨が、荒れ地の砂に飲まれることを憂いた……わけではありませんね」)
炎剣士に焼かれたオーク達の死体の残り滓が、風に巻かれ舞い散っていくのを、エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)は視界の端に捉えた。
その末路に憐れさを、一切感じないわけではないのだろうが、亜人が部下に甘かろうが厳しかろうが、人々を虐げることに変りはないと、エイレーネは今この場に不要なモノは一切捨てる。視界の端にうつった残滓ではなく、その中央に常に捉えている炎剣士の姿を。
「今ここで奈落の底へと去っていただきましょう」
エイレーネは剣と盾を構えて炎剣士と対峙する。
「うっとおしい奴らばかりだぜ!」
片目を負傷しながらも炎剣士の剣速に衰えは見えない。風を切る音は鋭く、当たれば頭蓋すら一瞬で砕かれてしまいそうなほど。波の戦士でも身が竦むであろう大剣の暴風を前にして、エイレーネの瞳に怯えの色は無かった。
「偽りなき驍勇を前に立ち竦め、蛮勇!」
木を使った柄の剣を高々と掲げ、鬨の声を上げるエイレーネ。恐るべき女怪の生首が描かれた盾を構え、炎剣士へ突撃していく。
「おらぁっ!」
「はあっ!」
炎剣士が凄まじい速度で大剣を振る。エイレーネはそれに合わせて走りこんだまま一気に腰を落とした。土煙をあげるスライディング。目標を失った大剣が虚しく空を斬る。
「んのヤロォ!」
炎剣士がその恐るべき膂力で以て、降りぬいた大剣を即座に切り返し、己が足元へと振り下ろす。しかしエイレーネも負けていない。鍛え上げられた足腰で以て即座に体を起こしながら丸盾を突き出して大剣を防ぐ。
金属同士がぶつかり合う激しい音。
「あなたの技は恐ろしいですが、大振りすぎますね」
「んだとぉ!」
力と力のせめぎ合い。その中でエイレーネは、つい先ほど己があげた鬨の声をもう一度、心の内で高らかに響かせる。戦の女神をご照覧あれ、と。
「今、災厄の火を消し去りましょう。あなたの命の灯火と共に!」
「ぐおおぉっ!!」
盾が僅かに刃を押し返し、生まれた隙にエイレーネの鋭い突きが押し入った。他のディアボロスによって片目を潰されていた炎剣士は視界外からの一撃にとっさに対応できず、眉間に切っ先が突き刺さる。
激しい痛みに怯んだ炎剣士をそのまま盾で押し飛ばし、立ち上がったエイレーネは剣を振るって血の汚れを払うのだった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【託されし願い】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
クロエ・アルニティコス
だいぶ苛立っているようですね。私もですよ。
お前たちを見ているだけで、一瞬一秒でも早く、殺したいと疼くんです。
【オルトロス・クロッカス】を使用し、クロッカスを急成長させ、オルトロスを象った植物の怪物を作り出します。
扇状に噴出する業火に対しては回避ではなく魔力付与で強化したオルトロスを盾にして私の方までくる炎を弱めます。
そのままオルトロスには一点突破で業火を抜けさせ、片方の頭でまずは剣を持つ腕に噛みついて抵抗を封じ、もう片方の頭でその頭部を噛み砕きます。
大きくは変わらないでしょう、ですが。
この亜人どもがあの街に戻ることはありません。
……今はこれで満足しておきましょう。
●切望の花よ咲け
「ちきしょう、あああっ!」
炎剣士は満身創痍に追い込まれていた。無数に体を切り裂かれ、腹を深々と貫かれ、片目を潰され、そして眉間を脳に達するまで貫かれた。
それでも尚、炎剣士は生きていて、残された瞳に爛殺意の炎を燃え上がらせている。
「だいぶ苛立っているようですね。私もですよ」
クロエ・アルニティコス(妖花の魔女・g08917)が絶対零度の瞳を向ける。ここまでやられて尚、生き続ける炎剣士の姿に湧き上がる殺意を抑えきれず、口角の端が上がる。
「お前たちを見ているだけで、一瞬一秒でも早く、殺したいと疼くんです」
クロエは一粒の種を取り出す。手のひらの上で魔力と焦燥を注ぐ。種は主の『切望』を受け、芽を出し、伸びて、大きく成長し、花を咲かせていく。
「種子に宿るは我が焦燥、芽吹け『オルトロス・クロッカス』!」
クロエが放り投げた種から生まれた花は、急激に成長し双頭の犬の怪物へと変貌する。
「花だぁ!? しゃらぅせぇ、灰にしてやる!」
炎剣士から扇状に業火が放たれ、クロエと怪物に迫る。
「耐えなさい」
クロエは怪物の背に触れ、己が魔力を注ぎ込む。怪物はその巨体でクロエの前に立ち庇う。業火がクロエ達を飲み込んでいく。
本来ならば主従共々に、一瞬で焼き尽くされておかしくない熱量。けれどクロエの守りは怪物を包み、僅かに焦げさせるのみ。そして怪物に守られたクロエもまた、炎が弱められ致命となる熱傷は負わない。
「……征きなさい」
「……!」
主の命に、花の怪物は音無き咆哮を上げると、一切の躊躇なく業火の中炎剣士へ向かって駆けだした。
「何!?」
「!!」
一点突破。業火を突っ切り炎剣士の前に飛び出した怪物。双頭の一が顎を開き、大剣を握る腕に噛みつく。
「ぐ、この……ぐああっ!」
振り払おうとする炎剣士だったが、満身創痍の今噛みつく怪物に抵抗する術もなく。そうこうしているうちに残された双頭が頭部へと噛みついた。
「……いけっ」
「!!」
クロエの言葉に怪物は力を籠め、骨が砕ける音と共に炎剣士の頭がかみ砕かれ、ついに力なく大地へと倒れた。炎が失われた大剣が地面に突き刺さる。まるで炎剣士の墓標のように。
クロエは大きく息を吐く。十数体のトループスと一体のアヴァタールがここに斃れた。そして亜人の犠牲にされるはずだった人間たちを助け出せた。確実に亜人の数を減らす成果を出せた。趨勢が大きく変わるわけではない、けれど。
(「この亜人どもがあの街に戻ることはありません」)
「……今はこれで満足しておきましょう」
クロエを含め傷を負った者も多いが、ディアボロスとしての活動の妨げになるような状態は、誰一人としていない。傷跡も残らないだろう。
完全勝利と言ってもいい戦果と共に、ディアボロス達は、先行して『逃げて(生きて)』いる女性達に合流するため、足早にその場を立ち去る。
後には、一振りの大剣だけが残されていた。
成功🔵🔵🔴
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!