リプレイ
リップ・ハップ
一匹一匹丁寧に、確実に絶命させていく
刃が鈍れば苦しみが増す
手数をかければ痛みが増す
一斬必殺が私にできる最大限だ
怪物を狩る
いつもと同じ事
これまでし続けてきた事
語りかけること? あるかよ
もうそうなっちまったのなら、私は狩人としてしか接せられねい。怪物相手としてしか……接しちゃならねい
…………じゃなきゃ私は、
どうか
せめて
精一杯抵抗してくれ
この刃を鈍らせねいでくれ
私は抵抗しねいから
痛みにも
お前らを終わらせる事にも
山田・菜々
牢からの脱出を担当している仲間を支援するためにも、派手に暴れてやるっすよ。
エアライドで派手に飛び回りながら、破軍衝で敵をぶっ飛ばすっす。
元一般人を殺すのは忍びないっすけど、こうなったら楽に逝かせてやるのが情けってもんすよね。
苦しかったっすね。楽にさせてあげるっすよ。
戦場ではいろいろとむごい行いを見てきたっすけど、これだけは慣れたくないもんすね。
こんなことをしたやつは絶対にひどい目にあわせてやるっすからね。
目標を見つけるのに、難しい事は何もなかった。
異臭と絶望感の漂う牢の中を、ただ耳を澄ませて。その笑い声を辿るだけでよかった。
「ヒヒッ……ヒヒヒヒ」
天井からぶら下がった、巨大なコウモリの姿を認めて。山田・菜々(正義の味方の味方・g02130)が、感情を抑えた声で静かに呟く。
「……牢からの脱出を担当している仲間を支援するためにも、派手に暴れてやるっすよ」
その声に気付いたか。コウモリの体に乗った男の顔が、その目を開いて。
落ちくぼんだ……しかし、ぎょろりと見開かれた目が、菜々の黒い目を捉えて。ニタリと、笑う。
途端、響き渡る異音。
「……っ、耳が痛いっす」
菜々が思わず耳を抑える中、牢の中に羽ばたきと笑い声が広がってゆく。
「仲間を呼んだってとこか」
徐々に近づいてくる羽音……その敵意を感じ取りながら。リップ・ハップ(Reaper Harper・g00122)は大鎌『伯爵』を構える。
「……奥に『巣』があんね」
紅玉の目で見つめる先、羽音の集中する暗い廊下の向こうを、あえて『巣』と表すリップの声はただ静かに冷たい。
『では、そちらは私が……』
「援護するっすよ」
その巣へ向けて駆け出さんとする仲間の為に、菜々が空を蹴る。
大きく羽を広げて向かい来る人面コウモリの姿は、恐らく真っ当に戦った事など無いのだろうと。一目で分かる程には、隙だらけで。
「邪魔はさせないっすよ!」
振り抜く拳の衝撃が、人面コウモリの体を砕き。その衝撃が、後に続くコウモリまでも地に叩き落とす。
『ありがとうございます』
礼を述べ、巣へと進んでゆく仲間を見送って。菜々は握ったままの拳に、思わず力を込める。
手のひらに爪が喰い込んでも、今しがた殴り飛ばした。肉を砕いた嫌な感覚が、まだ消えない。
(「戦場ではいろいろとむごい行いを見てきたっすけど、これだけは慣れたくないもんすね」)
集まってくる人の顔を乗せたコウモリは、紛れもなく倒すべき異形なのだと分かっていても。元は一般人であったという事実は消えない。
そんな彼らを手に掛けねばならない状況に、思う事が無いと言えば嘘になる。
それでも。
(「こうなったら楽に逝かせてやるのが情けってもんすよね」)
たった一つしかない、彼らの苦しみの終わらせる方法を実行できるのは、ディアボロスだけなのだから。
「苦しかったっすね。楽にさせてあげるっすよ」
それが、救助に向かう仲間の支援にもなると信じて。菜々は再び拳を振るう。
この牢エリアで、無差別に人に襲い掛かるコウモリなど、救助の邪魔でしかないから。
誰かがこれに相対して、殲滅しておかなければならないから。
菜々と共に、この場に留まったリップは、淡々と大鎌を振るう。
ひらひらと。揺れて舞うコウモリの軌道を、冷静に読み取って。
まるで、プログラムされた機械のように。一振りで、首を一つ。確実に。
コウモリたちを見るリップの目に、憐みの色は無い。情けも要らない。
これは、幾度も繰り返して来た事。いつも通りの、狩人の仕事。
時先案内人は、声を掛ければどうとか言っていたような気がするが。
(「語りかけること? あるかよ」)
怪物に、一体何を語ると言うのだ。
狂気に染まった目に、大きく開いた顎。
噛みつかんとする意図が透けて見えるその牙に、あえて左腕を晒す。
まるで飢えた獣のように。リップの腕に牙を立て、口に広がる鉄錆の味に歓喜の表情を浮かべるコウモリへ、その大鎌を振り下ろせば。
異形の体は容易く裂けて、声を上げる間もなく地に落ちた。
……これでいい。
これらは怪物。人を冒涜する形をした、人に仇なすもの。
ゆえに狩人は、これを狩る。
そうあるべきだと、必死で心を飼いならす。
(「…………じゃなきゃ私は」)
怪物の声が絶えるまで、リップの刃は鈍らない。
そうでなければ、苦しみが増すから。
全てを一振りで、狩り落とす。
そうでなければ、痛みが増すから。
「こんなことをしたやつは、絶対にひどい目にあわせてやるっすからね」
ただ唯一、共に戦う菜々が、この言葉を発した時だけは。
リップの怪異殺しとしての冷徹な目の奥に、この状況を作り出した者たちへの確かな怒りが揺らめいていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【怪力無双】LV1が発生!
【エアライド】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ガードアップ】LV1が発生!
キーラ・パーヴェルファング
【鉄線】
彼(十埼)の横から有刺鉄線による斬糸結界で根こそぎウプイリ達を絡め取って殺してあげるわ
十埼がパラドクスで動きを止めてくれるみたいだから、私はその一瞬に屠るだけ
……?
彼らはもう人間じゃないわ。ディアボロスが守るべき存在じゃない
怪物として手を汚す前に死ねたなら、彼らもそう不幸ではないでしょう?
……人間の価値基準はそういうものなのね、これから理解に勉めるわ
血をくれた恩もあることだし
そうね……私は牙、食い破るのが仕事
痛みもなく楽にしてあげられるようにはできていないわ。残念だけれど
十埼・竜
【鉄線】
先に少しだけぼくに時間をくれないか
…このままになんて、しておけない
「mo@n child」で【情報収集、精神攻撃】
沈んで積もった悲嘆と苦悶を掬い上げよう
ぼくはちゃんと聴いててあげる
…きみたちも聴こえたら思い出せるはず
"ひと"だった、きみたちの嘆きを
【捕縛】の泥は少し重いかも知れないけど
そのまますぐ眠らせてあげるから
…お願い、キーラちゃん
(体が破壊される音が過敏な耳を劈く)
(引きちぎられた血と肉は酷く痛々しい)
…そうだけど、きみみたいには割り切れないんだ
…この"ひと"たちは、苦しまなかったと思う?
お願いしといて我儘みたいだけど
…聴こえてしまったぼくは、そうだったらって、思ったからさ
この場所を、一言で表すのならば。これは、澱みだ。
暗く、風通しも悪く。悪臭が漂い。人々の絶望だけが、木霊する。
目にも、耳にも、鼻にも。絶え間なく不快感が押し寄せてくる牢の区画で。
「先に少しだけ、ぼくに時間をくれないか」
血の気の引いた顔色で、人面コウモリ達を直視しきれないままで。それでも、十埼・竜(スカイセンサー・g02268)は、キーラ・パーヴェルファング(大公の牙・g08440)へそう告げた。
(「……このままになんて、しておけない」)
彼らの境遇に思いを寄せてしまったら、それは到底、直視出来るものではないけれど。何をどうしたって、この耳には彼らの声が届くから。
(「ぼくはちゃんと聴いててあげる」)
ずぶずぶと沈みゆくような、終わりのない悲嘆と苦悶を。パラドクスの力で、掬い上げれば。
(「……きみたちも聴こえたら思い出せるはず」)
泥の形をした悲鳴は、人面コウモリ達へと降り落ちる。
未完成であるがゆえに、クロノヴェーダと呼ぶにはあまりに弱いコウモリ達は、幾体かがそのまま消滅して。
「……お願い、キーラちゃん」
残る者は、キーラの鋭利な有刺鉄線に、絡め捕られた。
既に動けぬ状態ならば、何も手間取る事はない。
人形のように整った感情の見えない顔の下に、激痛を隠して。キーラは躊躇うことも無く、鉄線を手繰って。握って、締めて。
ギチギチと。体を締め上げる鉄線が、体積の限界を超えた瞬間に。
「……ぅっ……」
切り刻まれた血と肉が、廊下を真っ赤に染め上げる。
「……?」
異形のヘッドホン越しに、更に耳を塞ごうとする竜の様子に、キーラは不思議そうに首を傾げた。
何故そんなにも、痛そうなのだろう?
「彼らはもう人間じゃないわ。ディアボロスが守るべき存在じゃない」
彼らの痛みは、彼らのもの。
倒すべき相手に共感してみたところで、竜にメリットなど無いというのに。
「怪物として手を汚す前に死ねたなら、彼らもそう不幸ではないでしょう?」
表情も、声の抑揚も乏しいままに。淡々と問うキーラの様子が、竜の目には少し寂しくも見える。
「……そうだけど、きみみたいには割り切れないんだ」
羽音と笑い声の第二陣が、竜達のすぐ傍まで近づいて来ている。
「……この"ひと"たちは、苦しまなかったと思う?」
チャンネルの合わない、ラジオみたいに。完全に調子の外れてしまった、狂ったトーンの笑い声。
けれど、例え本人が見失っていても。
「……聴こえてしまったぼくは、そうだったらって、思ったからさ」
パラドクスの力を高めれば、合わせるべきチャンネルは、ちゃんと分かる。
(「"ひと"だった、きみたちの嘆きを」)
……こんな事を言ったら、キーラに我儘だと思われてしまうだろうか。
それでも、聴こえなかった事には出来ないから。
竜は幾度でも、その声を掬い上げ。泥は、彼らを絡め捕ってゆく。
「……人間の価値基準はそういうものなのね」
シュルシュルと、有刺鉄線を操りながら。答えるキーラの声は、やはり淡々としている。
竜の言葉と行動は、合理性に欠けているし。彼自身に、何の利益も無いと思うのだけれど。
それを言ってしまうのならば、彼がキーラに血をくれた事は、利益があっての行動だったのだろうか……と。腑に落ちない疑問が残ってしまう。
キーラの目から見て、人間の心は不合理に過ぎるものだけれど、いつかはそれも理解できるだろうか。
「これから理解に勉めるわ」
分からないけれど、それでも。
血をくれた恩に報いる事が出来るのならば、努めてみようと思うのだ……思うのだけれど。
「……私は牙、食い破るのが仕事。痛みもなく楽にしてあげられるようにはできていないわ」
引き絞る有刺鉄線が、再び血だまりを作る。
その手に激痛と肉を裂く感触を覚えながら、「残念だけれど」と呟いたキーラの声には。
ほんの少しだけ、寂しそうな響きが滲んでいた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【未来予測】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV2が発生!
一・百
※アドリブ連携歓迎
どこにいってもクロノヴェーダは似たようなことをしているな…
ジンのキューコン(狼ほどの九尾の銀狐姿)と出口と牢の最短経路を確認し情報共有しながら急ぐ
話しかける際は友達催眠を用いて警戒させないよう落ち着いた口調で
助けに来た…
直ぐに出してやる
牢の格子から離れるよう伝え
紅玉姫を抜いて斬る
大人一人ならジンに乗せて運べるが動けない人は居るだろうか?
体力の無い者、上手く動けない者には肩をかし連れ出そう
血を奪い、血を与える…
おぞましいな…
鳩目・サンダー
やることは山ほどあるしどこから手を付けたらいいかもわからねえ。
だが「端くれのアーティスト」としてはそんなのは日常だ。
【パラドクス通信】で仲間と連絡を取り合いつつ、避難までの手筈を整える。
偵察 観察 技能を生かして、牢と鍵の場所、避難ルートを検討する。アート技能でメモ書きも怠らない。
混乱が発生した時に一気に動けるように、飽くまで自分は隠密行動。見つからないことを最優先で。
一気に状況が変わるからこそ下調べに意味が生まれるのだから。
『避難経路の確定と確保』
大目標をそこに定めて、状況把握に徹する。
アドリブ、連携を歓迎します。
暗い廊下は空気が滞り、腐臭で満ちている。
「どこにいっても、クロノヴェーダは似たようなことをしているな……」
その劣悪な環境に、一・百(気まぐれな狐・g04201)は表情を曇らせる。
(「やることは山ほどあるしどこから手を付けたらいいかもわからねえ……」)
多くの人が囚われているというこの牢のエリアは、この研究所の大部分を占めているのだろう。
鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)が見つめる廊下は、闇が濃くて先も見えず。それ程多くの人々を……出来れば、生存者の全員を救おうと言うのならば、問題は山積みの状態。
(「だが「端くれのアーティスト」としてはそんなのは日常だ」)
締め切り間際のトラブルは、無い方が珍しい。この程度は慣れっこなのだと、己の胸に湧きかけた不安を、サンダーは笑い飛ばす。
創作とは、イメージが湧いた瞬間に筆を取るもの。でなければ、そのイメージは刻々と色褪せてしまうから。
不安を蹴り飛ばした勢いのままに、高まるサンダーのパラドクスが、共に救出へ向かうディアボロス達の手に、小型の無線機を具現化させた。
「まずは手分けして、出口と牢の最短経路の確認か」
「あと牢の鍵も」
頷き合い、ディアボロス達はそれぞれ、枝分かれした廊下へ散ってゆく。
先に突入していった仲間は、既に人面コウモリ達と交戦しているのだろう。
戦いの喧騒に注意を払いながら、サンダーは建物の構造をメモしてゆく。
(「奥に行くほど、牢が狭くて厳重になってるのか……?」)
通信機に耳を傾け、得た情報を書き加えながら。サンダーは思考を巡らせる。
ここで慌ててはいけない。
人面コウモリとの戦いも、そう時間は掛からないだろうし。時が来るまでは、無用の騒ぎを起こさない方がよい。
一度騒ぎが起きてしまえば、もう立ち止まる事は出来ないから。人々の運命は、今ここでどれだけの準備が出来たかで全てが決まるのだ。
「そっち、今いる辺りの牢ってどうなってる?」
「鉄の扉に覗き窓が付いてる……随分と狭そうだ」
やはり。
入り口付近では格子の牢に、複数名が纏めて収容されていたが。このエリアは、一定の方向に向かって一部屋あたりの収容人数は徐々に少なくなり、牢は狭く厳重になってゆく。
ここから推察できる事は一つ。
(「たぶん、実験の段階が進んでいる人ほど、厳重に管理され孤立させられてる」)
実に腹立たしい推察結果だが、今まで得たエリア構造の情報に、この推察を加えれば……導き出されるのは、実験室の位置。そこから、鍵の保管場所も絞り込む事ができる。
「牢の鍵、たぶん場所が分かったんで、確保してくる」
手の中の通信機に、端的に告げて。
出来る最善を尽くす為に、サンダーはサンダーは走るのだった。
●
(「牢の鍵、確保の目途が立ったのか……」)
通信機越しに聞こえた、仲間の声に百は少し安堵したように、小さく息を吐いた。
共に施設内を観察していたキューコン……九つの尾を持った狐の様に見えるジンが、どうしたのかと問う様に、百へと頭を寄せる。
最悪、鍵が見つからずとも、牢を破壊してでも人々を逃がすつもりであったけれども。思った以上に、状況は深刻なようだ。
百は改めて牢の人々に視線を向けてみるけれど、誰とも目が合わない……牢の外に人が居るのだから、普通は助けを乞いそうなものなのに。
入口付近に閉じ込められていた人々は、まだ人らしい表情を浮かべて、段取りを説明する百の言葉に、真剣に耳を傾けてくれたのだが。このエリアを奥に進むほどに、人々の顔から表情が消えてゆく。
牢の格子に体を預けるようにして、ぐったりと座り込んでいる男に、百はゆったりと。穏やかな声色を意識して、声を掛ける。
「助けに来た……直ぐに出してやる」
無用な騒ぎを起こさないという意味では、鍵の到着を待つ方が良いのかもしれないが。この場で、牢を斬り開いて見せれば、彼らに希望を与えるデモンストレーションにはなるだろう。
格子から離れるようにと優しく語りかける百の声に、友達催眠の効果も重なって。虚空を見つめていた男が、ようやく百へと振り向いた。
「あんた……牢から出られたなら、はやく逃げろ」
「いや。俺は助けに……」
百の言葉がちゃんと聞こえていないのか、男は震えた声で「逃げろ」と繰り返す。
「実験される前に、はやく逃げろ。俺はもう……」
男の言葉に、尻尾が総毛立つような気がした。
助けてもらえるかもしれないという、この状況で。「助けてくれ」ではなく、「逃げろ」と言わせる場所なのだ、ここは。
(「血を奪い、血を与える……おぞましいな」)
ぞくりと背筋に走る悪寒が、クロノヴェーダへの嫌悪によるものなのか、怒りによるものなのか。百自身にも判別がつかない。
ただ、男をこのままには出来ないから。
出来るうちに、一人でも多くここから連れ出さなければと。
やりきれない気持ちを振り払うように、百は静かに、紅く輝く刃を抜くのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!
【命中アップ】LV1が発生!
メルセデス・ヒジカタ
何もわからなくなったまま、最期を迎えるのがいいのか
それとも……最期くらい、人の心を取り戻し、人として終末を迎える方が望みなのか
どちらが彼らの望みかは、私にはわかりません
でも、人として生まれたのですから……最期だって、人として幕を閉じたいでしょう
生きてるのですから、生に執着するのは当然
望んで、死を選ぼうと思う方の方が少ないでしょう
だから、生きることを選んだあなたを、私は責めも笑いもしません
むしろ……この苦痛を、よくここまで耐えたと
さあ、あなたが望むなら……できるだけ苦しまずに、苦しみから解放するお手伝いをしましょう
受け入れるならば……目を瞑って
目を瞑ってるうちに、戦覇横掃で介錯いたしましょう
ニーニ・ニニ
……ごめんなさい。
ぼくには、あなた達を助けることはできません。
でも、あなた達をこのまま放っておくことも、できません。
ぼくには、あなたの命を終わらせることしかできないのです。
だから。
あなたの名前を、教えてください。
ぼくは、あなたを人として、終わらせてあげたいのです。
実験は痛かったですか?
怖かったですか?苦しかったですか?
これ以上犠牲者が出ないように、
こんな実験はぼく達が終わらせます!約束です!
ぼく、約束は絶対に守りますから!
終わらせる命の重さを忘れないように、最期は爪で、直接。
おやすみなさい。
……助けられなかった悔しさで涙が零れそうですが、
泣くのは、全部終わらせた後ですよ。
行きましょう、ペペン!
悲しい笑い声を辿って、ディアボロス達は牢の並ぶエリアを進む。
『……奥に、巣があんね』
羽音と笑い声が集中している方向を差して、それを『巣』であると。そう表した仲間は、彼ら人面コウモリとどのように向き合うべきか。既に心を決めているのだろう。
「では、そちらは私が……」
そう言って進み出た、メルセデス・ヒジカタ(冥腐魔道・g06800)の心は、まだ少しだけ迷っている。
誰も、望んでこのような姿になりたかった訳ではないだろう。
ならばそれを認識する事なく、何も分からなくなったまま最後を迎える……というのも、一つの希望の形。
だが、例え残酷な現実を突きつける事になったとしても、最期くらいは人の心を取り戻して、人として終末を迎える方が彼らのためなのか……未だ、メルセデスの中で答えは出ていない。
「ありがとうございます」
道を拓いてくれた仲間に礼を述べて、メルセデスの背に続くのは、ニーニ・ニニ(ウェアキャットのスノウメイジ・g08923)。
(「……ごめんなさい。ぼくには、あなた達を助けることはできません」)
道を抜けた先に見つけた、広い部屋の中で。生気の無い人の顔を乗せたコウモリの群れを前にして、ニーニの小さな体が少しだけ強張る。
彼らは助けられないと言われた時から、何だか胸がぎゅーっと苦しくて。
(「でも、あなた達をこのまま放っておくことも、できません」)
それは、目を逸らしたり、背中を向けたりしてはいけないものだと。ニーニは思ったのだ。
「ぼくには、あなたの命を終わらせることしかできないのです」
だから、メルセデスの背中を追って。ここまで走った。
「あなたの名前を、教えてください。ぼくは、あなたを人として、終わらせてあげたいのです」
部屋に満ちた笑い声が、一瞬にして静かになった。
人面コウモリ達の顔から、軽薄な笑いの表情は剥がれ落ちて。ぎょろりと見開かれた目で、ニーニを注視している。
「生きてるのですから、生に執着するのは当然。望んで、死を選ぼうと思う方の方が少ないでしょう」
そこに、メルセデスが言葉を続ける。
(「どちらが彼らの望みかは、私にはわかりません」)
未だに答えは出ないけれど。
きっと、人によって答えは違って、正解なんて存在しないから。
(「人として生まれたのですから……最期だって、人として幕を閉じたいでしょう」)
もしも自分が同じ立場であったのならば、そう思う……そう思える人でありたいと、思うから。
「だから、生きることを選んだあなたを、私は責めも笑いもしません。むしろ……この苦痛を、よくここまで耐えたと」
彼らの心に寄り添える言葉を、メルセデスは選び、紡いてゆく。
……笑い声も、羽音も、とうに止んでいる。
動く者も居ない。ただ、そこかしこから、ぱたっ、ぱたっと。小さな雫が、落ちる音がした。
「実験は痛かったですか?」
彼らには、手が無いから。零れ落ちるまま床に溜まってゆく雫に、ニーニの目も潤みそうになる。
「怖かったですか? 苦しかったですか?」
けれど、今は泣いている場合ではないから。
服の端をぎゅっと掴んで、堪えながら。ニーニはお日様の瞳で、彼らの目を真っ直ぐに見つめた。
「これ以上犠牲者が出ないように、こんな実験はぼく達が終わらせます! 約束です! ぼく、約束は絶対に守りますから!」
その先の言葉は、幼い少女に言わせるには、残酷過ぎるから。
メルセデスが優しく制して、後を引き継ぐ。
「さあ、あなたが望むなら……できるだけ苦しまずに、苦しみから解放するお手伝いをしましょう。受け入れるならば……目を瞑って」
一人、また一人と。
覚悟を決めたのだろう人々が、天井から降り立つ。
「もう……終わらせてくれ」
疲れ切った……それでも笑っていた時よりは、よほど人らしい表情をした人々が、目を伏す。
その覚悟を受け止めて、抜き放つメルセデスの刃は。彼らの痛み、苦しみが長引く事のないように。
声を上げる間も与えずに、その首を落した。
「ひっ……にたくない」
覚悟を決めたとはいえ、その恐怖を抑え込める者は多くない。
思わず零れる本音……震えた声に、カチカチと鳴る歯の音を、ニーニの猫の耳は拾ってしまう。
その度に、ニーニの胸はまたぎゅぅっと、苦しくなるけれど。
この重たさを忘れないように。
「おやすみなさい」
ニーニはその手で、氷の爪で。彼らに、目覚めぬ眠りを与えてゆく。
●
……部屋が静寂で満たされて。やるべき事を、やり遂げたと知って。
メルセデスは刃の血を払いながら、深く息を吐いた。
「この部屋は、これで全員ですね」
その言葉に、少し気が緩んだか。ニーニの視界が、じわりと滲む。
(「泣くのは、全部終わらせた後ですよ」)
けれど、まだやる事があるから。
「行きましょう!」
零れそうになる涙を、メルセデスに見せないように。ごしごしと拭って。
「ね、ペペン」
精一杯声を上げるニーニに、全てを見届けてくれた相棒のペペンは「きゅっ」と頷くのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【士気高揚】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
赤上・イズル
■アドリブ・絡み歓迎
なんとも惨い…
このような非道な行い…見過ごす訳にはいきません!
まずは捕らえられている人達を助け出しましょう!
モーラットのマリコさんに話しかけつつ施設内へ
マリコさんにも手伝って貰いつつ
出来るだけ安全な牢へのルートを見つけマーカーペンで印をつける
牢へ辿り着いたら中にいる人達に
自分が敵ではない事、助けに来たことを告げ
壁の薄い箇所を【一刀両断】で切断
この後施設内の敵と戦闘を起こすので
その騒ぎに乗じて脱出して欲しい旨とマーカーぺンの印の事を話す
今はあなた方をここから脱出させる事しかできませんが
ここにいる敵すべては必ず討ち滅ぼしてみせましょう
あなた方にした仕打ち、死をもって償わせます!
ルィツァーリ・ペルーンスィン
アレンジ連携歓迎
余りに惨すぎる……!
もし吸血実験室が見つからなければ彼等は今も……
それに今まで倒してきた棺輸巨狼やスカーレットデスもひょっとしたら……!
事前に持ち運び易い飴玉を用意
血の味が薄れる位美味しい奴を
建物内では敵の巡回状況や通路の状態を○情報収集しつつ牢に
得た情報は仲間と共有
見張りは○風(使い)の○結界(術)で音を遮り○誘導弾で対処
牢の鍵は○粉砕
囚われた人達は○活性治癒
助けに来た事を告げ
すまない
苦境にある貴方達を見つけ助けに来るのが遅くなってしまった
けど、もう大丈夫だ
奴等は倒す
当然創造伯アレクセイも!
だから俺の我が儘かもしれないが貴方達には生きて欲しい
助けられなかった人達の分もどうか!
南雲・琴音
牢屋からの脱出ですかあ
戦隊物の仲間が囚われるのは、黄金パターンですよね☆
とりあえず、逃げる人達の退路確保が必要なんですよね?
じゃあ、ここの連中が追っていけないように……【防衛ライン】展開しましょう!
さあ、戦闘員(の幻影)のみなさん
追っ手が来ないように見張ってくださいね
うん、まあ……大変な目に遭ったのはわかります
でも、あなた達はまだ、生きてるじゃないですか
この中には、大事な人を奪われた方も居るでしょう
じゃあ、その人達のためにも、生きて生きて生き延びて……望みを、願いを繋げ、叶えて
あなた達を苦しめる連中にとって、あなた達の絶望が一番の栄養
そんなもの……くれてやる義理はない
逆に希望を掴むのが報復さ☆
「なんとも惨い……このような非道な行い、見過ごす訳にはいきません!」
次々と上がってくる凄惨な報告に、赤上・イズル(赤き悪魔・g04960)の手に力が籠る。
ぎゅっと握りしめられたそれは、パラドクス通信によって具現化された、救助に動くディアボロス達を繋ぐためのもの。
これにより、手分けして探索を行い、情報を共有する事で、ディアボロス達はこのエリアの構造をほぼ把握しつつある。
既に仲間によって牢屋の鍵も確保されているため、ここまでは順調と言っても良い状況なのだが……。
「余りに惨すぎる……!」
空気は澱み、悪臭が溜まり。人々の顔から感情が消えている惨状を見せられて、楽観視は出来ないと。
ルィツァーリ・ペルーンスィン(騎士道少年・g00996)もまた、年の割に大人びた顔に怒りを滲ませた。
(「もし吸血実験室が見つからなければ彼等は今も……」)
今更言っても、仕方のない事だと分かっていても。もっと早く、この大領地を見つけられていればと、思わずにはいられない。
(「それに今まで倒してきた棺輸巨狼やスカーレットデスも、ひょっとしたら……!」)
「牢屋からの脱出ですかあ」
思いつめている様子の、ルィツァーリの横顔を見つめて。何故か頬を緩ませながら、南雲・琴音(サキュバスの思想家・g07872)は努めて明るく、重い空気を払拭するように声をかける。
「戦隊物の仲間が囚われるのは、黄金パターンですよね☆」
新宿に流れ着いてからは、特撮物の悪役幹部等を演じる事が、主なお仕事の琴音だけれど。今日はディアボロスとして、救助に向かう側。
「とりあえず、逃げる人達の退路確保が必要なんですよね?」
「えぇ。避難ルートは絞り込めたので、こうして印を……あ、マリコさん。こっちにも印をお願いします」
避難の時に、人々が迷う事のないように。行く先が分かるよう、イズルがペンで壁に印を付ければ。
モーラット・コミュの『マリコさん』も、結わえたおさげをぴょこぴょこと揺らしながら、イズルに倣って印を描いてゆく。
「あとは見張り……ですけど」
「見張りらしい見張りは居ませんね」
見張りが居るのならば、何らかの対処が必要であったけれど。
技能のみではあまり効果を見込めないが、幸いにして、見張りらしき存在は見当たらない。
「恐らく、人面コウモリにされた方々が見張り役を担っていたのでしょう」
周囲の壁に、一通り印を付けを終えたイズルが、見解を口にする。
「じゃあ、ここの連中が追っていけないように……念のため、防衛ラインを展開しましょう!」
人面コウモリに対処してくれている仲間が居る今、それらと鉢合わせする心配は少ないが。万が一に備えておくことは、無駄ではない。
「さあ、戦闘員のみなさん!」
琴音の呼びかけと共に、パラドクスの力が広がって。
如何にも悪の戦闘員と言った風体の幻影が現れ、意気揚々と手を揚げた……かと思えば。
倒すべき敵が居ない中での空打ちであるため、戦闘員たちは、今が定時とばかりに速やかに霧散して退勤してゆく。悪の結社は、意外とホワイトだった。
だが残された防衛ラインの効果は、この先の戦いで必ず役に立つだろう。
印付けでの避難ルートの確保。確保した鍵での牢の解放。そして、防衛ラインによる安全確保。出来る物理的な準備は、全て整ったと言える。
残る問題は、あと一つ。
ギィィ、と。錆びついた音を立てる、鉄の扉の先。
捕らわれた人々の顔は、まるで死人の様に。その目は焦点が合わず、感情が抜け落ちている。
「俺たちは、敵ではありません。貴方たちを助けに来ました」
彼らを刺激しないように。イズルは穏やかに話しかけ、ゆっくりと牢の中へと進む。
「助け……?」
いっそう悪臭の強くなる、不衛生な牢の中。込み上げる嫌悪感を表情に出さぬよう注意を払いながら。イズルは腰を落として、彼らと視線を合わせる。
「俺たちはこの後、貴方たちを捕らえた者たちと戦います」
ぼんやりと虚空を見つめる彼らに、この言葉が届いているのかは……正直、分からない。
それでも伝えなければと。
騒ぎに乗じて脱出して欲しいのだと。伝えるイズルの声に、熱意が籠る。
「……逃げて、ください」
だが、横から口を挟んだ女は、狂気に血走った目で、すっかり怯えた様子で。
「わたっ、しは……もうすぐ、バケモノになるんです。きっと、もうすぐ……ぅ、ぅえっ……」
その、震えた声で咽ぶ様があまりにも痛々しくて。
「すまない。苦境にある貴方達を見つけ助けに来るのが遅くなってしまった」
ルィツァーリの口からは、謝罪の言葉が零れる。
全ての元凶はクロノヴェーダであり、当然ディアボロス達に非など無いのだが。理想の騎士を目指す少年に、それを「仕方がない」と割り切る事は難しい。
「けど、もう大丈夫だ。奴等は倒す、当然創造伯アレクセイも!」
だからこそ、今からできる最善を、尽くすのだと。
煌めく太陽のような黄金の瞳で、真っ直ぐに女性を見つめて。ルィツァーリは力強く語りかける。
「うん、まあ……大変な目に遭ったのはわかります。でも、あなた達はまだ、生きてるじゃないですか」
大丈夫。貴女はちゃんと人間ですよ、と。
琴音がパチリとウィンクを決めれば、女性の目に少しだけ光が戻った。
「この中には、大事な人を奪われた方も居るでしょう」
普段の仕事で培った、子供たちの声援にも負けない発声と、少々オーバーなくらいに感情を込めた表情と仕草で。
「じゃあ、その人達のためにも、生きて生きて生き延びて……望みを、願いを繋げ、叶えて」
牢獄に満ちた絶望を吹き飛ばすように、琴音は声を張り上げる。
人の悦びを糧とするサキュバスである琴音とは対称に、人々を苦しめるクロノヴェーダは、彼らの絶望を糧とする。
(「そんなもの……くれてやる義理はない」)
だから、琴音は笑う。
この牢に満ちていた、壊れた笑い声とは違う。人に安らぎを与える笑顔で。
「逆に希望を掴むのが報復さ☆」
そう悪戯っぽく微笑めば、女性の頬を涙が伝った。
「俺の我が儘かもしれないが貴方達には生きて欲しい。助けられなかった人達の分もどうか」
ポロポロと涙を零す女性の手を取って、ルィツァーリは、その手に飴玉を乗せる。
それは、凄惨な実験の事を少しでも薄れさせる事が出来たらと。美味しいものを選んで、持ち込んだもの。
「ありがとう……ございます」
そう言って。ぎゅっと、その飴を握りしめた女性の手は、涙で濡れていて。飴玉が少ししょっぱくなってしまったかもしれないけれど。
その声は、もう震えてはいなかったから。きっともう、大丈夫。
「今はあなた方をここから脱出させる事しかできませんが、ここにいる敵すべては必ず討ち滅ぼしてみせましょう」
イズルもまた、男性の手を取って。改めて、己の覚悟を語る。
「あなた方にした仕打ち、死をもって償わせます!」
力強いイズルの言葉に、それまで虚空を彷徨っていた男性の目が、ようやく琥珀色の瞳を映して。
ディアボロスたちの与えた希望は、静かに。けれど、着実に。
人々の間に、広がってゆく……。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【活性治癒】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
【ドレイン】LV1が発生!
全ての準備は整い、ディアボロスから希望を与えられた人々は、息を潜めて。その時が来るのを待っている。
静まり返った牢の中、未だ聞こえる笑い声はただ一つ。
「ねぇ。ちょっと遊びすぎじゃない?」
「いいじゃない。どうせ廃棄するのだもの、ねぇ?」
「そうよ。タチアナ様は程々にとはおっしゃったけれど、遊んではダメとはおっしゃらなかったわ」
「それに、こうして小さくしてあげた方が、廃棄もしやすいでしょう?」
ふふふ。ふふふふっ……。
ディアボロス達の耳に、楽しげな少女たちの笑い声が届く。
牢の異変に気付く事もなく、少女たちが談笑しているその部屋が、一体何のための部屋なのかを、ディアボロス達は既に知っている。
『実験室』
その部屋は、今まさに戦場と化そうとしていた。
鳩目・サンダー
逃走経路の確保が出来たと確認できれば行動開始。
戦力の逐次投入は愚策。パラドクス通信を使って機を知らせ、下調べで探し出した実験室に一気になだれ込む。
「トループス相手には試したことが無かったな」
リアライズペイントで敵の姿を描く。全身の色を青くアレンジして、敵味方を分かりやすくする。
更に脚を太く、靴も大きく、力強くなるようにファンアートならではのアレンジを効かせる。
【紅き夜会の囀り】『対象のことを自分より格下だと認識しているほど、威力は強まります。』
そうかい。それではあたしのファンアート乙女は、尊大さも更に大きく胸を張らせて高笑いさせよう。
さあうちのお嬢様と一緒に踊ってくれ。
アドリブ、連携歓迎です。
南雲・琴音
さあて、実験室からコイツら逃がすと面倒そうですし、入口のところで【防衛ライン】展開!
掛かったなトループスども!
お前らの悪巧みはここまでですよ!
さあ、戦闘員突撃……やっておしまい!!
こうすれば、自分達の失敗を埋め合わせようと……私の守る入口に敵が殺到するでしょう
でも、これは作戦です
いやーん
こんな猛攻……耐えきれないよおー!
とか言って敵を油断させ、【パラドクス通信】で仲間と交信し、油断してる敵を背面から攻めて貰うのです☆
敵が、「それでも力押しで、失敗をリカバーする」
と思うなら、背面からもっと攻めて貰って、
「これはたまらん、一旦立て直せ」
と退こうとするなら、更に追い討ちして貰って、此方の有利に動こう
ばぁんっ!
実験室のドアが、勢いよく開け放たれた。
「掛かったなトループスども! お前らの悪巧みはここまでですよ!」
部屋に飛び込み、開口一番。南雲・琴音(サキュバスの思想家・g07872)がびしりと指先を突き付け、啖呵を切れば。
琴音に続いて、いかにも悪の秘密結社風の戦闘員といった雰囲気の幻影たちが、わらわらと実験室になだれ込んでくる。
「え? 何?」
「実験体が牢から出てるの……?」
あまりに突然過ぎる展開に、琴音の芝居がかった口調も加わって。赤い靴の乙女達は理解が追い付かず、困惑を隠せない。
「さあ、お前たち……やっておしまい!!」
先手を取った琴音の号令に、室内に展開していた幻影たちが手を掲げ、赤い靴の乙女へと飛び掛かってゆく。
「なっ……あんたたちディアボロスね!」
「やだっ。まさか人間達を逃がしたの!?」
唯人の攻撃であれば受けるはずのない傷を負って、ようやく状況を理解した乙女たちが目の色を変えた。
既に真っ赤なトゥシューズに刃を生やして。血染めの舞台を踏みしめて、赤い靴の乙女たちが琴音へと迫る。
「いやーん。こんな猛攻……」
耐えられない……と、口では言いながら。それでも、琴音が足を退くことは無い。
牢の区画へと繋がる通路……この扉の前から琴音が退けば、発動させた防衛ラインの効果も消失してしまうから。
避難を開始したのだろう人々の騒めきが、背中越しに琴音の耳にも届き始めている。
ゆえに、赤い靴にその身を裂かれながらも。踏みとどまった琴音は、高らかに告げた。
「さぁ、今ですよ! みなさん!」
「……トループス相手には試したことが無かったな」
さらさらと。鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)が、その手のペンを動かせば。
何も無いはずの空中に線が引かれ、塗られ。赤い靴の乙女そっくりの……しかし、青い装いに色を変えた乙女の姿が、描かれてゆく。
何せ、琴音がしっかりと敵の注意を引いていてくれたものだから。ちょっとした遊び心を効かせる時間もあった。
筆先を、細かく動かして。描き込む足はより太く、筋肉の陰影も逞しく。靴の刃は、撫でるように筆を滑らせ、より大きく鋭い形に。
サンダーのアレンジによって、上位互換と言える姿へ変貌を遂げた青い靴の乙女が、刃の靴で放った蹴りは。
無防備な赤い靴の乙女の背中を、一蹴の元にへし折り。そのドレスを一層赤く染め上げた。
「何で後ろから……こいつ何処から入って来たのよ!?」
「嘘でしょ。私たち、囲まれてる……?」
琴音にばかり注目していた赤い靴の乙女達は、ここに来てようやく、自分たちがディアボロスに囲まれている事に気付く。
(「戦力の逐次投入は愚策。一気になだれ込んだに決まってんだろ」)
何ゆえに、琴音があのような派手な登場をしてみせたのか。
パラドクスで召喚した戦闘員の幻影を、わざわざ入り口から入室させたのか……全ては、幻影に紛れてディアボロス達が室内に展開するための布石。
「油断しましたね☆」
悪の幹部らしい、ちょっと意地悪な顔で。琴音がくすりと笑う。
「ディアボロスごときが、調子に乗らないで!」
罵倒するその声に、いかな魔力を込めた所で。反撃もままならないほど動揺している状況では、威力は高が知れている。
(「なるほど。そうかい」)
乱れた精神が、そのままパラドクスのか弱い威力となって現れている乙女たちの様子を、サンダーは内心で笑い飛ばして。
それならば、と。さらさらさらり……ファンアートな青い靴の乙女に、加筆修正を加えてゆく。
「さあ、うちのお嬢様と一緒に踊ってくれ」
飛び出した青い靴の乙女がステップを踏めば。大胆に開いたドレスの胸元で、零れ落ちそうな大きな胸が、描いた質感そのままに『たゆんっ』と揺れる。
「何よ、そんな下品なドレス……!」
赤い靴の乙女の苦し紛れな罵倒も、勝ち誇った笑みを浮かべる青い靴の乙女の前では、負け犬の遠吠えにしかならない。
乙女の放った鋭い蹴りは、その青い靴を真っ赤に染め上げて。
ここから始まるディアボロス達の猛攻……その開幕を告げる最初の一手を、深く刻み込むのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【液体錬成】LV1が発生!
【防衛ライン】がLV2になった!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV4になった!
ルィツァーリ・ペルーンスィン
アレンジ連携歓迎
……彼のジゼルは裏切られた思いを抱き亡くなり、ウィリとなりながらも愛する人の命乞いをウィリの女王ミルタにした優しい心の女性だった
貴様等の様な外道が其の名を使って良い訳あるものか!
貴様等は全力で討ち滅ぼす!
此の実験の責任者も創造伯アレクセイも必ず!
先ず実験室に犠牲者が居るか確認
其の上でもし居るようなら先ずは○高速詠唱による○連続魔法で彼等と敵を隔てる様に○電撃(使い)の○誘導弾の○弾幕展開
その後に敵と犠牲者の間に位置取り戦う
○飛翔し敵を○吹き飛ばす○風(使い)の○結界(術)を纏いつつ○双翼魔弾と○誘導弾の○弾幕を織り混ぜ放つ
此れはどちらがどちらか判らない様にする○撹乱の意図もあり
仲間の呼び出した幻影に紛れて、実験室へと飛び込んだ瞬間に。
ルィツァーリ・ペルーンスィン(騎士道少年・g00996)がまず感じたのは、室内に満ちた鉄錆の臭い……赤く滴る、命の臭いだった。
(「犠牲者が居るかもしれない……!」)
まだ助けられる人が居るのならば、この身を盾にしても守らなければと。その緊張と焦燥に、ルィツァーリの心臓が大きく脈を打つ。
だが、室内を見回したルィツァーリの目に映されたのは、あまりにも損傷が激しい人々の遺体……恐らくは、ディアボロス達が到着した時には、既に手遅れであったのだろう犠牲者たちの骸。
何故、罪もない人々が、このような目に遭わねばならないのだろうか。
何故、このクロノヴェーダ達は、このような事を平然と行えるのだろうか。
不可解さと、嫌悪と。やり切れなさと、悔しさと。言葉に出来ない感情が、綯い交ぜになって、剣を握る手に力が籠る。
「凍れる森のジゼルを喰らいなさい!」
そう言って、赤い靴の乙女たちが、ステップを踏むのは。犠牲者たちの血で染まった赤黒い床。
(「……彼のジゼルは裏切られた思いを抱き亡くなり、ウィリとなりながらも愛する人の命乞いをウィリの女王ミルタにした優しい心の女性だった」)
まるで思い出を馬鹿にしているかのようなこの悪夢の光景は、ルィツァーリの知るジゼルとは到底似ても似つかない。
「貴様等の様な外道が、其の名を使って良い訳あるものか!」
幼くも何処か大人びた、ルィツァーリの黄金の瞳に。鋭く怒りの色が宿る。
「貴様等は全力で討ち滅ぼす!」
風や結界を生むパラドクス等があれば、該当する技能効果を乗せる事も出来たのだが……それが無い今、ルィツァーリの怒りは背に負う稲妻のような魔力の翼へと漲り。魔弾となって、赤い靴の乙女達へと放たれた。
(「此の実験の責任者も創造伯アレクセイも必ず!」)
名前も、顔さえも知る事が出来なかった、犠牲者たちへの手向けに。
ルィツァーリの覚悟を乗せたその魔弾は、赤い靴の乙女たちを捉えるまで、決して止まる事は無い……。
成功🔵🔵🔴
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
山田・菜々
こいつらが実験の実行役っすか。罪を償わせてやるっすよ。
ラ・ダンツァ・マーカブロ。踊るように茨を避けながら切り裂いていくっすよ。
一緒に踊るように、そして華麗に、このステップはいかに包囲しようとしても止まらない。
あれ?踊ってくれるんじゃなかったんすか?断罪の苦しみはまだまだこれからっすよ。
苦しみ、嘆き、悔いよ。
仲間が呼び出した幻影に紛れて、山田・菜々(正義の味方の味方・g02130)は素早く実験室へと突入する。
もしもこの実験室のクロノヴェーダが、ディアボロス達の侵入に感づいているのならば。即座に攻撃が飛んできてもおかしくない状況だが。
周囲を警戒し、気を張り詰める菜々が真っ先に感じた異変は……異臭。
鉄錆にも似た、しかし生き物特有の生臭さのある臭いが、部屋中に満ちている。
「え? 何?」
「実験体が牢から出てるの……?」
突然なだれ込んで来たディアボロス達の姿に、困惑を見せる赤い靴の乙女は、本当に今の今まで、ディアボロス達の侵入に気付いていなかったのだろう。
ディアボロス達が牢で活動している間も、その異変に気付くことなく。この実験室から出てこなかった、赤い靴の乙女たちが一体何をしていたのか……。
この、赤黒く染まった床と、無造作に転がされた冒涜的なまでに破壊された遺体を見れば、想像は付く。
「こいつらが実験の実行役っすか」
その手に、人面コウモリ達を砕いた感触を思い出しながら。
その犠牲者たちを、直接手に掛けた乙女達を前にして。湧き上がる菜々の怒りはパラドクスの力となって、その手に一振りのナイフを作り出す。
「罪を償わせてやるっすよ」
乙女達がその赤い靴で舞うと言うのなら、菜々もまた舞う様に。
迫る茨をするりとかわし、絡みつくものはナイフで強引に払って、乙女達へと斬りこんでゆく。
「あれ? 踊ってくれるんじゃなかったんすか?」
乙女の放つ苦し紛れの蹴りに、あえて踏み込みこんで。流れるように、心臓へとナイフを突き立てれば……それはまさに、死の舞踏。
(「断罪の苦しみはまだまだこれからっすよ」)
だが、乙女たちが人々へと与えた苦しみは、この一撃程度では到底釣り合う物ではないから。
「苦しみ、嘆き、悔いよ」
菜々の手にするナイフは、絡みつく茨を引き裂いて。普段の口調とは違う、冷たい詠唱と共に幾度も煌めく。
成功🔵🔵🔴
効果1【士気高揚】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!
一・百
※アドリブ連携歓迎
他の方の作戦には協力的に
部屋に漂う臭いに顔をしかめ
お前の赤は犠牲者の血のようだな
靴や敵の振る舞いを見ながら
紅玉姫を手に牢に残る人の方へ敵が行かないよう
そして逃がさないよう
念の為防衛ラインをひく
敵の蹴りはパラドクスを帯びた刀で斬り
敵の全身から重みを奪い威力などを全て殺す
無重力とまでは言わないが、重さが奪われた身体では
動くことすらままならない、まともなバランスをとることも難しい
仲間の攻撃に対しても耐えることは出来ないだろう
重さを、奪って奪って
…そういえば、お前達は与えてもいたな
刀の峰で叩き斬り複数から奪った重みをその身体に一気に返す
奪った、想さをその身で味わえ…
さて、残るは…
踏み込んだ実験室の赤黒い床を踏みしめて、見た目は可憐な乙女たちが舞う。
振り上げる足が、空気を揺らすたびに。鉄錆に似た臭いが、一・百(気まぐれな狐・g04201) の鼻をついて。
ここで、どれ程の血が流されたと言うのか……むせびそうな濃い臭気に、思わず百は顔を顰める。
牢で声を掛けた人々は、今頃避難を開始している頃だろう。
乙女達を牢へ向かわせないためにも、今ここで彼女達との決着を付けねばならない。
幸いにして、防衛ラインは先に発動してくれた仲間が居る今、百がするべき事は乙女達を引き付け、ここから逃さない事。
「お前の赤は犠牲者の血のようだな」
乙女達の注意を引くために紡いだ言葉は、百自身が思う以上に、冷たく響いた。
「あら。悪くない誉め言葉ね」
だが百の挑発を、赤い靴の乙女は軽い笑いと共に受け流す。
元より、クロノヴェーダは相容れない存在ではあるが……どうやら言葉を交わすだけでは、百の感情は、怒りは。何一つ、この乙女達には伝わらないらしい。
ならばこの怒りは、言葉以外の方法で理解させるより、他になく。
百は静かに、紅い刃を抜く。
「あんたも赤くしてあげるわ!」
ふわり、と。軽やかに飛び上がった赤い靴の乙女が振り下ろす蹴りは、物理法則を無視して、雨の様に百へと降り注ぐ。
捌ききれない刃が、百の身を掠めて。衣服にじわりと滲む赤色に、お前たちはそうやって奪って来たのか……と。
百の怒りに応えるように、紅刃『紅玉姫』がパラドクスの力を纏う。
繰り出される斬撃に合わせて、斬り返す刃が乙女の体を捉え。赤い飛沫と共に、その体が『ふわり』と地に落ちた。
「え、何……?」
「……そういえば、お前達は与えてもいたな」
己が体の違和感に受け身を取る事も出来ず、困惑する乙女を前にして。いつの間にか、紅玉姫を逆手に握った百の月色の瞳は、凍えそうな程に冷たい光を帯びている。
(「奪った、想さをその身で味わえ……」)
あえて柄を向けた、その一撃は。
人々の命を、誇りを、尊厳を。これまで乙女たちが奪って来たものの重みを、その手に込めて。
赤い靴の乙女へと、振り下ろされた。
成功🔵🔵🔴
効果1【防衛ライン】がLV3になった!
効果2【命中アップ】がLV5(最大)になった!
赤上・イズル
■アドリブ・絡み歓迎
■仲間との連携
なるほど赤い靴の乙女ですか…
見目に麗しくありますが残虐性は隠せないようですね
と、赤い靴の乙女の足元を見る
一体どれだけの人々を犠牲にしてきたのか…
あなた方から漂う血の匂いがそれを物語っています
…さぁ、ここでこれまでの所業の清算をして頂きましょうか
【神速反応】による『残像』と『フェイント』で
敵の踊りをかわしつつ間合いを図っていく
ほんの少しの先を【未来予測】で読み攻撃の一手を探る
あなた方の動き、読みました!そこです!
三拍子…マズルカで踊る動きを読み、
高速で抜刀し、パラドクス【神速】を放つ
泣き言も命乞いもここでは通用しないのでしょう?
ならばあなた方も潔く消えてください
「なるほど、赤い靴の乙女ですか……」
未だ刃を鞘に納めたままで。赤上・イズル(赤き悪魔・g04960)は腰を落とし、構えを取る。
仲間が呼び出した幻影に紛れて飛び込んだ実験室は、鉄錆の臭いで満たされて。踏みしめる床にざらりと、乾いた血の感触が嫌悪感を誘う。
(「見目麗しくありますが、残虐性は隠せないようですね」)
そんな赤黒い舞台の上で舞う乙女たちのトゥシューズは、鮮やかな赤色に染まっている。
乙女たちの、動き。攻撃の軌道に注意を払い、集中を高めながらも。
赤い靴の乙女達が、一蹴り、二蹴り。その赤い靴でステップを踏むほどに。揺らめく空気の生臭さが、イズルの鼻をつく。
……それ程までに、靴を赤く染め上げるのに。一体、どれだけの人々を犠牲にしてきたと言うのだろう。
今頃、避難を始めているだろう牢に居た人々も、こうしてディアボロス達が来ていなければ、いずれは……。
(「……さぁ、ここでこれまでの所業の清算をして頂きましょうか」)
胸に湧きあがる怒りを、集中力へと変えて。イズルは日本刀の柄に手を添える。
乙女たちがステップを踏むたびに現れる、赤い茨に囚われぬように。じりじりと後退を余儀なくされながらも、それに惑わされるなと。
琥珀色の目が鋭く見つめるのは、乙女達の足捌き。履いているのが血染めの靴でなければ、可憐に見える舞の動きは、一定のリズムを刻んで。
(「あなた方の動き、読みました!」)
一つ、二つ……三泊目と同時に、イズルは床を蹴った。
「え?」
伸びる茨が絡みつく間も与えずに、大きく踏み込んだイズル速さに、乙女たちが目を見開く。
「そこです!」
犠牲者たちの悲鳴が染み込む赤黒い床を、強く踏みしめて。握る刃が、鞘を走る。
振り抜いた。その刃の奇跡は赤い尾を引いて。
乙女の赤いドレスが、一層鮮やかに染まってゆく。
「なんてひどい事するのよ!」
息絶えた仲間を前にして、いきり立つ赤い靴の乙女に、一体どの口が言うのだと。
「泣き言も命乞いもここでは通用しないのでしょう?」
血を払った刃を鞘に納め、再び抜刀の構えを取りながら。
「ならば、あなた方も潔く消えてください」
イズルは、冷たく斬り捨てた。
大成功🔵🔵🔵
効果1【神速反応】がLV2になった!
メルセデス・ヒジカタ
ふぅん……その実験室に見合わないスケートシューズ的なおみ足で、こちらを切り刻もうと言うわけですか
案外、楽チンかもですね
だって……斬る対象が、わざわざ自分から突っ込んで来るわけですもの
とか言ってやれば、敵は蹴りつける足を狙われると思うでしょう
でも……それはフェイント
【未来予測】とグラップルを活かし敵の足を掴み、【怪力無双】で引き倒したり、軸足の方を斬ったりと予想外の不意打ちで混乱させてヤりましょう
敵が慌てたり、バランスを崩した隙を逃さず、秘剣・菊散で敵を斬り伏せて
敵はこちらを包囲してますが、包囲網のどこかで敵の誰かが転んだら……避けようとバランスを崩したり、同士討ちしたりするかも
更に追い討ちを
実験室へと飛び込んだメルセデス・ヒジカタ(冥腐魔道・g06800)の目が、ディアボロス達の強襲に驚く赤い靴の乙女達を捉える。
(「ふぅん……」)
普段は穏やかな母親譲りの深い緑色をしたその目も、今は鋭く。見据えるのは乙女達の足先……その刃を備えた物騒なトゥシューズは、赤く染まっている。
この部屋に満ちる血の臭いと、赤黒く染まった床と。そして、無残に転がる人であったものの一部。
そこに刻まれた傷跡が、どのような刃物で付けられたものなのか。刀剣を愛でるものならば、想像は付く。
「その実験室に見合わないスケートシューズ的なおみ足で、こちらを切り刻もうと言うわけですか」
ゆったりと、一歩、二歩。距離を詰めながら。赤い靴の乙女達に見せつけるように、メルセデスは無銘の打刀を抜いた。
「やだっ。ディアボロス何人居るのよ」
仲間が呼び出した幻影に紛れ、一気に室内へ展開してみせたディアボロス達の勢いに、赤い靴の乙女たちが浮足立っている、今。
「案外、楽チンかもですね」
あえて、余裕を見せつけるようにゆったりと語る事で、メルセデスは乙女達の精神に圧を掛けてゆく。
「だって……斬る対象が、わざわざ自分から突っ込んで来るわけですもの」
「言わせておけば、人間の分際で調子に乗るんじゃないわよ!」
怒りを露わに、乙女達が刃の靴でステップを踏めば。その足元から延びる赤い茨が、メルセデスへと迫る。
その茨は、一度絡まれれば血と意識を奪われる超常の力。狙いを違えるようなことは起こり得ず、対抗しうるのは同等の超常の力のみ。
ゆえに、パラドクスの力を高めて。直刀を大胆に振るいながら、メルセデスは乙女達との距離を詰める。
「……っ」
その間合いに、大きく一歩踏み込んだ瞬間に。赤い靴の乙女が息を呑んだ。
あえて、自分の獲物はこの刀であると、鞘から抜く所を見せつけた。
あえて、「斬る対象」と語る事で、自分の攻撃は斬撃であると印象付けた。
ゆえに乙女の視線は自ずと、メルセデスが振り上げた刀の方へと向く。
(「でも……」)
メルセデスが伸ばすのは、刀を持たぬ左手。
死角を突いて伸ばした手は、乙女の足をしかと掴んで。強引に引き倒し、姿勢を崩した乙女に降り注ぐのは、無数の斬撃。
目にも止まらぬ斬撃が、一瞬、赤い華を描いて。
崩れ落ちる乙女の身と共に散り舞う赤い花弁が、実験室の床を鮮やかに染め上げるのだった。
成功🔵🔵🔴
効果1【土壌改良】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV4になった!
キーラ・パーヴェルファング
【鉄線】
竜と互いに連携し、赤い靴の乙女を片付けていく
人の姿をしてたらやりづらいかしら?
……そう、なら何より
悔千切で乙女達を攻撃
有刺鉄線を纏わせた手で靴の刃も同時に受け止めるわ
さらに神速反応で蹴りの連打を見極める事ができる優位性を確立する
いくら身軽でも靴で攻撃するには自ら近づくしかないものね
竜のパラドクスで混乱しているところに縫うように踏み込み、早業と暗殺を活かし斬り捨てていく
靴による連打で反撃してきたら、有刺鉄線を纏った片手で防ぎつつ、もう片手で獲物を断つ
彼女達の攻撃の要である自慢の足を、足首から切断していってあげましょう
これで貴女は、もう踊れない
(手の棘から滴る血を舐めて)
血が薄いのね
十埼・竜
【鉄線】
……こいつらはひとの形をしているんだな
別にやりにくい訳じゃないよ
……幸い、嫌悪しか感じない
直接戦闘はキーラちゃんに任せ、非力なぼくは後ろから
【未来予測】で攻撃を躱しながら電波で乙女たちの認識を《ハッキング、撹乱》、でたらめな敵の気配で踊らせて同士討ちを誘う
動きを乱せばキーラちゃんだって仕留めやすいだろ?
あんたらは何の"嘘"で動揺してくれんのかな
哀れな"ウプイリ"たちが逆襲にくるとか?
どうぞ全力で反撃してくれよ、それが仲間とも知らずに
それ、おいしい?
…次のはきっと、もう少し濃いんじゃないかな
早く全て片付けてしまおう
きみも血を流さなくて済むし、ぼくもいい加減、酔いがキツいから
「……こいつらは、ひとの形をしているんだな」
仲間が呼び出した幻影の影から、実験室を見回して。十埼・竜(スカイセンサー・g02268)は小さく呟く。
室内に居たクロノヴェーダは、人と同じ姿形で、人と同じ言語を話して。まるで人の様に、その顔に感情を表す。それなのに……。
「人の姿をしてたら、やりづらいかしら?」
この建物に着いてから、顔色が悪くなる一方の竜をちらりと横目に、キーラ・パーヴェルファング(大公の牙・g08440)は首を傾げる。
目の前の敵は、姿だけならば、先ほどの巨大コウモリよりもよほど人に近いから。
まさか、彼女達にまで心を寄せてしまうのかと。疑問が半分、懸念が半分……そこに少々の心配を混ぜて、キーラは問う。
「別にやりにくい訳じゃないよ」
ただ、そこまで人に近いものを持ちながら、どうして……と。やり切れないものを、感じただけ。
例えどれ程、人間らしい姿を見せられたとしても。実験の実行役であったという事実が消えない限り、竜の耳には、眠らせる事しかできなかった『彼ら』の声が離れない。
だから、キーラの問いに竜は即座に首を振った。
「……幸い、嫌悪しか感じない」
「そう、なら何より」
低く響いた竜の返事を受け取って。役目を終えた幻影たちが消えゆく中、キーラが飛び出す。
痛みと共に湧き上がるパラドクスの力は、有刺鉄線の形を取りキーラの手に宿って。
突入時の混乱で、赤い靴の乙女たちが動揺している今。鋭く突き出したキーラの手刀は、一方的に赤い靴の乙女を貫いた。
「何人居るのよこいつら!?」
「あんたらは何の『嘘』で動揺してくれんのかな」
乙女たちが上げる声を、竜は意図して拾わない。
だって、ほら。
羽音がうるさくて、よく聞こえないからさ……と。嘯く声がパラドクスと共に広がって。あり得ざる気配を、作り出す。
『ふふふ、くすくす……』
ほら、キミ達を嗤っているよと。騙る竜の声が、乙女達を蝕んで。一人、また一人と膝を折ってゆく。
「うるさいっ、何で失敗作どもの声がするのよ!」
いきり立ち、視線を彷徨わせる乙女の姿に。そのまま同士討ちでもしてくれればと思うけれど……。
「あんたたちのせいで、もうめちゃくちゃじゃない!」
クロノヴェーダもまたディアボロスと同様に、世界法則さえ書き換えるパラドクスの使い手。怒り叫ぶ乙女の周辺で、竜が書き換えたはずの法則が急速に塗り替えられてゆく。
硬質化させた刃の靴を踏み鳴らし、的確に狙いを定めて。その足を振り上げる。
「……見苦しい舞いね」
溜息混じりに、小さく呟いて。その蹴りを受け止めたのは、キーラだった。
怒りに任せた蹴りの勢いに。有刺鉄線を纏わせて刃を防いでいるとはいえ、受ける度にキーラの手は血を散らす。
だがその痛みは。キーラにとっては身の内より感じている痛みと、区別もつかない程度のもの。何より、竜のパラドクスで心を乱された乙女が、冴えた蹴りを放てる訳もなく。
ぬるい一撃を強引に掴み、振り払えば。体勢を崩し露わになる乙女の足に振り下ろされるのは、無傷の手……左手の手刀。
「これで貴女は、もう踊れない」
恐らくは、もう聞こえてもいないだろうけれど。
足を失い崩れ落ちた乙女の体に、ぽたぽたと。キーラの左手から落ちる雫が、その衣装を濡らして染めてゆく。
「それ、おいしい?」
その赤い雫にそっと口づけたキーラを、何とも言えない表情で見つめながら竜は問う。
「……血が薄いのね」
まるで、何処かの誰かさんみたい……とは、言われなかったけれど。
抑揚なく紡がれたキーラの言葉には、何だかそんな響きが含まれていたような気がして、竜は苦い笑いを零す。
「……次のはきっと、もう少し濃いんじゃないかな」
勢いに乗ったディアボロス達の猛攻は、確実に乙女達の数を減らしている。
この実験室も、直に静かになるだろう。そうなれば、残るはこの事件の元凶のみ。
「早く全て片付けてしまおう。きみも血を流さなくて済むし、ぼくもいい加減、酔いがキツいから」
ぽたぽたと。竜の耳に届く未だ止まらぬ水音は、乙女の攻撃を捌き続けたキーラの右手から。
痛みも、嘆きも。この場所には、溢れすぎていて。キーラにも、自分の痛みを顧みて欲しいと思うのだけれど……今はまだ、そんな思いはキーラには届かないらしい。
弱々しく笑う竜の表情を、キーラの深紅の瞳は、不可思議そうにきょとりと見つめていた。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【神速反応】がLV3になった!
【通信障害】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV5になった!
【反撃アップ】がLV2になった!
リップ・ハップ
加虐趣味はねいけどよ
楽に死ねると思うなよ
パラドクスは発動させっぱにして伯爵で斬り込むよ
つっても最初の内は守り気味。頭はカッカきてっけど身体はこっからだ、じっくりとやり合おうぜ
連撃も残留してる【未来予測】を使いながら辛抱強く捌く
変わり種の武器だけど土台は脚使った蹴り技の筈でしょ、未来予測で足りねい分は経験と洞察でカバーだ【戦闘知識、看破】
凌ぐのに動けばその分だけ体温が上がる
傷を負ったとしてその傷口も熱を持つ
煮え滾ってる怒りくらいに身体があったまりゃ、有り余るフィジカルスペックで真っ向から連打を斬り伏せてやんよ【肉体改造】
心も身体もグツグツだ
さっさと大公女とやらにぶつけさしてもらわねいとなァ
室内に満ちた濃い鉄錆の臭いには、微かに腐臭が混じっている。
(「加虐趣味はねいけどよ」)
くらくらと。眩暈のような感覚を覚える中で、リップ・ハップ(Reaper Harper・g00122)が鋭く見つめる赤い靴の乙女は、言ってしまえば、あの怪物たちの生みの親。
戦いにおいて冷静さを失ってはいけないと、頭では分かっていても。この胸に湧きだす、どす黒い怒りと嫌悪は止めようもなく。
眩暈にも酩酊にも似た感覚で、リップの思考を染めてゆく。
「楽に死ねると思うなよ」
高まる鼓動と共に、リップが大鎌『伯爵』を振る。
幸い、獲物には事欠かず。ディアボロス達が包囲に成功している今、巨大な刃で無造作に一薙ぎするだけで、事は足りる。
「実験体を逃がしておいて、よくも……!」
くらり、くらりと。熱を持つ頭に、乙女達の声が何処か遠い。
怒りを叫ぶ乙女達の刃がリップへと迫りくる中で、まだ熱が足りないと。リップは再び、パラドクスの力を奮い起こす。
刃の付いたトゥシューズとは、随分と変わり種の武器だけれど。攻撃手段が蹴りに絞られるのならば、むしろ読みやすいと。
熱に浮かされた頭でも、数多の戦いをこなし体に染みついた感覚が、反射的にリップを動かす。
受け止め、いなし。刃同士がかち合うたびに。ぶつかり合うパラドクスの力が世界の法則をかき乱し、互いの体にダメージを刻んでゆく。
だが、まだ……まだ熱が足りない。
一体、また一体と赤い靴の乙女を斬り伏して。パラドクスの連続発動で、心音は速く。鼓動が体中に響いているけれど。この頭を焼く、怒りの熱量には及ばない。
「何なのよ、あの女」
文字通り、身を焦がし。空気を揺らめかせながら大鎌を振るうリップの姿に恐怖を感じたか、思わず赤い靴の乙女が後ずさる。
だが、今更ここで退こうなど、そんな選択が許される筈もない。
あの怪物たちが、誰一人としてその運命から逃げ出す事が出来なかったように。
「真っ向から連打を斬り伏せてやんよ」
心も、身体も。その手に握る、伯爵させも。焼け付く程に、熱を帯びて。
振り下ろされた一撃が、最後の乙女を赤く染め上げ沈黙させる。
(「心も身体もグツグツだ」)
静かな……ようやく笑い声の消えた実験室の中、リップの吐息は未だ熱く。
「さっさと大公女とやらにぶつけさしてもらわねいとなァ」
熱の籠る視線は、早くも次に目指すべき場所へと……アヴァタール級が控える執務室の方角へと向けられていた。
成功🔵🔵🔴
効果1【熱波の支配者】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
冷たい鉄の牢と、鉄錆の臭いが鼻をつく実験室を経て。
ディアボロス達が開いた扉の向こう……その執務室は、暖かな空気に包まれていた。
いかにも高級品といった重厚な机で、ペンを走らせていたアヴァタール級クロノヴェーダ……『大公女タチアナ・ニコラエヴナ』は、押し寄せたディアボロス達を前にして、少し意外そうな表情を見せる。
「あの子たち、ネズミの駆除もまともに出来ないのね」
ペンを離して悠然と席を立ったタチアナは、心許ない面積の衣装をひらりと揺らして。
「ようこそ、ディアボロスの方々」
幼いようにも、大人びているようにも見える顔に、ふわりと笑みを浮かべた。
「私、タチアナ・ニコラエヴナはあなた方を歓迎しますわ……勿論、実験台としてね」
冷たい言葉と共に、パラドクスの気配が強まってゆく……。
赤上・イズル
■アドリブ・連携歓迎
悲劇の皇女タチアナ…
その名をあなたに名乗って欲しくはないですね
名を騙り、どんなに美しく形どっても所詮はクロノヴェーダ
許されざる存在です
それに彼らとも約束しました…あなたに償わせると
彼らに与え続けた酸鼻な所業の代償…死をもって支払って頂きましょう!
暗闇に【完全視界】にて視界を確保
刀の柄に手を掛けつつ相手を見据えながら攻撃の間合いを図る
相手の攻撃は【未来予測】にて読みかわしていく
放たれた吸血鬼連隊の精鋭をことごとく薙ぎ払いつつ
確実にタチアナへ距離を縮める
これまで実験台にされた人々の恐怖を、苦痛を思い知るといい!
一度刀を納め『精神集中』…
攻撃の好機を逃さずパラドクス【白夜】を放つ
(「悲劇の皇女タチアナ……」)
クロノヴェーダの中には、その地域、時代における偉人や英雄の名を持つ者もいる。
この『大公女タチアナ・ニコラエヴナ』もまた、その一人。
「その名を、あなたに名乗って欲しくはないですね」
それはつまり、赤上・イズル(赤き悪魔・g04960)の目の前に居るこのクロノヴェーダが、正しい歴史において存在していた筈のタチアナのエネルギーを奪い取ったと言う事。
(「名を騙り、どんなに美しく形取っても所詮はクロノヴェーダ」)
その名を騙りながら人々を閉じ込め、拷問じみた実験で死に至らしめるなど。到底、許せるものではない。
(「彼らとも約束しました……あなたに償わせると」)
柄へと添えたイズル手にはまだ、牢に居た人々の。あのやせ細った震える手の感触が残っている。
「彼らに与え続けた酸鼻な所業の代償……死をもって支払って頂きましょう!」
高まるパラドクスの力が、加護を与えて。イズルの目に一層鮮明に映るタチアナが、くすりと笑った。
「あの実験の素晴らしさを理解できないなんて……」
可哀想な方ね、と。
タチアナの唇が動くと共に、現れるのは吸血鬼の精鋭部隊。
この広いとは言い難い室内で、これ程の数の兵をどうやって……と。疑問と畏怖が胸に湧くが、それが常識では測れない逆説連鎖戦の恐ろしい所。
タチアナの強力なパラドクスが、空間を歪め。次々と現れる精鋭吸血鬼たちは、イズルの振るう刃を意にも介さず。半ば、体ごとぶつかる勢いで猛攻を繰り出してくる。
その強引な突撃を、振るう刃で巻き取るように受け流し、数名を交わしても。
終わりの見えない剣林弾雨に、イズルの身体には傷が刻まれてゆく。
熱さにも似た痛みを感じながら、それでも。イズルは視界にタチアナを捉え続けながら、その距離を徐々に詰めてゆく。
「これまで実験台にされた人々の恐怖を……」
掴みかからんとする吸血鬼の腕を薙ぎ払い、振るう刃はそのまま流れるように、鞘の中へと収まった。
薙ぎ払い、斬り払い。拓いた視界に、イズルを阻むものはもう何もない。
「苦痛を思い知るといい!」
抜き放つ、剣の軌跡が暗闇を裂いて。今、タチアナへと奔り抜ける。
成功🔵🔵🔴
効果1【完全視界】LV1が発生!
効果2【フィニッシュ】LV1が発生!
ルィツァーリ・ペルーンスィン
大公女タチアナか
確かロマノフ王朝最後の皇帝、その第二皇女だったか
姉妹達を纏め母と姉妹達の間を取り持つ優しい女性だったと聞く
そんな女性の名は貴様の様な輩が名乗るには過ぎた名だ!
覚悟しろ外道!
○飛翔した状態で○高速詠唱による○連続魔法で○誘導弾の○弾幕を展開
此の誘導弾に○氷雪使いにより属性を付与し床を凍結させながら敵に放つ
此れには滑りやすくし敵が近付きにくくする狙いがあり
更に弾幕に○看破しにくいレベルで誘導弾に偽せた○双翼魔弾を織り混ぜて放つ○フェイント攻撃で○撹乱
連隊の輩を屠り続け守りを削り無理矢理にでも隙を作ったら本丸のタチアナに自分の全力、誘導弾に双翼魔弾全て纏めてぶちかます!
「私、タチアナ・ニコラエヴナはあなた方を歓迎しますわ……」
その仕草、立ち振る舞いも上品に、『大公女タチアナ・ニコラエヴナ』がディアボロス達にふわりと微笑む。
(「大公女タチアナか」)
纏う衣装の面積が少々心許ない点を除けば、ルィツァーリ・ペルーンスィン(騎士道少年・g00996)の前に立つ大公女タチアナは、見目麗しい淑やかな女性に見える。
「……勿論、実験台としてね」
だがその美しい顔で、整った唇で紡ぐのは、冷たく残酷な言葉。
彼女がどのような非道な行いをしてきたのか、ルィツァーリは知っている。
正気と狂気の狭間にまで追い込まれて、苦しんでいた人々をその目で見て来たのだから。
「覚悟しろ外道!」
先の戦いで残した力が、ルィツァーリの身を空に運ぶ。
「あら。素敵な的ね」
たった一人、空中で孤立する形となったルィツァーリを、その蠱惑的な桃色の瞳で捉えて。タチアナがくすりと笑った。
タチアナから昇る、圧倒的なパラドクスの気配に。ぞくり、と。ルィツァーリの背に悪寒が走る。
歪められた空間から現れる吸血鬼の精鋭たちは、その圧倒的な物量をもって。瞬き一つの間に、ルィツァーリを囲んでいた……。
……刻まれたダメージは深い。
飛翔の効果が切れた瞬間に、赤く染まったルィツァーリの体がぐらりと揺らぐ。
それでも。
(「確かロマノフ王朝最後の皇帝、その第二皇女だったか」)
目の前の、大公女タチアナを名乗る。この悪辣なクロノヴェーダを前にして。
(「姉妹達を纏め母と姉妹達の間を取り持つ優しい女性だったと聞く」)
膝を付くわけにはいかないと、抗う意思がルィツァーリの体を叱咤する。
「そんな女性の名は、貴様の様な輩が名乗るには過ぎた名だ!」
咆哮と共に絞り出すパラドクスの力は、ルィツァーリを再び宙に送り出し。
放たれる魔力の弾丸がタチアナ目掛けて飛ぶ。
再び現れた吸血鬼たちを前にして、ぶつかり合うパラドクスの余波が容赦なくルィツァーリに襲い掛かる。
持っていかれそうになる意識を、歯を食いしばり堪えながら。
「全て纏めてぶちかます!」
渾身の力で手繰り導いたその魔弾は、吸血鬼の群れを突き抜けて。
途切れる意識の間際、確かに。タチアナへと届いたのだった。
苦戦🔵🔴🔴
山田・菜々
お前が黒幕っすね。許さないっすよ。
確かにかわいらしいっすけど、それよりまがまがしい気配を感じるっす。
破軍衝でコウモリを蹴散らせながら接近していくっす。
一見、かよわそうに見えるっすけど、冷徹な戦略眼を持っているって話っすからね。油断せず、まずは牽制の破軍衝をしかけるっすよ。
やっぱり、手強そうっすね。でも、牽制を続けて、隙を見せる一瞬を狙うっす。
南雲・琴音
あなたが大公女……パッと見は愛らしいのに、やることえげつないんですね☆おなかのなか……きっと、どろんどろんだね☆
敵は手数が多そうだし、【パラドクス通信】で仲間と連携を取りながら応戦
私はプラズマウィップで敵を攻撃
敵の反撃は、【未来予測】を活かし迫る蝙蝠を斬り捨てながら、軽い傷は【活性治癒】で癒して凌ごう
でも、大公女を名乗ってるのに、創造伯の下についてるのって……不思議だね☆
あ、ちょっと気になっただけですから、怒ったりしたらいやーんですよ?
予想以上に相手が怒ったりしたら、逃げ回るフリして敵の注意を引いて、仲間が狙いやすいように動いてみますね
そ、そんなに怒ったら、折角のメイクが崩れちゃいますよ!?
「お前が黒幕っすね」
さらりと揺れる桃色の髪に、やや幼くも見える整った顔立ち。
戦う所作まで、何処か上品に見えるその美しいクロノヴェーダに。
「確かにかわいらしいっすけど、それよりまがまがしい気配を感じるっす」
どこか血生臭さを感じるのは、ここに至るまでに見て来た光景のせいだろうか。
今、山田・菜々(正義の味方の味方・g02130)の目の前に居るクロノヴェーダこそ、この実験施設を取り仕切るアヴァタール級『大公女タチアナ・ニコラエヴナ』。
既に牢の人々を解放する事が出来たとはいえ、このクロノヴェーダを倒さなければ、まだ何処かで同じ悲劇が繰り返される事になるだろう。
そんな悪夢のような未来は、この手で打ち砕いてみせるのだと。
集中力を高めながら、菜々の手は拳を握る。
その強い意志が籠る菜々の視線に、タチアナは困ったように眉根を寄せて。
「あらあら。血の気の多い方たちですね」
溜息を一つ、零して見せれば。それはどう見ても、儚げな少女の表情で。
その可憐な姿は、戦いの緊張感どころかディアボロスの戦意さえ、揺らがせてくる程。
(「一見、かよわそうに見えるっすけど……」)
だがその本質が、可憐な見た目とはかけ離れている事を、この場に居るディアボロスの誰もが知っている。
「あなた方は本当に、とても……美味しそうだわ」
無邪気で残酷な少女の笑い声と共に、放たれるのは無数の吸血コウモリたち。
先に相手した人面のコウモリに比べれば、一体一体は非常に小さいが……その集団がまるで巨大な蛇のようにうねり、菜々を飲み込む。
「……っ、力が……!」
牙が掠める痛みは、それほど強くはない。ただ、奪い取られてゆく生命力と共に、握る拳からはどんどん力が失われてゆく。
(「やっぱり、手強そうっすね」)
その油断を誘う仕草さえ、全て計算の上なのかもしれないと。コウモリを振り払いながら菜々は思う。
「あなたが大公女……」
コウモリの群れを従える、タチアナのパラドクスの強さを肌で感じながらも。南雲・琴音(サキュバスの思想家・g07872)は、あえてその顔に笑みを作った。
「パッと見は愛らしいのに、やることえげつないんですね☆」
声の抑揚も豊かに「こっわーい☆」と、付け加えれば。
タチアナの桃色の瞳が、琴音の方を向く。
アヴァタール級としての彼女の実力は、本物だろう。仲間たちが深手を負い、緊張感が高まる中で。それでも、琴音は自分のペースを崩さずに、笑ってみせる。
戦いの実力ではあちらが上でも、どうにかして動揺を誘う事が出来たなら。きっと仲間の誰かが、その隙を狙ってくれるはずだから。
それに、意地悪そうな笑顔の演技なら。琴音だって負けてはいないのだ。
「おなかのなか……きっと、どろんどろんだね☆」
ふふふっと嘲る、琴音の笑みに。タチアナが小さくため息を零す。
「ディアボロスは本当に、この実験の素晴らしさが理解できないのですね」
やれやれと。琴音に返されるのは、憐みの視線……流石冷徹と言うだけあって、そう簡単に挑発には乗って来ないらしい。
「ふーん、でもぉ……」
それでもめげずに、琴音はタチアナへと言葉をかけ続ける。
たとえ相容れない価値観を有していても、感情を露わにするのなら。何処かにタチアナの琴線に触れる話題があるはずだと信じて。
「大公女を名乗ってるのに、創造伯の下についてるのって……」
不思議だね、の言葉と共に。不意に放った琴音の雷撃が、鞭の形を取ってタチアナへと飛んだ。
動揺を誘えればあるいは……と、思った攻撃も。
「実力よりも称号に縋りつくのは、愚かな事ですよ」
タチアナはすかさず反応してくる。
呼び出された群れるコウモリ達に、纏わりつかれながら。この話題でもないのなら……と、琴音はあきらめずに思考を回す。
生命力を奪われ続ける体は、体温が下がっているのか。少し震えて。足元もふわふわと、覚束ないけれど。
「やっぱりこわーい。そんなに怖いと……」
発動した活性治癒の力で、踏みとどまりながら。琴音はついに、その一言へと辿り着いた。
「折角のメイクが崩れちゃいますよ?」
「……本当に失礼なディアボロス」
ようやく、一瞬。ほんの僅かに。
タチアナの声に苛立ちが滲んだ、その隙に。
「お前がやってきた事、絶対に許さないっすよ!」
踏み込んだ菜々の拳が、強大な衝撃波打ち出して。
周囲に舞うコウモリ諸共に、タチアナの身を打ち据えるのだった。
苦戦🔵🔵🔴🔴🔴🔴
鳩目・サンダー
ロシア系淫魔……?それとも角のあるヴァンパイアノーブルなのか?
クロノス級討伐依頼が出たら本人に訊いてみるか。
使うパラドクスはフィルターバブル。なら受けるは『信じた者の末路』。
あたしが最も信じるのはエゼキエル戦争ではぐれたママだ。ママに裏切られる幻影……想像しただけでダメージ食らうわ。
正直平気では居られないだろうな。
あたしまだ若くて幼いし。
「ヒジカタ!コイツのクロノスをやるときは声掛けてくれ!」
もし耐えられたなら、あたしは絶望感を怒りに変えるだろう。それはきっと八つ当たりだが、より多くより大きな泡を描く力になる。
きっと、こいつを否定し尽くしてやりたいと思うだろう。
連携、アドリブ問題ありません。
メルセデス・ヒジカタ
ほほう……あなたが、大公女を名乗る存在ですか
いえ、私の母方を遡れば、遠い親戚になるとか聞いてたので
でも、偽物でしょう
ウチの親戚筋には、ピンク色の髪の方は居ませんから!
残像を活かした【未来予測】で、蝙蝠の攻撃を紙一重で交わしたり、【エアライド】で緊急回避しつつ、敵に肉薄
敵を不意打ちで斬ると見せかけ、グラップル、早業、ダッシュを活かしたフェイントで、敵を引き倒したり投げ飛ばし、敵が無防備になった隙を狙い、不可視の一閃で叩き斬ってヤりましょう
ああ、でも私とあなた……共通点ありますね
勝つためならば、えげつないことを平気でヤれるところ
でも、私……敵にしか
えげつないことしないので
鳩目さん
ええ、声かけますよ
まず、最初に。服の布面積が、少なすぎやしないか……と。
ディアボロス達を相手取りながらも、何処か上品に。余裕を崩さない『大公女タチアナ・ニコラエヴナ』を前にして、思わずそんな感想が鳩目・サンダー(ハッカーインターナショナル同人絵描き・g05441)の脳裏に浮かぶ。
(「ロシア系淫魔……? それとも角のあるヴァンパイアノーブルなのか?」)
どちらかと言えば、淫魔と言われた方が納得のいくその出で立ちに、クロノヴェーダにも色んな奴がいるものだと。いっそ、感心してしまう。
「ほほう……あなたが、大公女を名乗る存在ですか」
思わずまじまじとタチアナを見つめていたサンダーの横から、メルセデス・ヒジカタ(冥腐魔道・g06800)が一歩進み出た。
その口ぶりに、「関係者なのか?」と。
サンダーからの視線が向けられたのに気づいて、メルセデスは肩を竦める。
「いえ、私の母方を遡れば、遠い親戚になるとか聞いてたので」
そのクロノヴェーダが現れたと聞いて、メルセデスなりに色々な考察や想像を巡らせていたのだけれど……。
ちらりと、タチアナへと視線を向けて。メルセデスは残念そうに息を吐く。
「でも、偽物でしょう。ウチの親戚筋には、ピンク色の髪の方は居ませんから!」
そう言い切ったメルセデスに、「そうか」と笑いを返しながら。サンダーは自らのパラドクスを高めてゆく。
こうして、タチアナと縁を持つ者と出会えたのならば、いずれその本体とも見える機会があるかもしれない。
(「そしたら、本人に訊いてみるか」)
そうとなれば、疑問の事は後回しにして。此処に居るアヴァタール級には、さっさと退場頂く以外の選択肢はない。
サンダーの力に応えて、現れる大きな泡たちが次々と重なって。
障壁を作り……。
『…………』
その時。何か、声が聞こえた気がした。
サンダーを呼ぶ、懐かしい声が。
「……ママ?」
違う。こんな所に居るはずは無いのだと、頭で否定しても。
タチアナの力は否応の無く、サンダーの心を掴み。握り、抉る。
いつか帰りたいと願う景色をぐちゃぐちゃに塗りつぶす、残酷な幻影を映し出す。
「……ぅ、ぁ……」
「鳩目さん、しっかりしてください!」
叫ぶメルセデスの声も、今のサンダーには届かない。
心臓がバクバクと激しく音を立て、上手く息が出来ない中で。
意識が飛ぶ、寸前。完成した泡の障壁が、タチアナの力を押し返す。
「あら。目覚めてしまいましたか」
くすくすと笑うタチアナの声に、全ては幻であったと知っても。
この胸にぽっかりと空いた虚のような絶望感は、容易く消えるものでは無い。
「……さっきは、偽物と言いましたけど」
息を切らせるサンダーをかばう様に、進み出たメルセデスの目が鋭くタチアナを捉える。
「でも私とあなた、共通点ありますね」
別に、気付きたくも無かったけれど。
刀の柄に、手を掛けて。メルセデスはふわりと、流れるように。タチアナへと距離を詰める。
剣の道を嗜むものとて、剣しか振るえない訳ではない。
(「勝つためならば、えげつないことを平気でヤれるところ」)
刃を抜くと見せかけて、伸ばす腕がタチアナの裾を掴む。
途端に湧き上がったコウモリの群れが、メルセデスの生命力を吸い上げてゆくけれど。掴んだこの手は、離さない。
「あぁ、でも。勘違いしないでくださいね?」
裾を掴む手を、強引に引けば。タチアナがよろめくその隙に。
「私……敵にしか、えげつないことしないので」
だから、あなたとは違うのだと。
メルセデスの体は、これまで数え切れぬ程に繰り返した動作を、瞬時になぞる。
「ヒジカタ!」
抜き放つ刃の煌めきさえも、目には映らぬ程に。
あまりに速い抜刀に、切り裂かれた空気は。衝撃波となってタチアナへと飛んだ。
その衝撃にたたらを踏むタチアナを横目に、息を整えたサンダーがニヤリと口元を歪める。
「コイツのクロノスをやるときは声掛けてくれ!」
再び呼び起こす泡は、人の心象を土足で踏みにじったタチアナへの怒りを抱いて。一層大きく膨らみ、障壁を成す。
「ええ、声かけますよ」
応え、距離を取るメルセデスの前で。悪辣なる者を否定する巨大な泡の障壁が、タチアナの姿を飲み込んでいった……。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【クリーニング】LV1が発生!
【一刀両断】がLV2になった!
効果2【ドレイン】がLV2になった!
一・百
【百夜】
※アドリブ連携歓迎
紅玉姫を抜きPDで攻撃
反撃で見せられる幻影は暗い金髪の青年
両親が居なかった百にとって親代わりでもあり世界の全てだった人
…兄…様?
ズキリと左胸が痛む
靄のかかってた欠けてた記憶の一つが埋まる
幻影の兄様は百を殺そうと死ねとナイフを向ける
これは裏切り…だが、事実だ
涙がこぼれ、大切だった兄への想いとその時の苦しさが襲う
この記憶は今は関係ない
戦わないと…ああ煩い女が何か喚いている
全部消えてしまえばいいのに…
ネメシスモードで耳先より髪色が白金になり腰より長い髪に
感情を殺し淡々と斬る
血が見たいのだろ…なら見せてやろう、お前の血を…
思い出したくなかった
八つ当たりするように斬って斬り刻む
シャムス・ライラ
【百夜】
仲間とP通信で情報共有、連携
究極の選択を突き付けて追い詰めるとは
悪趣味にも程がある
地形の利用、情報収集で戦闘に有利な位置取り
トラップ生成で透明で強靭なワイヤーを張り巡らせ
敵の動きを妨害
そして仲間とタイミングを合わせ
ピラミッドコンバットで攻撃を
敵攻撃の連隊による切込みは
ワイヤートラップで少しでも進軍を阻み
エアライド等を駆使し少しでも損害を減らす
!?涙
百の様子がおかしい
過去が、見えているのか
いつもと違う様子に驚き
危機が迫れば助けに入る構え
百への攻撃はディフェンス
様子が戻らないようなら声がけ
百、大丈夫か!?
余り顔色が良くない彼を労わり
戦闘後は抱えるようにしてトレインへ乗せる
アドリブ等歓迎
シャムス・ライラ(極夜・g04075)の放つパラドクスが、世界の法則を書き換えてゆく。
本来、限られた空間であった筈の執務室は、広大な砂漠の様に。果てのない奥行きを得て、小型のピラミッドを抱く何とも不可思議な部屋へと変貌していた。
そのピラミッドから放出される力は、シャムスの体を包み込み。クロノヴェーダを打ち砕くための加護となる。
ひらり、と。黒衣を靡かせ、『大公女タチアナ・ニコラエヴナ』へと迫るシャムスと、呼吸を合わせて。
一・百(気まぐれな狐・g04201) が抜いた紅玉姫は、紅き輝きを増す。
はらりと舞う、花弁の尾を引き。振り抜いた刃に、確かな手応えを感じながら。
タチアナへと向き直った百の目は、そこに、あり得ない人物を映し出した。
「……兄、様?」
「百?」
ドクンっ……と。
跳ねる心臓が、煩くて。煩くて。痛みを叫んで。
心配そうなシャムスの声も、聞こえない。
この目に映る、その人が居なければ。きっと百は、此処に存在していない。
在りし日に、触れた手のぬくもりが。向けられた柔き眼差しが。百の世界を形作っていた……その人が。
『死ね』
百の欠けた記憶をなぞり、手にするナイフを突きつける。
その幻影が見せるのは、紛れもない裏切り。
この灼熱のような胸の痛みが、どうしようもなく事実であると言うのなら。
これは一体、どちらの裏切りなのだろう……。
「っ……涙!?」
百の頬に伝う雫に、尋常ではない様子を感じて。
シャムスが伸ばした手は、しかし吸血鬼たちによって阻まれた。
強力なタチアナの反撃に、身動きがとれぬまま。
それでも何とか、百を守らなければと。焦るシャムスの心が、トラップ生成を発動させる。
だが、張り巡らされたワイヤーも、常識そのものを破壊してくるパラドクスを留める効果はなく。
掠める吸血鬼たちの牙や爪に、黒い衣が赤く染まりゆく中で。
「百、大丈夫か!?」
シャムスは懸命に、声を掛け続ける。
「あら……死んでしまいましたか?」
吸血鬼たちが虚空に消え去った後も、未だ動けぬ百の姿を認めて。
タチアナは少女のようなあどけない顔で、くすくすと笑う。
「ディアボロスであれば、死体も利用価値があるかもしれませんね?」
(「せめて、次の攻撃は……」)
先ほどから反応のない百の精神状態も、気がかりなのだが。
この無防備な状態で、タチアナの追撃を食らえば。今度こそ、心身ともに百は持たないだろう。
それだけは、させる訳には行かないと。百とタチアナの間に割って入り、立ちはだかるシャムスの背後で、ざわり……と。
空気が、揺らめいた。
「戦わないと……」
百の頬を伝った雫が、ぽたりと落ちた。
大切な想いも、記憶の苦しみも。
全てがバラバラに砕けて、雫と共に零れ落ちてゆく。
「全部消えてしまえばいいのに……」
伸びる髪が、耳の先から白金に塗りつぶされて。百の肉体が、ネメシス形態へと変じていた。
「血が見たいのだろ……」
ならば見せてやる、と。
抜く刃はいっそう紅く、妖しく輝いて。
再び、呼び起こされる幻影を。胸の痛みを。
鉄錆の臭いと共に振りまく赤色で、諸共に塗りつぶしてゆく。
シャムスの目に、余りに痛ましい姿を刻み込みながら。思い出したくはなかったと。
百の頬に残る一筋の跡だけが、砕け残った一欠けらの想いを表していた……。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【狐変身】LV1が発生!
【トラップ生成】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!
【ガードアップ】がLV2になった!
キーラ・パーヴェルファング
【鉄線】
貴女がここの管理人ね
紛い物の不純な血で配下を増やそうだなんて、嘆かわしいわ
(十埼に頷き)ええ、任せるわ
竜の背中を守りながら、未来予測で動きを観察しつつ前の戦いで高めた神速反応で吸血鬼連隊の猛攻をパラドクスで迎撃
頭数、その頭を潰しながら減らしていきましょう
竜が受難予報でタチアナの恐怖を極限まで高めたあとに私がパラドクスを放つ
暴蝕による有刺鉄線の束によって大きな腕を編み、雑巾絞りのように彼女を捻り上げていくわ
助けてほしい?
そうね……貴女の罪も、人々にしてきたことも私は興味ないけれど
でも無理よ
これが愉しいんだもの
(捻り潰し)
……何見てるの?
〔きっと彼は気づく。ああ、彼女は、あちら側なのだと〕
十埼・竜
【鉄線】
ぼくらの歴史から見たら
きみみたいなのがその名前を持つのは酷い皮肉だ
ぼくはきみを嫌悪する
…呪っても構わないと思うくらい
呼び出された軍勢は【防衛ライン】で足止めして
キーラちゃん、前線は暫くお願い
ぼくは大元から崩す
距離なんか関係ない、ぼくの〈呪詛〉は電波を介して瞬時にタチアナに届く
聴かせてやるよ、「受難予報」
この世界はこんなにも「死」に満ちている──ねぇ、きみはどうしてまだ生きてるの?
五感を狂わす〈精神攻撃〉で、その旗印はもう掲げさせない
楽になりなよ、ほら
「死」はもう目の前だ
(聴いてしまうし、見てしまって)
(目を、そらす)
…いや
キーラちゃんがそう、楽しそうにしてるところ、初めて見たからさ
ディアボロス達の攻撃は、確実に『大公女タチアナ・ニコラエヴナ』を消耗させている。
コウモリのような翼も、柔らかそうな肌にも、いくつもの傷が刻まれて。
清楚な白を基調とした衣装にも、赤い模様が滲んでいる。
「いい加減、実力の違いを悟ってはいかがですか」
それでも、優位に立っているのは自分の方だと。
余裕の表情を保っている精神力は、流石アヴァタール級と言うべきか。
確かに、ディアボロス達の消耗もかなりギリギリの所まで来ている。
(「腐っても、ここの管理人という事ね」)
その意地が、管理人としての誇りから来るものなのか、それとも責任感からなのかは分からないけれど。
キーラ・パーヴェルファング(大公の牙・g08440)にとっては、どうでもよい事。
「紛い物の不純な血で配下を増やそうだなんて、嘆かわしいわ」
この部屋に辿り着くまでの道中で、キーラがその手で引き千切って来たものは。あまりにも不出来な、『成り損ない』達。
あのような惨めなものを作り出しておいて、それを恥じる事もないなんて……と。
キーラの口からは、深いため息が零れる。
「キーラちゃん、前線は暫くお願い」
普段よりも低く暗い、十埼・竜(スカイセンサー・g02268)の声に、短く返事を返して。
パラドクスの高まりと共に、呼び出された有刺鉄線がキーラの周囲で騒めく。
「そうね……貴女の罪も、人々にしてきたことも私は興味ないけれど」
成り損ないを従えてボス気取りなその姿は、あまりに無様で。とても、見ていられないから。
解き放つ力と共に、有刺鉄線がタチアナへ向かって伸びてゆく。
タチアナの放つ吸血鬼たちとキーラの放つ有刺鉄線が、目まぐるしく書き換わる世界の法則の中で、互いを千切り合い対消滅して……。
その超常の攻防を、見つめながら。
(「ぼくらの歴史から見たら、きみみたいなのがその名前を持つのは酷い皮肉だ」)
竜の胸に湧く感情は、怒りと言うにはあまりに暗く。
殺意と言うには、あまりに冷たく。
「ぼくはきみを嫌悪する」
湧き上がる汚泥のような感情を、言葉に乗せれば。
タチアナの意識に叩き込まれるそれは、時に暴走する車の形で。時に這い上がれぬ水の形で。
急転する運命の嘆きを、深く深く刻み込む。
「ねぇ、きみはどうしてまだ生きてるの?」
『ねぇ、きみはどうして暗闇を語るの?』
紡ぐ言葉の裏側で、見て見ぬふりをしている罪悪感が竜に語りかけてくる。
その声は、灯火ではなかったのか……と。
「楽になりなよ、ほら」
自身の内より聞こえる声を無視して絞り出した声は、苦悶が滲んで掠れていた。
そんな竜の裏の声に、応えるように。まるで、断罪するかのように。
タチアナの呼び出す吸血鬼たちが、竜の体に牙を立て。その身を赤く染めてゆく。
それでも、放送を始めたからには。最後までやり切らねばならないのだと。
竜は、最後の一言を紡いだ。
「『死』はもう目の前だ」
ぐらり、と。
タチアナの体が傾ぐ瞬間に。キーラの手繰る有刺鉄線が、互いに絡み合い巨大の腕を形作った。
触れるだけで傷が付く棘だらけの掌が、タチアナを捉えて。
「助けてほしい? でも無理よ」
普段は感情が見えない、キーラの人形のような顔に。花がほころぶような笑みが浮かんだ。
「これが愉しいんだもの」
引き絞る、痛みと共に。巨大な鉄の腕は、真っ赤に染まる。
部屋に満ちる鉄錆の臭いを、どこかうっとりと。ゆっくりと……吸い込んで。
「……何見てるの?」
竜の視線に気付いて振り返ったキーラの顔からは、既に笑みは消えていた。
「……いや。キーラちゃんがそう、楽しそうにしてるところ、初めて見たからさ」
竜の視線が、キーラから逸れる。その俯き加減の顔は、落胆を表しているような気がして。
あぁ……きっと、気付かれたのだろうと。キーラは心の中で、嘆息した。
どれ程、人に合わせてみたところで。本質は、簡単には変わらないから。
竜が自分を畏怖するのならば、それはそれで仕方がないと。
感情の色が消え失せた、作り物の人形のような顔で。キーラはタチアナへと向き直る。
戦いはまだ、終わっていないから。
その背中越しに。未だにキーラを直視できない竜の心中を、キーラは知らない。
もしも、キーラの行いを……その価値観を肯定できないと言うのなら。
竜が、今しがた流した放送は、果たして肯定されるべきものだっただろうか?
少なくとも今の自分には、キーラに掛けられる言葉がないと。竜は口を噤む。
決定的にすれ違った感情を、互いの胸に残したまま。
無情にも戦いは続いてゆく……。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【活性治癒】がLV2になった!
【強運の加護】LV1が発生!
効果2【ドレイン】がLV3になった!
【グロリアス】LV1が発生!
リップ・ハップ
見た目がどーたらって話だけど吸血鬼は吸血鬼だ
私にとっちゃ怪物の一匹で獲物の一匹、手強さ以外は眼中にねーわ
パラドクスによる斬撃を見舞って伯爵に血を啜らせてく
渇いてるってならそのまま干からびさしてやんよ
蝙蝠の群れはフルスイングで出来る範囲だけ吹っ飛ばす【薙ぎ払い、衝撃波、吹き飛ばし】
但し後退は無しだ。突っ込む為に斬り開く、傷を嫌ってちゃ私の距離が遠のいちまう
無茶と無謀の一線を誤るほど頭に血は上っちゃいねい……といーね。ま多い分は吸ってくれんだろ
蝙蝠塗れになろうが吸われる以上を啜り、幾ら牙を突き立てられようが先に命に喰らいついてやろう【忍耐力、精神集中、捨て身の一撃】
さあ捧げな。啜り尽くしてやる
この実験施設の中で、唯一清潔で上品な空間であった執務室。
その部屋も激しい戦闘の余波に、書類が散乱し、床は赤く汚れて。
「まったく……いつまで粘るつもりなのですか」
ここに来て、ようやく苛立ちを表にした『大公女タチアナ・ニコラエヴナ』を前に、化物らしい顔も出来るじゃねーか……と。
リップ・ハップ(Reaper Harper・g00122)は、口角を上げた。
(「見た目がどーたらって話だけど、吸血鬼は吸血鬼だ」)
ディアボロス達の体力も、ほとんど限界だが。確実に積み重ねて来た攻撃が、タチアナの余裕の仮面を剥がした、今。
(「私にとっちゃ怪物の一匹で獲物の一匹、手強さ以外は眼中にねーわ」)
狩るべき獲物がようやく見せた隙を、狩人は決して見逃さない。
うねる蛇のように、群れを作り飛ぶコウモリ達を前に。足は退かない。
高まるリップのパラドクスが、さぁ、食事の時間だと。
大鎌『伯爵』を呼び起こし、リップの足が床を蹴る。
「渇いてるってならそのまま干からびさしてやんよ」
この手に振るう大鎌は、タチアナへと奔る怪物殺しの一閃であると。
広がるパラドクスが、それそのように世界の常識を書き換える中で。抗するタチアナのパラドクスもまた、リップがコウモリに貪り食われるのが必定であると。
世界の常識が、目まぐるしく書き換わってゆく。
その狭間で刻まれる傷から、血と生気が抜けていく悪寒にも似た感覚を。
いっそ丁度いいと、黒いマスクの下でリップは笑い飛ばした。
……この施設で、惨めな化物どもを見た。
救いを求める、どうしようもない奴等だった。
あまりに、どうしようもないものだから。
丁寧に、丁寧に。
一匹ずつ握りつぶして、此処まで来た。
その、感覚に。ちょっと血が上り過ぎていたものだから。
これはいっそ、丁度いい……と。
「さあ捧げな。啜り尽くしてやる」
お陰様で頭が冴えたと。振るう大鎌がタチアナへと奔る。
リップの胸に渦巻く感情は、その手の伯爵に「全てを啜り喰らえ」と。
吼え、叫び。振り抜いた刃は。
血しぶきと共に、タチアナの命を刈り取って。
何時から続いていたのかも分からない、この施設での非道な実験に、ようやくの終止符を打つのだった。
成功🔵🔵🔴
効果1【一刀両断】がLV3になった!