リプレイ

●雪合戦！
「フフフ、今年も来たわね！　雪合戦！　今回は個人戦よ！　ルールは――」
　リディル・ヴェント（ゲットレディ・g00550）が不敵な笑みを浮かべて、今年もこの時がきたと『ヨアケの星』の仲間達にルールを宣言する。
　・5回当たったらアウト。
　・残留効果は使用パラドクスの効果だけ使用可能とする。
　・最後まで残った人が勝ち！
「それじゃあ始めるわよ！」
　雪合戦開始だとリディルは元気に駆け出した。
「今年はチューガクセイもトラップを仕込んできたのね！」
　リディルはつるつる滑る床トラップを見て楽しそうに笑う。
「使用残留効果は【エアライド】に決めたわ。滑る床も落とし穴もジャンプで回避よ！」
　【エアライド】を使って宙を蹴れば何の問題もなくトラップを回避できると、宙を跳び回って移動した。
「去年はやられちゃいましたからね。今年は生き残ってみせますよ🎵」
　今年は最後まで残ってみせるとアオイ・ダイアログ（響き合う言霊の繰り手・g02687）は意気込んで雪合戦に参加する。
「作戦はトラップを活用しよう、です！」
　まずは校内を廻ってトラップ位置を把握して、それを使って戦うことにした。
「あとは待ち伏せや誘きだしをして罠にかけてやりますよ🎵」
　元から設置してある氷のブロックや、【セルフクラフト】で遮蔽を作り隠れながら雪玉を投げ、じりじり後退してトラップ地帯に誘い込む作戦に出る。
「今年もやってきたわね！　雪合戦――もとい死闘の戦いが！」
　桜・姫恋（苺姫・g03043）は今年も全力で楽しもうと張り切っていた。
「今年は個人戦ね？　ふふ、誕生日効果で勝たせてくれたりは……しなさそうね？」
　仲間達もやる気満々なのを見て、それならガチンコ勝負だと覚悟を決める。
「さてリベンジマッチと行こうかな」
　百鬼・運命（人間のカースブレイド・g03078）は今年こそは勝ってみせようとリベンジに燃える。
「そろそろ姫恋さんの誕生日ですし、お祝いついでに雪玉もぶつけてあげましょう。雪合戦においては慈悲などありませんので」
　アイネリス・レナリィ（黒鉄の魔女・g01781）は盛大に祝ってあげようと雪玉をたっぷり用意した。
「そういえば桜さんが誕生日だったか。誕生日おめでとう。汁粉の後に生徒の分も含めてイチゴのバースデーケーキも用意はしてあるが……ついでに敗北もプレゼントすることにしよう」
　誕生日の事を思い出した運命はケーキと一緒に敗北もプレゼントしようと挑発した。
「いいわ！　全力でいくわよ？」
　その挑発を笑顔で受け、姫恋は【光学迷彩】を使って隠れてみんなの様子を窺いながらこそこそと動き出した。

「雪合戦！　今年は個人戦やねえ。遠慮なしに勝ちに行かせてもらうで！」
　ツキシロ・フェルドスパー（非日常に迷い込んだ漂流者・g04892）は【飛翔】して上から仲間達を見下ろす。
「空中飛んでりゃ「空中戦」も合わさってそうそう当たらんで！」
　飛んで来る雪玉を簡単に躱し、飛ぶ鳥のように自由に空を舞う。
「足元トラップはこれで回避は出来るやろうし、罠がありそうなところは「計略」出来そうなところってところから逆算して計算すればええし、万が一は「残像」回避や！」
　上から見下ろせば罠が仕掛けられている場所も読みやすい。これなら圧倒的に有利だと空から雪玉を浴びせる。
「まあ、雪玉回収できへんからこっそり降りて雪玉回収するんやけどな」
　投げてしまえば回収に地上に降りなくてはならない。そこばかりは注意してツキシロは雪玉の回収に向かった。
「降りて来たわ、チャンスね！」
　その隙を見逃さず、雪景色に溶け込むように隠れていた姫恋は、背後から勢い良く雪玉を投げてすぐにまた隠れた。
「つめたっ！　やっぱり回収時を狙われてもうたな！」
　慌ててツキシロは残像を残して追撃を回避し、雪玉を抱えて空に飛び上がる。
「隠れとるんか？　ともかく反撃や！」
　ツキシロは足跡のある場所に向けて雪玉を降らせ、隠れる姫恋の頭に当てた。
「当てられたわね！　上にも注意しないと！」
　姫恋は射線から逃れる為に校舎に飛び込んで隠れた。
「普通に戦っても不利を背負うのは必至。ここは一つ情報戦を狙いましょう」
　アイネリスは一計を案じ、【パラドクス通信】であえて他メンバーへ自身を含めた位置やトラップの情報を流す。
（「勿論馬鹿正直には伝えません。虚実織り交ぜ揺さぶりをかけていきましょう」）
　嘘と本当の情報を混ぜることで迷わせる。
「トラップがあるのね！　でも跳んでいれば関係ないわ！」
　リディルが躊躇なく宙を蹴って飛び込み、アイネリスに雪玉を命中させた。
「迷いなく突撃してくるとは思いませんでした」
　すぐにアイネリスも反撃に雪玉を投げ、トラップの氷のブロックを利用して身を守る。
「跳び回ってればこのくらい――あいたっ！」
　調子に乗って跳んでいたリディルが視認性の悪い氷のブロックにぶつかり、そこを狙い撃たれてアイネリスの雪玉に当たってしまう。
「このままやり合っては泥沼です。他のトラップに誘導しましょう」
　アイネリスは雪玉を投げながら後退し、機動力で攻めて来るリディルを引き寄せて攻防を繰り広げた。

「まずはしっかり雪玉を作ってストックしよう。
　準備が勝敗を分けると運命はモッズコートのフードの中へ作った雪玉をストックしていく。
「いざという時弾切れでしたということがないように、数が減ったら隙を見ては雪玉を補充しておこう」
　弾を切らした者から戦場ではやられていくのだと、十分な雪玉を用意して攻撃を仕掛ける。
「下手に工夫を凝らすより、オーソドックスに戦う方が良いだろう」
　運命は【未来予測】を使い、罠や攻撃を察知して不意打ち対策を行う。不意打ちを避けられるなら正攻法で戦う方が強いと強気に前に出る。
「これはピンチです！　一旦下がりましょう！」
　その攻撃を受け、ピンチを演出してアオイが後方の校舎に逃げ込む。
「誘っているようだが……罠が作動するなら視える」
　運命は注意しながらアオイを追い駆けると、目の前から廊下をゴロゴロと大きな雪玉が転がってきた。
「ふはは、引っ掛かりましたね！　逃げろ逃げろー🎵」
　罠を作動させたアオイが煽るように声をかけた。
「おっと、私も避難しませんとね。あっ」
　自分も巻き込まれないように逃げなくてはと足を踏み出すと、つるっと氷の床で滑ってしまう。
「ぐぇ！？」
　蛙が潰れたような声を漏らし、慌てて立ち上がろうとするが床がつるつるしていてまた転んでしまう。
「残念だけど、自滅する未来が視えていたんでね」
　その光景を予測していた運命は素早く窓から逃げ出す。
「あっ滑って起きれないんですけど！　待って待って待って待って！？」
　慌てれば慌てるほど起き上がれず、巨大雪玉が視界を塞ぐほどの距離に迫っていた。
「にやーーーーっ！？」
　校舎に悲鳴が上がり、アオイは巨大雪玉に埋もれて自らが雪だるまのようになっていた。

「押し切られましたか……くしゅっ」
　アイネリスは頭が白くなるほど雪玉を浴びてくしゃみをし、温まろうとストーブの置いてある中庭に向かう。
「アタシ閃いたのよ！　昨年は“数撃てば当たる”方式で雪玉を投げまくっていたけど、ドでっかい雪玉を作って投げれば当てやすいし驚くんじゃない！？」
　同じく頭を白くしたリディルは去年の経験を活かし、今年は大きな雪玉を使おうと雪だるまを作る要領でコロコロ転がして雪玉を大きくしていた。
「隙が出来たところで小さい雪玉を当てまくるのよ！　天才！」
　自身満々に大きな雪玉を投げようとする。だがその姿は目立ち、さらには大きい分だけ壊れぬように気を遣って投げる為に俊敏さも欠いていた。
「させへんで！　連射や！」
　たっぷりの雪玉をツキシロが上から連続で投げつけ、リディルの頭を雪まみれにした。
「避けられない攻撃は先に潰すとしよう」
　運命もまた雪玉を投げ込み、リディルは投げつける前に雪玉の集中砲火を喰らい、その衝撃で大きな雪玉も割れて頭から降り注いだ。
「ああ！　しまったわね。せっかくのエアライドとの相性を考えてなかったわ！　もう少しで決着だから、みんな頑張って！」
　雪まみれになりながらもリディルは笑顔で残る仲間を応援した。
「このまま決着といくで！」
　ツキシロが運命に向かって空から強襲すると、運命はその弾道を読んでカウンターを狙う。
「視え――？！」
　運命が驚いた顔をして動きに迷いが生じ、その隙を突いてツキシロの一撃が顔を捉えた。
「どうや！　これで自分の勝ち――へ？」
　やったとツキシロの動きが止まったところへ、背後から雪玉が投げつけられて後頭部に直撃した。
「やったわ！　誕生日バフが掛かってたみたいね！」
　振り返ればぴょんぴょん跳ねる姫恋の姿があった。
「避けても当たる未来が視えたからな」
　運命はどちらにしても自分が負ける未来を視ていた。
　最後に残ったのはこそこそ隠れながら戦っていた姫恋だった。両手を上げて跳ね飛び勝利を喜んでいると、雪に足を取られて転びずぼっと落とし穴にはまる。それを仲間達が引き上げ、みんな雪まみれになって笑い合った。

「おしるこいっぱいありますよー！」
「あたたまってくださーい！」
　学生達がストーブで温めたおしるこで雪合戦を終えたディアボロス達を出迎える。
「ふぅー、疲れたわね。おしるこを貰いましょうか」
　姫恋がおしるこをもらい、ふーふーと冷ましながら口に運ぶ。疲れた身体に甘味が染み渡りほっと息を吐いた。
「勝負後はおしるこね！　あったまるわね～」
「はい、ほっとしますね」
　リディルとアイネリスは熱々のおしるこを食べて身体の芯から温まる。
「いやー、おしるこ美味しい」
「雪の積もる野外で食べると格別だな」
　アオイと運命は雪で冷えた身体が温まると、美味しそうにおしるこを頬張った。
「お汁粉美味しい！　雪合戦も楽しかったし最高のクリスマスやな！」
　みんなで楽しく遊んで満足できたとツキシロはおしるこの甘さで寒さと疲れを癒した。
「この時期は姫恋さんの誕生日よね、今年もおめでと！」
「改めてお誕生日おめでとうございます」
　リディルに続いてアイネリスもきちんと祝いの言葉を伝える。
「誕生日おめでとーー！！　」
「姫恋さんお誕生日おめでとうございます🎵」
　ツキシロとアオイもおめでとうと笑顔で声をかけた。
「ケーキも用意してあるよ」
　運命が蝋燭の立てられたイチゴのバースデーケーキを披露する。
「ふふ、誕生日のお祝いもありがとうね？　今年もみんなに祝われて楽しいのか誕生日になったわ♪ 」
　姫恋は嬉しそうにみんなに感謝の気持ちを伝え、蝋燭の火を吹き消し、今年も楽しいクリスマス＆誕生日になったと満面の笑みを浮かべた。




「去年は殺し損ねたからな、今年は殺す」
　ヤル気を漲らせたタオタオ・ザラ（大喰らい・g05073）が宣言して雪玉を手にする。
「殺し損ねた？　辛うじて生き延びたの間違いだろう？」
　ヴィバルス・リルアバード（不死身の英雄・g05064）も雪玉を手にして言い返した。
「頭の造りがお粗末なのは罪じゃあないが言葉は正しく使うもんだぜ金メッキ」
「ハァ？　言葉を正しく使えてないのはそっちじゃろ？」
　ヴィバルスの挑発に乗っていきり立ったタオタオが思い切り雪玉を投げつける。その分かりやすい弾道を躱し、ヴィバルスが反撃の雪玉をタオタオの顔に命中させた。
「ほらな、これでどっちの言葉が正しいか理解できたろ？」
「…………」
　ヴィバルスがニヤリと嗤うと、無言でタオタオが雪玉を拾い連続で投げ返した。怒りの余り狙いがぶれ、それが逆に軌道を読もうとするヴィバルスの顔面に命中した。
「この英雄フェイスに傷でも残ったら全世界にどう責任取る心算だ脳筋モヤシ？」
　余裕の表情が崩れムキになったヴィバルスも雪玉を投げつけ、二人は全身が真っ白になるまで投げ合う。
「後世に名も残せてない自称英雄の顔に傷が付いたって誰も気にしませぇーん。もいちど歴史でも学び直したらどうですかぁー？」
　挑発しながらタオタオが接近すると拳を叩き込みヴィバルスを殴り飛ばす。
「やっぱり頭の中まで筋肉が詰まってるようだな。これは雪合戦だろうが！」
　起き上ったヴィバルスは雪玉を握って殴りつけ、お返しとばかりに吹き飛ばした。
「殺す――」
「こっちの台詞だ！」
　雪合戦がいつの間にか肉弾戦かつ異種格闘技に変わり、ラリアットやドロップキックが飛び交いお互いが雪まみれになりながら暴れ回る。

「自慢の金メッキが真っ白になってるぞ！」
　ヴィバルスが殴りつけるとタオタオが転がり倒れたままとなる。
「ここまでか、やはり最後に勝つのは英雄だな」
　止めを刺そうとヴィバルスが近づくと、カチッとタオタオの倒れている辺りから音がした。するとゴロゴロと通路一杯の巨大雪玉が転がってきた。
「は！　罠ァ？　地を這う事しか想像が及ばない毒蠍野郎らしい陰険さだな！！」
「ふはははは！　こちとらお前の粗末な墓守るために罠張り巡らせたトコで生きてたんだよ舐めんな！！！！」
　自らを囮にしてトラップに誘い込んだタオタオが大笑いし、ヴィバルスを巻き込んで二人とも巨大雪玉に圧し潰されそうになる。
「こんな程度の罠百度は突破したわ！　無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ――――！！」
　ヴィバルスが拳のラッシュを浴びせて巨大雪玉を粉砕した。
「なっ――」
　道連れ作戦が失敗してタオタオが唖然とした顔を晒す。
「あっれぇ、墓護る為なんてしょぼいモチベだから、この程度の技術習熟でドヤ顔とかしちゃうのかなボク？　生き辛いでちゅねえー」
　そこへヴィバルスが厭味ったらしく失敗したタオタオを挑発しまくる。
「だが所詮凡俗の悪足掻きよ！　この必殺英雄雪だるまで悔い改めろ小悪党がァ！！！！」
　好き放題言って止めだと手製の雪だるまを掲げる。
「同じ手は喰らうか単細胞め！　雪達磨に雪玉を投げ砕き、掲げたそばから頭の上に落としてやろう」
　タオタオはカチカチの雪玉を投げつけて迎撃し、ヴィバルスの頭上で雪だるまを粉砕した。バラバラになった雪がヴィバルスの頭に積もる。
「ははは！　無様で滑稽でよぅく似合ってるぞ！！」
　大笑いしたタオタオに、ヴィバルスが怒りのドロップキックを決めて二人の大乱闘はお互いが力尽きるまで続いた……。


「ふ、雪合戦か……スノウメイジの我に勝てるかな？」
　自信に満ち溢れた態度でアタランテ・フォードブルー（氷理騎士団総長『氷聖』・g07418）は雪玉を作る。
「おー、自信満々だね。じゃあこっちは援軍を呼ぼうかな」
　雪玉を手に対峙する案内人の遥風が合図をすると、雪合戦の準備をした学生達が校舎から顔を見せ雪玉を一斉に投げ出した。
「みんなも遊んでみたいって。スノウメイジとかめちゃ強そうだし、ハンデってことで」
「構わんとも。スノウメイジの名は伊達ではない！」
　伏兵トラップを見せて悪戯っぽく笑う遥風に笑みを返し、アタランテは駆け出して雪玉の雨を躱して怪我をしないように加減して学生達に雪玉を当てていった。
「わぷっ！」
「当てられちゃったー！」
　当てられても楽しそうに学生達は笑い、無邪気に楽しんでいた。
「えー、マジ当たんないね」
　遥風も投げるがアタランテは躱してしまう。
「ハハハ！　ヴァンパイアノーブルとの戦いではこういった雪の中を走り、的確に相手を叩く戦いが当たり前だった！」
　アタランテも楽しそうに雪玉を投げ、多対一だというのに確実に数を減らしていった。
「よーし、こうなったら一斉に投げよー」
「うん！」
「いくぞー！」
　遥風が音頭を取り学生達とタイミングを合わせて一斉に雪玉を投げる。
「雪玉の弾幕か、だが――」
　降り注ぐ雪玉の中を進んで紙一重で躱し、アタランテは雪を被らずに通り抜けた。
「すっげー！！！」
「ディアボロスってほんとに凄いね！」
　学生達がその動きに感嘆しているところへ、アタランテは軽く雪玉を当てていった。
「あー、負けたね」
　学生と一緒に遥風も雪玉を受けて両手を上げた。

「ウム、楽しい日々だった」
「ほんとに楽しかった！」
「またやりたいね！」
　アタランテが学生と一緒にお汁粉を頂いて、皆が笑顔で暖を取っていた。
「体を冷やした時は、こういった暖かい飲み物を取るに限る……」
「うん、外で食べるおしるこ美味しい……」
　内から暖まりほっと白い息を吐くアタランテと遥風はクリスマスイベントを満喫していた。
















「雪合戦！！　わぁ！　クリスマスらしい素敵な催しだね」
　真っ白になった学校を見て天風・悠雨（孤高たる風詠みの旅人・g00820）は目を輝かせる。
「こういう遊びはいつ以来かなァ……やァ、童心に帰るってものさ」
　椿・朔那（flatline・g08046）はサングラス越しに眩い白銀の世界を眺めた。
「去年の冬はアリアと静かにデートをして過ごしていたのだが。こういう祭り騒ぎと言うのは良い、特に勝負というのが良い」
　フェオ・アンスール（狂飆・g04703）はデートも良いが、血沸き肉踊る祭りも良いと不敵な笑みを浮かべる。
「そうは思わないか、貴殿等！」
　そう言って男性陣に理解を求めると、同じく遊びと言えども勝負に燃える男達が頷き返した。
「あっは！　雪合戦でこんな賑やかになるもんだな」
　学校全部を使った雪合戦のステージに、月杜・ユエ（宵歌葬・g05994）ははしゃいでざくざく積もった雪に足跡を刻む。
「大人が本気出せば子供の遊びもマジもんだ。ま、容赦なく派手に遊ぼうぜ！」
　くくっと笑い燃えて来たと闘志を猛らせる。
「伴侶とイチャイチャする前に、仲間と大騒ぎするのもいいじゃないか！」
　シャナオウ・ナラシャ（『-紗那皇-』・g02191）は日の高い内に仲間とクリスマスを過ごそうと雪合戦会場となる白銀に染まった学校を見渡した。
「もちろんその後には、しっぽり……と過ごすつもりだ」
　夜のお楽しみを堂々と宣言しながら、ざくざくと雪の積もった校庭を歩く。
「さぁ、お前たち……大いに暴れようじゃないか！！　の前に……雪合戦ってなんだ？」
　勢いだけで来たものの、雪合戦が何か分からずにシャナオウは説明を求め、仲間達があれこれと説明してくれる。
「雪合戦……ほう、雪玉を作って相手にぶつけるという。なるほど燃えるな」
　同じく雪合戦を知らないナディア・ベズヴィルド（黄昏のグランデヴィナ・g00246）も説明を聞いて頷き、面白そうだと闘志を燃やす。

「とりあえず男女に分かれる？？」
　アリア・パーハーツ（狂酔・g00278）がちょうど男女で分けられるとチーム分けする。
「お、男女に分かれて女子の本気見せるん？　たんと動いてあったまるとしようぜ、アリアちゃん」
「寒さに負けず頑張ろ、ユエちゃん！」
　ユエはアリアの隣に立ち、共に男性陣と向かい合った。
「……ふむ、これは女性対男性のチーム戦かい？」
　悠雨の視線の先で男女に分かれたチームが対峙する。
「なら、僕も張り切るよ！　男性陣の皆を雪まみれにしちゃおう！」
　男性相手でも負けはしないと、悠雨は雪玉を作り始めた。
「男性陣を雪塗れにしましょうね、がんばろー」
　ナディアは女性陣の仲間と共に拳を突き上げ、一緒に雪玉作りに入る。
「それじゃあ始めようか！　喰らえ男共！！」
　アリアがぎゅっぎゅっと固めに握った雪を、にっこり微笑んで容赦なく投擲する。

「エート雪玉はこう丸めてだね。ふふ、なかなかこれはたのし――
」
　懐かしそうに朔那が説明しながら雪玉を丸めていると、鼻先を雪玉が勢いも良く掠めていき、びっくりして心音が止まりそうになった。
「なるほど、子供の遊びを大人のホンキでするっていうのはこういうものか……」
　子供の雪合戦なら当たったところでどうという事はない遊戯だったが、大人が、それもディアボロスが本気でやればそれはスポーツの域すら超えて合戦となる。ならば自分もと朔那は見本で作った雪玉を投げ込んだ。
「こんな感じかな？　それっ！」
　悠雨は朔那や皆の見よう見まねで雪玉を作って相手に向かって投げつけた。
「こっちもやるぞ！」
　フェオは反撃に雪玉を投げつけ、飛んで来る雪玉は躱す。
「学舎を迷宮化しこんな催しをしていたのか。合戦と名が付く以上、守護者として手は抜けんな。行くぞ毛玉。男性陣営に勝利を」
　テクトラム・ギベリオ（砂漠の少数民族・g01318）はスフィンクスの『毛玉』と共に【飛翔】して地形トラップを掻い潜り、高い天井付近から雪玉を投げて奇襲する。だが毛玉は一つ投げたところでぶるぶる震えて丸まってしまった。
「何？　肉球が冷たい？　毛玉作戦は愚策だったか……」
　役に立たなくなってしまった毛玉を見て、テクトラムは失敗だったと諦めて自分だけで雪玉を投げ続ける。
「しかし、本当に冷たいな」
　手を真っ赤にしながらテクトラムは着地して新たな雪玉を手にした。
「ふむ、なるほど……雪をぎゅっと丸く固めて」
　教えられたとおりシャナオウが雪玉を作ってみせる。
「敵人にぶつければいいんだな？　遠慮はしねーぜ？」
　不敵に笑うとそこへ飛んで来た雪玉が頭に当たった。
「ほほぉ、どこのどいつだぁ……？　俺様に中てた奴は……さぁ！？」
　シャナオウの闘気やサイキックオーラが膨れ上がり、バトルジャンキーのように凶暴な笑みを浮かべて雪玉を圧縮するように強く握り、視線が雪玉を当てたアリアに向けられた。
「あっはっは！　――は？」
「ささやき・いのり・えいしょう……爆ぜろ！！」
　放った雪玉がアリアの近くで爆発し、周囲に雪の欠片が散弾のように飛び散った。
「シャナオウ爆発は待って！？」
　悠雨が破片を躱しながら慌てて声をかける。
「ふはっ、ふはははははっ！！　踊れ踊れ！」
　だがシャナオウは笑ってさらに投げつけた。
「うおあ殿下待ってこれ遊びだからそんな怒らないで、」
　言い訳するアリアは何とか動き回って直撃を避ける。するとテンションの上がったシャナオウは次々と雪玉を投げて爆発を起こした。
「危ない！」
　悠雨は【エアライド】で宙を蹴り巧みに雪玉を躱す。
「よーし、こうなったら妖精達も大いに遊ぼうじゃないか！　風よ！」
　パラドクスを詠唱して激しく風を吹かせ雪玉の軌道を歪める。
「雪玉の行方を狂わせ……あれ？」
　風によって向きを変えた雪玉はアリアの顔の直撃していた。
「んぶぇっ……はな、ゆき……はなにはいった……」
　アリアは人に見せられぬ顔で俯いた。
「わぁ、アリアごめん！？」
　悠雨は謝ってハンカチを差し出す。

「あっはっは。こりゃ楽しいわ」
　ユエは飛んで来る雪玉をひょいっと躱す。
「容赦なく迷いなく雪玉が飛んでくる！　いいぞ、もっとや……んぐっ」
　笑っていると雪玉が容赦なくユエの顔に当たる。だがそれでも笑みを崩さず、ユエは男性陣に向かって投げ返した。
「こちらも行くぞ」
　テクトラムが上から雪玉を投げて援護する。
「ずるい、テクトラムさん。撃ち落してくれる」
　アリアは武器商人らしく雪玉ランチャー持ち出して空飛ぶテクトラムを狙う。
「おいアリア何だその武器……むぐっ！」
　直撃を受けたテクトラムは墜落し、深い雪にずぼっと人型を刻む。
「想像以上に激しいな……！？」
　テクトラムは起き上って追撃を避けるべく駆け出し、両陣の雪玉が飛び交う中を動き回った。
「手が、手が冷たい……！」
　慣れぬ冷たい雪にナディアは手を赤くしながらも、ぎゅぎゅっと圧縮してカチカチに固める。
「やはり……狙いはフェオよな」
　大きく振りかぶって雪玉を思い切りフェオに投げる。
「どさくさに紛れて海岸送りにしてくれようぞ」
　放った雪玉は見事フェオの顔面に直撃して驚いた顔を見せた。
「くそっ、お返しだ」
　顔の雪を払ったフェオは勢いを増して雪玉を投げつけた。
「あははははは！　ぎゃあ」
　ナディアが笑っていると、その顔に雪玉がいくつもぶつかって冷たさに悲鳴を上げる。
「冷たいっ！もう、誰よ！　誰でもいいか、えいっ！　お返しよ」
　とにかく負けじと男性陣、特にフェオに向かって雪玉を投げ返す。
「フェオさんめっちゃ狙われてんじゃん。面白いからボクも混ざっちまお〜♪」
　ユエも乗じてフェオを狙って投げ始めた。
「いつの間にかフェオばっかり狙われてる！　えへへっ！」
　楽しそうだと悠雨も参加してフェオへと雪玉を投げる。
「あれ、フェオ討伐に変わった？　よっしゃ埋めろぉ潰せぇ」
　アリアは恋人であれ雪合戦に慈悲はないと、容赦なく雪玉を投げ込む。
「一先ずは雪玉を投げつつ避けて――や！　ちょっとハードモードだねェ！？」
　朔那は投げるよりも倍以上の雪玉が飛んできて慌てて身を屈めた。
「なにしろ向こうがパワフルなのだし……うん、ここは男性陣。仲間同士でだね……おっと」
　協力し合おうと言いかけたところで朔那は避けた雪玉が全てフェオに向かっているのに気付いた。
「……ふむ、避けたのがよくよくフェオさんに目掛けて行くねェ……いや、うん。もちろん狙ってる訳ではないのだけど……」
　偶然とは恐ろしいと朔那はぱっと身を捻り、さらにそれもフェオに向かっていく。
「ふはははははっ！」
　ハイテンションに投げ続けるシャナオウの雪玉の破裂した破片までフェオに降り注ぐ。
「しかしフェオ、自ら研鑽の為に茨の道を往くと言うのか。流石である」
　皆の熱き想い（？）に応えてテクトラムもフェオにより試練を与えんと雪玉を投げ込んだ。
「……どうした皆何故俺を見て笑う」
　異変に気付いたフェオが訝しんで周りを見ると、いつの間にか女性陣が結束して雪玉を一斉に投げられ狙われていた。
「何だその結束！　待て、落ち着け、やめろ」
　慌てて逃げるが、背後の男性陣からも雪玉が飛んで来る。
「何故味方からも！　ぬおおおっ」
　校内を駆けずり回って飛んでくる雪玉から逃れる。

「逃げられぬよう落とし穴に嵌めてくれようぞ」
　止めとばかりにナディアは【トラップ生成】を使い、落とし穴を作ってそこに至る廊下をつるつる滑る氷に変えた。
「足を狙って、ぬうっ、氷の床で滑、ッ。壁際まで、ぐわああ！！」
　滑ったフェオが壁にぶつかってぽっかりと開いた落とし穴に嵌り、頭上から雪をどさどさと落とされて全身雪まみれになった。
「追い打ちがエグい！」
　ここまでやるかとフェオが叫ぶ。
「ナディアはさっきから何して……わぁ！？」
「ひえあ」
　それに巻き込まれ悠雨とアリアも滑ってしまい一緒に穴に嵌る。
「ふは、いい気味だなフェオ」
　ナディアが上から目線で穴の中で真っ白になったフェオを見下ろす。
「ええい、死なば諸共、全員道連れにしてくれる！！」
　這い出たフェオが道連れにしてやると乾坤一擲で投げた雪玉で罠を発動する！
「もっと悪足掻きするがいい……ってお前っっ！！」
　ナディアが驚きの声を上げて後ずさる。その視線の先には、ずずず……と遠くから転がる廊下を埋め尽くすような大きな雪玉が迫って来るのが見えた。
「クハハハッ！！　逃げ切れんぞぉ！！　俺もだが！！」
　プチッと真っ先にフェオが潰されて、雪玉の中にめり込んでゴロゴロと転がっていった……。
「あれ……大きな雪玉だ！？　ちょ、翼が重くて飛べないー！」
　悠雨が飛んで逃げようとするが濡れていて飛べない。
「わぶっ！」
　回避は間に合わずに巨大雪玉に飲まれた。
「……待って、あの雪玉は全員巻き込まれ、――」
　アリアも逃げようとするが背中から圧し掛かられて倒れる。
「ここは僕も童心に返って正面から受けるのも楽し――」
　朔那がゴロゴロと音に気付いて振り返れば、転がる大雪玉が迫るのを見て絶句した。そしてそのまま巻き込まれて潰される。
「このままやられたら雪だるまに……って、え……なにあの大雪玉……？！　わぁ？！」
　ユエもそれに気付き驚きの声を上げるが、成す術もなく押し潰された。
「校舎内では避けきれんな」
　飛行して避けようとしたテクトラムもこれは無理だと諦めて巨大雪玉を受け入れる。
「ぬおっ！？　フェオ貴様落ち着け」
　慌ててシャナオウが落ち着かせるように声をかけるが、すでに最初の犠牲者となったフェオからの返事はなく、巻き込まれてシャナオウも雪に包まれる。
「フェオめ！」
　悪態を吐きながら逃げるナディアも最後に押し潰され、全員が巨大雪玉の餌食となった。

「白熱も良いが、子らがお汁粉とやらを準備してくれたぞ。少し休憩しよう」
　テクトラムがそろそろ休憩にしようと、湯気の上がる中庭に視線を向けた。そこでは生徒達がストーブでお汁粉の大鍋を温めていた。毛玉が我先にと飛び出してストーブの間近で暖まる。
「うぅ……テクトラムの言うように、お汁粉食べよっか？」
　全身を真っ白に染めた悠雨がみんなに声をかけ、休憩しようと中庭に向かう。
「ほら、温まるぞ」
　テクトラムが仲間達にお汁粉を配っていく。
「ああ、これは温まるな」
　受け取ったフェオは手からじんわりと温かさを感じ、口に運ぶと内から温もりが広がっていった。
「ラフィスは濡れるの嫌だと言って出てこぬ。のくせにお汁粉はちゃっかり頂戴してるとは」
　お汁粉を受け取ったシャナオウはスフィンクスの『エニシェンラフィス』が雪合戦を放棄し、先にぬくぬくとお汁粉を食べて、学生達からマスコットのように可愛がわれているのを見て眉間にしわを寄せた。
「雪塗れになって冷え切っている体にお汁粉の温かさが沁みる……」
　全身に雪を浴びて冷え切り、ぶるぶると寒さに震えていたナディアがお汁粉で暖を取る。
「美味しい……ありがとうございます」
　作ってくれた学生達に感謝の言葉を伝え、甘味で元気を取り戻した。
「本当に美味しいね」
　悠雨もお汁粉の暖かさと甘さにほっとして疲れを癒した。
「はぁ……、汁粉……汁粉ボクにもおくれ」
　ずぶ濡れになったユエもテクトラムからお汁粉を受け取った。
「テクトラムさん、サンキュ……！」
　さっそく食べると内からぽかぽかと温まる
「ナイス温もり」
　寒かった分だけ温かさ沁みてユエはお汁粉を夢中で食べた。
「おしるこ……ボク様にもください……」
　疲れ切ったアリアもお汁粉をもらい、はふはふとエネルギー補給するように頬張った。
「雪景色を見ながら食べるのも悪くないねェ……」
　朔那もお汁粉を受け取って、白い雪の風景を眺めながの風流な食事を楽しむ。
　景色だけでなく、仲間と楽しく遊び共に食事することが最高のスパイスとなり、雪合戦とお汁粉のクリスマスを皆が笑顔で過ごした。








「さて、もう3vs3かな？」
　レックス・ウェリタス（Memento mori・g07184）はチームメイトとなる逢魔・荊（Dusk・g05721）とスフィンクスの『レグルス』に声をかける。
「ははっ、確かに頼もしい連れも含めて3vs3だ。賑やかなもんだぜ」
　荊は笑いよろしくなとレグルスの頭を撫でた。
「荊もレグルスも頑張ろうね」
「ああ、折角の雪合戦。派手にはしゃぐとしようぜ？」
　レックスの言葉に荊は頷き、雪に楽しそうに足跡を刻むレグルスもやる気を見せた。
「仕掛けは盛り沢山ときた。怪我には気ぃつけろよ」
　はしゃぎはするが、怪我の無い範囲でと荊は忠告しておいた。
「ルールはシンプルだ。相手チームに全員雪玉を当てれば勝利。遠慮なくかかってこい」
　荊が雪合戦開始だと雪玉を高々と放り投げて合図を送った。
「僕は、氷翠にサユキとチームになるな。相手方を全滅させれば良いらしい、善処しようか」
　オズワルド・ヴァレンティ（砂塵の・g06743）が同じチームの氷翠・凪冴（蒼氷忘花・g08307）とクダギツネの『サユキ』に視線を向けた。
「全滅……了解よ。雪で真っ白にすれば……いいのね？」
　凪冴は理解したと頷き、サユキもクールに尻尾を一つ振って理解を示した。
「それじゃあ行こうか」
　オズワルドは校舎のあちこちにある氷のブロックを壁代わりに移動して、その間にある使えそうなトラップの位置を把握していった。
「僕が【飛翔】しながら誘い込めば、滑る床は利用できそうだな。この氷床は下の階に抜け……雪合戦に落とし穴つくる必要性はあるのか？」
　不思議に思って首を傾げながら、ノリと勢いで作られたトラップを確認していった。

「戦略は使うもの」
　レックスは空間にハッキングして校舎の情報収集を行いトラップの位置を把握した。
「ハッキングで会場のギミックがわかりゃ頼もしいな。指示を頼めるか？」
「ん、了解。単語で合図を出すよ」
　荊が指示を頼むと、レックスは頷いて近くの防壁に出来る氷の障害物の場所を教える。
「それじゃあ俺はフットワークの軽さを活かして攻撃あるのみだ」
　荊は地形を利用して雪玉を相手に投げつけた。
「逢魔さんは運動神経が特に良さそう、ね……」
　凪冴は向こう側から勢いよく雪玉を投げて来る荊を見て、まともにやり合っては勝てそうにないとサユキと視線を合わせる。
「わたしとサユキ……適度に逃げながら、二人の注意をこちらに引き付けるわ」
　凪冴はサユキと共に囮になろうと、氷のブロックを使って射線を遮りながら前に出た。
「まぁいい、氷翠たちは気を付けて進みたまえよ」
　考えに浸っていたオズワルドがその背中に声をかけると、サユキが先んじて駆け、柔らかな身体で雪玉をするりと避けて相手を翻弄する。
「やるな！」
　荊が負けじと動き回ってサユキと攻防を繰り広げた。
「ひとが最も油断するのは、攻撃を当てる瞬間になる。どうせ翼と体格的に僕は良い的になるだろうから、それを逆手に取ろうか」
　オズワルドは自分が狙われやすいだろうと、飛び上がり中空から雪玉を投げて攪乱させる。そしてトラップの方へと誘導する。
「投げる力はそんなにないから……魔力で雪玉を作るわ」
　凪冴はフォローしようと雪玉を次々と投げ、数撃てばあたるの法則で援護射撃を行う。
「さあ、こっちだ――」
　オズワルドは落とし穴のトラップの上を飛んで通り過ぎる。
「逆に誘導しちゃおうか」
　レックスは相手の誘いに乗るフリをしてトラップに移動していくが、フェイントを入れて直前で止まって違う横道に入る。
「気付かれたか？」
　すると飛ぶオズワルドがそれを追い駆けるが、途中で宙に引かれた糸に引っ掛かり、トラップのスイッチが入って上から雪玉が落ちて来た。
「しまった――」
　何とかそれをオズワルドが回避するが、高度を落としてしまっていた。
「荊が動きやすいように最高のフィールドを贈ろう」
　レックスは荊が動きやすくなるようにトラップの少ない場所へと引き込んでいた。
「レグルスは指示するまでもないかな」
　駆け回って遊ぶレグルスは自然と相手の気を引いていた。
「ここなら自由に動ける」
　荊が軽やかに跳び回って雪玉を放ち追い込んでいく。
「押されてるわね……あ」
　相手の攻勢に引き気味の凪冴がカチリとトラップを踏む。すると大きな雪玉が廊下を転がってくる。
「こりゃ巻き込まれるな、横の通路に戻ろう」
「そうしようか」
　荊がこのままだと巨大雪玉の餌食だと横の通路に飛び退き、レックスも後に続くと足元がつるりとしていた。
「あ、ここって――」
　そこでレックスはその場所が先ほどの落とし穴に通じる滑る床だったことを思い出す。
「うぉっ！？」
「うわっ！！」
　二人はつるつると廊下を滑り、落とし穴がぽっかりと開いて階下に落とされてずぼっと深い雪のクッションに嵌った。それを遊びだと思ったレグルスも仲間に入ろうと飛び込んでくる。

「罠に掛かったようだ」
「そうみたいね……」
　オズワルドと凪冴が遅れてその通路に逃げ込み、滑らぬように気を付けて穴を覗き込む。
「あはははっ！　見事に罠に掛かっちまったな！」
「ふふ、そうだね」
　荊とレックスが顔を見合わせて楽しそうに笑う。そして上から覗き込む二人に気付いた。
「レグルス、ちょっと照明お願い」
　レックスが頼むとレグルスが光を放つ。すると上の二人が怯んだ。
「明るさに一瞬驚いてくれた此処がチャンス！」
　レックスと荊は呼吸を合わせ、雪から飛び出し上階へと跳躍して突撃する。
「先に当てれば勝ち、でしょ？」
「そ。当てりゃ勝ちだ。分かりやすいだろ？」
　レックスはぎゅっと雪玉を握り、不敵に笑う荊も同時に打って出て最後の攻撃を仕掛ける。
「逢魔さんの動きを止めよう……」
　凪冴が雪玉を荊に投げると同時にサユキが突進する。サユキにカウンターを決めて荊が雪玉を叩き込み、反対の手の雪玉を凪冴に投げると同時に、自分の顔にも雪玉を受け相討ちとなった。
「最後の勝負といこうか」
「行くよ――」
　オズワルドとレックスが対峙し、オズワルドが飛んで回避行動を取りながら上から雪玉を投げる。それに対してレックスは掌の中の雪玉を狙い定めて、守りを捨てて投げつけ、同時に雪玉が当たった。
「引き分け……いや、まだ――」
　オズワルドが何かを思い出したように階下を見下ろすと、そこには雪を丸めて雪だるまのようなものを作って遊ぶレグルスの姿があった――。

　勝負が終われば中庭のストーブの前で仲良く集まり、お汁粉を受け取って暖を取り一息ついた。
「何とか勝てたね」
「最後は思い切りの良さの勝利――と言いたいところだがレグルスのお蔭だな」
　楽しかったとレックスが笑顔を見せ、それに笑みを返した荊は感謝の気持ちを込めてストーブの前でまるまるレグルスを撫でた。その隣では兄弟のようにサユキも丸くなって温まっていた。
「あのトラップの数々は興味深かったな……」
　お汁粉を受け取ったオズワルドは、先ほどのトラップを思い浮かべて何かに使えないだろうかと食べながら思考する。
「雪遊び……こんなにはしゃいだのは初めてだったわ。……ええ、楽しいと感じたかも」
　凪冴は普段通り表情に変化はないが、勝ち負けよりも皆で遊べたことに満足していつもより柔らかい雰囲気になっていた。
　また機会があればみんなで遊ぼうと、クリスマスの雪合戦を楽しく遊んだ「萬屋Vigil」の仲間達は温まりながらお喋りを続けた。








「雪合戦！　毎年じーちゃんとふたりだけでやってたですから、みんなとやれるのすっごく楽しいです！！」
　葉切・松露（ハキリアリのきのこ農家・g03996）は元気いっぱいに、今日を楽しみにしていたと身体全体で表現する。
「冬がきたら雪合戦は絶対やらなきゃだよね！」
　同じチームの不知火・紘希（幸福のリアライズペインター・g04512）も隣で楽しそうに笑顔を見せていた。
「相手は強敵です、頑張るですよ！　紘希！」
「とにかく油断せず勝とうね、まーくん！」
　二人は呼びかけ合って絶対に勝とうと気合を入れた。
（「寒いの苦手だけど、皆と遊びたい気持ちの方が強いの」）
　タタミ・ヤスマ（幼幻弱視竜・g01941）は寒さに震えながらも、それよりもみんなと一緒に遊ぶことに心昂らせていた。
「雪合戦なんて久しぶりだわ。せっかくだもの、目一杯楽しみましょ」
　甘花・蜜充（ドリームキャンディ・g05453）は懐かしそうに雪の積もった学校を眺める。
「チームはタタミと一緒ね。頼もしいわ。まつゆとコーキには負けないわよ！　ね、タタミ？」
「うん、負けない……！　がんばるね、みつみちゃん……！！」
　蜜充が勝とうと呼びかけると、タタミはぐっと拳を握って気合を入れた。

「始めるですよ！」
　松露は開幕と共に『矢防の陣』で植物の遮蔽物を作って盾にする。そして雪玉をこそこそと投げる。
「こうやって、この陰から狙うですよ」
　毎年やってるだけあってしっかりと戦術が練られていた。
「なるほど！　これなら安全に戦えるね！　流石まーくん！」
　紘希もそれを真似して身を隠しながら雪玉を投げ始めた。
「学生さん、ステキなアイデアありがとう！」
「がんばってー！」
　そして紘希がこっちを観戦している学生に手を振ると、声援が返ってきた。
「あの二人はどんなことをしてくるかしらね？」
「調べてみるね……」
　蜜充が尋ねるとタタミが負のオーラ〈霞光気〉の空間認識力で皆の位置を把握する。すると作った物陰に隠れる松露の姿を見つけた。
「あ、まーくんずるい……！」
「ずるくないです、よしんばずるくても勝てば官軍です！！」
　勝てばよかろうの精神で松露は障害物から上体だけ出して雪玉を投げる。
「特にタミちゃんは同じ射手として油断ならない相手ですし、身体も大きいから優先して狙っていくですよ！」
　強い相手から倒してしまおうと狙いを集中する。
「まーくんが私を狙ってる……」
　霞光気でその軌道を看過したタタミは一歩二歩と歩くだけで回避した。
「体は大きくても、簡単には当らないから、ね……！」
　タタミも反撃に雪玉を投げつけると、松露は遮蔽物に引っ込んだ。
「どんどん攻めていくよ！」
　代わりに紘希が前衛として果敢に前に出て雪玉を投げつけていく。
「こっちも負けてられないわね」
　蜜充も反撃に雪玉を投げて一方的には攻撃させない。
「雪玉を避けて、避け……きゃっ！」
　蜜充がつるっと滑る床を踏んでしまい転びそうになる。
「みつみちゃん、大丈夫！？」
「だ、大丈夫よ！　ちょっと滑る床に足を取られそうになっただけ」
　タタミが心配そうに声をかけると、蜜充は心配をかけないように笑顔で大丈夫だと返事をする。
「あっだいじょぶぁっ！？」
　松露も滑って転びそうになった蜜充に気を取られて思わず顔を出す。そこへタタミが投げた雪玉が直撃した。
「あっぶふっ！」
「まーくん！？」
　背後から悲鳴が聞こえた紘希が振り返る。すると顔を白くした松露の姿があった。
「もう、みぃちゃんに気を取られちゃって……最終手段、相手をリアライズペイントで攪乱だ！」
　絵筆で宙に絵を描き、絵が枯れた雪だるま達が実体を持って動き出す。
「むぅ、私も、力をつかっちゃうんだから」
　タタミも『幻影旗手』を発動して幻影兵達を召喚した。
「さぁ、皆で雪玉投げちゃえ！」
　圧倒的な数の暴力で蹂躙し雪だるま達が押されていく。
「ええぇ！？　集団戦術はズルくないですか！？　ぶっ！」
　さらに松露はあっさりと囲まれて四方から雪玉を喰らった。
「まぁまぁ、集団戦なんて考えたわね、タタミ。それじゃあ、みつみも『絢爛たる歌劇場』で油断を誘っちゃおうかしら？」
　蜜充もまた『絢爛たる歌劇場』によって相手を油断させる作戦に出る。
「さぁ、ここからみつみとタタミの猛攻よ！　なぁんてね」
　蕩けるような甘い笑みを浮かべ、蜜充は誰もを魅了するお菓子を出して注意を引き付ける。
「あ、みつみちゃんのお菓子美味しそう……ぶふぇっ！！」
　松露が誘惑されてふらふらと出て来たところへ、蜜充からの雪玉を受けてもう顔が見えないほど雪で埋もれた。
「う、タミちゃんがすごくて追いつかないよ！」
　紘希は慌てて雪玉を構えるが時すでに遅く、周囲から飛んで来る雪玉が顔に直撃して視界が真っ白に染まった。

「みつみとタタミの勝利よ！」
「やったね、みつみちゃん……！！」
　蜜充とタタミが手を取り合って勝利を喜んだ。
（「投げて投げられて、楽しいから、寒さもへっちゃらなの」）
　タタミはすっかりと寒さを忘れて、楽しいでいっぱいになっていた。
「ふぅ、楽しかったけどすっかり手が冷たいわ。おしるこいただきに行きましょ」
　蜜充は自分もタタミもすっかり手が冷たくなっていると、手を引いて中庭のストーブのある場所へと向かう。
「あぁぁ……雪かぶりすぎて寒いです……おしるこ、早く食べたいです……！」
　雪まみれで全身を白く染めた松露はガタガタ震えて着いてく。
「そうだね。早く温まらないと風邪をひきそうだよ」
　紘希も身体をブルッと振るわせてその後に続いた。
「おしるこ美味しい……」
「そうね、それに温まるわ……」
　タタミと蜜充は美味しそうにおしるこを味わう。
「ああ、生き返るです……」
「寒い時にはやっぱり温かいものが一番だね」
　ガタガタ震えていた松露と紘希はおしるこの温かさに救われたように笑みを零した。
　そんな様子を蜜充とタタミが笑い、釣られるように松露と紘希も笑って楽しいクリスマスを賑やかに過ごした。


●クライマックスバトル！
「ここでもパイ投げ……白い。これは……雪？」
　何かを投げ合う遊びをしていると聞いて、ふらりと赤いサンタ服を着たライラ・バルターグ（星刻道導・g03371）が雪で真っ白に染まった学校に現れた。
「おー、サンタさんだ。メリークリスマス」
「あ、はい、メリークリスマスです」
　遥風が手を振ってサンタのライラに呼びかけると、我に返ったライラも挨拶を返す。
「それってサンタのプレゼント？」
「これはパイ投げのパイです。ここでもパイ投げをしてるのかと残ったのを持ち込んだのですが……」
　ライラがサンタの背負う白い大袋からパイを取り出した。
「へー、パイ投げ。でも美味しそう」
「食べられますよ？」
「じゃあみんなで食べよう。おーい、差し入れだよー」
　遥風が大きな声でまた雪合戦をしているディアボロスや学生達に呼びかけ、ライラからの差し入れだとパイを見せる。それを皆で食べることにした。
「これが雪ですか……」
　珍しそうにライラは雪に触れ、その冷たさに思わず手を引っ込め。また恐る恐る触れて掌の上で溶けていくのを眺める。
「おー、ライラさんも雪合戦に興味ある？　じゃあ遊ぼー」
「はい、よろしければ参加してみたいです」
　それを見た口の端をクリームで汚した遥風が雪合戦に誘うと、興味のあったライラはこくりと頷いた。
「じゃあ時間もいい感じだし、クライマックスバトルといこー！」
　これが終わったらお開きだと、遥風が雪玉を丸め始める。
「こうですか？」
「そうそう！」
　真似して雪玉を作るライラに遥風が頷き返し、それだけでも楽しいと笑みが零れる。
「できたのを相手に向かってえいって放るだけ！　簡単簡単」
「はい……こう、ですか？」
　遥風がこんな感じとぽいっと遠くに投げてみせ、ライラも同じように投げると偶然遥風の顔に直撃した。
「あ……大丈夫ですか？」
「うー、冷た。これが雪合戦だよっと」
　遥風は軽く投げてライラの顔にも当てる。
「わかりました。こうですね」
　互いに笑顔で投げ合い白く雪まみれとなる。それに釣られて他の人々も雪合戦に参加していく……。
　皆で最後まで雪合戦を楽しみ、賑やかにクリスマスパーティは幕を閉じた。

最終結果:成功
完成日	2022年12月30日