品川区の大天使による港区侵攻作戦

 アークデーモンによる残虐な作戦が行われている港区に対して、隣接する品川区の大天使が、侵略を開始しています。
 品川区の大天使は、アークデーモンの残虐行為を阻止し、港区の人々を自らの信者とし、ゆくゆくは港区を併合して、TOKYOエゼキエル戦争の覇者となろうとしているのです。

 品川区の天使よりも先に、残虐行為をするアークデーモンを撃破し、侵攻してきた港区の大天使の撃破し、その野望を食い止めてください。

獣と機械の境界線(作者 三矢葉冬樹
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#TOKYOエゼキエル戦争  #品川区の大天使による港区侵攻作戦  #品川区 


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●獣と機械
「グァアアアアアルルル!」
「ぎゃあああ!」
 獣の咆哮と人の悲鳴。東京都港区の一角で無力な住民が逃げ惑い、悪魔の爪になす術なく引き裂かれる惨劇が起こっている。
 狼の悪魔・マルコスの襲撃は突然のことだった。品川区との境に程近い自然豊かな森から湧いて出たその群れは、統率も無く獣性を剥き出しにして、手当たり次第に人間を襲い始めた。
 今もまた一人、逃げる最中に転んでしまった少年が獣に組み敷かれ、その幼い命を牙によって砕かれようとしている。
(「助けて! 誰か!」)
 少年は喘ぎながら心の中で救いを求めることしかできない。頬に当たる狼の吐息は死の臭いがした。
「ギャッ!?」
 涙でぼやける視界に鮮血が散って狼が姿を消す。予期していた痛みは無く、代わりにずっしりとした重みが胴体に圧し掛かってきた。
 混乱に陥りながらもよく見ると、ついさっきまで自分を食らおうとしていた狼が、頭部を失くして力無く覆い被さっていた。その骸も横合いから蹴り飛ばされ遠くへと転がっていく。
「立ちなさい、少年」
 解放され軽くなった体に差し伸べられる物がある。見上げた先には温度を感じさせない声で話す機械仕掛けの天使が、無骨な冷たい手で少年を助け起こそうとする姿があった。
 少年は感涙にむせびながら迷わずその手を取った。

●作戦概要
 パラドクスレインでは一人の男、フェルディナント・メーネ(人間のレジスタンス諜報員・g03539)がディアボロスを待っていた。書き物をしていた彼は待ち人の到来に気付くとペンを置き、ノートを手に立ち上がる。
「時先案内人のフェルディナント・メーネです。早速ですがTOKYOエゼキエル戦争で発生した事件について説明します」

「場所は東京都港区。白金台という駅の南方周辺です。すぐ近くの森に棲み着いた狼の悪魔・マルコスの群れが人々を襲おうとしています」
 卓上に広げた地図を指差して説明を続ける。
「犠牲者が増えた段階で大天使のマキナエンゼルが品川区から駆け付け、マルコスを一掃します。善良な天使に住民が救われめでたしめでたし、となれば良かったのですが、残念ながらこれはハッピーエンドになりえません」
 フェルディナントは手作りした大天使の駒を地図上に置き、マルコスの駒を蹴散らした。
「TOKYOエゼキエル戦争は過去のディアボロスの影響が色濃く残っており、港区を支配するアークデーモンに抵抗する区民が少なくない。それに目を付けた大天使はアークデーモンの脅威から人間を守ることで信仰を集め、港区を自らの属する品川区に併合しようと画策しているのです。いわば怪人が主役のヒーローショーだ」
 港区から悪魔の駒を除外し、天使の駒を配置していく。
「大天使を信仰してしまえば、区民はディアボロスの影響を失い、クロノヴェーダに抗えなくなるでしょう。さらに品川区が天使側の手に落ちればTOKYOエゼキエル戦争の趨勢が大きく傾きかねない。いずれも我々ディアボロスにとって無視できない痛手となります」
 新たにディアボロスの駒が地図上に乱入した。
「大天使より早く港区のマルコスを掃討し、侵攻してくる大天使をも撃破する。悪魔と天使双方の目論見を潰すことが今回の作戦目的です」

 一度盤面をリセットし、港区のアークデーモンのみが地図に残る。
「我々は少し出遅れています。ただマルコスに対処するだけではマキナエンゼルが戦場に介入してくるまで間に合わないでしょう。仮にマルコスを倒し切ったとしても、マキナエンゼルが現場に姿を見せると港区民は大天使を救援に来た味方だと誤認してしまいます」
 港区と品川区の境界線にディアボロスの駒を置き、南北へと振り分けた。
「二部隊による同時展開が必要です。一つは迅速にマルコスを倒し住民を救助するもの。もう一つはマキナエンゼルとその配下のソードメイデンが港区に侵入しないよう足止めするもの」

 区境で大天使の進路を妨害する南の部隊を指し、続ける。
「まずこちらから説明します。天使側の主戦力はアヴァタール級のマキナエンゼルです。注意点として、足止めの段階では彼に決戦を挑まないようにしてください。決戦となればこちらも足止めに専念する余裕は無く、戦いながら港区の戦場へと乱入することになるでしょう。先述の通り彼の姿を港区民の目に晒すことは避けたい。また最悪の場合、天使と悪魔両軍の挟み撃ちに遭うことも考えられます」
 一拍置いてから大天使の周りに小さな天使の駒を三つ付属させた。
「マキナエンゼルには配下としてソードメイデンが三体います。が、これは烏合の衆と言ってよいでしょう。むしろ彼女たちは上手くすれば、大天使の足手纏いとして時間稼ぎに利用できる可能性があります」
 具体的な方法はお任せします、とフェルディナントは付け足した。
「彼女たちはマキナエンゼルを援護するでもなく、形勢不利と見れば逃げ出すような者たちです。恐らく軍勢という体を整える数合わせか、悪魔との戦いを観測するために付いてきているだけなのでしょう。面倒ならば放置しても構いません」
 再び港区の盤面へと戻る。
「悪魔マルコスは二体前後が一塊となり、三方に散っているのを観測しています。個々は弱く、三体いたとしてもお一人で対処可能です。突出したはぐれの一体が小学校付近で子供を襲うことは確認できましたが、残りの二か所は判然としません。手を分け連携しながら捜索をお願いします」

 赤いペンを取り、港区と品川区の境界線をはっきりと引いた。
「最後に要請があります。可能であればマキナエンゼルの港区への侵入を防ぐだけでなく、品川区の内へと押し込み、そこで撃破してください。これが成功すれば、我々が品川区に侵攻する契機となるかもしれません。こちらは遅滞戦術とも、決戦とも並行して行えます。大事なのは最後に品川区内部でマキナエンゼルを討つことです」

 フェルディナントはノートを閉じ、ディアボロスに信頼の視線を向けた。
「命と心を弄ぶ所業を許すことはできない。どうか、君たちの力を存分に振るってほしい」
 彼はそう言い残し車掌室へと姿を消して行った。

●感度良好
 悠然と空を翔るマキナエンゼルへと一体のソードメイデンが高速で接近する。
「標的発見、マルコス一。二時の方角、接敵まで五分」
 報告に頷いたマキナエンゼルは進路を北西に修正した。
「確認した。再度索敵せよ」
「了解」
 命令を受け飛び去るソードメイデンと入れ違いに別個体がまたやって来る。そして更なるマルコスの目撃情報を聞いたマキナエンゼルは異なる情報を統合して計算、最適な順路を導き出し進路を微修正した。
 マキナエンゼルはソードメイデンを偵察機として用いているのだ。
 確度の高い情報を頼りに悪魔の現在地を割り出し、機械の天使が港区へと迫っていた。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
2
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
4
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【フライトドローン】
1
最高時速「効果LV×20km」で、人間大の生物1体を乗せて飛べるドローンが多数出現する。ディアボロスは、ドローンの1つに簡単な命令を出せる。
【セルフクラフト】
1
周囲が、ディアボロスが、一辺が1mの「コンクリートの立方体」を最大「効果LV×1個」まで組み合わせた壁を出現させられる世界に変わる。
【隔離眼】
1
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【断末魔動画】
1
原型の残った死体の周囲に、死ぬ直前の「効果LV×1分」に死者が見た情景が動画として表示される世界になる。この映像はディアボロスだけに見える。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【水面走行】
1
周囲の水面が凪ぎ、ディアボロスが地上と同様に走行や戦闘を行えるようになる。ディアボロスと手をつないだ「効果LV×3人」までの一般人も同行可能。
【書物解読】
1
周囲の書物に、執筆者の残留思念が宿り、読むディアボロスに書物の知識を伝えてくれるようになる。効果LVが高くなる程、書物に書かれていない関連知識も得られる。
【おいしくなあれ】
1
周囲の食べ物の味が向上する。栄養などはそのまま。効果LVが高いほど美味しくなる。

効果2

【命中アップ】LV2 / 【ダメージアップ】LV7 / 【ガードアップ】LV1 / 【反撃アップ】LV1 / 【リザレクション】LV1 / 【先行率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV2

●マスターより

三矢葉冬樹
 知性ある機械にロマンを感じる三矢葉冬樹です。
 各選択肢と流れを補足いたします。

 ①『遅滞戦術』
 重要な選択肢です。マキナエンゼルと戦う前にこれを成功させないと、どのような場合でも港区民は大天使への信仰を覚えてしまいます。また遅滞戦術が失敗、かつアークデーモン戦が終了していない状態で決戦に入ると両軍を相手取ることになり大変不利です。
 具体的な方法はお任せします。時先案内人はソードメイデンの利用を提示しましたが、もちろんアイデア次第で何をしても結構です。その都度判定いたします。
 選択肢②~④と同時進行可能です。

 ②『大天使の軍勢を押し返す』
 追加選択肢です。こちらは必ずしも成功させなくても大丈夫です。ただ、成功させておくと後々ディアボロスにとって有利な展開に発展するかもしれません。
 他の選択肢全てと同時進行可能です。ただし、①が完了する前にマキナエンゼルと直接事を構えるようなプレイングは不採用となります。間接的ならば判定いたします。

 ③『狼の悪魔・マルコス』
 集団戦です。放って置くと一般人に大きな被害が出ます。
 個々の戦力は大したことがありませんが、居場所が分からない状態です。上手く見つけ出してください。

 ④『ソードメイデン』
 取り巻きです。三体いますがどれも非常に弱く、偵察に徹しています。直截に言えば戦力外です。無視しても倒しても構いません。
 ①や②にソードメイデンを利用したい場合、撃破済みだとプレイングが成立しなくなる可能性にはご注意ください。(ソードメイデンの振りをする、というのは大変難しいです)

 ⑤『決戦・マキナエンゼル』
 今回のボスです。機械そのものに近い感性の持ち主で情報と効率を重視しています。無情ですが、ある意味で非常に素直です。
 彼の存在はアークデーモンと戦う港区民にとっては味方に他なりません。彼が港区に現れた場合、たとえディアボロスが先に悪魔を倒し、次いで彼と戦っている光景を見せたとしても、港区民は大天使に助けられたのだと勘違いしてしまいます。
 ①で述べた通り決戦を挑むタイミングが重要です。
 ②、④と同時進行可能です。厳密には③とも可能ですが、それは遅滞戦術の失敗を意味します。
18

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


天音・梓
◎準備
まずはノートパソコンとハッキングツールによる【ハッキング】で付近のカメラから映像を得て、天使達の位置と一般人の位置関係を把握しましょう
そして、天使たちの進軍ルートで使う道を割り出します

◎行動
パラドクス《膏霂》により、雨雲と雨を作り出し、向かうであろうルートに被るように雨を降らせていきます
私達には癒しの雨となるパラドクスですが、どうやら彼らにはそうではないようです
雨くらいで進軍を止めなかったとしても、これなら少しは嫌がらせができるでしょう

こちらは14年東京都民やっているのです
ぽっと出の天使達に土地勘のある地元民の力を見せてあげましょう
「ほら、天界モンは天界にけえれ、けえれ」……です


「よし、繋がった!」
 品川区北部のとある飲食店でノートパソコンを打つ客がいる。周辺一帯のカメラのハッキングに成功し、天音・梓(雨兆す・g03821)は小さく歓声を上げた。
 喜びも束の間、素早く次の作業を始める。ここからが本番だ。
 一覧表示されたカメラ映像を次々と切り替えていく。多くの監視カメラは人間を映すため俯角に設置されている。だが今欲しいのは空飛ぶソードメイデンを捉えられる仰角の映像だ。
 注文した飲み物を口に含む。味はかつて平和な時に飲んでいたものと同じだ。カメラが見せる2013年の東京の街並みもまた、あまり変わっていない。
 一瞬、望郷に駆られかけた梓の意識はある映像によって覚醒した。雲を観測するため屋上に設置されたあるカメラのリアルタイム映像。そこにソードメイデンとマキナエンゼルの姿が認められる。
「見つけましたよ」
 梓は飲み物を空にし、手早く会計を済ませて外へ出た。
 
 大天使たちの位置と向きから飛行ルートを割り出す。その後に梓は大量のカメラ映像と自身の記憶から、一般住民のいないルートを導き出した。
「こちらは十四年東京都民やっているのです。ぽっと出の大天使に地元民の土地勘というものを見せてやりましょう」
 水の矢をボウガンにつがえ、大天使たちの進む先にある天へと向ける。
「天界モンは天界にけえれ、けえれ……というやつです」
 放たれた矢が空へ吸い込まれ、青に溶ける。直後、矢が点となって消えた空にどこからともなく雨雲が集まった。程なく、やわらかな慈雨がざぁざぁと降り始める。
 この雨は大天使たちにとって邪魔になるだろう、少なくとも嫌がらせにはなる、梓はそう踏んでいた。
 繋いだままの観測カメラをノートパソコンで確認する。映し出された大天使は考えるように空中で停止していた。やがて雨を避けるように、梓の誘導した方へと進路を変えていく。恐らくソードメイデンの目視による偵察が雨によって機能低下するのを嫌ったのだろう。梓の読みは的中した。
 上機嫌になった梓は新たなカメラにハッキングを仕掛けながら、大天使の追跡を開始した。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【おいしくなあれ】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!

エル・プリメロ
あたしがいるんだもの、そんな天使どもの好き勝手にはさせないんだから!!
このナンバーワンのエル様を差し置いて、天使だか悪魔だか名乗ってんじゃないわよ!!
エル様に任せなさい!!サー!!

「きゃーっ!!助けてー!!」

さっそく【大声】を使って天使の気を引くわよ!

「あっちで化物が暴れているの!!ねえ、助けて!!」

どう?あたしの演技は!
あたしが指差す先は千代田区とか中央区とか、よくわからないけどとにかくそこらへん!ぜーんぜん違う方向!真逆よ!!
これで無駄足どころか逆戻りね!

もしそいつらが不審に思う事があれば、えーと、えーと…
「あのー…今日いい天気ね?」

…少しでも会話を引き伸ばして足止めするしかないわね!!


 梓から送られた大天使の進路予測を元にエル・プリメロ(極点のゼニス・g04692)は堂々と待ち構えていた。
 ナンバーワンである自らを差し置いてクロノヴェーダが好き勝手することを許すほど、彼女は寛容ではない。大天使だのアークデーモンだのと仰々しい名乗りも同様だ。好き勝手も仰々しい名乗りもナンバーワンたる自分にこそふさわしい。
「来たわね!」
 一人頷くエルの視界に一体のソードメイデンが入り込んだ。情報通りに空を飛んでいる。
 エルは威風堂々とした表情を一転、ぎゅっと目をつむると、お腹に力を込めて大声で叫んだ。
「きゃーっ! 助けてー!」
 声に気付いたソードメイデンがこちらへと滑空する。
「救援要請確認。情報提供を求む」
「あっちで化物が暴れてるの! お願い助けて!」
 迫真の演技と共に遠くを指差す。力強く突き出された指が示すのは東、お台場方面だ。
 ソードメイデンが反応して東へと顔を向ける。すかさず力強さを失わぬままエルが西を指した。西にあるのは目黒区だ。
 ソードメイデンが律儀に西へと向き直ると、その瞬間にはエルの指先が今度は東を指している。ここに至り当惑する雰囲気が伝わってきた。
「あの、どちらが正解ですか」
「あっちよ! 千代田区だか中央区だか分からないけど、あっち!」
 最後に示したのは千代田区と中央区の真逆、大天使がいる南西方向だ。その一帯だけ雨雲に覆われ雨が降っている。
 ソードメイデンは来た道を振り返ってから困り果てたようにエルを見た。不審がってはいないが、信憑性の薄い情報にどう行動するべきか悩んでいるようだった。
「あのー、今日はいい天気ね?」
 妙な空気を振り払おうとエルが話題を変えた。その言葉は正しく、今日は良く晴れている。だが不意の雨に打たれたソードメイデンは全身が濡れていた。
 互いに無言となり見つめ合う。喉の渇きを感じてエルは生唾を飲み込んだ。
 やがてソードメイデンが溜め息を漏らした。翼を広げ、ふわりと宙に浮く。彼女の体は東へと向けられていた。
「……念のため偵察します。こちらメイデン2。メイデン1、3に支援要請。当機より西および南西にマルコスらしき目撃情報あり――」
 そう言い残し、ソードメイデンは見当違いの方向へと飛び去った。
「勝ったわ!」
 腰に手を当てエルは満面の笑みを浮かべた。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【水面歩行】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!

アンクレアアニムス・サフィールヴァーグ
天の使いを名乗る輩も悪魔を名乗る輩も反吐がでるです
皆殺しです。あるじもそうおっしゃってます

狼の悪魔、空を飛ぶ天使
”わたしが狼の悪魔なら”視覚に頼らずとも索敵できる場所
自然公園の林、高めの建物の密集地を狙うです
だから狙いを絞って行方知れずのセットを捜索をするですよ

見つけたら粉砕&破壊で無駄に大きな音を立てて威嚇、近くの民間人からも注意を逸らします
隙は生じるですから先手はあげますし1発くらいノーガードで受けるですよ
コンクリを壊せる程度で良い気になるなです
てめーらじゃあるじの敵には力不足なんですよイヌッコロ
肉切られても骨を断たれようと何度死のうと異端者はぶっ潰すのが私達です

歯ぁ、食いしばるです!!!


 マルコスの襲撃は白金台駅の南方かつ品川区より北で行われる。そこにアンクレアアニムス・サフィールヴァーグ(信徒兼学徒・g01233)は『狼の悪魔』という属性を加えて予測を立てた。
 狼である以上は視覚に頼らず索敵できる場所を好むだろう、ならば建造物の密集地や林の中に現れる可能性が高い。また縄張りからあまり離れたがらないとも考えられる。
 条件に当てはまる場所に狙いを絞り、マルコスが出現した森から捜索の手を伸ばして行った。
 大通りを往く途中、横に伸びる路地が目に付いた。ビルや住宅に挟まれる細い坂道。左右にちらほらと自然の緑もある。そして何より、電柱に爪牙のようなもので抉られた痕跡があった。
 ここだ。確信したアンクレアアニムスは路地へと突進した。
「ぶっ潰してやるから待ってやがれです、イヌッコロ共」
 進入して二十秒と経たない内に、路地の奥から一人の女性が走ってきた。その背後に追いすがる二体のマルコスを視認する。女性は赤ん坊を抱えていた。
「本っ当に反吐が出るですよ!」
 跳躍して女性を飛び越える。着地と同時に打ちつけた十字架が地面を破壊し轟音が鳴り響いた。これでマルコスはアンクレアアニムスを無視できず、女性を追うこともない。
 家屋に並ぶほど巨大な十字架を片手で振るう人間の出現に、さすがのマルコスも警戒を深める。だが警戒するだけですぐ行動に移さないのは致命的だった。
「お前らは皆殺しにしろとあるじも仰せです」
 死の宣告と共に路地の横幅を覆う十字架が振り下ろされる。二体のマルコスはとっさに異なる動作をした。一体が下がり、一体が突撃を敢行する。
 反撃を選択したマルコスは十字架に圧し潰され、血煙を散らした。しかしその爪もまたアンクレアアニムスに届き、彼女の肩を抉る。
「この程度で良い気になるなです。肉切られても骨を断たれようと何度死のうと、お前たちをぶっ潰すのが私たちです」
 血が噴き出す傷にアンクレアアニムスが堪える様子はない。再び十字架を掲げ、攻撃の準備を整える。
 残るマルコスも涎の滴る牙を剥き出しにして、戦意のままに吠え猛った。
「歯ぁ、食いしばるです!」
 十字架と牙が激突し、十字架の重みを前に狼の牙は呆気なく粉砕された。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【怪力無双】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!

呉守・晶
ふん、マッチポンプじゃねぇけど俺らからすりゃ似たようなもんか
天使も悪魔も、どっちもクロノヴェーダなんだからな

さて、マルコスは突出した一体が小学校付近で子供を襲うって言ってたな
居場所が分からない残り2グループも気になるが、突出してるってことは一番被害が出る確率が高いってことだろ
なら【飛翔】して小学校付近まで最速で駆けつけてやる、間に合えよっ!
マルコスを見つけたら空からシースバスターライフルから【双翼魔弾】をぶっ放すぞ!
敵を追尾する魔力の誘導弾だ、住民への誤射の心配も少ないし、なにより降りて斬りかかる時間も惜しい!
勿論、撃ったら俺もすぐに弾を追って降り立って住民の無事を確かめるぞ


 アンクレアアニムスが二体のマルコスを圧殺した頃、その現場から東北東。複数の教育機関が近距離に集まる地帯がある。その空を呉守・晶(TSデーモン・g04119)が眼下の風景に目を凝らしながら飛翔していた。
 情報にあった小学校へと最高速度で急行する。そこで群れからはぐれた一体のマルコスが暴れているはずだ。マキナエンゼルは仲間の足止めによって来ないだろう。それは被害が拡大することを意味した。
 悲劇を食い止めるため集中力を総動員して襲撃の予兆を探す。そして見つけた。研ぎ澄まされた聴覚に複数人の足音と四足歩行の獣が駆ける音が届く。音の方へ視線を向ければ小学生の集団がマルコスから逃げ惑う姿があった。
「間に合えよっ!」
 斬り掛かる暇も惜しい。剣を納めたままの鞘を地上へと向けた。ただの鞘ではない、銃口を持つそれは砲戦用に自作したシースバスターライフルだ。
 狙いをつける時間さえ無駄にはしたくなかった。刹那の判断で追尾弾を選択、マルコスを標的と定めて引き金を引く。これで誤射の心配はない。
 晶はそのまま砲撃の反動を利用して宙返り、天地が逆となった瞬間に急降下した。砲撃の結果を確認するよりも子供の安全を優先し、庇うように降り立つ。
「大丈夫か!」
 自分たちを守るために立ち、安否を訊ねる晶の登場に緊張の糸が切れたのだろう。子供たちが縋りついてわんわんと泣き始めた。
 彼らの涙が痛みではなく恐怖と安堵によるものだと理解した晶も胸を撫で下ろした。
「ひっ、お姉ちゃんあれ!」
 怯える少年に袖を引かれる。彼の視線を追うと、魔弾の直撃を受けたマルコスがよろよろと近付いてくるところだった。
「俺の後ろに下がれ!」
 剣を構えながら前へと躍り出る。ここまで来て犠牲者を出すわけにはいかない。
 子供たちを守らんと立ちふさがる晶をマルコスは憎悪の目で睨みつけた。四肢に力を蓄えて突撃の姿勢を見せる。しかし獣はそこで限界を迎えた。
 痙攣して血反吐を溢すと、盛り上がっていた全身の筋肉が萎んだ。四肢を投げ出して倒れ、ぴくりとも動かなくなる。
「お姉ちゃぁーん!」
 マルコスの確実な死に、子供たちが感情を爆発させて晶へと群がる。
「お姉ちゃん言うなお前ら。ったく、怪我は無いか?」
 晶は騒がしさに眉をしかめながらも、安全な場所を求め、子供たちを引き連れて行った。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!

里木・啓吾
「煙に巻きましょう」

大きく煙が発生させれば港区民も下手には近寄る事はないでしょう
人形たちの索敵妨害もしていきますね

【使用パラドクス:霧散召喚】
射出した弾丸をスモークグレネードに置き換えるパラドクスです【トラップ生成】
「さて、うまく近寄ってくれるといいんですが」
ビルの中や物陰から敵がいる地面近くに向かって弾丸を撃ち込んでいきます
銃声がすれば天使も警戒する筈
警戒して近寄ってきた所にスモークグレネードを炸裂させます

あとは煙に紛れて移動しながら煙と銃声を起こしていきましょう
見当違いの方向への誘導と
他に陽動している味方が逃げやすくなる効果を狙いますね
「あとは飛んで火にいる夏の虫……
……いや、虫に失礼か」


 エルの虚報によってソードメイデンの三体は西・南西・東へと散開している。その偵察報告が来るまでマキナエンゼルは動けない。彼もまたマルコスの位置を把握していないからだ。
 今回の作戦はタイミングが重要だ。マキナエンゼルの到着は早くても遅くてもいけない。港区民の心を最大限掌握するには適度な犠牲と生存者が必要だった。
 その情報を得るため連れて来た偵察だというのに上手く機能していない。いや、最初は順調だった。歯車が狂ったのはあの妙な雨が降ってからだ。
 そう苛立つ彼は、ビルの物陰から自分を観察する者がいることに気付かない。

 里木・啓吾(研銃医・g00216)は空中で静止するマキナエンゼルを発見した。人気の無いビルに潜むこちらの存在は発覚していないようだ。
「さて、うまく近寄ってくれるといいんですが」
 リボルバーを取り出し、マキナエンゼルの目に付く地面へと狙いを定める。着弾時にスモークグレネードへ置換される弾丸を撃ち出した。
 ビル街に銃声が鳴り響き、弾丸がアスファルトを削る。明らかな異変を察知したマキナエンゼルが地に降り立ち、剣を手に着弾点付近を捜索し始めた。
 啓吾はその様子を注視しながらタイミングを計る。あと三歩、二歩、一歩――。
(「今!」)
 マキナエンゼルが着弾点に十分近付いた瞬間、啓吾の意思でスモークグレネードが炸裂した。もうもうと巻き上がる煙幕がマキナエンゼルの巨体をあっという間に飲み込む。
 それを見届けた啓吾は次の陽動場所への移動を開始した。
「アークデーモンか。いや、この手法は人間か?」
 煙幕の中から機械的な音声。光のマントで煙を消し散らし、マキナエンゼルが姿を現した。グレネードと同時に起動したワイヤートラップは剣に切り裂かれている。罠への対処が早い。
 啓吾は次弾を発射、すぐにスモークグレネードを召喚した。煙の中へ飛び込み正体を隠しながら走る。
 襲撃者の正体が人間だと疑われるのはいい。だがディアボロスだと看破されたら、マキナエンゼルはこの陽動に乗らないかもしれない。
「ついてきてくださいよ」
 啓吾の祈りは通じた。煙の奥からマキナエンゼルが追ってくる気配を感じる。
「あとは飛んで火にいる夏の虫……いや、それは虫に失礼か」
 向かうは誘導地点。煙幕を駆使しながら啓吾は走り続けた。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!

風戸・文香
■WIZ
無理して倒さなくて良いのですね?
ならば、この場はマキナエンゼルの進軍を止めさせてしまいましょう!

【インスタントトーチカ】を設営します
ただし、これは私の身を隠すのも目的ですが、進軍を抑える壁の設営が、真の目的です

[塹壕掘り、拠点構築]でまずは住民、仲間や私の安全を守れるようベースを固めてから、設営!

とりあえずは気を惹かせられれば、私の勝ちですから、ここはなにかないかしら……

道具箱からラジオペンチやドライバー等、兎に角先が尖ってそうな工具を[武器改造]してからの[投擲]!
これで倒せるとは思えませんが、品川区に留められれば作戦は成功。
ひとまずはこれで良し!

※連携・アドリブ共歓迎


「ふんふふーん」
 マルコスの襲撃地点から大きく南東、港区と品川区を貫く大通り。そこでは風戸・文香(エレクロトニカのタマゴ・g00142)が工事中だった。
 鼻歌を歌っているが使っているのは尋常の道具ではない。戦闘工兵特有の巨大なロボットアームだ。その爪がアスファルトやタイルをまるで砂遊びのように容易く掘り進めていた。
 工事現場の目の前には横道への曲がり角がある。その先から聞こえる銃声と炸裂音は少しずつ大きくなってきていた。それに急かされるように文香は作業速度を上げていく。
 彼女が作っているのは直径約二メートル半の丸い穴だ。真上から見ると真円が歩道と道路をくり抜く形になっている。穴の内壁はコンクリートや、周囲の建物から拝借した鉄骨等で崩れないよう補強されていた。
「でーきた!」
 穴から文香がひょっこりと顔を出す。胸から下は穴の中に隠れていた。穴の深さは約一メートルだろうか。立ち上がれば両手を自由に扱え、しゃがめば全身を隠せる。これは文香の体格に合わせた塹壕だ。
 出来栄えに満足したその時、曲がり角の向こうから銃声と炸裂音がして、煙が漂ってきた。重い足音と地響きも伝わってくる。もうすぐそこだ。
 そして煙をかき分け、横道から啓吾が走ってきた。
「里木さん、この中へ!」
 文香が叫びながら身をかがめる。啓吾が塹壕へと飛び込むのを待ってから、文香はパラドクスを発動した。
 瞬時にトーチカが形成され塹壕の上部を覆う。一拍置き、啓吾を追ってマキナエンゼルが直線上に現れた。
「何だと?」
 驚きと疑問をない交ぜにした機械音声。
 体を起こし、戸惑うマキナエンゼルを覗き窓から視認した文香は道具箱を漁った。
「なにかないかしら……あった、ラジオペンチ!」
 先の尖った工具を文香は瞬く間に改造した。数秒もしないうちにラジオペンチが苦無のような投擲武器へと生まれ変わる。
「えい!」
 カンと甲高い音を上げ、マキナエンゼルの剣にペンチが弾かれる。敵対行動を認めたマキナエンゼルのマントから無数の光刃が放たれ、トーチカを包囲した。頑丈に作ったトーチカといえど耐え切れそうにない数だ。
「こっちに気を惹かれた時点で私の勝ちです」
 文香が意味ありげに微笑み、体を伏せる。直後、空から大量の弾丸がマキナエンゼルに降り注いだ。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【セルフクラフト】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!

宇佐見・莉子
敵の懐に飛び込むのは怖いですけど、周りでウロチョロするのは大得意です!
こういうチマチマした役回りなら大歓迎ですよ!

まずは【空中戦】を仕掛けます。
まぁ一方的に空対地攻撃とはいかないでしょうけど、軽機関銃を【連射】してるだけでも無視出来ない火力に……なるといいなあ。
そんな感じで【錯乱】しつつ、敵がこっちを無視するなり逆に脅威として対処しようとしたら
戦闘スタイルを変えて一気に【捨て身の一撃】って感じの突撃を敢行します。

当然怖いしここで戦うわけにもいかないので【一撃離脱】です、これであわよくば戦力を削れたり敵を押し返せたらいいなあ……と思ってます。

……あれ、普通に危険で全然チマチマしてない!?


「お邪魔しますよ!」
 マキナエンゼルの意識はトーチカに向けられ、頭上が死角になっていた。それは空中戦を得意とする宇佐見・莉子(エアレイド・ラビット・g02290)にとって絶好のシチュエーションだ。
 開けた大通りは空戦の邪魔になる物が少ない。飛び立った莉子は易々とマキナエンゼルの頭上を取った。
 軽機関銃の引き金に指を掛けて躊躇いなく連射する。射程内に味方がいるが、トーチカの中だ。多少の誤射程度では傷一つ負わない。
 上空からの奇襲を受けたマキナエンゼルは光の双剣で守りを固めた。攻撃直前だった光刃が消滅し、トーチカの包囲が解ける。
「やはりディアボロスか。度重なる異変はお前たちの仕業だな」
 双頭のモノアイが苛立たしげに窄まる。無機質な視線が莉子を突き刺した。
(「怖っ」)
「だとしたらどうするんです?」
 内心で怯えながらも挑発的な言葉を返す。莉子の目的はマキナエンゼルの攪乱だ。チマチマした役回りだからそこまで危険ではないだろう、莉子はそう考えていた。
「無論、滅する」
 マキナエンゼルのマントが光り輝き、その巨体が宙に浮くまでは。
 空中と地上の位置関係なら届かない剣も、同じ土俵に立った今なら届いてしまうだろう。
「一方的に空対地攻撃できるとは思っていませんでしたけども! わひゃっ!?」
 危険を察知してスカイダイバーの出力を上昇、空中で仰向けに倒れるようにローリングする。莉子の前髪を高速で振るわれる剣先がかすった。
 不安定な姿勢に対して二本目の剣が追撃を仕掛けてくる。自力での回避が難しいその攻撃は、トーチカから飛んできた援護射撃が剣の軌道を反らしてくれたお陰で、間一髪に避けられた。
 死の恐怖を味わった莉子は思考を高速回転させた。これ以上怖い目に遭いたくない。そもそもここで決戦するわけにはいかない。この状況を脱する方法は何か。
 そして莉子の脳裏に閃きが走った。これだ――!
 スカイダイバーの出力を開放、負荷を無視して後ろへ急加速。直ちに反転。射撃しながらマキナエンゼル目掛けて突撃を敢行した。懐へと飛び込み、僅かな虚を突いて潜り抜ける。
 一撃離脱に成功した莉子は我に返って叫んだ。
「あれ、私の役回り、普通に危険で全然チマチマしてないですよ!?」
 その嘆きは爆音にかき消され、誰にも聞こえなかった。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!

アルメア・グラウプナー
「ほうほう、大天使という肩書はあの様な機械仕掛けの存在でも名乗れる物なのだな」
「それがアリならこんな体だし私も大天使を名乗れるんじゃないか? 私にとっては汚名にしかならんがな、はっはっは!」

・行動
さて、要は相手に猛攻を加えて品川方面に押していけば良いわけだ。
火砲による【砲撃】、そして【制圧射撃】で兎に角攻撃を絶やさずにして敵の進撃を止める様に動き、そして砲撃を加えながら戦線を押し上げていく。
また【建造物分解】で眼前に資材を積んで視界を遮り、此方の戦力を見えない様にして『敵が想定より多数居る』と思わせる事を狙ってみようか。
大砲火も今回の目的を果たす為、手数を証明する為の見せ技として使っていくぞ。


「初弾から着弾誤差なし。我ながら見事だ」
 大爆発の起こった現場から北上した地点に美しい女性が立っている。彼女は硝煙と軍服を身に纏っていた。
「あれが大天使か。その肩書はあのような機械仕掛けの存在でも名乗れるものなのだな」
 色違いの両の眼を爛と輝かせながらマキナエンゼルを望み、一人呟く。次第に口元が歪んで半月状となり、そして哄笑した。
「それがアリならこんな体の私も大天使を名乗れるんじゃないか? 汚名にしかならんがな! はっはっは!」
 よじれた腹を抑える手は、手の形をしていない。今の彼女の手は火砲そのものだ。砲口から立ち昇る硝煙がつい先程そこから砲撃したことを示している。
 彼女の名はアルメア・グラウプナー(フロイライン=ズィーリオス・g00637)。あらゆる感情を笑い一つで表現するサイボーグだ。
「ふっ、そろそろ始めようか」
 手近な無人の建物の一部が消失し、同重量の資材がアルメアの前に積み上がる。続けて大通りを横一列に埋め尽くすように、同様の資材が薄い壁として並べられた。
 アルメアの視界は資材の壁で遮られている。マキナエンゼルを視認することはできない。だがそれは相手にとっても同じことだ。いや、むしろ相手の方が条件は悪い。
 突然遠方からの砲撃を受けたマキナエンゼルは襲撃者の姿を見ていない。さらに彼は啓吾、文香、莉子と敵の増援を経験しながらここまで来た。敵の数が想定より多いという可能性が彼の中で高いものになりつつあるのだ。
「いくぞ――Feuer!」
 既にマキナエンゼルの位置を把握しているアルメアはその姿を見ぬままに砲撃した。壁に姿を隠しながら移動し、絶え間なく砲弾を落としていく。各壁からの弾道計算はとうに終わっていた。移動の都合上どうしても生じてしまう間隙は、前線にいる三人が連携して埋めている。
 ここにソードメイデンがいれば話は違ったであろう。彼女らの偵察によって砲手はアルメア一人だと早々に暴かれていたはずだ。そうなればマキナエンゼルはソードメイデンに足止めを命じて港区への侵攻を強行したかもしれない。
 だが、今のマキナエンゼルには敵の実態を探る術がなかった。敵の数が分からない以上、後退するのが賢明な判断だ。
 アルメアたちの前進がじりじりと戦線を押していく。大通りを下り、戦場は品川区へと移っていった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV3になった!

アンクレアアニムス・サフィールヴァーグ
いっってーーです!
でも狙い通りです
他の方が足止めてる間に犬をさっさと全滅させねば

怪我は治さず
圧死体を一つ回収するです
重そうなら怪力無双

情報の見えぬ敵なら推論か誘導より他ないです
嗅覚頼ってる予想が当たったなら血の匂いには反応するです
だから、自身の血とお仲間の死体を餌に誘導してやるです
狼は仲間意識も強いですし
索敵効率は敵と私で2倍です、むふー

捜索は先程の遭遇地点から移動距離は分かってるから同心円の遠地
視覚への依存が低い建造物の密集地や林の中

遭遇できたら死体をぶん投げて意表をついて
怯む野郎が居たらそのまま血煙にしてやるです

ほら、お前らのお仲間です。後を追うがいいです!!

ネメシス化と傷できっと±0です


 砲撃の嵐は凄まじい音と震動を港区南西部にもたらした。その衝撃に肩の傷を刺激され、アンクレアアニムス・サフィールヴァーグ(信徒兼学徒・g01233)が小さく苦痛の声を漏らす。
「いてーですけど、他の方が足止めしてくれてるうちに犬を全滅させないとですね」
 彼女は今、マルコスの死体を引きずって街を歩いていた。
 肩から零れた血が指先から地面へと滴り落ち、点々と跡を残している。引きずられるマルコスの圧死体もまた、絵筆のように血の道を描いていた。
 優れた嗅覚と強い仲間意識を持つ狼は、同胞と人間の血が交じり合ったこの臭いを無視できないだろう、そういう作戦だった。
 互いに互いを探し合えば索敵効率は二倍だ。血染めのシスターは自らの名案に「むふー」とご満悦な表情を浮かべた。
「こんなところに居やがったんですか」
 白金台駅南方の住宅街まで足を延ばしたところで獣の唸り声を聞いた。
 推測通り血の臭いは誘き寄せるのに有効だったようだ。同時に、敵が先にこちらを発見する危険性もあったらしい。住宅の陰から三体のマルコスがアンクレアアニムスを囲う陣形で現れた。待ち伏せだ。
 しかし不利な状況だからと怯むアンクレアアニムスではない。むしろ苦労が報われる想いだ。肩の痛みに耐えて歩き回ったのは狼の悪魔を潰すためだったのだから。
「ほら、お前らのお仲間です。後を追うがいいです!」
 敵が襲いくるより先に、手近な一体へと用済みの骸を投げつける。そしてアンクレアアニムスは変異した。
 時空や因果すら歪めてしまう力が復讐のために肉体を最適化させてゆく。ネメシス形態へ移行した彼女は見慣れぬ己の腕に頓着することなく、十字架を振り抜いた。
 投げつけられた亡骸に硬直していたマルコスが十字架と激突し、弾けて消える。
 同胞の死に残る二体のマルコスが怒り狂い、前後から挟み撃ちにしてきた。だが動体視力も膂力も平時より跳ね上がっている今の彼女の前では無謀な行動だ。
 アンクレアアニムスは後ろを無視し、目の前にいるマルコスを殴り飛ばした。さらに背中へ組み付いてきたマルコスを片手で引き剥がし、先程のマルコスへと叩きつける。
 そして両手で持ち直した十字架を重なり倒れる二体へと突き立てた。十字架が杭となって諸共に貫き、息の根を止める。
「これで皆殺し完了です」
 一瞬で三体のマルコスを屠ったアンクレアアニムスは息を吐き、十字架に付いた返り血を拭った。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!

アルメア・グラウプナー
「よしよし、団体客を会場へ誘導する仕事は終わったな。と言う事は――」
「私はもう、本気で、自由に、暴れても、良いという事だな?」

・行動
相手は天使、空を自在に飛ぶ存在か。こういう時に地に足が付いている身としては困るなあ、はっはっは!
基本的には後ろに下がっての火砲による【砲撃】とガトリングでの【牽制射撃】にて陸から攻撃していこう。
相手が焦れて接近戦に持ち込もうとしてきたら此方も【飛翔】で逆に懐に入り込み、爆裂鉄球とショットガンで対応するか。
また相手が壁や建物を背負った状態ならメテオールで攻撃し、避けられても爆破した建物の破片に巻き込まれて地に落ちたり、隙が作れる様にしていこう。


 大天使を押し返す作戦は成功した。あとは品川区に乗り込みマキナエンゼルを打倒すればこの戦いに勝利できる。
「よしよし、主賓を会場へと誘導する仕事は終わったな。ということは、だ」
 最前線へ向かう道すがらアルメア・グラウプナー(フロイライン=ズィーリオス・g00637)は空を見上げた。
 最初にマキナエンゼルが停止していた方角から、三体のソードメイデンが編隊を組んで飛んで来ている。遠目にも慌てようが伝わる飛び方だ。見失ったマキナエンゼルを今やっと捕捉したところなのだろう。
 路上で立ち止まったアルメアの口角が上がる。仰角に構えられた火砲とガトリング砲の射線と、編隊飛行の進路が重なった。
「もう私も、本気で、自由に、暴れても良い頃だろう?」
 色彩の異なる両眼が爛と輝き、砲弾と粒子が空へ二筋の線を伸ばした。
 編隊飛行に動揺が走る。三体の天使は陸からの射撃を散開して回避し、曲線を描きながら急旋回した。丸みを帯びた三角形を形作るような軌道でアルメアへと迫ってくる。
「空を自由に飛ぶ天使か。こういう時に地に足がついてる身としては困るなぁ、はっはっは!」
 天使たちが剣を投擲した。射撃体勢を解いてバックステップしたアルメアの足元へと剣が突き刺さる。アルメアは着地と同時に足腰へ力を籠め、対空射撃を再開した。
 戦況は膠着した。圧倒的な火力と射程を誇るアルメアに対し、ソードメイデンは機動性と飛行能力で勝っている。
 拮抗を崩し明暗を分けたものは情報量の差だった。
 アルメアは大方の現状を把握している。残す敵は眼前の取り巻きと本命のマキナエンゼルのみ。居所も押さえている。急がなければならない理由はない。
 一方ソードメイデン側は深刻な情報不足に陥っていた。一刻も早くマキナエンゼルと合流しなければならない。
 その焦りがソードメイデンを短絡的な行動へと駆り立てた。早期決着を図り、三体同時に近接戦闘を仕掛ける。
「そう来ると期待していたぞ!」
 位置と数の優劣を覆す術をアルメアは用意していた。空へ飛び立ち、ショットガンで牽制しながら天使たちへ肉薄する。そしてすれ違い様に取り出した爆裂鉄球を力任せに振り回した。
 周囲にいた三体の天使が槌に絡め取られる。そして回転の勢いのまま放り投げられた爆裂鉄球は空中で大爆発を起こした。
 爆風に煽られた髪が顔に纏わり付く。墜落する三つの影をよそにアルメアは髪を振り払い、そして嗤った。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【怪力無双】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!

里木・啓吾
「どうも、人間でした
着いてきてくれて助かりましたよ。ブリキ」

【飛翔】によって<空中戦>を挑み
リボルバー銃による<制圧射撃>で牽制を行います
ブリキらしく硬そうですから射撃でダメージを狙うのではなく
防御行動の誘発や腕に当てて剣を振る動作をブレさせたりします

【反撃:双翼魔弾】
「隠れて攻撃するのが、天使らしいと?」
獣とそう変わらない気もしますね

敵が見えなくなっても<連射>を続けて牽制
狙えない以上、この弾丸は簡単に避けられるでしょうが……
剣を振るう際に弾丸を<念動力>で<誘導>し
軌道を変えてブリキの背後を狙います
<フェイント>

「音も誤魔化すべきだったな?」
接近は見えないでしょう、耳に頼って<看破>します


 ディアボロスの勢いに品川区まで押し返されたマキナエンゼルは、いくら待ってもソードメイデンが帰らぬことで決定的な不利を悟った。作戦遂行のため、小競り合いを放棄して戦線離脱を試みる。
 その試みは意図を察した里木・啓吾(研銃医・g00216)の制圧射撃によって阻まれた。
「どこへ行くつもりですか」
「忌々しい男だ」
 飛翔する啓吾はマキナエンゼルの一挙手一投足に注意を払い、攻撃より妨害に専念していた。それがマキナエンゼルの癇に障るらしい。今の状態は啓吾の陽動に乗った結果であるため、尚更に彼のことを敵視する感情が漏れ伝わってくる。
 向けられる苛立ちに啓吾は涼しげな顔で言い放った。
「あの時はついてきてくれて助かりましたよ。ブリキ」
「殲滅する他ないようだな」
 マキナエンゼルの姿が光に包まれて消えていく。
(「来る」)
 その攻撃に関する情報は得ていた。消えたと言ってもいなくなったわけではない。光の屈折によって姿が見えなくなっているのだ。
 幽かな気配を頼りにリボルバーを連射する。ほとんどの銃弾は見当外れに終わったようだが、幾発かは回避行動を取るような空気の揺らぎを生じさせた。
「隠れて攻撃するのが天使らしいとでも?」
 軽口への反応はない。だが啓吾には分かった。すぐ目の前でマキナエンゼルが憤っている。そこにいると分かれば、剣を振りかぶる消え入りそうな音も捉えられた。
 その頭部と思わしき位置に射撃するのと、マキナエンゼルが双頭を捩りながら出現するのは同時だった。弾丸が空を切り彼方へと去っていく。
 断罪の剣が意趣返しのように頭頂へと振り下ろされる。とっさに掲げたリボルバーの台尻が刃を反らし、代わりに腕を裂いていった。
 マキナエンゼルがもう一方の剣で横薙ぎを放とうと腕を引く。啓吾はそれを冷静な眼で見つめ、不意に忠告を口にした。
「音には気を払うべきだな」
 どこからか風切り音。
「何を――」
 そこまで言ったマキナエンゼルを衝撃が背後から襲った。予期せぬダメージに横薙ぎが止まる。一方の啓吾はこの展開を読んでいたかのように素早く距離を空けた。
 衝撃の正体はマキナエンゼルに避けられた弾丸だ。啓吾はその軌道を帰ってくるように誘導して、時間差で攻撃したのだ。
「まだ追いかけっこを続けたいか?」
 挑発する啓吾に対し、マキナエンゼルが猛然と挑み掛かった。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【飛翔】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV6になった!

天音・梓
……どうやら道は開かれたようですね
私もマキナエンジェルとの戦いに向かいましょう

◎戦闘前
悪魔を敵視しているようですが、あなた方も人を弄んで利用するクロノヴェーダという意味では同類です
天使のふりした機械のペテン師は、この機会に塗装と化けの皮をはがしてスクラップです

◎行動
銀箭による雨の矢で味方を援護射撃します
相手は機械天使、狙うべきは鋼の鎧に覆われている部分ではなく関節部でしょうか。よく【観察】して鎧に覆われていない部分や、味方がダメージを蓄積している部位の精密射撃に努めます。貫けなくても駆動部や連接部分に少しでもダメージを与えられればそれでいいのです


 大天使とアークデーモン。彼らは天使と悪魔の名を持ち、敵対している。だがどちらも所詮は人を弄ぶクロノヴェーダに過ぎないのだ。
 マキナエンゼルを観察しながら天音・梓(雨兆す・g03821)はそう思考した。
 カメラ越しや遠目と、間近に見て取れる距離とでは感じ方が違う。供も翼もなく、双剣を手に戦う姿はどこからどう見ても天使ではなくて機械だ。
(「さしずめ天使の振りをした機械のペテン師ですね。この機会に化けの皮を剥がしてスクラップにしてあげましょう」)
 精密狙撃の機をじっと窺う梓だが、今の彼女の精神は冴え渡っていた。まるで予知するように不思議と射かけるべきタイミングが分かった。マキナエンゼルが隙を晒したとき、仲間が援護を必要としたとき、その一瞬前には既に矢を放つことができていた。
 観察して分かったのは機械も生身の肉体と同じく動作に予兆があるということだ。筋肉が収縮するように関節部のモーターが回転するほか、駆動音や排気も動作の手掛かりとなる。
 そしてマキナエンゼルが機械でありながら意思や感情を持っていることも先読みの大きな助けになった。彼の思惑をなぞれば次に何をするかが容易に分かる。
 例えば今がそうだ。
 敵が周囲に群がる状況で彼が取る手段は多くない。姿を隠して一人ずつ仕留めるか、マントから光の刃を放出して一網打尽にするかの二択だ。だが彼は姿を隠す手法を使った結果、啓吾にやり込められたばかりで苛立っている。もう一つの技で状況を変えようとするだろう。
 梓の予測通りマキナエンゼルのマントが発光した。それは光の翼を形成して高速飛翔する前行動だ。見過ごせば前陣に立つ仲間が無数の刃に切り裂かれてしまうだろう。
 それも読めているなら話は別だ。
「させませんよ」
 行動予測を立てているときからボウガンの照準は終わっている。立て続けに連射した水の矢があやまたずマントのジェネレーターに的中した。岩を穿つ雨垂れのように、一点に集中した矢の雨がマキナエンゼルの体勢を大きく崩す。
 攻撃が不発に終わったマキナエンゼルはその原因である梓を見た。的確に邪魔してくる雨の矢に覚えがあったのだろう。
「事の始まりはお前か」
「ええ、お邪魔しています。じきに天界に帰してあげますよ。ああでも――」
 梓の視線が機械にしか見えない体を追った。
「行き先はスクラップ置き場になりそうですね」
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【書物解読】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!

アンクレアアニムス・サフィールヴァーグ
後は自称天の使いの人形達だけ
これ迄の復讐者の戦果を駆使し
挨拶代わりにボス人形の邪魔な装甲を壊すです

雨や銃弾の牽制に紛れ
ネメシス化の膂力で十字架を遥か上空へ片腕で投擲
対象に人形を指定

壁をブラインドに徒手で急接敵
迎撃の素直な【見えざる断罪】の軌道を光使いの力で読み
致命傷を避けて受け
人形を片腕で「掴んで持ち上げる」

…意味がない?
復讐者の成果で偵察する"目"を失った人形には
天からの一撃は見えやしないです

地に接さず一点で支えてる状態で先程投げた十字架を受けさせ
衝撃を逃さず装甲をカチ割る

破壊
粉砕
反撃・ダメージアップ

―十字架戦闘術奥義・星落とし

翼に頼る者は知らないでしょうが
全く逃げない衝撃は…結構痛いですよ


 梓がマキナエンゼルを機械と断定したように、アンクレアアニムス・サフィールヴァーグ(信徒兼学徒・g01233)もまた彼を天使とは認めていない。彼女の中ではずっと天の使いを自称する冒涜的な人形に過ぎなかった。
「邪魔な装甲をぶっ壊してやるです、ボス人形!」
 剣と十字架で打ち合って数合。ネメシス形態となっても純粋な腕力と技量では依然マキナエンゼルに分があった。力押しだけでは勝てないと判断して大きく飛び退る。追撃の手は弾丸や矢の援護が防いでくれた。
 敵の注意が一時的にアンクレアアニムスから離れる。束の間の空白で彼女は天を仰ぎ、一計を案じた。
 十字架を空高く投擲すると同時に再び戦場へと走り出す。武器を手放して無防備な状態を攻撃されてはたまらない。障害物に身を隠しながらマキナエンゼルへ急接近した。
 あと五歩まで近付いたところで遮蔽がなくなり気付かれた。徒手空拳であることも認めたのだろう。マキナエンゼルの方から残りの間合いを詰めてきた。
 点滅するように消失と出現を繰り返しながら刺突してくる。恐れず踏み込んだアンクレアアニムスの右脇腹を剣先が抉った。灼熱のような痛苦が走る。
 それでも彼女は止まらなかった。右腕を閉じ、脇腹との間にマキナエンゼルの左拳を捕らえた。さらに左手で相手の右拳を掴み取る。そして総身に力を滾らせ、機械の巨体を押さえ込んだ。
「無意味なことを」
 力比べでは向こうが上だ。取り押さえられている時間はほんの僅かだろう。だが少しでも動きを止められるならそれで構わなかった。
「意味がない、ですか。空の眼がなければ何にも見えやしないんですね」
「虚勢だ。武器を手放して何ができる」
 その言葉にアンクレアアニムスは不敵な笑みを浮かべた。
「手放してなんてねーです」
 タイミングを計り機械の体を片足で蹴り上げた。力の均衡が崩れてマキナエンゼルが宙に浮く。
 そして光の翼で姿勢制御する間もなく、十字架が直上から降ってきた。
「十字架戦闘術奥義・星落とし。……全く逃げない衝撃は結構痛いですよ。味わうといいです」
 天から落ちる十字架がマキナエンゼルに直撃する。負荷の蓄積に耐え切れなくなった装甲の一部がひしゃげ、右側のモノアイレンズが破損して地面に散らばった。
 結末は未だ分からずとも、戦いの趨勢は誰の目にも明らかになりつつある。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【怪力無双】がLV4になった!
効果2【ダメージアップ】がLV7になった!

アルメア・グラウプナー
「やあやあやあ天使殿! そろそろこの茶番の様な演劇は閉幕としても良いんじゃないか?」
「もうこの舞台に立っている役者は貴殿しか居ないんだ。独りぼっちじゃあ寂しいだろう?」

・行動
さあ楽しい楽しい闘争の時間だ!
とはいえ基本的には取る戦術は変わらんな。味方と連携しつつ後ろからの【砲撃】と【制圧射撃】にて、ダメージ狙いよりも相手の動きを妨げ束縛し、味方全体に利させる様な形で動こうか。
ダメージや疲労の蓄積で相手の動きが鈍ってきたらソードオフと爆裂鉄球に持ち替え【飛翔】等で一気に接近、大喝砕を叩き込む。

舞台における機械仕掛けの神の存在は絶対だ。
機械の、そして神に仕える天使殿ならば理解できない筈が無いだろう?


 アルメア・グラウプナー(フロイライン=ズィーリオス・g00637)の放った砲撃がマキナエンゼルの動きを封じ、その隙を突いたアンクレアアニムスの一撃で装甲がさらに剥がれ落ちる。マキナエンゼルの動きは見るからに精彩を欠いていた。
 それも当然だ。既に二つあるモノアイの一つは欠損し、装甲も限界を迎えつつある。マントの要所を射抜かれた影響で飛行能力にも異常が発生しているようだ。
「やあ天使殿! そろそろこの茶番の様な演劇は閉幕としても良いんじゃないか?」
 アルメアの諦めを促すような発言は正しかった。この戦局を覆す方法を、マキナエンゼルは持っていないだろう。
 しかし、真っ当な感性の持ち主なら応じて全面降伏するか、あるいは逃げ出すような状況に置いてなお、マキナエンゼルは戦闘態勢を解かなかった。
「もうこの舞台に立っている役者は貴殿のみだ。独りぼっちじゃあ寂しいだろう?」
 火砲を構えながら再度投げ掛けた言葉に、たった一言だけ返答があった。
「敗北は許可されていない」
 その姿は元軍人ならば見覚えがあるものだ。そしてアルメアは興醒めな事実を悟った。この敵は闘争に何らの価値も見出していない。栄光も、快楽も、誇りも、恐怖さえない。あるのは作戦行動に従う機械的な反応のみだ。言われるがままに動く空虚な機械の兵士、それがこの敵なのだ。
「はっ」
 アルメアは短く笑いを漏らし、火砲をソードオフショットガンと破壊槌に換装した。マキナエンゼルはもう十分に弱っている。勝負の仕掛け時だ。
「舞台における機械仕掛けの神の存在は絶対だ」
 地面を強く蹴り即席で仕込んだ罠を発動させる。バネ仕掛けの射出台で空中に飛び出し、飛翔してマキナエンゼルへ一息に迫った。突撃に反応したマキナエンゼルが光を屈折させて姿を隠そうとするのを見て、アルメアはすかさずソードオフを連射した。散弾が逃げ道を封じ、見えずとも敵の位置が明らかになる。
 マキナエンゼルの左腕に相当する空間が揺らぐ。アルメアは空中に作り出したコンクリートを足場に急加速した。髪を掠める斬撃を感じながら、壊れたモノアイの死角に着地する。
「仮にも舞台に上がったのだ。機械の天使殿ならば理解できない筈がないだろう!」
 逆袈裟に振り上げられた爆裂鉄球が無防備な胴体に直撃した。凄まじい爆発がマキナエンゼルを飲み込んで吹き飛ばす。爆煙の晴れた後には片膝を突きながら火花を散らす大天使の姿があった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【隔離眼】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!

呉守・晶
子供達はちゃんと安全な場所に避難させたし、後はアイツを……マキナエンゼルを叩き潰すだけだな
しかし、そんななりしてる癖に雑魚を潰して信仰集めとはセコイ奴だな
つーか、お前の何処が天使だよ。出現するディヴィジョンを間違えてないか?具体的にはドイツ辺りのと

チッ、光学迷彩だと?本当にセコイ奴だな!
残留効果を駆使して対抗だ
トラップ生成での煙幕やペイント地雷を設置して、多数のフライトドローンを俺の周囲を飛びまわすぜ
これで光学迷彩に対処だ、ドローンがぶつかったり、煙幕やペイントで発見できるだろ
居場所が分かれば、封印を解いて貪リ喰ラウモノに変異させたアークイーターで斬りかかるぜ!
噛み砕け、アークイーター!


「そんななりしてる癖に雑魚潰しで信仰集めとはな」
 魔剣アークイーターを抜きながら、呉守・晶(TSデーモン・g04119)がマキナエンゼルへと歩み寄る。
 アルメアから致命的な損傷を受けながらもマキナエンゼルは戦闘続行した。剥き出しになった配線から放電し、破損したモノアイや装甲からオイルを流しながら、双剣を構えて仁王立ちする姿は悪鬼のようだ。
「お前のどこが天使なんだよ。子供が見たら絶対泣くぞ」
 剣と剣で決着を付けようとした晶は舌打ちをした。マキナエンゼルの姿がまたもや光の狭間に消えようとしている。
「また光学迷彩かよ。セコイ奴だな!」
 対抗手段は用意していた。これまで積み重ねてきた残留効果を駆使すれば光学迷彩程度なら対処可能だ。
 手始めにトラップ生成を使って一帯に煙幕を発生させ、次いで踏むと破裂するペイントの地雷を敷設する。とどめに多数のフライドドローンを自分の周囲に召喚し、鳴子代わりとして浮遊させた。これならば煙幕が大まかな位置を割り出し、ペイント地雷とフライトドローンが詳細を明らかにしてくれるだろう。
 即席の結界の中、晶は些細な変化も見逃すまいと気を張った。そして背後で派手な物音がした。ペイントの弾ける水音だ。
「そこか!」
 振り向きながら魔剣の封印を解除、ペイントへと斬りかかろうとする。
 そのとき晶の直感が警鐘を鳴らした。強烈な違和感。煙幕にペイントの地点から離れるような気流がある。それにペイントの付着した何かは微動だにしていない。
 次の瞬間ドローンが反応した。先程から少しずれた方向、向かって右斜めだ。
「噛み砕け、アークイーター!」
 晶は直感とドローンに従って魔剣を右斜めに突き出した。アークイーターが獲物を喰い千切らんと顎を開閉する。手応えがあった。
 マキナエンゼルが迷彩を解除して姿を現す。左胸を魔剣に丸ごと喰い尽くされて機能停止していた。繋がる先を失った左腕とその手に握られていた剣が地に落ちる。
 ふと首筋に痛みを感じた晶は手を当てて、冷や汗を流した。首の薄皮が斬られていた。多重の光学迷彩対策と、土壇場の直感がなければ危なかったかもしれない。
 ペイントが何に反応したのかを確かめると、マキナエンゼルの右の剣が落ちていた。これを囮にして騙し討ちするつもりだったのだろう。
「最後までセコイ奴だったな……ま、これで一件落着だな」
 すべての敵を討ち果たした晶たちは、互いに労をねぎらいながら品川区を後にした。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【断末魔動画】LV1が発生!
効果2【ドレイン】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2021年09月22日