祈りと断罪の儀(作者 犬塚ひなこ
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#TOKYOエゼキエル戦争  #浅草寺周辺地域の解放作戦  #台東区  #浅草寺  #光の調停者イーリス 

●闇夜の儀式天使
 光の調停者イーリスが拠点とする、浅草寺にて。
「なんですって、上野の防衛に失敗してディアボロスに制圧されたというのですか?」
 上野区域が失陥したという報告を聞いたイーリスは焦りを覚えていた。上野の防衛は順調であったというこれまでの報告は嘘となっており、防衛戦を再構築していく計画も儚く崩れ去っている。
 イーリスは予定外の展開であることを受け、急いで配下達を集わせた。
「もはや一刻の猶予もありません。台東区全域の資材を浅草寺に運び込み、浅草寺に絶対防衛線を構築するのです」
 もしこの浅草寺が落ちれば台東区を失うことになる。
 何があろうとも此処だけは守り切らねばならないとして、イーリスは部下に防衛作戦の実行を告げた。

「わたくしめにおまかせください」
 その配下のひとり、儀式大天使・ライラが一歩前に歩み出る。
 純白のドレスに身を包んだ美しい天使はうつくしい声色を紡ぎ、恭しく礼をした。誰をも虜にするほどの容姿を持っている彼女はどうしてか、何処かがらんどうな雰囲気だ。
「我が儀式にて人々を大天使へいたらせ、救済を齎してみせましょう。そして、異端者には死の慈悲を――」
 右には二枚、左側には四枚という歪な翼を揺らめかせたライラは静かに微笑む。
 その笑みからはまるで、闇夜のつめたさのようなものが感じられた。

●天使の防衛拠点へ
 台東区にて上野攻略作戦が無事に成功した。
 これによって区の支配者である『光の調停者・イーリス』がいる、浅草寺周辺への侵攻が可能になっている。しかし、イーリスはそれ以外の地域を捨てて、浅草寺を死守するべく防御を固めていた。
「イーリスの守りはとっても強固です。配下の大天使が信仰を集めて、守護を強化しているからです」
 時先案内人のひとり、七篠・蝶々子(スノウメイジ・g07447)は、現状では浅草寺を攻略することが難しいと語る。
 しかし、突破口が存在しないわけではない。
「浅草寺の近くに大天使の防衛拠点のひとつがあります。そこは大きな硝子ドームで作られた温室庭園になっていて、『儀式大天使・ライラ』が人々を天使に覚醒させる儀式をおこなっています」
 何も知らない一般人は庭園の前にある広場に集められている。其処で待っていれば大天使の神託が授けられ、名誉ある配下の天使になれるという触れ込みだ。
 儀式大天使・ライラはそれこそが人々の救済であり、真に望まれることだと信じている。
 しかし、それは人々にとって幸福なことではない。

「もし天使にされてしまったら、きっと防衛要員にあてられて使い潰されちゃうだけなのです。そんな未来を救済とは呼びたくないですよね……。ですから、絶対に阻止してくださいっ!」
 幸いにも現時点で周囲の区の奪還の噂が広まっており、人々の信仰は薄れかけている。
 広場にまだライラが現れていない時点で乗り込み、天使として選ばれることの不条理さを真摯に語ってやればいい。そうすることで大天使への信仰も消え去り、敵勢力の勢いを削ることができる。
 だが、敵もいずれ広場の異変に気付くだろう。ライラは先ず配下の部隊を広場に送り出してくるので迎撃すればいい。
 配下の名は『撃滅のクヴァール』。
 彼女達は背教者を弾圧することで信仰心を回復させようとしてくる。
 それゆえに主な攻撃の矛先は復讐者になるはずだ。
「……撃滅のクヴァールさん。彼女達は、元は信仰心の高い一般人だったようです。つまりは既にライラの儀式によって天使に変えられた人だってことです」
 蝶々子は僅かに俯き、悲しげな顔をした。
 クヴァールは攻撃的な態度を取るが、その瞳からは苦しみの涙が零れ続けている。元の人間に戻すことは出来ないが、此処でしっかりと引導を渡すことが彼女達の救済に繋がるだろう。

 クヴァールを倒したら、後は庭園の方に向かうだけ。
 透き通った硝子に包まれた温室には儀式大天使・ライラが待ち構えている。
「ライラは闇夜の棘を齎したり、大天使の偽身を召喚したり、楽園のような幻影をみせてきます。惑わされてしまいそうなほどの力ですが、どうか負けないでください。戻るべきは現実であって大天使の世界ではありませんから!」
 勝利を願い、蝶々子は仲間達を送り出す。
 そして此処からパラドクストレインが出発していく。大天使が守る、祈りの庭へ――。

●祈りの衰退
 ドームめいた形をした祈りの庭。
 透き通った硝子の庭園の前には小さな広場がある。この広場からは儀式大天使・ライラが御座す庭園の内部は見えない構造になっているが、其処には多くの人々が集められていた。

 ――よろこびなさい。 お前達は えらばれました。

 そういってライラは儀式の準備を整えるために硝子の庭園に戻っていった。大天使曰く、此処に集められた者は天使として覚醒できる素質があるという。信者からすれば、天使になって大天使に仕えられるのならば光栄なことだろう。
 しかし、人々の中には不安を抱いている者もいる。
「千代田区に続いて、文京区も海なったって噂だな。このままじゃ台東区だって海になりかねないよ」
「このまま、ライラ様やイーリス様を信じていて大丈夫なのかしら」
「天使になるってどういうことだろう……」
「ライラ様のいうとおりに天使になったら、苦しいことから解放されるの?」
「おなかすいたな……。もうビスケットしかごはんがのこってないもん」
「選ばれたら、ご飯も貰えるのかな?」
 若い男性や女性を始めとして、まだ幼い子供達までもが広場に待機させられている。まだ道理も正しきこともわからない子供は天使になることに然程の疑問は持っていないようだ。
 だが、その心は変えることが出来る。
 揺らぎかけている人々に呼びかけ、信仰心が薄れる言葉を掛けていくことでイーリスの力も弱められる。
 天使よりも人のままで在ること。
 あるがままの自分でいいと語りかけることこそが、きっと――本当の救いに繋がっていくはずだ。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【悲劇感知】
2
「効果LV×1時間」以内に悲劇が発生する場合、発生する場所に、ディアボロスだけに聞こえる悲劇の内容を示唆する悲しみの歌が流れるようになる。
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【罪縛りの鎖】
1
周囲に生き物のように動く「鎖つきの枷」が多数出現する。枷はディアボロスが命じれば指定した通常の生物を捕らえ、「効果LV×2時間」の間、移動と行動を封じる。
【避難勧告】
1
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【動物の友】
1
周囲の通常の動物がディアボロスになつき、意志の疎通が可能になる。効果LVが高い程、知能が高まり、友好的になる。
【友達催眠】
1
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【プラチナチケット】
1
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【活性治癒】
1
周囲が生命力溢れる世界に変わる。通常の生物の回復に必要な時間が「効果LV1ごとに半減」し、24時間内に回復する負傷は一瞬で完治するようになる。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。
【口福の伝道者】
2
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。
【おいしくなあれ】
1
周囲の食べ物の味が向上する。栄養などはそのまま。効果LVが高いほど美味しくなる。
【寒冷適応】
2
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が、摂氏マイナス80度までの寒さならば快適に過ごせる世界に変わる。

効果2

【命中アップ】LV3 / 【ダメージアップ】LV4 / 【凌駕率アップ】LV2 / 【反撃アップ】LV1 / 【リザレクション】LV1 / 【先行率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV1 / 【ロストエナジー】LV3

●マスターより

犬塚ひなこ
 今回の時代は『TOKYOエゼキエル戦争』
 イーリスの軍勢を破るため、周囲の防衛拠点にいるアヴァタール級を倒していきましょう!

●選択肢
 今回は①→②→③の順番でリプレイを執筆していきます。

⏩①群衆への演説
 時刻は夕方~夜。庭園の広場前に集められた人々へ語りかけていきましょう。
 人々の信仰心は揺らぎかけているので、イーリスの支配状況が人々にとって危ないことや、天使にさせられることの悲しさを語ってください。お腹をすかせている子供達に語りかけながら支援をするのも良い手ですので、皆様のご自由にどうぞ!

⏩②👾取り巻きトループス級『撃滅のクヴァール』
 演説を終えると異変に気付いた配下天使が現れます。
 とても攻撃的ですが、人々に剣を向けることに苦しんでいる様子も見受けられます。ここで引導を渡すことが救済になるので、倒してあげてください。

⏩③👿アヴァタール級との決戦『儀式大天使・ライラ』
 トループス級を倒した後、戦場は夜の雰囲気と硝子に包まれたドーム型の庭園に移ります。
 ライラは夜と受胎の天使を冠し、人々を大天使への覚醒儀式を司る者です。うつくしい天使らしい容姿と声で人間を虜にするほどの力を持っていますが、ドレスの中身はがらんどう。
 大天使へいたる事は救済だと微笑み、異端者に死の慈悲を与えんとしてきます。

 WIZで相対する場合、電脳レイヤーで改竄された幻影で復讐者の望みを模倣してきます。その際、どんな望みが見えるのか・どのように対抗するかをプレイングでご指定頂くと、描写がぐっと深くなります。
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このシナリオは完結しました。



発言期間は終了しました。


リプレイ


館花・雪緒
敢えて良い面だけを見ましょう
クソ天使どもには、もうロクな戦力は残っていない
だからこそ、こんな形で臨時徴兵をしなければならないのだと
…私の家族が帰らないのも、まさか?
いえ、今は関係ないことです

天使になったら、もう家には帰れないでしょうね
それとも、皆さんは帰るべき家も待っていてくれる家族もいらっしゃらないので?
もしかして…逆に、天使になれば家族を救ってやるとでも唆されましたか?
馬鹿らしい
只人に頼らねばならぬ程に追い詰められた天使たちに生活を守る余裕などありはしないでしょうに!

今ならまだ間に合います
家族の下に帰りなさい
常世の未練に縋りなさい
…どうか、私に貴方達を斬らせないで

アドリブ・連携◎


●求める心
 夕刻が過ぎ、空は宵の色に包まれていく。
 冷たい風が頬を撫でる感覚を抱きながら、館花・雪緒(ヒガンバナ・g04596)は広場に踏み出した。
 其処には儀式大天使・ライラが集わせた人々が、困惑しつつも大天使の到来を待っている。雪緒の胸の内には東京を支配する天使達への怒りが渦巻いていた。
 しかし、敢えて良い面だけを見ることに努めた雪緒は冷静に思考を巡らせる。
(「この区の天使どもには、もうロクな戦力は残っていない……。浅草寺に集めた防衛力のみ。だからこそ、こんな形で臨時徴兵をしなければならないのでしょう」)
 つまり今は大天使にとっての窮地。
 こうして集められた人々を天使化させたとしても急拵えの配下にしかならないだろう。
(「天使への変化……。私の家族が帰らないのも、まさか?」)
 そのとき、雪緒の裡に妙な考えが過ったが、それは今考えることではないはず。心が暗くなればありえないことが浮かんでしまう。今もその影響が出ただけだろう。
「いえ、今は関係ないことです」
 首を横に振った雪緒は心を落ち着け、ざわいている人々の前に姿を見せた。大天使の使いかと期待を抱く者達に、はっきりと違うと告げた雪緒は語り始める。
「天使になったら、もう家には帰れないでしょうね」
「え……」
 雪緒が端的に告げた言葉に対し、驚愕した声が返ってきた。雪緒はこのまま天使化への不安を煽るような言葉を選び、告げていく心算だ。
「それとも、皆さんは帰るべき家も待っていてくれる家族もいらっしゃらないので?」
「そんなことは……」
「もしかして……逆に、天使になれば家族を救ってやるとでも唆されましたか?」
「救われる、と。救済であるから、とだけ」
「それから……私達は選ばれたって……」
 問いかけに対しておずおずと答えた人々に向けて、雪緒は「馬鹿らしい」と呟いた。それもそのはずだ。この区域では配給や食料提供すら滞っている。大天使に余裕が無いことくらい、人々も薄々気付いているだろう。
「只人に頼らねばならぬ程に追い詰められた天使たちに生活を守る余裕などありはしないでしょうに!」
 強く言い放った雪緒の声に人々がはっとする。
 雪緒は僅かに双眸を細めた。其処に悲しげな色が見えたのはたった一瞬のこと。これまでの強い口調は優しい声色へと代わり、そっと懇願するような言葉が紡がれる。
「今ならまだ間に合います」
 家族の下に帰りなさい。まだ其処に愛しい人がいるなら。
 常世の未練に縋りなさい。求めるものが傍にあるのならば。
 ――どうか、私に貴方達を斬らせないで。
 最後に飲み込んだ言の葉。それは未だ家族に逢えぬままの雪緒が心から抱く、切なる願いだった。
 
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!

風宮・優華
連携アドリブ歓迎。

いつ帰ってきても、この世界は吐き気がするわね。
まぁいいわ。天使共の企みをつぶせれば、この溜飲も下がるでしょう。

「本当に慈悲の心があるのなら、初めから苦しい生活を強いられるなんておかしいでしょう?」
ダメ押しに
「天使が一般市民と一緒に暮らしてる姿を見たことあるかしら?」
「あなた達は、家族ともう会えなくなってもいいの?」
エゼキエルで生き別れになった、両親を、兄を、友達を思い浮かべ
「まだ間に合うわ。家に帰りなさい」

おなかがすいてるであろう子供と目が合うと、ポケットから飴玉を取り出し手渡し、優しく声を掛ける。
「大丈夫よ。天使にならなくても、もっと美味しいものをお腹いっぱい食べられるわ」


●いつかの約束を
 訪れたのは人々が集められた広場。
 硝子ドームめいた庭園から少しばかり離れたこの場所には、夕闇が訪れている。
「いつ帰ってきても、この世界は――」
 口許を押さえた風宮・優華(氷の魔女・g08699)はゆっくりと頭を振った。人々を配下として覚醒させようと目論む大天使への思いはあるが、今は目の前のことに集中すればいい。
「まぁいいわ。天使共の企みをつぶせれば、この溜飲も下がるでしょう」
 心に宿った怒りを沈めた優華は、パンツァーハウンドのシラユキを連れて広場に歩み出した。人々は選ばれし者として集められているが、実情が解っていない者も多い。
 実際に戸惑いを抱いている人や、疑問を浮かべている者もおり、混乱が生まれ始めてもいた。
 信仰心は強いとはいえず、此方から訴えかければ大天使への思いも揺らぐだろう。此処に住む人達は大天使しか縋るものがないゆえにああして従っている。やはり、この支配体系は歪でしかない。
「大天使様とやらが救ってくれると思っているの?」
 優華は人々を見渡し、疑問を投げかける。すると信者達はおずおずと返事をした。
「救済が訪れると聞いているよ」
「それって救われるってことでしょ?」
 中には優華と同じ年頃の子もいて、無垢に天使を信じ切っている。首を横に振って、違うわ、と断言した優華は決意を固める。そして、核心を付く言葉を向けた。
「本当に慈悲の心があるのなら、初めから苦しい生活を強いられるなんておかしいでしょう?」
「それは……そうかも」
「しかし、今は戦いが多くあるようだし……」
 子供が先ず頷いたが、近くの大人が自分にも言い聞かせるように言い訳を紡いだ。しかし、優華はそんなことでごまかされてはいけないと言い切った。
「天使が一般市民と一緒に暮らしている姿を見たことあるかしら?」
「そういえばないなぁ」
「う……そう、だな……」
「あなた達は、家族ともう会えなくなってもいいの?」
 真実を突きつけることで人々は更に戸惑いを強くしていった。大天使への信用や信仰も薄れてきているだろう。その際、優華は過去にエゼキエルで生き別れになった、両親や兄を、友達の姿を思い浮かべていた。
 自分のように悲しくて苦しい思いをする前に、彼らだけでも助けたいと願う。
「まだ間に合うわ。家に帰りなさい」
「……ぼく、帰る。行こうパパ」
「し、しかしだな……」
 すると或る少年が父親の手を引く。周囲の人々も此処にいてはいけないような気がし始めたのか、帰宅を迷う様子を見せた。そして、優華は空腹そうな少年と目を合わせる。
 ポケットから飴玉を取り出した優華は少年へと手渡し、優しく声を掛けた。
「大丈夫よ。天使にならなくても、もっと美味しいものをお腹いっぱい食べられるわ」
「本当?」
「ええ、だからもう少しだけ待っていて」
 いずれ、台東区も復讐者達が奪還することになるはずだ。
 そう遠くはないであろう未来を思い、優華は少年と約束を交わした。
 
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【動物の友】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!

レイア・パーガトリー
歳も近いことだし、子供たちにお話を聞いてもらうわね
スープジャーであったかいお汁粉を持ち込んで、蓋つきお椀で配りましょ
見知らぬに逃げんからの飲食物を警戒されると困るので【友達催眠】で最初の一人ぐらいはサクラになって貰うのも手かしら

天使にならなくったって、こうしてちゃんとご飯もおやつも手に入るわ
そういう風に暮らせる街だったはずなのに
天使と悪魔の争いでこうなっちゃったんでしょう?
自分たちでみんなの幸せを壊しておいて、ちょっとだけ元に戻すことで恩を着せるなんておかしいわ

本当に天使になれば何でも解決するのなら、悪魔とここまで長く決着がつけられないはずはないし
皆が苦しむ前に最初からそうしていたはずよ


●温もりの心
 庭園前の広場に集められた人々はざわめている。
 レイア・パーガトリー(毒棘の竜騎士・g01200)は彼らの姿を見つめ、其処に迫っている危機を思う。
 いたいけな子供達まで天使にさせられ、戦いで使い潰されてしまう未来。そんなものは誰も望んでおらず、大天使の儀式が行われる前に阻止しておくべきだ。
「ねぇ、みんな」
「こんばんは。あなたも大天使様に選ばれたの?」
 歳の近そうな子供達に話しかけたレイアは、違うわ、と首を振る。それならばどうして此処にいるのだと問われる前に、レイアは持ってきたスープジャーを皆に見せた。
「お腹空いてない?」
「うん、すいてる……」
「それなあに? なにか持ってきたの?」
 問いかけたレイアに興味を持った子供達は期待を抱く。蓋を開けた途端にふわりと広がったのはあたたかいお汁粉の湯気と香り。蓋つきお椀にお汁粉を注いでいったレイアは、どうぞ、と子供達に勧める。
「はい、お汁粉よ。最近ぐっと寒くなってきたからね」
「いいの? ありがとう!」
 見知らぬ人から渡された食事に警戒されるかと思い、最初のひとりには友達催眠の力を巡らせようと思っていたレイアだったが、或る少女が素直に受け取ってくれた。
 きっとレイアに悪意がないことを本能的にわかってくれたのだろう。レイアがほっとするのも束の間、ぼくも、俺も、と子供達がきらきらした瞳を向けてきた。
「ちゃんと人数分はあるから安心して。はい、次はあなた達ね」
「今日はまだ何も食べてなかったんだ」
「おいしい!」
 あたたかいものをお腹に入れれば気持ちもあったまっていく。子供達は満たされた気分になったのか、少し元気になってきた。呼びかけるなら今だと考えたレイアは皆に語りかけていった。
「ここで天使にならなくったって、こうしてちゃんとご飯もおやつも手に入るわ」
「そうなの……?」
「ええ。元々はここもそういう風に平和に暮らせる街だったはずなのに、天使と悪魔の争いがあったせいでこうなっちゃったんでしょう?」
「でも、大天使様は僕たちのために戦ってくれるって……」
「俺達が天使になったら、皆の力になれるんじゃないのか?」
 改竄された歴史に生きる人々は今の状況が当たり前だと思わされている。それゆえにレイアのような考え方をする者は少なく、皆が驚いていた。だが、子供達が疑問を持ち始めたのは確かだ。
「自分たちでみんなの幸せを壊しておいて、ちょっとだけ元に戻すことで恩を着せるなんておかしいわ」
 大天使のやり方は人々に幸せを齎すものではない。
 はっきりと言い切ったレイアは、子供達にまずは家に帰るように願った。
「本当に天使になれば何でも解決するのなら、悪魔とここまで長く決着がつけられないはずはないし、皆が苦しむ前に最初からそうしていたはずよ。だから、お願い」
「……わかった。ママとパパに帰ろうって言ってくるね」
 危険な戦いに巻き込まれる前に。天使になどさせられてしまわぬうちに。
 レイアの懸命な思いは子供達に届き、皆それぞれに親の居る場所に戻っていった。不穏の波紋は広がっているので、もう暫くすれば人々は大天使に気付かれぬうちに広場から去っていくだろう。
「ありがとう、えっと……」
「レイアよ。またどこかで会いましょう」
「またね、レイアちゃん!」
 最初にお汁粉に手を伸ばしてくれた少女に微笑み、レイアはそっと手を振って見送る。
 ミユカと名乗った少女のお礼には心からの思いが宿っており、レイアは不思議とあたたかな心地を感じていた。
 
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!

ジョン・エルバ
天使になる?
全く嫌なことを思い出させんなよ。ムカつくぜ…

アイツらに唆されるまま言葉通りに天使になってもきっと楽にはなれないさ
だってアイツらが人間みたく楽しく食事や笑顔で友達と遊んでるのを見たことがあるか?
天使になった先に待ってんのは、大天使に道具のように使い潰される望まねえ未来だ
簡単に言うと、兵士になって強制的に戦わされるんだ
ハハハ、良いことなんざないな!

自分の意思で趣味に没頭したり、好きなもん食うのは最高に幸せなことだぜ?
腹減ってる子供もいるみてえだし、とりま【おいしくなあれ】でミルクチョコを差し出して安心させるか

…天使になって、手に入るのは飛べない羽だけだ。そのはずだ


アドリブ連携歓迎


●飛べぬ翼
 それは福音と救済を与える大天使。
 人々を選定していき、天使へと至らせることを幸福だと語る者が此処にいるという。
「――天使になる?」
 ジョン・エルバ(ロックスター・g03373)は広場に集わされた人々の未来を思った。このまま黙っていれば彼や彼女達は天使に覚醒させられてしまう。
「全く嫌なことを思い出させんなよ。ムカつくぜ……」
 いつだったか、住処にしている公園で天使について考えたことを思い出した。今は複雑な気持ちが浮かんでおり、言葉に出来ない思いが巡る。軽く天を仰いだジョンは夕闇に包まれはじめた空を瞳に映した。
 僅かに表情が歪んだが、ジョンは再び地に視線を下ろす。そのときには複雑な思いは押し込められており、彼は普段通りの笑みを浮かべていた。そして、気を引き締めたジョンは人々の前に進み出る。
「お前ら、本当に天使になりたいのか?」
 問いかけから始まったのは現状についての語りだ。
 この区は困窮しており、いずれ此処も海になるのではないかという噂も流れているほどだ。力を持たぬ者が縋れるのは支配者である大天使だけ。それゆえに人々は選ばれたという言葉に縋り、言われるがままに此処に集ってきたのだろう。
「アイツらに唆されるまま言葉通りに天使になってもきっと楽にはなれないさ」
「そんな……」
「いや、しかしライラ様が救済してくれると……」
「それで本当に幸福になれると信じているのか?」
 ざわめく人々に対し、ジョンは強く言い放つ。天使になるということは人々にとっては光栄なことなのかもしれない。だが、それはその先を深く考えていないからだ。
 ジョンは指先を突きつけ、更なる疑問を問うてゆく。
「だってアイツらが人間みたく楽しく食事や笑顔で友達と遊んでるのを見たことがあるか?」
「そういえば無いな……」
「天使になったら悪魔と戦わなきゃいけないのよね」
 人々は困惑しはじめ、ざわめきが更に大きくなった。配下の天使は大天使に付き従うのみ。人々のもとに遊びに訪れたこともなければ、楽しげにしている姿など誰も見たことがなかった。
「天使になった先に待ってんのは、大天使に道具のように使い潰される望まねえ未来だ。簡単に言うと、兵士になって強制的に戦わされるんだ」
「…………」
「選ばれたって、そういうこと?」
「ハハハ、ご明察。ひとつも良いことなんざないな!」
 不安がる人々に対し、ジョンは大天使の酷さを笑い飛ばす。しかしただ不安を煽るだけではない。この場から去れば一先ずの危機は去るのだと語ったジョンは人間の素晴らしさを説いていった。
「自分の意思で趣味に没頭したり、好きなもん食うのは最高に幸せなことだぜ? ああそうだ、腹減ってる子供もいるみてえだし、ほら」
「貰っていいの?」
「勿論だ、おいしくなあれのおまじない付きだぜ」
「ありがとう、お兄ちゃん!」
「父さんや母さんにも持っていってやるといい。他の子達も来い、まだまだチョコはあるからさ」
「わあーい!」
 持参したミルクチョコレートを差し出したことで、ジョンは子供達を安心させていった。的確に語ったことによって人々には不安の波紋が広がり、少しずつ広場から離れる者も出ている。
 その後ろ姿を見送りながら、ジョンは自分にしか聞こえぬほどの声で呟いた。
「……天使になって、手に入るのは飛べない羽だけだ」
 そのはずだ。
 静かに思いを言葉にしたジョンの裡には、此処にはいない或る大天使への思いが燻っていた。
 
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【おいしくなあれ】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!

四葩・ショウ
なら、どうして――
そんなに不安そうな顔を、してるんですか?

信じる彼らは
貴方達の声に、心に
よりそってくれましたか?

温かなスープとサンドウィッチを
【口福の伝道者】で子供達へ
妹に似た年頃の子に
着ていた上着を、かけたなら

天使さまになっても
くるしいことは、なくならないよ
待ってるのは
もっとつらくて痛い、かな

イーリス『様』は浅草寺に最後の砦を作ってます
それ以外の場所を護る力は、ありません
食料さえ届かないのがその証だ
護りもしない
それどころか
(天使へ変えて貴方達をーー)
奪うばかりだ、何もかも

天使になることはイコール
貴方が、貴方じゃなくなる
大切なひとも、友達も、家族も
はなればなれなんて

そんなの、違う
救済じゃ、ない


●大切な人のために
 この夕闇が巡りゆき、深い夜が訪れたならば。
 大天使がいる祈りの庭では、儀式天使による人々の覚醒の儀が執り行われるのだろう。四葩・ショウ(Leaden heart・g00878)は広場に集った者達を見渡す。
 天使に覚醒すれば救済される。選ばれたのだから、この先に待っているのは幸福だけであるはず。
 そのように信じている、もとい、信じたいと願っている人々がいる。
 ショウは大天使の到来を待ち続けている者達の前に歩んでいき、緩りと言の葉を紡いだ。
「天使へと至れば救済される」
 儀式大天使・ライラが語ったとされることを声にしたショウの瞳が人々を映す。戸惑い、或いはばつが悪そうな顔をしている彼らに向け、ショウは語りかけていく。
「なら、どうして――そんなに不安そうな顔を、してるんですか?」
「……」
「――!」
 ショウの声を聞いた人々は黙り込んだり、息を呑んだりしていた。自分達が大天使を信じ切れていないことについて、柔く指摘されたように思ったのだろう。しかし、それは彼らの未来にとって良き反応だ。
「信じる彼らは、彼女らは――貴方達の声に、心に、よりそってくれましたか?」
 静かな問いかけだけを落としたショウは更に歩いていく。
 此処にいる人々を糾弾したいわけでもなく、大きな不安を与えたいわけでもない。自問自答してもらえるように呼びかけた後、ショウは不思議そうな表情を浮かべている子供達のもとに向かった。
 まずは用意してきた温かなスープとサンドウィッチを子供達へ渡していく。
「だいじょうぶ? 今日はこれを食べて、元気を出して」
「……ありがとう」
「どういたしまして」
 少年の礼に微笑みを返したショウは残りの包みも人々に分け与えていく。その際、とても寒そうにしていた少女をみつけたショウはゆっくりと歩み寄った。
(「……似ている。けど、違う」)
 その子の顔立ちは妹に似ていた。一瞬だけ見間違いそうにもなったが、妹本人が此処にいるはずはない。見れば年頃も同じらしく、ショウは自分が着ていた上着を少女に掛けた。
「あったかい。ねぇ、天使になったら寒いのもお腹が空くのも、なくなるの?」
 少女は純粋な瞳で問いかけてくる。
 何も知らぬがゆえに大天使を信じてしまっているらしい。首を横に振ったショウは少女の頭を優しく撫でてやる。
「天使さまになってもくるしいことは、なくならないよ。待ってるのは……」
 もっとつらくて痛いこと。
 少女に残酷なことを語りたくはなかったが天使になれば悪魔と戦う日々が待っている。近くには少女の母親もいたらしく、食事と上着を貰ったことに頭を下げてくれた。父親らしき人が辺りに見当たらないことから、母と娘で支え合って生きているのかもしれない。
 ショウは心を落ち着けるため、自分の胸元に掌を添えた。
 大人達が此方に興味を持っていることに気付いたショウは、事実を語ることを決める。
「イーリス『様』は浅草寺に最後の砦を作っています。それ以外の場所を護る力は、ありません」
「そんな……」
 敢えて様をつけて語ったショウの言葉に偽りはない。食料さえ届かないのがその証であり、人々を護りもしない。それが真実であることは人々も薄々勘付いていたようだ。それどころか――。
(「天使へ変えて貴方達を……」)
 人の尊厳も、家族の絆も、愛おしい人との時間も。
 奪うばかりだ、何もかも。
 そう言葉にしたショウは下ろした拳を握りしめた。静かに燃える怒りを心の内に秘めながら、ショウは人々へと懸命な思いを告げていった。
「天使になることはイコール、貴方が、貴方じゃなくなる」
「もしそれが本当だとしたら……」
「いいえ、きっと真実よ。選ばれたのが兵としてなら、私達はここにいるべきじゃないわ」
 大人達は子供を抱きしめ、大切なものを守る決意を抱いたようだ。子供達も強く親に抱きついている。その様子を見たショウはほんの少しの羨望を宿す。
 まだ、この人達には守るべき家族がいる。先程の少女も母親に抱かれて目を閉じていた。
 ショウは少女達を見つめた後、深く頷く。
「そう。大切なひとも、友達も、家族もはなればなれなんて。そんなの、違う」
 ――救済じゃ、ない。

 そうして、広場に集められていた人々はひとり、またひとりと帰路についた。
 この場から離れてさえ貰えれば後は復讐者が事に移るだけ。大天使を倒せばこの地域の人々が天使へと変えられることはなくなるはずだ。
 やがて空が完全に宵色に染まった頃、広場に一般人はひとりもいなくなった。
 此処までの成果を出せたのは、復讐者達の言葉が人々の心を動かしたからだ。誰もが自分の大切な人や、大事に思う未来を守るために勇気を持ってくれた。
 彼らが大天使に逆らえたということは、これからの大きな一歩にも繋がっていくだろう。
 そして――復讐者達は此処から始まる戦いへの思いを抱いた。
 
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【凌駕率アップ】LV1が発生!

⚔ ⚔ ⚔ ⚔ ⚔ ⚔ ⚔

●撃滅の少女達
 夕闇は宵の色を宿す闇へと変わり、夜は深くなっていく。
 広場に集められていた人々は復讐者の言葉によって決意を固め、其々に帰路についたり、この場から去っていた。広場には猟兵達しかいない状態だ。
 その異変に気が付いたらしい儀式天使は庭園の中で顔をあげた。
「どうやら、邪魔者がいるようです」
 祈りの庭で儀式の準備を整えていたライラは、灰色にも銀色にも見える瞳を僅かに瞬かせた。
 左右非対称の翼を広げた大天使は傍に控えさせていた配下達を呼ぶ。
「おいきなさい」
「はい、ライラ様」
「おろかな者達へ、憐れみを。そして 断罪の刃を」
「仰せのままに」
 邪魔者、即ち復讐者の命を刈り取るように命じられた配下、撃滅のクヴァール達は深く礼をする。命令を受けたクヴァール達は、滅槍を構えた。
 そして、庭園から出たクヴァール達は広場に向かっていく。

「お前達がライラ様の言う邪魔者ね」
「覚悟しなさい。我々がその生命を終わらせ、断罪を与えてやりましょう!」
 強い敵意を宿す彼女達は肉体の負荷も抱えている。捨て駒同然に戦うことを義務付けられた少女達は、苦しみながらも命令を忠実に守ろうとしている。しかし、その頬には絶えず悲しみの涙が流れている。
 何故なら、彼女達は人間から覚醒させられた者であるからだ。
 彼女達を人に戻す術はない。それゆえに此処で終わらせてやることが、せめてもの慈悲だ。

⚔ ⚔ ⚔ ⚔ ⚔ ⚔ ⚔
 
館花・雪緒
…決してそんなことはない
そう信じて戦ってきました
しかしカケラでも疑ってしまった今、私は問わずにいられない

柔剣、後の先を取ります
棒立ちにも見える無防備さで攻撃を誘い、突撃を迎撃する形で一刀を差し込みます
無傷のまま彼女の右腕を肩から断てれば最上ですが、多少であれば手傷は甘受します

舘花雪緒…この名前に聞き覚えは?
ある、と答えれば思い出も尋ねましょう
そこで不一致が出れば怒りと共に切り捨てるのみ
ない、と答えれば慈悲と共に切り捨てましょう
どちらにせよ刃の鋭さはギロチンの如く
どうか最期は痛み無く
その瞬間だけは、零す涙が浄土への道行で思い出と出会えた喜びに依れば良いのですが

アドリブ・連携歓迎


風宮・優華
連携やアドリブ歓迎よ。

敵の天使たちを見てから、一度目を伏せて
「本当に、この世界は」
吐き捨てるように呟き、顔を上げると右手でアイシクルリボルバーをホルダーから抜き構えるわ。
「いいわ。邪魔するなら潰すまでよ」

魔銃に魔力を込め、近くの敵にパラドクスの魔弾を放つわ。
「救済が必要なのは、あなた達の方よ」
敵の魔力砲は左腕を上げながら左手を広げ、五指に対応した5つの氷結輪を展開。
「こちらも本気で行くわ」
正面に左手を向けると、正面に氷結輪を重ね、さらにアイスシールドを展開、砲撃を受け止める。
「シラユキ」
優華が気を引いた隙に、敵の死角に回り込ませたシラユキに背中の砲からパラドクスを撃たせるわ。
「本当、最悪だわ」


レイア・パーガトリー
なんて惨いことを…こんな無茶な戦い方しかできなくて、元に戻れないなんて…
けれど、嘆いたってあの子たちが助かるわけじゃない
ミユカたち、この街の子供がそうはならなかったことを今は支えにして
歪んだ生を終わらせるしかないわ
こんな事をした大天使をゆるさない、絶対に許さないんだから

敵の突撃で掴まれそうなタイミングでリンバスと別れて【飛翔】するわ
屠竜撃で狙うのはその隙ね
掴まれてしまったとしても振りほどいたり、貫かれてもそのまま腕を掴んで反撃につなげるわ

…そんな風にしなくとも、人々に対しての苦しみで隙を見せるかもしれないけれど…
危険域にいる人には【避難勧告】で逃げてもらって
戦うもの同士、戦闘で決着をつけましょ


●涙の行方
 目の前に現れた撃滅のクヴァール。
 彼女達は強い敵意を向けてきているが、その頬には涙が伝い続けている。
 風宮・優華(氷結の魔女・g08699)は敵として立ち塞がった天使達を見た後、一度だけ目を伏せた。
「――本当に、この世界は」
 吐き捨てるように呟いた優華はすぐに顔を上げた。右手でホルダーに触れた少女はアイシクルリボルバーを抜き、銃口をクヴァール達に差し向ける。真っ直ぐな構えは戦いへの意思が強いことを示していた。
「いいわ。邪魔するなら潰すまでよ」
 天使へと変えられたクヴァール達は元人間だ。しかし、だからといって手加減する理由はない。
 館花・雪緒(ヒガンバナ・g04596)は、少女達の頬に伝う涙が地面に落ちたことを見遣り、ある思いを抱いた。あの少女達にもきっと家族や友人がいたのだろう。ああなってしまったことは不幸であり、悲しむべきことだ。
 しかし、自分の家族だけは決してそんなことにはなっていない。雪緒はこれまでそのように信じて戦ってきた。
 だが、こうして儀式によって人間から天使に変えられる現場に訪れ、実際の被害者を目の当たりにした今、心境は悪い方向に傾きはじめている。
 無双馬のリンバスと共に立つ、レイア・パーガトリー(毒棘の竜騎士・g01200)もクヴァールへの思いを抱いていた。どうやら彼女達は動く度に痛みや苦しみを感じているらしく、かなりの無理をしていることがわかる。
「なんて惨いことを……」
「憐れみか? そのような感情など向けるな!」
「私達の力でお前達を倒します!」
 刹那、レイア達に向かってクヴァール達が突撃してきた。優華と雪緒はそれが攻撃ではなく威嚇であることを確かめながらひらりと身を躱す。レイアも一度距離を取り、改めて天使達を見つめた。
「こんな無茶な戦い方しかできなくて、元に戻れないなんて……」
 ひとめ見ただけでクヴァール達が無理な動きをしていることがわかる。個体差はあれど、天使になる代償があのようなものだとするならばあまりにも理不尽だ。
「けれど、嘆いたってあの子たちが助かるわけじゃない」
「ええ、そうね」
 レイアの言葉を聞き、優華も頷く。思い出すのは先程に交流した子供達のこと。ミユカと名乗ったあの子をはじめ、この街の子供がそうはならなかったことを支えにするべきだ。
「歪んだ生を終わらせるしかないわ。こんな事をした大天使をゆるさない。……絶対に許さないんだから」
 敵を見据えたレイアは己で紡いだ言葉を強く噛み締めた。
 あれが救済であるとは言わせたくない。
 そして、クヴァール達は再び復讐者へと突撃を始めた。次は本気で向かってくる心算のようだ。
 相手の動きを察したレイアはとっさにリンバスと別れ、上空に飛翔する。敵もレイアの方に向かってくるが、屠竜撃の一閃が叩き込まれていく。
 地上ではリンバスが駆け回っており、別のクヴァールを引き付けていた。
 そんな中、雪緒は柔剣の剣風で以て後の先を取ることを決めていた。一見すれば棒立ちにも見える無防備さを装えば、攻撃を自分に誘うのも容易になるだろう。
「隙だらけだぞ。くらえ!」
「来ましたね」
「――!?」
 雪緒は相手の突撃を迎撃する形で一刀を鋭く差し込んだ。居合の一閃が断つのはクヴァールの右腕。肩から身を両断されたことで少女の声なき悲鳴が響き渡り、更なる涙が散った。
 その際、雪緒はクヴァールの間近で囁く。或る可能性を欠片でも疑ってしまった以上、問わずにいられなかったからだ。
「舘花雪緒……この名前に聞き覚えは?」
「何……?」
「誰? そんな名前は知らないわ」
 目の前の敵は何も心当たりがないらしい。他のクヴァールにも聞こえていたらしく否定が返ってきた。
 もしも、あると答えれば思い出も尋ねたかった。されど此方の油断を誘うために嘘をついている場合もあるため、自分の記憶との不一致が出れば切り捨てる心構えもある。
 だが、相手はそういった嘘は用いなかったようだ。そうですか、とだけ答えた雪緒は更なる一閃を叩き込み、慈悲と共にクヴァールを切り捨てた。
 優華も魔銃に魔力を込めていき、一番近くに位置する敵へパラドクスを放つ。
「あなた達もライラ様の救済をお受けなさい……!」
「救済が必要なのは、あなた達の方よ」
 敵は暴発寸前まで膨れ上がらせた膨大な魔力の奔流を放ってきたが、優華は冷静に状況を見極めた。左腕を上げた彼女はそのまま左手を広げ、五指に対応した五つの氷結輪を展開する。
「こちらも本気で行くわ」
 真正面に腕をかざすこと氷結輪を重ねた優華は、更にアイスシールドで砲撃を受け止めた。幾分かの威力がシールドを突き抜けてきたが、優華は押し負けたりなどしなかった。
「シラユキ」
 その間に敵の死角に回り込ませたパンツァーハウンドを呼べば、凛とした鳴き声が返ってくる。シラユキに背中の砲から威嚇射撃を行い、クヴァールの注意をひいた。
 その最中、レイアは向かってきた敵に掴まれてしまっていた。だが、油断しないと決めていたレイアは果敢に義手を振りほどく。その勢いでクヴァールの腕を掴んだレイアは全力の一撃を見舞った。
「くぅ……っ!」
「もう、戦わなくていいのよ」
「いいや、我々にはライラ様の命令を遂行しなければならない!」
 レイアがそっと呼びかけたことに対し、クヴァールは強い叫びを響かせた。使役される天使になったことで上位の大天使には絶対服従するしかないのだろう。
 その言葉を聞いたレイアは一瞬だけ悲しげな目をした。それまで相手取っていた敵を倒し、近くに駆けてきた優華は深い息を吐く。このような仕組みに巻き込まれた少女達の救いは最早たったひとつしかない。
「本当、最悪だわ」
「だったら戦うもの同士、ここで決着をつけましょ」
 優華の言葉に続き、レイアは宣言した。
 戦うことしか許されぬ存在であるならば、その痛みや苦しみごと戦いの中で葬ってしまえばいい。レイアの一撃と優華が放った銀の魔弾が重なるように見舞われ、クヴァールを地に伏せさせていく。
 同時に雪緒も容赦のない居合斬りを繰り出していた。
 刃の鋭さはギロチンの如く、哀れな存在に慈悲という終幕を齎している。
「――どうか最期は痛み無く」
 願いを言葉にした雪緒は倒れゆく少女達を瞳に映した。
 この瞬間だけは、零す涙が浄土への道行の導になるように。思い出と出会えた喜びに依ればいい。祈りにも似た思いは終わりという救済へと変わり、悲しき天使達の涙を消していった。
 
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【寒冷適応】LV1が発生!
【避難勧告】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV2になった!
【ダメージアップ】がLV2になった!

四葩・ショウ
邪魔者はここだよ、天使『さま』

硝子のレイピアを引きぬいたなら
【飛翔】で翔て迎え撃つ
傷付いた個体から確り狙って、数の利を断つ
ねぇ
本当にそれが、ただしいの?

ああ
彼女達も
信じて、しまったんだ
それを裏切られて、利用されて
逆らうことも出来ずに今も……

それでもこれが
くるしみの涙を止めるための、唯一の方法だから

大振りの貫通撃とフェイントで
隙をつくってその腕を掴もう
抱き締めるみたいに発動させる『MaryMagdalene』
その罪を断って、なにもかも赦せたら

もういいんだ、たくさん頑張ったね
おやすみ

あそこに
首謀者の大天使が――

降り注ぐ声も、清らかな姿も
わたしは、知らない
……なのに、なぜだろう

魂が、ざわめくみたいだ


ジョン・エルバ
ありゃりゃ泣いてんのか?
泣くくらいなら従う必要ないと思うけど仕方ねえか
マジで天使ってクソだ、女の子は笑顔が一番だろ

"悲しい"とか感じたことないから分かんねえけどさ、心ん中で己の天使に抗ってるなら救いはやれるかもな
敬虔な信徒だったんだろきっと、んじゃ良い子守唄があるぜ

ギターは必要ないから肩から下げておく
相手のチャージの開始と同時に『Illumina Live』の讃美歌をうたおう
合間に来る攻撃は【飛翔】で切り抜けて多少当たっても接近
オレは本物の天使じゃねえけど両手を差し伸べて、涙を拭って、休ませるように抱えてうたう
最後は最高のイケメンを見て眠りな

あーあ、人間のままだったら口説いてたのにな…


●胸に抱く救済
 天使の頬を伝う涙が零れ落ち、地面を濡らす。
 撃滅のクヴァール達から感じる敵意は並々ならぬものだが、瞳の奥には別の感情が隠されているようだ。
「邪魔者はここだよ、天使『さま』」
 四葩・ショウ(Leaden heart・g00878)は敢えて継承をつけてクヴァール達を呼ぶ。鋭い眼差しが向けられたかと思うと、天使達は復讐者に向かって鋭く飛翔してきた。
「ありゃりゃ泣いてんのか?」
「お前には関係のないことです」
 ジョン・エルバ(ロックスター・g03373)がクヴァールの様子を問うと、相手は強い口調で答える。その際も瞳から涙が溢れており、言葉と心が裏腹になっているような印象を受けた。
「泣くくらいなら従う必要ないと思うけど仕方ねえか。大天使の命令は絶対っぽいもんな」
 ジョンは肩を竦めた後、ギターのネックに手を添える。
 同時にショウも硝子のレイピアを引き抜き、飛翔の力を巡らせた。迫ってきたクヴァールを引き付けるように舞うショウは刃の切っ先を差し向ける。相手が元人間とはいえど今はクロノヴェーダだ。戦いは避けられない。
「ねぇ――本当にそれが、ただしいの?」
「…………」
 疑問を投げかけたショウに対し、クヴァールは無言のまま一粒の涙を零した。
 その様子を見てたジョンは妙な感覚を抱く。やはりあの少女達は本音を語れていないように思えた。
「マジで大天使ってクソだ、女の子は笑顔が一番だろ」
「ライラ様を侮辱するのですか!?」
「そういうんじゃねえ……。そうじゃねえけどさ、正しいかどうかでいえば違うだろ」
 少なくともジョンにとっては望ましくない。ジョンは“悲しい”というものは感じたことないが、彼女達がそういった思いを抱きながら戦っていることは確かだ。
「オレには分かんねえけどさ、心ん中で己の天使に抗ってるなら救いはやれるかもな。敬虔な信徒だったんだろ、きっと」
 信仰そのものに文句を言うつもりはなかった。
 それゆえに今日はこの楽器は必要ない。ギターから手を離したジョンは、それを肩から下げたままにした。
「んじゃ良い子守唄があるぜ」
「何をごちゃごちゃと……!」
「良いから聞いていきな。――行くぜ」
 Illumina Live、開始。
 美しい旋律、麗しき聖歌。そうして、神は罪を赦してくださる。
 ジョンは天使達に手を差し伸べ、神々しくも妖艶な讃美歌を響かせていった。対するクヴァールは一瞬だけはっとしたが、歌声を振り払うように高く飛んだ。
 魔力の奔流が来ると察したジョンは地を蹴り、自らも飛翔する。
 彼の歌声を背にしたショウも空中を翔けながらレイピアを振るっていた。超高速で飛翔するクヴァールも光の翼から攻撃を放っていたが、ショウは押し負けてなどいない。
 素早く身を捻って回避し、その勢いに乗せて翼を貫く。
「くっ……! ライラ様の為に、私達は戦う。そうするしかないのです……!」
(「ああ、彼女達も。信じて、しまったんだ」)
 苦しみの声と共に零れ落ちた言葉を聞き、ショウは心の痛みを感じた。
 信仰という純粋な思いを向けたというのに。裏切られて、利用されて、逆らうことも出来ずに今も苦痛の中にいる。それがこの天使達なのだと実感したショウは更に思いを強く持った。
(「それでもこれが、くるしみの涙を止めるための、唯一の方法だから」)
 ショウは少女達から繰り出される光線を掻い潜り、一体のクヴァールに狙いを定める。斬撃や刺突ではなく、伸ばした手はしかと少女の腕を掴んだ。次の瞬間、ショウは彼女を抱きしめる。
「な、何を……!?」
 驚くクヴァールに対して、ショウは静かな微笑みを向けた。
 ――その罪を断って、なにもかも赦せたら。
「もういいんだ、たくさん頑張ったね」
 おやすみ。
 それは審判の合図。一気に地面に降下したショウもろとも、地面から刺し貫くのは無数の白き鋼鉄の蕀。あまく香る花は罪人の苦痛を麻痺させる猛毒だ。されど、冷たき乙女の抱擁には慈悲が宿っていた。無垢なるものさえ断罪する花は少女を包み込み、その苦しみに終幕をもたらしていく。
「ああいう救い方もあるのか」
 ショウの戦い方を見遣ったジョンも、賛美歌の力で以て少女達を誘う。クヴァールは抵抗しているが、頬に伝う涙に感動の色が交じりはじめていた。
「何なのこの歌……涙がもっともっと溢れてとまらない。それにあなた、これまでにどれほど辛いことを――」
「その話は別にいいさ。ほら、来いよ」
 ジョンの歌から何かを感じ取ったのか、少女天使は複雑そうな顔をしていた。軽く頭を振ったジョンは両手を差し伸べ、此方に来いと呼びかける。
「オレは本物の天使じゃねえけど救済と休息は与えてやれる。もう涙を拭って、休めばいい」
「あ……あぁ……」
 歌の影響もあり、正常な思考力を失ったクヴァールはジョンに潤んだ瞳を向け、手を伸ばし返した。ジョンは彼女を受け入れ、そっと抱えながら賛美歌をうたい続ける。
「最後は最高のイケメンを見て眠りな。向こうでも天使みたいに綺麗な子が、仲間を救ってくれてるぜ」
「うん……」
 瞼を閉じた天使は素直に頷き、そのままジョンの腕の中で眠るように息を引き取った。ジョンが示した先には、甘い花の香りで少女天使を包み込むショウの姿がある。
 ショウの腕の中で眠る少女もまた、救済を得たかのような安らかな顔をしていた。
 そして、この場に訪れた天使達はすべて倒れた。
「おわったね」
「そうだな。あーあ、人間のままだったら口説いてたのにな……」
 ショウが周囲を確かめていく中、ジョンは天使達の亡骸を見下ろす。その言葉は決して冗談めかしたものではなく、もし本当にそうだったら、という願いから零れ落ちたものだった。

●邂逅
 やがて夜の帳が完全に下りた。
 辺りは深い闇に包まれているが、前方の硝子ドームめいた庭園だけが神々しく輝いている。
「あそこに首謀者の大天使が……」
 ショウは仲間と一緒に其処へ踏み込む覚悟を抱く。そのとき、祈りの庭から柔らかな声が響き渡った。

 ――おいでなさい。 お前達ののぞみを みせてさしあげましょう。

 降り注ぐ声と共に硝子の向こうに清らかな姿が揺らめいた。此方を誘うような声は甘く、それでいて妙に冷たい。
(「あの声も姿も、わたしは、知らない。……なのに、なぜだろう」)
 魂が、ざわめく。
 奇妙で不穏な予感を覚えたまま、復讐者達は先へと歩を進めていった。
 
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!

⚪ ⚪ ⚪ ⚪ ⚪ ⚪ ⚪

●祈りの庭に咲く花は
 硝子に包まれたドーム型の庭園。其処は儀式大天使・ライラが防衛拠点とする場所だ。
 透き通った硝子の扉を開けば、その向こう側で純白の影が揺らめいた。儀式大天使は自分の配下達がやられたことを理解しているようだが、妙に落ち着いた――否、そのことについての感情がないような様子で此方を見つめている。
「ようこそ、わたくしの庭へ」
 ライラがふわりと笑むと、しなかやな糸髪と翼が揺れた。その声はうつくしく、甘く囁かれでもしたら普通の者ならば虜になってしまうほどのもの。されど復讐者達に大天使の惑いは効きにくい。
 復讐者達を手招いたライラは静かに語りかけてくる。
「お前達ののぞみは なんですか。お前達のすくいは なんですか」
 その言葉と共に周囲に電脳レイヤーが広がりはじめ、祈りの庭に奇妙な光景が巡り始めた。それは見る者によって違う様相になっており、ライラの能力が厄介なものであることを物語っている。
「わたくしのかわいい子たちを断罪した、お前達。憐れみを そそいであげましょう」
 そして、ライラは片手を自分の腹部に添えた。
 その行動が何を意味しているのかはまだ分からないが、此方を惑わそうとしていることだけは分かった。
 どのような幻影を見せられようとも、どんな鋭い刃が放たれようとも。此処で大天使を倒しておかなければ、この地域は永遠に支配されたままとなる。
 涙を流しながら息絶えた、あの少女天使のような犠牲者を出さぬためにも――。
 今こそ、復讐者としての力を示すときだ。

⚪ ⚪ ⚪ ⚪ ⚪ ⚪ ⚪
 
ジョン・エルバ
フーン、望み?
酒でも出してくれんのか?ハハ!ハ…

心臓が高鳴る
ぼやけた2人の青年が呼ぶ
歳の離れたオレの兄ちゃんが同じギターを持って昔みたいに呼ぶ
人間だった頃のパパとママが呼ぶ
全員が優しく「ジョン」と呼んでくる

呼吸が苦しい
絶え間なく、静寂にならないようにオレを呼んでくれ
嬉しいのに何か寂しくて涙が溢れる
これがのぞみ?
分かんねえ
何も知りたくない
別の、蘇りそうな記憶に頭がおかしくなりそうだ

あぁクッソ頭痛え!
感情も記憶も偽物達も暴れるように全部振り払う
何も考えられないからライラにパラドクスを勢いのまま叩きつける

ギターの心地良い殴打音にやっと喉が開いた
…ギターだけが何度でも救ってくれるんだ
これだけは、本当だ


●記憶と衝動
 儀式を司る大天使、ライラ。
 うつくしき美貌を持ち、淡くも凛とした声色をした天使を見つめれば、微笑が返ってくる。
 ドーム状の庭の周囲は硝子に包まれており、外が闇に染まっているゆえに四方に自分達の姿が映って見えた。
 ジョン・エルバ(ロックスター・g03373)は何気なくギターストラップに手を掛ける。
「フーン、望み?」
 先程のライラは、お前達の望みを、と口にした。片目を瞑ったジョンは冗談めかした様子で大天使に言い放つ。
「酒でも出してくれんのか? ハハ! ハ……」
 笑い飛ばす声で軽く挑発するつもりだったが、その声が途中で途切れる。
 どくん、と心臓から大きな音が響いたように思えた。高鳴る鼓動が次第に早鐘を打っていく、その理由は――。

『……ン、……ジョン!』
(「――誰だ?」)
 遠くから聞こえたのは妙に懐かしく感じるような声。その声は明るい方からジョンを呼び、手を振っていた。
 暗闇に放り込まれたような感覚の中、ジョンの目の前にはこれまでとは別の景色が広がっていく。
『ジョン、来いよ! ギターを弾く約束だっただろ』
 ぼやけてはいるが其処には二人の青年がいた。それはジョンとは歳の離れた兄だった。
(「兄ちゃん……」)
 同じギターを持った兄は昔のように此方を呼んでいる。それだけではなく両親も向こう側に立っていた。変わり果てた二人ではなく、あの頃と同じように人間だった頃の姿だ。
(「パパ……ママ……」)
『ジョン、おいで』
『こちらにいらっしゃい、ジョン』
 優しい声。柔らかな眼差し。憂いなど何もないように自分達を照らす明るい陽射しと、在りし日の姿。
 ジョンは家族の方に手を伸ばそうとした。されど、何故か身体が動かない。
 呼吸が苦しい。動悸は激しくなるばかりだ。思えば先程から声すら出ていないではないか。
 ――ジョン。
 再び、家族の声が頭の中に響いた。
(「そうだ。絶え間なく、静寂にならないようにオレを呼んでくれ」)
 そうすればこのままあの頃に戻れるような気がする。嬉しい。自分は心から喜びを感じている。それなのに、どうして。心に穴が空いたままのようで、寂しくて涙が溢れるのだろう。
(「これがのぞみ? ……分かんねえ」)
 何も知りたくない。
 これは周囲に巡る幻影の余波であり、ジョンの望みを投影した偽物に過ぎない。されど別の――蘇りそうな記憶に頭がおかしくなりそうだった。
(「あぁクッソ頭痛え! 今はそんなもん、要らねえ!」)
 ジョンは目の前のすべてを否定する。感情も記憶も、偽物達も。自分が抱いている感情すらも。全部を壊すために暴れるかのように振り払う。そのために振り上げたギターは電脳レイヤーを構築するライラに振り下ろされた。
 何も考えられない。それならば、ただ勢いのまま全力を叩きつければいい。
「……は、」
 乾いた呼吸音が耳に届いたことで、ジョンは現実に引き戻される。
 ギターの心地良い殴打音にやっと喉が開いた。荒くなっていた呼吸を整えながら、ジョンは再びギターを振り被る。
「そうだ、ギターだけが何度でも救ってくれるんだ」
 どれほど嘘を重ねられても。偽りを見せられようとも。どんなに逃避しようとも、ただひとつだけ。
 これだけは、本当だ。
 
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【建造物分解】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!

館花・雪緒
私を憐れみますか
お前たちが奪ったものを、与えてやろうと上から言いくさって
何様の…ああ、天使サマでしたね
それ以上喋るな
私が望むのは、お前の死です!

威勢よく突っ込みますが、常日頃の望みである「家族との生活」を見ます
刻逆以前は、夫、長男、長女の4人暮らし
刻逆の年、ちょうど今頃の季節にはもう1人、子供も生まれていたはずで…

幸せな幻想に浸りますが、自分の腹を撫でて気付きます
産まれ来る前に摘み取られたその命は、幻想でも再現しきれないのでしょう
存在はあれど、姿形は定まらず
…名付けも、まだでした

産まれていれば1歳のその子にありがとう、と告げ現実へ
思い出すら穢す天使へ、否を告げ刃を振るいましょう

アドリブ等歓迎


●愛しさに背を向けて
「――私を憐れみますか」
 儀式大天使を前にして、館花・雪緒(ヒガンバナ・g04596)は鋭い眼差しを向けた。
「お前たちが奪ったものを、与えるだなんて何様の……ああ、天使サマでしたね」
 皮肉を交えた声を紡ぎ、雪緒はライラを見据える。大天使の唇が動き、何かを語ろうとしていた。しかしその前に雪緒が言葉を発してライラの声を遮る。
「それ以上喋るな」
「…………」
 その望みを聞こうとしたのか、ライラの眼指しが雪緒にそそがれた。
 のぞみは何かと問うような視線を受け止め、雪緒は強くと言い放つ。
「私が望むのは、お前の死です!」
「いいえ、ちがうようですよ」
 するとライラが再び口を開き、祈りの庭に幻想を巡らせた。覆い、塗りこめる白夜。それは救済と大天使が呼ぶもの。
 雪緒は威勢よく突っ込んでいったがライラの力は強く、瞬く間に幻影に囚われる。
 具現化したのは常日頃の望みである、家族との生活。
 刻逆以前の暮らしに戻ったような光景が彼女の目の前に展開されている。
「あなた、たちは……」
 夫に長男、そして長女。其処に自分を合わせた家族四人暮らしをしていた日々が再現されているようだ。その光景を見た雪緒は、あまりの懐かしさに立ち止まった。
 おかえり、という言葉が家族から向けられている。
 見れば雪緒は病院から帰ってきたかのような雰囲気で家の玄関に立っていた。そうでした、と呟いた雪緒は無意識に腹部に掌を添えた。幻想ではあるが、もうひとつの鼓動が感じられるような感覚が巡っていく。
 あれは刻逆の年。
 ちょうど今頃の季節には、新たな家族も生まれていたはずだった。だが、今は生命など宿っていない。そのような気にさせられているだけであり、現実の雪緒からは何もかもが奪い去られてしまっている。
 幸せな幻想に浸りたくなったが、自分の腹を撫でてからずっと気付いていた。
 産まれ来る前に摘み取られたその命は、幻想でも再現しきれないのだろう、と。
「これが、お前ののぞみですね」
「……黙れ」
 不意にライラの声が聞こえたことで雪緒は戦意を取り戻す。
 存在はあれど、姿形は定まらず、宿っただけの命。それゆえに名付けもまだだった。されど愛しさを注いでいたことだけは間違いない。たとえ歴史の狭間に葬り去られたとしても――。
「……ありがとう」
 一瞬だけ、母の顔に戻った雪緒はもう一度だけ腹部を撫でた。もし産まれていれば一歳になっていた子に礼を告げた後、雪緒は力いっぱい地面を蹴り上げた。愛しき家族の幻影を背にして、厳しく苦しい現実へ向かうためだ。
 思い出すら穢す大天使。その存在に否定を示すように、雪緒の刃が振り下ろされた。
 刀印として刻まれる呪。
 肉を斬り、骨を断つ。その一閃は何よりも鋭い意志を宿し、未来を拓く一手になっていった。
 
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【悲劇感知】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV2になった!

花筏・祝
◎背景解釈一任



聖歌隊の皆がいて
親友のるいくんがいて
私たちは迷える人々を導くために歌う
歌で救われるのは魂ではなく、心
この先も歩き続けるための心
私たちは人間のまま大人になる。

あのね、るいくん
私ね、るいくんの歌が一番好きよ
あなたの声が変わたら、優しいテノールを聴かせて?
大人になっても皆で歌えば、きっと楽しいから

少年少女の歌声は唯一で、刹那のもの
大人になれば無くしてしまう
けれど、歌が好きな気持ちは変わらない
何年先も皆と歌い続ける

……でも、これは私のユメ
神様は皆を本物の天使にしてしまったの
あの時の神様と、あなた(ライラ)が重なる

私の邪魔をするなら、あなたにも聴かせてあげる
死と祝福を運ぶ、天使の歌声を。


●歌聲は遠く
 儀式大天使・ライラの語る救済。
 それは電脳レイヤーで改竄された幻影のこと。
 花筏・祝(ハフリ・g06801)が領域に足を踏み入れた瞬間、世界の様相が移り変わった。
「皆……」
 其処にいたのは聖歌隊の人々。あの日のような光景が広がっており、祝は信じられない気持ちを抱いた。それだけではなく、此処には親友だったあの子がいる。
「るいくん……」
 祝に真っ直ぐな眼差しを向けている彼は、そっと片手をあげた。おいで、と言っているような仕草をしている彼の元へ、祝は歩み寄っていく。歌声で人々の魂を救う聖歌隊。それが自分達だった。
 ――私たちは迷える人々を導くために歌う。
 歌で救われるのは魂ではなく、心。そうすることが当たり前で、ずっと歌を捧げてきた。
 心が救われれば、この先も歩き続けられる。
 ――私たちは人間のまま大人になる。
 そうだった、はず。祝は彼の傍で立ち止まり、双眸を懐かしそうに細めた。涙が溢れそうになったけれど、視界が滲んで彼の姿がよく見えなくなりそうだったゆえ、しかと堪えた。
 そして、祝は彼に微笑みを向ける。
「あのね、るいくん」
『…………』
 その名を呼んだことで、彼の唇が祝の名前を呼ぶような形をつくった。声が聞こえないのはどうしてだろう。あのときのように、彼の声で呼び返してほしかったのに。祝はその理由が分かり始めていたが、彼に語り掛け続ける。
「私ね、るいくんの歌が一番好きよ」
『…………』
 返答はない。ただ、彼らしい表情が形作られるだけ。
 この言葉に返答ができないのか、それとも電脳レイヤーが彼の声を再現できないのか。どちらであっても、祝が掛ける言葉の内容は変わったりなどしない。
「あなたの声が変わったら、優しいテノールを聴かせて?」
 大人になっても構わない。
 皆で歌えば、きっと楽しいから。
 祝はある意味で残酷な、成長というものについて考えを巡らせた。天使のようだとも称される少年や少女の歌声は唯一。それでいて刹那のものでしかない。
 大人になれば無くしてしまうものに価値を見出されることもある。
 けれど、歌が好きな気持ちは変わらないはずだ。何年先も皆と歌い続ける気持ちがあれば、心は救える。
「……でも、」
 祝は僅かに俯いた。知っている、これは私のユメだから。
 神様は皆を本物の天使にしてしまった。人間のままではなく、永遠のものに――。
 あのときの神様。そして、ライラ。
 天使の影が重なったように思えたとき、祝は電脳レイヤーの幻影から抜け出した。
「私の邪魔をするなら、あなたにも聴かせてあげる」
 死と祝福を運ぶ、天使の歌声を。
 儀式大天使に向け、死を運ぶ呪いの歌が紡がれていく。祈りは未来へ、願いは過去へ。響き渡る歌が不可視の透明な鎖となり、戦場に迸っていった。
 
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【悲劇感知】がLV2になった!
効果2【ロストエナジー】がLV3になった!

風宮・優華
連携アドリブ歓迎

振り返ると微笑んで立つ両親と兄さん。
「……知っているわ。わたしを愛してくれた家族よ」
隣には、いつも一緒だった親友の少女。姉のように慕ってくれた少年。
「……そうね。わたしの大切な幼馴染よ」
わたしの中に残る、みんなとの大事な思い出。

心配そうに袖を引っ張るシラユキの頭を撫で
「ありがとう。大丈夫よ」
【追跡】【誘導弾】
右手でリボルバーを抜き、幻影の裏に隠れた元凶(ライラ)を撃ち抜く。
「人の心に土足で踏み込むなんて、天使は本当に傲慢よね」
左手を広げ、五指に対応した5つの氷結輪を展開。
「ごめんなさい。わたし、話の通じない人形とお話しする趣味はないの」

「今のわたしに、思い出に浸る暇はないのよ」


●過去より現在を
 幻の中に囚われてしまった。
 そう感じた瞬間、風宮・優華(氷結の魔女・g08699)は背後に気配を感じる。
 振り返ると其処には微笑んでいる人影があった。優華の意識が揺らぎ、目の奥から熱いものが滲みそうになった。何故ならその人影はよく知った人。両親と兄そのものだったからだ。
 それは望みが具現化されたものだ。
「……知っているわ」
 されどこれが少女の心からの願いであり、望んだものだ。
 優華は掌を握り締め、電脳レイヤーで構築された世界を見つめる。家族の元に駆けていけたらどれだけ幸福だろう。兄さん、とその名を呼んで胸に飛び込めたならば、どんなに嬉しいだろうか。
「わたしを愛してくれた家族と会うことを、願わないわけがないじゃない」
 優華はその場で立ち尽くしていた。
 家族の姿をしたものが偽物だとは理解していても、攻撃までしようとは思えない。大天使も此方がそう思うだろうと考えたうえでこの空間を作り出しているはずだ。
 気付けば隣にも誰かが立っていた。優華が視線を両隣に向けると、右にはいつも一緒だった親友の少女がいた。そして、左側には姉のように慕ってくれた少年の姿もある。
 二人はあの日のような明るい笑顔で優華を見つめてくれている。少女が手を伸ばし、優華と手を繋いでくれた。
 奇妙な感覚だが、手を握り返した優華は瞼を閉じる。反対隣でも少年が優華の手を握っていた。其処に温もりはなく、これが幻だということを示している。
「……そうね。わたしの大切な幼馴染よ」
 温度がなくとも、自分の中に残るみんなとの大事な思い出だ。
 しかし、幻想の中にも本物の熱があった。それは傍で心配そうに袖を引っ張るシラユキのものだ。そっと少年と少女から手を離した優華はシラユキの頭を撫でた。
「ありがとう。大丈夫よ」
 告げた言葉は親友達へのものでもあり、シラユキに向ける思いでもあった。
 そして、優華は右手でリボルバーを抜く。その銃口を向けるのは幻影と電脳レイヤーの裏に隠れた元凶。儀式大天使、ライラがいるであろう方角だ。
 銃爪を引き、撃ち抜くのはただ一点。
「のぞみを すてるのですか」
「人の心に土足で踏み込むなんて、天使は本当に傲慢よね」
 銃弾が当たった手応えと同時にライラの静かな声が返ってきた。優華は左手を広げ、五指を動かした。其処に対応する五つの氷結輪が展開され、更なる銀弾が打ち込まれてゆく。
「ごめんなさい。わたし、話の通じない人形とお話しする趣味はないの」
 ライラに狙いを定め続け、優華は冷たく言い放つ。
 それに――。
「今のわたしに、思い出に浸る暇はないのよ」
 幻の過去と決別するための言葉が紡がれた瞬間、銀の閃きが電脳レイヤーを打ち破った。
 
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【寒冷適応】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV3になった!

レイア・パーガトリー
翻る裾裏から見てはいけない闇が見えた気がするけれど…
それ以外は、心からうつくしいと思えるわ


馬術も槍術も形式的なもので、嗜みのひとつで
礼儀作法とお勉強のほうが大事
世界はお城しかなかったけど、お城の外を夢見てた
本当に刃を人に向けるなんて、レイアはまだ考えなくて良いと
大人たちが護ってくれてた強固であたたかなお城

……でも
ここでは同じぐらいの年のミユカたちが食べるのに困ってた
私だけこのまま帰る訳にはいかない

私たちが、クヴァールに手を下すしかなかった
あの涙、人を斬る感触、生臭い血のにおい、今際の弱弱しい声
まだ鮮明に思い出せるから
その無念を背負う覚悟を誓うわ
神の赦しなんて要らない、運命は自分の手で切り開くの


●闇を裂く祈り
 大天使の中身はがらんどう。
 翻るドレスの裾。その更に裏側。外に広がる闇以上に深い漆黒が其処にはあった。
 レイア・パーガトリー(毒棘の竜騎士・g01200)は儀式大天使・ライラを見つめ、白と漆黒の対比に目を奪われる。見てはいけない闇が見えた気がするが、それ以外は心からうつくしいと思えるほどだったからだ。
 それに加え、周囲の景色が見知ったものに変わっている。
 レイアの目に映っているのは、嘗て過ごしていたお城の景色だ。まるで過去に戻ったかのような感覚に包まれながら、レイアは辺りを見渡してみた。
 以前、馬術や槍術の戦闘訓練をしていた場所が見える。
 しかしそれはただの形式的なもので嗜みのひとつだった。あの頃のレイアは礼儀作法と勉強の方が大事だとされていて、比重の多くはそちらに注がれていた。
 あの頃のレイアの世界はお城の中だけ。けれどもずっと、お城の外を夢見ていた。
 そんな日々の光景が今、目の前にある。外の世界には争いがあるけれど、レイアが学ばされた戦闘技術は最低限だけ。
 ――本当に刃を人に向けるなんて、レイアはまだ考えなくて良い。
 そんな風に大人たちが護ってくれていた。
 強固であたたかなお城に戻りたくないといえば嘘になってしまう。憧れは憧れのままで、幸福なお城の生活に浸って生きていくことだって出来たかもしれない。
 しかし、レイアの望みはそれだけではなかった。
「……でも、」
 幻影から視線を逸したレイアは、その向こう側を見据えた。
 何も知らなかったあの頃のままであったならば、この幻想に身を委ねていたかもしれない。だが、今のレイアにはたくさんの知識がある。ここでは同じほどの年のミユカたちが食べることにすら困っていた。
「私だけこのまま帰る訳にはいかないわ」
 守ってくれる大人だってもういない。たったひとりきりであっても、進まなければ何も手に入らない。
 レイアは自分達が手を下すしかなかったクヴァールのことを思う。
 あの涙を。人を斬る感触を。生臭い血のにおいも、今際の弱弱しい声も、まだ鮮明に思い出せる。
 だからこそ。
「無念を背負う覚悟を誓うわ」
 ――我が名のもとに授けます。生きとし生ける者に幸あれ、我が御前に於いて飢えること勿れ。
 レイアが幻影の光景に向けて放つのは、女王たる竜の威光。生命力に満ちた歓びのオーラを纏ったレイアは電脳レイヤーの向こう側に向け、災厄を断つ祈りの一撃を解き放った。
 其処に現れた大天使ライラは、感情の見えない表情でゆっくりと語りかけてくる。
「救済を しりぞけますか」
「神の赦しなんて要らない、運命は自分の手で切り開くの」
 宣言したレイアの言の葉が響き渡った刹那、真なる救済の奇跡が戦場に広がった。
 
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【口福の伝道者】がLV2になった!
効果2【凌駕率アップ】がLV2になった!

四葩・ショウ
※宿敵との認識なし、初邂逅

目映い白い闇にとらわれたなら
見間違える筈ない
ここは奪われたわたし達の家

ママ、――わ、
ショウちゃん、と勢いよく抱きつく妹を抱きとめ

……ああ、わたし
ずっとずっと夢みてた
もう一度家族をこの腕にとりもどすんだって
視界が滲む

……うん
……ずっとこのままで、いたいよ……


……違う

家族だから、わかるのかな
貴女達はわたしが会いたい家族じゃない
こんなのは、嘘だ

楽園なんかじゃ――
迷いなく硝子のレイピアをつき立てるのは自分自身

それが救いなら
(撃滅の)彼女らの涙は一体、何?
わからないのか 貴女は
ああ
なんてからっぽなんだろう

させたくない
あんな想いを、もう、誰にも

強くつよく希う心をLiliumへ変え


●断罪と白百合
 目映くて白い、闇。
 決して漆黒ではない色。それでいて暗闇だと認識してしまう空間にとらわれた気がした。
 四葩・ショウ(Leaden heart・g00878)は一度だけまぶたを閉じる。それでも白い闇は広がり、ショウを包み込むように広がっていった。違和を感じて目を開ければ、其処には――。
 見間違える筈のない、よく知った光景が広がっていた。
 今はもうない。けれども記憶に深く残る場所。奪われてしまった、四葩の家。
「わたし達の、家……」
『おかえりなさい』
 開いた扉の向こうからは懐かしい声がした。やさしくてあたたかい、産まれた頃からずっと聞いていた声だ。
「……ママ、」
『硝子ちゃん?』
 母親の姿を瞳に映したショウがその場に立ち尽くしていると、ほんとうの名を呼ぶ声がした。どうかしたの、と覗き込んでくる母の瞳はあの頃のままだ。そのとき、家の奥からぱたぱたと走ってくる音が聞こえた。
「――わ、」
『ショウちゃん、おかえりなさい!』
 声と共に勢いよく抱きついてきたのは妹。反射的に妹を抱きとめたショウは、その身体を強く抱きしめた。感触も声も、その仕草も全部が同じだ。記憶のままの家族が目の前にいる。
(「……ああ、わたし。ずっとずっと夢みてた」)
『泣いてるの、ショウちゃん』
「ううん……」
 妹が腕の中で自分を見上げているのがわかった。こうしてもう一度、家族をこの腕にとりもどすのだと願っていた。
 頬を伝った涙の熱を感じると同時に、ショウの視界が滲んだ。
 電脳レイヤーが見せる幻であることは心の奥でわかっていた。しかし、そっと歩み寄ってきた母が妹ごと自分を抱きしめてくれている今を、どうして振り払えようか。
『もう大丈夫、心配なんてひとつもないから』
「……うん、ママ」
『元気だして、ショウちゃん。おいしいごはんを作って待ってたんだよ!』
 母も妹もやさしい言葉を掛けてくれた。それが本物だと錯覚してしまうほどに。否、きっとショウの心からの望みから生まれた二人は本物にも近い存在なのだろう。ショウはひとときだけ以前のまま、硝子としての言の葉を落とした。
「……ずっとこのままで、いたいよ……」
 だけど。それでも。
 ――違う。
 硝子ではなく、ショウとしての心が叫んでいた。
 家族だからこそわかるのかもしれない。妹と母の姿をしたものから静かに離れた彼女は呼吸を整えた。
「貴女達は、わたしが会いたい家族じゃない」
 こんなのは、嘘だ。
 願いを幻想で塗り固める救済などあってはいけない。確かに幸福で、間違いなく望み通りだ。しかしこれは楽園などではなく、祈りの庭は救済を齎すものではない。
 大切な家族の幻影に背を向けたショウは硝子のレイピアを引き抜く。
 迷いなく、その刃をつき立てるのは自分自身。胸より花咲く、ただ一輪の清らなる光を刃に変えるため。
「楽園なんかじゃ――もしそれが救いなら、彼女らの涙は一体、何?」
 ショウが語ったのは撃滅の名を与えられた少女天使達のことだ。苦しみながら戦うことを運命付けられたクヴァール達を配下に従えたライラは、何を救いだとしていたのだろうか。
 すると、がらんどうの闇から感情の籠もっていない言葉が紡がれた。
「救済は おとずれました」
「わからないのか 貴女は」
 胸から引き抜いた白百合のスピアを差し向け、ショウは一気に踏み込む。幻想はいつしか消え、目の前には白の大天使が翼をひろげている姿だけが見える。祈りの庭を駆け抜けたショウは大天使に或る思いを抱いた。
 ああ、なんてからっぽなんだろう。
「――させたくない」
 あんな想いを、もう、誰にも。
 ショウが強い思いを抱いたとき、ライラがふとした言葉を零した。
「そうでした。以前、お前に似たものを 天使へと至らせたことがあります」
「わたしに似た……?」
「ええ、りっぱな天使になって わたしに仕えてくれました」
 ライラの語った言葉に一瞬、ショウが動揺する。先程のクヴァールのことかとも思ったが、どうやらライラの口振りからするにそうではないらしい。似た子といえば、此処に来た時に会った少女も似ている部類に入るだろう。
 あのように他人の空似などいくらでもある。ライラがショウを見て語った言葉も本当かどうかはわからない。そもそも、あのがらんどうの大天使が人間をひとりずつ認識しているかも怪しい。
 ただの言葉に惑わされるな、と自分に言い聞かせたショウは鋭く言い切る。
「だから、どうした」
 ショウは己の中に生まれた迷いを振り切り、地を蹴った。
 この魂に純然たる希いがある限り、刃の切っ先を向ける方向を間違えたりなどしない。感情を出さぬ見た目からは判別できなくとも、ライラの戦う力が削られていることは確かだ。
「救済は、こんなところにはない」
 決着の瞬間は、今。
 強く、つよく、心を花へと変えて。刃を突き放ったショウの一閃が大天使を貫いた。


●拓く未来の蕾
 ひらりと花が散った。
 そのような感覚を齎す一閃が振るわれた後、儀式大天使・ライラはその場に崩れ落ちる。
 揺らめいたドレスの奥の闇があらわになったかと思うと。大天使の姿は一瞬にして消え去った。残ったのは舞い散った翼の残骸と、地面に落ちた真っ白な衣服だけ。
 まるで其処に最初から誰もいなかったような終わりが訪れていた。
 祈りの庭の照明が落ちたのは、ライラの支配が此処で途切れたことを示しているのだろう。
 電脳レイヤーは既に崩れ去っており、辺りは静寂と闇に包まれた。されどこれこそ復讐者が勝利を得た証だ。
 こうして、夜闇は正しき形で導かれた。
 偽りの救済から逃れた人々。彼らはこれからも、此処で強く生きていくことになるのだろう。
 解放の時は、間もなく――。
 
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【活性治癒】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!

最終結果:成功

完成日2022年11月08日

浅草寺周辺地域の解放作戦

 上野上陸作戦を成功させたディアボロスは、台東区の支配者であるジェネラル級大天使『光の調停者イーリス』を追って、彼女が逃げ込んだ浅草寺周辺地域の攻略を開始しました。
 台東区は、友好的な隣接区が海になった影響で流通が滞った上、秋葉原地区や上野地区を失陥するなど敗北が続いており、イーリスは台東区の一般人からの信望も失いつつあるようです。
 さらにディアボロスを迎撃する準備に注力した為、区民に対する食料の配給も途絶えがちになっているようです。

 この状況を利用すれば、浅草寺周辺に住む一般人を慰撫・扇動し、イーリスに対する信仰を弱体化させるのは難しくありません。
 浅草寺周辺の大天使達を駆逐し、一般人を離反させれば、浅草寺の拠点に籠ったイーリスを孤立させ、決戦を挑めるようになる筈です。

光の調停者イーリス

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🔒
#TOKYOエゼキエル戦争
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#浅草寺周辺地域の解放作戦
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#台東区
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#浅草寺
🔒
#光の調停者イーリス


30




選択肢『群衆への演説』のルール

 集まった群衆に演説をする事で、群衆の心を動かします。
 クロノヴェーダとの戦闘には直接影響はありませんが、事件解決後の人々の暮らしや生き方に影響を与えるかもしれません。
 演説を行う場所や状況、聴衆となる群衆たちの精神状態などは、オープニングやリプレイで確認してください。

 オープニングやマスターよりに書かれた内容を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 なお、この選択肢には、特殊ルールはありません。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👾取り巻きトループス級『撃滅のクヴァール』のルール

 事件の首魁であるクロノヴェーダ(👿)の取り巻きのトループス級クロノヴェーダ(👾)と戦闘を行います。
 取り巻きトループス級は、👿と常に一緒に行動していますが、戦闘時に👿を庇うような行動はとらず、👿が撃破すると、逃走していきます。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「沢山」出現します(現れる敵の数は、オープニングの情報やリプレイの記述で提示されます)。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『この選択肢の🔵が👑に達すると、この敵集団を倒す。完結までにクリアしていない場合、この敵集団は撤退する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


選択肢👿アヴァタール級との決戦『儀式大天使・ライラ』のルール

 事件の首魁である、アヴァタール級クロノヴェーダ(👿)と戦います。
 👿を撃破する事で、この事件を成功で完結させ、クロノヴェーダの作戦を阻止する事が可能です。
 敵指揮官を撃破した時点で、撃破していないクロノヴェーダは撤退してしまいます。
 また、救出対象などが設定されている場合も、シナリオ成功時までに救出している必要があるので、注意が必要です。
 詳細は、オープニング及びリプレイで確認してください。

 記載された敵が「1体」出現します。敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」のパラドクスで反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功 🔵🔵🔵
 成功 🔵🔵🔴
 苦戦 🔵🔴🔴
 失敗 🔴🔴🔴
 大失敗 [評価なし]

 👑の数だけ🔵をゲットしたら、選択肢は攻略完了です。
 また、この選択肢には、
『【完結条件】この選択肢の🔵が👑に達すると、敵を倒し、シナリオは成功で完結する。ただし、この選択肢の🔴が🔵より先に👑に達すると、シナリオは失敗で完結する。』
 という特殊ルールがあります。よく確認して、行動を決めてください。
※このボスの宿敵主は「四葩・ショウ」です。
※クロノヴェーダには、同じ外見を持つ複数の個体が存在しますが、それぞれ別々のクロノヴェーダで、他の個体の記憶などは持っておらず、個体ごとに性格なども異なっています。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。