大淫魔都市ウィーンの淫魔大樹

 獄彩のバーバラを撃破した事で、潜入が不可能であった『大淫魔都市ウィーン』の探索が可能となりました。
 ですが、大淫魔都市ウィーンの市街は静まり返り、人々の生活の気配はありません。

 市街には建物を覆い尽くすかのように、おぞましき触手をもった樹木が生い茂り、その根元には触手に繋がれた数多くの一般人の男女が、堕落しきった恍惚とした表情で繋がれています。
 彼らが繋がれている樹木こそ、淫魔が生み出したクロノ・オブジェクト『淫魔大樹』です。
 このクロノ・オブジェクトに繋がれた人間は、生命活動を保たれたままで異空間『堕落世界』に精神だけを囚われ、永遠に『堕落』し続けることで淫魔に大量のエネルギーを供給し続けるのです。
 この『淫魔大樹』を滅ぼすことが出来れば、エネルギー源を失った淫魔達は、その戦力が低下し、大規模な作戦を実行できなくなるでしょう。

 しかし、『淫魔大樹』を外部からの攻撃で破壊した場合、精神を囚われている一般人の命が失われてしまいます。
 彼らの命を救うには、『堕落世界』に侵入し、囚われた精神を解放しなければなりません。
『堕落世界』の内部にいるアヴァタール級を撃破すれば、その区画の『淫魔大樹』と『堕落世界』をまとめて破壊できます。
 攻略期限までに規定数を破壊する事で、『淫魔大樹』を滅ぼすことが可能です。

ひまわり畑、白ワンピース、麦わら帽子、あと触手。(作者 唐揚げ
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#断頭革命グランダルメ  #大淫魔都市ウィーンの淫魔大樹  #大淫魔都市ウィーン 


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●断頭革命グランダルメ:ウィーン市街
 静まり返った市街を覆うのは、おぞましき触手の大木。市民はその魔の手に絡め取られ恍惚と呆けていた。
 これこそが淫魔の重要なエネルギー源であり、強大な樹木型クロノオブジェクト『淫魔大樹』。
 ウィーンを大淫魔都市たらしめ、人々を堕落世界へと引きずり込む恐怖の植物なのだ……!

 とまあブツ自体は大仰なものの、今回救うことになる一般人の堕落世界が実際どうなってるかっつーと。
「ウフフフフ……!」
「アハハハハ……待て待て~!」
 なぜか、太陽燦々の砂浜を、堕落世界が生み出した幻影の少女と追いかけっこしていた。
 ちなみにその少女の見た目は、大きな麦わら帽子に白ワンピースという「ないけどある」タイプの格好だ。
「ほらほら、こっちだよ!」
「この~、おしゃまなお嬢さんめ!」
 海岸に突如出現したひまわり畑に飛び込む白ワンピの少女と、どことなく"陰"っぽい顔の若者(こっちが囚われてる方)。
 少女の細い手首を若者が掴むと、さあっと心地よい夏の風が通り過ぎていった。
「……夏、終わっちゃうね」
「終わらないさ。キミと俺の夏は始まったばかり……そうだろ?」
「……うん!」
 少女が麦わら帽子を押さえてはにかむ。白ワンピが風になびいてシルエットを広げる。
 ああ、誰も味わったことがないはずなのになぜかノスタルジーを感じるこの風景、ひと夏の淡い思い出。
 若者は満面の笑みを浮かべていた。ちなみに彼は、年齢イコール彼女いない歴の非モテだった……。

●新宿駅グランドターミナル
「ウチよくわかんないんスけど、白ワンピに麦わら帽子の女の子って実在するんスか???」
 七田・ナナ(エンジョイガール・g05125)はちんぷんかんぷんな顔で首を傾げていた。

 それはさておき。
「えーと、気を取り直して説明ッス。『極彩のバーバラ』を撃破できたおかげで、ウィーンの探索が可能になったッス。
 あちこちから芸術の才能がある人たちが集められてた……ってのはホントだったッスけど、それが全部でもないッス」
 ナナは、ウィーンの城壁内部……市街地を埋め尽くすおぞましき『淫魔大樹』について説明した。
「この大樹は、普通の人たちを『堕落世界』っていう異空間に閉じ込めて、永遠に堕落させるハイパーヤバい植物ッス!
 だから先輩がたに、堕落世界の中に入ってクロノヴェーダを倒して、囚われた人たちを助け出してほしいッス。
 いつかの『淫魔絵画』のときと同じ要領で、先輩がたが大樹に触れれば堕落世界に侵入できるはずッスよ」
 と、拳を握りしめた。

 ところで問題は3つある。
 堕落世界に入るによる影響と、どのようにして一般人を救い出すか、何よりも堕落世界の現状だ。
「まず堕落世界の中には、囚われた人たちを堕落させるために生み出された幻影みたいな存在がいるッス。
 こいつら自体はクロノヴェーダでもなんでもないから、戦ったりする必要はないから安心ッスよ。
 ただ……その堕落世界の内容っていうのが、こう、いまいちウチにはピンとこないっていうか……」
 ナナはまた腕を組み、唸った。
「さっき言った、白ワンピの女の子と追いかけっこする男の人とか、浅瀬で水着の女の子と水をかけあう男の人とか、日陰で大人の女の人に膝枕してもらってる男の人とか……よくわかんないけど、夏っぽいこと? を、してるみたいッス」
 ナナにはピンときていないが、これらはようは「甘酸っぱいひと夏の思い出」という言葉でくくられるタイプの、主に(夢見がちな)男性が理想に思い描きがちのシチュエーションばかりである。フランス人もそのへんは同じらしい。少なくとも今回は。
「まあとにかく、堕落世界に侵入すると先輩がたも催眠をかけられて、その風景の中で堕落させられちゃうッス。
 それ自体は避けられないッスけど、先輩がたならちょっとしたきっかけと意識さえあれば目を覚ませるはずッス!」
 ナナ曰く、目を覚ましても堕落世界の住人は堕落させようと誘惑をしてくるらしい。
 この場合は……多分こう、「ないけどある」タイプの夏の思い出を堪能させようとしてくるのだろう。
 ひまわり畑を背景に白ワンピの少女がはにかんだり、海岸で追いかけっこしたり、夕焼けの砂浜で黄昏れたりするのだ。
「先輩がたなら誘惑を振り切るのなんて楽勝ッス! だって、先輩はハイパーにカッケーんスから!」
 なお、ナナはこういうメンタルなので、そういう"陽"の空気についていけない人種を考慮していない。
 むしろ逆に、そういうのでコンプレックス刺激されたりしちゃう人がディアボロスにいることもわかってない。
 目に輝くのは、信頼と期待の眼差しである。時としてその輝きは残酷だった。だがまあそういうシナリオなのだ!!

「あっそうだ、クロノヴェーダを倒す前に、淫魔大樹に囚われた人を正気に戻してあげないとッスね。
 もし正気に戻さず倒しちゃうと、生き延びても廃人になっちゃうッス。だから注意してくださいッスよ!」
 めちゃくちゃ大事なことをさらっと思い出したように言う始末である。
「あと、クロノヴェーダは二種類いて、まずトループス級は『ヴィエルジュ・キャヴァリエル』って騎兵の自動人形ッス。
 連携して闘うのが得意な奴らなんスけど、あんまこの任務に乗り気じゃないみたいッス。真面目なんスね」
 クロノヴェーダにも色々である。トループス級、上に逆らえないし。
「アヴァタール級の敵は、『ポーリーヌ・ボナパルト』っていう女の子の姿をした自動人形ッス。
 淫魔大樹の力を利用して強化するみたいで、普通のアヴァタール級よりはちょっと手強いッスよ。
 なんか、ナポレオンの妹の名前らしいんスけど、こいつ自体もそういう認識で活動してるみたいッスね。
 ……あれッスかね? 妹キャラ、ってやつッス? ウチ、よくわかんないんスけど好きな人がいるって聞いたことあるッス」
 どこで学んだのか若干疑問である。

「なにはともあれ、このクロノオブジェクトは淫魔にとってもハイパー重要なブツに違いないッス。
 それを潰せば、今まで姿を見せてなかったジェネラル級や、ナポレオンだって動くかもしれないッス!」
 だからこの作戦は重要であり、決してネタではないのだと豪語するナナ。彼女的にはそう認識していた。
「さあ先輩、いつものようにカッケー戦いでパパっとちょいちょーいとやっちゃってほしいッス!」
 そして無邪気だった。時として無邪気は、悪意よりも残酷である。

●再び断頭革命グランダルメ:ウィーン市街
「へへ、えへへへ……夏は終わらない、ウフフフ……」
 触手に繋がれた"陰"っぽい顔の若者(全員男性)たち。まったくありがたくない光景だ。
 顔はやつれているが恍惚と、そして満足気に微笑んでいる。生きながらえているのは樹木による栄養補給のおかげだ。
 たとえ堕落世界の中で理想の夏を過ごしていても、現実の彼らはこのように悲惨な状況にある。
「ああ、よかったなあ、今まで夏なんてろくな思い出なかったもんなあ……この夏がずっと続くといいなあ」
 ……助けなければいけないのだ! 絶対に!
「夏最高だなあ! こういう夏が過ごしたかったんだよなあ!!」
 急げ、ディアボロス! 急いであげてくれ!


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
3
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【狐変身】
1
周囲が、ディアボロスが狐に変身できる世界に変わる。変身した狐は通常の狐の「効果LV倍」までの重量のものを運べるが、変身中はパラドクスは使用できない。
【悲劇感知】
1
「効果LV×1時間」以内に悲劇が発生する場合、発生する場所に、ディアボロスだけに聞こえる悲劇の内容を示唆する悲しみの歌が流れるようになる。
【強運の加護】
2
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【照明】
2
ディアボロスの周囲「効果LV×20m」の空間が昼と同じ明るさに変化する。壁などで隔てられた場所にも効果が発揮される。
【フライトドローン】
1
最高時速「効果LV×20km」で、人間大の生物1体を乗せて飛べるドローンが多数出現する。ディアボロスは、ドローンの1つに簡単な命令を出せる。
【腐食】
1
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【勝利の凱歌】
1
周囲に、勇気を奮い起こす歌声が響き渡り、ディアボロスと一般人の心に勇気と希望が湧き上がる。効果LVが高ければ高い程、歌声は多くの人に届く。
【避難勧告】
1
周囲の危険な地域に、赤い光が明滅しサイレンが鳴り響く。範囲内の一般人は、その地域から脱出を始める。効果LVが高い程、避難が素早く完了する。
【プラチナチケット】
1
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【隔離眼】
1
ディアボロスが、目視した「効果LV×100kg」までの物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)を安全な異空間に隔離可能になる。解除すると、物品は元の場所に戻る。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【熱波の支配者】
1
ディアボロスが熱波を自在に操る世界になり、「効果LV×1.4km半径内」の気温を、「効果LV×14度」まで上昇可能になる。解除すると気温は元に戻る。
【ハウスキーパー】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の建物に守護霊を宿らせる。守護霊が宿った建物では、「効果LV日」の間、外部条件に関わらず快適に生活できる。
【パラドクス通信】
1
周囲のディアボロス全員の元にディアボロス専用の小型通信機が現れ、「効果LV×9km半径内」にいるディアボロス同士で通信が可能となる。この通信は盗聴されない。
【アイテムポケット】
1
周囲が、ディアボロスが2m×2m×2mまでの物体を収納できる「小さなポケット」を、「効果LV個」だけ所持できる世界に変わる。
【水中適応】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」が、クロノヴェーダを除く全ての生物が水中で呼吸でき、水温や水圧の影響を受けずに会話や活動を行える世界に変わる。

効果2

【命中アップ】LV4 / 【ダメージアップ】LV4 / 【ガードアップ】LV4 / 【反撃アップ】LV3 / 【アクティベイト】LV1 / 【リザレクション】LV2 / 【先行率アップ】LV1 / 【ドレイン】LV1 / 【アヴォイド】LV1

●マスターより

唐揚げ
 バニラアイスです。OP読んでいただければわかると思いますが、まあだいぶネタ風味のシナリオです。
 存在しない夏の思い出の誘惑をはねのけて、あとはこうクロノヴェーダをぶっ倒してください。

 採用順は①→②→③→④となります。
 頂いたプレイングの数によって、不採用が出る可能性があります。ご了承ください。
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


諷和・もこ
ダラク?って何…

えっ!?何で彼(片思いの相手)がここに!?

何故か二人で夏服の制服で学校帰り
ひぐらしの鳴く声
ほんのり赤づく夕焼け前の空
学校から続く海の見える坂道
彼の漕ぐ自転車の後ろにまたがって帰る帰り道
ドキドキしながら彼の腰に腕を回して、背中にそっと耳をくっつける

少し遠回りしようと一緒に近場の砂浜に
手をつなぎながら歩く海岸線
伸びる二人の影
立ち止まり、真剣な目で見つめられて

言葉を紡ぐより前、彼の顔が近づいてきたから
自然と瞳を閉じ、そっと踵を上げて――

――夢だったんだよ!!!!!!!
彼は成人してるから学生じゃないと気付いちゃってうっかり覚醒しちゃったんだよ!
許さない…クロノヴェーダ許さないんだよ…!


●あの、覚醒「しちゃった」ってとこに本音が漏れてませんか?
「ダラク? って、なんだろ……?」
 時先案内人の説明を聞いても、純粋無垢な諷和・もこ(ふわもこうとうと・g01739)にはピンとこなかったらしい。
 そのあやふやな状態でパラドクストレインに乗ってしまうあたり、使命感が強いというべきか迂闊というべきか、これがまともな(語弊あり)案件だったら命取りになりかねないところだ。
 いや、今回の仕事も、少なくとも状況としてはシリアス……なはずなのだが。ほんとだよ? ウソじゃないよ?

 それはさておき。
「はっ!」
 淫魔大樹に触れたもこは、気がつくと夏の夕焼け空を見上げていた。
 黄色とオレンジのあわいに陽炎が揺れ、どこからかひぐらしの鳴く声が響く。自らは夏服……どうやら学校帰りだ。
「あれ? えっと、ボクは……」
 もこはきょとんとして、周りを見渡し、自分が自転車の後ろに乗っていることを自覚した。目の前には大きな背中。
「……あ、そっか。下校の途中、だったんだよね」
 もこがぽつりと呟くと、自転車を漕ぐ眼の前の「彼」が、肩越しに振り向いて何かを言った。
「ううん、なんでもないよ。えっと……もうちょっとしっかりしがみついてもいい、かな?」
「彼」が頷く。もこはドキドキと胸を高鳴らせて、腰に腕を回して、背中にそっと耳をくっつけた。細くしなやかで、けれども男性だとたしかにわかる感触の向こうから聞こえたのは、同じ高鳴る胸の鼓動――。

「潮風が気持ちいい……」
 で、気がつくと砂浜を歩いている。だがその場面転換をもこが訝しむことはない。
 だって、繋いだこの手の感触が、ぬくもりがある。影法師なんて目に入らない。夕焼けを背にした「彼」の眼差しがそこにあるから。
「……え?」
 ふと、彼が立ち止まる。真剣な藍色の瞳。無言の時間。近づく隘路。もこは顔を赤らめながら目を閉じて、そっと踵を上げ……。

「……いやこれは夢だよ!!!!!!!!!!!」
 あーあ気付いちゃった! いいとこまでいったのに! あーあ! でもそういうのあるよね、ガチの夢で!!
「か、かか彼は成人してるのに! ボクは、いや私は……うぐぐぐぐ!! ざんね……いや違う、許さない! クロノヴェーダ許さないんだよ!!!!」
 怒りのポイントが若干、いやだいぶ違う気がした。とりあえず、もこの復讐心(ルビ:やる気)は燃えていた。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!

テクトラム・ギベリオ
夏に寄せる淡い期待というか、無謀な望みと言うか…。
だが人々を堕落に陥れる存在は見過ごせん。行こう、毛玉。

さて。これと言って我が望みは無いと思うのだが、ここは?
新宿島の建物に似ているがずいぶん自然が多いな。田舎と呼ばれる場所だったか。
確かに美しい景色だがこれが私の願望なのだろうか…。

む、あれは猫か?集会中なのか。
ふふ。おやおやおや。ふふふ。

日陰の石階段に腰掛けて寄ってくる猫たちをあやす。
ここの神社は君たちのナワバリなのだな。

確かに猫は堕落する要因ではある。
だがこれ以上遊んでいると毛玉の爪がいよいよ痛い。
それに私はエジプト出身。この夏の情景は私を堕とすには不十分だ。

先へ行こう。さよなら夏の猫たち。


●夏の情景の扉
 夏。それは、人々の欲望のタガを少しだけ緩ませる季節。
 夏。それは、人々の情熱をいつもより燃やす、罪な季節。
 夏。それは……無謀な望みに心身を焦がされがちな季節。

「淡い期待といえば聞こえはいいが……難しいものだな、毛玉よ」
 テクトラム・ギベリオ(砂漠の少数民族・g01318)は淫魔大樹を前にして、嘆息した。毛玉はきょとんと首を傾げる。
 おい、被害者たちのことを悪く言うのはやめてさしあげろ。憧れはキャントストップって偉い人も言ったじゃないですか!
「これといって我が望みはないと思うのだが、さて……行こうか」
 だが、それはそれとして、堕落を齎す存在は見過ごせない。テクトラムは、そのへんが真面目だった。さすがイケメンである。

 で、その彼が取り込まれた堕落世界の内容はというと。
「……おや?」
 周りは新宿島の……つまり彼から見て未来、我々からすれば現代の様相を、やや地方色強めにした感じの景色だ。
 早い話が、田舎である。テクトラムにとっては、文献やディアボロスの話からしか聞いたことのない、だが理解できる風景。
「たしかに美しい景色だが……む」
 どこへ行くとでもなく歩いていたテクトラムが目にしたのは、猫たちの群れである。茶色、まだら、白、黒、灰色……。
「ふふ。……おやおやおや、集会中か? ふふふ」
 日陰の石階段に腰掛けたテクトラムは、寄ってくる猫たちをあやしてやり、そうしてほしそうな猫は指先で優しく撫ぜた。
「ここの神社は、君たちのナワバリなのだな。よしよし」
 猫たちは気持ちよさそうにとろんとしていたり、ひんやりとした石畳に寝転んでリラックスしていたり、どこからくすねてきたのか魚の干し身をがじがじしていたり。
 テクトラムは穏やかに微笑んだ。さもありなん。なにせお猫様である。つまりこの世の覇者。帝王。かわいいは正義なのだ。

 しかし、彼が堕落することはない。なぜならテクトラムはエジプト出身。日本のノスタルジーに心から浸ることはないのだ。
「名残惜しいが、そろそろ先へ行かねば。わかっている、わかっているからそろそろ爪が痛いぞ毛玉、な」
 あと。ぎりぎりぎりぎり。めっちゃ毛玉が爪立ててくる。すんっげえ爪立ててる! だがテクトラムは笑顔! それもまたお猫様(スフィンクスだけど)の恩寵なのだ!
「さようなら、夏の猫たち」
 テクトラムはにゃあにゃあと名残惜しげな猫たちの鳴き声に、手を振った。ぎりぎりぎり。まだ爪立ってていてえ!
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!

吉音・宮美
アドリブ・連携歓迎
彼らは本当に西暦1803年の人間なんですか……?クロノヴェーダが現代日本の文化を持ち込んだりしていません?

まあそこはあまり気にしないとして
2013年から2020年の新宿島に飛ばされた私としてはノスタルジーを感じる夏の景色というものは胸に染み入るものがあります
透けるような青空に一点浮かぶ巨大な入道雲、そんな夏の景色を見て……思い浮かんだメロディを【演奏】し、思い浮かぶ単語を詩にして【歌唱】しましょう!
【アート】を作る者として、心動かされた情景は作品にしないと気が済みません!
そんな強い創作意欲で堕落の誘惑を打ち破りましょう!


真紅堂・乎乎那
アドリブ連携歓迎にて
紅の水着で海を眺めながら木蔭でくつろぐとしよう。
青い空、広い海……素晴らしいね。この開放感。
かつての故郷だった村の皆も楽しそうじゃないの。

こんな幸せも悪くはない……。
……と、言うとでも思ったか。
これはクロノヴェーダに奪われたものだ。

どこからともなく魔術長剣ハートブレイカーを抜き放ち、斬り払う。
……フン。味な真似を。
夏の日差しよりも熱い私の復讐心を誤魔化せはしない。


●近世フランス人があきらかに日本のノスタルジーに心囚われてるのもすべてクロノヴェーダの仕業なんだ
「……」
 青い空。広い海。どこまでも続くような開放感。そして、暑くはあるが決して不快ではない絶妙な湿度の理想的夏の日差し。
「……素晴らしいね」
 紅色の水着を着た真紅堂・乎乎那(埋火の魔創剣士・g02399)は、木陰で背中を預け、地平線を見つめていた。
 ああ、これこそ夏。日本特有のジメジメした湿気とか、あとウザい虫とか、暑すぎて水着だろうがもううんざりしてくるぐらいのムワッとした熱気とか、そんなものはない理想郷。
 風は心地よいし、海に入っても海藻とかぶよぶよしたクラゲとか足に絡みついたりしないし、ちょっと日向に置いといた缶の飲み物がバカクソ熱くなってて手火傷したりもしない。
 だってこれは幻覚だから。所詮すべては作り物……そう、なぜかこの日本的なノスタルジー風景の中で楽しそうに遊んでいる、かつての故郷だった村のみんな(※もちろん全員水着。それか海の家で働いているのでハッピ姿)の姿も。
 こんな幸せも、悪くない。乎乎那はそう口にしかけた……と、きっとクロノヴェーダはそう目論んで、この邪悪なクロノ・オブジェクトを作り出したのだろう。
「……と、いうとでも思ったか」
 だが、乎乎那は違う。彼女の胸には、怒りという名の炎が燃えている。こんなものが胸を刺激するまでもなく、乎乎那の胸に燃える炎は夏の日差しよりも熱いのだ。
 そして乎乎那は立ち上がり、魔術長剣『ハートブレイカー』を抜き放つと、こうシリアスな顔で堕落の誘惑を切り払おうと構えた!

「あ~~~、サマーバケーション~~~!」
 切り払おうとした。プレイング的にはそうなっていた。
 だがアドリブ連携歓迎なんて書かれてたもんだから、そこで気の抜けるような(だがなぜか妙に不思議となんとなーく夏がめっちゃ刺激される)歌声にがくんとテンポが崩れた。
「は?」
 最高にCool(口調欄より抜粋)だったはずの乎乎那は、思わず歌声の主を見やった。えっこれも堕落世界のやーつ?
「少しだけはしゃぎすぎて疲れたあなたと、木陰でクールな一時……って、あ、ごめんなさいお邪魔しちゃいました?」
 気持ちよく歌っていた妖狐の女性、吉音・宮美(限界ギリギリ狐娘・g06261)は、魔楽器(※アコギ)を手に振り向いた

「いや、今私も堕落の誘惑をはねのけようとしていたからいいんだが……一体何を」
「見てわかる通り、歌っていました!!」
「それはわかるんだけど、そうじゃなくてだね」
「あ、もちろん自作の歌詞なので安心してください! そう、このメロディも詩もすべて私がこの夏を感じていたら心に浮かび上がってきた、そんな夏そのもののパトスなんです!」
「聞きたいのはそこじゃなくてだね」
 宮美はしかし、力説した。
「だって考えてみてもくださいよ、それを言い出したら西暦1803年のフランス人が、こんなノスタルジー溢れる光景に取り込まれて堕落してる時点でおかしくないですか!?」
「そこは私も考えないようにしてたし、あと多分全部クロノヴェーダが悪い。奴らも味な真似をするものだよ」
「そうです、そうでしょう! 2013年から飛ばされてきた私としても、色々感じ入るものがあるんですよ!」
 宮美は、巨大な入道雲を見上げた。透けるような青空、消えていく飛行機の描く白い線……は特にないが、とにかくこんなものを見ていたらメロディが浮んで仕方なかったらしい。
「アートを作る者として、心動かされた情景は作品にしないと気が済みません! というわけで、歌います!!!!」
「そ、そうか。だが気持ちはわかる。私のこの夏の日差しよりも熱い復讐心は、ごまかせはしないからな……」
 乎乎那はシリアスな顔でうなずいた。ふたりとも極めて真面目だったが、状況としてはトンチキそのものだった。まあ耐えることは出来たけども! いいんだけども!
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
【熱波の支配者】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!

奴崎・娑婆蔵
【無慈悲】
エエ、毎度お騒がせしておりやす
白い和服のおっさんでござんす

……って、だァれが三十路のおっさんでござんすか!
せめて「あんちゃん」くらいで通して下せえよ!
(【臨機応変】なノリツッコミ)

さて、囚われの各々方に喝を入れよってェ話か

――いやユノの姉御(※自分の方が彼女よりも年上だが新宿島漂着前のちょっとした故あって「姉御」とお呼びする)、頬を叩いてやる程度ならまだしもフォスブレはいけやせん
春一の、迂闊にユノの姉御の下へ導くとガチで召されちまいやすぜ

ここは穏当に、腰ィ据えて声掛けから参りやしょう

トンカラトン……
トンカラトンと言え……
(早く起きないと変な悪夢になっちゃいそうな【呪詛】を訥々と囁く)


小鳥遊・英
【無慈悲】
可哀想がすぎる…わたしも陰の者として共感を覚えますね
そんな夏、わたしは別に過ごしたいとか微塵も思いませんが

白ワンピに麦わら帽子ってアレですよね、組長のお友達の
ほら、ポポポって言う
あ、ちがう?
てか樹さん(姉の方)陽の者すぎん…?普通いませんよ白ワンピ着てくれる女子…
…あ、樹さん(弟の方)に白ワンピ着てもらって信者たちの目を覚ましてもらってあたらしく目覚めさせるのは?アリ寄りのアリでは?

まぁ一発かまして起きてもらいますかァ
回線安定丸ッ!(不機嫌顔のモラを鷲掴みにする)
もふもふに目覚めさせるのだぁ!!(陰の者のほっぺにぱちぱちすりすりさせる)


樹・春一
【無慈悲】
おお! 迷える子羊たちよ!
神と姉さんの名のもとに、救い導いて差し上げましょう!

荊さん神聖な絵画はしまってください

よいですか子羊よ。これは悪魔が作り出した幻。いわば悪い夢です
どんなに素晴らしい光景であろうと! 悪い夢です!
姉さんという世界で一番素敵な女性が迎えにきてくれているのですよ!
夢から覚めましょう! そしてレッツ信仰です!
共に神に祈るのですーっ!!!

いや僕は男子ですけど
神聖な絵画はしまってください

新しい目覚めでこの悪夢を破る……?
なるほど! アキラさんがアリというならアリかもしれませんね!
という訳で夢から覚め、真なる目覚めを得るのです子羊よ!

ところでそれどういう意味ですか?


樹・由乃
【無慈悲】
起きろ野郎ども
楽しい夏休みは終わりです

この時期のひまわり畑は死体のようなひまわりしかいません
海はそろそろくらげが出ます。現実を見なさい
ちょっと愉快な夢を見たくらいでこの体たらくとは
お前たち他に楽しいことないんですか

……

ないんですか? マジで?
いやいるでしょう。白いワンピース着てくれる異性のひとりやふたり

……マジで?
白い和服のおっさんで妥協しません?
いないもんなんですね、ワンピース女子

仕方ありません。希望をなくした人間を導くのは神の務め
よく言うじゃありませんか

死は救済です

救済が欲しい者から前に出なさい
永遠の救済を約束しましょう
穏便な救済が欲しければ、速やかに目覚めることをお勧めしますよ


舞剣・荊
【無慈悲】
ぼんじゅーる!白い服と帽子の女だけど質問ある?
つかフランスっていつもこんなんなん?
去年もなんか隠の奴が巻き込まれてたケド


○救出
ゲンジツでやる事あれば良んでしょ?
じゃーん!神聖な絵画!
持ち込む為に穴が開くほど見て魂に刻み込んできた一品よ!
エロフォンスとかいうキモ男の作品だけどコレ見て元気に……
しまえ?は~い

春一の説法中ヒマなので近くの犠牲者とお話
ねぇお兄サン
死ぬまでヒマワリ畑ランニングしてもしゃーなくない?
それよか
はるーちに不思議パワーで白いワンピースと麦わら帽子着せてみ?トぶよ
今ならこの神聖な絵画もつけて…しまえ?は~い
お兄サンも起きな
パラドクスで死角から首を手刀し意識を引き剥がす


●慈悲はない、陰キャ(の心)殺すべし
 かくして、ディアボロスたちは無事に(?)堕落の誘惑を突破した。
 となれば次は、戦闘の邪魔……もとい救うべき一般人を正気に戻す作業が待っている。
 甘い夢に取り憑かれた彼らを現実に引き戻すのは、それが本当に彼らのためになるとしても、とても心苦しいことだ。
 夢想から醒めるのは、誰にとっても容易ではない。しかし、本当の平和を、未来を取り戻すためには避けては通れぬ道。
 おおディアボロス、悲しみと怒りを礎に戦う者たち。シリアスでカッコいい、ジェネラル級も王もぶっ飛ばしてきた奴ら。
 今回もシリアスに、そしてクールに、かつハードボイルドにやってくれると信じているぜ!

「起きろ野郎ども。楽しい夏休みは終わりです。この時期のひまわり畑は死体のようなひまわりしかいませんし、海はそろそろくらげが出ますよ。現実を見なさい」
 取り付く島もねえ正論パンチ出たよ!!
「……いや、ユノの姉御。頬を叩いてやる程度ならまだしも、フォスブレはいけやせんぜ」
 さすがに見ていられなくなった奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)、なぜかキコキコ愛用のチャリを転がしながらそれとなく樹・由乃(堕ちた翠星・g06228)をたしなめる。
 年齢的には彼のほうが年上なのだが、やんごとなき事情で上下関係が生じているらしい。謎だ。
「いきなり火の玉ストレート食らう皆さんが可哀想すぎる……慈悲も容赦もないですね……」
 "陰"に属する者として、小鳥遊・英(Code name/Falcon・g00772)には一般人に対するシンパシーがあった。
 が、彼らの思い描くアバンチュールでセンチメンタルなサマーを過ごしたいかというと、それは別の話である。
 だがそれはそれとして、「え? 何か間違ってる?」みてえな面した由乃の言葉のナイフ、いや言葉のドスでグサグサ刺される様は、さすがに見ていられないのである。

「えーじゃあもっとフランスらしくいく? 「ぼんじゅーる! 白い服と帽子の女だけど質問ある?」みたいな感じでさ。ほら、そういうの新宿島に保存されてる動画で見たことあるし、フランスっていつもこんなんなんでしょ?」
 何か大変な勘違いをしていらっしゃる舞剣・荊(Thorm.・g02226)、あまりにもズレた方角からの攻略を試みる。
 そんなこと、あるわけないじゃないですか! この断頭革命グランダルメは、邪悪にして卑劣なクロノヴェーダの支配によって人々が虐げられ屈従を強いられる、改竄された人類史でありディアボロスが取り戻すべき過去の一部!
「アアーイイー」
「そんな、たしかにいたんです、白いワンピースの女の子……」
「さあ今日もひと夏の冒険だ! イェイ!」
 たしかに囚われたままの"陰"の男たちの顔は恍惚としていてキモいし、なんかもうエンジョイしちゃってるし、そもそもこれ19世紀フランスの男が夢見るもんとしてはどうなんだって意見もなくはないけど、それはそれとしてクロノヴェーダが強化されると超厄介だし、奴らの邪悪な策略なのは事実だ。
 その誤解を恐れよ、されど恐れるなそのネタシナリオに飛び込む気概ってなもんである。あっネタシナリオって言っちゃった!
「いけませんよそんなことでは! ちなみにこれは両方に言ってますからね。姉さんという世界で一番素敵な女性が迎えに来てくれているのに目覚めない子羊たちと、そこのフランスを誤解しまくっている方に言っていますからね!!」
 サキュバス的にはその誤解をなんとしてでも糺しておきたい樹・春一(だいたいかみさまのいうとおり・g00319)が、器用にも一般人と荊の両方にツッコミを入れた。だが彼もボケである。なぜなら由乃のことを全肯定しているからだ。
「いやだって、去年もなんか"隠"の奴が巻き込まれてたケド」
「だからそれはそれ! これはこれです! というかなんでその特異なケースにどっちも絡んでるんでしょうね僕は!
 まあとにかく、よいですか子羊たちよ。これは悪魔が作り出した幻、いわば悪い夢。今こそ夢から覚めましょう!」
「でもさあエロフォンスというキモ男あんなに支持されて」
「そしてレッツ信仰です! ともに神に祈るのですーっ!!」
 春一は勢いでごまかした。暴走特急キャラはツッコミにおいても便利である。本当に器用だ。

 このように、真剣に(?)懸命な(??)説得を試みるディアボロスたち。しかし……!
「エヘッ、エヘヘヘ……サマー!」
「ああ、えいえんはここにあったんだ……」
「聞こえる、鳥たちの詩吟(うた)が……!」
 男たちは完全に堕落していた。ここに彼らの魂の故郷があった。いわば彼らの心というハマるピタリとした鍵(ルビ:キー)だった。彼らは、時代的には知らないし存在しているわけもない飛行機雲を追いかけたり見送ったりするのに夢中だった。おのれクロノヴェーダ! 許せないぜ!(皆さんの敵愾心を煽る叙情的でエキサイティングな描写)
「全然効いてないですね」
「つまり、それだけクロノヴェーダは狡猾ってことでございやすね。こいつァ手強い……」
 英をよそに、ごくり。娑婆蔵は(マイチャリをキコキコしつつ)息を呑んだ。
 別にそんなこっちゃプレイングには一文字たりとて書いてはいないのだが、そういう役がいたほうが面白そうなのでそういうことになった。リプレイってのはつまり無慈悲な殴り合いってことなんですね(秀逸なタイトル回収)
「そういうもんなんですか? っていうか白ワンピに麦わら帽子って、あれじゃないですか? 組長ご存知ですよね?」
「あっしが?」
「ほら、お友達にいるじゃないですか。ポポポっていう」
「そうそうあの方はまさしく夏の具現いやありゃ夏は夏でもホラーの夏のほうですぜ!!」
 ビシィ! 英に鋭くノリツッコミを決める娑婆蔵! 彼も器用だ!
「あ、違いました? まあ組長も白い服だし同じようなものですよね」
「エエ、毎度お騒がせしておりやす。白い和服のおっさんでござんす。……って、だァれが三十路のおっさんでござんすか! せめて「あんちゃん」くらいで通してくだせえよ!!」
 ビシィ! 再びのノリツッコミ! 娑婆蔵は器用だ!
「そこまでは言ってないんだけど!?」
 英は困惑した。発言の捏造なんて、そんなの……許せないぜ!
「「「アアーイイー」」」
 もちろん漫才はこれっぽっちも説得に効いていなかった。じゃあこの描写、何!!?!?

「というかですね」
 これまで黙っていた由乃が声を漏らす。
「ちょっと愉快な夢を見たくらいでこの体たらくとは、こいつらは他に楽しいことないんですか? あるでしょうひとつぐらい」
「いや、それは……」
 英はドン引きしつつフォローしようとした。だが由乃は止まらない!
「そこのお前、どうなんです。あるでしょう一つぐらい。いるでしょう? 白いワンピースぐらい着てくれる異性のひとりやふた」
「ウワアアアアーーーッ!!」
 名無しの男、ガチ泣き! ガチ泣きである! 堕落からは逃れたがそれはそれとしてうずくまって嗚咽した!
「ウワッ泣き出した。キモい!」
「姉さんの説法に感涙しているのですね、わかります僕もよくあります」
「春一の、それは間違いなく違うとおもいやすが……というかこのままだとガチで(精神が)召されちまいやすね……ここはひとつあっしにおまかせを」
 ザッ。娑婆蔵が組長らしく待ったをかけた。彼はいまだ夢に囚われた男の耳元にしゃがみこみ、囁く。
「トンカラトン……トンカラトンと言え……」
「呪詛!? この流れで呪詛!? どう見ても悪化させるだけですよねそれ!」
 いつのまにか英がツッコミを入れていた。役割が二転三転するあたり、ハイスピードで油断を許さない危険な戦場だということがよくわかるぜ! 冒険選択肢だし!(力説)
「白い和服のおっさんで妥協しましょうよ、ワンピース女子がいないなら」
「エエ、毎度お騒がせしておりやす。白い和服のおっさんでござんす。……って、だァれが三十路のおっさんでござんすか!」
「そのやりとり、さっきやってなかった??」
「これは天丼というやつですね! 僕も知ってますよ美味しいですからね天丼!」
 あっボケにボケが重なってわけがわからなくなってきた!

 仕方ない。事態の抜本的解決を試みることにした荊、懐から取り出したのは!
「じゃーん! 神聖な絵画だよ! ゲンジツでやることあれば良んでしょ? これで解け」
「しまってください」
「え? いやでもこれで不思議な力とか使ってはるーちに白いワンピと麦わら帽子着せたらトぶよ」
「しまってください。あとよくわからないですけどそういうのやめてください! 僕男子ですから!!」
「男子なのがいんじゃん!!」
「知りませんが!?!?!? よくわからないけど新たな目覚めで悪夢を破るというならアリかなと思いましたけどよくないですが!!? ていうかそれどういう意味ですか!?!?」
 結局ボケの嵐だこれ!
「わかりました」
 由乃が再び言い切った。ボキリボキリ。指の骨が剣呑に鳴る!
「希望をなくした人間を導くのは神の務め。そして、よく言いますよね。死は救済だと」
 うわあ突然の肉体言語だぁ!
「というわけで救済がほしい者から前に出なさい。永遠の救済を約束しましょう」
「ほら、このままだと永遠に救済されるから、お兄サンたちも起きな。セイッ(手刀)」
「アバーッ!!」
「結局一発カマすんですねこれ。弟のほうの樹さんに白ワンピ着てもらうというのは悪くないアイデアと思うんですが」
「アキラさんまでそう言うんですか!? だからそれどういう意味ですか!?」
「いえまあいろいろと。でも物理でいくっぽいのでいくぞ回線安定丸ッ! オラァ!!(ぱちぱちすりすり)」
「グワーッ!!」
「トンカラトンと言え……トンカラトンと……」
「ええい、とにかく真なる目覚めを得るのです子羊よ! ところで僕で新しい目覚めを得るってマジでどういうことなんですか!?」
「あと3秒で目覚めないと救済(隠語)します」
「トンカラトンと言え……」
 ぐっだぐだだった。それなりの数の方々が目を醒ましたことにはなった。なぜなら……大成功だから!!!
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【悲劇感知】LV1が発生!
【パラドクス通信】LV1が発生!
【飛翔】がLV2になった!
【腐食】LV1が発生!
【狐変身】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV2が発生!
【アヴォイド】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!

吉音・宮美
アドリブ・連携歓迎
よし、誘惑は振りきれましたね!
それでは完成した曲を大樹に取り込まれてる皆さんの側で【演奏】しましょう!
理想の夏から現実に引き戻されるのは辛いかもしれませんが、【アート】そんな理想と現実のギャップから生まれるのだという想いを歌詞に込めて【歌唱】します

なんならここで見た理想の景色をキャンバスの中で再び現実に引き出すのもありですからね
筆を取るのに遅すぎると言うことはありません!理想を求めるのなら動き出しましょう!


真紅堂・乎乎那
アドリブ連携歓迎にて
よし!なんだか楽しくなってきたので今更プレイングを仕掛けてみよう。
お~っとォ。いつの間にかウクレレを手にしているぞ。
便利よのォ~堕落世界。
コードはAで良いかな?演奏技術は0なんだがね。

夏が過ぎ、秋が来て、厳しい冬を乗り越えれば
やがて命芽吹く春が来るものさ。

ある国ではそれを「萌」と呼ぶ。
夏に執着するのはイカンよキミ。
あれだ。このままではその少女のセーター姿とか見れないだろう?


●音楽はいいですよね、人類が生み出した至高の文化ですよ
  ぺん、ぺん、ぴん、ぽろ、ぽん。
「ほう、ウクレレですか。大したものですね」
 真紅堂・乎乎那(埋火の魔創剣士・g02399)が爪弾く楽器に目ざとく気付いた吉音・宮美(限界ギリギリ狐娘・g06261)は、存在しない眼鏡をクイクイさせた。存在しないけど。
「お~っとォ。気がついたらこんなものを手にしていたよ。もしかしたら堕落世界の効果なのかもしれないね。いやあ便利よのォ~」
「そんな活用法があったんですか!?」
 宮美は、乎乎那のジョークをマジに受け取り、驚愕した。実際のところはどうなのか……それは誰にもわからない。シュレディンガーのなんとやら、というやつだ。
 量子的に考えれば、乎乎那がこんなこともあろうかとウクレレを持ち込んでいた確率と、堕落世界のなんかがアレしてマジで無からウクレレを生じさせた確率は等価である。
 つまりシリアスとネタも等価ということであり、やはりこのシナリオはシリアスだった……?(錯乱)

「まあ理由なんてどうでもいいじゃないか。キミも……演奏(や)るんだろう? 楽器(それ)」
 乎乎那がにやりと笑って魔楽器を指差す。宮美は「あっ」と声をあげてから、照れくさそうに頭をかいた。
「いやあ、えへへ。まあ一応は。さっきのあの曲を、皆さんに披露しようかと思いまして」
「ならつまり、アドリブセッションという形になるね。コードはAでいいかな?」
「おお、もしやウクレレ……たしなまれている!?」
「演奏技術は0なんだけどね」
「そうでしたかぁ~!!」
 いっそ、清清しいまでのNoob宣言を喰らい、爽やかですらある笑顔に宮美は圧倒され、納得してしまった。

「でもいいと思います! 音楽は情熱(パッション)……大事なのは、あの人たちの魂を揺さぶることですから!」
「そうだね。生半可な行為では、彼らの夢見る夏には勝てないだろうからね……」
 急にシリアスな表情になり、ごくりと息を呑む乎乎那。"陰"の者らの禍々しくさえあるオーラは、明らかに淫魔とか触手だけのせいではない。彼ら自身が持ち得る、ある種の闇だった。
 こう書くと、なんか深刻でマジでなんとかしないといけない気がしてこないですか? 怒れ、ディアボロス!(命令形)

 とにかくそういう自然な流れにより、ふたりは即興でのセッションを行うことにした。
 必要なのは、誘惑すらも吹き飛ばすほどの熱いパトスなのだ。精神を堕落させられているなら、その堕落を感じさせなくしてしまえばいい。なんて冷静で的確な判断なんだ!
「みなさん、理想の夏から現実に引き戻されるのは、辛いことかもしれません。ですが、アートとはそんな理想と現実のギャップから生まれるものなんです! だから、聞いてください! 私たちの、演奏!!」
「それに、キミたちは大事なことを忘れているよ。それを、私たちが教えてあげよう」
 即興かつ片方はど素人なのに、なぜか異様に息の合った演奏(残留効果とかもないのでマジで眠れる力が呼び覚まされたのかもしれない)で、過ぎ去る夏のセンチメンタルを歌うふたり。
「夏休みが過ぎても~私の心はまだまだ夏空模様~!」
「ああ永遠の少女時代……けれど夏が過ぎて秋が来れば、やがて厳しい冬さえ乗り越えられる……」
 テンポもコードもめちゃくちゃなのだが、妙に響く。それは、彼女たちの思いがなせる技なのかもしれない。
「お、俺たちの夏は、終わっちまったのか……?」
「そんな、あの可愛い子たちに会えないなんて!」
 堕落から次々に男たちが目を醒まし、現実に打ちのめされてすすり泣く。"陰"の者たちなので、ややキモい。

 しかし、そんな彼らに送る詩は、ふたりなりの応援歌でもあった。
「いいかいキミたち。冬が終われば、やがて命芽吹く春が来る。そう、ある国ではそれを――「萌え」と呼ぶんだよ」
 キリッ。乎乎那はクールな表情で最悪なことを言った。
「夏に執着するのはイカンよキミたち。あれだ、このままではその少女のセーター姿とか見れないだろう?」
「「「なるほど~!!」」」
 納得する男たち!
「うまくあってはいけません! 綺麗であるのも間違っています! でたらめな気持ちで、あなたたちの理想をキャンバスに書きなぐるんですよ!!!」
 宮美は力説した! なんだこれは!?
「「「うおおおお!! 芸術はシルブプレ~!!」」」
 男たちは芸術に目覚めた! ……なんだこれは!?! でも大成功だから説得は成功だ! やったぜ!
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【勝利の凱歌】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
【命中アップ】がLV3になった!

白水・蛍
アドリブ・連携歓迎

……知り合いが大暴れしてますわねえ。
気づかれたならその分敵相手に大暴れいたしましょうか。
という事で敵に対して魔力の弾丸の砲撃を撃ちます。
相手も打ち込んでくるんですよね。それも全部撃ち落としてさし上げます。

突っ込んでくるのは防具と魔力で魔力障壁を作って耐えます。
受け止めた方が相手にダメージ与えそうですし。
ですからして、敵を倒して、その先にいるポーリーヌとやらを拝む事にいたしましょう。


●結局最後はこうなるのがディアボロス
「……大暴れしてますわねえ」
 白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)は、取り込まれた一般人相手にはちゃめちゃな説得(ルビ:セッション)をする、どこぞの知り合いの様子にとても複雑な表情をしていた。
 いつもよりはっちゃけている気がする。まあ音楽ってそういうものなんだろう、多分。あときっと淫魔のせいだ。
「よし、私は代わりに、クロノヴェーダ相手に大暴れいたしましょうか」
 こっちもこっちで大概だ!!!

「ううっ、なんだってこんなところの警備につかされたのか……」
 そこへカッポカッポと駆けつけたのは、こちらもこちらでとても複雑な表情をした自動人形たちである。
 ヴィエルジュ・キャヴァリエル。卓越した連携戦術と、文字通り騎馬一体となった機動力を誇る厄介なトループス級、なのだが……。
「せめてもう少しマシな連中がよかった!」
「取り込まれた一般人どももアレなら、駆けつけたディアボロスどももあれじゃないか!!」
 なんか色々不満があるらしかった。クロノヴェーダも好き嫌いはするのである。
「もういい、問答無用! 私たちはあんなトンチキに巻き込まれはしないぞ、死ねーッ!」
 やけくそ気味に蛍に銃口を向ける! 弾幕射撃で敵の機動力を奪い、その隙に一撃離脱の致命的突撃をかける厄介なパラドクスだ!
「あいにくですが、私はあなたがたではなく、ポーリーヌとやらを拝むつもりでして。さっさと片付けさせてもらいますよ」
 蛍は『墨流しの奏刀』を振るうことで音を鳴らし、その音に魔力を乗せて魔力の塊を喚び出すと、さらに神速の斬撃を放った。
 本命は、斬撃そのものではない。神速の斬撃によって分割された魔力塊による、無数の砲撃。斬撃軌道をなぞるように放たれた魔力弾は、弾幕射撃を飲み込みながら複雑な軌道を描き、四方八方からクロノヴェーダに襲いかかる!
「普通に攻撃してきた!?」
「いや戦いなんだから当たり前でしょう? 私は戦いに関しては手は抜きませんので!」
「そんなバカなグワーッ!?」
 数も質も蛍の弾幕のほうが上だ! よもや普通に蹴散らされると思っていなかった自動人形はたちまち駆逐!
 魔力弾に撃ち抜かれたキャヴァリエルは、なんらかの科学的反応により大爆発を起こすのである。
「……あっ、これ花火っぽいですね」
 ずがーん! どかーん! と、頭上で盛大に爆ぜるクロノヴェーダどもを見上げる蛍。ああ、こんなところにも夏の残滓。風情は微塵もなかった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【強運の加護】LV1が発生!
効果2【リザレクション】LV1が発生!

吉音・宮美
アドリブ・連携歓迎
熱中しすぎて何か巨人が憑依したような……と、いけないいけない戦闘ですね
ちょうど良いですね、皆さんに【アート】の力を見せてあげましょう!

選択PDを発動
【氷雪使い】の魔力の宿った【演奏】で相手の平衡感覚と距離感覚を凍らせ攻撃と移動を妨害
混乱した相手を『吉音式スノーバレット』の【強打】で相手を転倒させて『吉音式グレイプニル』で【捕縛】しましょう
被害者の皆さんが脱出するまでの【時間稼ぎ】ですが、できるだけ殺しはしたくないので……


真紅堂・乎乎那
アドリブ連携歓迎にて。
オーケィ。演奏(や)ったあとは……闘(や)るとしようか。
さて、相手は自動人形か……。
何処からともなく現れたセラフィックボムを周囲にパタパタさせておくよ。

フライトドローンを足場にしたりで動き回りつつ接近。
天使爆弾をむんずと掴んで喰らわせてやる……
爆破技能にはそれなりの自信があるんだ……昇天しな!

……逃げるというなら追いはしないが……どうする?


ベアトリス・リュウフワ
乗り気であろうがなかろうが、お前たちがわたくしの前に立つのならば、すなわち敵です。
我が目に映った時点で、お前たちに命運はございませんわ。

わたくしのような、単独で戦力を有する剣士が、統率のとれた存在相手に何ができるか――。
それはすなわち『陽動』と『攪乱』でございます。
自らの身体能力を活かして敢えて突っ込み、敵陣で暴れてしまえば良いのです。

さて、敵は一撃離脱戦法で向かってくる模様。
これが遠距離攻撃ならば厄介だったかもしれませんが、あいにく近接戦のようです。
ならば近づいた瞬間に此方もパラドクスを発動し、敵陣に風穴を空けましょう。
そのまま剣を振るい踊るように戦いながら、搔き乱しますわよ。


奴崎・娑婆蔵
●WIZ



さすがに頭数が多くていやがる
ではこちらも手数を出すと致しやしょうか

そら、八ツ裂きにしてみなせえよ
ただしここは等活地獄
半端な打ち込みでは、逆に亡者が雲霞の如くに湧き出しやすぜェ?


・敵布陣とこちらに向く銃口とを観察
・敵は集団で弾幕と一撃離脱戦法とを併用するというならば、即ち「一撃」の為に個体が突出して来る軌跡とタイミングとには、援護射の射線や発砲の緩急は掛かるまい

・そのように踏まえ――【分割存在】発動
・まずは分身を一体のみ創出
・弾幕は分身と方角を分担しての迎撃と防御とでシノぎ、一撃を仕掛けに来た敵は、不意に増産する分身で斬り返す
・斬られたとて、それはそれでその切傷から分身を更に増産し継戦


●疾風怒濤のごとく
「「「ディアボロスを返り討ちにしろー!!」」」
 ダカダカダカ、と蹄の音を高らかに響かせ、ヴィエルジュ・キャヴァリエルの大群が横列を組んだ。
 堕落世界の中は頭がおかしくても、それを警備しているトループス級のほうはまともらしい。あるいは自動人形だからなのだろうか?(淫魔に対する風評被害)

「おや、向こうはもうやる気みたいだね。どこかの誰かが先陣を切ったおかげかな?」
 真紅堂・乎乎那(埋火の魔創剣士・g02399)はウクレレ(※堕落世界に囚われた人たちを説得するために使った)を片付けつつ、フフンとクールに微笑んだ。
 そう、本来の彼女はどちらかというと、こういうクールでしかしハイな感じのカッコいいディアボロスなのだ。
 ……そのはずですよね? 間違ってないですよね??
「熱中しすぎて、なにかでたらめな巨人が憑依したような気がしますが……いけませんね、戦闘も大事です! こうなったら、皆さんにアートの力を見せてあげましょう!」
 ぐっと拳を握りしめ、吉音・宮美(限界ギリギリ狐娘・g06261)もやる気だ。アートは爆発なのだ。
「オーケィ、つまり、演奏(や)ったあとは、闘(や)る……そういうことだね」
 乎乎那もやる気だ。あれっ? カッコいいように見えるけど、よく見ると何言ってるんだろう??

「何がそういうことなのか、皆目見当もつきませんわ。もしかして堕落の誘惑の影響が残ってるんですの……??」
 遅れて駆けつけたベアトリス・リュウフワ(高慢たる剣・g04591)は、乎乎那の台詞がなにかうまいこといっているようでやっぱり意味不明なので、ちょっと困惑した。
「考えるな、感じろってやつでさァ。しかしさすがに、向こうも頭数が多くていやがる」
 トンカラトンの呪い(洗脳ともいう)で人々を説得(?)し終えた奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)もシリアスモード……もとい、三度の飯より大好きな戦闘モードに入っていた。
「おのれディアボロスども! 言っておくが我々は、あのヘンテコな堕落空間と違って真面目に闘うぞ!」
「自分で言うんですのね。まあ、真面目であろうがなかろうが、お前たちがわたくしの前に立つならば、すなわち敵です」
 我が目に入った時点で、命運はなし。ベアトリスはいつも通りの表情で髪をかきあげ、冷然と宣言した。
「そこまで言うなら、そら、あっしらを八ツ裂きにしてみなせえよ。半端な打ち込みするんじゃ、逆効果でやすがねェ」
 娑婆蔵の身体から、陽炎めいた禍々しい殺意が立ち上る。ふたりの挑発に対し、敵は一気呵成の突撃を仕掛けた!

 とまあ空気がまったく違うものの、必然的に肩を並べて闘うことになった4人。
「なんか色々違いすぎませんか!? あっ、でも頼りになりそうですね! お力をお借りします!」
 実はクロノヴェーダ相手でも、あまり直接的な殺生をしたくはないらしい宮美は、これ幸いとばかりに仲間を頼ることにした。
 まず宮美が魔楽器に氷の魔力を込め、素早く演奏する。すると、聴衆の『感覚』を凍結させる不思議な旋律が、まるで見えない網のように敵集団を絡め取った!
「うっ!?」
 ヴィエルジュ・キャヴァリエルは、己の突撃の勢いでぐるりと横転、あるいは平衡感覚を失ったせいで仲間と激突し、混乱に陥る。
 なまじ機動力があるぶん、突然感覚を奪われれば逆に大混乱というわけだ。己の力が己を滅ぼす……敵の力を利用した、見事な妨害といえるだろう。
「このまま、皆さんを捕縛します! 堕落空間に囚われた人たちが脱出する時間稼ぎになれば……!」
「くっ、やるなディアボロス! だが我々はまだまだいるぞ!」
 動きを止められた仲間を飛び越え、さらなるヴィエルジュ・キャヴァリエルの突撃!
「こちらもひとりではありませんわよ? その出鼻、くじいて差し上げますわ」
 そこにベアトリスが割り込み、まるで踊るような剣舞で敵を撹乱し、黒の瘴気を纏いながら跳躍、ついで爆発的急降下!
 バンカーバスターじみた勢いの刺突が地面に突き刺さると、ズドォン!! と強烈な衝撃が放射状に吹き荒れ、敵集団のど真ん中に風穴を開けた!
「グワーッ!?」
「わたくしのような単独の剣士が、お前たちのような集団に出来ること。それは、撹乱と陽動ですわ。まんまとひっかかってくれましたわね?」
「お、おのれ……ならば弾幕を張って……!」
 劣勢を感じ取った敵集団は、弾幕を布石にしての一撃離脱戦法により、数の利でディアボロスの体力を削ろうとする。しかし!

 その弾幕を受け止めたのは、娑婆蔵が魂の分割によって生み出した、実体ある分身の斬撃だった。
「なっ!? 増えただと!?」
「八ツ裂きにしてやりまさァ」
 分身を飛び越えた娑婆蔵の斬撃が、慌てて突出したヴィエルジュ・キャヴァリエルをたやすく斬殺。これぞ、娑婆蔵のパラドクス『分割存在(ブレイズ)』だ。
「言ったでやしょう? 半端な打ち込みァ逆効果ですぜ。なにせここは、等活地獄でさァ」
 快進撃が始まる。それに続くのは乎乎那だ!
「さて、お仕事の時間だ。全員まとめて、昇天しな!」
 パタパタと周囲を飛ぶセラフィックボムが敵を巻き込み、大爆発!
 たちまち騎馬軍団は壊滅し、ディアボロスたちの活路が開かれた。まさしく疾風怒濤である……!
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【照明】LV2が発生!
【避難勧告】LV1が発生!
【強運の加護】がLV2になった!
効果2【反撃アップ】がLV2になった!
【ガードアップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】がLV4になった!
【リザレクション】がLV2になった!

吉音・宮美
アドリブ・連携歓迎
自動人形の方だったので感覚攻撃したら思ったより感情豊かでした……悪いことしたなあ
ですがその反省を糧に次は心を掴む【アート】を!
貴方が見せたものを、貴方に返しましょう!

選択PDを【演奏】
先程作り上げた夏の曲を相手の【情報収集】しより彼女の心に刺さるような歌詞に【高速詠唱】でチューニングして【歌唱】
一夏の思い出と過ぎ行く季節の寂しさ、それらを思い出に未来へと進む希望の感情で相手の心を【浄化】して無力化しましょう

これで殺さずに決着がつければ良いですが……そこは流れ次第ですね


●夏はまだ、終わらない
「くっ、堕落空間はおろか、トループス級まで倒されるとは……おのれ、ディアボロス!」
 ポーリーヌ・ボナパルトは扇をバチンと閉じると、それをぐっと握りしめて拳を震わせた。
 敬愛する兄……少なくともこのポーリーヌ・ボナパルトにとってはそういう認識である……の邪魔をするディアボロスは、見逃せる存在ではない。
 なんとしてでも、ここで始末しなければ。双眸に殺意が燃えていた。

 自動人形という名の割に滾るその感情の色を見た吉音・宮美(限界ギリギリ狐娘・g06261)は、困った顔をした。
「自動人形の方は、思ったより感情豊かなのですね……さっきの方々にも、悪いことしたなあ」
 クロノヴェーダ相手でも慈悲の心を忘れないのは、宮美の弱点でありいいところでもある。
 戦うこと自体を避けようとしないことが、彼女の優しさがただの欺瞞や逃避でないことの証左だ。
「ですが、私は反省しました。あなたが見せたものを、あなたにお返ししましょう。心を掴む、私のアートで!」
「私の心を掴む? そんなこと、出来るわけが……」
「いいえ、出来ます! ひと夏の思い出、そして過ぎゆく季節の寂しさは、自動人形だろうと同じでしょうから!」
 宮美は魔楽器を激しく奏でた! 爪弾く旋律は同じ。しかし魂のすべてを込めた演奏は、たとえリズムや拍子が同じでも、聴かせる相手に合わせてチューニングされたまったく異なる、それぞれが至高の一曲となる!
「そ、その旋律は!?」
「遠ざかる蝉の声、近づくコオロギの合奏……夏は終わり秋が訪れ、すべては思い出に……!」
 偽りの愛の言葉で宮美の心を縛ろうとしたポーリーヌ・ボナパルトは、思わず動きを止めてしまった。
「けれど私は前に進む! 冬が終わり春が訪れれば、また次の夏が来る! 何度だって、いつまでも!」
「……!」
「そして私たちは大人になるのです! ほろ苦く甘酸っぱい思い出を連れて、未来へ~!」
「や、やめなさい! ノスタルジーを刺激しないで! アアアアーッ!」
 ポーリーヌ・ボナパルトは苦しんだ! 郷愁を糧にそれでも未来に進もうとする前向きさで心が浄化されていく!
 裏を返すと「もっと大人になろうよ」的なメッセージに読み取れるわけで、ブラコン気取りの自動人形には別の意味で大ダメージだった。悶え苦しむポーリーヌ!
「あれっ、なんか予想したのと違う感じに効いてますね? あれぇ!?」
 でもまあいいか、ダメージは入ったし。宮美はポジティブに考えた。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【ハウスキーパー】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!

ロキシア・グロスビーク
アドリブ連携ご自由に

当初はお友達を誘ってこの任務に行こうかなとか思ってたんだ
ほら、まめのきなこさんの看板の
でもお星さまの都合とか相手が忙しいんじゃないかとか
そういう気持ちを抱えてたらいつの間にか進んでて
まあ悩んでる間に一緒にナイトプールとかキャンプファイヤーしたんだけども
タイミング逃すと悔しいものは悔しいんだ

今から僕はそういうやるせない気持ちをきみにぶつけるわけなんだけど
いいかな。いいよね
兄とそういうことしたことないのに?
そりゃご愁傷さま(魔槍を構えて)
相手のパラドクスに捩じ込むように障壁張って【ダッシュ】。ぐさーっとね

【残像】伴うステップや虚飾の袖から取り出した魔力障壁で反撃にも備えとこっと


●何事にもありますよねタイミングというものが
「僕はさ、本当なら友達と一緒に来るつもりだったんだ」
「は??」
 現れるなりなんか語り始めたロキシア・グロスビーク(啄む嘴・g07258)に、ポーリーヌ・ボナパルトは面食らった。
「でもさ、ほら……遊びに行くわけじゃないし、いくらこんなトンチキな罠とはいえ、任務は任務でしょう?」
「トンチキは余計よ!」
「だからこう、忙しいかなー大丈夫かなーと思ってたら、誘いあぐねてさ。結局ひとりで来たんだよね」
「知らないわよ!?」
「まあそれはそれとして、ナイトプールとかキャンプファイヤーとか、夏の思い出は作ってあるんだけどね」
「だから知らないわよ!?」
 なんだこれ。私は何を聞かされているんだ。ポーリーヌ・ボナパルトは困惑した。
 ロキシアがどこの誰とつるんでいようが彼女には関係ない。だって、ディアボロスとクロノヴェーダは敵同士である。
 そもそも、自分が真面目に守ってるエリアに、なんかピクニックみてえなノリでこられてもすげえ困るのだ!

 え? ピクニックの行楽地よりふざけた場所なんだからいいだろって? それはそう。
「とにかく僕は、ちょっとやるせない気持ちを抱いていてね。それを今からきみにぶつけるわけなんだけど」
「え!? なんで!??!」
「いいかな。いいよね?」
「いいわけがないでしょう!?」
 よしわかった、こいつ殺そう。ポーリーヌ・ボナパルトは考え直し、隠し刃を展開しながら舞踏の如き攻撃を仕掛けた!
「そもそも私は! 兄と夏らしいことなんてしたことがないのよーッ!」
 あっ! ちょっと八つ当たりも入ってた! 妹(だと思いこんでいるやべークロノヴェーダ)にも羨望があったんだね!
「そりゃご愁傷さま。まあ、僕はナイトプールもキャンプファイヤーもしたんだけどね」
「おのれグワーッ!?」
 だがロキシアのチャージのほうが疾い! 勇気、決意、そして満たされた者特有の上から目線と心の広さが炸裂だ!
 魚雷のごとき勢いのチャージを受け、ポーリーヌ・ボナパルトは反撃を吹き飛ばされて弓なりに飛んでいった!
「夏なんだから、思い出を作らないと損だよね。かわいそう」
 ロキシアはリア充だった。おのれリア充!
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【水中適応】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV4になった!

白水・蛍
アドリブ・連携歓迎

また、暴れまわってますね……いいぞもっとやれ。とぼそりと呟きつつ。

……さてと、後はあなたですね。ポーリーヌとやら。
貴女が刃というなら私は銃です。
銃口を全てあなたに向けて全弾発射。
パラドクスであなたに打ち据えますわよ。
優雅に、全て、撃ち抜いてあげますわ。
その刃も全て破壊してあげます。

悔やむなら此処にきた事を悔やみなさい。


●暴れられる側の気持ちにも……なる必要はない? そうですね
「ぐっ……なん、なの……このふざけたディアボロスどもは……!」
 ポーリーヌ・ボナパルトはボロボロになりながらも、気丈に立ち上がった。プライドと、あと理不尽に対する怒りで。
 字面はとてもかっこよく、まるでディアボロスと対になるライバルキャラみたいなようにも思えなくもないが、今現在彼女を襲っている理不尽はギャグ補正という名の世界の不条理であり、ついでに言うともともと圧制敷いたり好き放題してるのはこいつらなので、別にかわいそうではなかった。現実は非情だ。
「まだ立ち上がりますか、ポーリーヌとやら。そこで倒れておけばいいものを」
 白水・蛍(鼓舞する詩歌・g01398)は冷たい目で敵を見下ろし、嘆息まじりに言った。
「これ以上立ち上がったところで、あなたは好き放題暴れるディアボロスの皆さんにボコボコにされ、面白おかしく散るだけですよ?」
「まるで確定した未来のように言わないでくれますこと!? っていうか、せめて真面目に戦いなさいよ真面目に!!」
「いやまあ、私はもともとそのつもりですが……」
 とか言いつつも、心のなかでは「いいぞもっとやれ」とか考えている蛍だ。別に仲間たちを止めるつもりはなかった。
 クロノヴェーダ殺すべし、慈悲はない。それもまた、ディアボロスとしての正しき怒りの証左……で、いいのかなあこれは!?

 何はともあれ、ポーリーヌ・ボナパルトは気丈な自動人形なので、ここで終わるつもりはなかった。
「せめて、お前の首だけでも……死になさいッ!」
 隠し刃を展開し、蛍に襲いかかる。自らを舞い踊る刃とした、激しく危険な死の舞踏!
「あなたが刃だというのなら、私は銃です。降りしきる雨の如き我が音にて、あなたのすべてを――」
 音が魔力によって現実化し、蛍の周囲に無数の銃となって召喚された。銃口から放たれるのもまた、音の弾丸だ!
「優雅に、すべて、撃ち抜いてあげますわ!」
「なっ!?」
 音の弾幕がポーリーヌを迎え撃つ! その身をつんざく音の雨。死角などない一斉砲火の前には、反撃など不可能!
「きゃああああ……っ!? こ、これほどの、力が……!?」
「悔やむなら、此処に来たことを悔やみなさい。あと、こんな場所に配属されたことも恨むべきですね」
 再び倒れ伏すポーリーヌを一瞥もせず、蛍は優雅に、華麗に見得を切った。真に強き者は、ネタもシリアスも自在にこなすことが出来るのだ!
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!

ベアトリス・リュウフワ
※アドリブ歓迎

……今度こそ真面目な雰囲気ですわよね??
いえ、おそらく、間違いなくそのはず。ええ、きっとそうですわ。

ともかく、戦闘が発生する以上、どんな空気感になったとしても、わたくしは己のできることをこなしましょう。

斬首の攻撃ですか。なるほど。
つまりそれは、わたくしの首元に向かってくる攻撃なのですわね?
ギロチンと称しているくらいなのですから、真上から降ってくるのでしょうか。しっかりと観察と、即座の対応を。できれば回避したいところですわね。防御しきれなかったときのリスクが高すぎます。

刃を掻い潜るようにして躱し、そのまま敵の懐へ。
息すらつかせぬ連撃で、始末いたしましょう。


奴崎・娑婆蔵
●POW



ギロチンだァ~~~?
なってねえなァ、お嬢さん
お前さんの斬首にゃ心が無ェ、愛が無ェ、そして何より技が無ェ!
(【オーラ操作】で首へ鋼鉄パワーを込め、ギロチンにレジストして見せたりして)

そいつは確かに、誰が誰の頸を落とすのも淀みなく行く、機能美の極やもしれやせん
が――自ら命を摘む手応えを知らずして何が処刑の音頭取りか!

おう、あっしがサムライの介錯剣ってモンを教えてやりまさァ
ちょいとこの刀ァ持ってみなせえ
よござんすか、海向こうにゃァこのような拵えの剣を以って首を皮一枚残して落とす絶技の使い手が――

…………。

オラァ剣触りやしたね!
そいつはあっし以外が触れるとやべえ妖刀でさァ!(【呪詛】をキメる)


●真面目な雰囲気なんてもの、うちにはないよ……(イタリア料理人の顔)
「……おかしいですわ」
 ベアトリス・リュウフワ(高慢たる剣・g04591)は深刻な面持ちで呟いた。
「いかがいたしやした、ベアトリスのお嬢?」
 そんなベアトリスの様子を、奴崎・娑婆蔵(月下の剣鬼・g01933)が気遣う。キコキコキコ。
「いえ、なぜだかわからないのですけれど、最後の戦いだというのに妙に気が抜けるというか……あの、ところで組長、なんでまだ自転車に乗ったままなんですの??」
 ベアトリス、よせばいいのにツッコミを入れてしまう。なぜなら彼女は比較的真面目なタイプの女子だから!
「カハハ、こいつは異なことを聞くモンだ。あっしが自転車に乗るのは、鳥が空を飛び魚が河を泳ぐのと同じようなことですぜ(キコキコキコ)」
「なんでちょっと漢詩っぽいことを仰るんですの???」
 何もかもがおかしいのだが、まあ娑婆蔵が戦場にチャリで来た。するのはいまさらなので、そこはどうでもいいベアトリスだった。

 ところで、そのディアボロスたちにこてんぱんにされているポーリーヌ・ボナパルトのほうはというと。
「気が抜けそうでイライラしてるのはこっちよーッ!!」
 ブチギレていた! なぜならこいつもこいつでシリアスに戦えるもんなら戦いたかったから!
「私は! 真面目に!! 仕事をしているのよ!!! それを、それを貴様らは!!!」
「ベアトリスのお嬢、奴さんはやる気みてェだ。油断はいけやせんぜ!(キコキコキコ)」
「あまりにも言いたいことがありすぎて逆にスッキリしてきましたわ」
 ベアトリスは様々な事象を頭の片隅に追いやることにした。時として見て見ぬふりこそが正解なこともある。
「お兄様に代わり! 貴様らを斬首刑に処してくれる! 全員ギロチンにかけてやるわッ!!」
 ポーリーヌ・ボナパルトは悪鬼の如き形相で吠えた! ベアトリスと娑婆蔵は表情を引き締め身構える! キコキコキコ!
(「どんな空気感になったとしても、わたくしは己のできることをこなすだけですわ……!」)
 ベアトリスは健気だった。はたして、いまだかつて彼女がここまで(戦闘とは別の意味で)追い詰められたことはあっただろうか!?

 まあそれはさておき、戦いであるからにはパラドクスによる攻撃は当然致命的な部位を狙って襲いかかる。
 超常的な力で召喚、あるいは生成されたと思しき肉厚のギロチン! まともに喰らえばディアボロスとて斬首惨殺必至!
「ギロチンだァ~~~? なってねえなァ、お嬢さん!」
「なんですって!?」
 だが、見よ! 娑婆蔵はキコキコと土煙をあげながら爆走!
「お前さんの斬首にゃ、心が無ェ、愛が無ェ、そしてなにより――」
 同時にベアトリス! ふたりの剣がバツ字を描くと、肉厚のギロチンが……おお、砕け散ったではないか!
「なっ、馬鹿な!?」
「そう、何よりも技が足りませんわね」
 ふわりと黒髪をなびかせ、ベアトリスは笑う。技巧を凝らし息を合わせれば、巨大な処刑刃とて砕け散る。これが剣鬼と剣姫の技なのだ!
「わ、私のギロチンが! ああ、なんてこと……この世の何よりも美しい処刑美の極が……!」
「ハッ、お笑い草でさァ。自ら命を摘む手応えを知らずして、何が処刑の音頭取りか!」
 娑婆蔵が迫る! キコキコキコ!
「おう、あっしがサムライの介錯剣ってモンを教えてやりまさァ。ほらこの刀ァ、ちょいと持ってみなせえ」
「まあ、これがサムライソード? これもこれでなかなか機能美が」
「オラァ剣触りやしたね! そいつはあっし以外が触れるとやべえ妖刀でさァ!」
「グワーッ!?」
「ちょっと待ってくださいませんこと!?!?」
 ベアトリス、あまりにも言いたいことが増えた! だがもう致命の間合いなので彼女は色々言いたいことを諦めた!
「こうなったら、最後ぐらいはわたくしらしく行きますわ! 沈黙のまま……消えなさいッ!」
 激情の連撃が、嵐のごとくポーリーヌを襲う。剣! 拳! 足! 膝・肘の使用も厭わぬ連打、連打、連打だ!
「がはッ!?」
「断末魔さえも赦しませんわ。ただ黙って……散れ」
 ざんばらに乱れた黒髪の向こう、悪鬼の如き声が滲んだ。ポーリーヌはそれを畏れ、彼女を恐れ、そして恐怖とともに砕け散る。
 風がその残骸を吹き消せば、そこにいるのは瀟洒なご令嬢。浮かべるのは優雅なる微笑みである。
「まあ、ざっとこんなところですわね」
「さすがはベアトリスのお嬢でさァ。夏の終わりのそよ風みてェな爽やかな決着でやしたぜェ!」
 キコキコキコ。娑婆蔵は最後まで自転車をエア運転していた。エア運転って何??
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【飛翔】がLV3になった!
【隔離眼】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】がLV3になった!
【命中アップ】がLV4になった!

最終結果:成功

完成日2022年09月21日