魅惑? の凍結乾燥じゃがいも(作者 質種剰)
#吸血ロマノフ王朝
#吸血ロマノフ王朝、農奴解放作戦
#人間狩り
⊕
●畑地獄
吸血ロマノフ王朝。
暦の上では夏真っ盛りでも寒空は白くぼやけて、太陽も果たして昇っているのかどうか存在感の薄いこと限りない。
そんな真冬同然の極寒に耐えながら、今日も今日とて農奴たちは、畑の収穫に励む。
「はぁ、疲れた……」
「ほらほら、休んでる暇はねぇよ。芋を全部掘らないと次の種芋を植えらんねぇんだから」
畑の畝の上でへばりこんだ同輩を叱咤する農奴もまた、疲労困憊で頬がこけていた。
彼らは皆、生かさず殺さずとでも言うべき少ない賃金で領主のヴァンパイアノーブルにこき使われているのだ。
吸血ロマノフ王朝が発見されてからというもの、一般人——ほとんど奴隷同然の領民だが——の食糧問題はずっとつき纏っている。
だが、今現在農奴たちが耕している畑は、たったの一週間でじゃがいもが収穫できる、夢のような畑だ。
それもそのはず、このだだっ広いじゃがいも農園自体が、クロノ・オブジェクト化されているのだ。
「シベリアに帰りたいなぁ……」
別の農奴がぽつりと零す。
幾ら収穫速度が数倍になっても、無理やり休みなく働かされている農奴たち、しかも件の『人間狩り』の犠牲者たちだ。
畝も畦道も凍てついた畑でやっぱり凍りついたじゃがいもを掘り出すのへ、やり甲斐を感じられるはずもない。
そして、哀しい哉、じゃがいもは凍るとマズい。
これが現代ならマズくならないように解凍する方法もあるのだが、農奴たちに許された調理法など少なく、時代ゆえに設備も圧倒的に足りない。
故に、農奴たちは美味しくないじゃがいもを掘って、それを食べたとて満足感も得られず、だんだんと過労で死んでいく。
「シベリアに帰って美味しい芋が食べたい……」
と、彼らが嘆くのも無理はなかった。
●
「シベリアで行われていたヴァンパイアノーブルによる農奴狩りじゃが、お主らのおかげで阻止に成功したようじゃ」
ドーラ・ゲーヌシュカ(人間の思想家・g07158)が、集まったディアボロスたちへ向けて説明を始める。
「さらには、攻略旅団の提案による調査で、農奴が連れ去られて働かされている農場も特定することが出来た」
この農場で働かされている農奴たちを救出し、生まれ故郷であるシベリアの大地へと帰還させてあげるのが今回の目的だ。
「農奴が働かされている農場では、クロノヴェーダによって農作物の成長が早められていてのう。なんでも蒔いた種が僅か1週間で収穫できるようなハイペースで農作業が行われているのじゃ」
これ即ち、農奴たちは普通の農民が数カ月で行うような農作業を、1週間で行わされていることになる。
「ましてや翌週には次の作物を育て始めるのじゃから、当然休む暇とてなかろうな……」
そのせいで農奴たちは、まさしく絶望に支配されて全ての希望を失い、逃げ出そうという気概までも失くしているようだ。
「ヴァンパイアノーブルに従属させられた農奴たちが過酷な状況で農作業に従事する——それが農作物の育成を早めるクロノ・オブジェクトのエネルギー源となっているのじゃから、全くもって悪循環じゃのう」
本来ならば、そんな負の永久機関を構築した農場主たるアヴァタール級クロノヴェーダを撃破する必要があるのだが。
折しも、時はラスプーチンとの会談直後。
「ラスプーチンがこちらの意図を理解するのは難しかったようじゃが、戦わずに済む——戦力を温存できるなら配下の撤退も辞さぬようじゃ。故に、配下のアヴァタール級へラスプーチンの意向を伝えれば撤退してくれようぞ」
後は、収穫物を各地に運ぶべく用意された列車を利用して、農奴たちをシベリアへ送り届けてあげて欲しい。
「収穫された農作物も一緒に運んであげれば、元の生活へ戻るまでの間の当座の食料などに利用するじゃろう……ま、見飽きているやもしれぬがな」
ドーラの説明は続く。
「この農場には、収穫物を輸送するために『蒸気機関車』が週に一度やってくるらしいのじゃ」
そこにタイミングを合わせて農場を解放することで、『蒸気機関車を利用して、農奴達をシベリアに帰還させる』ことができるだろう。
「『蒸気機関車』は、クロノヴェーダが操っているので、一般人の機関士などはいないようじゃのう」
農場では農奴達が農作物の収穫をさせられている。
彼らを監視して働きの悪い者に鞭を打つなどの虐待をしているトループス級クロノヴェーダと、農場主であるアヴァタール級を戦闘で撃破、あるいは撤退を促し、農奴の解放を行ってほしい。
「自分たちを支配してきたクロノヴェーダを退ける者が存在する事実は、農奴たちの希望を蘇らせる契機になると良いのう」
敵の撃破後は、農作業を手伝って収穫を終わらせ、収穫物を列車に積んでシベリアへ向かうと良い。
「農場から繋がる線路は、シベリア鉄道に繋がっているので、直通でシベリアに向かうことができよう」
ディアボロスの活躍によってシベリア方面の鉄道は運行が止まっているため、比較的安全に農奴たちの故郷へ向かえるはずだ。
「彼らが再び平和な暮らしを送れるように、手助けしてあげて欲しいのじゃ。よろしく頼み申す」
ドーラはそう説明を締め括って、彼なりにディアボロスたちを激励した。
「農奴の農場を潰すことで、吸血ロマノフ王朝の支配を大きく揺るがすことができるじゃろう。皆の活躍を期待しておるぞ」
●味音痴少女
広大なじゃがいも農場。
日に日に数を減らしていく農奴たちを、見目麗しい青年の姿をしたトループス級『血の記述者』が常に監視、監督していた。
疲れ果てた彼らが少しでも休憩しようものなら、
「手を止めるな! せっかく一週間で収穫できる畑の利点を不意にする気か!」
「収穫物を運ぶ列車がもうすぐ来るぞ。死ぬまで働け!」
と頭ごなしにどやしつけ、頻繁に手や足も出ている有り様だ。
「ふふん、奴隷をこき使いながら食べるじゃがいもは最高ね」
そして、血の記述者に虐げられている農奴たちを眺めて愉悦を感じているのが、農場主たるアヴァタール級クロノヴェーダ『真昼の白乙女・ポルードニツァ』。
長い灰色の髪に白い肌、華奢な体と本来なら美少女に入るはずの彼女だが、歪んだ内面が人相に表れてしまっている。
農奴をこき使って熱中症にさせる悪辣な趣味のせいであろう。
ばりぼりばりばり。
「あー美味しい。飢えた農奴の目の前で食べるじゃがいもは美味しいわ~」
楽しそうにじゃがいもを貪るボルードニツァ。
……農奴とて、直火で焼きもしていない凍ったままのじゃがいもを羨ましいとは思わないだろうが、ボルードニツァは主人と奴隷という関係性ゆえのマウントを取れて大満足のようだ。
農奴を使い潰す外道の所業も許し難いが、それとは別に彼女の味覚は大いに疑問である。
リプレイ
嵐柴・暁翔
どうせヴァンパイアノーブル達は農奴達の顔なんて覚えていないだろうからしれっと収穫作業に混ざって手伝っておきます
他の方々と違って窶れていないけど突っ込まれても最近連れてこられたとでも言えば誤魔化せるだろうしな
流石に俺の目の前で農奴の方々に倒れられるのは気分が悪いので具合が悪そうな方がいれば作業や懲罰を代わったりしておきます
パラドクスでもない殴打や鞭打ちでどうにかなる筈もないしな
後でする仕返しを楽しみに笑顔で耐えます
ついでにじゃがいもを貪ってマウントを取られるのが鬱陶しいので持ち込んだゼフィールやパスチラをこっそりと食べつつ【口福の伝道者】で増やして農奴達にも密かに配り内心でマウントを取り返します
●対抗意識
吸血ロマノフ王朝、クロノ・オブジェクト化されたじゃがいも農場。
(「どうせヴァンパイアノーブル達は農奴達の顔なんて覚えていないだろうからな……」)
至極尤もな想像をしつつ、しれっと収穫作業に混ざっているのは嵐柴・暁翔(ニュートラルヒーロー・g00931)。
(「他の方々と違って窶れていないけど、突っ込まれても最近連れてこられたとでも言えば誤魔化せるだろうしな」)
そんな自信もあってか、土へ突き入れる鍬やじゃがいもを抱える手は力強い。
事実、血の記述者は暁翔の——他の疲弊した農奴と比べて——秀でた体力に目をつけたようだが、恐らく収穫作業の進捗が何より大事と見えて誰何されたりはしなかった。
「元気な兄さんだな……」
「夜や明日に体力残さなくて大丈夫か……?」
農奴たちは暁翔の働きっぷりへ半ば茫然とした様子で、芋掘りの手も止まりがちに見守っている。期せずして彼らへ休憩時間を与えているかもしれない。
それでも、
「貴様、倒れている暇など無いぞ! 列車の到着時刻が迫ってるんだ!」
血の記述者が農奴の1人へ鞭を振るおうとした時は、
「そのまま打ち続ければ死ぬだけだ。労働力を無闇に減らすのは得策では無いし、人間は自分の苦痛よりも『自分の代わりに他人が虐げられている』時の方が絶望するものだけど?」
2人の間に割って入って、農奴の代わりに懲罰を受けたいと申し出た。
(「流石に俺の目の前で農奴の方々に倒れられるのは気分が悪いしな……」)
絶望云々と現場監督を納得させるための詭弁をこねても、その実は純粋に農奴たちを助けたい優しさゆえの行動である。
「奴隷に指図する謂れは無い!」
口では暁翔の意見を撥ねつけた血の記述者だが、確実に鞭は暁翔の身体だけを捉えている。
農奴風情が上申した策を、素直に採用するとは言いたくないのだろう。
後で必ず仕返ししようと決意して、それを楽しみに笑顔で耐える暁翔だ。
懲罰もさほど長時間では無い。鞭打つ時間すら労働に回したいぐらい農奴の数は不足の一途を辿っているからだ。
「大丈夫か?」
芋を掘る手は休めずに他の農奴が声をかけてくる。こちらをちらちら視線で伺ってくるのも数人いる。
「心配無い」
暁翔はそう応えるついでに、ちょいちょいと彼らを手招きして、ゼフィールやパスチラを配り始めた。
暗澹たる有様の農奴への配給だが、作業の最中でも食事は禁止されていない。
農作業のエネルギー源が食事だとはヴァンパイアノーブルたちも理解しているし、最低限働けるだけの栄養は摂っても構わないらしい。
あくまで奴らの目的は生かさず殺さず、常に飢えと絶望さえ味合わせられればそれで良いのだろう。
暁翔は、そんな農場主が自分だけじゃがいもを貪り食うマウント取りへ反発して、農奴たちにお菓子を振る舞うことを思いついた。
口幅の伝導者でそっくりそのまま増やせる数は多く、自分が食べる分さえ持ち込めば良い手軽さも嬉しい。
ちなみにゼフィールとパスチラとはロシアでメジャーなお菓子である。
パスチラはりんごと様々なベリーを混ぜた焼き菓子で、ゼフィールはそこから派生して、卵白と果物のピューレを泡立てたふわふわした食感のお菓子だ。
「良いのかい? 沢山もらっちまって」
「ありがとよ兄ちゃん。大事に食べるよ」
「あんたも攫われてきただろうに、よくこんなに持ってたね」
それらの数をこっそりと増やして農奴たちへ配ってあげると、暁翔は内心密かに満足するのだった。
マウントは心の中だけで取り返すに限る、と。
大成功🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
テラ・ウィンディア
事前
バターとかお醤油を可能なら用意
…一週間で取れるとかすごく便利だけどこれじゃ地獄すぎるよな…
と言う訳でおれも手伝うぞ!
ジャガイモの収穫を行いながらジャガイモの状態と性質を分析
本来なら美味しいのに皆辛そうだな…
【勇気】
鞭打ちは我慢するぞ
痛いのは嫌だけど
今は耐え
【料理・連続魔法・口福の伝道者】
流石に大規模にはできないだろうから取り合えず簡単に…こそっと炎の魔法
熱量を調節してほかほかジャガイモを作り…切れ目にバターを乗せて…ジャガバタ用意
これを増やして農奴の人達にも配るぞ!
ちょっとした工夫でどんなのだって美味しく作れるんだ
…調味料って本当に偉大だな
バター醤油さえあれば石さえ食べれるって噂だし…
●至福のひととき
続いて。
「……一週間で獲れるとかすごく便利だけど、これじゃ地獄すぎるよな……」
テラ・ウィンディア(炎玉の撃竜騎士・g05848)は、休む暇もなく働かされている農奴たちを見て、やる気満々に腕まくりをした。
「と言う訳でおれも手伝うぞ!」
厚い霜の降りた畝の間でガチガチに凍りついたジャガイモを掘り進めながら、ジャガイモの状態を分析する。
(「本来なら美味しいのに皆辛そうだな……」)
じゃがいもを見て嘆息するテラ。
生育環境の悪さゆえの質の低下を感じ取ったからだ。
本当なら、0度に近い環境ではじゃがいもの中の澱粉質が糖に変わって甘みを倍増させるのだが、それは上手く育った芋の話。
最初から無理やり成長を早められ、ろくに肥料も与えられず、温度も常に氷点下、こんな環境ではそもそも芋自体が充分に栄養を蓄えられるはずもなく、糖度を増そうにも元の澱粉が足りない始末。
「凍るわけだよなー、じゃがいもなのに」
現代の冷凍庫で上手く保存したものなら火の通りも早くてさぞ美味しかろうに。
パチーン!!
テラの何度目かの溜め息は、農奴が鞭打たれる音で遮られた。
「あー、こほんっ、疲れ果てた農奴をぶったって痛がる気力も無いんだぞ! だからぶつなら元気なおれにしとけ! その方が周りの農奴は辛いんだ!」
さも当然とばかりに農奴を庇い立て、暁翔と同じように詭弁を弄してテラも自ら懲罰を受けるべく進み出た。
「さっきの新入りと言い、意見するのは腹立たしいが内容は従順だな……」
血の記述者は我先にと懲罰希望者が集まる異様さに困惑するものの、上司を悦ばせるためには断る選択肢が無いのだろう。
(「痛いのは嫌だけど、我慢我慢……」)
どことなく当惑気味で威力の落ちた鞭を受けて、テラは痛そうにグッと歯を食いしばって耐えるのだった。
「嬢ちゃん、いくら若いからって無茶するね」
「兄ちゃんも嬢ちゃんも、庇ってくれてありがとな」
農奴たちが口々に声をかけてきたが、懲罰さえ終わればテラに自然な笑顔が戻ってくる。
それというのも、ゴミを燃やすための焚き火に吊るした小鍋——蒸し器にすべく笊を逆さまに置いてある——の中で、今しもほかほかにふかしたジャガイモが完成するところだからだ。
「切れ目にバターを乗せて……っと」
テラが作っていたのはじゃがバター。最後に醤油を垂らすのがポイントだ。
「ちょっとした工夫でどんなのだって美味しく作れるんだ」
口の中が火傷しそうな幸福感に包まれて、じゃがバターを頬張るテラ。
「……調味料って本当に偉大だな」
食べ終わったら例の如く口福の伝道者でそれん増やして、農奴たちへお裾分けするのだった。
「バター醤油さえあれば石さえ食べれるって噂だし……」
「……食用の土は聞いた事があるけど、石って食べられるのか……?」
和やかなのかどうかわからない言葉を暁翔とも交わしつつ、まだまだ続く収穫のために英気を養うテラだ。
大成功🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】がLV2になった!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
穂村・夏輝
戦うことなく解決できるなら、それが1番さ
「しかし、数ヶ月かかる農作業を1週間で行える……連作もしているなら、畑も痩せてないって事だよね? なんかパラドクスの残留効果みたいな話だね」
【植物知識】でジャガイモの状態や畑の土などを畑の収穫を手伝いつつ調べてみる。クロノオブジェクトの効果が【植物活性】と同等のもの確認したい
「これで少しは緩和できるといいけど」
【寒冷適応】で農奴達が少しでも凍えずに済むようにします。そして、収穫後のジャガイモも『生物』の範疇に入ってくれるのであれば、凍らずに済むかな?そうであれば、ジャガイモ料理もマシなものが作れそう
「きっともうすぐ帰れるよ。美味しいもので元気を出そう」
●労働環境改善
一方。
「戦うことなく解決できるなら、それが一番さ」
穂村・夏輝(天使喰らいの復讐者・g02109)は農奴たちに混ざって収穫作業を進めながら、ぽつりと呟く。
「しかし、数ヶ月かかる農作業を1週間で行える……連作もしているなら、畑も痩せてないって事だよね?」
掘るついでに畑の土の様子をまじまじと観察する夏輝。
「なんかパラドクスの残留効果みたいな話だね」
実際、このクロノオブジェクト化した畑の効果は植物活性と同等と言って差し支えない。
とはいえ同等なのはあくまで効果の話で、同質では無いため、同等かどうか確証するよすがはこれと言って無さそうだ。
「これで少しは緩和できるといいけど」
そんな調査や分析も含めた収穫の傍ら、夏輝はこっそりと寒冷適応を発動させる。
農奴たちが少しでも凍えずに済めば、それだけ体力を温存できるからだ。
「あれ、なんかさっきよりも身体が暖かいような」
「寒さが無くなった……?」
徐々に寒さを感じなくなって驚く農奴たち。
ずっと快適な気温を感じていられるので、炬燵のように長時間入っているとのぼせてしまうことは無いのも嬉しい。
極寒の中、手の悴みやあかぎれが起こらないだけでも、農奴にしてみれば天国だろう。
「きっともうすぐ帰れるよ。美味しいもので元気を出そう」
一見すると線の細い美青年な夏輝だが、力仕事には自信があるのか、農奴たちを鼓舞するかのように率先して鍬を振るっている。
せめて心持ちだけでも男らしくありたいという彼の密かな悩みが、過酷な農作業でも精を出せる理由なのかもしれない。
「おー!」
それだけ覇気のある夏輝の発破と彼の作った胡椒たっぷりのポテトスープは、暁翔のお菓子やテラのじゃがバターと相まって、疲れ果てた農奴たちへ確かな活力を与えた。
大成功🔵🔵🔵
効果1【寒冷適応】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
穂村・夏輝
クロノオブジェクトの効果は生育速度も同じくらいな気はするし、【植物活性】の下位互換かな。植物活性は光や栄養を必要としないから、畑が痩せていても問題なかったんだけどね
農民が苦しめられた分、ある程度の意趣返しができればいいな
「もう無駄な農作業をしなくていいよ。撤退命令は出ているんだ」
さらに【植物知識】を交えてこき下ろすよ
「こんな痩せた土地で考えなしに芋を育てても意味がないよ。こんな芋なら受け取る側も迷惑だろうに」
ついでに自分の持っている『芋』🥔を投げ渡し、質の違いでもダメ出ししよう
「せっかく早く収穫できるようになっても、あんな質のものしか作れないなんて宝の持ち腐れだね」
●絶対命令
元々がだだっ広いじゃがいも畑だが、農奴たちの文字通り命を削った奮闘と、ディアボロスたちの働きによって、なんとか収穫を終えた。
「クロノオブジェクトの効果は生育速度も同じくらいな気はするし、植物活性の下位互換かな。植物活性は光や栄養を必要としないから、畑が痩せていても問題なかったんだけどね」
穂村・夏輝(天使喰らいの復讐者・g02109)が、収穫したじゃがいもを木箱へ詰めながら呟く。
「農民が苦しめられた分、ある程度の意趣返しができればいいな」
そんな決意と共にチラッと視線をやる先には、農奴を眺めながらじゃがいもを貪る真昼の白乙女・ポルードニツァの姿。
バリボリバリボリバリボリバリ。
「…………」
決して生の——否、生ですらない冷凍じゃがいもが旨い筈はないし羨ましくもないのだが、農奴たちが苦労して育てたじゃがいもを気ままに食い荒らすのはやはり許し難い。
夏輝はじゃがいもの箱詰めを終えてようやく、農場主へ声をかける。
「もう無駄な農作業をしなくていいよ。撤退命令は出ているんだ」
「え……撤退命令? 誰から?」
「怪僧ラスプーチンからだよ」
どうやら寝耳に水の展開だったらしく、ポルードニツァは面白いぐらい狼狽した。
「ええ~っ、ワタシの3食昼寝執事奴隷付きの自堕落な生活は~~??」
「知らんわ」
にべもなくツッコむ夏輝。
「大体さ、こんな痩せた土地で考えなしに芋を育てても意味がないよ。こんな芋なら受け取る側も迷惑だろうに」
さらに、豊富な植物知識を交えてこき下ろした。
「芋自体が凍るような糖度の低さは、まぁ時代と土地柄仕方ないにしても、この畑、もしかすると石灰肥料をやり過ぎてない?」
「やっちゃ駄目なの?」
「普通の畑なら入れるのが正解。ただじゃがいもは弱酸性の土を好むから元々のpHによっては苦土石灰を撒く必要ないんだよね」
「ぺー……はー? よくわかんない……ていうか、不味い芋だとしても、食べるの人間だし。美味しくしてやる必要無いし……でも、段々採れる芋が小さくなってきたから肥料足りないのかなって」
「それ連作障害……」
今更、どう足掻いても分かり合えないヴァンパイアノーブル——ひいてはクロノヴェーダの価値観をわざわざ糾弾する気はない。
だが、それでも夏輝はツッコまざるを得なかった。
「……いや、さっきキミも食べてたよね採れたばかりの芋。何、悪食なの?」
なんならこれと食べ比べてご覧よ。
と、自分の持っていた『芋』を投げ渡しもした。
「……! 何これ、甘い、美味しい
……!!」
ちなみにこの芋、産地はかの機械化ドイツ帝国だそうな。
「せっかく早く収穫できるようになっても、あんな質のものしか作れないなんて、宝の持ち腐れだね」
「う~……!」
ポルードニツァが悔しそうに地団駄を踏む。
「んもうっ、命令は絶対だし、ずっとサボってられるようなどうでも良い任地へ進んで来たのはワタシだから……悔しいけど今日のところは見逃してあげるわ!!」
そして、遂に捨て台詞を吐くと、血の記述者たちを従えて農場を後にするのだった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
穂村・夏輝
撤退要請は済ませた。あとは彼らを故郷へと連れていくだけだね。
「大丈夫かい? これで少しは動けるかな?」
熱中症や怪我などで【活性治癒】で治せそうなものは治し、動ける人員を少しでも増やす。
「彼等も、故郷へと連れて行きたいね」
農奴で亡くなってしまったものもいたならば、簡単に弔った後にせめて遺品だけでも持って行ってあげたい。丁重にしっかり弔うのは同郷の者達に任せよう。生きた同郷の者がいなかったりして帰れない人たちには『オラトリオフラワー』を供える
「これ以上犠牲を出さないよう俺たちのできることをやっていかないとね」
決意を新たに農奴達の帰還を手伝います。
●帰還
「次会った時はただじゃ置かないから! 覚えてらっしゃい!!」
「……サボるのが好きなんだったら、多分次も戦略的撤退を命じられるんじゃ……」
ポルードニツァは撤退要請を受け入れて退散していった。後はじゃがいもと農奴を列車へ積み込んで、故郷シベリアへ送り届けるだけだ。
「大丈夫かい? これで少しは動けるかな?」
穂村・夏輝(天使喰らいの復讐者・g02109)は、具合の悪そうな農奴たちの様子を見て回っている。
漏れなく疲労困憊している人々のために活性治癒を発動させて、自然治癒力の促進を狙ったのだ。
軽い熱中症や怪我ならば、列車で長く揺られている間に治るだろう。
「彼等も、故郷へと連れて行きたいね」
おもむろに呟いて見やるのは、過労死して野ざらしにされた農奴たち。
「疲れているところ悪いけど、故人について聞き取りをさせてね」
夏輝は農奴たちから話を聞いて、身元のわかる農奴については弔う前に選り分けた遺品を清めて列車へ載せる。
単独で攫われたり、同じ土地の者全員が亡くなってしまって故郷を特定出来ない者については、埋葬する際に『アンジェローザのオラトリオフラワー』を供えてあげた。
彼らの汗と涙と血の結晶であるじゃがいもを、鮮度や清潔さを守って運ぶためには、どうしても遺骸はこの場で弔わなければならない。
それだけ、無理やりに作らされているじゃがいもの、定期列車で運ぶ量が膨大なのだ。
「これ以上犠牲を出さないよう俺たちのできることをやっていかないとね」
決意を新たに自らも列車へ乗り込む夏輝。
「まさかシベリアに帰れるなんて」
「大して旨くはないけど、このじゃがいも、土産に持ってって良いかなぁ?」
農奴たちは、皆一様に走っている列車でしか見られない周りの景色を、楽しそうに眺めている。
気分ははしゃぎたくても、まだ休み始めたばかりの体力が追いついていないのか、力無く笑う者ばかりだ。
「良いんじゃない?」
彼らのお喋りに付き合う夏輝も、シベリアへの到着を心待ちにしていた。
大成功🔵🔵🔵
効果1【活性治癒】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!