リプレイ
月城・木綿紀
「師匠。どうすれば良い?」
戦場の洞窟を走り回りながら、自分の中にいる天使である師匠の指示を聞きながら金属糸や魔法糸を用いた即席の罠を片っ端から張っていく。そこら辺に生えている花なども利用して。
仕掛けた罠はスマホのマップでマーキングしラムを通じて仲間と共有。
直接戦闘は避けて逃げ回り敵が罠にはまっているところをパラドクスで一網打尽にする。
そこは青い花が咲き乱れる岩のドームだった。わずかな風に釣り鐘のような花たちが揺れ、淡い蒼の花粉がこぼれ低く小さな音が聞こえて消える。
「ここじゃない」
花の出す嫌な音が耳に残るような気がして、月城・木綿紀(月城家三女のメイドトラッパー・g00281)は身をひるがえす。薄い布越しに見る岩の花園に敵はいない。なんとなく花を突っ切るのはいやな気がして、木綿紀はドームの外周を伝って3時方向にある扉のない部屋の奥をそっとのぞいた。敵はなく行き止まりに石造りの花瓶と花があるだけだ。次はどうしようと木綿紀があたりを見渡すと、最初の場所の背後、6時方向にも横穴があった。ここを調べないものすっきりしない気がして木綿紀は来た道を戻る。
「出口?」
そこには一本道が続いていた。ダンジョンの出口を懸念しつつも進む。薄暗い道に敵の気配はないが木綿紀は手慣れた様子で2種類の糸を張り、簡単な罠を張る。場所はすぐにマーキングをして仲間と共有できるようにした。
「これで……!」
何かを感じて振り返った木綿紀の淡く紗が掛かった視界に黒く大きな体躯を誇る敵の姿が映る。
「……!」
言葉にならない圧倒的な敵意とともに敵が武器を振り上げ木綿紀に向かって突進してくる。
「ラム」
たくさんの言葉は要らない。木綿紀の意を酌むモーラット・コミュ『ラム』が敵に向かって走る。振り下ろされる敵の武骨な鈍器がコミュに当たるよりも速く、コミュの身体から強烈な電撃が放たれる。花火のような美しく苛烈な攻撃に敵の身体が焼かれ、その意志とは関係ない方向に倒れた。すぐに弱い反撃が木綿紀を襲う。十分に身構えてそれを受けるが敵からの攻撃はなく、前方でラムが問いかけるような顔で木綿紀を見ている。近づくと敵の姿はなかった。ラムの視線の先に扉がありゆっくりと閉まってゆく。扉の前には足ふきマットのような色の違う岩があった。重さにへこんでいたような岩は木綿紀の目の前でへこみが元通りになり、意を決して木綿紀が乗っても、ごくわずかにしか岩が沈まず扉も開かなかった。
成功🔵🔵🔴
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
西堂・千衛蔵
「腕が鳴るぜ」硬質の腕をガチャガチャ
強敵と戦えると聞いて来たが、毒とは厄介だ
戦う前にやられてもつまらないし、手拭いで鼻と口を覆って慎重に進もう
勿論、首に巻き付いてる相棒の赤煙にも同様にマスクさせる
……ん、どうした赤煙?
「空中を歩けば花への刺激が少なくて済む」? 成程
煙と炎のブレスを受けて浮遊する
これで落とし穴も平気だ
難しい事は苦手だ
探索方法を考えるのは他の人に任せて、実際の探索に体を動かそう
「足ふきマット」の上では一旦浮遊を解いて、自分の体重なら扉が作動しないか試してみる
落とし穴の中を調査する時は、慎重にツルをどけて隙間から中を赤煙に探索させる
「小竜使いが荒い」? そう言うなよ
バラニィ・エアリーズ
おー、イカダンだねぇ。(いかにもダンジョンっぽい、の略)
こういう様式美的な趣きがあってこそだよ、うんうん。
通信出来るようになったし、他の人がハクスラしてる間地道に調べるかなぁ。
……毒花粉気にしつつ歩くの若干めんどくなってきた。『迷宮変動』でチートかますか。現実をハッキングだ!
クロノオブジェクト、だっけ?この迷宮自体がそれ系かも解らんし、いい感じに改竄できるかかなーり怪しいけど……
ま、構造情報を盗み見るくらいは何とかなるっしょ。仕掛けはどこにあるかな〜?
最適ルート割り出したらみんなに教えてあげよっと。多分これが一番早いと思います(慢心)。
感圧トラップっぽい奴の設定とかも弄れそうなら弄りたいねぇ。
ガーデニア・ラディーチェ
毒花を無効化、できる方法がある、はず……
最初のお部屋、で……【過去視の道案内】を使って……
目的地は、最奥……攻略のヒント、を……得られた、ら…影を追いかけるよう、に、行動する、わ
青い花、沢山ある、わ……
風や振動には、気を付けながら、迷宮を移動する、の
深い穴、あからさまだけ、ど……石か何かを、嵌め込むのかし、ら?
それに、花瓶…
一通り、調査しておくわ、ね…
行き止まり、に…意味深に…花瓶と、周囲に毒花があるけど…毒花を花瓶に…生けてみようかし、ら…
多少の負傷、は…厭わない、わ…
それに花瓶、動かせたりするの、かしら…?
「足拭きマット」に、乗せたりしたら、何か起き、ない……?
「おー、イカダンだねぇ。こういう様式美的な趣きがあってこそだよ、うんうん」
バラニィ・エアリーズ(ゲーミングサキュバス・g02889)は『いかにもダンジョンっぽい』を略してイカダンと称し、物珍しそうにあたりを見回す。そこには同じパラドクストレインでこの場所にきたディアボロスがバラニィの他に二人いる。
「強敵と戦えると聞いて来たが、毒の花とは厄介だな」
岩を埋め尽くすようにはびこる青い花に少し眉をしかめて西堂・千衛蔵(竜燈鬼・g01901)はため息をつく。その首元にはマフラーかスカーフのようにミニドラゴン『赤煙』を巻き付けている。千衛蔵は自分と『赤煙』の口や鼻を手ぬぐいで覆い、このドームに充満しているだろう毒対策をしているが、『赤煙』がこの措置にやや懐疑的に見えるのは、気のせいだろう、たぶん。
少し下がり気味の場所には思案気に小首を傾げるガーデニア・ラディーチェ(クチナシの花護り・g03839)がいた。ここは主の奥津城を狙う盗掘から隠れる場所でもなく、王城を攻める敵を撃退するためのものでもない。孵化したばかりの雛を鍛えるための訓練施設だ。たとえ、卵を得るための手順がおぞましいものだとしても、だ。
「毒花を無効化、できる方法がある、はず……見せて……ほしい、の」
ガーデニアは一度目を閉じてその紅の瞳を瞼で隠し、ゆっくりと開く。彼女の目には儚く揺れる影が見えた。影は月城・木綿紀(月城家三女のメイドトラッパー・g00281)が確認した花瓶のある小部屋を進み、突き当りで引き返してドームの中央から北、12時方向へと進んでゆく。そして扉の前までくると動きを止めた。そこには色の違う薄い岩が足ふきマットの様に敷かれている。
「あっち行って、こっち行ってズドン! ってこの、キミが見ていた視線の先が最適ルートってところなのかい?」
影を見ていたガーデニア、を見ていたバラニィがにぃっと気さくに笑いながら訊ねるとガーデニアはこくりとうなずいた。
「でも仕掛けは、わからない、の」
ガーデニアはわずかに目を伏せる。
「そっか。ほんとは地道に色々調べるかって思ったけど……毒花粉気にしつつ歩くの若干めんどくなってきた」
モーラット・コミュ『ざぶとん』が複雑な表情を込めているような眼で見上げてくる中、バラニィは小さくつぶやいた。
「チートかますか。現実をハッキングだ!」
とたんに現実であるはずのダンジョンがゆがんだ気がした。バラニィの声はバラドクス通信でダンジョン中の味方に届く。
「おーい! 今、なんかしたか?」
先ほどまでバラニィとガーデニアのすぐ近くにいたはずの千衛蔵が随分と離れた場所にぽつんといた。周囲の花が毒花粉を撒き散らした様子もないし、足音を聞いてもいない。ただ少し薄汚れた感がある。
「キミこそ、そこで何をしているんだい?」
質問に質問で返すのは失礼だったかなぁと思いつつ、バラニィが訊ねる。それともこれはゲームか映画のセリフだっただろうか。
「ここの落とし穴の中を探索中なんだ。あ、俺じゃなくて『赤煙』がな」
落とし穴を覆い隠していただろうツルを引き抜き、千切った残骸をまだ両手に持ったまま、千衛蔵が朗らかに言う。するとすぐに落とし穴から『赤煙』が飛び出してきた。
「お、どうやら下には宝があるようだ。中身まではわからないが、結構重そうだ」
藍色の瞳に喜色をにじませ『赤煙』をまた首に巻いて千衛蔵が振り返る。
「宝も気になるけど、あの部屋の花瓶……気になるわ、ね。もっと、調べた方がいい、かしら?」
影の動きを思い出してガーデニアはゆっくりと小部屋の方を向く。
「じゃ、俺が一緒に行ってやる」
ふよふよ、ふよふよ、と緩やかに空中を歩く様な速度で千衛蔵がガーデニアとバラニィのいる方へと戻ってくる。
「なるほど、そういうことか?」
バラニィは得心がいった様子でうなずいた。
小部屋の突き当りにあった花瓶も石の花も年代物だが、特別なところはないものだった。ただ、諦めきれないのかガーデニアはなんとなく石の花ごと花瓶を抱えてバラニィのもとへ戻ってくる。
「じゃあ、あたしもよろしく頼むよ」
にっこり笑ってバラニィが手を差し出す。
「そうだな。それが早いな」
バラニィの手を千衛蔵が取る。真ん中に千衛蔵、その両側に花瓶を持ったガーデニアとあたりを警戒するバラニィが手をつなぎ、仲良く北へと向かって移動する。すぐに3人は扉の手前に降り立った。色の違う足ふきマット的な岩の上だ。
ゴトン。音を立てて石が沈み扉は開く。
「開いた!」
「やったな」
「……ここから、なら」
その奥には真っ直ぐな暗い道が続いていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【浮遊】LV1が発生!
【迷宮化】LV1が発生!
【過去視の道案内】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
群捨・すべ
薄暗くって過ごしやすそうなところだわね
毒さえなければお花も可愛らしいし、ここを攻略したらわたしたちの拠点にでもならないかしら
って、あらやだ大変分断されちゃった上に…警邏にも見つかっちゃったのだわ
狭い洞窟内じゃあ逃げたり隠れたりもダメそう
けど、それはあちらも同じだわね
お涼狐火で通路ごとぱーとやってやるのだわ
ついでにお花畑も台無しになってくれないかしら?
ああ、そうそうそこに罠が仕掛けてあるのだわね
【パラドクス通信】て便利ね
「ここは薄暗くってすごしやすそうなどころなのだわ。お花だって可愛らしいし。でも、毒があるなんて、残念ね」
洞窟の闇にも溶けそうな漆黒の髪の乙女、群捨・すべ(腐れ穴・g01911)は物見遊山であるかのような雰囲気で周囲を楽しそうに眺めて言った。光輝く陽光の下よりも、月下や奈落の底の闇が心地よい。ごくリラックスした様子だが、月城・木綿紀(月城家三女のメイドトラッパー・g00281)から送られてきた罠の情報をきっちりと把握している。その1歩1歩は木綿紀の糸を巧みに避け、しかし不自然には感じさせない。
「あら、見つかっちゃたのだわ」
振り返ったすべの視界の中央、今までは誰もいなかった通路の真ん中に黒く隆々とした体躯の竜鱗兵がいた。待ち構えていたすべと思いがけない遭遇となった竜鱗兵、どちらが速く動けるかは測るまでもない。闇色の瞳を優しくほころばせ、すべは唇を開いた。
「ふーふーして冷ましてあげるのだわ」
優しく口づけするかのようにすぼませた淡い色の口から炎が噴き出す。しぐさとはちぐはぐの剣呑な青黒いが岩が露出した通路を冷たく焼き払ってゆく。お涼狐火は敵も岩も、そして岩にはびこる毒花たちも分け隔てなく、惜しみなく奪う。
「……!」
言葉にはならない憤怒を全身にみなぎらせ、竜鱗兵が武骨な鈍器を振り上げた。と、同時にお涼狐火の反動がすべの柔肌を浅く焼き、敵が突進してくる。
「チートかますか。現実をハッキングだ!」
パラドクス通信でバラニィ・エアリーズ(ゲーミングサキュバス・g02889)の声が伝わってきた。ぐにゃりと空間がゆがむような感触があり、竜鱗兵は立ち止まった。目に前にいるすべを見失ったようで、手近な色岩の上に乗り、その眼前の扉を開いて中に消えてゆく。
「これ、迷宮の効果なのだわね」
倒していない敵を野放しにするのは中途半端な気がしてすっきりしない。すべは敵が消えた扉へと小走りに近寄る。扉は開いたままで閉じる様子はなかった。
成功🔵🔵🔴
効果1【冷気の支配者】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
ガーデニア・ラディーチェ
洞窟、洞窟……
どんどん進む、の…
【パラドクス通信】を利用して、竜鱗兵さんがどっちに行った、か…情報共有をしながら進む、わ
何て言ってた、ら…ある日洞窟の中、竜鱗兵さんに出逢った、わ…
シンジュクの人たち、ドラゴン肉?に憧れるって聞いた、の……
でも、固そう……美味しそうには、見えない、けど
残留効果で【迷宮化】してるか、ら…利用、しましょう
真っ向勝負は避け、て…
敵の様子を伺い、ながら…ちょこまか、して…極力見つからないように行動する、わ
頭部を狙ってくるみたいだか、ら…武器の動きを観察しつ、つ…隙が生じた瞬間、に…【ピラミッドコンバット】でどーん、なの
そこはディアボロスたちにとって敵地のダンジョンであったが、もはや竜鱗兵たちにとっても安全を保証する訓練施設ではなくなっていた。バラニィ・エアリーズ(ゲーミングサキュバス・g02889)が使った【迷宮化】の力は竜鱗兵たちに直線を直線と認識させない。だからガーデニア・ラディーチェ(クチナシの花護り・g03839)と黒い体躯を誇る竜鱗兵との遭遇はどちらにも不意打ちでありながら、そのどちらもが敵の存在を強く感じながらの接敵であった。ガーデニアとしてはこうして正面からぶつかるつもりはなかったが、仕方がない。名乗りの口上も己を鼓舞する儀式もない。ただ、力と力のぶつかり合いだ。いや、ガーデニアの心の内を正直に開示するならば『新宿島の住人にドラゴンの肉は需要があるのか』が少し頭に浮かんだが、表情には出さずに気持ちを切り替える。
ガーデニアからの先制撃、敵からの反撃。ぐっと近づいてもファーストインプレッションは変わらない。
「……まずそう」
その言葉の意味が竜鱗兵に伝わったかどうか。しかし、これまでの戦いで負傷を追っている竜鱗兵は敵であり許されざる侵入者であるガーデニアに向かって突進してくる。けれど、その方向は大きく左に逸れていて、ガーデニアの目に敵の左背面が無防備にさらけだされている。
「……隙、だらけ、なの」
ガーデニアと竜鱗兵との間に小型のピラミッドが瞬時に出現する。そこから流れ込む暖かい力の奔流を身体に浴びれば、ガーデニアの何もかもがさらにさらに強くなる。武骨な岩肌を斜めに駆け上がり、反動をつけて攻撃を繰り出す。振り返った竜鱗兵の目が驚愕に見開き、右腕が得物を振り上げた。けれどその防御は間に合わない。頭部を砕かれた竜鱗兵はゆっくりと仰向けに倒れ、もう動かなかった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
ノエル・ブランシェ
私もラキ火山に向い、仲間と共に洞窟へと攻め込みます
竜鱗兵……クロノヴェーダとはいえ人の子
ですが人を生贄にするような事は、終わらせなければなりません。
仲間と【パラドクス通信】で情報を共有
先に毒化の仕掛けを解除する方法を探します。
周囲の気温を【冷気の支配者】で下げて毒花の活動を抑えつつ
仲間から聞いた情報と【過去視の道案内】を頼りに更に奥へと進みます。
操作するのが竜鱗兵だとすると、その体長から仕掛けも大きくなる?
もしくは元々は宝箱を取ると発動する毒花の罠で、それを竜鱗兵が利用している?
【エアライド】で竜鱗兵の視線でも注意しつつ
宝箱を隠すとしたらという観点でも手がかりを探し
毒花を解く仕掛けを探します。
リエル・ドラン
宝箱見つかったって聞いたんでな
オレも参加させてもらうぜ
今分かんねぇのは毒の解除と宝箱の状況か
とりあえず扉のない通路でまだ行ってない通路があれば行くぜ
毒の解除は何だろうな
分かんねぇけど石の花と花瓶が気になるんだよな
花は花瓶に飾るもんだよな?
まだ花瓶に石の花入れてねぇなら気持ち悪ぃし入れてみるか
花瓶って2個あるんだったか?
2個あるなら入れ方色々試すわ
宝箱は重そうって位しか分からねぇ感じか?
発動中の【浮遊】も使って穴に潜って調べてみるか
確認するのは穴の内部と宝箱の詳細ってとこか
宝箱一人で持ち上げれる重さで
穴の底に花なければ穴の外の花に影響のない高さまで【飛翔】で、
花あるなら【浮遊】で持ち上げてみるぜ
「今分かんねぇのは毒の解除と宝箱の状況か」
リエル・ドラン(サーヴァントコンプレックス・g01912)はまだ誰も調べていない扉のない小部屋の前で思案顔になる。先行するディアボロスたちの情報はパラドクス通信で確認できたので、ここ以外の小部屋は月城・木綿紀(月城家三女のメイドトラッパー・g00281)とガーデニア・ラディーチェ(クチナシの花護り・g03839)が調べていることはわかっている。
「周囲の気温を下げて毒花の動きを抑えてはいますが、完全に毒の花粉が出ないようにしているわけではありません」
ノエル・ブランシェ(銀閃の歌姫騎士・g03730)の青い瞳は長いまつげのせいか影を帯びる。毒を出す花をこのままにしても最奥のドラゴンとの戦うことは出来るだろう。だが、戦闘が長引けば弱い毒でも勝敗に影響を与えてしまうかもしれない。
「やっぱり石の花と花瓶が気になるんだよな」
リエルはつぶやく。木綿紀とガーデニアが調べた小部屋の花瓶と花はガーデニアが持ち出しているが、リエルが様子をうかがっている小部屋の奥にも花瓶と石造りの花がさしてある。振り返ればドームのほぼ真ん中にも似たような花瓶がある。ここには石造りの花はない。
「影は必ず1度は中央へ向かいます。やはり花瓶が怪しいです」
「花瓶は2個で花は、まぁ今は1本だな。まぁ失敗を恐れず色々試してみるか」
ノエルは先に中央の花瓶の横へと移動し、リエルはふよふよと空中を浮かんで小部屋から石造りの花ごと花瓶を抱え、中央へと移動する。
「操作するのが竜鱗兵だとすれば、それほど繊細な作業は求められないでしょう」
竜鱗兵の身体の大きさを考えながらノエルが言う。
「そうだな。やってみるか」
ミニドラゴン『ユウェル』が見守る中、リエルは石造りの花を手にした花瓶から中央の花瓶へと移動させた。小さな、微かな音がドームのあちこちからざわめきの様に響き、広がってゆく。よくよく見れば釣り鐘型の花はしおれるように下を向き、花粉まみれのおしべも見えなくなった。
「確認してみます」
宙に浮かんでいたノエルは着地し、数歩歩くが花から毒の花粉は出ない。
「成功か、やったな」
リエルは安堵のため息とともに僅かな笑みを口元に刻み穴の中をのぞく。
「次はこっちだな」
ノエルはパラドクス通信で毒花を無力化したことを皆に伝えると、大胆な跳躍をして他に罠がないか慎重に調べる。ドームの上の方で咲いている花もしんなりと下を向いている。
「大丈夫そうです」
下を向くとリエルは落とし穴のような穴から身を乗り出しているのが見えた。
「どうですか?」
「罠はなさそうだな。行ってみるか」
地上に着地したノエルが見守る中、一度姿勢を戻したリエルはふよふよとゆっくり下へと降りてゆく。穴の中には立派で頑丈な宝箱が1つ、ぽつんと置かれていた。周囲には毒花はないが、上にあるのと似たような花瓶がいくつもあった。スペアだろうか。宝箱は見た目よりも軽くてリエル一人で十分に持ち上る。
「じゃ遠慮なく貰っていくか」
そのまま身体を浮かせ、リエルは宝箱を地下から取り出した。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【エアライド】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【反撃アップ】がLV2になった!
アリシア・グレンヴィル
先陣を切った同胞、ディアボロスたちのおかげで万全の状態でドラゴンに挑めますね。
敵は強大なアヴァタール級。ダンジョン維持にエネルギーを消費しているとはいえ、一人ではとても敵わないでしょう。
けれど、残された力(残留効果)がある。ならば、今の私でも一撃を入れることぐらいは!
敵は踏みつけた土壌を汚染してくると聞きました。ならば、【飛翔】と【エアライド】の効果を利用して、空中から仕掛けるまで。さらには【冷気の支配者】を用いて、周囲の気温を下げて少しでも動きを鈍らせる。
≪屠竜撃≫
大剣によるドラゴンを両断せしめんとする一撃。できるだけ、やつに苦痛を与えられるよう全身全霊を込めて。
月城・木綿紀
「……っ!」
【トラップ生成】【エアライド】を使いながら、飛び杼で斬りつけつつ戦場にワイヤーを張っていく。
増やしていくワイヤーを足場に攻撃の間隔を縮め加速しつつ敵の動きを制限していく。
「──張り詰めた世界」
十分な量のワイヤーを張ったところでワイヤーを引っ張ってワイヤーを留めていたピンを一気に引き抜き敵をがんじがらめにして拘束。ワイヤー越しにラムの電撃を食らわせる。
「伝線!」
初霜・ゆき
秘宝を手に入れ、竜騎兵も倒した。なら遠慮せずにドラゴンと戦える。
ダンジョンの維持に力を割いているなら、わたしでも太刀打ちできるはず。クロノヴェーダ……どんなディヴィジョンであっても、絶対許さないんだから。
ここは陰陽道の術に頼るべきかな……陰陽符(氷雪)をゼラザルムの頭上に投げつけて、真言を唱える。
凍れ、落ちよ、砕けよ……『水行・六花墜』、急急如律令!これで頭を冷やすといいよ!
攻撃だけじゃなく、みんなの力を高めるようにもしたい。
氷を“粉砕”して残した氷霧で【ダメージアップ】を発生させるね。
そして、反撃の毒は地面を中心に広がるんだね……空中にも広がるかもだけど、【浮遊】して回避を試みてみるよ。
バラニィ・エアリーズ
うーっし、あとはボスを残すのみ!やるぞー。
ボスともなれば大層恨みも買っていそうな気がするし、ここは『万死一生』で行こっかな。
全力の一撃を叩き込むべく接近したいトコだけど……あのクソでかい翼付きトカゲ、氷霧で辺りが冷えたら動き鈍ったりしないかな?しろ。
相手のWIZ攻撃に関しては、技の性質上多分乱発できない……んじゃないかな、どうだろ。自信無いや。
ま、今のあたしたちは【飛翔】したり【エアライド】で空中ジャンプしたり出来るワケだし?接敵するくらい何とかなるなる。
何とかならんでも最悪差し違えれられればヨシ!戦闘不能に陥る程度は実際許容範囲でしょ。(※個人の感想です)
死ななきゃ安いの精神で頑張るぞい!
西堂・千衛蔵
こいつがボスか! 相手にとって不足なし、いくぞ!
【トラップ生成】で戦場全体にトラップを設置して【エアライド】で自分がトラップにはまらずに接敵できる移動経路を見出す
トラップの位置は【パラドクス通信】で味方と共有するぞ
トラップの種類は、赤煙の作戦に従って落とし穴に決めた
敵も飛べるようだが、反撃の為には地面を踏みつけなければならない……その時は必ず地上に降りるはずだ
敵が落とし穴の真上に来たタイミングで仕掛けるぞ
落とし穴にはまれば頭の位置も下がる
その顎を狙って鬼神変アッパーだ!
群捨・すべ
秘宝も無事回収できたみたいだわね、重畳。
これがドラゴン…全力でない上にアヴァタール級というやつでしょう?
いずれはもっととんでもないのをお相手することになると思うと尻尾縮んじゃうのだわ
まあ、代わりの尻尾ならいくらでも出てきちゃうんだけども
と言いつつ虚空から生えた内臓のような膨れ上がった肉腫のような、「尻尾」とはいい難い何かの器官で絞めたり貫いたりしてやるのだわ
フヒヒ、穢れのことなら、わたしもちょっとうるさいのだわよ
釣り鐘に似た青い花は下を向き毒の花粉はもう撒き散らさない。そのしおれた花にびっしりと覆われたドームの扉を抜けると、そこからは暗い1本道が続いていた。『迷宮化』はディアボロスたちの進む道を迷わせたりはしない。たとえ道が複数あったとしても、ドラゴンの棲まう場所から発せられる圧と毒が道しるべとなっただろう。ディアボロス達が侵入したことによるダンジョンの異変を『毒嵐竜ゼラザルム』は知っていた。憤怒が毒となって流れ出ている。
「……っ!」
言葉もなく月城・木綿紀(月城家三女のメイドトラッパー・g00281)は跳ぶ。戦場の空間を機織りの経糸が張られたと想定し、木綿紀は舞い飛びながらドラゴンを斬りつけ杼を繰ってゆく。最初は独りだけだったこのダンジョンも今は自分だけではない。ドラゴンからの反撃が襲ってきても、地面に叩き付けられることなくふわりと着地する。
「張り詰めた世界」
ピンと張ったワイヤーは足場にもなる。木綿紀の黒い瞳が見つめる戦場には織りなす布の模様のようにトラップが浮かんでいた。高貴なる身体の周囲を取り巻く害意にゼラザルムの憤怒が毒となって流れ出ている。
「その程度の怒りがなんだというのですか?」
ドラゴンの威圧にもその地を蝕む毒にも一瞬のためらいなくアリシア・グレンヴィル(亡国の騎士・g00397)は最奥の、決戦の場へと飛び込んだ。ささやくような小さな声の言葉には凍てつく怨嗟の想いがこもり、心の裡を表すかのように冷気が広がる。低く張られたワイヤーで踏み込むと、アリシアの身体は羽が生えているかのように宙へと跳んだ。そしてそのまま虚空を征く。巨大で強大に見える毒のドラゴンへと走りながら、身の丈を優に超える漆黒の大剣の柄が吸い付くように手の中におさまる。剣先はドラゴンの血に飢えているかのように鈍く光っている。ドラゴンと比べれば儚いほどに小さなアリシアのりへとドラゴンが顔を巡らす。ドラゴンの怒りの中にこもる侮蔑の念。
「侮るがいい。けれどこれで変えて差し上げます」
ありったけの想いと力を得物に込めて、アリシアは眼前のドラゴンを両断する覚悟で漆黒の剣を振り下ろす。どこからどう攻めればいいのか、一瞬先の未来が見えるかのように剣の軌道がわかる。敵がのけぞり、その動きをなぞるようにドラゴンの血が空中に線を描く。衝撃の反動を利用してアリシアの身体はドラゴンから遠く離れた。
「これが……ドラゴン」
木綿紀のワイヤーを巧みに利用し舞う様に縦横無尽に動いて敵に接近した群捨・すべ(腐れ穴・g01911)は追いかけるようにのけぞるドラゴンの胸へ巨大化した尾のようなモノを出現させ、槍先の様に分厚そうな身体へと突き立てた。更なるドラゴンの血があたりに舞い散り、攻撃の反動ですべの身体からも鮮血が飛び散ってゆく。
「フヒヒ、穢れのことなら、わたしもちょっとうるさいのだわよ」
血塗れた胸を白い手でぬぐい、すべは淡く笑った。綺麗な赤が毒の地面に点々と滴り落ちる。
アリシアの攻撃を受けたドラゴンはまだ動けない。しかし、この最奥にまでたどり着いたディアボロスは3人だけではない。
「こいつがボスか! 相手にとって不足なし、いくぞ!」
人々が恐怖する巨大な毒竜を見ても西堂・千衛蔵(竜燈鬼・g01901)がひるむことはない。木綿紀のワイヤートラップが地面の上の空間を占めているとわかると、視線を下へと向ける。『赤煙』も賛同の様子だ。
「わたしだって戦える。太刀打ちできるはずだよ」
あとはただ目の前の毒竜を倒すだけ、と、初霜・ゆき(冬の雪のように・g03150)は氷かクリスタルで出来た儚い存在であるかのような容姿とは真逆、強い意志のこもる声で言った。すかさず手にした陰陽符をドラゴンの頭部めがけて投げて唱える。
「凍れ、落ちよ、砕けよ……『水行・六花墜』、急急如律令! これで頭を冷やすといいよ!」
符が凍る。そこに巨大な氷の六花が出現しドラゴンの頭部めがけて落下する。砕けた氷は冷たい霧となって周囲に広がり消えてゆく。綺麗な、けれどそれだけではない破壊力のある攻撃にドラゴンの頭が地に着き、それから身体が反転して叩き付けられる。
「ちょうどいい場所になったの」
嬉しそうにゆきが言う。ボコッと地面が陥没しドラゴンの巨大な身体が地面に埋まったからだ。その場所に落とし穴が設置されたのはパラドクス通信でわかっていたが、うまくドラゴンをそこに追い込めるかは未知数だった。想定していたドラゴンの飛翔の時よりもずっと早く、ディアボロスの攻撃がドラゴンを千衛蔵のトラップへと追い込んだ。
「いい攻撃だ!」
ゆきへと賛辞を送った千衛蔵の利き手が鬼の血によって変化する。一瞬であり得ないボリュームにまで巨大化した腕がぎゅっと拳をにぎり、凄まじい膂力でドラゴンの顎を下から上へとえぐるように撃つ。由緒正しいアッパーカットだ。
「低い位置に顎があってよかったな」
それでも油断せず間合いを取る千衛蔵。一度の毒の息、尾の一閃が攻防をひっくり返してしまうことがある。そういう経験をたぶん千衛蔵は経験してきている。
「うーっし、今だ、やるぞー!」
ドラゴンが弱って動きが鈍くなる瞬間をバラニィ・エアリーズ(ゲーミングサキュバス・g02889)は待っていた。頼もしい仲間たちがここに集っているのだから好機は絶対に訪れると信じていた。霧氷に、冷気に、物理攻撃と落とし穴でドラゴンの動きは封じられている。
「死ねや、オラァァア!!」
バラニィが思った通り、眼前のドラゴンを怨む想像以上の念が彼女の身体集まってくる。ドラゴンの毒よりも痛く辛い、肉親の死、人同士の敵意、閉ざされる未来、消える希望。負の感情すべてがバラニィの攻撃力となってドラゴンへと叩き込まれる。それでもまだ足りないというかのように、呪詛のような怨嗟の念は消えることなくこの最奥の部屋に充満し消えてはいかない。
「……」
自らの血に頭部を染め憎しみの凝視をディアボロス達へと向けるドラゴン。しかし、痛打を受けたドラゴンはまだ動けずブレスを吐くために口を開くことも、尾を持ち上げることも、まだない。それでも容赦なく油断もせずにディアボロス達は間髪入れずに攻撃を浴びせ続ける。いつしか最奥の部屋の岩壁はあちこちが崩れ、落とし穴で地面もえぐれ様相が変わりはてている。それでも戦いは終わらない。アリシアが望んだように、バラニィが喚んだ念が想う様にドラゴンに苦痛が与え続けられてゆく。
「伝線!」
木綿紀の張った全てのワイヤーが一瞬で外れ、ドラゴンへと絡みつき拘束する。声に反応した木綿紀の半身、モーラット・コミュ『ラム』から火花を撒き散らす苛烈なる電撃が放たれた。何かが分解されるような異臭が広がり、ドラゴンの身体が焼けただれた。空を翔るアリシアの黒い大剣が傷だらけのドラゴンの脳天へと振り下ろされた。ぐにゃりと今までと違う手ごたえが剣から柄に、そしてアリシアへと伝わってくる。
「もう少し、もう少しです。みなさん」
素早くドラゴンから離れながらアリシアが言う。その声が誰の耳にも伝わっている。
「もう1回ぐらいならわたしの尻尾、かもしれない何かで貫いてあげるのだわ」
壮絶な優しい笑みを浮かべたすべの力が尾のような何かでドラゴンの腹を深く突き刺す。悲鳴に似た方向がドラゴンの口から響く。
「急急如律令」
毒を割けて空中に浮かんだままのゆきの詠唱が符を凍らせ、そこから大きな雪の結晶が空間を魔法陣の様に彩りそして落下する。明らかに攻撃の力が増大し逆にドラゴンの耐えうる力が激減している。
「もう一度アッパーだ」
低い姿勢の千衛蔵を見てバラニィが空へと駆ける。下からの巨大な拳と上から振り下ろしたバラニィの怨念の力で強化された捨て身の一撃が交差する。
「死ななきゃ安いの精神だよ」
受け身も取らずに突進したバラニィがゴロゴロと地面を転がる。ドラゴンはその身体からすると驚くほど小さなため息のような末期の息を吐き、そして屠られた。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
効果1【避難勧告】LV1が発生!
【パラドクス通信】がLV2になった!
【怪力無双】LV2が発生!
【悲劇感知】LV1が発生!
【狐変身】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【命中アップ】がLV3になった!
【ロストエナジー】がLV2になった!
【能力値アップ】がLV2になった!