湖水地方と竜の花嫁

 氷のベディヴィア卿を撃破したディアボロスは、グレートブリテン島の湖水地方に上陸する事に成功しました。
 風光明媚な湖水地方は、富裕層の保養地として有名であり、ジェネラル級ドラゴン『氷将竜サグラモール』によって守護されているようです。

 湖水地方には、竜の花嫁の湖と呼ばれる湖が多く存在しており、イギリス各地から集められた『竜の花嫁』達が、最後の時を穏やかに迎える為に滞在する別荘地になっています。

 ドラゴンの生贄である『竜の花嫁』は、命を捧げることで竜鱗兵の『卵』を出現させるのです。
『竜の花嫁』となることは、幻想竜域キングアーサーでは非常に名誉とされており、花嫁の親族はそうして生まれた竜鱗兵を大切に扱うようです。

 別荘地では『竜の花嫁』を楽しませる為に、芸人や料理人などが常に募集されています。
 この芸人や料理人に紛れて『竜の花嫁』と接触して、情報を集めていきましょう。

祝言の想いを一皿に(作者 秋月きり
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「おめでとう! ミランダ。16歳の誕生日、そして……竜の花嫁に選ばれた名誉を!」
「ありがとう。ママ。こんな名誉ある報告が出来るなんて、夢みたい」
 改竄世界史、幻想竜域キングアーサー。そのグレートブリテン島の別荘地で、幸せそうに宴を開く家族があった。
 その中心に座すのはミランダ・アマレット。若干16歳の見目麗しい美少女は、つい先日、竜の花嫁という名誉ある生き方を全うする事に選ばれたのだ。
「パパ、ママ、これまで育ててくれてありがとう。私、次の世代への竜鱗兵を為す『卵』を生むわ」
「ああ、ミランダ。お前は私たちの誇らしい娘だよ」
 竜の花嫁。それはドラゴンへと生贄に捧げられ、命を捧げることで竜鱗兵の『卵』を出現させる存在だ。
 即ち、彼女に待ち受けているのは死そのものであった。
 だが、それは同時に、この幻想竜域キングアーサーに於いて名誉な事とされている。一般人である彼らに、異論などはある筈も無い。
「父さん、母さん! もう辞めろよ!」
 叫びが往来する。その主である顔を赤らめた青年は、年の頃二十歳前後と言った処か。ミランダに良く似た表情はしかし、酒のためか上気していた。
「なんでミランダが死ななければならないんだよ! おかしいと思わないのか!」
「何を言っているの。アルフ兄さん。大丈夫? 少し飲み過ぎよ」
「もう休んだ方が良いわ。アルフ。アンタがミランダと仲良かったのは知っているけど、妹が嫁に行くのに泣き叫ぶ兄が居るものかい」
 酒精の勢いで愚痴をこぼすアルフに、しかし、返ってくる言葉は冷たい。
「宴はお開きにしよう。アルフ。少し男同士で語ろうか」
 そして、荒れた息子を宥めるよう、父親はその頭にぽんと手を添える。
 その手は何処か、震えている様にも思えた。

「皆様、おめでとうございます。皆様がアイリッシュ海の戦いを制し、氷のベディヴィア卿を撃破したことで、遂にドラゴンの本拠地への道が開けました」
 新宿島新宿駅ホーム。パラドクストレインが到着したホームで、興奮冷めやらぬ、と言う表情で喜びを紡ぐ少女がいた。
 名をシルシュ・エヌマエリシュ(ドラゴニアンのガジェッティア・g03182)と言った。復讐者の一人で有り、パラドクストレインを以て改竄世界史へと彼らを送り出す時先案内人の少女でもある存在だ。
 そしてシルシュは言葉を続ける。これにより、ドラゴンの本拠地――グレートブリテン島への上陸が叶うようになった、と。
「上陸地は景勝地として有名な湖水地方となります」
 彼の地方を守護するドラゴンは、ジェネラル級ドラゴンであり円卓の騎士の一体『氷将竜サグラモール』。そして、その一角である湖沼地帯には『竜の花嫁の湖』と呼ばれる湖が多数あり、竜の花嫁たちが命を捧げる前に、穏やかに満足して暮らせる別荘が建てられていると言う。
「そこで、皆様には竜の花嫁に接触し、情報を集めて頂きたく思います」
 どうやら別荘地には竜の花嫁を楽しませる芸や料理の腕を持つ者が、近隣の町から集められているようなのだ。
 即ち、この湖沼地帯の町に潜入し、コンテストを勝ち抜くことで竜の花嫁のいる別荘へと招かれることが可能となる。
「竜の花嫁に接触し、会話をすることが出来れば、幻想竜域キングアーサーの中核に迫ることが出来るやもしれません」
 あくまで可能性でしかないが、しかし、貴重な情報源となりえる話だ。
 それを成して欲しいと、シルシュは復讐者たちへ、期待を込めた視線を送る。

「湖沼地帯の町は良くも悪くも普通の町、と言う感じの場所ですね」
 煉瓦造りの町並みに、中世時代と常識が書き換えられている人々。ただ、竜の花嫁に近しい存在になれると言うコンテストの開催の為、お祭り騒ぎの状態となっている。
「コンテストは料理の腕を競う、と言う物の様です」
 主菜であろうとお菓子であろうと構わない。
 数多の強豪を打ち破り、コンテストの上位入賞を果たせば、別荘地に招待されるとのこと。
「竜の花嫁の為のコンテストでもありますので、彼女が気に入るような食事を作ることが出来れば事は有利に運ぶかもしれませんね」
 そのリサーチも大切となるだろう。
「別荘地に侵入する事が出来ましたら、竜の花嫁、そして家族の方と接触して下さい」
 特筆すべきは竜の花嫁の兄、アルフであろう。彼は妹が命を捧げ、死んでしまうことに疑問を抱いているようなのだ。排斥力の力でいつ、それが拭われるかは判らないが、ともあれ、現状としては復讐者たちに近い感性を持っていると言えよう。
 彼と上手く接触し、会話することが出来れば、様々な話を聞く事が出来るかも知れない。
 そして、竜の花嫁であるミランダ・アマレットの存在を忘れる訳にいかない。
 彼女に気に入られる事が出来れば、直接話をするチャンスを得ることが可能となる。料理コンテストで勝利した肩書きを上手く使って欲しい、とはシルシュ談だ。
「彼女は洗脳されているのか、自らの命を捧げることに疑問を持っていません」
 だが、何らかの切欠があれば、竜の花嫁として命を捧げることに疑問を抱かせることが出来るかも知れない。
 それを探り、実践するのであれば頑張って欲しい。シルシュは復讐者たちを促すよう、強く頷く。

「『竜の花嫁』という制度は、幻想竜域キングアーサーにおいて重要なものです。従って、この制度を覆すことが出来れば、ドラゴンの力を削ぐことが出来るのではいかと思います」
 町に別荘地と、クロノヴェーダの姿は見当たらないが、町の外を多くのドラゴン達が飛び回り、地上を観察しているようだ。派手な動きは慎んだ方が無難かもしれない。
 だが、逆を言えばドラゴンに見つからなければ、自由に動くことも可能。建物の中などは格好の場所であった。
「皆様の力で一人でも多く、竜の花嫁として命を捧げる乙女を減らして頂ければ、と思います」
 その願いを込め、シルシュは復讐者たちをパラドクストレインへと送り出す。
 ドラゴニアンの少女にとっても、竜の花嫁の存在は、色々と思うところがある様であった。

 湖水地方の町は活気に溢れていた。
 人間とドラゴニアンたちが共存する町は風光明媚。人々は笑顔で行き交い、日々の暮らしを満喫している。
 大通りに目を向ければ、道行く人々に見せつけるよう、芸を行う大道芸人たちや詩を奏でる吟遊詩人たちの姿があり、見るからに富裕そうな人々が、彼らへと投げ銭を投じている。
 そして何よりも人々を引きつけるのは、種々様々な創作料理の数々だった。
 コンテスト挑戦者の肩書きの元、振る舞われる料理は人々の舌を楽しませ、財布の紐を緩ませていく。その金銭が町の経済を回し、観光地の好循環を作り出していく。
 そう。町は今、幸せに満ちていた。
 ――これが、一人の少女の犠牲になり立っていることを、しかし、町人たちは気にも止めない。
 気に止める常識など、彼らには存在していないのだから。


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【士気高揚】
4
ディアボロスの強い熱意が周囲に伝播しやすくなる。ディアボロスから「効果LV×10m半径内」の一般人が、勇気のある行動を取るようになる。
【託されし願い】
4
周囲に、ディアボロスに願いを託した人々の現在の様子が映像として映し出される。「効果LV×1回」、願いの強さに応じて判定が有利になる。
【友達催眠】
3
周囲の一般人を、誰にでも友人のように接する性格に変化させる。効果LVが高いほど、昔からの大切な友達であるように行動する。
【プラチナチケット】
1
周囲の一般人が、ディアボロスを関係者であるかのように扱うようになる。効果LVが高い程、重要な関係者のように扱われる。
【トラップ生成】
1
ディアボロスから「効果LV×300m半径内」の空間を、非殺傷性の罠が隠された罠地帯に変化させる。罠の種類は、自由に指定できる。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【液体錬成】
2
周囲の通常の液体が、ディアボロスが望めば、8時間冷暗所で安置すると「効果LV×10倍」の量に増殖するようになる。
【操作会得】
2
周囲の物品に、製作者の残留思念が宿り、ディアボロスの操作をサポートしてくれるようになる。効果LVが高い程、サポート効果が向上する。
【口福の伝道者】
2
周囲が、ディアボロスが食事を摂ると、同じ食事が食器と共に最大「効果LV×400人前」まで出現する世界に変わる。

効果2

【能力値アップ】LV6 / 【ダメージアップ】LV8 / 【ガードアップ】LV2 / 【反撃アップ】LV2 / 【ドレイン】LV2

●マスターより

秋月きり
 お世話になります。秋月きりです。此度、竜の花嫁のお話をお届けします。宜しくお願いします。
 幻想竜域キングアーサー内で語り継がれる『竜の花嫁』。そこに切り込んで行って下さい。

 以下、補足となります。

●選択肢について
①竜の花嫁との接触
 竜の花嫁であるミランダ・アマレット嬢と接触して頂きます。本選択肢が成功しますと、シナリオが終了となります。

②コンテストへの参加
 町で行われている料理コンテストへ参加して頂き、優勝、或いは上位入賞を勝ち取って頂きます。③での情報収集が有利に働くかも知れません。

③街に潜入して情報を得る
 湖沼地帯の町に潜入し、様々な情報を得て下さい。観光地の為か、人々は旅人に警戒しておらず、普通に接しても好印象を抱かせることは可能ですが、残留効果を用いれば更に良い結果へと結びつく可能性があります。

④竜の花嫁の家族や恋人との接触
 ミランダの家族と接触することが出来ます。両親、そして兄のアルフが対象となります。

●その他
・未成年者の飲酒をはじめとした公序良俗に反する等、明らかに問題のありそうなプレイングは採用を見合わせますので、ご了承下さい。
・それ以外は皆様の思うとおり、色々と試して頂ければと思います。
・ミランダ嬢は明朗活発とした性格、アルフ兄は思慮深く、静かな性格の様です。アルコールが入るとちょっと壊れる感がありますが。

 それでは、皆様の楽しいプレイングをお待ちしております!
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このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


ソレイユ・クラーヴィア
目立たない色のマントを羽織って旅人を装い
情報収集を行います

花嫁とは名ばかりの生贄という運命を
私とそう変わらぬ少女が笑顔で受け入れている事が空恐ろしい
出来れば救いたいと思います

コンテストの情報を得る為に酒場へ行きます
お酒は飲めませんから料理を沢山注文して
どれもとても美味しいです!
と大げさに褒めます

シェフが出てくればシェフに
居なければ周囲の人にも食事を奢って
友達催眠も使用しつつコンテストについて聞き出します

どんな料理がウケやすいのか
過去の優勝者はどんな料理を作ったのか
ついでに花嫁ミランダの好きな食材・料理も知っていれば
お祝いの席に相応しい料理を作りたいと思っているので是非、と笑顔でお願いします


 湖沼地帯の町の賑わいを見せる酒場に、一人の少年とも青年とも付かない男性の姿があった。
 ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)。目立たないマントで旅人を装う彼もまた、新宿島から到来した復讐者の一人であった。
「とても美味しいですね!」
 酒が飲めない代わりにと頼んだ数々の料理は、彼の舌を楽しませている。
 だが、改竄世界史と言えど、西暦500年頃の食事は洗練の文字が見受けられない。畜肉をただ焼いたり茹でただけの肉塊、それと野菜が少々だ。腹を満たせれば良い、と言う観念が透けて見えている。
「折角ですし、皆様も如何ですか?」
 周囲に薦めていけば、いつの間にか酒場はソレイユ中心の人だかりになっていた。ただ酒ならぬ無償の肴だ。人々が躊躇する理由などなかった。
 一通りお腹がくちくなれば、人々の話題は色々な事に移り変わっていく。その中に、ソレイユの求めたコンテストの話題もあった。
「私もコンテストに出ようと思うのですが……前回の優勝者ってどう言う料理を出されたのでしょうね」
「お。敵情視察って奴だな!」
 正確に言うと異なるのだが、酔客の戯言だ。微笑で躱すことにする。
「前回は……確か、乳の麦粥だな。フルーツが沢山入っていて、甘くて腹持ちのする奴だった」
「牛の乳は病院食だってのに、見事なもんだったわ」
「成る程……」
 あくまで食材に対する認識は5世紀に準じた物のようだ。酒場での料理と言い、良くも悪くも常識は書き換え済、と言った処か。
「コンテストの料理は竜の花嫁様に捧げるものと聞きましたが、竜の花嫁――ミランダ様の好みってどうなんでしょうね」
「そりゃあれだ。伝統を大切に。でも新しいのも好みのようだぜ」
 審査の観点はそのようだ。この時代で手に入る食材で革新的な物を作る。前回の優勝が麦のミルク粥だったことから考えても、その路線が堅実の様だ。
「お祝いに相応しい料理を作れれば良いのですが」
「まあ参加は只だからなぁ。あれこれやってみると良いんじゃ無いかな」
 役に立つような立たないような助言に、ソレイユはクスリと笑う。
 彼の微笑を皮切りに、酒場にどっと笑いが溢れかえっていた。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】LV1が発生!

ソラス・マルファス
子の名誉が親の幸せってのは良くわかるが、そのために子が死ぬってのは頂けねぇなぁ。理解してるのかも分からねぇが、母親を説得するべきか。

生まれ育った町って訳じゃなさそうだが、知り合いだって自慢するヤツらもいるだろうよ。
子供の頃から知ってる、ってじーさん辺りを探すぜ。軽食とエールあたりを差し入れがてら話を振ってみよう

「折角の門出だ、思い出の料理で祝ってやりたくてよ。母親と良く買ってた菓子とか、好みのフルーツなんか知らねぇか?」

あとは子供の頃の思い出やエピソードがあれば聞きてぇな

あとは、花嫁がいかにして選ばれるか解りゃ良いんだが……公園で料理を考えがてら、噂話に耳を澄ませるとしようかね


(「子の名誉が親の幸せってのは良くわかるが、そのために子が死ぬってのは頂けねぇなぁ」)
 人々が行き交う大通りで、憤りの表情を浮かべる青年の姿があった。
 ソラス・マルファス(呪詛大剣・g00968)その人であった。
 時先案内人の言葉にあった竜の花嫁、ミランダ・アマレット。彼の感情の矛先はその両親に向けられていた。
(「だが、説得するにはどうすりゃいいんだ?」)
 相手はクロノヴェーダによって常識が改変された一般人だ。真っ向から説得したところで効果を成さないことは目に見えている。
「……ともあれ、まずは情報収集か」
 説得を行うにせよ、まずは竜の花嫁に近付く事が出来なければ、その一歩すら踏み出せない。
 よって、ソラスは湖沼地帯の町を歩く。狙うは町を知る人物――彼は、年配の人間に声を掛けることにした。

「じーさんはこの町、長いのか? 竜の花嫁も知っている奴かい?」
 釣り糸を垂らし、ぼーっと湖を見つめる老人を発見できたのは、僥倖であった。何処からともなく調達した軽食とエールを差し出し、ソラスは老人へ問う。
「竜の花嫁が選ばれる前の事は知らんが……」
 口が軽くなるのは、エールと軽食の所為だろうか。
「彼女は竜の花嫁に選ばれて連れてこられた口じゃからのぅ。この町で彼女を知るのは彼女の家族ぐらいではないかい」
「そうか……」
 今までの竜の花嫁同様、彼女もまたドラゴン様の御使いに連れられ、湖の別荘に移り住んだらしい。出身地は知らないし、詮索もしていない、との事だった。
「折角の門出だし、思い出の料理で祝ってやりたいと思ったんだがな」
「ほう。お前さん、コンテストの出場者か?」
 その腕があると認めたのだろうか。老人の言葉は何処か厳かに紡がれていた。
「好まれるのは菓子とかフルーツとかかな」
「期待薄じゃのぅ。この時期ならば苺や柑橘類が喜ばれるだろうが……如何せん、儂らのような一般庶民だと、それらを煮詰めてジャムにするくらいしか思いつかんわい。真新しい斬新な菓子でもあれば、それなりに審査員の関心を引くじゃろうが……」
 無論、審査員だけでなく、その献上先である竜の花嫁も同様だろう、と老人は続ける。
「そっか。参考にさせて貰うぜ」
 短い礼を述べ、ソラスは湖を後にする。
 既に老人は彼から興味を失っていたのか、視線は釣り糸の先へと戻っていた。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【士気高揚】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!

相原・相真
アドリブ・連携歓迎

他の皆さんが聞いてきてくれた情報、ありがたいです。
無駄にしないよう頑張るとしましょうか

現地にあるものを使ったお菓子…
これだ!ってものも思いつかないので、
じゃあ自分の作り慣れたものでいってみましょう
スイーツピザです!

この時代ならパンはあるはずだしパン窯を使って焼いて、
生地はパン生地を使えば何とかなるはず…
後は焼き上げた生地の上にフルーツを並べて蜂蜜をかけて、完成です
作り方を改めて新宿島で確認して、
不足そうなものがあれば不自然にならない程度で持ち込みましょう

ピザならバレンタインの時に散々練習したから何とかなるはず
後は美味しく食べてほしいっていう[情熱]を込めて作ります


(「成る程。現地にあるものを使ったお菓子か」)
 コンテスト会場へと向かう道すがら、ふむふむと頷き、唸る青年の姿があった。
 相原・相真(人間のガジェッティア・g01549)である。仲間達の仕入れてきた情報を精査する限り、その制限は守るべきものであると理解していた。
 おそらく別荘地であるが故、様々な物流が飛び交っているのだろう。中にはイングランドで入手出来ない食材もあったりするのかも知れない。それを料理の主軸とした場合、『再現出来ず』と失格になりかねない、と言うことだろうか。
「ならば、これだな」
 小麦があり、パンを主食としている。ならば平たく焼いたパンはその『現地にあるもの』の範疇だろう。
 当然、只のパンではコンテストの上位を目指すのは難しい。
 そこで彼は一計を案じる。それは――。

「むむっ。何ということだ! 平パンにフルーツを載せ、その上に蜜をまぶすなど! 甘露! そしてパンがその甘みをどっしりと受け止めておる!!」
「温かい生地と冷たい水果の二重演奏! これはたまらない!!」
 審査員の評判は上々だった。いや、すこぶる良かった。
 これぞ、相真が提出した料理、その名もスイーツピザだった。
 なお、ピザの原型はこの時代にも存在している。だが、今のピザの様に具だくさんと言う訳ではなく、良いところ、小魚や香草の類いを乗せて焼く、と言う代物だったようだ。
 即ち、湖沼地帯の町の住人にとって、ピザとは未知な食べ物。
 この反応は当然である。
 むしろ、それ以上であった。
「しかもこの生地のカリッとした香ばしさ! 均一に伸ばされフワッカリッが至福だと思い知らされる!」
 ピザ生地の特色を褒められると、なんだか照れ臭い。均一に伸ばしつつも耳を育てることこそ、ピザを美味しく作り上げるコツだが、よもやそこまで目が届くとは。
 審査員の審美眼は意外と高いのかも知れない。
 なお、その生地の焼き方も、バレンタイン時に散々と練習した成果によるものだ。過去の積み重ねが今の彼を作り上げている。それを表す逸品であった。
「これならば必ず、竜の花嫁も満足して貰えるでしょうな」
「しかしまだまだコンテストは始まったばかり。次の料理が楽しみだわ」
 スイーツピザへの賞賛は高く、思わず相真は笑みを零してしまう。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【操作会得】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!

ソラス・マルファス
家族以外は来てねぇのか
知り合いはこぞって見送るもんかと思ったが

何はともあれコンテストだ
菓子を作るのは久しぶりだが、まぁ何とかなるだろう

小麦と卵があるなら、シフォンケーキくらいなら作れそうか
調理器具は無ければ適当な枝を削って作るぜ

砂糖は無ぇようだから、砂糖なしとジャム入りにしよう
小さ目にして、色々な味を楽しめるように
金属型があれば上々だが、無ければ小さい鍋にバターを塗るか
加減が少々難しいがパン窯で焼くぜ

無糖にはジャムを添えて、ジャム入りにはスライスした果実を乗せる
牛乳をホイップして少しだけジャムと一緒に添えるとしよう

さして豪華ってわけでもねぇが、シンプルな味のはずだ
気に入ってもらえると嬉しいね


(「家族以外は来てねえのか」)
 卵黄を解しながら、ソラス・マルファス(呪詛大剣・g00968)はむむっと唸る。
 竜の花嫁はさておき、名誉職として別荘地に招かれたのであれば、一族郎党どころか、知り合い連中が押しかけてもおかしくはない。もしくは彼女の見送りに詰めかけても不思議はないのではないかとも思うが、逆を言えば、彼女にとっての近しい者とは、家族だけなのかも知れない。
(「何の変哲も無い村娘が、急にお姫様に選ばれたって奴だしな」)
 それだけを切り取れば、所謂シンデレラストーリーだ。寓話だけで語る訳にはいかないが、かの灰被りも父親と意地悪な継母、二人の姉しか近しい人物は登場していなかった筈。魔女や鼠などの脇役を除けば、だが。
 脇道に逸れてしまった思考を目の前に戻す。
 ともあれ、まずはコンテストへの入賞を目指さなければならない。その為に彼が選んだ料理は、ケーキ。それもシンプルなシフォンケーキであった。
「砂糖があれば良かったんだがな」
 確かに甘味である製菓には砂糖が不可欠。だが、それを使用できない制約が、コンテストにはあった。
 そう。この時代に於いて砂糖は未知の食材、未知の調味料。所謂オーパーツなのだ。北インドから中東を経てここイングランドに辿り着くまで、あと数世紀の時間を必要としている。故に湖沼地帯の町では調達出来ず、かといって新宿島から持ち込むわけにも行かなかった。
 だが、製菓の決め手となるのは甘味そのものだ。よって、彼が選んだ方法は果物を煮詰めて甘味を得る方法――ジャムの製作であった。

「ほう。ジャムと……ふむ。随分柔らかなパンだな。如何にしてこの様な柔らかな食感を生み出したのか……」
「卵白を攪拌することで空気を捉えたと言うの! 確かにそんな手法があると聞いたことが――」
「この食い応えは何だ! オリーブではない油脂が舌をくすぐってくるぞ!」
 ソラスの作ったシフォンケーキは好評を博したようであった。
(「初期中世恐るべし、だな」)
 メレンゲもバターも存在していた筈だが、あまり浸透している感はなかった。現代と違い、食に対する知識の共有も難しいのだろう。
「美味い! 実に美味し! これも必ずや竜の花嫁様のお気に召すに違いない!」
 投げ掛けられたのは大げさな賞賛で、逆にソラスは、若干のくすぐったさを覚えてしまうのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【士気高揚】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!

ソレイユ・クラーヴィア
伝統を大切に、そして祝宴に相応しく普段の食事より洗練されたものを
更にはボリュームもあった方が良い、と
うーむ…
とにかく、やってみましょう

魚の香草パン粉焼きを作ります
湖沼地帯と言うなら淡水魚は豊富に採れるはず
鮭かマスを捌いて丁寧に骨取り
先に皮目へ焼色を付けたら
香草と粉チーズを混ぜたパン粉を纏わせ
オリーブオイルを掛けてオーブンへ
手作りマヨネーズにピクルスと卵をあえたタルタルソースを脇にたっぷりと
パン籠を添えたら完成です

手づかみでも食べやすく
パンに挟んでも良し
魚、乳製品、パンという普段の食材で
少し違った風味を目指してみました
如何でしょうか…?

食べた人が笑顔になれるような料理が作れたら嬉しいです


(「伝統を大切に、そして祝宴に相応しく普段の食事より洗練された物を、更にはボリュームもあった方が良い、と言うのですか」)
 コンテストの為に用意された調理場で、ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)はむむっと唸る。
「製菓が多いようですし……ならば、私は『食事』で行きましょう」
 甘い物ばかりでは口が飽きてしまう。ここらで塩味を提出するのも良いだろう。
「ともあれ、やってみましょう」
 市場で仕入れた淡水魚――おそらく、マスの一種だろう――を前に、ソレイユはナイフを構える。丸の魚を食材に変えることは、料理をする上での基本であった。

「ほぅ。焼き魚か! これまた正統な料理が出てきたもんだ!」
「パンを粉状に挽いて、纏わせたのね。魚のエキスと香草の野趣を吸ったパンが良い仕上がりになっているわ!」
「この香ばしさときたら! 成る程。保存用のチーズを粉にし、焼く際に塗したのか。チーズとオリーブオイルの織りなす重厚な仕上がりはどうだ!」
 果たして、ソレイユの料理もまた、絶賛の嵐に包まれていた。
 酒場で聞き及んだ麦の牛乳粥を思えば、おそらくこの時代、料理という概念その物が拙い印象であった。焼く、蒸す、煮ると行った基本調理工程のみならず、そこに一手間を掛けることは、それだけでも彼らの目にとっては斬新に映るのだろう。
「焼き魚の味も然る事ながら、此度、注目すべきはこの白いソースだろう。酸味が主体のこのソースこそ、香気の強いこの焼き魚を引き立てる随伴兵だわい」
 卵と酢を攪拌し作った手製マヨネーズに、刻んだピクルスを投入したタルタルソースは、審査員達の心を鷲掴みにしたようだ。
 中にはタルタルソースその物を添えられたパンに塗りたくり、口に運ぶ者も居た。
 その表情は幸せその物で、提供したソレイユの表情も思わず綻んでしまう。
(「そうですね。料理の本質とは他者への思いやり。笑顔になれる料理こそ、花嫁を祝う一皿に相応しい」)
「この味ならば必ずや、花嫁様を満足させるに違いない。いやはや、今回のコンテストの質は高いぞ!」
「お褒め頂き、ありがとうございます」
 審査員達が零した賞賛に、ソレイユは深々と頭を下げるのであった。
大成功🔵​🔵​🔵​
効果1【プラチナチケット】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!

葉切・松露
【遊び場】クラマにーさん、紘希と

神様のお嫁さんになるってことの意味、ばーちゃんに聞いたことあるですよ。
花嫁さんは幸せそうですけど、できるなら皆が心から祝福できる結婚をしてほしいですよね。
…うん、難しいことは後で。喜んで貰える料理を作るですよ。
2人の袖をぎゅっと握って、気合を入れて料理にかかるです…!


デザートはクラマにーさんに任せて、おれはメインを担当するです。

紘希とクラマにーさんから、この時代の人にとってお肉は贅沢だって聞いたので、春鹿を狩ってきたですよ。熟成度合いもバッチリです!

ハーブと塩でじっくりロースト。甘酸っぱい苺のソースも用意して。
よし!紘希、盛り付けは頼んだですよ!


アドリブ歓迎!


クラマ・レインコート
【遊び場】
幸せは幸せでも殉教の血にまみれた幸せだがな
全くもって詐欺師だねぇ

それじゃマツユはメイン頼む
コウキは小麦粉を捏ねまくってパンの準備頼むわ

審査員にウケて、嬢ちゃんには気付いてもらえるような祝いの料理か…よし、決めた。
サクリとした食感のためパンは固めに焼き、ざく切りでラスク状にしバターを塗る
溶かした砂糖を絡めたアニスシードを載せれば…

お待たせしました
「ベスハウト・メット・マウシェス」です。
ある国で出産祝いに振舞われる菓子で、
料理に込められた意味は「誕生」「新しい時代を生きる」となります

殉教の理に従えば、待つのは死だけ
だが天命を待つのは人事を尽くしてからだ
新しい時代を生きる権利は誰だってある


不知火・紘希
【遊び場】
クラマくん、まー(松露)くんと

皆、幸せな場所なんだね。
でも誰かが悲しむのは本当の幸せじゃないんだよ。今のままじゃ伝わらないんだ…
待ってて、僕らが花嫁さんと家族も心から笑顔になるお料理を届けるよ! 

僕は料理上手なふたりのお手伝い
今までの審査員の反応を観て、好みを伝えるね。
パンこねるの?わかった!その間、楽しくお話だね。仕上げは僕にまかせて!
見ても楽しくなる飾りつけを…お肉は華のバラみたいに、クラマくんのはカラフルな並びに。自作お皿を持ち込んできれいに盛りつけよう

祝福の気持ちを表現して…
だけど、わかる人には気づいてほしいから。ほんとの幸せにも気づくようなお料理に見せたいかな。

アドリブ歓迎


 コンテストは終盤へと差しかかっていく。
 菓子、おかず、そして主食……。様々な料理が審査員達に供され、そして判定されていく。
 中には酷評を受ける物もあった。これは竜の花嫁に相応しくない料理だとはね除けられる物もあれば、ただ、奇を衒っただけの料理と呼べない代物も存在していた。
 だが、その中でも復讐者達が作り上げた料理の数々は、概ね好評だった。
 料理とは知識である。そして、改竄世界史とは言え、この幻想竜域キングアーサーと言う世界に住まう人々は、その知識を有さない中世の時代の住人であった。
 故に。
 現代人である復讐者達が彼らに好評を得るのは、当然と言えば当然であったのだ。

「神様のお嫁さんになるってことの意味、ばーちゃんに聞いたことあるですよ」
 葉切・松露(ハキリアリのきのこ農家・g03996)は静かに呟く。
 それは現代人から見れば、悪習慣と言わざる得ない風習だ。乙女を神に捧げ人柱と化す。生贄の文化など、至る所で散見されている。
「うん。難しいことは後で。喜んで貰える料理を作るですよ」
「そうだね」
 松露の言葉に頷くのは不知火・紘希(幸福のリアライズペインター・g04512)であった。
(「ここは皆が幸せな場所かも知れない。でも、誰かが悲しむのは本当の幸せなんかじゃない。今のままじゃ伝わらないんだ……」)
 女性を竜の花嫁に捧げられ、嘆く人がいる。時先案内人を通じ、その事実を、彼は知っていた。
「花嫁さんと家族も心から笑顔になるお料理、幸せな料理を届けよう!」
 気合いは充分であった。
「幸せか」
 クラマ・レインコート(雨合羽の運び屋・g04916)の独白は、むしろ何の感情も挟まれていなかった。
(「幸せは幸せでも殉教の血にまみれた幸せだがな。全くもって詐欺師だねぇ」)
 この世界の支配者はあくまでもクロノヴェーダである事を思い知らされる。洗脳された彼女らが死を望むのは、全てクロノヴェーダの差し金。僅かに排斥力が作用しなかった人がいる様だが、それでも、彼ら/彼女らは無力な存在だ。
(「それでも、新しい時代を生きる権利は誰にでもあるんだ」)
 天命を待つのは人事を尽くしてから。その思いを伝えるべく、彼は紘希の用意したパンを硬く焼き上げ、ラスクとしていく。

 三人が審査員達へと出した料理は松露の肉料理、そしてクラマの菓子料理であった。二者の完全サポートに回った紘希は、その出来映えに満足げな表情を浮かべていた。
「ほう。鹿肉か」
 畑を荒らす害獣を退治た後、その肉を食する文化はもう根付いているのだろう。現代ならばジビエと言う、好みに左右される分野で食される鹿肉だが、畜産業が未熟なこの時代に於いては、ごく当たり前の料理として存在しているようだった。
「確かに獣肉はご馳走であり、ご馳走とは即ち、それを提供する為に主人が走り回ることを意味している」
「だが、肉を只焼いただけであれば、竜の花嫁に相応しい料理とは言えんよ……」
 手を着ける寸前まで、審査員の言葉は懐疑的に紡がれていた。
 だが、それも肉を一片、口に運んだ瞬間までであった。
「ふぉおおっ。表面はかりっと香ばしく、しかし、中は重厚且つ柔らかい!肉の旨味が口いっぱいに拡がり、しかし、脂は強くないなどと……! 成る程、ゆるりと焼くことで余分な脂を流し出したか!」
「このソースは……苺?! 獣肉と果物を共に食べるなんて! だが、この甘酸っぱさが肉の旨味を、塩っ気を引き立てていくっ!」
「まさか鹿肉そのものが違う? いや、これはこの辺りで採れる鹿肉と変わらない。だが、何故これほど迄に美味くなる?!」
(「それは肉の熟成ですよ」)
 肉の蛋白質は時間と共に分解され、旨味成分のアミノ酸へと変化していく。しかし、その知識が無ければ、冷蔵庫などないこの時代、狩猟直後の肉をすぐさま調理する、或いは干し肉などの保存加工をするしかない。適度に熟成された肉を食する機会など、彼らにはないのだろう。
「よく見れば皿の上に乗る肉は、薔薇の如く広がっている。成る程、味も然る事ながら、これは祝福を意味する料理に他ならない……」
 紘希の盛り付けも好評であった。審査員達が零す感嘆に擽られ、思わず鼻高くなってしまう。
「さて、ならばこちらの菓子は……? 色鮮やかな菓子で確かに物珍しいが、奇天烈なだけでは我々を満足させる事は出禁ぞ?」
 次に審査員達が手にしたのは、クラマ手製の菓子であった。
 ラスクに砂糖菓子――糖をまとった薬草を載せた逸品だ。癖の強いアニスシード達は現代でも好みが分かれるところ。
 だが、この料理こそに意味があった。
「料理の名前は『ベスハウト・メット・マウシェス』です」
 それはオランダで食される出産祝いの菓子の名だ。そこにこそ、クラマの込めた意味がある。
「ほう。平パンはさくりと香ばしく、そしてその上の薬草達は鋭く鮮烈だ。強い臭気が後を引く――」
「蜜の甘露さと薬草の強烈さは癖になるな。だが、これは好みが分かれそうだわい」
 唸る審査員達。中にはアニスシードの強い味に「ちょっとこれは……」と皿に戻す者もいた。
 そう。それはクラマも理解していた。茴香臭とも言うべく強い風味は、現代日本でも不得手とする者が居る。まして、それに慣れないキングアーサーの住人達では、否と判断する者がいても致し方なかった。
 それでもなお、この料理を選んだ理由があった。
「この菓子は『誕生』『新しい時代を生きる』を意味します」
「なんと! つまりこれから竜の子を産む竜の花嫁にとっては――」
「清涼さもあるこの料理は、そこまで考えられたものだったのか!」
 審査員の持て囃しに、しかし、クラマは内心のみで否と応える。
 料理に込められた意図の先は、彼らの言うように竜の子――竜鱗兵などではない。それを産み、死へと旅立たねばならない花嫁に対してだ。
 だが、それを口にするつもりはない。伝わる者にのみ伝われば良い。それが彼の考えであったからだ。
「肉も菓子も素晴らしい代物であった。今回のコンテストは本当にレベルが高いな」
「満足のいく料理が出揃っていましたわ……」
 その溜め息は、感嘆の中に紡がれていた。

 そして、料理コンテストは閉幕していく。
 上位入賞はスイーツピザ、シフォンケーキ、マスの香草焼き、そして、クラマ作の出産祝い菓子であった。
 それに加え、審査員達が満場一致で是を出した代物があった。この逸品こそ、竜の花嫁に捧げるべき料理であると。
「炙っただけの鹿肉だったが、これこそ、伝統と物珍しさの融和よ。他の上位入賞も含め、必ずや、竜の花嫁の目に止まるものとなろう」
 審査員に導かれ、復讐者達はその別荘へと赴いていく。
 コンテストで作成した料理を再び振る舞うように。
 それが今、彼らに課せられた使命となっていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【託されし願い】LV1が発生!
【液体錬成】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【反撃アップ】LV1が発生!

ソラス・マルファス
母親を説得しよう
「娘さんが竜の花嫁へ選ばれたこと、お祝い申し上げる」

「出来れば料理はアンタに作ってもらいたいと思ってね。娘が最期に食いてぇのは、きっと母親の手料理だろうからよ」
作りながら思い出話を聞こう

「彼女の好きな果物を入れてやるといい」
先の季節の果物を挙げ、何が好きだい?と聞いてみる

「どれだけ名誉であろうとも、先が無ぇってのは物悲しいもんだな。人としての幸せを捨てて、命も捨てて、か。我が子をその手に抱くこともできねぇんだろうなぁ」
俺んとこは息子だしまだ小さかったが
いつか孫を抱くことになるだろうか、なんて妻と話したもんだ

「なぁ、アンタはホントに、これでいいのかい?助けが必要なら、力になるぜ」


 竜の花嫁の別荘に潜り込んだ復讐者たちは、各々の信念を以て行動を開始する。その為の下準備は既に整えられていた。
 そして、ソラス・マルファス(呪詛大剣・g00968)の選択肢は――。
 母親への面会であった。

「おや? ケーキを焼いてくださった料理人の方ですね。美味しく頂きましたわ」
 年の頃だけ見れば30半ばいった処か。花嫁に選ばれた娘を持つ母にしては若い彼女に、「む」と眉根を寄せてしまう。だが、それが21世紀の基準である事を思い出すと、いかん、とソラスは首を振る。この幻想竜域キングアーサーは、言うならば中世時代の改竄世界史。結婚適齢期もまた、それに相応しい物に改竄されているのだろう。
「娘さんが竜の花嫁へ選ばれたこと、お祝い申し上げる」
「あら? ご丁寧にありがとうございます」
 和やかな笑顔だけ見れば、ただの貴婦人だった。そんな彼女が娘の死を名誉ある物と喜んでいるなど、誰が想像出来ようか。
 最期の料理に相応しい料理を聞きに来た、と言う体のソラスに、しかし母親は和やかに応じてくれる。そう言えばあの子、林檎が好きでしたのよ、だとか、葡萄は酸っぱいのを食べてしまって以来、苦手にしている等、雑談は多く飛び出してくる。
「なあ、あんた、本当にそれでいいのかい?」
 末期の料理を問うソラスに、ごく自然に応じる彼女は、何処からどう見ても母親である立場を崩していない。それだけに違和感があった。本当に彼女は娘の死を嘆いていないのか、と。
「どれだけ名誉であろうとも、先が無ぇってのは物悲しいもんだ。人としての幸せを捨てて、命も捨てて、か。我が子をその手に抱く事も出来ねぇんだろうなぁ」
「そうですね。でも、それが竜の花嫁になる、と言う事です。そして、私たちがミランダに変わりあの子の子を、竜鱗兵様を育てる。そうね。あの子に恥ずかしくない育て方をしなければいけないわ」
「……そうかい」
 紡がれる言葉、そして目に宿る光に言葉を詰まらせてしまう。
 洗脳はそれ程までに強固なものであった。それを理解してしまったのだ。彼女の常識はクロノヴェーダによって書き換えらてしまった事を。それ故、彼女は本心から、娘の名誉ある死を喜んでいるのだ、と。
「助けが必要なら、力になるぜ」
「ありがとうございます。そうですね、次も美味しいケーキを焼いて頂ければ、とても嬉しいですわ」
 慟哭を思わせるソラスの絞り出す声に、しかし、母親からの返答は快活なものであった。
成功🔵​🔵​🔴​
効果1【士気高揚】がLV3になった!
効果2【能力値アップ】がLV4になった!

葉切・松露
【遊び場】紘希、クラマにーさんと

親父さんに会いに行ってみるのはどうですか?
何だか様子が違ってた気がするですし、もしかしたら何か聞けるかもしれないです。

そう二人に伝えて、花嫁さんのお父さんを探すですよ。

この度は…。
相手の気持ちが分からないときは、言い淀むのが一番だってばーちゃんも言ってたです。
ちらっと顔を見て、様子を探ってみるですよ。狩りと一緒で、観察するのが大事ですものね。
どんな気持ちなのか分かったら、二人にも伝えるです。


親父さん、おれたち花嫁さんを死なせたくないんです。
助けられる方法があるなら教えてくれですよ。
そしたら次はきっと、みんなで美味しいごはんを食べられるですよね?

(アドリブ歓迎)


不知火・紘希
【遊び場】クラマくん、まー(松露)くんと

お父さんかぁ。うん、いいね。
お父さんも心の中では考えてることがあると思う!
クラマくん、まーくんとお父さんを探して、声をかけるよ

いきなりおめでたい雰囲気を壊しちゃいけないよね。
様子を観ながら、最初はちゃんと挨拶してお祝いの気持ちを伝えるよ。

花嫁さんに選ばれるくらいだから、自慢のステキな娘さんだよね。
お父さんは、生まれた時からそんな娘さんを見てきたんじゃないかな。
例えば、僕くらいの時、将来の夢とかあったと思うんだけど…覚えてる?
ミランダさんは、大人になったらやりたいこと、きっとあったよね。
もしよかったら聞かせてほしいんだ。
…お父さんの大事な、娘さんのこと。


クラマ・レインコート
【遊び場】
父親に近づいて「ベスハウト・メット・マウシェス」を渡し、意味も伝える。
まるで先程の審査員たちのような反応で。
「二度と会えない事」と「死ぬために生まれてきてありがとう」と
それも犠牲になることを祝福するように、「娘の死」を自覚させる。
……意図しちゃいないが、まるで『悪い刑事と良い刑事』だな。

あとはコウキとマツユに任せるぜ。
このオッサンの心を開かせるなんて俺にはできない。
だから俺にできないことができるやつに、出来ることを任せる。
俺ができるのはお膳立てだ。

真実から目を逸らして、ただ家畜のまま生きるのか?
「祝福」と「新しい時代を生きる」の意味、もう一度考えてみな。
…誰に何と思われようとな。


 復讐者たちと竜の花嫁の家族たちによる話談は続いていく。
 そして、その葉切・松露(ハキリアリのきのこ農家・g03996)、不知火・紘希(幸福のリアライズペインター・g04512)、そして、クラマ・レインコート(雨合羽の運び屋・g04916)の三者の足が向けられた先、それは竜の花嫁ミランダ・アマレットの父親、アマレット氏の私室であった。

「親父さんに会いに行ってみるのはどうですか? 何だか様子が違ってた気がするですし、もしかしたら何か聞けるかもしれないです」
 提案は松露からだった。
「お父さんかぁ。うん、いいね。お父さんも心の中では考えてることがあると思う!」
 賛成の意を示したのは紘希で、二人を見守るクラマも是と頷く。
 時先案内人の予知を思い返せば、最も反応があったのは竜の花嫁の兄、アルフだろう。だが、彼女を祝福していた母親と違い、父親には何か思うところがあったようだ。だとすれば、攻略する意味があるやも知れない。
 その想いを以て三者は父親に宛がわれた私室へと向かう。
 そこに待っていたのは、口髭を生やした中背中肉の男性であった。

「ああ。すまない。客人が来ていたのは知っていたのだけども……習慣で飲んでしまっていてね」
 寝酒の習慣があったのか、それとも別の意図があったのか。机の上に広げた琥珀色の液体を片付けながら、彼は微苦笑を浮かべていた。
「鹿肉の料理人と、それと珍しい菓子を用意してくれた料理人だね。えっと、菓子の名は確か――」
「ベスハウト・メット・マウシェス、です」
 もう一枚と、クラマは自らが作った菓子を父親、アマレット氏へと渡す。
「こちらの二人が未成年でね。生憎寝酒には付き合えないが……まあ、酒の肴ぐらいならばいいだろう」
「ふむ。祝いのお菓子だと聞いたな。成る程。確かに娘に相応しい」
 香辛料の強い味の為、好みの分かれるお菓子だが、酒のあてとしてアマレット氏は気に入ったのだろう。さくりと頬張り、目を細める。そこに浮かぶ色は、読み取るのに難しい輝きを有していた。
「ええ。『竜の花嫁は竜の子を産み、そして死んでいく』『竜の子よ。母を殺し、生まれてきてありがとう』の意を汲み『誕生』をお祝いする菓子です」
「……」
 刹那、氏の瞳が揺れ、天井を、そして壁を彷徨う。
 クラマの言葉に思うところがあり、しかし反論が出来ない。そんな感情の揺れが、所在なさげな動作に繋がっているように思えた。
(「真実から目を逸らして、ただ家畜のまま生きるのか?」)
 おそらく彼にとって、今こそが分水嶺なのだろう。クロノヴェーダの家畜となり、安寧を貪るか、それとも真実に目を向け自由の死を選ぶのか。その域に立ち、しかしそのまま動けなくなっている。その状態をクラマは理解する。
 そして、クラマは一歩身を退いた。自分の言葉は父親の心に波紋を投げ掛けた。自身に出来るのはそこまで。後はコウキとマツユの仕事だ。
「このたびは……」
 松露は氏の顔色を窺う。正確には、彼の感情の揺らぎを、だ。それは彼にとって、狩りと同じ。動向を予測できなければ、捕捉することなど夢のまた夢だ。
「ああ。ありがとう。少し、考え事をしていてね」
「それは、やっぱりミランダさんの事ですか?」
 彼の問いに、アマレット氏はああ、と頷く。
「ミランダさん、素敵な花嫁さんでした。自慢の素敵な娘さんだよね」
 続け様に放たれた援護射撃は、紘希が紡いだもの。だが、それは、氏の次の言葉を紡がせる絶好球と成り得ていた。
「ああ、そうなんだ。ミランダは……私たちの可愛い娘で、気立ても良くて……」
 突如現れた料理人に、しかし心の内を告げるなど、普通ではあり得ない。今の状況は、復讐者たちの親和性と何より、【友達催眠】の残留効果が作り上げた好機であった。初対面の彼らの投げ掛けに、しかし、親しい友人からの言葉ならばさも当然と、アマレット氏は心の内を口にしていた。
「親父さん、おれたち花嫁さんを死なせたくないんです」
「まだ、ミランダさんはやりたい事があるはずだよ。例えば、僕くらいの時、将来の夢とかあったと思うんだ。……覚えている?」
 彼が目を逸らしていた最愛の娘の死に切り込んだのはクラマだった。そんなクラマの開けた風穴を、松露と紘希の二人が切り広げていく。
 効果は覿面であった。
「ああ、ミランダ。ミランダっ」
 嘆きと共に、アマレット氏は硝子グラスをも床へと落とす。ドラゴンの用意した調度品であろう絨毯が無ければ、砕け散る音が響いた事は、想像に難くなかった。
「親父さん。次もみんなで美味しいご飯を食べましょう? だから、ミランダさんを救う方法を……」
「ねえ、お父さん?」
 二人の言葉に顔を上げた彼の双眸は、輝くまでに濡れていた。
「そうだ。私はあの子に竜の花嫁になど――」
 それはおそらく本心だった。可愛い我が子に死を望む父親など居る物か。そう思わせる言葉はしかし。
「……そうだ。竜の花嫁として、竜の子を授かり、名誉ある死を迎えて欲しいのだ」
「親父さん?!」
「お父さん?!」
 頭を押さえながら口にした父親としての台詞は、酷くしゃがれた響きで、だが、確かな物として響き渡る。
「……これが排斥力か」
 強固な洗脳に、クラマの舌打ちだけが響き渡った。
 クロノヴェーダがこの改竄世界史の構築にと敷いた排斥力は、ただの一般人である彼に抗える物ではなかったようだ。刹那だけでも本心を引き出せたのであれば、上等。おそらくこれ以上を望む事は出来ないだろう。
「仕方ないですよ。おれらの【残留効果】も同じです」
 口惜しげに松露が呟く。復讐者と歴史侵略者。超常存在の織りなす力に、一般人は為す術もない。氏と躱した先程の会話こそ、奇跡に近い代物であった。
「でも判ったよ。お父さんも本心では娘さんを助けたいんだね。……うん。多分、お父さんだけでなくて」
 紘希の言葉に、松露は強く頷いた。ならば、必ず助けてみせると、頭を押さえるアマレット氏へと誓う。
「『祝福』と『新しい時代を生きる』の意味、もう一度考えてみな」
 それは激励だったのか、それともただの焚き付けだったのか。
 クラマが残した台詞に彼はただ、首を振るだけだった。
「ああ、私はミランダに生きて……いや、選ばれた竜の花嫁として竜の子を産んで欲しくて……いや、だが、ミランダ……」
 口から零れる言葉は、もはや意味を為す物として、紡がれてはいなかった。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
効果1【植物活性】LV1が発生!
【液体錬成】がLV2になった!
【トラップ生成】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV2が発生!
【反撃アップ】がLV2になった!

ソレイユ・クラーヴィア
アルフの話を聞きに行く

料理の材料が足りないフリをしてアルフを探します
酒を飲んでいるなら冷たい水を持っていきましょう

友情催眠を使用
大丈夫ですか?
貴方はミランダの兄上、でしょうか

この度はおめでとうございます
私は料理で皆さんに笑顔を届けたいと思っていますので
そう浮かない顔をされていると心配になります

もしかして、花嫁の事ですか?
私も少し気になっていました
花嫁とは名ばかりの生贄
死んでしまえば笑う事も美味しい物を食べる事も永遠に失われてしまう
本当にそれで良いのでしょうか

私は彼女の本心が知りたいのです
もし心の奥底では嫌だと思っていても周囲が許さないなら
それは間違っていると思います

協力をお願いできませんか?


相原・相真
ふるまう料理を準備したうえで隙を見てアルフさんに接触
「妹さんを助けるために、お話があります」とでも切り出しましょう

単刀直入に言います、
俺はミランダさんが竜の花嫁として死ぬのを止めたい
彼女を説得するために、
話を聞かせていただけませんか?

聞きたいことは、
竜の花嫁となる前の彼女はどんな人物だったか、
やりたいことや夢などなかったかなど、
説得のきっかけとなる部分がないかです

そうしてアルフさんと話したうえでお願いを
彼女を説得する事が出来たとしても、
すぐに花嫁という立場から救い出すことはできません
だからどうか時が来るまで彼女を支えてあげてください
時が来たら必ず、俺たちが貴方がたを助けますから


 そして、相原・相真(人間のガジェッティア・g01549)とソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)もまた、行動を開始する。
 二人が向かった先、そこはミランダ・アマレットの兄、アルフ・アマレットに用意された私室であった。

「ミランダ。ああ、ミランダ……」
「お兄さん、飲み過ぎです」
 既に酒精に塗れ、ぐでんぐでんに酔っ払っているアルフに、相真はむむっと唸る。これは都合がいいのか悪いのか。時先案内人の言葉を借りれば『思慮深く、静かな性格』だったようだが、アルコールが入った今、その評価も形無しであった。
「大丈夫ですか?」
 冷たい水を手渡すついでに、ソレイユは【友達催眠】を彼へと付与する。アルコールに灼けた目は、親しい者に向けるそれへと変わって行っていた。
「ああ、キミ達か。無様な姿を見せたね」
「いえ。大丈夫です。……やはり、妹さんの事で、心を痛められているのですね」
 家族の中で唯一、彼だけがミランダの未来――竜鱗兵を産み、死に至る事を嘆き、非難していた。何故彼だけ、排斥力の対象外となったのかは判らない。だが、ミランダ説得の鍵は彼にあると二人は踏んだのだ。故に、此処にやってきた。
「――あ、ああ」
「単刀直入に言います。俺らはミランダさんが竜の花嫁として死ぬのを止めたい」
 その為に彼女を説得したい。相真の言葉にアルフは二、三の瞬き、そして彼の顔を見やる。
 二人の紡ぐ真摯な表情は、彼を騙そうとする物ではなかった。もっとも、アルコールで鈍くなった思考回路に、それを判別する力が合ったかどうかは不明であったが。
「な、なんだ。やっぱりキミ達もこんなこと、おかしいって思うんだよな?!」
「ええ」
 ソレイユは頷き、言葉を続ける。
「花嫁とは名ばかりの生贄。死んでしまえば笑う事も美味しい物を食べる事も永遠に失われてしまう。本当にそれで良いのでしょうか? 一料理人としても、友人としても疑問が強く残ります」
「説得しましょう。ミランダさんが『死にたくない』『竜の花嫁になりたくない』。ただそれだけを願えば、俺達は彼女を救えます。……だから、アルフさん。彼女について教えて下さい。彼女の為人、やりたい事や夢はなかったか、どんな人だったかを……」
「彼女が心の底から嫌だと思うのなら、周囲が彼女を、そしてアルフさんを許さないとしても、それは間違っていると思います」
 相真の問いとソレイユの想いに、アルフは何度も強く頷いた。
「ミランダは、子どもの頃から元気で、でも、家族想いの子だったんだ。ああ、そうだ。あの子が死を選ぶなんて考えられない! 美味しいご飯をみんなで食べて、家族全員が笑い合う、そんな未来を夢見ていた筈だ!」
「料理が好きなのは、何となく察していました」
 料理人を呼ぶコンテストを望んだのも、ミランダの想いの体現だったのだろう。
「ああ、美味しい料理を父さんと母さんと、そして僕や生まれてくる子どもに振る舞いたい。自分はもう、ずっと食卓を囲めないから……って、そんな優しい子なんだよ」
(「だから皆で囲める『伝統』を意識してたのでしょうか……」)
 コンテストの要項を考えれば、料理人が去った後でも再現出来るようにしたいとの想いを汲むことは出来た。それは、ずっと食卓を囲みたいという考えの現れだったのだろう。
 そして、『真新しい』を求める瑞々しい感性もある。アルフのみならず、残される家族が望めば、彼女は考えを改めるのではないだろうか。
(「でも、排斥力はどうやって突破しましょうか?」)
 仲間達の接触で、家族を捉えている洗脳がとても強力な物である事を、彼らは知っている。揺れ動く父と頑なな母親。二人を何とかしなければ、それを達することは出来ないだろう。
「協力をお願い出来ませんか?」
「ああ、ミランダの為なら、可愛い妹の為なら何でもしよう! 約束する! だから妹を!」
 縋り付くように、アルフはソレイユの手を取る。ゴツゴツと荒れた手が震えているのは、酒精の所為のみではないだろう。
「でも、俺達は救いの手を差し伸べる事が出来ても、直ぐに花嫁という立場から救い出す事は出来ません。だから、どうかその時まで、彼女を支えて上げて下さい。時が来たら、必ず彼女を救い出します」
「ああ、ああ」
 涙を流し、相真の言葉に幾渡も頷く。
「でも、どうやって……?」
「もしも本当に『生きたい』とミランダさんが望むなら、その想いをご両親に伝えて頂きましょう」
 今は彼を安心させることが何よりも重要。その想いを以て、二人は同じ言葉を紡いだ。
「「俺達は料理人ですから」」
 祝いのお菓子を用意した仲間の顔を思い出す。料理は想いを伝える手段としても活用出来るはずだ。
 そう、やることなど、最初から決まっていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】がLV2になった!
【託されし願い】がLV2になった!
効果2【ダメージアップ】がLV5になった!

ソレイユ・クラーヴィア
ミランダに鱒の香草焼きを振る舞います
良ければ家族で召し上がってください

私は食べる人の笑顔になってくれますようにと
思いを込めて料理を作ります
だからミランダやご家族の皆さん全員が
この先もずっと笑って食卓を囲んで欲しいのです

でも竜の花嫁にこの先はありません
皆さんは本当にそれで良いのですか?
ミランダの居ない食卓で
残された家族は笑顔で食事ができますか?

思い出してください
貴方は家族との食事の時間を大切にする方のはず
ご両親はそんな娘を心から愛していたはず
お兄さんもそうですよね

名誉より大切な物
それは命であり笑顔です
貴方が運命に抗うなら必ずその時に助けに来ます
だからどうか生を諦めないで
生きたいと願ってください


不知火・紘希
【遊び場】クラマくん、まー(松露)くんと

お父さん、心の底に眠らされてる気持ち、受け取ったよ。
ミランダさんを失いたくないって言葉にしてるお兄さんもいる。
きっとね、お母さんも。だって命を生むことを知ってる人でしょ?

明るい人って聞いたから、バラのお肉に花を添えるね
添えるのはミランダ。意味を込めたピンクの薔薇だよ。
このお花みたいに素敵な娘さんで…ってお父さんの様子を伝えよう
お菓子も、ミランダさんと家族で食べてほしくて作ったんだ

ふたりや仲間たちの言葉に、少しでも揺れてくれたら
仕草を見逃さずに話しかけるよ

ねぇ、幸せに家族とご飯を囲む未来を生きてみたくない?
本当の未来を望むならその約束、僕らがきっと叶えるよ


葉切・松露
【遊び場】紘希、クラマにーさんと

親父さん…辛そうでしたね。それに、お兄さんも……
二人の想いを伝えるためにも、花嫁さんとお話できるようにもっと美味しいお肉を焼かないとですね。


この度は、ご結婚…おめでとうです。

あの、花嫁さん!こうやって食べてみてください!
(お肉とお野菜と、濃くしたソースを黒パンに挟んで)
おれは畑仕事の合間には、こういうお弁当を作って食べてたですよ。
家族にも喜んで貰えて…それがすっごく嬉しくて…。

よかったら作り方、教えるです。
クラマにーさんのお菓子も。
ミランダさんに作って貰えたら、親父さんもお母さんも…
お兄さんも、きっと喜んでくれるですよ。

(アドリブ連携歓迎です)


クラマ・レインコート
【遊び場】
この世には形にできないものがある
心であったり、絆であったり
料理はそんな想いを伝える手段だ。

「ベスハウト・メット・マウシェス」
この菓子に込めた意味に全てを賭ける

この菓子、親父さんも気に入ってたぜ。
でもな…泣いてたぜ、親父さんも家族も。
ああ、勘違いすんなよ?喜びの涙じゃなくて悲しみの涙でな。
その涙の意味を変えるかどうかは…お前さん次第だ。

一言だけ『生きたい』と言え。
そうすりゃ俺たちがお前さんを身勝手に助けて、身勝手に攫っていく。
『運び屋』の…『復讐者』の矜持に賭けてな。

結婚は人生の墓場っていうしな
そう急いで墓に入る必要もないだろ。

世界のしがらみなんざクソ喰らえだ。
見たい明日があるんだろ?


ソラス・マルファス
幸せの形はそれぞれだ……だが、やはりこの状況が幸せとは、俺は思えねぇよ

「そういえば、迎えの竜騎兵以外に逢ったことはあるか?」
言葉を選びつつ、ベルファストの様子を教えよう
「アンタにそんなものの親になって欲しくねぇし、アンタが生け贄になることを名誉の犠牲とも思えねぇ」

苺と柑橘のシフォンケーキを差し出そう
「ジャムとも違って面白い味だろう?林檎で作ったのも美味いんだぜ。簡単だからよ、今度家族で作ると良い」

家族もアンタも、俺たちが守ってやるよ

半信半疑でもいいさ
真実を知るためにも、今までの流れと今後どうなる予定だったのか、聞き出そう

どれくらいの時期に、どこで卵を産むのか
迎えの竜騎兵はどの辺にいるのか


相原・相真
このピザはパーティー用の料理です
大きな一枚を切り分け、みんなで分け合い、一緒に食べる
そういう楽しさが料理を美味しくしてくれるんだと思います
だから、これを美味しいと思ってもらえたなら、それは一緒に食べる皆さんのおかげでもあるんです

…けど、きっとミランダさんがいなくなれば、
きっとこのピザは美味しくなくなる
竜の花嫁という誇りも、入れ替わりにやってくる竜鱗兵も、
欠けた家族の穴を埋めることはできないんです
本当に、それでいいんですか?

家族に死を祝われるなんて、とても悲しいことだと俺は思います
だからどうか言ってほしい
「生きたい」と
「生きていてほしい」と
そう言ってくれるなら、俺たちがきっと皆さんを助けます


 それは、翌日のことだった。
「ミランダからの伝言だ。料理人は全員、キッチンに来て欲しいそうだ」
 復讐者たち用に用意された部屋を尋ねたアルフは、開口一番にそう告げる。
「まず、今回、皆が振る舞った料理を教えて欲しいと言うのが一つ。それと……その後、皆で料理を食べたい、とのことだ」
「ちなみに、その後はどうなる?」
 ソラス・マルファス(呪詛大剣・g00968)の問いに、アルフは首を振る。それは、復讐者の滞在の終わりを意味する物であった。
「貴方たちはお役御免。報酬を受け取り、帰途について頂く」
「そしてミランダさんは竜の花嫁としての任を全うする、ですね」
 葉切・松露(ハキリアリのきのこ農家・g03996)の言葉に、アルフは是と応える。
 それは、これ以上、時間的猶予がないことを意味していた。良きにせよ悪しきにせよ、本日で最後のアプローチが終了してしまう。
「まあ、判っていたことだ。時間は無限じゃない」
「そうだね。今回の会話に失敗すれば、ミランダさんを助け出すことは出来ない。けど、それは……」
 クラマ・レインコート(雨合羽の運び屋・g04916)の嘆息に、不知火・紘希(幸福のリアライズペインター・g04512)の言葉が重なる。確かに今回、アプローチを違えれば彼らの目標とした竜の花嫁救出が果たされることはないだろう。その事実に、しかし、復讐者たちは悲観的な思いを抱いていない。
 何故ならば。
「敵を倒すことも、花嫁を説得することも、変わり無いですからね」
 ソレイユ・クラーヴィア(幻想ピアノ協奏曲第XX番・g06482)の言葉に、一同揃って頷く。
 立ちはだかる敵を倒すのも、花嫁を説得するのも、危険の難易度としては変わり無い。復讐者たちが敵を倒せなければ誰かが不幸になり、花嫁を説得できなければ此処に居る家族全員が不幸になる。それだけの差違だ。
「皆さん。妹を……ミランダをお願いします」
 アルフの声は静かで、それだけに全ての感情を押し殺している事が判る。これを何とか出来るのも、彼らのみだった。
「さあ、行きましょう」
 相原・相真(人間のガジェッティア・g01549)の呼び声に、一同は応と頷く。
 それはまさしく、鬨の声であった。

 復讐者たちが手掛ける料理は、幾渡と振る舞った料理だった。
 故に失敗などはあり得ない。決まった作業に決まった手順。
 ただ、それを見守る人が一人、増えていただけだ。
「皆さん、料理達者なのですね」
 それが、ミランダ・アマレットの紡いだ感想であった。
「料理上手なだけじゃないですよ? 皆でミランダ様の幸せを祈り、やってきたです。皆の料理はミランダ様の真実の幸せを願ってのものなんですよ」
 松露の言葉に、ミランダはふふっと花のような微笑を浮かべる。
 その表情はとても幸せそうで、嬉しそうで、故に、胸が痛くなってしまう。
「ありがとうございます。私、竜の花嫁を立派に勤め上げて、『卵』を産みますね!」
「それは……」
 その先に真実の幸せなんか存在しない。その事を知る松露は表情を曇らせ、しかし。
「マツユ」「まーくん」
 友人二人の言葉に支えられ、笑顔を取り戻す。そうだ。今は未だ、その時ではなかった。
「俺達は料理人だ。想いは全て更に託す。そうだろう?」
「大丈夫。きっと伝わるよ」
「はいです。ミランダさんの為にもっと、美味しいお肉を焼かないと……ですね」
 この笑顔を本当の笑顔にする為に。その為に復讐者たちはこの戦いに挑むことにしたのだ。

「何処まで話すべきかな」
 竜の花嫁ことミランダ・アマレットの様子を窺いながら、ソラスは仲間に問う。
 幸せの形は人それぞれ。だが、今の彼女が幸せなどとは到底思えない。従属の中、家畜の安寧を貪っているような話ではない。洗脳され、幸せだと思い込まされている。現状を彼らから見れば、当然ながら異常にしか映らなかった。
「やれることを全てやり尽くす。それだけです」
 そうすれば、後は全て、パラドクストレインが導いてくれるだろう。
 相真の言葉に、ソレイユも強く頷く。それが最善手であるとの確信が、彼らにはあった。
「彼女が復讐者出ない以上、新宿島へ連れて帰れません。ならば俺達の関与は此処で終わってしまう。もしかしたら排斥力が全てを上書きして、この努力は無為になるかも知れません」
 それでも、と言葉を紡ぎながら、焼いた淡水魚に衣を纏わせる。
「それでも、俺達の言葉は無駄になりません。だから、今は全力を尽くしましょう」
「そうだな」
 ソラスの料理は前回まで作っていたジャム掛けシフォンケーキのアレンジだった。ジャムの代わりに砕いた苺と柑橘類をメレンゲに織り込み、そして焼き上げる。手を動かしながらも、彼は言葉を発した。
「『生きたい』。その言葉を引き出せれば御の字だな」
 時先案内人ならぬ我が身に、これ以上の未来を見出すことは出来ずとも。
 彼女に自身の生き方を選ばせることだけならば、出来る筈なのだから。

 色取り取りの食事がテーブルを並べる。
 復讐者たちと、竜の花嫁ミランダ・アマレット、そしてその家族がテーブルに着けば、最後の宴が開催されていく。
「ほう。皮目はパリッと。しかし中の身はしっとり柔らか。この焼き加減は最高だな。これをミランダが作るのかい?」
 父親が舌鼓を打ったのは、ソレイユ作淡水魚の香草焼きであった。目を細め、何処か遠くを見るような視線に、返ってくるのは愛娘の笑顔だ。
「はい。しっかりとソレイユさんに教わったから、大丈夫!」
「ミランダは筋が良いですよ」
 ソレイユの言葉に、更なる微笑が重なる。
(「でも……」)
 嘆息を零したソレイユは、内心で言葉を続ける。そう。歓談で終わらせるわけに行かない。ここはもはや、彼らの戦場なのだ。
 既に意は決していた。
「この料理は、一つの皿を皆で取り合う……家族の料理なのです」
「そうですね。こんな大きな淡水魚、一人じゃ食べきれな……」
「ええ。ですから、ミランダとご家族が皆さん全員が、この先もずっと笑って食卓を囲んで欲しいと願う料理なのです」
 ミランダの言葉を遮り、言葉を続ける。
「思い出して下さい。貴方は家族との食事の時間を大切にする方のはず。ご両親はそんな娘を心から愛していたはず。お兄さんもそうですよね? それを壊されて、まだ、笑顔で食事できると思うのですか?」
「壊されて……?」
 敢えての言い回しに、返ってきたのは当然ながらの疑問だ。この一家団欒は他ならぬ支配者、クロノヴェーダによって破壊される。彼女達は誉れだと認識しているかも知れないが、実の処、破壊と侵略の結末でしかない。
「私たちは――」
「ほら。ミランダ。こちらのお肉も美味しいわ。もっと取り分けて頂戴」
 ソレイユの言葉を遮る言葉は、母親から発せられていた。松露作の鹿肉のステーキを指差し、焦燥に満ちた声を上げている。
「ああ。そうです。こうやって食べてみて下さい。花嫁さんも!」
 黒パンに鹿肉と野菜を挟み、具材にソースを和える。ソースを、そして肉汁をパンが吸い、えも知れぬ旨味を口の中へと広がらせていった。
「おれは畑仕事の合間には、こういうお弁当を作って食べてたですよ。家族にも喜んで貰えて……それがすっごく嬉しくて……」
「そうですか……。ミランダ、これ、作れそうなの? また食べたいわ」
 片手間に食べるバーガーは、母親の気に召したようだ。弾む声に、しかし、松露は言葉を重ねる。
「この度は、ご結婚……おめでとうです。おれの料理が花嫁さんだけじゃなくて、お母さんやお父さん、お兄さんにも気に入られてとても嬉しいです。でも、おれは心からの笑顔でこの料理を食べて欲しい。そう思うです」
「心からの笑顔……」
「花嫁さん。ご両親の顔を、お兄さんの顔を見ていますか? 皆さん、心から笑っているように思いますか?」
 松露の言葉にミランダは言葉を失う。ただ、じっと、瞳が自身の手を見つめていた。
 何か語りたく、だが、言葉に出来ない。その思いだけが強く伝わってきた。
「この薔薇はお嫁さんと同じ『ミランダ』と言う名前だそうです」
 不意に紘希が言葉を紡ぐ。彼が指すのは薔薇型のステーキに添えられた、薄紅色の薔薇の花弁だった。白い皿の上に主張しすぎず鎮座する様は、その花言葉の体言であった。
「花言葉は『しとやか』『上品』『可愛い人』『美しい少女』です。ご両親から聞いていたミランダさんの姿にぴったりだと思って、用意しました」
 突然の褒め言葉に、頬を染めるミランダ。
 その上で、紘希は畳み掛けるよう、言葉を口にする。伝えるべき花言葉はそしてもう一つだ。
「それと、『愛の誓い』と言う花言葉もあります。お父さんもお母さんもお兄さんも、ミランダさんを愛している。ただ、料理を作りに来ただけの僕らでも判るほど、みんなの愛は深い物だって感じたよ」
「……」
 返ってきたのは沈黙だった。松露の時と同じだ。彼女なりに思うところが強いのだろう。
「ねぇ、幸せに家族とご飯を囲む未来を生きてみたくない? 本当にこのままでいいの?」
「それは……」
「それを決めるのはお前さんにしか出来ない」
 クラマがぴしゃりと告げる。
「俺がお前さんに、そしてお前さんの家族に出す料理は変わらず同じ物だ。『ベスハウト・メット・マウシェス』。生誕を祝う菓子だが、美味いと感じるなら、その意味を汲んで欲しい」
 望むのは死ではない。犠牲ではない。悲しい場ではなく幸せな場にしたい。その願いを彼女がどう捉えるだろうか。
「この菓子、親父さんも気に入っていたぜ。でもな、泣いていた。親父さんも、親父さんだけじゃない、家族の皆が、だ」
「それは、私が結婚するから」
「そうだな。だが、あれが喜びの涙などと言うつもりはねぇ。あれは悲しみの涙だ。その涙の意味を変えるかどうかは、お前さんに掛かっている」
 だから、クラマは生誕を告げるのだ。彼の問いは仲間と同じだ。本当に、このままで良いのか? と。
「俺も、出したのは家庭料理です」
 相真が指し示したそれは、巨大なピザだ。もしもミランダやその家族が新宿島の住人であれば、LLサイズ、否、それ以上の大きさに驚愕したかも知れない。
「大きな一枚を切り分け、みんなで分け合い、一緒に食べる。そういう楽しさが料理を美味しくしてくれるんだと思います」
 だから、と言葉を続ける。これを美味しいと思ってくれるのであれば、料理だけではない。一緒に食べる皆のお陰なのだ。
「この料理はきっと、ミランダさんがいなくなれば、美味しくなくなってしまう。代わりに誰が入っても、ミランダさんを思い出して、みんな、嘆いてしまう。だから、この料理を美味しく食べるには、ミランダさんが不可欠なんです」
「――ッ」
「家族に死を祝われるなんて、たとえ此処がディヴィジョンであっても、許して良いことじゃない。それはとても悲しいことだと俺は思います。だから――」
 相真はそこで言葉を句切る。
 今、まさに分水嶺に立った。彼女の想いが揺れ動いているのは見て取れる。彼女だけではない。沈黙し、互いに見つめ合う家族もまた、同じ気持ちなのだろう。
 刹那、シフォンケーキの皿をソラスが推す。来訪時にはジャム添えだったそれは此度、何も添えておらず、ただ、生地に果肉を織り込んだものであった。
「ジャムとも違って面白い味だろう? 林檎で作ったのも美味いんだぜ。簡単だからよ、家族みんなで作るといい」
 食卓だけではなく、台所もまた家族の語らいの場になれば、それが良きことだと彼は語る。
「俺は……いや、俺達は、アンタに竜鱗兵なんかの産みの親になって欲しくねぇし、アンタが生贄になることを名誉な事だなんて思えねぇ」
「でも!」
 ようやく零れたのは反論だった。
「これは名誉あることで! 私が竜の花嫁を全うしなければ、父さんや母さんや兄さんが、みんながっ!」
 零れた慟哭は、家族の名と共に紡がれていた。
 ああ、とソラスは思う。彼女もまた、家族のために我が身を犠牲にしようとしていたのか、と。
「まあ、21世紀の感性を押しつけるつもりはねぇ。俺らの時代よりも世間体が大事な世界だからな」
 領主が神と崇められるような時代だ。支配者であるドラゴンに逆らうことなど、彼女達に取っては大罪にも等しい。家族が村八分にされるぐらいならばまだ軽く、下手すれば私刑すら執行されかねない。そんな中、竜の花嫁を断ることなど出来るはずもないのだ。
「安心しろ。家族もアンタも、俺達が守ってやるよ」
 だから、その為に一言。一言だけあればいい。
「諦めないで。それを願って下さい」
 ソレイユが促す言葉は、彼女の願いに向けて。
「本当の未来を望むならその約束、僕らがきっと叶えるよ」
 任せて、と紘希は自身の胸を叩き。
「そうすりゃ俺たちがお前さんを身勝手に助けてやる」
 クラマのぶっきら棒な物言いは、自分達が勝手にやることだと、それだけを告げ。
「だからどうか言ってほしい」
 そして、相真はただそれだけを告げる。
 復讐者たちの気持ちは一つだ。だが、それを為す為には切欠が必要だ。その主導権は彼女、ミランダにしかなかった。
「私は……竜の花嫁を勤め上げて……お父さんとお母さんと、お兄ちゃんを犠牲になんかしなくて……立派に、子どもを産んで……」
「「ミランダ!」」
 叱咤にも似た声が飛んだのは、家族からだった。父親と兄は声を荒らげ、そして母親は諦めたように首を振る。そしてただ一言、告げた。
「もう良いの。ミランダ。お前の好きなようになさい」
「――ッ!」
 皆のために自身を犠牲にするな。
 その言葉だけが紡がれ、そして。
「生きたい――」
 言葉が決壊した。
「死にたくない! 生きたい! まだ私は生きたい! 生まれてくる子を抱きたいし、立派に育った姿を見たい。何より――お父さんとお母さんとお兄ちゃんと、みんなで生きたいの――」
「よく言った!」
 魂からの叫びに、復讐者たちは立ち上がる。
「きっと俺達は皆さんを助けます。だから、その思い、強く願っていて下さい」
「ああ、約束する」
 相真とソラスの告げる歓喜に、ミランダは涙に濡れた表情で、コクコクと何度も首を振る。
「さて。花嫁の真意を聞いた訳ですが……どうしましょうか?」
「なあに、それを何とかするのが俺達だ。明日を見たいとアイツが望んだ。それを叶えるのが『運び屋』……いや、『復讐者』の矜持だ」
 ソレイユの言葉に、クラマがにぃっと笑う。その微笑みは何処までも頼もしく映っていた。
「まずは良かったです。これからのことを考えると一抹の不安がありますけど、何とかなりますよね」
「その為に僕たちが来たわけだからね」
 幸福の結末を迎えるため。
 松露の言葉に、紘希はきっぱりと断じていた。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【友達催眠】がLV3になった!
【操作会得】がLV2になった!
【口福の伝道者】がLV2になった!
【託されし願い】がLV4になった!
【士気高揚】がLV4になった!
効果2【ダメージアップ】がLV8になった!
【能力値アップ】がLV6になった!
【ガードアップ】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2022年03月27日