リプレイ
●
会場内は、主にふたつの空間に分けられていた。
ひとつは、材料を混ぜるために用意されたキッチン。
もうひとつは、固めた材料をカットするための作業机が並んだ大部屋だ。
キッチンにも大部屋にも、作業場のあちこちにタブレット端末が置かれており、作業手順を紹介する動画が繰り返し再生されている。
詳しい手順がわからなくなったり、作例のアイデアを見たくなった者は、タブレット内にある資料を好きに見ても構わない。
その大部屋の壁際には、様々な色や形の硝子瓶が並んでいる。
気に入ったものがあれば、好きに手に取り、容器として使用できる。
もちろん、持ちこんだ容器や装飾で飾り付けるのも、問題ない。
小瓶のそばには、組紐で作られた『中国結び』のタッセル飾りの入った籠が置かれている。
色も形も様々なそれは、お守り代わりにと、作り手が吉祥の願いを込め仕上げたもので、自由に持っていって良いようになっている。
主催者が選曲したらしいポップなダンスミュージックをBGMに、訪れた者たちは、思い思いの菓子作りに取り掛かった。
河津・或人
ブロス(g03342)と参加
俺が作るのはガジェットを展開したときに発生する…「これ」だな
六角形の青い板って感じだが、これは世界の中に存在する合理的な角度
機能美が備わった形だ
青色は俺アピールってことで、食欲減衰しないよう慎重に少しだけ色素を投入しよう
透明感も大事だから、甘めに混ぜて…と
(固め待ち中)
実は砂糖も、顕微鏡でも見えないぐらいズームすると六角形を基本構造にしてるんだぜ
あ、せっかくだからこれラベルタグにするか
(糖類の分子構造の図説をプリントして)
今は何のことやらでもそのうち分かる日が来るから、その時また説明するな!
せっかくだから組紐も平打ちで亀甲柄のにしておこう
*アドリブOK
ブロス・ブラッドハート
あるとにーちゃん(g00444)と一緒
おれはこのキラキラに自分の好きなものを詰め込むんだぜ!
可愛い便箋
骨付きのお肉
ご機嫌な音符
白い林檎の花
眺めるだけで暗い気持ちも晴れて、嬉しくなっちゃうお気に入りだ♪
基本は型抜きだけど…なければ不器用なりに包丁チャレンジ…っ
難しそうな時はパス!にーちゃん、これやって~~
んっと…つまりあるとにーちゃんのそれって砂糖で出来てたのか?!そのうちなんて言わずにいま食べたいんだぜ〜
せめてひと舐めだけでも〜(じたばた)
あ、そーだ!それならおれもこっそり青い六角形作っちゃお…
瓶にいれたら紫刻の房飾りを貰って飾り付け
お礼に上手に出来た砂糖菓子を一つ添えて
アドリブ歓迎だぜ!
●
キッチンに足場を置き、その上で背伸びをするようにして。
小柄なドラゴニアンの少年――ブロス・ブラッドハート(腹ぺこにやん・g03342)は、傍らで作業をする兄貴分――河津・或人(エンジェルナンバー・g00444)の手元に魅入っていた。
寒天を溶かし、煮詰めていく作業は火加減をみる必要があるため、色を付ける手前までは、或人がまとめて作業をすることにしたのだ。
完成見本からかけ離れたどろどろの液体が、これからどうやって変化していくのか。
赤い瞳を輝かせ、見守るブロスも興味津々で。
「あるとにーちゃん! にーちゃんはなにを作るんだ?」
鍋の中の寒天の具合を注視しながら、
「俺が作るのは、ガジェットを展開したときに発生する……『これ』だな」
ブロスに手渡したのは、普段、学生鞄に付けているキーホルダーだった。
青い六角形のキラキラしたものが、いくつも連なっている。
「『六角形の青い板』って感じだが……。これは、世界の中に存在する合理的な角度、機能美が備わった形だ」
「……ごーりてき? ……きのーび?」
まるで謎の呪文を聞かされたかのように顔をしかめる弟分に、
「ほらブロス、寒天が固まってきたぞ。バット・トレー、って言ってもわからないか。――ひらべったい銀色の入れ物を取ってくれ!」
火傷をしないよう注意しながら、粘度の増した鍋の液体を容器へと移して。
「そういえばブロスは、何を作るんだ?」
「おれはこのキラキラに、自分の好きなものを詰め込むんだぜ!」
そう言って、『可愛い便箋』、『骨付きのお肉』、『ご機嫌な音符』、『白い林檎の花』……と、指折り数え始めたのを前に、或人の眉根がぎゅっと寄せられる。
「……な、難易度高めじゃないか? そうだな――」
と、キッチン内にあったシリコン型が目につく。
シリコン型は、すでにある形に材料を流し込むもの。
骨付き肉は見当たらなかったが、音符や花といったモチーフは見つかった。
「型があるやつは、こっちに流し込んどくな。便箋とか肉は自分でカットできるように、小さい入れ物に入れておくぞ」
流し込んだ材料を手に、ふたりそろって急いで作業机のならぶ大部屋へ!
鍋から出した寒天液は、すぐに固まっていく。
ここからの色付けは、時間との戦いだ。
「青色は、俺アピールってことで――」
或人は食欲減衰しないようにと気を付けながら、慎重に青い色素を混ぜ込んでいく。
あの六角形のモノは、角度によって色合いも変わって見える。
「透明感も大事だから、甘めに混ぜて……と」
「にーちゃんの目の色にも似てるんだぜ!」
興味津々で見つめるブロスの手が止まっているのに気づき、或人は慌てて、弟分の砂糖菓子に必要な色素を集めに走った。
寒天液に色を付け終えれば、乾燥タイムだ。
ベタ付きが消え、加工作業ができるようになるまで食品乾燥機に具材を預けるため、ふたりは先に小瓶や飾りを見て回ることにする。
「実は砂糖も、顕微鏡でも見えないぐらいズームすると六角形を基本構造にしてるんだぜ。――あ、せっかくだから。これをラベルタグにするか」
スマートフォンを手に検索をかけ、会場内にあったプリンターを使い糖類の分子構造の図説を印刷。
ブロスの元に戻れば、何か閃いたかのようにまん丸の目を見開いて言った。
「んっと……。つまり、あるとにーちゃんのガジェットのあれって、砂糖で出来てたのか?!」
「いや、違うぞ! まあ、今は何のことやらでも、そのうち分かる日が来るから。その時は、また説明するな!」
きっぱり否定するものの、
「そのうちなんて言わずに、いますぐ食べたいんだぜ? せめてひと舐めだけでも!?」
「こらこら、待て待て!」
ガジェットを出して見せてと迫りじたばたするブロスを、周りに作業をしている人たちがいるから騒がないようにと押し留めて。
「今のうちに小瓶を選んでおこうぜ。房飾りも持って行って良いって」
「俺はせっかくだから、組紐も平打ちで亀甲柄のにしておこう」と、或人が籠からひとつ手にとって。
ブロスは或人の言葉を聞き流しながら、胸中で決意していた。
(「それなら、おれもこっそり『青い六角形』を作っちゃお
……!」)
乾燥した砂糖菓子を回収した後。
或人は固まった具材の色あいを見ながら、六角形の型抜きでリズミカルに形をとっていった。
一方のブロスはというと、音符や花はシリコン型のおかげでうまく抜き取ることができた。
便箋も、長方形の型抜きを使ってイメージ通りの仕上がりになり、上機嫌。
しかし、不器用なりに包丁チャレンジをしたものの、『肉』だけが、どうにもうまくできなくて。
「う~~ん、パス! にーちゃん、これやって~~」
渡された包丁を手に、或人は四苦八苦しながら『骨付きのお肉っぽいもの』を作ってみせたのだった。
選んだ小瓶にそれぞれの砂糖菓子を詰めれば、
「自分の好きなものが詰まってる小瓶なんて、眺めるだけで暗い気持ちも晴れて、嬉しくなっちゃうお気に入りだ♪」
飾り付けた小瓶に、ブロスが頬を寄せる。
その中に、こっそり作った『青色の六角形』が収まっているのは、ブロスだけの秘密だ。
「いざ完成してみると、食べるのがもったいなくなるな」
青色が煌めく小瓶を見つめ、或人も満足げに眼を細めた。
――幕間。
会場内を見回っていた紫刻(g03496)は、タッセル籠の傍に小皿があるのを見つけた。
音符の形をした砂糖菓子は、まるでお供え物のようで。
「……これは、ワタシ宛てと受け取っていいのかな」
小さく微笑んで。
ぱくりと、『ご機嫌な音符』を頬張った。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【口福の伝道者】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【凌駕率アップ】LV1が発生!
モリオン・スモーキー
アドリブ/連携歓迎
……作る宝石、鉱石ですか。面白そうですね。
興味本位で作成いたします。
色付けからこだわりますか、グラデーションとか、カットを鉱石のようにしていきます。
乾かして……瓶に詰めて……うん。いいですが……
飾り紐もあるのですね……作ってみるのも体験でしょう。
紫刻様(g03496)、飾り紐の作り方もお教え願えますか?
とお伝えし、レクチャーしていただきましょう。
……完成した品と作成した時間。その時の思い。それが代えがたいものとなります。きっと。
一角・實生
※琥珀糖の出来お任せ
琥珀糖の材料と作り方を聞いて思う
それなら俺でもできる、かも
殆どの料理が炭化する所謂料理スキルマイナスの俺
うん――やっぱり心配だ
三千院さん、お久しぶりです
……一緒して貰っても?
材料はきっちり量るよ
三千院さんと足並みを揃えて作って行こう
暴走するととんでもないものが出来上がるかもしれないし
とりあえず黒い煙が出なければ大丈夫だろう
琥珀糖という名ならば紅茶で色付け・味付けを
透明な部分を残したらきれいかも
ちぎって原石っぽくしよう
小ぶりなものをひとつ摘んで味見
小さな薬瓶型の容器2つに琥珀糖を詰める
房飾りは俺に合う色をひとつ貰って……もうひとつは鮮やかな黄緑色のものを教えて貰いながら作るよ
●
会場内には、いたるところにタブレット端末が置かれており。
プロモーション用に流れていた動画が、砂糖菓子の作り方をわかりやすく説明している。
「……作る宝石、鉱石ですか。面白そうですね」
会場の入り口に佇んだ黒髪の青年――モリオン・スモーキー(存在奪われし魔術発明家・g05961)は、見本として飾られていた鉱石風の砂糖菓子を見やり、呟いた。
モリオンはかつて、宝石鑑定人かジュエリーデザイナーになろうかと考えていたことがある。
(「その未来は、あらゆるモノとともに、奪われてしまいましたが――」)
砂糖菓子といえど、己の手で煌めきを生み出すことができるというのは興味深い。
「いらっしゃい。まだ具材づくりに取り掛かっていないなら、一緒にどうかな?」
呼びかけに振り返れば、イベントの主催者――三千院・紫刻(NOT FOUND・g03496)が立っていた。
初対面にも関わらず、なぜ一目で主催者とわかったかというと。
眼前の人物をデフォルメしたであろう2頭身のキャラクターが、先ほどから動画で様々な説明をしていたからだ。
傍らには、背筋の伸びた有翼の少年――一角・實生(黒頭鷲・g00995)が佇み、なにやら難しい顔をしている。
「……寒天、水、グラニュー糖を混ぜ、固めるだけ……。それなら俺でもできる」
作り方をわざわざ書き留めたらしいメモを片手に、ぐっと口を引き結ぶ。
「うん。――やっぱり心配だ。三千院さん、……一緒してもらっても?」
ほとんどの料理が炭化する、いわゆる『料理スキルマイナス』持ちのすがるような視線に、紫刻は「いいとも」と軽い調子で応えて。
「というわけだから。なに、ワタシも現実世界で作るのは初めてだけど、たぶん、なんとかなるよ」
根拠のない自信を含む言葉に、モリオンは一抹の不安を覚えながら、
「……なるほど。では、喜んでご一緒させていただきましょう」
二人に続いて、キッチンへ向かった。
(「とりあえず、黒い煙が出なければ大丈夫。三千院さんと足並みを揃えて作っていこう」)
そう考えていた實生は、隣で作業をする紫刻の様子を見て口をつぐむことになる。
「……紫刻様。なぜ寒天やグラニュー糖を、何度も追加しているのでしょう」
控えめに指摘したモリオンの声に、
「え? 量を増やせば、すぐ固まるかと思って」
「固まるまでは、熱しながらよく混ぜるようにと。紫刻様ご自身が、レシピ動画でおっしゃっています」
手近にあったタブレットを示し告げれば、
「あれはワタシの音声を使って、レシピを読み上げただけの動画だからね」
「試作していた電脳世界では、分量は良い感じに調整してくれたのにな……」と、紫刻は小首をかしげる。
反面教師の作業を横目に、
(「材料は、きっちり量ろう……」)
暴走するととんでもないものができ上がると肝に銘じ、實生は鍋に入れた材料を、粛々と混ぜ続けた。
――材料を適当に追加し続けた結果、ほどよい配分に戻すのに苦労した紫刻はさておき。
實生とモリオンは、一足先に乾燥させた砂糖菓子の加工に取り掛かる。
紅茶を混ぜ込み固めていた實生の砂糖菓子は、一部に透明な部分を残したマーブル模様になっている。
『料理スキルマイナス』の自覚はあるので、成形に包丁は使わない。
手でちぎって、あえて原石のような風合いを目指していく。
小ぶりなものをひとつ、指先に摘んで。
己の口へぽいっと放りこめば、
「……! うん。美味しい!」
失敗をしないようにと気を張り、緊張していた實生の口いっぱいに、紅茶の香りをともなった甘さがほのかに広がっていく。
「スモーキーさんの菓子は、グラデーションなんですね」
魔術発明家というのは手先が器用なのだろうかと感心しながら、ひと段落した實生がモリオンの作業を見守る。
「はい。色付けからこだわってみました。これからカットして、宝石や鉱石のようにしていきます」
ペティナイフを手に淀みない手つきで寒天を切っていけば、まるで魔法のように、次々とひと口サイズの煌めきが形になっていく。
「……瓶に詰めて……。うん、いいですね」
穏やかな笑みをたたえ小瓶を眺めるモリオンの隣で、實生も薬瓶型の容器2つに琥珀糖を詰めていく。
その頃になって、増量させすぎた材料を食品乾燥機に預けてきたと、ようやく紫刻が戻ってきた。
「三千院さん、タッセルの作り方も教えてもらえないかな」
實生の言葉に、モリオンも続く。
「飾り紐もあるのですね……。作ってみるのも体験でしょう。紫刻様、自分にも、作り方をお教え願えますか?」
「お! 作ってみるかい」
紫刻はふたりに紐の色を選ぶように促すと、各々にコルクボードと、紐を留めるためのピンの入ったケースを手渡した。
「基本的には、作りたい形の手順に沿って編んでいくだけだから。慣れれば簡単だよ」
「ふたりとも、どういう形の飾りを作りたいのかな」と、置いてあったタブレット端末を手に、紫刻は楽しそうに説明を始めた。
菓子作りよりは、飾りを作る方がよっぽど性に合っているらしい。
やがて紫刻の砂糖菓子が乾燥する頃には、モリオンと實生のタッセル飾りが完成!
宝石のごとく煌めく砂糖菓子を詰め込んだ小瓶に、手作りの房飾りを添えて。
「……完成した品と、作成した時間。そして、その時の思い。それが、代えがたいものとなります。きっと」
感慨深げにつぶやき礼を告げたモリオンに、實生も頷く。
「苦労して作った時間も、完成した瞬間もかけがえのない時間だった。だけどこの後には、砂糖菓子を味わう時間も待っているからね」
それはきっと。
今日の時間と同じくらい、幸福な時間になるだろうと。
實生は手のひらに収まる硝子の小瓶を、いとおし気に撫でた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【活性治癒】LV1が発生!
【操作会得】LV1が発生!
効果2【ドレイン】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
ノスリ・アスターゼイン
藍と東雲色で夜明け空を表現
空航る清々しさを想い描き
鳥の抜き型を手に取るけれど
ふと
背翼へ錘のような熱を感じて
閉じる双眸
けれど
それも一瞬のこと
瞳を開けた時には常のまま悪戯な笑み湛え
無造作にパキリと割っていく
砕けた欠片は飲み込んでしまおう
ほら
空のパズルみたいじゃない
閉ざした己の心の彩を
組み立てるとしたら難解そうだ
とは他人事のように
欠けたピースで完成しない画を笑う
選んだ瓶は縦長の筒
陽とも月とも思える金の蓋
タッセルは何色が良いかなぁ
紫刻に声をかけてみようか
俺に似合いを選んでくれたら嬉しいな
料理は不得手だが
色水を流し込んで行く作業は
工作みたいで楽しかった
礼に一粒あげるよ
隠し味は林檎果汁
罪の味!
なんてね
冗談
●
キッチンでの、寒天の溶かしこみを終え。
大部屋の片隅で材料と向かい合っていたのは、砂色鳥の名を借りる青年――ノスリ・アスターゼイン(共喰い・g01118)だった。
バット・トレーと呼ばれる平らなステンレス容器には、乾燥した寒天が満たされている。
色素を使い、藍と東雲色で夜明け空を繊細に表現したそれは、型を抜かずともそのままで十分にうつくしい――。
しかし、口に含む菓子とするには、今の大きさではままならない。
ノスリは、あらかじめ用意していた鳥の抜き型を手にとって。
空を航る時の風や匂い、眼下に広がる煌めく情景を脳裏に想い描きながら、指先に力を込めようとした。
その時だ。
「――っ」
背翼に。
ふと、錘のような熱を感じて。
星斑を燈す翼をかすかに震わせ、陽を封じた蜜色の双眸を閉ざす。
――まるで、永遠にも感じられる、一瞬の後。
瞳を開けた時には、すっかり、常のままの悪戯な笑みをたたえて。
今度こそ躊躇なく指先に力をこめると、夜明けの空を鳥の形に抜いていく。
パキリ、無造作に割ったなら。
砕けた欠片は、あっという間に口へと放り込んで。
溶かす間も、甘さを堪能する間もなく飲み込んでしまった。
「ほら、空のパズルみたいじゃない」
欠けのない、きれいな鳥の輪郭を、指先でゆっくりとなぞる。
明けの空色を宿した翼は、まるで魔法をかけたかのよう。
きっと、どこまでも飛んでいけると夢のせる一方で、
(「閉ざした己の心の彩を組み立てるとしたら、難解そうだ」)
そんな想いを、他人事のように頭のなかに巡らせながら。
欠けたピースが見つからないまま、永劫に完成しない画を笑った。
――心の彩を収めるため、選んだ瓶は縦長の筒。
――何処へも行かぬようにと閉じ込めるのは、陽とも月とも思える金の蓋。
「タッセルは何色が良いかなぁ」
籠をのぞき込み、どれを選ぼうかと思案していると、主催者である三千院・紫刻(NOT FOUND・g03496)が声をかけた。
「砂糖菓子、完成したようだな。ああ、夜明けめいたきれいな鳥だ」
その言葉に、ノスリも笑みを返して。
「料理は不得手だが、色水を流し込んで行く作業は工作みたいで楽しかった」
今はどの飾りを迎えようか迷っているのだと、手にした筒と蓋をよく見えるように掲げ見せる。
「紫刻。俺に、似合いを選んでくれたら嬉しいな」
頼まれた主催は、格別、色のセンスがあるわけではない。
しかし、自分よりもずっと背の高い青年と、手にした小瓶を、まじまじと交互に見つめて。
「……ううん。そうだな」
しばし逡巡した後に、「この色かな」とひとつの飾りを差し出した。
「ホワイトシルク……とでも言ったらいいのかな。やわらかさのある白だと、ワタシは思うのだけれど」
「こうすると、周囲の色を映しこむから」と、紫刻がノスリの傍に飾りを寄せれば、すべらかな光沢に褐色の肌色がほのかに映りこんで。
「夜の空色でも、陽も月も。砂色だって、きっと似合うだろう」
「どうかな」と問えば、ノスリはおもむろに瓶の蓋を開け、言った。
「礼に一粒あげるよ。隠し味は、林檎果汁」
「へえ」
手のひらに鳥を包みこみ、紫刻が遠慮なくいただいたところへ、
「罪の味! ――なんてね」
と、ノスリが冗談めかして。
一瞬、大きく眼を見開いた紫刻は、
「――罪人上等」
と悪戯っぽく微笑み、夜明け色の鳥を舌先で溶かした。
大成功🔵🔵🔵
効果1【土壌改良】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
アンジェリー・ビーティリィ
色んな色や形の琥珀糖を作ってみよう!
【色の組み合わせ(グラデーション入りマーブル模様にし、無色透明を共通で追加し各3色。可能なら寒天液に食用銀箔やパールパウダー、炭酸も混ぜる)】
①藤色(半透明)・緑
②青(半透明)・オレンジ
③アイスグリーン(半透明)・紅
④青紫(半透明)・レモンイエロー
⑤ピンク(半透明)・青磁色
【形】
千切るだけじゃなくて、星や花、さらに球形にくり抜いてみよう!細く切るのも試してみようかな
【小瓶】
形毎に違う瓶に詰めてリボンの色も変えてみようかな。千切ったのはすりガラスの切子風の模様が入ったものにして、それ以外はその形に合わせて・・・
とっても綺麗にできた!みんなのも楽しみ!
●
会場内のキッチンに足場を用意し、大量の材料を前に懸命に鍋をかき混ぜていたのはインセクティアの幼い娘――アンジェリー・ビーティリィ(インセクティアの航空突撃兵・g00570)だった。
会場内に置かれていたタブレット端末では、作り方を説明した動画が繰り返し流れており。
様々なアレンジレシピが紹介されるのを見れば見るほど、「全部作ってみたい……!」と思ったのだ。
「せっかくだから、いろんな色や形の琥珀糖を作ってみよう! そのためには、材料もいっぱい用意しないとね!」
現在のところ、アンジェリーの頭の中には5種の色の組み合わせが用意されている。
煮詰めた寒天液が仕上がったのを確認すると、ステンレス製の平らなバット・トレーへ次々と流し込んで。
すぐさま大部屋の一角に5つのトレーを運び込み、事前に用意していた色素水とラムネに手を伸ばす。
ひとつ。あわい藤色と緑で、雅やかな藤の花を思わせる配色に。
ふたつ。透ける青にオレンジを混ぜ、爽やかな夏色を思わせる。
みっつ。透明感のあるアイスグリーンには紅をさし、レトロな風合いに。
よっつ。神秘的な青紫に、明るいレモンイエローを透かしてより印象強く。
いつつ。ほのかなピンクには青磁を添えて、対する色合いを溶けあわせる。
5種のトレーが色づいたなら、グラデーションやマーブル模様にあしらったそれらに、さらに食用銀箔やパールパウダー、炭酸を混ぜていく。
「できた……!」
寒天液が固まり始める前に作業を完了し、食品乾燥機にトレーを預ければ、完成まであと少し。
先に、琥珀糖を入れる瓶を探すことにする。
「色や形ごとに違う瓶に詰めて、リボンの色も変えてみようかな。千切って鉱石みたいにしたのは……、これがいいかも!」
すりガラスに切子風の模様をあしらった容器を手に取り、琥珀糖を詰めた様子をイメージする。
同じ色彩でも、カッティングによっては雰囲気も変わるだろう。
「それ以外は、仕上げた形にあわせて選ぶのもいいかも――」
千差万別の魅力的な小瓶に、手作りの砂糖菓子。
どう魅せようかと悩んでいるうちに、気づけば乾燥作業は終わっていて。
「手で千切るだけじゃなくて、せっかくだから、抜き型も使ってみたいし……」
数ある抜き型から、星や花のものを選び取る。
「頑張ったら、丸くくりぬいたりもできるかな? 細く切るのも試してみよう!」
5つあるトレー全ての加工を終えるまでには、ずいぶんと時間がかかったものの。
ひとつ、ひとつ。
手間をかけて仕上げたからこそ、すべての砂糖菓子を瓶に詰め、飾りを添えた時には達成感もひとしおで。
「とっても綺麗にできた……!」
並べた小瓶から透かし見える色彩を、アンジェリーは心ゆくまで眺め、満足げに微笑んだ。
「みんなのは、どんな風にできたのかな!」
十人十色。
異なる彩りを楽しみに、大部屋を見てまわった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【落下耐性】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
永辿・ヤコウ
ラヴィデさん(g00694)
どんな色にしようかな
傍らの人を密やかに見詰めて
目が合えば笑み交わし
彼の纏う花色に染めようかと思ったけれど
薔薇は四季咲きでもあるから
そう、
春を告げる沈丁花に桜
野を照らす萌黄
山吹く初夏は鮮やかな黄
夏の蒼穹
錦秋燃える紅
冬透き通る冰白
七色十色
小さな四季を色取り取りに描いたなら
其々を花弁の型で抜き取って
豊かな彩りを
誰も傷付かない優しくあたたかな世界を
まんまるの瓶に託そう
タッセルは穢れなき真白の糸
ひかりに透かせば煌々
澄んでいる
綺麗だな
本当に宝石みたい
添えられた紫黒へ瞬き
相好を崩す
いつかこんな風に
何者にも脅かされず
のびのびと大地を、生を、駆けられる日々が
皆やあなたに訪れますように
ラヴィデ・ローズ
ヤコウくん(g04118)と
出た! おいしい宝石!
創作できるなんてステキだなぁ
同意を求めかけて絡む視線
求めるまでもないかと笑って、早速
木や石を削ったりは昔よくしたけど
この手の繊細な芸術には馴染みが薄い
隣を盗み見れば
流石というかセンスに溢れた美を感じる
むむ
……ははぁ、そうやって
魅入るほど垂れ落つ色素水
混ざるほど黒に近付く手元
あっ……とちょっと声になるものの
これはこれで案外
透けて紫がかった宝石の元に小さく微笑む
小瓶のキャップはコルクに薔薇飾り。紐もまた深紅
宝石はお揃いの花弁を模る
何故ってもちろん
世を春めかせるひとひらには、彼の色がないと始まらない
だから。はい
ざらりと七色へ混ぜ込む紫黒も
ね、綺麗だ
●
「出た! おいしい宝石!」
会場の入り口にある砂糖菓子の完成見本をみて、吸い寄せられるように足を止めたのは人竜姿のドラゴニアン――ラヴィデ・ローズ(la-tta-ta・g00694)。
「こんな綺麗でおいしそうなお菓子を創作できるなんて、ステキだなぁ……!」
ラヴィデが銀眼を煌めかせる傍には、同伴の妖狐――永辿・ヤコウ(繕い屋・g04118)が佇んでいる。
彼はというと、
(「さて、どんな色にしようかな」)
普段は繕い仕事をする細指を顎に添え、密かに人竜の横顔を見つめる。
(「彼の纏う花色に染めようかと思ったけれど。薔薇は、四季咲きでもあるから――」)
「ね。ヤコウくんも――」
「そう思うでしょ」と、問おうとして。
ふいに振り返ったラヴィデと、ラヴィデを見つめていたヤコウの視線が絡んだ。
――すでに思案顔のヤコウを見やれば、同意を求めるまでもない。
どちらともなく微笑み交わせば、それだけで互いの考えはお見通しだ。
「それじゃあ、はやく作りに行こう!」
先に足を止めたのは、ラヴィデ自身であったというのに。
先陣をきって意気揚々と入口へ向かう人竜の背を、ゆっくりと妖狐が追いかける。
キッチンでの作業を滞りなく終え、寒天液を流しこんだバット・トレーを手にふたりは大部屋の片隅へ。
(「木や石を削ったりは、昔よくしたけど。この手の繊細な芸術には、馴染みが薄いんだよねぇ……」)
色付けの勝手がわからないラヴィデがちらと隣を盗み見れば、並び作業にかかるヤコウの手指は、淀みなく動いている。
――春を告げる沈丁花に桜。
野を照らす萌黄に、山吹く初夏は鮮やかな黄。
――夏の蒼穹。
清かな風吹き、はるか遠く澄み渡る青。
――錦秋燃える紅。
陽光に照らされ、黄金にも輝く紅葉。
――冬透き通る冰白。
身を切るような朝の空気に、うつくしい銀世界。
七色十色。
トレーをキャンバス代わりに、小さな四季を色とりどりに描けば、
「……ははぁ、そうやって」
ラヴィデは「むむ」と唸りながら、すっかりヤコウの作業に魅入っていた。
自分の手元は、といえば。
「あっ……!」
よそ見する先に気を取られ、自分のトレーには色素水を多く入れ込んでしまった。
焦れば焦るほどに色が混ざり、どんどん黒に近づいていく。
寒天液も固まり始め、このまま失敗かと思われたが。
「……いや。これはこれで、案外」
よく見れば透けて紫がかった宝石の元に、小さく微笑む。
彩が完成し、食品乾燥機に預けたら小休止。
そうして乾燥させた砂糖菓子を、ふたりは同じ花弁の型で抜き取っていった。
ヤコウが選んだ小瓶は、まんまるの形。
掛けるタッセルの色は、穢れなき真白の糸。
豊かな彩りを、誰も傷付かない優しくあたたかな世界をという想いを、小瓶に託して詰めていく。
一方、ラヴィデが選んだ小瓶の口には、薔薇飾りをあしらったコルク栓。
深紅の紐が、さらに鮮やかな色彩を添えている。
そこへ、
「はい」
ラヴィデは、己の瓶に詰めていた紫黒の宝石をひとつまみ。
(「世を春めかせるひとひらには、彼の色がないと始まらない――」)
ヤコウの小瓶の七色へ、ざらり混ぜ込み視線で示して、
「ね、綺麗だ」
――紫黒の示す意味など、改めて問うまでもない。
「……綺麗だな。本当に、宝石みたい」
ヤコウは、吐息をこぼすように呟いて。
豊かな色彩に包まれた紫黒をしばし見据えた後、相好を崩した。
手に包んだ小瓶は、ひかりに透かせば、煌々と澄んだ輝きをはなつ。
一点の曇りもない煌めきに、こいねがう。
(「いつかこんな風に。何者にも脅かされず、のびのびと大地を、生を、駆けられる日々が。皆や、あなたに訪れますように――」)
そっと、胸中で祈りを唱えた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【ハウスキーパー】LV1が発生!
【照明】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
【反撃アップ】LV1が発生!
篝・ニイナ
【ラルム(g01224)クンと参加】
食べられる鉱石なんて夢がある
まるで宝石のような砂糖菓子が出来上がるのを楽しみながら
緑色のシロップを混ぜて
光が差せば綺麗な橄欖石の輝き
漂う香りは子供好きのする甘いメロン
この色、一度噛み砕いてみたかったんだよね
二つの橄欖石を携えた彼の顔を見ながら悪戯に
跳び上がる様子にくつりと笑いながら
まるで犬猫のように威嚇する様子に
肩を揺らして笑ってしまう
彼の手元を見れば焔のような赤で
考えることは同じだと笑みは深まるばかり
シンプルな角瓶に赤いタッセル飾り
こういう細かい作業結構好きだし得意
一房赤い俺の髪みたいでいいじゃん
心の中で出来に満足しながら
どう?ラルムクンは上手くできた?
ラルム・グリシーヌ
【ニイナ(g01085)と参加】
きらきらして宝石みたいなのに
食べられるなんて凄いね!
鉱石と言えば…
隣の鬼人を見遣る
赤褐色に艶めく角
鮮やかな紅玉の瞳は
心惹かれるほどに美しいから
煌めかせたい彩は彼の色
紅茶シロップに更なる彩を添えるは
鮮やかなオレンジとラズベリーのピューレ
くるり、かき混ぜ終え
生まれたマーブル模様に自然と眦が緩む
甘い香に誘われ隣に視線を移せば
悪戯めいた眼差しと呟く言葉に
びくっと肩を跳ねさせて
…お、俺の目を噛んだら
ニイナの角、齧るからね!
楽しげな声音に募る
いくつもの想いと共に
彼の彩を雫型の瓶に降らせ
白のタッセルを結わえれば
並ぶ互いの彩に
琥珀糖の様に目を輝かせ
俺も出来たよ!2人の色、だね
●
キッチンでの作業を終え、大部屋の作業机に向かっていたのは、ラルム・グリシーヌ(ラメント・g01224)と篝・ニイナ(篝火・g01085)。
「きらきらして宝石みたいなのに、食べられるなんて凄いね!」
机上に置かれていたタブレット端末が、作例として様々な砂糖菓子を映し出すのを、ラルムが感心したように眺めて。
手元の寒天液に、紅茶シロップと鮮やかなオレンジ、そしてラズベリーのピューレを追加していく。
時おり、ちらと視線を送るのは、隣で作業をするニイナの横顔だ。
赤褐色に艶めく角。
鮮やかな紅玉の瞳。
それらの特徴的な色彩は、どちらも心惹かれるほどにうつくしいから。
(「――煌めかせたい彩は、彼の色」)
すこしでも近づくようにと祈りながら、くるり、トレーの液を混ぜあわせ。
繊細なマーブル模様が生まれれば、自然とまなじりが緩んでいく。
そこへ。
「確かにな。食べられる鉱石なんて、夢がある」
頷き応えたニイナは、緑色のシロップを手に取って。
最初は、少しずつ。
要領を得てからは大胆に寒天液へ色彩を垂らし、混ぜ合わせていく。
光を受けて煌めくさまは、橄欖石(かんらんせき)の輝きにも似て。
「……この色。一度、噛み砕いてみたかったんだよね」
言葉とともに漂う香りは、子供好きのする甘いメロン。
その悪戯っぽい笑みと目線が、己の双眸をじっと覗き込んでいる事に気づいたから。
「……お! 俺の目を噛んだら、ニイナの角、齧るからね!!」
びくりと肩を振るわせ警戒したラルムが、手元のトレーを引き寄せながら威嚇する。
緑の眼をおおきく見開いて。
驚き、跳びあがる様に、ニイナはくつりと笑んで。
さらに犬猫のごとく毛を逆立てる様子に、こらえきれず肩を揺らして笑ってしまった。
「冗談だよ」
ラルムが大事そうに抱えるトレーを見れば、焔のような赤で満たされている。
(「考えることは、同じだ」)
互いに似た思いで色彩を見つめていたのだと思うと、火花咲く瞳を、さらに細めた。
具材の乾燥後。
それぞれが思い思いに砂糖菓子をカタチ作れば、選んでいた気に入りの小瓶へ、煌めきを詰めていく。
ニイナが選んだのは、シンプルな角瓶。
緑の宝石が輝く傍には、赤のタッセル飾りをあしらった、
(「こういう細かい作業は、結構好きだし得意なんだよな。一房赤い俺の髪みたいで、いいじゃん」)
出来栄えに満足しながら、胸中で頷く。
「どう? ラルムクンは上手くできた?」
声を掛け、視線を移せば、
「俺もできたよ!」
応えた少年の手には、雫型の小瓶。
満たされた赤の傍には、白のタッセルが結ばれている。
「ほら見て。二人の色、だね」
琥珀糖のごとく眼を輝かせる少年に、ニイナも微笑みを返す。
――光に煌めくペリドットは、唯一無二の輝き。
それでも。
その色彩を、砂糖菓子の内であっても、留めおきたいと願ったから。
――楽しげな声音に募る、いくつもの想いとともに。
今はただ、甘い香りを、胸いっぱいに吸い込んだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
【活性治癒】がLV2になった!
効果2【ダブル】LV1が発生!
【ドレイン】がLV2になった!
河津・或人
ブロス(g03342)と参加
無事にお気に入りがいっぱい出来て良かったな
んで、俺のは…ブロスにプレゼントだ
おやつにちょっとずつ食べてくれよな
(目の色みたい、と言われたことを思い出して少し気恥ずかしくなるのを隠すように)
小瓶が残れば今日の思い出になるから、有機物ってやつの話をするときは思い出してくれると嬉しいぜ
勉強って面倒くさいけど、何かちょっと知ってる話が混じってると興味が出るだろ?
ずーっと俺が教えてやれる保証はないけど、俺が居られるうちは頑張るからな
ん、お気に入りの数々なのに…俺が貰っちまっていいのか?
なんだか、勿体なくて食べられないな
ブロス・ブラッドハート
あるとにーちゃん(g00444)と一緒
えへへ、けっきょくいっぱい手伝ってもらっちゃった~
受け取った瓶でキラキラしてる六角形は綺麗で、不格好な自分のがちょっと恥ずかしいけど
はい、あるとにーちゃんにもおれのお気に入りをプレゼントだ!
照れを誤魔化すみたいに青いヘキサをぱく
ん~!これすっごく甘くて美味しいな♪
うん!瓶も思い出も大切にとっとくんだぜ
見ればごーりてききのーびな六角形も思い出せるし
勉強も…にしし、あると先生が興味もたせてくれるもんな~
面白かったこと好きになったものを誰かに伝えてじょーほーをきょうゆうする
あるとにーちゃんが教えてくれたんだぜ?
だから最初はにーちゃんに。どうぞだ!
アドリブ歓迎だぜ
●
大部屋の片隅にて。
作業を終えた弟分――ブロス・ブラッドハート(腹ぺこにやん・g03342)は、完成した瓶詰めを飽きずに光にかざし、眺めて続けていた。
「無事に、お気に入りがいっぱいできて良かったな」
声をかけた兄貴分――河津・或人(エンジェルナンバー・g00444)の言葉に、ブロスは満面の笑みを向ける。
「えへへ~。けっきょく、あるとにーちゃんにい~っぱい手伝ってもらっちゃった~」
そう告げるブロスの顔には、申し訳なさなど、ちっとも浮かんではいなくて。
完成した砂糖菓子だけではない。
或人と一緒に、心躍る時間を過ごすことができたということが、少年の頬をゆるませていた。
――心のままに、ころころと表情を変えていく。
(「作業中も、ずっとそうだったな」)
思い出す或人の表情も、つられて、ほころんで。
先ほど告げられた言葉もそうだったと、ふと、思い返す。
『にーちゃんの目の色にも似てるんだぜ!』
ブロスにとってはただ、見たままを伝えた言葉に過ぎなかったのだろうけれど。
そうやって自分という存在を認識してくれていることが、今更ながらに気恥ずかしく感じられて。
「――んで。俺のは……ブロスにプレゼントだ。おやつに、ちょっとずつ食べてくれよな」
照れ隠しのように小瓶を手渡せば、
「……いますぐ食べちゃっても、いいのか!?」
ブロスは眼をらんらんと輝かせて、諸手をあげた。
「もちろん。いいぞ」
「やった~~!!」
大喜びで受け取った、瓶の中。
キラキラと瞬く六角形は、どれをとっても同じラインに、同じ角度。
整然と揃った六角形――青いヘキサは、とても綺麗で。
熱が入ると集中して取り組む或人の性格が、砂糖菓子にも表れているようだった。
――自分のお気に入りに潜ませた、不格好な『それ』と比べると、恥ずかしく感じられるけれど。
「ん~! これ、すっごく甘くて美味しいな♪」
口の中で溶けていく菓子の甘さで、ブロスは照れくささを誤魔化した。
「小瓶が残れば、今日の思い出になるから。『有機物』ってやつの話をするときは、思い出してくれると嬉しいぜ」
「うん! 瓶も思い出も、大切にとっとくんだぜ。これを見れば、ごーりてききのーびな六角形も思い出せるし!」
先ほど伝えた言葉を、もう覚えたらしい。
言葉の意味までは、正確に把握できてはいないのだろうが。
好奇心の強さと、興味からくる物覚えの早さには感心する。
「勉強って、面倒くさいけど。何かちょっとでも知ってる話が混じってると、興味が出るだろ?」
或人がそう告げれば、ブロスがにししと悪戯っぽい笑みを浮かべて。
「勉強は……。興味なくても、あると先生が興味もたせてくれるもんな~」
そうして無邪気にわらう様を見れば、小言を言う気にもなれない。
「ずーっと俺が教えてやれる保証は、ないけど。俺が居られるうちは、頑張るからな」
やれやれと肩をすくめた、その時だ。
「はい! あるとにーちゃんにも、おれのお気に入りをプレゼントだ!」
ずずいと差し出された小瓶に、或人は思わず、ブロスの顔を見やる。
「お気に入りの数々なのに……。俺が貰っちまっていいのか?」
問えば、「あるとにーちゃんが教えてくれたんだぜ!」とブロスは豪語した。
「面白かったこと、好きになったものを誰かに伝えて、じょーほーをきょうゆうする。だから最初は、にーちゃんに。――どうぞだ!」
先ほど、満足げにしていたのを見守っていただけに、受け取るのはためらわれた。
けれど、それだけ大事なものを、自分へ差し出してくれることが何よりも嬉しくて。
「……なんだか、勿体なくて食べられないな」
ふと零した言葉に、ブロスは言った。
「なくなったら、また一緒にあたらしいのをつくればいいんだぜ!」
この先も、同じ時を過ごしていくのだと。
当たり前のように告げるその言葉に、ふいに胸を打たれる。
「ああ。そうだな」
或人は、深く頷き返して。
ブロスのお気に入りが詰まった小瓶から、遠慮なく砂糖菓子をつまみ、口に含んだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【修復加速】LV1が発生!
効果2【先行率アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV4になった!
一角・實生
欲張ってふたつ作った琥珀糖入りの小瓶
自分で作ったタッセル飾りつきの小瓶を三千院さんに渡すよ
選んだ色は三千院さんの身に着ける色のひとつだったんだ
印象に残っていたから
もうひとつには吉祥の祈りを込めてもらったし
俺は感謝の気持ちを込めた……あと、料理スキルが上昇するようにと
これは俺にも当てはまることなんだけどさ
苦笑いしてしまいそうだ
元いた世界のこと、自分のこと
この島に漂着した時に失くした記憶は未だ完全には戻っていない
それでも前を向いて進むと決めたから
振り返って元来た道を戻りたくなった時、今日のような幸せな記憶があればきっと踏みとどまれる
ありがとうございます
ことばに気持ちを込めて小瓶を渡そう
●
タッセルが完成した後。
「では、引き続きたのしいバレンタインを」
と告げて、早々に立ち去ろうとする三千院・紫刻(NOT FOUND・g03496)を、一角・實生(黒頭鷲・g00995)は慌てて引き留めた。
「三千院さん」
呼ばれた紫刻が、「ん?」と肩越しに振り返る。
「なんだい、實生少年。タッセルの作り方で、まだ聞きたいことがあるのかい?」
先ほど實生が手掛けていた、鮮やかな黄緑の房飾りを示せば、
「これを。――ありがとうございます」
告げることばに、気持ちを込めて。
實生が、手ずから作った房飾り付きの小瓶を、すいと差しだした。
――欲張って作った、琥珀糖入りのふたつの小瓶。
そのうちのひとつを、紫刻へ贈ろうというのだ。
「元々、ひとつは三千院さんに渡すつもりで。だから、自分で作る時に選んだタッセル飾りの色は、三千院さんの身に着ける色のひとつだったんだ。――印象に残っていたから」
そう告げられ、紫刻はまるで夢にも思わなかったというように、オッドアイの眼を見開いて。
「……ワタシは、てっきり。少年の眼の色なのだとばかり。……ああ」
そううめくと、實生のさしだした小瓶を手に取った。
何も言わずに瓶を見つめる紫刻の様子を、そっとうかがって。
――いわれてみれば、確かに。
紫刻の片目の色は、己の眼の色にも似ていたのだと、改めて気づく。
「俺の分には、三千院さんに吉祥の祈りを込めてもらったから。俺が作った飾りには、感謝の気持ちを込めた……。あと、料理スキルが上昇するようにと」
「これは、俺にも当てはまることなんだけどさ」と、苦笑い。
「……そうだった。互いに、精進が必要だったな」
紫刻はそれを聞いて、ふと微笑むと、
「實生少年。少し、待っていてくれるかい」
紫刻に言われるまま大部屋の片隅に腰掛け待っていると、時先案内人が小瓶を手に戻ってきた。
「お返しだ。無色透明の、味気ない砂糖菓子だけどね」
先ほど大量に作ったものを、小瓶に詰めてきたのだという。
よければ受け取って欲しいと、無遠慮にさしだされた小瓶を實生が見つめる。
「感謝しているのは、ワタシの方だよ。私は往き帰りの世話と、賑やかしをしているだけ。主に過去を駆け巡ってくれているのは、キミたちなんだからね」
實生はかぶりを振って、言い添えた。
元いた世界のこと、自分のこと。
新宿島に漂着した時に失くした記憶は、いまだ完全には戻っていない。
それでも。
「俺は、前を向いて進むと決めたから。……いつか振り返って、もと来た道を戻りたくなった時。今日のような幸せな記憶があれば、きっと踏みとどまれる」
紫刻は、その言葉を聞いて。
なんだかまぶしそうな顔をして實生を見返すと、言った。
「……キミのその前向きさを、ワタシも見習うべきなんだろうね」
不思議そうに見つめる緑金の瞳に、「ありがとう。實生に感謝する」と告げて。
紫刻はさっそく、受け取った小瓶から琥珀糖を取りだし、口に含んだ。
「うん。甘くて美味しい」
この、『カタチ在るモノ』が。
少年と同じく、己を留めるよすがのひとつとなるように願いながら――。
大成功🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】がLV2になった!
効果2【凌駕率アップ】がLV2になった!