リプレイ
音羽・華楠
私はひまわり人たちの方と接触しましょう。
彼らは地上が恋しい様子……。
太陽の光は流石に用意出来ませんが、【召喚】した光の妖精たちに出来る限りそれに近い光を放ってもらい、ひまわり人たちへ提供しましょう。
また、彼らが種を蒔く地面を【土壌改良】します。
それで、いずれ種が芽吹いた時、より多くの栄養が得られるようになるはずですから。
そのように、ひまわり人たちにとって有益であるはずのものを提供して信頼を得つつ、またそれらの対価としてこの第二階層の情報を聞き出す狙いです。
流浪の民である彼らが、第三階層への秘密の通路を……それそのものと認識してなくても、それらしい場所を知っていれば幸いですね。
土地の痩せた小さな箱庭のような世界……それが、この竜域ダンジョンの第二階層であった。そんな大地を力なく放浪してゆくひまわり人たちを音羽・華楠(赫雷の妹狐・g02883)は小高い岩から見下ろしていた。
「あんまり元気はなさそうですね」
少し前へと身を乗り出していたからか、華楠の結った銀色の髪がはらりと首元を通りすぎて胸元へとかかる。それをゆっくりと背へと戻し、姿勢もすっきりと元に戻す。第二階層は大きな1つの空間だった。けれど、ぱっと見どこにも出入り口はなく完全に平作空間であるように見える。
「地上が恋しくもなりますでしょう。だって彼らはひまわりのような方々なのですから」
太陽を恋した妖精が変化した姿と語られる花に似たモノたちならば、きっと誰よりも太陽を愛おしく恋しく思っているだろう。
「そうですよね」
華楠は小さくうなずき、岩を飛び降りた。
その集団のリーダー格なのか、華楠が近寄ると先頭にいたひまわり人が仲間を庇うように進み出た。
「ど、どちら様でしょうか。わたくしどもに何かご用でしょうか?」
華奢な茎のような身体を不自然にかがめ、お辞儀をしているように見える。
「ごめんなさい。驚かせるつもりではなかったのです」
華楠はこのダンジョンに迷い込んでしまったと言い、しばらくの同行をお願いした。
「私からみなさんのお役に立つことがあるのか、わかりませんけれど……」
華楠はひまわり人たちを驚かせないよう、そっと光の妖精たちを喚び、光を放ってもらう。
「なんて優しく温かい光なのでしょう」
ひまわり人達はとても喜んで、華楠の同行を許可してくれる。
「とはいっても、私たちはこうして種をまいているだけなのです。少しでも種が育っていける土地を探して……」
「それなら、お役に立てるかもしれません」
オレンジ色の優しい瞳を細めて華楠は笑顔を向ける。あらかじめ使っておいたパラドクスの効果で植物の生育に適した土壌に変化させられるからだ。半信半疑であったひまわり人達は実際に華楠が土壌を改良するとびっくりし、盛大に感謝した。
「ありがとうございます」
「きっと強い子が育ちます」
ひまわり人達は口々に礼を言う。
「華楠様は地下へ向かう道を探しておいでですよね」
「もしかしたら、洞窟の涸れ井戸がそうかもしれません」
「どうせ通り道ですから、一緒に参りましょう」
「ありがとうございます」
華楠は晴れやかな顔で笑った。
大成功🔵🔵🔵
効果1【土壌改良】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】LV1が発生!
草薙・理人
連携・アドリブ〇
確か、リス人はドラゴン怖いって?
俺、元人間だしドラゴンっぽいとか分かんねぇけど、やるだけやってみるかぁ
こんなファンシーな種族が相手だと気が引けるけどな…
翼が目立つように【飛翔】で集落に登場、竜鱗兵の発音や振る舞いを意識しながら「秘密の出入り口の情報」とか「ドラゴンが戻っていく方向」を聞こうか
何か躊躇う様子とか見せたら容赦なく怖い顔して圧をかけよう、こういうのは慣れっこさ
知らないなら帰ってきた狩人に聞く、狩人が攻撃してきた時はリス人へ危害を加えないように配慮して【ダッシュ】で避けるぞ
最後はありがとうと笑いかけて、【金糸雀】に作ってもらったひまわりのクッキーをお礼に渡して去ろうかな
「確か、リス人はドラゴン怖いって話だったな?」
デロス島の竜域ダンジョン第二階層に到達した草薙・理人(暁闇を継ぐ者・g03374)はゆっくりと自分の身体、その外見を見分した。運命のあの8月15日まで普通の人間であった理人には自分のドラゴンに似た場所などはわからない。
「ちょっと気の毒な気もするんだけどな」
心の中で『ごめんなさい』と思いつつ、理人はパラドクスを使用する。ドラゴンを連想させる翼を大きく広げ、そして理人はリス人達の暮らす集落の端っこに降り立った。
父の帰りを待ちわびて、集落の端にある柵の内側で目を凝らしていた子供たちは目の前に飛来したドラゴンの翼と頭に角のある大きな存在にしりもちをついた。
「答えよ。ここより下へと続く道を知っているか?」
他のディアボロスから聞いた話や報告書で読んだだけの竜鱗兵の発音や挙動、ふるまいがどこまで再現されているのかわからないが、ここはアドリブで押し切るしかない。
「「答えぬか!」」
怒鳴りつけるような大声を出す。すると、理人の背後から身を低くした大人のリス人たちが子供の前に飛び出した。古い樹の皮で出来た防具をつけた『狩人』達だろう。
「子供が失礼いたしました。どうぞご下命があればやつがれにお申し付けください」
最も毛皮の薄汚れたリス人が言った。その背後で子供のリスが怯えている。なんとも申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
「我は、いと強き御方から地下へと続く道の調査と地図の作成を命じられている。其の方どもが知る道を疾く言上せよ」
大人のリス人たちは顔を見合わせている。どうもこの命令はリス人たちからすると不思議な命令なのだろう。だって、知っていて当然の存在が知らないようなそぶりで聞いているのだ。怪しむだろうし、罠だって思うかもしれない。
「そのような大事なことは絶対に口外いたしません」
案の定、リス人たちは理人の問いを守秘義務チェックだと思ったようだ。そうじゃない! そうじゃないのだ。
「我は地図に記録する者である。言え!」
一生懸命、怖い顔をして怒鳴りつけた。理人の苦労が伝わったのか、リス人たちは3つの道を教えてくれた。一つは集落を全て壊して、その柔らかい土地を地下まで掘る。次は最北奥のドラゴンが通る大きな穴。それから東の洞窟にある枯れ井戸だ。
「よくわかった、ありがとう」
理人は笑ってひまわりの種のクッキーをリス人に渡してやった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【飛翔】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
第二階層の最北端には大きな穴があった。1体のドラゴンが通れるほどの大きな穴だ。そしてその穴は下から上へと強烈な風が吹き続けている。さながら、下から上へと繋がる自然のエレベーターのようだ。ドラゴンほどの質量がなければ、第一階層へと戻されてしまうだろう。
東の洞窟内にはひまわり人やリス人が言う涸れ井戸み見えるものがたくさんあった。数は20個ぐらいだろうか。四角い筒状の形をしていて、たくさんの岩が厳重に積み上げられている。その岩の隙間を吹き抜ける風が隙間風のような音を奏でている。この井戸のようなものも下から上へと風が通っているようだった。
音羽・華楠
ひまわり人の皆さんが教えてくれた涸れ井戸で、第三階層への道を暴きます。
……順当に考えれば、二十ある涸れ井戸の内の一つだけが第三階層への通路で、残りは全部偽物……罠でしょうか?
仮にそうだとしても、【エアライド】による最適な経路把握を用いれば、正解の涸れ井戸は解りそうですが……。
……涸れ井戸の中から吹き上がってくる風のせいで、もしかして通れません?
通れるとしても……袴が捲れそうで嫌ですね。
自前の【風使い】と【召喚】した風の妖精たちの力で、この風の出所とどのように通って涸れ井戸から吹き出ているのか、調べます。
風も仕掛けの一部なら、それらを逆算することで風を止める方法も解るかもしれませんしね。
東の洞窟はすぐにわかった。
「どうやらドラゴンが使える大きさではありませんね」
音羽・華楠(赫雷の妹狐・g02883)は人サイズの者が通行するのに適したサイズの入口から慎重に中へと入ってゆく。ここを知ることも、使うことも想定していないのか、洞窟には結界も罠も扉もない。ただ、薄暗い場所に井戸に似た四角いオブジェがあるだけだ。井戸だとすると水を汲むための場所に岩が積み上げられていた。
「なんだか不用心な場所ですね、侵入者である私が思うのもなんですが……」
人やクロノヴェーダの気配がない洞窟の中をスタスタと歩き、華楠は井戸の1つに近寄った。
順当に考えれば二十ある井戸っぽい中のどれかが正解で第三階層へと続く通路であり、残りは全部偽物で罠、だろうか。華楠は考える。小さく頭が揺れて銀色の髪が肩や背にサラサラと動いている。
「ここに来てみてわかりましたけど、こんな不用心な場所に罠とは考えにくいですね。断言してもいいですけど、ここは誰も気にしてない場所、っぽいです」
誰も聞いていないけれど、華楠は断言する。だとすると、ここはなんなのだろう。
「とにかく、1つ中を覗いてみましょうか」
比較的小さな岩を1つ、積み上げられている場所から抜き取った。
ブオォぉぉぉぉ、と小さな隙間から強い風が華楠目掛けて吹きつけた。
「わあああっ」
業務用のドライヤーの強、みたいな風が真正面から向かってきて、華楠の顔や髪にまともに当たる。
「これは、なかなか強いですね」
少し体をずらせば風は華楠に当たらなくなる。もっと岩をとれば風はもっと拡散してして緩やかになったが、内部に侵入するのはまだ風の抵抗が強そうだ。
「無理をしたらなんとかなるかも知れませんけど……袴が」
大切な装束に負荷がかかるのは好ましいことではない。少し考えて、華楠は風の妖精を喚び出した。
「この風のこと、調べてきてくれませんか?」
妖精たちはコクリと頷き、岩の隙間からするりと風の中に入ってゆく。20分ぐらいすると風の精霊たちが戻ってきた。そして華楠に報告をする。
「北の大きな穴と繋がっていて、ここの岩を全部どけると北の穴の風が弱くなる。大きな穴をもっと大きくしたらここの風が弱くなる、ですか」
華楠には別の案も浮かんできた。ここを大きな穴にしたらどうなるのかしら、と。
大成功🔵🔵🔵
効果1【エアライド】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
草薙・理人
連携・アドリブ◯
ハァーッあっぶな!バレなくてよかったぁ…バレてないよな?じゃあ、最北奥にある大きな穴から行こうかな
念のため周囲にドラゴンがいないか確認、罠とかあるなら【幸運】で【臨機応変】に対処しよう
っておいおい、ちょいと風強すぎだろ?人型だと浮きそうだぞ…しょうがない、竜型で入るか
(トカゲのような顔に変形、全身が青い竜鱗で包まれてひと回り大きくなる)
ん〜やっぱ慣れねぇな、これ後で肩とか腰にくるし嫌なんだよなぁ
音羽・華楠
ひとまず、二十ある涸れ井戸の全てから、積み上げられた岩を退かしましょう。
《攻性式神結界》を叩き込みます。
仮に、岩がクロノ・オブジェクトでも、移動は可能と確認出来てますし。
パラドクスが命中した衝撃で、吹き飛ばしたり崩したりは出来るかと。
【結界術】で周囲と遮断される《攻性式神結界》なら、岩の崩壊音が漏れて歴史侵略者たちに気付かれる心配も薄いですから。
ここの岩を全部退けると、北の大穴の風が弱まるのは解ってます。
それであちらが通れるようになれば……。
また、【召喚】した風の妖精たちに協力してもらい、【風使い】で東の洞窟の方に風が流れ込み易くなるよう、誘導を。
それでさらに北の大穴の風は弱まるはずですから。
ローゼマリー・フォーレ
懐かしく慕わしいこの世界
……いつかきっと、取り戻してみせますわ
お父様、お母様、……様
仕掛け?秘密の出入口を見つけるんですの?まあ面白そう!
皆様に続く形でお手伝いできればと思います
涸れ井戸の岩をどけて大きな穴にするのかしら?
【腐食】の霧と、ソフィアの闇と
静かに岩を飲み込んで取り除いていきましょう
あとは…ふふふ、私こう見えて腕力にもすこし自信がございましてよ!
敵には気取られぬよう、そうっと静かに……ですわね
ええ、周囲の気配にはよく注意いたします
異変があれば手をとめて警戒を呼びかけますわ
●風の通り道
リスの集落から逃げるように、ただ最後まで威厳を保つ努力を最大限に発揮しつつ草薙・理人(暁闇を継ぐ者・g03374)は撤収した。
「ハァーッあっぶな! これ以上ドラゴンごっこをしていたら絶対にバレてたぁ。バレなくてよかったぁ……バレてないよな?」
ドラゴンの眷属のフリをしてリス人から情報を引き出す。この作戦はドラゴニアンである理人には十分に成功する確率の高いものであった。ただ、想定外であったのは実際に会ったリス人たちの可愛らしさだった。受け答えをするリス人以外、戻ってきた『狩人』たちは皆、頬袋いっぱいにしていたのだ。多分、ひまわり人の種を頬に貯めていたのだろう。そんな可愛い顔で目だけは真剣な様子で見開き、じっと理人を見つめているのだ。思わず顔がにやけてしまうのを我慢するのがやっとだった。
「俺がリス好きだったら、1分でもふもふしてたよ。あっぶなかったぁ。じゃあ、せっかく教えてもらったんだし、最北奥にある大きな穴から行こうかな」
理人は念のために周囲にドラゴンがいないかどうか、しっかりと確認してしつつ北へと向かった。
東の洞窟では音羽・華楠(赫雷の妹狐・g02883)は大きくため息をついていた。
「はぁ……やっぱりこれに積み上げられている岩を全部どかしてしまうのが結局早いみたいですね」
涸れ井戸に似た、多分これは空気穴なのだと華楠は考えている。だから、ここの圧を調整すれば別の場所の空気圧が変化するはずだ。
「攻性式神結界を発動します」
キッパリとした華楠の声が東の洞窟に強く響く。と、同時に結界がいくつかの涸れ井戸を包み込み、放たれた式神が井戸に積まれた岩を粉砕した。粉微塵になった岩がサァーと砂のように音を立てて地面に降り、栓を失った井戸からは古いクーラーのように大量に空気が流れこんでくる。
「やっぱりそうなのですね。きっとこれで北の大穴の風が弱まっているでしょう」
「お見事です!」
華楠ではない声が東の洞窟に響いた。
「誰ですか?」
殺気も敵意もなかったけれど、華楠は身構えて誰何をする。
「これは大変失礼いたしました。私はキングアーサーを出自とするドラゴニアンですが、ディアボロスの一員ですわ」
ローゼマリー・フォーレ(菫の公女・g06419)は人懐っこいアメジスト色の瞳を柔らかく細め、優雅に一礼して華楠に微笑みかける。
「もし、ここの岩を全て排除すると言うのでしたら、私にも何かお役目をいただけないでしょうか? パラドクスも使えますし、こう見えてもなかなか力持ちなのです」
ローゼマリーは細く華奢に見える両腕を華楠へと差し出し、ペチペチと逆側の手で叩いて見せる。その仕草に少しも力自慢な様子はなかったけれど、ローゼマリーの素直な気持ちは伝わってきた。
「ちょうど困っていたところなんです。ぜひ、力を貸してください」
「はい、かしこまりました」
銀色の髪をゆらして小首を傾げた華楠の言葉にローゼマリーは輝くような笑顔を見せた。
北の大穴に飛び込んだ理人だが落下はしなかった。強烈な上昇気流がともすれば、理人を上へ上へと押し戻そうとしてくるのだ。はたはたと服の端が強烈にたなびき、髪が全部後ろへと風に流されてゆく。耳元では轟々と風の音が強くて他には何も聞こえない。
「っておいおい、ちょいと風強すぎだろ? このままじゃ上の階層か地上まで戻されるんじゃないか?」
不吉な予感が実現しそうな風の勢いに理人は別の案を実行しなくてはならないかと思っていると、不意に風の勢いがガクンと弱まった。
「うぉわぁ!」
理人の身体は大穴の中で急降下をする。すると、第3階層ではない第二階層ながらも一段下の地面が見えてきた。
「敵の、クロノヴェーダの気配が強いな」
地面に着地すると、すっかりオールバックになってしまった癖のある茶色い髪を手で撫で付け、理人は奥へと歩き出した。
少し前の東の洞窟では、ローゼマリーが岩の除去に勤しんでいた。
「涸れ井戸の岩をどけて大きな穴にするのかしら?」
「そうですね。こちら側の空気の通り道を広くすれば、北側の大穴を通る空気が減ると思うんです」
華楠が説明するとローゼマリーはコクリと頷いた。豪奢な金髪が薄暗い洞窟の僅かな光でもキラキラと光る。華楠の長くストレートの銀色の髪と美しい対比がここにある。
「其は沈黙の黒、死と滅びを司る災いの黒。喰らえ喰らえ喰らえ、全ては虚ろのなかへ」
ローゼマリーが喚び出した冥界の闇は彼女の胸から出で、大きく膨らみ周囲を飲み込む。
「これは……」
退避していた華楠の目にはローゼマリーから生まれた漆黒の球体が周囲を侵食し消していくように見える。球体はすぐに消え、忘我の様だったローゼマリーがハッとしたように生気を取り戻し、華楠へと微笑みかける。
「華楠様、私、加減がよくわからないのですが、このような感じでよろしいのでしょうか? ちゃんと岩はどけられていますか?」
ローゼマリーは懐っこい笑顔を同じ年齢ながらもちょっとお姉さんっぽい華楠に向ける。華楠は2、3度瞬きをし、ぎゅっと手を握って頷いた。
「ローゼマリーさん、大変結構です。この調子で全部の岩をどかしてしまいましょう。その後で私が風をこちらに呼びます」
そうなれば、北の大穴の強風はこの洞窟へと誘導されるはずだ。
「承りましたわ。それでは!」
再び華楠は結界を張ってから式神を放ち岩を破壊し、ローゼマリーは冥界の闇を呼んで岩を喰らわせる。すぐに岩は撤去されて、洞窟内は風の乱流する場所となる。
「もう、髪が乱されちゃいますね。ここは妖精たちに任せて私は北の大穴に向かいますが、ローゼマリーさんはどうしますか?」
銀色の髪を両手で押さえながら華楠が尋ねる。
「もちろん、ご一緒させてくださいませ」
ローゼマリーも宙に乱舞する髪を押さえながら即答した。誰しも胸に秘めた願いがある様に、ローゼマリーにも叶えたい願いがある。
「北の風はもう弱まっているはずです。行きましょう」
「はい、念のために敵には気取られぬよう、そうっと静かに……ですわね」
二人は銀色と金色の髪をなびかせ、東から北へと向かって移動していった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【植物活性】LV1が発生!
【ハウスキーパー】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
音羽・華楠
ジャメヴたちは、仲間同士での連携を得意とするみたいですね。
なら、こちらも《フェアリーコンボ》で妖精たちとの連携を見せてあげましょう。
【召喚】した音の妖精たちに、ジャメヴたちの声を打ち消してほしいと頼みます。
連携に綿密な意思疎通は不可欠。
最大の意思疎通手段であるはずの『会話』を封じられれば、ジャメヴたちの連携の精度は著しく下がるでしょう。
その隙を突きます。
特に、仲間に敵を足止めしてもらっての衝撃波は、放つ直前に仲間へ退避を呼び掛けないと巻き込んでしまいますから。
まともに使えなくなるのではないでしょうか?
私はそうやって生じさせた敵側の混乱が収まらない内に、ジャメヴたちを細剣で斬り捨てていきます。
つまり、第二階層は二重構造であった。北にこれ見よがしにある大きな穴は強い下から上へと吹き上げる風が壁となって、ドラゴンの様に質量のある物以外は突破できない。いかにも小さく軽そうなひまわり人やリス人なら、絶対に下の層へは辿り着けないだろう。そして、北の穴を使うしかないというあからさまな誘導もまた、二重構造を守る心理的な守りとなっていたのだろう。しかし、ディアボロスはそれらを突破した。強風の仕組みを見破り、東の洞窟から風を逃すことで北の大穴の風力を弱めた。
いつもであれば、風はいつもこの階層を下から上へと吹き抜けていた。轟々とよりは少し小さく鳴る風の音はここでは四六時中聞こえている。しかし、今、音は全く聞こえない。風の音も、すぐ近くにいる仲間の声も。
「声が聞こえるのが当たり前の状態で行う連携を、音のない世界のでも同じように出来ますか?」
音羽・華楠(赫雷の妹狐・g02883)の周囲を妖精たちが飛び交っている。妖精たちが制御したのはここでは自由に動いていた空気の流れ、つまり風だ。それがほとんど動かないと声も伝播していかない。
「……」
「……」
無声映画の画面のように、戦斧を持ったジャメヴ達は口をパクパクさせながら、大袈裟な身振り手振りをして見せる。その視線は近くの同輩へと向けられていて、侵入者への警戒はおろそかになっている。
「私と妖精たちとの連携を見せてあげましょう」
「……敵、が、くるぞ……お、前の、うし……」
大声を張り上げるジャメヴの言葉はすぐには味方に伝わらない。言いたいこと、伝えたいことの半分の言い終わらなうちにその時は迫る。軽やかな鈴の音が響く。
「え?」
音に驚いたジャメヴが振り返るより、細身の剣を構えた華楠が繰り出すフェアリーソードの切先が敵の身体に滑り込む方が早い。妖精たちの乱舞、そして華楠の攻撃が敵を捕らえた。
「グエェ!」
短い敵の悲鳴も多分華楠にしか伝わらないだろう。戦場を軽やかに征く舞姫の様に華楠の銀色の長い髪、巫女装束の裾が広がり、鈴の音がごくごく狭い範囲だけに響く。そのたびに連携を取れないジャメヴたちが1体、また1体と倒され地面に転がってゆく。
「特務竜部隊だそうですが、脆いものですね」
身を翻してほとんど返り血を浴びていない華楠は淡く微笑んだ。
大成功🔵🔵🔵
効果1【エアライド】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
陳・桂菓
使用武器は双短戟『騰蛟昇竜』
仲間の足止めからの衝撃波による攻撃を仕掛けてくるか。力自慢の集団のようだし、捕まってしまえば厳しいだろう。
ならば、【蚩尤超限暴】の速度で足止めに掛かるジャメヴらを避ける。また、衝撃波も速度を活かして回避。残留効果【エアライド】【飛翔】も利用し、とにかく捕捉されないことを第一とする。
ハイスピードで動き回れる状態を維持できれば、そうそう後れを取ることもあるまい。力自慢と鍔迫り合いは危険なので、交錯はなるべく一瞬で済ませるように、回避しつつ脇を駆け抜けつつの一閃で斬り捨てるという感じで敵の数を減らしていく。
「お前ら相手にいつまでも時間を掛けていられん。道を空けてもらうぞ」
ローゼマリー・フォーレ
先には大いなる竜が待っているとしても
私はまだ弱く、力を温存する余裕などないのです
持てる全力を尽くしますわ!
意を込めて宣言いたしましょう
氷よ 吹雪よ 力を貸してくださいませ
視界を白く白く覆いつくし
互いに協力する余裕も私たちを観察する暇も与えぬように
罠を設置する様子には注意を
そして敢えて分かりやすく隙を作り
その守りを固めましょう
私の長杖は正しく武器、魔法触媒というだけではございませんの
侮っていらっしゃるなら…ぜひ堪能なさって?
斧を受け流し回避も試みて
敵をより吹雪の最中へと誘い込みますわ
出来うるなら他の皆様と密な連携を
標的を合わせ着実に数を減らして
……一人じゃない
それはこんなにも心強いことなのですね
この第二階層の下層にドラゴン族の敵が侵入しただろう事は、長くここでかりそめの平穏を貪ってきたジャメヴたちに信じられない事だったのだろうか。先行していた華楠が戦いを始めいたにもかかわらず、敵の増援は今やっとその先頭が陳・桂菓(如蚩尤・g02534)の目に映り始めたところだった。
「遅い! 戦いとは速さも重要だと認識していないのか。長く最前線に立つことのない部隊などすぐに使い物にならなくなるのはクロノヴェーダも変わらない様だな」
桂菓は敵を睥睨し口元を歪めて嗤った。そうしている間にも闘気が身体中に溢れてくるようだ。
「本当にあちらから敵の増援がやってまいりました。まるで桂菓様の予言を体現するがごとく、ですわ」
同じく、二重構造であった第二階層の下層の出口付近から南側を見つめていたローゼマリー・フォーレ(菫の公女・g06419)は感嘆の声をあげる。実は先行してこの階層に降りた華楠を追ってきたローゼマリーは出来ることなら彼女と一緒に戦ってみたかった。けれど、風を制御し声の連携を絶って戦う華楠の戦法は共闘が難しい。困惑するローゼマリーに敵の増援と戦おうと持ちかけたのが桂菓だった。
「では、先に行くぞ」
振り返ってローゼマリーにチラリと淡い笑みを浮かべた桂菓は、すぐに前を向く。桂菓の視界に映るのはもう敵の増援を、それだけだ。
「と、ト……翔ぶゥ!」
桂菓の内に眠る古き戦神の力が一瞬で呼び覚まされる。速度の概念が塗り替えられ、今までの何十倍、何百倍もの速度で周囲がゆっくりとしたスローモーションになる。否、桂菓の全ての速度が速くなっているのだ。止まっているかのような敵を両手に持った青龍戟で難なく屠る。瞬く間に4体の敵が地に臥した。反撃は、ない。
「すごい……のですわ、桂菓様。でも、私もただ見ているだけではいられません」
ローゼマリーは知っていた。自分はまだまだ強くはないのだと。今、クロノヴェーダの上位であろうドラゴンを倒す力はない。けれど、未来はまだ決まってはいない。伸び代はあるのだと信じるだけの隙間はまだ残されている、はずだ。だから全力で立ち向かうしかない。過酷な歴史に、風穴をこじ開けるために。
「氷よ 吹雪よ 力を貸してくださいませ。視界を白く白く覆いつくし、互いに協力する余裕も私たちを観察する暇も与えぬように」
美しく華奢なウィザードロッドを掲げたローゼマリーの魔術が発動し、凍てつくような猛吹雪がダンジョンの内部を席巻する。
「うわああ」
ジャメヴの悲鳴が聞こえる。致命傷とはなっていない様だが、ローゼマリーへと反撃する余裕はない。ホワイトアウトしたような世界で右往左往するジャメヴたちの中に、雪と氷の乱流に飲み込まれない一筋の別の流れがある。ジグザグに、上に下に流れてゆく小さな細い軌跡。その流れが進む先で、敵は倒れ雪に埋もれてゆく。
「……もしや、桂菓様?」
ローゼマリーは目を見張る。
桂菓は彼女だけが見ている美しい世界にいた。突然、空間が全て白い花のような雪の結晶で埋め尽くされたのだ。それは高速で移動する桂菓には止まっている様にしか、見えない。一瞬にも永遠にも思える霧氷の花たちだ。敵は花に翻弄され、さらに隙だらけとなり桂菓に倒されてゆくのだ。
たくさんの敵の群れが倒れている。彼らが出現した南の先に、もっと強い敵の気配がある。この階層を統べる敵はそこにいるのだろう。あとはただ、進めばいい。決戦の最後の舞台への道はすでに開いていた。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【エアライド】がLV3になった!
【使い魔使役】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
【能力値アップ】がLV2になった!
エルフリーデ・ツファール
※常に煙草吸ってます。
※アドリブ連携、怪我描写歓迎。
※効果2全使用。
魔女も歩けば竜に当たる、ってな。
横入りみたいで気が引けるがその命、灰にさせてもらうぜ。
火力を上げると媒体の煙草が一気に消費されるので最初に新しい分を咥え直しておく。
【ダンス】でも躍るような足捌きで接近、全開にした【オーラ操作】で尻尾を一振りの槍のように捻じり上げて真向から【貫通撃】だ。
反撃はこちらを焼くようだがこれでも【炎使い】、早々焼き付いてやるわけにはいかねェ。
頑張って耐えるとしますか。
「おお、熱い熱い。だがいいのかよ? これじゃあ私を焼き尽くすのにお前の血を全部振り絞っても無理だぜ?」
意外にも第二階層の最奥にある場所に到着したのはエルフリーデ・ツファール(紫煙の魔術師・g00713)が一番早かった。色々と、エルフリーデにしかわらかない方法でショートカットしたのだろう。
「誰ぞ?」
アヴァタール級ながらシャドウドラゴンの名を冠されたそのドラゴンは俊敏に巨体を操り向き直った。特にフットワークと腕の動きが滑らかだ。唇に煙草をくわえたままエルフリーデは器用に話す。
「魔女も歩けば竜に当たる、ってな」
少しくたびれた雰囲気のする魔女らしい帽子を上にずらしてまじまじと敵を見る。エルフリーデの焼き尽くされた残骸の色にも似た瞳が好戦的に輝いた。短くなってしまった煙草をお行儀悪く火も消さずに足元に投げると、新しい煙草をくわえ直す。
「横入りみたいで気が引けるがその命、灰にさせてもらうぜ」
軽やかにステップでも踏むような足さばきでエルフリーデがシャドウドラゴンに接近する。
「余興か?」
シャドウドラゴンは完全にエルフリーデを敵だと思っていなかった。不本意ながら迷い込んだヒトが自暴自棄になって死に急ぐのだと。だから、なんの構えもしない。その隙だらけの間合いに飛び込んだエルフリーデは攻撃に躊躇がない。
「獣の野生と赤き炎をこの身に宿せ――」
炎で創られた狐の耳と尾が燃え上がる。そして沢山の尾は一つになって巨大な突撃槍のような紡錘の形になってドラゴンの腹を穿った。
「な、なに?」
内臓を焼く激しい痛みにドラゴンの身体が傾いだ。敵とも思っていたなかった小さな存在に身体を焼かれ、フィジカルだけではなく、メンタルにもダメージを負ったのか。
「許さぬぞ、虫けら!」
シャドウドラゴンは自分の血を沸騰させるほど高温とし、煮えたぎり気化した血が自分と、そして焼かれたエルフリーデの身体を黒く染める。
「おお、熱い、熱い!」
深淵もそこから伸びる亡者の手の幻影もエルフリーデを沈めることは出来ない。ダメージは皮膚と服の端がやや焦げたぐらいだろうか。
「耐えるか? 我が血のたぎりを?」
シャドウドラゴンは初めて驚いたような声音を出した。
「私を誰だと思ってる? って知らないならしょうがない。でも、これじゃあ私を焼き尽くすのにお前の血を全部振り絞っても無理だぜ?」
黒く染まっても、それも似合うエルフリーデは唇をゆがめてニヤリと笑った。
大成功🔵🔵🔵
効果1【狐変身】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
音羽・華楠
遂にアヴァタール級のお出ましですか。
でも、この竜……?
攻撃手段が全て、一度に狙える対象が少数。
また、放つ際に溜めや準備が必須……。
……この竜、誰かを攻撃する寸前、それ以外の復讐者に対しては無防備な姿を晒すのでは?
私はその隙を《雷幻想・閃耀》で狙い撃ちます。
上手くすれば、他の皆さんへの攻撃の妨害にもなるでしょう。
私自身へ向けられる攻撃は、予め【飛翔】し、【エアライド】によって最適な移動経路を見切って小刻みに動き続けることで的を絞らせないようにします。
敵の攻撃は予備動作が大きいですし、【精神集中】して冷静に対処すれば回避は困難ではないはずです。
「あなたは、一対一の戦闘に特化し過ぎなんですよ……!」
草薙・理人
【連携・アドリブ◯】【SPD】
あれぇオールバック意外と似合ってる?後で写真撮ろうかな…
っと、アイツが大将か、なんか禍々しい雰囲気出しまくってんなぁ
ふんふん、身体自体が弓みたいな役割を持ってるわけね
んじゃ、俺の発明品試してみるかい?
自動運転椅子の端末を操作、【パラドクス】を地面に撃ち込みまくって凍らせるぜ、この状況下で身体を撓らせられるもんならやってみな
敵にも念のため撃ち込んどくか、凍結は無理だったとしても動きを鈍らせることくらいはできるんじゃねぇかな
もし暗器が飛んできたら【残像】や【ダッシュ】や残留効果で【臨機応変】に対処、【誘導弾】を放ったり剣舞形態に切り替え【両断】で一気に叩き込む!
塞河・みやび
強そうなドラゴンなのじゃ~。
みやびちゃんもお手伝いするのじゃ!
敵は気化した血で攻撃してくるのじゃ?
【風使い】なごうごう【オーラ操作】で【吹き飛ばし】たら、被害を軽減できるかもしれないのじゃ。
オーラ治療術で【浄化】する手もあるのじゃ!
でも守るだけだとジリ貧なのじゃ~。
ここは【計略】を使うのじゃ!
あえて敵の技を受けて【情報収集】し、その幻覚を【精神攻撃】として、みやびちゃんファイアでお返しするのじゃ。
奇しくも共に「焼く」技でもあるし、その点においては【炎使い】でもあるみやびちゃんの方が上手ではないかな!?
自分の技を自ら受ける羽目になったら【撹乱】できて、いい【時間稼ぎ】にもなると思うのじゃ~。
「遂にアヴァタール級のお出ましですか」
最奥の間ではすでにシャドウドラゴンとエルフリーデとの戦いが始まっている。その様子を一眼見た音羽・華楠(赫雷の妹狐・g02883)は訝しげな表情を浮かべた。オレンジ色の瞳がドラゴンの全てを見定めようとするかのようにじっと見つめる。
「強そうなドラゴンなのじゃ〜。みやびちゃんもお手伝いするのじゃ!」
動きが止まったかのような華楠の横を頭ひとつ分くらい小柄な塞河・みやび(さいかわみやびちゃん・g04329)がすり抜ける様にして前に出る。
「みんな、みやびちゃんのために戦ってくれてありがとうなのじゃ」
礼を言いつつもみやびは戦いの動向を見つめている。ドラゴンの血を気化するという攻撃、対抗手段、しかしみやびは防御ではなく攻撃を選ぶ。
「色々考えたのじゃが、守るだけだとジリ貧なのじゃ~。ここはあえて!」
敵の攻撃を待ってそれを受けて、情報収集したい……だから、ドラゴンも攻撃して来ず、みやびも攻撃しない空白のような一瞬が訪れた。
「じゃ、俺の発明品試してみるかい?」
少し髪型を変えた草薙・理人(暁闇を継ぐ者・g03374)がみやびの横に立っていた。どことなくイケメン度が向上している。
「おお、来たか。よかったぁ! みやびちゃんの計算通りなのじゃー!」
喜ぶみやびの隣で理人は黒い車輪が特徴的な自動運転椅子に座ったまま、その端末を操作する。足元の地面に極寒の冷気を封じたミサイルと発射する。その急速な温度の低下はシャドウドラゴンの身体の表面をも凍らせる。
「この状況下で身体を撓らせられるもんならやってみな」
「新手か」
理人の冷気を払い除け、シャドウドラゴンが吠える。目では追えない速度の動き、そして目にも止まらないのに空中を飛来しせまりくる何かの武器。見えないモノは避けられない。青い光が目の前でまばゆい、と、思った時にはもう理人は何かに切り裂かれていた。
「なんだよ、それは」
シャドウドラゴンの攻撃を『わかっていた』にもかかわらず、避けられなかった。服ごと皮膚まで切り裂かれた理人の腕や足から血がにじむ。しかし、致命傷となるような深手は負っていない。
「ようやった、理人! これからこのみやびちゃんが仇を取ってくれるのじゃ!」
時は満ちた、みたいなノリでみやびが小柄な身体で手足を大きく開き、理人の前に出る。
「え? あぁ、うん」
よくわかっていない理人の怪訝そうな顔はみやびには見えない。
「みやびちゃんファイアでお返しするのじゃ! それ、なのじゃ♪」
具現化されたオーラが狐火となり、シャドウドラゴンへと飛んでゆく。
「なん、なんだ、これは?!」
シャドウドラゴンが何を見ているのか、それはわからない。だが、一見、それほど協力には見えない狐火がシャドウドラゴンに幻覚を見せ、翻弄している。もがくシャドウドラゴンは自分の爪や牙で自分自身を傷つけている。みやびの琥珀色の瞳には狐火の赤々とした炎が映り込む。
「えぇい! ならば全てを焼くまでよ!」
シャドウドラゴンは自分の血を蒸発させる。気化したその黒い血は敵も自分も委細構わずに焼く。
「ひ、ひどいのじゃ」
焼かれたみやびの可愛い服が黒く汚れたようになる。
「やっぱり、思った通りです」
理人へ、そしてみやびへのシャドウドラゴンからの攻撃を見ていた華楠は確信した。この竜は誰かを攻撃する寸前、それ以外のディアボロスに対しては無防備な姿を晒すのだ。そして、そこが狙われていないディアボロス、つまり華楠が攻撃をする好機なのだ。
「ト ホ カ ミ エ ミ タ メ――汝、至高なる雷の神威を識れ
……!!」
雷の術を中核とし、他のエレメントをも組み込んで編み上げた術式に妖精たちの補助も加えて昇華する。生成した多量の重金属粒子を帯電させ、集束する。魔術的に再現した『荷電粒子砲』の灼熱がシャドウドラゴンへと直撃した。それはエルフリーデが穿った大きなシャドウドラゴンの腹の傷へと吸い込まれ、身体中を内側から駆け巡る。
「ぎゃああああっ!」
この時、初めてシャドウドラゴンの喉から悲鳴のような絶叫が発せられた。黒くくすんだ巨体が横倒しとなり、をごろごととのたうち回る。とても華楠へと反撃する余裕はない。
「あなたは、一対一の戦闘に特化し過ぎなんですよ……!」
まだビリビリと帯電しているような空気の中で華楠が言う。
「そんなに地面が恋しいならずっとそこで寝かせてやるぜ」
再び、理人はフリージングミサイルを放つ。命中した場所から冷気が拡散し、今度はより深くシャドウドラゴンの皮膚を凍らせた。
「調子に乗りおって!」
再び飛来する暗器が理人を捕らえる。しかし、これも深手とはならない。
「だいぶ弱ってきたんじゃないか?」
額の横をかすめた暗器に傷つけられ、血がこめかみから顎へと滴っても、理人の目から光は消えない。
「よし、なにもかも計算通りじゃ。そなたら、みやびちゃんに任せるがいいのじゃ」
「わかったわ」
華楠はみやびのパラドクスに合わせようと見つめる。
「なんだか照れくさいのぉ」
と、言いながらもみやびの狐火が舞い、空気を揺るがす雷幻想・閃耀(ファンタズム・ブリューナク)が殺烈した。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【土壌改良】がLV2になった!
【冷気の支配者】LV1が発生!
【照明】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV3になった!
【反撃アップ】がLV2になった!
陳・桂菓
使用武器は双短戟『騰蛟昇竜』
揺月はかなりの速度を誇るらしい。しかし、殺気の解放が肝なら、殺気を察知することができれば放たれる前に軌道を読めるではなかろうか。
私自身、殺気を扱う技術には覚えがある。精神を集中させ、牙だろうが爪だろうが尻尾だろうが『打たれる前』に回避してみせよう。
二の矢を放たれるより前に、闘気の爆発を起こす。
威力よりタイミングを逃さないこと、速度を重視。吹っ飛ばすことはできなくても、足元を崩すなどして転ばせることができれば充分。双短戟で追撃、さらに連撃で畳み掛け、反撃の隙を与えない。
「もし私が死に気付かなかったなら、貴様を討つまで家になど帰らんぞ。まあ、そもそも当てさせんがな!」
ローゼマリー・フォーレ
ついに辿りつきましたのね
その威容にくる震えをぐっと堪え
ええ、私には叶えたい願いがある!
竜の様子をよく観察し
血の気化する兆しが見えたなら全力でテイクオフ!
あえて翼を大きく動かしエアライドでの方向転換も
魔力で氷雪を纏いながら大気をかき回す様に動いて
黒い血を私達の周りから散らし薄め
少しでも熱を奪おうと試みますのよ
それでも熱いでしょうけれど、結界術と……あとは気合ですわね!
ぶんぶん飛び回って時には鼻先に誘導弾を
小さな体でも竜の気を惹くことはできるかしら?
皆様の攻撃が届きやすくなるような立ち回りも心がけますの
深淵に招く亡者の手には光と凝る雷の眩さで応えて
潜む影という影を奪ってしまいましょう
この階層最後の場、最後の敵、それが目の前にある。戦場の目に見えない緊迫感と強いプレッシャー。炎と氷と電撃の匂い、それらの五感を刺激し過ぎて溢れそうな情報がローゼマリー・フォーレ(菫の公女・g06419)に流れ込んでくる。
「うっ……」
恐怖に翻弄されて動けなくなりそうになる。それでも、ローゼマリーには叶えたい望みがある。それは恐怖に打ち勝つトリガーとなった。びりびりするような電撃の匂いの中、反撃に転じたシャドウドラゴンへと向かってローゼマリーは翼を広げ、一気に飛んで敵へと迫る。
「邪魔だ、退け!」
深手を負って余裕のないシャドウドラゴンの口調は粗暴ですらある。圧倒的な威圧さえ感じられて、逃げ出したくなる。でも……。
「私に指図は、許しませんわ」
高貴なる血の誇りがローゼマリーを踏みとどまらせた。周囲の魔力をこの身に集める。
「其は鮮烈の白、瞬きを駆ける刹那の白。我が敵を地に縫いつける楔と成れ」
祖竜の血を持つ者のみが受け継ぐ技がある。自分の心臓と起点した白く凝らせた雷が槍の形に集まってゆく。瞳孔が、肌が一瞬で変化し、槍がシャドウドラゴンへと向かって放たれた。
「おのれぇぇ!」
槍に貫かれたシャドウドラゴンが己の忌まわしき血を沸騰させる。自分ごと敵をも焦がす攻撃がシャドウドラゴンもローゼマリーも黒く染める。
「きゃあぁぁっ」
悲鳴をあげて失速するローゼマリー。
「ローゼマリーの作った好機、この私が生かして見せる!」
手になじむ『騰蛟昇竜』を構えた陳・桂菓(如蚩尤・g02534)が前に出る。
「撃ち落とす!」
身体中の闘気を集めて地面を踏む。衝撃にシャドウドラゴンの上体がのけぞるように宙に浮いた。その動きを追尾するかのように桂菓が飛んだ。
「お前がとどめを刺せ!」
背後から声が響き、煙草の香りがふっと漂う。
「承知だ」
二本一組の短めの青龍戟が深々と敵を穿つ。武器だけではなく、桂菓の腕までもがずっぷりと敵にめり込んだ。
「ぎゃあああ!」
ドラゴンの表皮を足場に後方に飛ぶ桂菓の耳に、空気を震わせるような敵の絶叫が響く。それでも敵はまだ死なない。
「許さぬ!」
短く吠え、極限まで研澄ました尾の打撃を一息に桂菓へと仕掛けてきた。
「ほう、当たったか。もし私が死に気付かなかったなら、貴様を討つまで家になど帰らんぞ」
殺気を察知し回避に集中したからか、桂菓のダメージはごく軽微だが、それでも全身に強い衝撃を受けている。
「しぶといな」
桂菓の紫色の瞳が燃え上がる。
仲間のディアボロス達の敵を穿つ炎の攻撃、範囲を氷結する冷たい攻撃、狐火の攻撃、電撃がシャドウドラゴンを貫き、凍え、燃やしてゆく。
「今度こそ、私が」
飛ぶローゼマリーが瀕死の敵へと落下するかのように接敵する。
「今、ふたたび、我が敵を地に縫いつける楔と成れ」
白く凝らせた雷の槍はシャドウドラゴンの脳天を貫く。声もなく、どっと息を吐いたドラゴンは力なく地面に倒れた。そして、もう動かない。黒く染まった身体は色あせた骸となったのだ。
「か、勝ちました。倒しました」
ローゼマリーは言うなり緊張の糸が途切れたのか、ペタンと座り込む。
「最後の突撃、なかなかいい覚悟だった」
厳しい表情を少し緩めた桂菓が言った。その言葉には最大の賛辞が込められている。
「はい、ありがとうございます」
ローゼマリーもふわりと笑った。
そして、倒したシャドウドラゴンのいたこの場の奥に次の階層へとつながっているのだろう道が続いていた。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【トラップ生成】LV1が発生!
【平穏結界】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV3になった!