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山村にてささやかな帰還の宴を（作者 北瀬沙希）

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#最終人類史（新宿島）　 #🎄最終人類史のクリスマス2025　 #クリスマス2025　 ⊕

●クリスマスパーティのお誘い
「天正大戦国奪還戦、お疲れ様！　おかげで日本列島の殆どが最終人類史に戻って来たから、無事にクリスマスを迎えられそうだね」
　新宿駅グランドターミナルの片隅で、時先案内人藤森・智樹（人間の魔導忍者・g08569）が、１枚のカードをディアボロスたちに見せている。
「実は、三重県と岐阜県の県境付近に住む人々から、僕たちディアボロスにクリスマスパーティの招待状が届いているんだ」
　智樹いわく、三重県側の住人が、岐阜県側の住民の帰還祝いを兼ねて、小学校の体育館でクリスマスパーティを開くのだという。
「地域住民のみのささやかなパーティだけど、この機会に日本列島を取り戻してくれたディアボロスにお礼を言いたいんだって。各地のパーティ会場にはパラドクストレインで移動出来るから、良かったら行ってみたらどうかな？」
　そう、呼びかける智樹に、興味を惹かれたディアボロス達がちらほらと寄り始めていた。

「今回のパーティなんだけど、立食形式になる。料理は参加者同士で持ち寄るので、ディアボロス達にも何か１品持ってきてほしいって」
　持ち寄る料理のジャンルは不問。手作りでも既製品でもどちらでも構わない。
　当日は小学校の調理室も借りられるので、そちらで仕上げてから持ち込んでも大丈夫とのこと。
　料理の他にも、お菓子や飲み物の持ち込みも大歓迎だが、公共施設で開催されるパーティのため、アルコールだけはご遠慮いただきたい。
「クリスマスにちなんだ料理でもいいけど、せっかくの機会だし、僕たちディアボロスだからこそ準備できそうな料理を持ち込んでみるのもアリかもね」
　ちなみに、当日は有志による余興も行われるので、芸を披露することもできるとか。
「まだ考えることは山ほどある状態だけど、せっかくの招待だからね。みんな精一杯楽しんで行こう！」

●最終人類史：三重県・岐阜県境――ある小学校の体育館
　県境から少し南、三重県側にある小さな小学校の体育館では、クリスマスパーティの準備が進められている。
　グリーンシートが敷かれた体育館のフロアに、大人たちが長机と椅子を並べている横では、子供たちがクリスマスツリーや体育館の壁に、お手製のオーナメントやモールを嬉しそうに飾りつけていた。
　一通り会場の準備が整い、ストーブがつけられると、住民たちが腕によりをかけた料理を持ち込み、長机に並べていく。
　机に並べられた料理は、ピザやフライドポテト、ローストチキンといったクリスマスの定番から、おにぎりや煮物などの家庭の味まで、さまざまだ。
「おーい、料理持ってきたぞ……は、はっくしょん！！」
「大丈夫か？」
「いや、急に寒くなったら、さすがに身体が追い付かねえって……」
　突然真夏から真冬に変わった気候についていけず、くしゃみが止まらない岐阜県側の住人を三重県側の住人が気遣っている。
　だが、２０２１年８月からずっと分断されて来た両者を再び結び付けてくれたディアボロスには、誰もが感謝の念を抱いていた。
「でも、こうして無事に再会できてよかった。それもこれも、岐阜県を、そして日本を取り戻してくれたディアボロスのおかげだよ」
「ディアボロスさんたち、来てくれるかなあ？」
「来てくれたら、皆でお礼を言おうね――お友達を取り戻してくれてありがとうって」
「うん！」
　子供たちもディアボロスと会えることを期待しながら、並べられる料理とクリスマスツリーを交互に見やっている。
　会場の中央に立てられたクリスマスツリーには、温かな輝きが灯り始めていた。