リプレイ
ルナ・カンダチュラ
准耶様(g01207)と
まずは邪魔な防衛を崩しましょう
「高速詠唱」で敵が攻撃に備える暇を与えずに不意をつきます
出来る限りパラドクスを使う姿を見せぬことで、敵が未知の敵に対して恐怖を抱くよう仕向けるの
片っ端から毒を振り撒いてゆくことで視線を私に集め
その隙に准耶様にとどめをお願いします
私は「毒使い」
あらゆる毒を駆使し、有利に事を運びます
骨まで蕩かして差し上げましょう
毒によって私を見つめ、攻撃の手を緩める姿に敵は混乱するでしょうね
攻撃されそうならば准耶様の後ろに引っ込む、もしくは翼で空へ連れ去っていただきます
頼りにしておりますよ、准耶様
「一撃離脱」したかと思えば、また攻める
戦場を引っ掻き回しましょう
無常・准耶
ルナちゃん(g00277)と共に騎士団の強襲に来たよ。
菓子を作る前に、前準備ーってね。
雑務が面倒ってんなら終いにしてあげようか。
文字通り、今日限りで首、だぜ。
……とまあ最初は俺が高所から[挑発]して、敵の視線は集めておこうか。
不意を突いてもらおう。
蹴り技、ナイフで[攪乱]しつつ、[吹き飛ばし]て派手に荒らして。
ルナちゃんが敵の目を集めるようになれば、後の始末は俺の仕事。
【双翼魔弾】、大きく広げた両翼の爪から射出。
隙だらけの頭に[誘導弾]を思い切りブチ当てて昏倒か、あるいは爆ぜるか――ね?
おっと、うちのお嬢様に手出しはさせないよ。
ルナちゃんに攻撃が向くなら割って入って、彼女を抱えて【飛翔】っと。
『何だあれは……?』
その人影を視認した瞬間、聖ギルダス騎士団員は妙な悪寒を覚えた。
仰ぎ見る先、一人の少年が大空を飛んでいるのだ――それも、パラドクスと思しき力を使って。
ベルファストの奴隷か? いや違う。奴らにパラドクスは使えない筈だ。
ならば同胞の竜鱗兵か? それも違う。背に翼こそあるが、あれは人の姿に間違いない。
『では、一体何者だ?』
奴隷とも同胞とも違う、パラドクスを行使する存在。その答えを、騎士団員はすぐに悟る。
『まさか、ディアボロス……!』
「ご名答」
声の主は無常・准耶(軽佻浮薄のアムネジア・g01207)。デーモンのデーモンイーターだ。
赤黒い翼を背に広げ、悠々と空を舞うその姿に、敵の目は否が応でも釘付けとなる。
バリケードの奥、間抜け面を並べる騎士団員。それを見下ろして准耶はへらりと告げた。
「やあトカゲ君達。お仕事が面倒だって? なら俺が終いにしてあげるよ」
そして、首を掌で切る仕草を送ってやる。
八重歯を覗かせた、とびきりの笑顔とともに。
「文字通り――クビだ」
『ぬかしたな、小僧が!!』『撃ち落としてやれ!』
地上から放たれる火炎ブレスが、一斉に迫る。
そんな攻撃は想定済みとばかり、准耶は身を切って回避。炎の間隙を縫って飛翔しながら、敵陣の様子を見定めた。
(「バリケードは前方と後方の二段構え。前が落ちたら後ろに退がって応戦……ってところかな」)
ならば、手始めに前方から切り崩す――。
一度決断を下せば、准耶の行動は迅速だった。
迎撃のブレスが止んだ刹那に急降下を開始。両刃ナイフを掌中に、敵陣めがけて一直線に突っ込んでいく。
(「バリケードごと荒らしてやる。フォローよろしく、ルナちゃん!」)
(「ええ。頼りにしておりますよ、准耶様」)
降下の一瞬、准耶が送るアイサインに、木の陰から微笑みで応じる少女が一人。
漆黒のドレスに身を包んだ毒使い、ルナ・カンダチュラ(呪毒・g00277)であった。
ルナにとって准耶は、同類と認識し合う間柄。そんな彼との意思疎通は目と目の合図で充分足りる。
(「さあ、引っ掻き回しましょう」)
(「骨の一欠片も残さずにな!」)
ルナが高速詠唱を発動すると同時、ナイフを構えた准耶が騎士団員の隊列と激突する。
同時、ルナは阿吽の呼吸でバリケードの前に飛び出ると、准耶を狙う団員めがけ毒の薬瓶を投げつけた。
「私にも、少しは構って下さいね?」
『ぐお……っ!?』『何者だ、新手か!?』
炸裂した薬瓶の毒を吸い込み、悶絶する騎士団員。
彼らの意識がルナへと向けば、もう准耶は空へと飛翔を終えている。
そうしてルナへと矛先を向ければ、直後に准耶のナイフが斬撃の雨となって襲い掛かる。
地上と空から浴びせ続ける一心同体のヒットアンドアウェイ。これこそ准耶とルナの最大の武器だ。
「さあガンガン攻めよう、ルナちゃん」
「ええ。もう一息ですね、准耶様」
『お、おのれ……!』
息の合った連携攻撃は敵の連携を乱し、体力を削り、形勢をじわりと劣勢に追い込んでいく。
対する騎士団員もバリケードを盾に抵抗を続けるが、それはもはや壊走までの時間を稼ぐあがきでしかない。
そして――重圧に耐えかねたように、団員の一名がバリケードを飛び出した。薬の瓶を手にしたルナへと飛び掛かり、剣を振り下ろす。少女の手首を切り落とす筈の一閃は、しかし岩のように固い手応えに阻まれた。
間に割り込んだのは、准耶だった。
「うちのお嬢様に手出しはさせないよ。――ルナちゃん!」
「ええ准耶様。骨まで蕩かして差し上げましょう」
ルナの毒薬が、敵陣めがけぶちまけられる。
『Le charme enjoleur』。媚薬と麻痺毒のカクテルはその毒牙を振るい、捉えた獲物を片っ端から殺していく。
准耶に斬りかかった団員が、バリケードで応戦する団員が、泡を吹きながら崩れ落ちて瞬時に屍へと変わる。
それは正に、敵の守備が崩壊した瞬間であった。
『四名やられました!』『一時退却! 態勢を立て直す!』
「凄いなー。その逃げ足の速さ、ちょっとビックリだよ」
ビックリだよ、と言い終えた時には、すでに准耶は攻撃準備を完了していた。
上空へと飛翔し、魔力の翼が開く。両翼に備わる爪が二本、魔団となって射出される。
退却の殿を務める団員達、その頭蓋を狙い定めて。
「昏倒か、あるいは爆ぜるか――ね?」
グシャッ、という鈍い音。
双翼魔弾に頭部を吹き飛ばされ、立て続けに二つの死体が転がった。
この准耶の攻撃で戦況は決定的となり、敗走する騎士団員は後方のバリケードへと撤退していく。
無論ディアボロス達も、追撃を緩める気はない。
「行こうか、ルナちゃん」
「ええ、准耶様」
トループス防衛ラインの前半戦を勝利で飾った二人は、頷きを交わして歩き出す。
ドラゴン勢力の排除と、ベルファストの解放と。その時は、すぐ目前まで迫っていた。
成功🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【使い魔使役】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
『ええい、何と言うことだ……!』
市街地を背にしたバリケードの奥で、聖ギルダス騎士団員のリーダー格と思しき男は盛大に舌打ちした。
ドラゴンがいない今、市街地の防衛はどこも手一杯。応援に応じる余裕など、どこの部隊にもあるまい。
つまり――ここが落ちればディアボロスを食い止める術はない。それは同時にベルファストの陥落をも意味する。
『ここで奴等を食い止める! 聖ギルダス騎士団の名にかけて!』
『おおおおおっ!!』
バリケードの奥、気勢をあげる竜鱗兵の群れ。
それを突破せんと、ディアボロスは更なる攻勢に出るのだった。
アッシュ・アーヴィング
アドリブ、連携歓迎です。
心折るのに不味い料理?
嫁の飯ならわかるが、お前らの飯じゃ心が折れるどころか怒り買うだけだぞ。
飯の恨みを肩代わりしてきてやるよ。
まずは【ブービートラップ】で敵が攻め打ってきそうなポイントに罠を仕掛ける。
その後バリケードの向こう側を爆撃ドローンで無差別攻撃。
トラップと爆撃で混乱が窮まった所でドサクサ紛れで潜入を試みる。
ゲテモノ料理の食材が残ってるぜ。
でっかいトカゲ肉のことだけどさ。
四十万・八千代
大結界ぶち壊すとか勿論大事なんだけどさ。
飯を拷問に使うっていうのがかなり許せないんだよな。
中の民衆に食を楽しんで貰いたい
だから、まずここは何とか突破しないと。
ワールドハッカーだしな、現実世界へ【ハッキング】し【情報収集】を行い敵の布陣、突破しやすい場所を探る。
……全員倒すにしても弱い部分から攻める方が少しは楽そうだ。
その後はイグジストハッキングでバリケードの存在を脆いものへと歪めて破壊を試みる。
邪魔な障害物が無ければ戦い得意な奴等が動きやすくもなるだろう。
その際敵の騎士団も巻き込めるようなら巻き込んで撃破。
仲間と連携できるのなら連携し、支援。
情報も共有する。
クラウ・ディークラウ
お菓子作り……ん、分かった
美味しいもの、クラウも、味わったばかり
楽しかった、から……この楽しさを、届ける、ね
(まずはそのための道作りから、とバリケードを見据えて)
……でも、守り、がっちり
クラウだけだと、通るの、大変そう
皆と協力、クラウは支援、がんばってみる
(【曖昧雲子】、空に上がってぴょこぴょこ跳ねつつ雲を落とし
味方の攻撃に合わせて守ろうとする敵の動きを邪魔したり
体勢が崩れかけた敵にダメ押しを仕掛けたり、支援行動)
リームも周りの確認、お願い
クラウたちが狙われてるかどうかも、見ていて、ね
(剣を向けられたらそれはそれで意識逸らしになるから、と
攻撃されても軽く距離を取るに留め、また隙を見て支援攻撃)
『敵襲! 敵襲だ!』
警告を飛ばす騎士団員の頭上から、クラウ・ディークラウ(遮る灰色・g01961)の生み出した雲塊が降り注ぐ。
次いで飛来するのは、 アッシュ・アーヴィング(傭兵・g01540)が操作するフライトドローンの爆撃だ。
「……ん。リーム、周りの確認、お願い」
「年貢の納め時だぜ、トカゲ共。吹き飛びな!」
二人のディアボロスは聖ギルダス騎士団の防衛ラインへ攻撃を狙い定め、更なる攻撃を続けていった。
イギリスへの大結界が張り巡らされる港湾都市ベルファスト。そこを制圧するには、この防衛線の突破が不可避だ。
無論、それは敵も承知であり、故にこそしぶとく防戦を続けている。
「……ん。……正面突破は、厳しそう」
「ああ。こいつは長丁場になるかもな」
隙あらば飛んで来る攻撃を弾き続けるメーラーデーモンの隣で、呟くクラウ。
ドローンを操作しながら、地上で同意の言葉を返すアッシュ。
そんな二人の言葉が、あえて敵に届くよう放たれた言葉だと、騎士団員達は気づいていない。
『敵は攻めあぐねているぞ! 耐え抜いて反撃の機を伺うのだ!』
これ幸いと声を張り上げる団員の姿に、アッシュは笑いをかみ殺した。
やはり彼らは気づいていない。自分とクラウの攻撃が、すべて陽動であることを。
彼らを守るバリケードが、四十万・八千代(悪食ハッカー・g00584)の手によって崩され始めていることを。
「ん。八千代、具合は、どう?」
「大丈夫だ。アッシュ君は?」
二人が交わす無言のサインに、アッシュもまた同じサインを返す。
「問題ない。……ところで八千代、ハッキングで敵を巻き込んだりは出来ないか?」
「試してみたけど無理だった。悪いけどもう少しだけ、陽動を頼むよ」
「任せとけ、バッチリ時間を稼いでやるぜ」
敵の防衛ラインを突破する際、用いられる方法は様々だ。
誘き出して撃破する、背後から奇襲をかける、犠牲を覚悟の正面突破、等々――数え上げればキリがない。
だがこの戦場において三人のディアボロスが取った戦法は、それらのどれとも違っていた。
「バリケードを破壊し、一気に制圧する。……生き残りは僅かだ、一気に壊してしまおう」
攻撃から身を守るバリケードさえなければ、敵は単なる雑兵の群れに過ぎない。
そう判断した八千代は、イグジストハッキングによる攻撃をバリケードへと集中させていたのである。
本来なら敵の集中砲火を浴びてもおかしくない行動だが、敵の意識はクラウとアッシュの陽動に釘付けだ。
流れは完全にディアボロス側へと傾いていた。騎士団員達もそれを悟ったのか、
『ぬぬっ、このままではジリ貧か。止むを得ん、攻撃に出るぞ!』
「八千代、敵さんが来そうだ。後どのくらいかかる?」
「三十秒かからない。もう少しだけ引きつけてて」
「……ん。任せて」
クラウとアッシュが陽動を続行する間も、八千代の指先は一秒も休まずにハッキングツールのキーを叩き続けている。
ぼんやりとした表情を崩さない昼行燈の青年。そんな八千代の心にいま宿るのは、マグマのように渦巻く怒りだった。
大結界の破壊が重要であることは論を待たない。だが彼が戦う理由はそれだけではないのだ。ドラゴン勢力に怒りを覚えた理由は、もっと別のところにある。
(「かなり許せないんだよね。飯を拷問に使うっていうのがさ」)
食べることを愛し、食べ歩きを趣味とする青年にとって、それは何より許しがたいこと。
ベルファストを開放し、街の人々に食事を楽しんで貰いたい。それこそ八千代がこの戦場に立つ理由だった。
故にこそ敗北は許されない。市民の幸せな笑顔を見るまでは、絶対に。
「よし、OKだ。二人とも、竜鱗兵の撃破は頼んだ」
「ん、了解。片付ける」
「後は俺達の仕事だな。きっちり仕留めてやるさ」
雲の上で、クラウが頷きを返した。ドローンを操作するアッシュが、トラップ設置の準備を終える。
そうして二人が攻撃を止めた、次の瞬間。
『行くぞ! 奴らを血祭りに上げてやれ!』
「遅いよ」
八千代がキーを叩く。
同時、ハッキングの完了したバリケードが、一瞬にして崩壊を開始する。
防壁を構成する鉄製の壁と棘が灰色にくすみ、その全てが砂へと書き換えられていく。
呆然と立ち尽くす騎士団員。そんな彼らを見据えて、八千代は言った。
「俺の生まれた国にはさ、『砂を噛むような気持ち』って言葉がある。時代とか世代で使われ方は分かれるけど、そのひとつに『悔しくてたまらない』って意味があるんだ」
音を立てて崩れ去ったバリケードの向こう、もう騎士団員を守るものは何もない。
戦いの決着を告げるように、八千代は地面に広がる砂礫をスッと指さした。
「好きなだけ噛むといいよ。……砂糖やパンじゃ、君らには勿体ない」
そして始まったのは、クラウとアッシュによる一斉攻撃だった。
「さて、ゲテモノ食材の調理といこうか――でっかいトカゲ肉のな!」
「ん。逃がさない、から」
いや、それは既に攻撃とすら呼べなかった。丸裸になった騎士団員達を圧殺する、文字通りの蹂躙だった。
「クラウは、雲。星を遮るもの」
曖昧雲子――雲へと変異した左手を足場に、空中でステップを刻むクラウ。
踏み落とした塊はそのまま地上へと落下し、直撃を浴びた団員達を絶命させていく。
『ぐ、ぐおおぉ!』『怯むな、応戦しろ!』
今までとはまるで桁が違う威力の攻撃に、ようやく敵も自分達が陽動を受けていたことに気づいたらしい。
だが、兵を悉く討たれ、頼みの綱となる防壁も崩れた以上、彼らに逆転はない。
『生存者は!?』
『私だけです、隊長!』
『ぐ、もはやこれまでか……!』
ここを死地と定め、剣を構える二体の騎士団員。
その前方、もうもうと立ち込める土煙の向こうから、ゆらりと現れたのはアッシュである。
「やれやれ、こりゃ忍び込むまでもなかったか。せめて最後は正々堂々の勝負と行こう……かかってこい」
『聖ギルダス騎士団員の名にかけて! いざ尋常にしょ――』
「嘘だよバーカ」
駆け出したその刹那、足元が弾け飛ぶ。
バラバラに砕け散った団員達の足下、仕掛けておいたブービートラップを回収してアッシュはニヤリと笑った。
「悪いな、こちとら傭兵なんでね。さて、これで片付いたか」
「ああ、もう敵影はない。二人ともお疲れ様」
「ん。次は、街の解放。頑張る」
防衛ラインの突破に成功し、街へと歩き出しながら、ふと八千代が口を開いた。
「街の解放、か。拷問竜鱗兵もさっさと片付けたいね」
「不味い料理で心を折るとかいう奴か。美人の嫁さんの飯ならともかく、あのツラじゃなあ……」
恨まれるのがオチだろと、アッシュが肩を竦めて笑う。
「ま、恨みはきっちり晴らしてやるさ。それで美味いもん食えば、きっと街も変わるだろうぜ」
「ん。美味しいもの、クラウも、味わったばかり、だから」
相棒のリームを抱きしめながら、クラウは深く頷いてみせる。
そして思う。心を込めて作った温かいバイリン・ブラクは、いったいどんな味がするのだろう。
それを食べる時、ベルファストの人達はどんな笑顔を浮かべてくれるだろう……と。
「楽しかった、から……この楽しさを、届ける、ね」
今も苦しんでいるベルファストの市民達へそっと語り掛けて、クラウは仲間達と市街地へ進んでいく。
遠からず解放されるであろうこの土地に、再び賑わいが戻って来ることを願いながら――。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
【無鍵空間】LV1が発生!
【浮遊】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【能力値アップ】がLV3になった!
ベルファストの市街地は、死んだような静寂に包まれていた。
あちこちがスラム街と化した街中に、かつて港湾都市として栄えた頃の面影はない。
街の奥、港に面する青い海。
そこを隔てた彼方にうっすら見えるのは、大結界に守られたブリテン島の姿である。
彼の地を踏みしめる為には、ベルファストを奪還し、大結界を消し去らねばならない。その成功はすぐ目の前だ。
ベルファストの人々の幸せを取り戻すため。暴虐を振るい続ける竜鱗兵を掃討するため。
そして、イギリス本土へ向かう足掛かりを築くため。
それぞれの理由を胸に、ディアボロス達は行動を開始するのだった。
ルナ・カンダチュラ
准耶様(g01207)と
どんなに足が痛くても汗が滲もうとも優雅に踊るバレリーナのように、私もありたいものね
毒を口にし敵へ語りかけます
あなたがたはもうここで終わりですと
彼らが理性をもって返答できるかは不明ですが
「看破」いたします
所謂「精神攻撃」ですね
私の技は地味ですから、盛り上げ役は准耶様に任せました
悪魔らしく踊って魅せてくださいな
私もひらり、布地を揺らめかせて、蹴りの邪魔にならぬように後退しましょうね
准耶様、敵の弱点はこちら
私には泣き所が光るように明らかに見えるのですよ
パフォーマンスとして懐に潜り込んで、抱いていただこうかしら
騎士と姫、なんてね
高笑いする姿は姫と言うより悪い魔女でしょうか?
無常・准耶
引き続きルナちゃん(g00277)と
派手に余裕を見せつけようか
演出は過剰なくらいが観客を沸かせるからね
上空から敵の中の一匹を目掛け――垂直降下で蹴り潰す
足蹴のまま、[挑発]、同時に硬直する敵を[観察]
オイオイ、小物揃いでつまらないな。もっと面白い遊びしようぜ?
魔女様の周りを飛び回り駆け回り、コートの裾を翻し
敵も拘束具も拷問具も両刃で[解体]して回る
弱点看破、感謝の至り
懐中時計の竜頭を回せば体内時間を加速させる
視界に示された弱みを蹴り抜く、蹴り砕く
ラスト一撃は思い切り周囲を巻き込むように派手に[吹き飛ばし]て、っと!
ルナちゃんを抱き上げて、空へと攫う
騎士と姫に例えるには、些か黒が多すぎるかな?
拷問竜鱗兵はその名の通り、拷問を得意とする竜鱗兵である。
いまベルファスト市内の一角に駐留している者達もまた、その例に洩れることはない。
一つの道具を見れば百通りの拷問を瞬時に思いつき、その場の気分で無力な者をいたぶり尽くす――そんな竜鱗兵が二人、市街の路地裏で行う遊びと言えば、ただ一つしか存在しなかった。
「うぅっ……!」
蹴飛ばされた少年が一人、道端に転がる。
それを囲んで暴行を振るうのは、下卑た笑みを浮かべた竜鱗兵だ。
税を払わなかったというのが暴行の理由だが、そんなものは口実に過ぎない。この区画の住民がもはや税に差し出す食料を持っていないことなど、彼らは百も承知だった。
『どうした、助けに入らないのか?』『このままじゃガキの傷が増えるだけだぞ?』
竜鱗兵がねめつける先、路地裏のあちこちには、怯えて身を寄せ合う市民の姿がある。
彼らの眼には一様に絶望と無力感が刻まれていた。いかなる抵抗も無意味なのだと学習した者の眼だ。それを知り尽くしている竜鱗兵は、耳障りな笑い声を撒き散らす。
『可哀想に、助けは来ねえな?』『来たら裸踊りでもしてやるか、ガハハハ!』
「OK。なら踊れ、今すぐだ」
上空から響く声。次の瞬間、竜鱗兵を襲ったのは一人の少年だ。
急降下から振り下ろす蹴りを、竜鱗兵は咄嗟にヤットコで受ける。次の瞬間、流れるような回し蹴りが太った腹にめり込み、その巨体はボールのように吹き飛んだ。無様に這いつくばる竜鱗兵を見下ろして、少年――無常・准耶(軽佻浮薄のアムネジア・g01207)は笑う。
「演目は俺が指定してやるぜ。――『キリキリ舞い』だ」
『貴様!』
残る竜鱗兵がヤットコを手に襲い掛かる。それを准耶はお見通しとばかり、両刃のナイフで真正面から切り結ぶ。
修羅場と化す路地裏。その光景を、少年は呆気に取られた表情で見つめていた。
「あの人は、一体……」
「彼は騎士。時空を歪めし存在を憎む者」
まるで子守唄を唄うような声でそう答えたのは、ルナ・カンダチュラ(呪毒・g00277)だ。
ルナは少年を介抱し、安全な場所へ下がらせると、漆黒のドレスを揺らめかせて周囲に語り掛ける。
「裸踊りなど無粋です。皆様、代わりに私達の踊りをご覧下さい」
市民の視線を一身に集めながら、少女は軽やかなステップを刻む。
虐げられた人々を鼓舞する傍ら、その意識は、腹を抑えて立ち上がる竜鱗兵から片時も離れない。
「苦しい日々はもう終わり。竜鱗兵は、私達が討ちます」
ルナの言葉を示すように、准耶の猛攻は竜鱗兵を完全に圧倒していた。
ヤットコを弾き、鞭を躱す。ナイフを振るうたび、敵の体に刃傷が増える。
誰も叶わなかった竜鱗兵をまるで子供扱いしている――その光景を、市民達は息をするのも忘れて見入っていた。
「准耶様、盛り上げ役は任せました。悪魔らしく踊って魅せてくださいな」
「仰せのままに、お姫様!」
准耶の蹴りが、竜鱗兵を空高く蹴り上げた。
翼を広げ、飛翔する准耶。ルナはその真下でドレスを広げ、優雅に舞い続ける。
そんな二人の姿に、いつしか路地のあちこちから激励の声が飛び始めた。
「頑張れ」「負けるな……!」
准耶はそれに応えるように、更なる力を足へと込めた。
狙い定める先、息も絶え絶えの竜鱗兵はまだヤットコを放そうとしない。
しぶとく反撃を続けようとする相手へ、准耶はとどめの一言を放つ。
「可哀想に、助けは来ないな?」
『ぐ……!』
瞬間、力を解放する。蹴然蹴撃烏兎怱怱の蹴撃である。
准耶の蹴りは骨という骨を、肉という肉を蹴り砕き、地に落ちることさえ許さず竜鱗兵を粉微塵に葬り去った。
一方、それを見た地上の竜鱗兵は肩で息をしながら吐き捨てる。
『き、貴様ら! こんなことをして、聖ギルダス騎士団が黙っていると――』
「あら。彼らなら、もうお墓の中ですよ」
ルナが指さす方角の空、うっすらと昇る黒煙に竜鱗兵は絶句する。
『ま、まさか……』
「そう。――あなたがたは、もうここで終わりです」
El fandango de candil。蜜の香りを含む毒のささやきが速やかに命を奪い去り、戦いに幕を下ろす。
骸なって崩れ去る竜鱗兵には目もくれず、ルナは舞い降りる准耶の両腕に飛び込んだ。
割れんばかりの大喝采の中、再び翼を広げる准耶。そこへ寄って来た少年に名を聞かれ、二人はこう答える。
「名乗るほどの者じゃない。強いて言うなら……」
「騎士と姫、なんてね?」
愉快そうに高笑いを残しながら、大空へ上がっていくルナ。
そんな彼女を抱きしめる准耶の面持ちは、どこか恥ずかし気だ。
「騎士、か……些か黒が多すぎたかな?」
「いいえ、素敵ですよ」
漆黒のコートを翻す准耶の耳元で、ルナはそっと囁く。
「あなたは、私の最高の騎士です」
黒い騎士と黒い姫。
二人のもたらした勝利を祝福するように、拍手はいつまでも鳴り止むことはなかった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【書物解読】LV1が発生!
【完全視界】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!
十六夜・ブルーノ
絶望を糧に結界、
しかもその為に不味い食事とは
何と陰湿だろう
街の人を助けよう、ドゥー
劇的にってことで芝居っぽくいこうか
ブズーキを爪弾きながら
拷問くんたちの前に現れよう
おやおや豚くん達がひと様のものを盗るなんてダメだよ
うん?豚じゃなくて竜だって?
そんなんで竜と名乗ったらドラゴンに怒られない?
なんておちょくってる間に
徴収された野菜や麦が根や成長を始めるよ
【植物活性】だ
驚いたり邪魔になるよね
その機に一気に曲はクライマックス
温かな旋律が
プリズムの如く色彩豊かな♪や五線譜のエネルギーとして
豚くんたちを倒していくよ
あ、竜だっけ
植物をそのまま成長させて新たな実りに
少しでも街の皆さんの食糧の足しになると嬉しい
四十万・八千代
竜鱗兵見つけたら……怒り、湧いてきた。
民を鼓舞する演出とか浮かばないが
これを声に出したら伝わるんじゃないか……
……お前等かぁ!!食事を粗末に扱う奴等は!
残留効果の【飛翔】を使って【捨て身の一撃】で手近な一匹にタックル喰らわせてやる。
税金代わりに食料かっぱらって!
それだけじゃ飽き足らずわざと不味い飯を食わせるだと?
食は!精神的にも満たしてくれる大切なもんなんだよ!!
庶民の一番身近な楽しみを奪う権利がお前等にあるのか!いや、無い!
肉体派じゃないから、普段なら距離取って戦うんだが
自ら接触しに行って【トロイの木馬】で敵の存在情報を崩壊させていく。
食べ物の恨みは恐ろしいって事、身をもって思い知るがいい。
アッシュ・アーヴィング
アドリブ、連携歓迎。
醜い豚料理の時間だ。
個人的な恨みはないが、やり方が気に入らんから徹底的に折ってやる。
覚悟しとけよ。
【忍び足】【光学迷彩】を使い視界の外からの攻撃を行う。
正面切って戦う気はないので、周囲の味方の戦闘に乱入して回る形をとる。
隙を見つけたら動きを奪うように足周りをナイフで切りつける。
動きが止まったのなら声を奪い、視界を奪い、心を削る。
一気に倒す戦いではなく、あくまで心を折る戦い方に徹する。
徴収した食料の倉庫を発見した場合は高々に宣言する。
もう我慢の必要はない!飯の時間だ!
それが腹減った人達が最も欲しがっている一言だと思うから。
クラウ・ディークラウ
もう少し、待ってて
皆の苦しさや、悲しさの、原因
クラウたちが、解決するから、ね
(今度は真っ向から近付く
敵の狙いがブレないように、徴発品が近くにあっても傷付かないように)
(【悲喜雲雲】、両腕を雲化して、拷問もこれでふんわりといなす
押し通されても、気にしない――効いていないふりで、前進
自分たちは強いから安心して、と周囲に伝えるように)
大丈夫、大丈夫
これぐらいなら、クラウは死なない
死なないということは、平気ということ
(強がりでなく、既に死んだことがある身だから)
――ほら、もう、捕まえた
(捕縛、加圧、粉砕
反撃されても、なおも攻撃に集中する『捨て身の一撃』
リームも今は心配を仕舞い込んで、槍を持って攻撃へ)
路地裏での戦闘が開始されていた、ちょうどその頃。
ベルファストの港に程近い一角では、街の日常とも言える光景が広がっていた。
配給所の前に設けられた更地、徴税用の広場。そこでは今日も、市民の嗚咽が絶えることなく流れていた。
「お願いします……それがなければ、私達は冬を越せません……」
『ケケケ、知るか! よし、これで最後だな!』
すがりつく市民を無造作に蹴飛ばし、拷問竜鱗兵は徴収した食料を荷車へ載せ終えた。
肉、魚、豆、小麦粉。冬を越すための食物を手荒に積み上げて、竜鱗兵達は市民達へ告げる。
『半月後の税も忘れるんじゃねぇぞ!』『今年は寒そうだからな、次はもっと沢山持ってこい!』
「そ、そんな……」「差し出せる食料など、もうどこにも……」
もはや涙も枯れ果てたのか、その場に崩れ落ちる市民達。
だが、そんな彼らを労わるように、優しい音色が広場に鳴り響いた。
弦楽器ブズーキの音色である。
「絶望を糧に結界、しかもその為に不味い食事とはね。ちょっと陰湿すぎるよね、ドゥー?」
広場にいる全ての視線が向けられた先には、メーラーデーモンを連れた黒髪の少年が一人。
十六夜・ブルーノ(希望の配達人・g03956)である。
ブズーキを手にした少年は、まるで弾き語りでも聞かせるような口調で広場の真ん中へ進み出た。
「やれやれ。豚くん達がひと様のものを盗るなんてさ、浅ましいにも程があるんじゃない?」
『貴様……この拷問竜鱗兵を豚と言ったか、今!』
怒気も露わに竜鱗兵が鞭を握る。
それを見た民衆が一斉に広場から逃げ出した。今まで受けて来た拷問の記憶が、脳裏に甦ったのだろう。
一方のブルーノはどこ吹く風で、まったく動じずに言い返す。
「ええ、豚じゃなくて竜なの? そんな恰好で? ドラゴンに怒られないの? 生きてて恥ずかしくないの?」
『…… ……よかろう……ただでは殺さんぞ、貴様ぁっ!!』
言うが早いか、拷問竜鱗兵の群れが一斉に周囲を取り囲む。その数、七体。
ベルファスト市民ならば泣いて命乞いするであろう状況にも、ブルーノは平然としたものだ。
「さて役者は揃った。始めようか、皆?」
ブルーノが視線を向けると同時、広場に現れるディアボロスの影が二つ。
四十万・八千代(悪食ハッカー・g00584)と、クラウ・ディークラウ(遮る灰色・g01961)の姿だった。
「ああ。全力で行くよ、一切加減なしだ……!」
飛翔で空を舞う八千代は、隠しようもない程の怒りを双眸に宿し、
「もう少し、待ってて。この苦しさも、悲しさも、クラウ達が終わらせるから、ね」
市民に語り掛けるクラウが立つのは敵の正面。なにものも巻き込まぬよう、更地を背に戦う構えだ。
(「フォローは任せろ、一匹残さず仕留めてやろうぜ」)
そこへ、食料の影に身を隠したアッシュ・アーヴィング(傭兵・g01540)が合図を送る。
対する竜鱗兵は、目の前の相手が無力な羊ではないことを悟ったらしい。拷問器具を手に、既に全員が臨戦態勢だ。
そしてブズーキの奏でる旋律が、ふいに激しさを増したその時――。
「始めよう。ベルファストを取り戻す戦いを」
最後の戦闘が、幕を開ける。
ひび割れた石畳だけがあるこの広場では、かつて多くの悲劇が繰り返されてきた。
徴税を拒否した者の血。作物の種さえ奪われた者の涙。冷え切った料理を前にした者の嗚咽。
しかし今、この広場を包むのは、竜鱗兵の悲鳴と絶叫だった。
「おおおおっ!!」
怒りの咆哮を放つ八千代が、地上めがけ急降下する。
砲弾さながらの突撃。それを拘束せんと丸太のような両腕を広げる竜鱗兵めがけ、八千代はさらに加速する。
捨て身のタックルで敵の太鼓腹にぶち当たると、そのまま格闘戦へ持ち込んだ。
「お前等かぁ! 食事を粗末に扱う奴等は!!」
『ぐうぉぉぉ、調子に、乗るな……!』
攻撃を浴びた竜鱗兵が腕に力を込め、八千代の右腕を拘束する。
だが八千代は怯まない。右腕がなければ左腕で、さらには頭突きも駆使し、全身を武器に攻め続ける。
多少の被弾など物ともせぬ、無茶苦茶な攻撃である。
「食事っていうのはな! 精神的にも満たしてくれる大切なもんなんだよ! それを、それを!!」
『ぐ、おお……』
肉体を駆使した近接戦闘を、八千代は決して得手としない。
体格は頑健とは言えず、血の気もけして多くはない。そんな彼が肉弾戦など普通に考えれば不合理もいいところだ。
だが、あえて八千代はやった。それほど彼は怒っていたのだ。食事を冒涜する、この竜鱗兵達に。
「税金代わりに食料かっぱらって! それだけじゃ飽き足らずわざと不味い飯を食わせるだと!?」
『な、何だ? 体が石に変わって……!?』
竜鱗兵が異常に気づいたのは、その時だった。
急に腕から力が抜けたと思った次の瞬間、全身がみるみる石へと変わっていくのだ。
八千代の『トロイの木馬』が存在情報を改竄し、肉体を書き換えたのである。
「一番身近な楽しみを、奪う権利があるのか! いや、無い!」
市民達が胸に抱えていた言葉。そして、決して口には出せなかった言葉。
それを一言一句漏らさず叫びながら、八千代の拳が竜鱗兵を木っ端微塵に打ち砕く。
一方広場の端では、クラウとアッシュもまた激戦を繰り広げていた。
『おらっ!』『泣き喚け!』
「ここが、正念場。リームも、頑張って」
クラウは悲喜雲雲のパラドクスを発動、雲へと変えた両腕で竜鱗兵と切り結ぶ。
その横で果敢に牽制を続けるリーム。対する敵も、焼きゴテを振るって猛攻を浴びせ続ける。
ジュウジュウと音が響き、雲の肉体が苛まれる。その光景に悲鳴を上げる市民達へクラウは大丈夫と頷いて、
「これぐらいなら、クラウは死なない。死なないということは、平気ということ」
だって、一度死んでるから――口まで出かかった一言を呑み込むクラウ。
その背後へ迫る影があった。二体目の竜鱗兵である。
彼はリームの攻撃をヤットコで弾くと、そのままクラウへの不意撃ちを試みたのだ。
『馬鹿め、死ね――ぐぇっ!?』
だが、彼は気づいていなかった。この戦場で身を隠す者が一人ではないことに。
乱戦に紛れ、気配を絶っていたアッシュの存在に。
「さーて、お次は豚料理の時間だな」
ブラックアウト。それは姿を消し、死角からの一刺しを放つアッシュの秘技である。
急所を正確に穿つアッシュの一撃は、完璧に決まれば死の自覚さえ許さずに標的を殺す。
その攻撃をあえて絶命すれすれで留めた彼は、地べたで痙攣する竜鱗兵を見下ろし、告げた。
「どうにも気に入らないんでな、お前らの手口が。さて――恨みはないが、やるか」
クラウの雲があったのは幸いだと思った。これから始まる光景は、出来れば市民の目には入れたくない。
大した仕事ではなかった。ただほんの少し絶命までの時間を伸ばし、最後は派手に死なせる。その細工を施すだけ。
「徹底的に折ってやる。覚悟しな」
『――!!!!』
何かが砕ける音と、千切れる音と、僅かな悲鳴。
そうして視界が晴れた時には、クラウもまた雲の圧縮で敵を捕えていた。
『ぐ、っ』
「――ほら、もう、捕まえた」
捕縛と加圧と粉砕が、同時に開始される。
竜鱗兵はなおも暴れるが、彼の焼きゴテなどクラウの拘束に比べれば玩具同然だ。逃れる術はない。
断末魔の絶叫が響く。アッシュもまた、処置を終えた竜鱗兵をその場に立たせると、
「悪い、少し雲を借りた。怪我は平気か」
「大丈夫。……そっちは?」
「問題ない。あとはブラックアウトの仕上げがてら、こいつを派手にぶっ飛ばす」
握りしめた拳で、竜鱗兵を殴りつけるアッシュ。
それを合図に、ブルーノもまた『イムボルクの祭』を奏でた。温かな日差しのような音色が鳴り響く。
「収穫を願って。女神ブリギッドへ詩を捧げよう」
クライマックスを迎える旋律はベルファストの空に虹色の楽譜を描き、輝く音符となって降り注ぐ。
癒しの音楽に包まれた市民達は、次第に絶望の心が拭い去られていくことに気付いた。それをもたらしたのは、4人の名もなき戦士達だ。
竜鱗兵を拳で砕いた八千代の言葉は、市民の想いを余さずに代弁した。
竜鱗兵を殴り倒したアッシュの姿は、市民の魂に勇気の火を注ぎ込んだ。
己の傷を顧みず奮闘したクラウの姿は、千の言葉より雄弁に市民の心をうった。
そして今、決着を告げるように、ブルーノは高らかにかき鳴らす。愛用のブズーキを。
「生憎だけど、君達の支配は終わりだ」
『ば、馬鹿な……!』『ちくしょおおお!!』
降り注ぐ音符を浴びた竜鱗兵達が残らず絶命するとともに、広場の戦いは幕を下ろし――。
青空の下、市民の歓声が高らかに響き渡るのだった。
「はい、これ。豆は冬でも枯れないからね」
ブルーノは植物活性で発芽させた豆を市民に差し出して、ふと首を傾げる。
「……あ、勝手に育てちゃったけど、大丈夫?」
「勿論です、有難うございます!」
そうして市民が苗を受け取ると、広場の奥にある路地裏からも歓声が聞こえて来た。
どうやら、向こうも終わったらしい。
「よしよし。だが、これで終いって話はないよな?」
広場の傍に建つ倉庫へ歩んで行くと、無鍵空間で門扉を解錠する。
倉の中には積まれた食料の山、山、山。市民達にとっては黄金にも等しいそれらを背に、アッシュは高らかに告げた。
「市民の皆、もう我慢の必要はない!」
なぜなら、絶望の時間は終わったのだから。
そうと決まれば、次にすべきことは決まっている。
すなわち――。
「飯の時間だああっ!!」
「「おおおおおおおおっ!!」」
拳を突き上げるアッシュ。海の向こうまで届きそうな拍手と歓声が、市街地にこだまする。
かつて血と涙が流された広場が、暴虐の場となることはもうないだろう。
それは港湾都市ベルファストを覆う絶望のかたちが、ひとつ終わりを迎えた瞬間であった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【植物活性】LV1が発生!
【罪縛りの鎖】LV1が発生!
【光学迷彩】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】がLV2になった!
【アヴォイド】LV1が発生!
【命中アップ】がLV3になった!
竜鱗兵の圧政から解放され、ベルファストの民衆は喜びの渦中にあった。
しかし、絶望が去った結果に過ぎないこの熱狂が、けして長くは続かないことをディアボロス達は知っている。
人々の心には今も幸福がない。このまま無為に時が過ぎれば、彼らは再び絶望の底へと沈んでいくだろう。
この戦いを完全に終わらせるには、彼らベルファスト市民が希望を取り戻さねばならない。圧政に苦しんだ彼らの心をいかにして癒し、生きる意思を取り戻させるのか。
ベルファストの未来と、大結界の解除。全ての結末はディアボロス達の手にかかっている――。
アッシュ・アーヴィング
一先ずは、やれることはやれた。
やっぱ美味いもんはいいね。人を自然な笑顔にしてくれる。
商人の情報を探ってみる。
感動で記憶が曖昧になっている市民は避けて、まずは冷静さを取り戻している市民から情報を集める。
主には見かけない顔が居ないか聞いて回る。
あんだけ派手に勝利宣言して顔を売ったんだ、協力は惜しまないでくれるって思ってる。
聞いて回ってる間に当の本人に人探しの噂が回るかもしれないので、
【完全視界】で人々の顔は可能な限り視界に入れておく。
挙動不審な人間は抑えておく。
支援を切ったことから焦るかもしれないけどこちらも冷静に、紳士的に、害は与えないことを前置きをする。
「めしのじかんだー!」「うおー!」
「おいおい、走り過ぎて転ぶなよ」
街中をはしゃぎ回る子供達に、アッシュ・アーヴィング(傭兵・g01540)は思わず苦笑した。
彼はいま、一人で街を回っている。アイルランドの商人に関する情報を得るためだ。
(「軍への支援物資は主に武器や食料。その支援を商人が止めたのが九月の末、か……」)
相応の集団を維持できる程の物資を扱うとなれば、保管する倉庫や輸送手段が欠かせない。
そして、それらの仕事に従事する労働者の情報が集まる所と言えば、
「……ま、ここだろうな」
アッシュはそう呟いて、酒場の看板に目を留めた。
酒場は熱気で満ちていた。
酒も料理も碌にない。そんな店に集う客は、誰もが今後のことに目を向けつつある。
刹那の感動より、足元の現実を見る者達――まさにアッシュが探していた存在だった。
「よう。ちょっといいか」
アッシュが声をかけたのは、一番奥のテーブルに座る初老の男達だった。
身なりこそ質素だが、人を指導する者だけがまとう特有の気配がある。恐らくは港の管理者達だろう。
挨拶もそこそこに、アッシュは本題を切り出した。
「行方を捜してる商人がいる。情報があれば知りたい」
「人探しですか。……ドラゴンどもと関係が?」
まとめ役と思しき丸顔の男に、アッシュはそうだと頷いた。
無論その間も、店内の様子に気を配ることは忘れない。
「話せる範囲で教えてくれないか。秘密は守る」
「ベルファストを救って下さった方の頼みとあれば、喜んで」
男に先を促され、アッシュは商人の情報を伝える。
扱う商品は食料や武器。大きな倉庫を持っており、九月末まで物資を各地に輸送している。
それを聞いて、男は手元の地図に幾つかの場所を記した。
「それならば、北側の倉庫地帯……この辺りでしょうな」
場所は全部で四つ。もう少し情報を示せば更に絞り込めた可能性もあるが、成果としては悪くない。
ここから先は、足を頼りに調べるほかないだろう。
「さて、ここで四つ目だ」
今度こそ当たりを掴めるよう祈り、アッシュは倉庫の扉へ手をかけた。
鍵がかかっていない。わずかに開いた扉の隙間から気配がする。
(「一般人が一人……当たりのようだな」)
恐らくここが、横流しに使われていた倉庫なのだろう。
内部の様子は判然としない。今すぐ踏み込むか、出て来たところを抑えるか――。
決断の刻は、すぐそこまで迫っていた。
成功🔵🔵🔴
効果1【完全視界】がLV2になった!
効果2【ロストエナジー】がLV3になった!
アッシュ・アーヴィング
人の気配は…1か。
他が居るのか、入って確かめるとするかね。
こっそりと侵入。
商人しか居なければそのまま拘束し質問をする。
最悪逃げられそうなら【罪縛りの鎖】を使用。
質問はあくまで紳士的に大人の対応で行う。
前置きとして竜鱗兵の末路は教えてからの選択肢を与える様にして、
商人自身に立ち位置を決めさせるようにする。
保身で裏切る人間ならば、保身でもう一度裏切ることも容易い理論。
質問事項
支援打ち切りの裏には誰がいる?何があった?
ドラゴンの陣地は?
これからの身の振り方は?保護されたいか?
保護を求められたら旅団へ招待でもしておく。
もし、商人以外の何かが居るなら質問は後回し。
商人の確保と逃亡を優先する。
がらんどうの倉庫と、若い男が一人。
扉を抜けたアッシュ・アーヴィング(傭兵・g01540)の視界に飛び込んだのは、それが全てだった。
(「ん? あの男、懐に何か隠したな……」)
アッシュは精神を研ぎ澄ますと、静かに男の背後へ近づいた。
気づかれた様子はない。接近し、一呼吸で拘束する。
「軍に物資を輸送していた商人か?」
「あ、ああ。そうだ」
「幾つか質問がある。正直に言えば危害は加えない。それと……竜鱗兵は俺達が始末した。言いたいことは分かるな?」
そう言って、アッシュは震えあがる商人へ問いを投げた。
「支援打切りの裏には誰がいる? 何があった?」
「し、知らん。物資は指定の日時に、勝手に運び込まれるんだ。俺はそれを運んでいただけで……物資はある時期を境に、急に届かなくなった。本当だ!」
怯える商人に、アッシュは更に問いかける。
「依頼主の情報は知らないのか? 居所は?」
「連絡はいつも手紙や伝言で……軍を支援する篤志家だということしか……」
(「成程。自分がドラゴン勢力に加担していたことを知らないのか」)
だが、アッシュはまだ疑念を捨てきれなかった。
そもそも見知らぬ者の連絡を疑いもせず、物資を流すなど普通ではない。
かといって、商人が嘘をついている様子もない――。
「ところで、さっき懐に何を隠した?」
「ああ、物資の帳簿だが……」
商人の言う通り、実際それはただの帳簿だ。
だが頁をめくるうち、アッシュはすぐに違和感を覚えた。
(「数字が綺麗すぎるな。横領がゼロというのはちと妙だ」)
そう思い、アッシュは帳簿を突きつける。
「物資に手はつけなかったのか? 懐に入れれば、そこそこの金になっただろう?」
「実は……あの物資が傍にあると、妙な気分になるんだ」
「妙な気分?」
「物資を軍に届けないといけない、そんな衝動が急に沸いて来て……盗むなんて気持ちは、全く……」
(「ドラゴンが何か細工をして、操られていたということか……」)
それを聞いてアッシュの疑念もとけた。
この商人もある意味では被害者なのだ。これ以上の情報を得るのは困難だろう。
「よし、もう十分だ。お前はこれからどうする?」
「別の商売を探すよ。ここも今日で引き払う予定だったんだ」
「ああ、それがいい。邪魔したな」
そうしてアッシュは倉庫を出ると、街の方へと歩き出した。
いつか俺達が必ず、お前達ドラゴンの尻尾を掴んでやる――そう心に誓いながら。
大成功🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】がLV2になった!
効果2【アヴォイド】がLV2になった!
かつて竜鱗兵の手で拷問用の料理を作らされていた場所は、いまやすっかり様変わりしていた。
調理台は綺麗に整えられ、大型のオーブンは掃除され、ケーキを焼くのに丁度よい調理スペースである。
ここで焼いたバイリン・ブラクを市民達に振舞えば、祝祭は大いに盛り上がることだろう。食材や道具類も、基本的なものはパラドクストレインから運んだ物で賄えそうだ。
ベルファストの人々が、ふたたび幸せを取り戻せるように――。
心地よい緊張感を胸に、ディアボロス達はそれぞれの仕事を始めるのだった。
十六夜・ブルーノ
希望を取り戻すためここからが本番だ
ドゥーもお手伝いをよろしくね
美味しいバイリン・ブラクを創ろう
本職?じゃないけど頑張るよ
折角だから大きなケーキを
皆で切り分けて食べるのっていいよね
入れる宝ものは食用花
エディブルフラワーだ
持ってきた種を【植物活性】で咲かせたもの
赤やピンク、白の薔薇
赤や青の美女桜
黄色や紫のビオラ等々
きっとそれぞれに素敵な花言葉なんかもあるよ
今までさんざん酷い食事を食べさせられてたんだ
こういう彩が
人としての心の豊かさが回復する、
未来に希望が持てる
きっかけになるんじゃないかな
全員に花が当たるように沢山入れて焼いていこう
街の皆の喜びや嬉しさ、【託された願い】を込めて
楽しみだね、ドゥー
解放されたベルファストの街は、熱気で満ちあふれていた。
自由を喜ぶ男者がいる。感激の涙を流す若者達がいる。家族と抱き合って喜ぶ主婦達がいる。
喜びに溢れた、しかし決して日常ではない光景。その景色を、黒山羊のメーラーデーモンと一緒に眺める者がいた。
十六夜・ブルーノ(希望の配達人・g03956)である。
「さあ、ここからが本番だ。ドゥーもお手伝いをよろしくね」
主人の言葉に、ドゥーがぴょんと飛び跳ねる。彼が抱える籠の中には、瑞々しい香りを放つ花々があった。
薔薇、美女桜、ビオラ、等々……それらは全て、エディブルフラワーと呼ばれる食用花だ。色鮮やかで美味しい花々は、食べる者の目と心を幸福で満たしてくれることだろう。
「折角だから大きなケーキを作ろう。皆で切り分けて食べるのっていいよね」
ブルーノは両腕で抱えられそうなサイズの生地に手を乗せ、力を込めて捏ね始めた。
スパイスを混ぜ、捏ねる。ドライフルーツを入れて、また捏ねる。生地の塊が少しずつケーキの姿形へと変わっていく。そして膨らんだ生地にエディブルフラワーを埋め込めば、
「よし、あとは焼けば完成だ」
そうして温まったオーブンへ生地を入れると、ブルーノはおもむろにブズーキを取り出した。
火の番をする間、手持無沙汰というのも気が引ける。ここは街の人達に一曲歌うとしよう。
「ドゥー。踊りは頼んだよ」
元気よく飛び跳ねるドゥー。海の風に乗って、ブズーキの旋律が港町を包む。
ブルーノが歌うのは祝福の歌。これから始める祝祭の、さしずめ前奏曲といったところだ。
(「今まで酷い食事ばかりだったんだ。温かいケーキと美しい花々で、新しい出発の門出といこうじゃないか」)
歌声が弦の音色に乗って、人々のささくれ立った心を優しく撫でる。
託されし願いが映し出す市民に手を振りながら、ブルーノはふと彼のケーキに思いを向けた。丸い型にはめた生地の中、食べる者全員に当たるよう詰め込んだ、エディブルフラワーの花言葉を。
ピンクの薔薇は『感謝』。赤い美女桜は『団結』。そして黄色のビオラは『小さな幸せ』。
(「俺の花々が、どうか皆に幸せを運んでくれますように」)
そうして曲が終わり、オーブンが開かれた。
焼き上がったバイリン・ブラクを大皿へ乗せれば出来上がり。
温かいケーキに人々が浮かべる笑顔を想像し、ブルーノはにこりと微笑んだ。
「宴はもうすぐ。楽しみだね、ドゥー」
大成功🔵🔵🔵
効果1【託されし願い】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
四十万・八千代
普段は食べる専門だが、作れないわけじゃない
菓子はレシピに従順なら失敗はしない、はず
俺は普通の大きさのバイリン・ブラクを沢山作って
後で切り分けて配れるようにしよう
沢山のドライフルーツを紅茶に浸している間に中に入れるお宝の準備
伝統に則って銀貨や指輪を入れたいが大量に準備できなそうなんで
銀貨の代わりにゲームなんかで使うメダルと、指輪の代わりに色んな色のガラスの輪を
一つ一つクッキングシートに包んで用意
同じ色の輪が当たったら何かしら縁があるかもしれないね
小麦粉やスパイスなど材料を懸命に混ぜるが
結構きっつい……
いや、食事は楽しい、生きる希望って事を思い出して貰う為にも
気持ちを込めて最後まで作り上げるぞ
料理とプログラムには共通点がある。
食材や調味料の分量、そして正確な時間運びに基づく作業工程。それらはプログラミングのコードと同じく、正しい順序を守れば、誰でも良い品質のものを作れるということだ。
それは、普段は食べる方を専門とする四十万・八千代(悪食ハッカー・g00584)にとっても同じ。
「よし。第一段階は、これでOKだ」
そう言って、八千代は紅茶を入れた鍋をそっと脇に置いた。
中にあるのはレーズンやオレンジピールの他、宝石の粒を思わせるドライフルーツの数々だ。
琥珀色をした紅茶に、それらは心地よさそうに浸かっている。しばらく置けば茶の風味を蓄えてふんわり膨らみ、本物の宝石にも劣らぬ輝きを得ることだろう。
「次はお宝の準備だね。……ああ、いい匂いだ……いけない、いけない」
無意識につまみ食いしそうになった手をひっこめ、八千代が取り出したのは、ずっしり重い宝箱だ。
本物の銀貨に代わって用意したのは、ゲーム用メダルに耐熱ガラス製の煌びやかなリング。間違って呑み込まないよう、クッキングシートに包むことも忘れない。
そうして支度が終われば、いよいよ最後の難関――生地作りだ。
「よし。始めるか」
八千代が作るバイリン・ブラクは、『普通のサイズを沢山』というものだ。
切り分ける前の塊はかなりの大きさで、重さも相当である。
街の外にあったバリケードのブロックくらいかな、などと想像しつつ、八千代は腕に力を込めた。
「こ、これは、結構きっつい……」
スパイスを混ぜる頃には、早くも体が悲鳴を上げ始めた。
慣れない作業のせいもあったのかもしれない。だがそんな時、八千代には取って置きの方法があった。
焼き上がったバイリン・ブラクの味と、それを頬張るベルファスト市民の笑顔を思い描くのだ。
(「最後まで気持ちを込めるんだ。食事は楽しいってことを、生きる希望を、街の皆に思い出して貰う為に」)
妥協の気持ちが自然と消えていく。そうしてドライフルーツを混ぜ、宝物を入れ、寝かせた生地を型に入れ……気づけば、焼き上がりまであと少しだ。
小麦粉の焼けていく香りを存分に楽しみながら、ふと八千代は思う。
(「宝物で入れた、同じ色のリング……当たった人には良い縁があるといいな」)
心地よい疲労と、それ以上の達成感。
もうじき始まる祝祭の風景を思い描きながら、八千代は完成の時を今か今かと待つのだった。
大成功🔵🔵🔵
効果1【無鍵空間】がLV2になった!
効果2【能力値アップ】がLV4になった!
ルナ・カンダチュラ
准耶様(g01207)と
お菓子作りはハロウィンにしましたから出来る筈
家族で分け合えるサイズのバイリン・ブラクを作ります
材料は測りますから、混ぜるなど力仕事はお任せしますね
砂糖とバターをたっぷり入れて甘くしましょう、甘味は人を心地よくすると言いますから
…え、何故測り直すの?
せ、せめて何かお役に立たなくては
チョコレートを包丁を振り下ろし砕いて生地に混ぜ込みます
准耶様が大体やってくださったわ、良かった
身代わり、あなたの宝物(宝石達)頂くわよ
帰ったら幾らでも代わりにあげるから
宝石の首輪を引きちぎってケーキの中へ投入
宝物といえば宝石ですからね
やめて噛まないで叩かないであっパラドクスはだめあっ――
無常・准耶
ルナちゃん(g00277)と。
さ、メインイベントに向けてバイリン・ブラク作り。
菓子作りは普通にやれば大丈夫だね。
些か不安だが、ルナちゃんが前準備はしてくれると信じて。
……お菓子は化学だよ、分量は頼むよお願いだから。
やっぱ分量だけは計り直して、と。他意はありません。
さて!
ハンドミキサー……はないから泡立て器で頑張って材料を混ぜる。
隠し味にラム酒をほんの少し。
チョコの砕き方もう少し慎重にお願いしてもいいかな。
……あれ、宝物今何入れたの。
焼き加減はオーブン内を【完全視界】で見て完璧。
焼き上がったらシロップを馴染ませて、これで完成だ。
……さっきから騒がしいけれどもどうかした?
え、何この光―― ――
「準備はOKかな、ルナちゃん?」
「ええ。素敵なバイリン・ブラクを作りましょう、准耶様」
ルナ・カンダチュラ(呪毒・g00277)が、砂糖の大袋をドンと置く。
「甘味は人を心地よくすると言います。まずは、これをたっぷり入れて甘くしましょう」
「ありがとう。じゃあそれを五等分して……と。よし適量だ」
「……え、何故量り直すの?」
「ん? 全然、他意はないよ?」
無常・准耶(軽佻浮薄のアムネジア・g01207)はそう言って、ルナから目を逸らした。
ルナの調理では、この程度は日常茶飯事だ。いちいち頭を抱えていては身がもたない。
准耶は全ての調味料を改めて量り、それらを手早く混ぜ始めた。
シャッ、シャッ、シャッ。ボウルと泡だて器の奏でる音がリズミカルに響く。
(「よし。このまま何事もなければ――」)
シャッ、シャッ、シャッ。
シャッ、シャッ、ズシン。
ゴツッ、ドガッ、バキッ。
(「……だよねえ、うん」)
振り返った先には、まな板の前で格闘するルナがいた。
板の上には折れた包丁が円陣を組むように何本も突き刺さり、その中央には無残に砕けた茶色の塊がある。
どうやらチョコを砕いている最中なのだと気づくには、さすがの准耶も少しの時間を要した。
「ルナちゃん、何してるの?」
「あの、チョコを生地に混ぜ込もうと……」
「もう少し、加減してくれると嬉しいな……お願い」
お願い、の一言に懇願のニュアンスを込めつつ、准耶は欠片を拾い集めた。
そうして包丁を手に、てきぱきとした動きでチョコを刻んでいく。刻んだ欠片は全ての大きさが均一で、見ているルナでさえ惚れ惚れするほどだ。
「よし。あとはこれを生地に練り込んで、と」
准耶はそれからも無駄のない動きで、きびきび作業を進めていった。
一方ルナは包丁を握る手を止め、作業の方針を切り替える。
調理が無理なら、別のやり方で准耶の役に立とうと思ったのだ。即ち、宝物の用意である。
「宝物といえば、やっぱり宝石よね。何かいいものは……あ」
ルナの視界に入ったのは、彼女のスフィンクス『身代わり』。
正確には身代わりが身につける装飾品、そこに嵌められた青い宝石だった。
(「いいところに居たわ。協力してもらうわよ」)
これも私と准耶様が作るケーキのため――。
ルナは息を殺し、ヒタヒタとにじり寄っていく。
一方、准耶はというと。
「よしバッチリ。あとは焼くだけだ!」
生地は良い具合に仕上がった。
練り込んだスパイスも、ドライフルーツも、そしてチョコも、隠し味を含めて完璧だ。
准耶は生地を型に詰めると、傍に設置された共用の材料ボックスを開いてみる。
「宝物は何がいいかな。シロップも用意しないと……ん?」
ボックスをさぐる准耶の手が、ふと止まった。
台所の方が騒がしい。それだけではない、身代わりの悲鳴も聞こえてくる。
嫌な予感を覚えて視線を向けた先では、果たしてルナと身代わりが争っているではないか。
「宝石を渡しなさい。後で代わりをあげるから」
身代わりは多少抵抗した後、ルナが引き下がらないことに苛立ったらしい。
一度そういう事態に陥れば、主人が相手でも容赦ないのが身代わりである。警告はしたぞとばかり毛を逆立て、全力で抵抗してきた。牙と爪のフルコンボによる逆襲である。
「やめて噛まないで叩かないで、あっ爪はだめ、あっ――」
身代わりの猛攻は止まらない。
劣勢のルナはついにバランスを崩し、床へと転ぶ――その寸前に、華奢な体は逞しい腕に受け止められた。
准耶だった。
「大丈夫? 怪我はない?」
「え、ええ。ありがとうございます、准耶様……」
「ひょっとしてコレ、入用かな?」
腕の中で頬を染めるルナに准耶が差し出したのは、綺麗な青色の宝石が詰まった袋だった。
共用食材のケースに一つだけ入っていたのだという。
「すごく綺麗だしさ。入れてみない?」
「あっ……そ、そうですね。そうしましょう!」
「決まりだね。最後の仕上げは頼んだよ、お姫様」
ルナは手を伸ばすと、准耶の温もりが残る宝石を包み、神聖なものを扱う手つきでそっと生地に埋め込んだ。
そうして生地をオーブンに投入。准耶は焼き加減を把握するため、完全視界を発動しながら火の番だ。
「ルナちゃん、疲れたでしょ。少し休んでたら?」
「……いえ。私もこのままで」
「そっか。じゃ、一緒に」
オーブンを眺める准耶。その横顔を見つめ、ルナはそっと肩を寄せた。
「さて焼き上がり。あとはシロップが馴染むのを待つだけだ」
「ええ。とても美味しそうです」
焼き上がったバイリン・ブラクに、二人は頬を綻ばせる。
ふわふわと温かな湯気を立てるケーキは、家族で分け合うのに丁度よい大きさだ。
「楽しみだね、ルナちゃん」
「私もです、准耶様」
このお菓子を囲んで過ごす時間は、きっと幸せに満ちたものとなるだろう。
祝祭の時が早く訪れるよう、ルナと准耶は静かに祈りを捧げるのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【照明】LV1が発生!
【完全視界】がLV3になった!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
【ロストエナジー】がLV4になった!
クラウ・ディークラウ
お菓子作り……やったこと、なくはない
……でも、レシピはしっかり、確認したい
(ちゃんと作ればちゃんとできる、くらいの腕前
今回は【書物解読】&レシピ本の力を目一杯借ります)
ん……ん、作り方は、大丈夫そう
あとは、中身……
(新宿に来てから食べたものを思い出して)
……あ
あれ、嬉しかった、真似してみる
(小さなケーキを配り歩く)
ひとり、3個ずつ
中身はあったり、なかったり
気を付けて、食べて
ん、木の板、あった?
それ、実は、凶兆じゃない
ほら、『当たり』って、彫ってある
(3個の内ひとつは当たりが入るよう順番調整)
だから――はい、もういっこ、ね
(当たりのケーキはリームからプレゼント
お得感ありなちょっと大きめサイズ!)
自分だったら、どんな宝物を嬉しいと感じるだろう。
クラウ・ディークラウ(遮る灰色・g01961)のケーキ作りは、そこがスタートであった。
「作り方は、大丈夫。あとは、中身……」
書物解読でレシピの助けを借り、生地をせっせと捏ねながらクラウは考える。
新宿島のお菓子で、自分が幸せを感じたものは何だろう。
ただ美味しいだけではない。今日はきっといい事がある、そんな小さな幸せを感じたもの――。
「あ……ひとつ、あった」
そうだ、あれなら宝物にぴったりだ。
クラウは材料箱に手を伸ばし、さっそく準備に取り掛かる。
それから暫しの後、ケーキは無事焼き上がった。
焼成を終えてからの作業は、少々賑やかなものとなった。
竜鱗兵を討った英雄を一目見ようと、街の子供達が寄って来たのだ。
祝祭は間もなく始まる。その時を楽しく迎えて貰えるよう、クラウは簡単な仕事を頼むことにした。
「ん。そっちに、お願い」
手を洗った子供達が、指示に従ってケーキを並べていく。
本来ならクラウ一人で出来る仕事だが、折角なら賑やかな方がいい。
程なくして作業が終わると、クラウは子供達を呼び集めた。
「皆、ありがと。ちょっと、待ってて」
彼女がオーブンから出したのは、一回り小さなケーキだ。
祝祭用のケーキに使った余りで作った試食用。味は本物と変わらない。無論、中の宝物も。
「これ。手伝ってくれた、お礼」
一人三個ずつ、中身はあったりなかったり。
それを頬張った子供が一人、さっそく宝物を引いたようだ。
「あった! でもこれ……」
「ん、木の板、あった? それ、実は、凶兆じゃない」
不吉の象徴とされる小さな木板、それを裏返すようクラウは伝える。
恐る恐る板をひっくり返すと、そこには三つの文字が刻まれていた。
「『当たり』?」
「ん。だから――はい、もういっこ、ね」
祝福のケーキをリームから受け取り、子供が笑顔を綻ばせた。
その心に感じた喜びは、かつてクラウが新宿島で初めて感じたそれと、きっと同じ。
彼女が作ったバイリン・ブラクを食べたなら、誰もが同じ喜びを感じることだろう。
一口サイズのケーキは、食べた全員に幸運が訪れるよう作ってあるのだ。
「もうすぐ、始まるから。こっちはその時、ね?」
クラウは言う。これから配るケーキはもっと大きい。宝物の幸せはもっともっと大きいと。
快晴の港町、歓喜に弾む声。
祝祭の時が、いま始まろうとしていた。
大成功🔵🔵🔵
効果1【現の夢】LV1が発生!
効果2【ロストエナジー】がLV5になった!
クラウ・ディークラウ
嬉しいことを、誰かと共有、できると……
何だかさらに嬉しくなる、気がする
(もっと多くの人へいろんな当たりを、と
リームと一緒にケーキを抱えて)
みんなに、贈り物
数はあるから、順番に、ね
(木の板)
ん、当たり
ドライフルーツ、増量版ケーキ、プレゼント
(銀色の板)
ん、大当たり
ドライフルーツ、このあたりではちょっと珍しいケーキ、プレゼント
(柿や梅、金柑など)
(金色の札)
ん……超、大当たり
ドライフルーツ、各種盛りだくさん――巨大ケーキ、プレゼント
(隔離眼で隠していたそれをどどーんと出して)
1人だと、食べきれないと、思うから
良かったら、分けあってみて、ね
(そうすればもっと美味しく幸せになるからと、気持ちを込めて)
バイリン・ブラクが焼き上がって程なく。
籠から昇る湯気はまるで雲のようで、広場の人々の目はすぐ釘付けになった。
幸せをそのまま形にしたような一口サイズのケーキを配るのは、クラウ・ディークラウ(遮る灰色・g01961)。
お供のリームと一緒に、心を込めたそれを人々へ手渡していく。
「一人、三つ。宝物が出たら、教えて、ね」
「ああ……ありがとう!」「いただきまーす!」
長い圧政の終わりを噛み締めるように、しみじみと味を堪能する大人たち。
一方その子供達はお菓子を夢中で平らげ、宝物を手に駆け寄って来た。
『当たり』と書かれた木札――特製ケーキの引換券である。
「はい、これ!」「これも!」
幼い姉妹が差し出したのは、木札と銀色の札だった。
木札は普通の当たり。ドライフルーツをたっぷりぎっしり詰め込んだ逸品だ。
銀色の札は大当たり。珍しいドライフルーツを沢山入れた品だ。
「はい、どうぞ」
「わあっ」「綺麗……!」
手で割って現れた中身を、姉妹は眩しそうに見つめる。
熱でとろりと透き通る、鮮やかなドライフルーツ。柿、梅、金柑……彼女達にとっては未知の、それでいて間違いない美味を確信させる、甘い宝石達。それらを半分に分け合い、口へ運ぶ。
「……!」「~~!!」
喜びを全身で表しながら飛び跳ねる二人。
その傍でも宝物を当てた老人がいた。札は金色である。
「ん、それは特別。少し、待って」
「おお、年甲斐もなくワクワクするのう」
「テーブル、準備よし。隔離眼、解除」
どどんっ、とコミカルな音とともに飛び出たそれを見て、広場には驚愕と歓喜の声が上がった。
金色の札は超大当たり――ドライフルーツ各種盛り沢山の大型ケーキだ。
「良かったら、分けあってみて、ね」
「おお……! そうじゃのう。皆、食べよう!」
老人の一声で、広場は宴の席へ早変わり。
笑い、騒ぎ、踊り。悲しい過去を、喜びが流し去っていく。そうして、この街には再び日常が戻ってくるのだろう。
その光景をクラウが見守っていると、老人がそっとケーキを差し出した。
「こうして皆で楽しく過ごすのも本当に久しぶりだ。ありがとうよ」
「ん。ありがと。……嬉しい」
ケーキの温かさを噛み締めながら、ふとクラウは思う。
嬉しいことを共有できると、もっと嬉しい。一度は鼓動を止めた心臓に宿る温もりを、はっきり感じる。
その感情はきっと、こう呼ぶものに違いなかった。
幸せ――と。
大成功🔵🔵🔵
効果1【隔離眼】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV4になった!
十六夜・ブルーノ
街の皆に楽しんでもらうには
俺達が上辺だけじゃなくて
心から楽しむことが肝かな
祝祭を満喫しよう、ドゥー
切り分けて振る舞おう
皆の笑顔が嬉しい
俺達が復讐者をしてるのは
こんな幸せな時間を取り戻すためだって
改めて思うよ
誰かが切り分けを変わってくれたら
希望の配達人の本領発揮と行こう
ブズーキで賑やかに楽しい旋律を奏でる
【託されし願い】を込めて
ベルファスゆかりの曲を
地元の音楽家と一緒に協奏したいな
ドゥーも郵便ラッパで参加するよ
これは【勝利の凱歌】でもある
きっと希望はある
これから皆の手で素晴らしい歴史を創り上げていくんだ
演奏と笑顔や歓声を楽しんだら一息
バイリン・ブラクをいただくよ
どんな花かな?
ドゥーのは何だろね?
「さて、出来栄えはどうかな……と」
火を落としたオーブンから出したそれを特製の大皿へと移し、茶褐色の生地にスッとナイフを入れた。
ふわりと昇る白い湯気。食欲をそそるバターの匂いに、仄かな花の芳香が混じる。
十六夜・ブルーノ(希望の配達人・g03956)のバイリン・ブラクは、まさしく会心の出来であった。
「さあ、ケーキが焼けたよ」
「わあ美味しそう!」「いい匂い……!」
焼きたてのケーキから漂う香りは、人々の心を早くも捉えたようだ。
ついぞ温かいお菓子など食べられなかったのだろう、宝物を前にしたように誰もが目を輝かせている。
ブルーノとドゥーはさっそく出来立ての一品を切り分け、市民に振舞い始めた。
「はいどうぞ。まだ熱いから気をつけてね」
ドライフルーツの優しい甘さと、包み込むようなバターの香りに、自然と頬が緩む。
そうして色鮮やかな花々が宝物となってお目見えすれば、後はただ満足の吐息を漏らすばかり。
派手な賞賛でも歓喜の声でもない、至福の笑顔。それはブルーノにとって何よりの報酬だ。
(「こういう時が、復讐者として戦い、報われる瞬間だって思うよ。……さてと」)
感傷に浸る時間も惜しいとばかり、ブルーノは愛用のブズーキを手に取った。
希望の配達人たる彼の仕事は、むしろここからが本番なのである。
「街の皆に楽しんで貰うには、やっぱり俺達も楽しまないとね」
そうして始まったのは、ブルーノによる演奏だった。
詩の女神に肖って名付けたブズーキの旋律が、託されし願いを乗せて街角に流れる。
可愛らしい郵便ラッパで、伴奏に加わるドゥー。そうするうち、音色に笛の音色が加わった。太鼓の音もだ。どうやら街の人達も、協奏に加わってきたらしい。
笛、太鼓、手拍子、そして歌声。人々が奏でる音色はまさに勝利の凱歌そのものに、街中を包み込んでいった。
(「希望はある。これから皆の手で、素晴らしい歴史を創り上げていくんだ」)
人々の時間がふたたび動き出したことを、ブルーノは確かに感じ取る。
(「どれ。じゃあ俺もひとつ、いただこうかな」)
取っておいたケーキをドゥーと一緒に頬張れば、当てた宝物は黄色のビオラ。
花言葉は『小さな幸せ』。今の自分達にぴったりだ――そう思えた。
「きっと、これから良いことがある。俺も、皆も」
ベルファストの街に明るい笑い声がさざめく。
灰色に染まった世界は、ふたたび色を取り戻り初めていた。
大成功🔵🔵🔵
効果1【勝利の凱歌】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
四十万・八千代
もこ(g01739)と
頼れる友人に来てもらった
街を練り歩いてバイリン・ブラクを配って回ろうと思うんだが、
何かもっと皆を笑顔にする工夫ないかね、と相談
美味しそうに食べてる姿……成程、確かに
じゃあ先ずもこに食べてもらおう、はいどうぞ
感想聞けば少し照れてフード深く被ったり
彼女の反応に興味をもってくれた民衆が居れば
ここぞとばかりに菓子を配る
中にコインとリングが入っているが
コインは勝負運上昇
リングは出会いの予兆。同じ色のイメージに合った相手に出会えるかも。
俺の色?青系とか?
もこなら茜色か白かな。何色が出たんだ?
民衆が食べて笑顔を見せてくれたなら
やっぱり食事は人を幸せにするよな
と隣りの友人へ笑いかけるよ
諷和・もこ
やちよお兄さん(g00584)と
皆を笑顔にする工夫かぁ…
色々思いつきはするけど…
やっぱり一番は、誰かが美味しそうに食べてるところを見せること、じゃないかな?
…って、ええ!?ボク?
ん、わかったんだよ…いただきます…
食べてるところを見られているのは少し恥ずかしい
頬を染めつつも思い切って、パクッ
わぁ!
ドライフルーツの甘みとスパイスの香りに
恥ずかしさも忘れて、思わず頬が緩んじゃう
え、これお兄さんが作ったの?
凄いんだよ!すっごく美味しい!
運試しのリング
やちよお兄さんだったら何色のリングになるのかな?
え?何色のリングが出たかって?
…えへへ、内緒
ほらね、皆で食べるとこんなに幸せ
向けられた笑顔に笑い返すんだよ
人々の歓声で賑わうベルファストの街。
広場に面したテーブルで、四十万・八千代(悪食ハッカー・g00584)は静かに宣言した。
「さて。俺達も、街を練り歩いてバイリン・ブラクを配ろうと思う」
テーブルの上には、焼けたばかりのケーキ達がほかほかと湯気を立てていた。
サイズは普通、量は沢山。腕によりをかけて作った入魂の菓子である。
「ついては、皆を笑顔にする工夫が何かひとつ欲しい気がする。妙案はないかな、もこ?」
「そうだねぇ、色々思いつきはするけど……」
テーブルの椅子に腰かけた諷和・もこ(ふわもこうとうと・g01739)が、ぽんと手を打った。
「一番いいのは、美味しそうに食べてるところを見ること、じゃないかな?」
「確かに。じゃあ、早速もこに実食願おう」
「ええっ、ボク?」
おもむろにケーキを差し出され、面食らうもこ。
だが、彼女を見る八千代の瞳は真剣そのものだ。冗談を言っている表情ではない。
「もこを頼れる友人と見込んで、ひとつ。この通りだ」
「ん、わかったんだよ……いただきます……」
藍色の瞳に見つめられたもこは、少々気恥ずかしさを覚えつつもフォークを取った。
ほんのり頬を染めつつ、突き刺したケーキの欠片をぱくりと頬張る。すると――。
「わぁ……!」
同時、もこの眠たそうだった目がパッと見開かれる。
それは八千代にとって何より雄弁で、何より嬉しい反応だ。
「どうかな、味の方は?」
「ん! ん! 待って、もう一口……!」
もこは無造作に切り分けた四角いケーキを一欠け削るようにして、ぱくりぱくりと頬張っていく。
舌の上で優しく解ける、温かい小麦の生地。バターのふんわりと花開く芳醇な風味を追いかけるように、ドライフルーツの甘味が、スパイスの香りが、五感を幸せで満たす。
先程までほんのり赤かったもこの頬には、今や幸せでとろりと緩んだ笑顔が加わっていた。
「え、これお兄さんが作ったの?」
「まあね。喜んで貰えたかな?」
「凄いんだよ、すっごい美味しい!」
そう言いつつ、もこは口周りのバターを慌ててナプキンで拭う。それだけ夢中になる味だったのだろう。もこは幸せ一杯の表情で、まだ話し足りないとばかり言葉を続けた。
「温かくて、心と体がぽかぽか温かくなる感じ。とっても、とっても幸せ!」
「そうか。いや、そう言って貰えると嬉しいな」
囁くような小声で、八千代は自分の顔を上着のフードでそっと隠した。
気づけばテーブルの周りには、街の人達が随分集まってきている。今の自分が浮かべている表情を、皆の前で――特にもこの前で――見られるのは少々気恥ずかしいものがあった。
「随分集まって来たな。よし、早速配るとしようか」
「えへへ、ボクも手伝うよ! 今の幸せな気持ち、沢山の人に分けてあげたいから!」
こうして、八千代ともこは、焼きたてのバイリン・ブラクを人々に配り始めた。
温かいお菓子には人を笑顔にする力がある。素朴ながらも丹念に作られた八千代のケーキは、それを食する市民の体と心に暖かな幸せを運んでいく。そうこうするうち、気づけば用意した分はあっという間に空になっていた。
「ねえ、やちよお兄さんも食べよう! 冷めちゃうと勿体ないよ!」
「ああ、そうしよう」
もこに勧められ、八千代は最後のケーキを取る。
自画自賛ではないが、本当に美味しかった。幸せな街の人々を見ながらとなれば、猶更だ。
そうして半分ほど食べ進めた頃、フォークに手応えがあった。紙に包まれた宝物である。
「折角だし説明しておこう。宝物の種類はふたつ。勝負運が上昇するコイン、出会いの予兆を告げるリングだ」
「ふふっ。何だかワクワクするね」
掌に包みを握り、もこが目を輝かせる。
どうやら彼女もこれから開くつもりらしい。そこへ八千代はひとつ、秘密の情報を付け加えた。
「リングは色にも秘密がある。最初にイメージした相手に、いつか出会えるかもしれない……そんな秘密だ」
「運試しのリングかあ……ねえ、一緒に開いてみない?」
「ああ、いいとも」
お互いの目に入らないよう、二人は一緒に包みを解いた。
果たして、八千代が当てたのは――。
「お、リングだな。もこは?」
「ボクもリングだったよ。お兄さんは何色?」
「俺? さあて、何の色かな……そっちは?」
もこの姿を暫し見つめ、ふたたびフードで顔を隠す八千代。
そんな彼の前で、もこはほんのり頬を染める。宝物のリングを、愛おしそうに掌で包みながら。
「えへへ、内緒」
見れば彼女達の周りでも、人々が宝物を当てるのに興じる光景が見える。
かつてクロノヴェーダの手で奪われた日常。それが今ふたたび、時計の針と共に動き出そうとしているのだ。
バイリン・ブラクが運ぶ、温かな幸せとともに――。
「幸せだよな」
「うん。ボクも、とっても幸せ」
八千代ともこが見つめのは、日常の戻り始めた街角。
温かく弾む笑い声は、いつまでも響き続けるのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【無鍵空間】がLV3になった!
【友達催眠】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV5になった!
【ダメージアップ】がLV3になった!
無常・准耶
ルナちゃん(g00277)と
彼女を横抱きにして飛び、街を空から見下ろす
細身の体を抱き留める感触には慣れたもの
悪い気分じゃない、と格好つけるのもね
やはり上からの眺めはいいね、街が良く見える
さて、この菓子は何処で……と、あそこに降りればいい?
指示された場所へ緩やかに降り立ち、丁重に降ろす
何処からともなく銀のナイフを取り出し、手早くケーキを切り分ける
手渡したりは君の役目だね、どうぞ
祝祭の後は日常が来るものだ、祭りはいずれ終わるが節理だね
けれども、手に入れた明日は必ず昨日よりも良くなっている
その次の日は更に――ね
このバイリン・ブラクは幸福の始まり、ということで受け取ってほしいかな
じゃ、行こうか。ルナ?
ルナ・カンダチュラ
准耶様(g01207)と
もう何度目か分からぬ空中散歩
彼に身を委ねながら、手に(彼が)作ったお菓子を持ちます
何処に降りようかしらと悩んでいるうちに空から子供を見つけて
その子の元へ舞い降りて、と彼にお願いいたします
甘いお菓子は如何かしら、とにこやかに笑いかけます
中の青い宝石を子供が見つけたなら、笑みを深めて
あなたに幸せが訪れますように、と心から願うの
私は今だけは良い魔女になって、人に幸福を振りまくのです
切り分けられたケーキを周りの方達にも配りましょう
一人一人に手渡して、その度に言葉を投げかけます
戦いは何時か終わり、苦痛も薄れます
雨が必ず止むように、希望も必ず存在しますのよ
ええ、帰りましょう、准耶。
童話の世界に登場する魔女は、往々にして悪者と相場が決まっている。
呪いをかける、子供をさらう、病を逸らせる、等々……数え上げればキリがない。
だが、この日ベルファストに現れた魔女は、そうした如何なる魔女とも違った。ひとりの騎士とともに大空を舞い、灰色に沈んだ街の人々へ笑顔と幸福を贈り届けた。それは童話に出てくるどんな魔女にも、けして成し得ぬことであった。
魔女の名を、ルナ・カンダチュラ(呪毒・g00277)。
騎士の名を、無常・准耶(軽佻浮薄のアムネジア・g01207)と言った。
「いい景色ね」
眼下に広がるベルファストの光景に、ルナは溜息を洩らした。
港に面する紺碧の海。抜けるような青空。竜鱗兵のいない街からは、市民の歓声が絶えず聞こえてくる。
ほんの少し前、どんより漂っていた街並みの空気が嘘のようだ。
飛翔で見下ろす絶景の眺め――それも、こうして准耶の腕の中でとあれば、何も言うことはない。
「ねえ騎士様、気分はどう?」
「ま、悪くないかな」
横抱きにしたルナに見つめられ、准耶はふっと微笑んだ。
細身の魔女を抱き止める感触も、今ではすっかり慣れたものだ。
「空からの眺めはいいね。街が良く見える」
そう言って准耶はベルファストの街と、人々が織りなす景色に目を向けた。
街角で、広場で、市民の歓声が聞こえる。熱狂の色は最早ない、新たな日常を歩み始める人々のそれが。
路地裏のスラムは早くも片付けが始まっている。自分とルナが戦ったあの場所も、新たな景色に生まれ変わるだろう。
海の彼方へ目を向ければブリテン島の大結界が見える。姿形こそ変化はないが、結界の圧力が弱まっていることは街の上空からでもはっきりと感じ取れた。
「街の人々に幸福を……か。俺達の仕事も、どうやら仕上げが近そうだね」
「そうね。私達は何処に降りようかしら」
准耶に身を委ねるルナの手には、焼いたばかりのバイリン・ブラクがあった。
このケーキが幸せを運べたなら、きっと准耶も本望だ――そう思い、何気なく地上に目を落とした時である。
広場へと続く道に小さな男の子の姿が見えた。祭りを一目見ようとこっそり家を抜け出した……そんな風情だ。
「あの子の元へ舞い降りて」
「あそこだね? 分かった」
准耶は指示のあった場所へ降り立つと、ルナを丁重に地面へ降ろす。
目の前に颯爽と舞い降りた騎士と魔女に、子供は目を見開くばかり。
驚きと好奇心に輝く子供の瞳を見つめて、ルナはにこりと微笑んだ。
「こんにちは。甘いお菓子は如何かしら?」
「あ……う、うん!」
男の子は、まるで物語に出て来る王女を見るような顔でルナを見つめると、何度も頷いた。
准耶はルナと頷きを交わし、銀のナイフを取る。そうして騎士然とした手捌きで素早くケーキを切り分けた。
言葉を忘れて見惚れる子供に笑顔を送りながら、准耶はルナに切り分けた品をそっと渡す。
「手渡したりは君の役目だね、どうぞ」
「はい。魔女と騎士からの贈り物よ」
「あ……ありがとう!」
受け取ったバイリン・ブラクを、子供は金貨の袋でも扱うような手つきで恐る恐る口へと運ぶ。
一口、二口。夢中で動くフォークの先が宝物を探り当てた。
「わあ……!」
それは紛れもなく、一人の子供の心が幸福に書き換えられた瞬間だった。
青い宝石を見つめる笑顔。その穢れなき瞳をどこか眩しそうに見つめながら、ルナは静かに祈りを捧げる。
(「あなたに、幸せが訪れますように」)
男の子に宝物を授ける魔女――その光景をまるで童話の一幕のように見守りながら、ふと准耶は思う。
どんな祭りもいずれは終わる。この祝祭が終わった後も、やはり街には日常がやって来るのだろう。
時には、辛く苦しい日々もあるに違いない。しかし、それでもと准耶は思う。
(「手に入れた明日は、必ず昨日よりも良くなっている。その次の日は更に――ね」)
そして叶うなら、自分とルナのバイリン・ブラクが人々にとっての幸福の始まりになれれば幸いだ、と。
「さ、時間だ。少年、君の未来に幸福があるように」
「さようなら。元気でね?」
微笑みを交わし、手を振りながら飛び立っていく騎士と魔女。
それからも二人は、笑顔と幸福と、そして祈りと一緒にバイリン・ブラクを届け続ける。
お腹を空かせた少女へ、仲違いを悔やむ夫婦へ、そして病で歩けない老人へ――。
「戦いは何時か終わり、苦痛も薄れます。雨が必ず止むように、希望も必ず存在しますのよ」
出会う者達へケーキを手渡しながら、ルナは祝福の言葉を投げかけた。
今日だけは私も良い魔女を演じよう、そう心に誓ったのだから。
「じゃ、行こうか。ルナ?」
「ええ、帰りましょう、准耶」
そうして仕事を果たした騎士と魔女は、居るべき場所へと去っていく。
港町ベルファスト、もうドラゴンのいない街。
バイリン・ブラクの呼んだ幸福が、新たな日常の始まりを告げようとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【飛翔】がLV3になった!
効果2【ダメージアップ】がLV4になった!
【反撃アップ】がLV2になった!