リプレイ

●橋上飛戦
　港区芝浦と江東区有明を結ぶ吊り橋、レインボーブリッジ。
　そこは、いまや悪魔の止まり木と化していた。　
　中々壮絶な光景ではあるが、それを上回る事態が起こっていた。
「ビックサイトロボォ！？　レインボーブリッジ破壊！？」
　思わず狼谷・立希（HN.Werewolf・g00726）は、驚きの声をあげた。
「……ホント、インパクトありすきんだろ今回」
「進軍する巨大ロボット……まるで映画ね」
「ビッグサイトロボ……いやまぁオジサンとしては胸踊るけどよ、近づけたらやべぇってのはわかるさ。にしても、橋を落とせってのは豪儀だねぇ」
　ルキア・アダマント（金時計に刻む記憶・g04840）とソラス・マルファス（呪詛大剣・g00968）は、橋を見上げる。
　橋桁に並ぶガーゴイルガンナーの姿は、まるで地獄への道先案内人のようだ。
「その道を阻むために、橋を壊すんですって。集まるガンナー、爆破される橋……こっちは西部劇みたいね」
　ふふっと、ルキアは笑い声を零す。
「ま、破壊ってんなら俺の出番だな」
　立希は電脳兵器：高性能爆弾を、その手に実体化させた。
「行っくぜ！！」
　気合十分に立希は走り出す。
　ガーゴイルガンナーらは警戒はしていたものの、まさか真っ向から来るとは思いも寄らなかったようで、反応が遅れた。　
　慌てたように翼を広げ、石化の魔弾を撃ちながら滑空してくる。
　敵の一団が彼女に向かった隙に、ソラルはメインケーブルに取りついた。
　土台となるアイカレイジから中央の主塔にのびる二本のうちの一つ。ケーブルといっても、その見た目は強大なパイプのようだ。
「確か吊り橋だったはずだ、これを切断すれば多少揺らぎはするだろうぜ！」
　大剣を真上に構え、ソラルは武器に宿る呪いを解放し、一気に振り下ろす。
　両断した切断面より、腐食の霧が広がりハンガーロープや橋桁にも腐食が広がっていく。
　橋が小さく悲鳴のような音を上げた。
「おぅ、どうした。早く仕留めにこねぇと大事な橋がズタボロになるぞ？」
　急降下してくる風の音に、ソラルは振り返り大剣を構える。
　霧を突き抜け敵が顔を覗かせた所を、真上から急降下してきたルキアがそのまま杖で橋に叩き付けた。
　墜落した敵の腹部に垂直に杖を突き立て、更に押し込む。
　道路に亀裂がはしり、敵が苦悶の声をあげた。
　次のガーゴイルガンナーらが飛来するより早く、ルキアは再び飛翔し舞い上がる。
「空中戦なら、私の方が得意だわ」
　敵は銃を連射しながら、ルキアを追う。
　高く高く昇り、急転回すると双翼魔弾を敵とその後ろの橋を狙い撃ち込む。
　直撃した一体が墜落し、後は橋に被弾した。
　魔力の弾丸を潜り抜けた敵の爪が、ルキアに伸びる。
　と、下より大きな爆発音と共にハンガーロープが跳ね上がり、迫っていた敵を弾く。
　どうやら立希の爆弾で、吹っ飛んだ一本のようだ。
（「お洋服を破かれないように気をつけなくちゃ」）
　安堵の息と共に、ルキアはスカートの裾を翻し飛んだ。
「呪刃解放！」
　威勢のいい声と共に、殺気を纏った一閃で横に薙ぎ、ソラスは飛び上がった。
　体勢を崩し、ガラ空きとなった脳天に、叩きつけるような一撃を振り下ろし、豪快に敵を両断した。
　次々と爆弾を設置しながら突き進む立希は、向かってくる敵の魔弾を、周囲に浮かべた偵察用ドローンで防ぎ、素早くプログラミングした高性能爆弾を設置する。
　設定は、[接触時に炸裂]だ。
　パキパキと無機質な音を上げ、着弾した辺りからドローンは石化が進む。
　敵は予測通り、飛翔突撃を仕掛けてくる。
　立希はニヤッとフードの下で笑い、素早く下がった。
「勝手に吹っ飛びやがれ！」
　ガーゴイルガンナーが突撃しドローンに接触した瞬間、高性能爆弾は炸裂した。
「しかし、ほんとにいいのかねぇ……」
　そんな事を呟くも、設置した爆弾の準備は整っている。
　向かってくるガーゴイルガンナーと対峙する、ディアボロス達の向こうで次々と爆炎が立ち上り、一同の間を爆風が吹き抜けた。
　レインボーブリッジは、一際大きな悲鳴をあげ更にハンガーロープを手放した。








●獣横無尽
　儀式の護衛に集められたマルコスらは、パラパラと落ちて来る石崩に、何事かと鼻っ面をあげると大鎌を振りかぶった天音・梓（雨兆す・g03821）が落ちて来た。
「レインボーブリッジに恨みはありませんが、立地が悪かったと諦めて貰いまして破壊させていただきましょう……」
　落ちついた声音で梓はマルコスの翼を刈り取り。更に水上で、エアライドで空を蹴ると橋桁に飛び移り、落ちてきたマルコスの首を刈る。
「ふむ……ビッグサイトがあそこからいなくなってしまうと、一階の食べ物屋さんや二階のカフェのお客さんが減って困ってしまいますね」
　驚きと溜息を零す彼女の両脇に、二つの水柱が上がった。
「何っ！？」
　乱入者に驚き、儀式を行っていたラーフは振り返り、その竜頭の相貌に怒りを滲ませる。
「この騒ぎは貴様達か。グラシャラボラス様の邪魔はさせぬ！」
　ラーフの咆哮を合図にマルコスらは一斉に、攻撃態勢に移った。
「ハルファスが逃げ出したからって、ホント、一斉に動いてくれるよね。こっちは巨大ロボットだっけ？」
「ビッグサイトロボって……なんだろ、ロマンあふれているけど、ツッコミたい……」
　無双馬『クロフサ』に騎乗した無堂・理央（現代の騎兵？娘・g00846）が、空中を駆け。シル・ウィンディア（虹色の精霊術士・g01415）が、飛翔し。
　どちらも出来うる限り最速で、マルコスらに突っ込んでいく。
　その間も、橋の上の方からは大きな音が響き、小さな破片を落とし続けている。
　グラシャラボラスが何を考えているのか。ビッグサイトを使う事に意味があるのか。分からないが……。
「どーして、そーなったっ！！」
　色々な想いをぶつけ叫びつつ、世界樹の翼をtype.Cに変形させたシルは誘導弾を連射しながら、大きく旋回していく。
「空からお邪魔しますっ！　儀式は止めさせてもらうよっ！」
　攻撃を一点に集中しにくいよう、嫌がらせのように撃ち込み。
「浪漫は感じられるけど、今回はお引き取り願うよ」
　速攻で片付けると、理央は右に左にと馬上槍を大きく回すよう振るいながら、マルコスらを薙ぎ払い蹴散らしながら駆け抜ける。
　霧宮・悠希（小さき復讐者・g02383）は目立たぬよう、静かに飛翔し橋脚に近付く。
「巨大なロボに、巨大な橋の破壊に……スケールがおおきい」
　軽く深呼吸をすると大型複合兵器の狩人のミサイルランチャーを構えた。
「……ともかく。狩りの時間だ」
　狙うは、マルコスらが一ヶ所に集まった瞬間。
　慎重に、狡猾に、情け容赦なく行うべきだと、引き金に指をかける。
　襲撃を受けたマルコスらは、低く唸り声をあげ獣生解放した。
　鋭く牙を剥き、理央を狙う。その姿はまさに飢えた獣そのもの。
「さっさと落ちちゃえー！　そんな速さじゃクロフサには追いつかないよ！」
　挑発気味にクロフサと宙を駆け巡り、マルコスらを振り切り。纏めた所を、悠希が砲撃を放つ。
「荒削りであろうとも『復讐者の狩り』は、逃がさない……」
　攻撃に誘われ向かってくるマルコスらの様は、本能の獣の群れ。ただ狙う相手を四方八方より狙う狼の狩りのようだ。
　四足で空を走り縦横無尽に向かてくるも、ある程度は筋肉の動きなどで予測は出来る。
　意識を研ぎ澄ませ、復讐の意志と破壊の衝動を乗せ、悠希は確実に一体ずつ狩り続けた。
　砲撃を逃れ散ったマルコスらも、逃さず。
「精霊乱舞連弾っ！　連射しまくるよっ！！」
　無防備に向けられた背に、容赦なく無数の魔力弾をシルは撃ち込む。
「今度の魔力弾は、痛いからねっ！！」
　爪牙で引き裂こうと飛び掛かるも、間に飛び込んだ梓の威刈に空間を斬られ、威力を刈り取られる。
「ここは行き止まりです。すみませんが、お引き取り下さい」
　やんわりと、大鎌は命をも刈りにくる。
　マルコスらに敗因があるとすれば、それは群れであった事だろう。
　正面より向かってくる最後の二体に、理央は槍を構え駆けた。
　天を駆けるクロフサと理央は一つの槍。戦騎天駆の強力な一突きが、全てを貫いた。
　海へと落ちたマルコスらが大きな水柱をあげ、残るはラーフのみ。
「あとは、儀式を止めさせてもらうだけ、だねっ！」
　気合い十分に杖を向けたシルに、ラーフは咆哮で応えた。












●時象儀式
　残るはラーフのみだと気合いを入れ直し、霧宮・悠希（小さき復讐者・g02383）は大型複合兵器の狩人を構えた。
「それじゃ、儀式阻止の仕上げ……！」
「……止めさせてもらうよっ！」
　無双馬『クロフサ』に騎乗した無堂・理央（現代の騎兵？娘・g00846）は、飛翔し空を駆け一気に斬り込み。
　覚悟はいいよねとシル・ウィンディア（虹色の精霊術士・g01415）は、左手に淡い碧色の刀身の創世の小剣を持ち、斬りかかる。
　ラーフの口内に吸収した太陽の熱を収束させ、熱戦を吐きだし。その威力で頭が自壊するほどの魔力砲を放った。
　シルは飛翔する速度を加速させ、残像を残しつつ何とか魔力砲を逃れた。
「……大分ここも綺麗に片付きました。会って早々で申し訳ないのですが、ビッグサイトロボのこともありますし、あなたについても手早く片づけさせていただきますね」
　大鎌を振るい、天音・梓（雨兆す・g03821）が斬りかかった時には、ボコボコッと吹っ飛んだ首の断面が盛り上がり頭を再生させた。
「青トカゲは頭も生えるのですね。ですが、しっぽ斬りでは済ませてあげません。その身を斬らせていただきましょう！」
　弧を描くように大鎌を梓は振るい、橋の上から飛翔してきたルキア・アダマント（金時計に刻む記憶・g04840）は、懐中時計をかざし蓋を開いた。
「……契約召喚」
　召喚されたのは、ルキアが契約したアークデーモン。その一撃がラーフを橋脚に叩きつけた。
（「本当に橋を爆破しちゃったわ……」）
　まだ爆音と揺れの響く橋を見上げ、ルキアはこれで港区への侵攻を遅らせられると、そのまま飛翔し、距離をとった。
　再びラーフは口内に熱を収束させ始めていたが、その大口目掛け、上より狼谷・立希（HN.Werewolf・g00726）が砲撃を食らわせる。
　電脳兵器：仮想銃身のプログラムを展開し、自動ガンタレットを作り出したのだ。
「よっしゃ、最後に儀式自体を止めりゃ今回やる事は全部終わりだな」
　ここからなら狙いたい放題だと、立希は橋桁の下部からラーフを見降ろし笑みを浮かべた。
　反撃してきた攻撃は、盾壁を展開し受け止める。
「他からも攻められてる見てぇだし、さっさと解決しねぇとな」
　さらに電脳兵器：猟銃を現実化し、銃身改変すると大量にミサイルをバラ撒いた。
　橋脚部分がミサイルの爆発と爆煙に包まれ、一瞬静寂に包まれ、その内へと月の光が急速に集まっていく。
　次に来る攻撃を察したディアボロス達は、咄嗟に耳を塞いだ。
　爆煙を吹き飛ばすほどの咆哮が、聞いた者を狂気で満たさんと響き渡った。
　橋の下を駆けまわり、距離を取っていた理央は向きを変え、馬上槍を構え再び斬り込み。続いてルキアが召喚したアークデーモンが、ラーフとぶつかる。
　ラーフは苛ただし気に、熱線で飛び回るディアボロス達を薙ぎ払おうとするが、次々と逃げられていく。
「その程度の狙いの付け方で、クロフサを捉えられると思った？」
「わ、危ないわね」
　橋脚の方へと逃げながら、急にルキアは向きを変え躱せば、熱線が橋脚の端を削る。
「上手くいったわね。あなたの手で壊させるのも一興ね」
　ルキアはクスリと笑みをこぼした。
　ディアボロス達に翻弄されつつあったラーフは、焦り始めていた。己の攻撃が橋を傷つけたことにも気付かない程に。
　その隙を逃さず、梓は大鎌を振るい身刈でラーフの片翼を断った。
「そろそろ眠って貰います」
　竜頭と違って、翼は再生しないようだ。反撃が来る前に、梓は宙を蹴るようにして即座に離脱した。
　悪星の吐息を放つため、ラーフは大口を開け熱を収束させていく。その間、無防備に動きが止まる瞬間があった。
（「……一通り見えた。やりようはある」）
　ここまで攻撃を躱しながら、動きを観察していた悠希は、一気に畳み掛ける。
「アナライズアタック！」
　急接近しながら直前で真上に上昇するよう飛翔しながらミサイルをバラ撒き、そのまま水面を滑るよう低空飛行に切り替え機関砲を連射しながら突貫する。
　ラーフは、彼の攻撃に集中するしかない。太陽から月へと切り替えて。
「- Barrel Rewrite：Missile Launcher -」
　更に追い打ちをかけるように、立希の射出したミサイルが狙う。
　反撃をするべきか、防ぐべきか。迷いが動きを遅らせた。
　橋脚の反対側より回り込んだシルがエアライドで、水面のほうからエアライドで宙を蹴りラーフの眼前に姿を現す。
　その手に構えている長杖、世界樹の翼の杖頭の藍鉱石の花は咲き風翼は開いて、既に詠唱は終わっている。
「さぁ、今のわたしの全部……遠慮せず、全部もってけーっ！！」
　至近距離より複合精霊魔法、精霊収束砲がラーフに放たれた。
　さすがのラーフも、これでは何も出来ない。ミサイルの嵐を全身で受け、崩れた。
「これで終わりだよ！」
　クロフサに上体を預け、馬上槍を正面に構え理央は爆煙の中へと突撃する。
　戦騎疾駆、本命のランスチャージ。
　その一槍は、ラーフに容赦なく突き刺さった。
　橋脚が大きく揺れ、縦にヒビが入った。
　煙が全て晴れると、そこには橋脚にめり込むほど叩きつけられ串刺しとなったラーフの身体だけが、力無く在った。
　もう、竜頭が再生することは二度とない。
　これで儀式は止め、レインボーブリッジにもかなりの損壊を与えることが出来た。
「……破壊した訳じゃねぇんだよなあのロボ。っーと、江東区行く時は結局相手する必要があんのか」
　敵の沈黙を確認し一息ついた立希は、立ち上がり橋の向こうの方を見つめた。
　ここからは見えないが、件のビッグサイトロボは有明のあの場所できっと待っているのだろう。
（「今の時点であんなのが居ると知れたのは幸いか……？」）
　橋脚の方で、戦いを終えた仲間達が互いに声を掛け合う姿を眺め、立希も呼ばれヒラリと降りた。
「今の内になんか考えておくかねぇ」
　そう独り言を橋の上に残し。

最終結果:成功
完成日	2021年11月15日