リプレイ
遠宮・秋
あたしたちが最初に蝦夷の人たちと接触したのがここだったんだよね
こんな辺鄙なとこに施設作るのも理由があんのかな
破棄してそうならそれにも理由が。
正直いい予感はしないけど……見てみない事には始まんないよね
島だし哨戒部隊との接触は海でになりそ
【水面走行】で海上を進み接敵するよ
大太刀「白河泡沫分」を手に『狼牙の太刀』
新選組ウィップヘッドたちの側面に回り込み、敵陣を切り裂くように側面からの一閃
ウィップヘッドたちの間を駆けながら刀で切り裂くよ
他の復讐者がいれば、別々の方向から攻撃をしかけて少しでも対処に手間取らせられるといいかな
あっちも対復讐者のつもりで動いてるなら期待薄だけど
止まると電磁鞭の的になりそうだし、攻撃で駆け抜けた後も立ち止まらないように
常に動き続けて的を絞らせないようにしつつ、振るわれる鞭は刀で防御して直撃を防ぐ
何と戦うつもりでここに居たのか知んないけど、ちょっと戦力不足じゃないか、な!
●先駆け
波を蹴る。白波を飛び越せば、ひらりとブレザーのスカートが揺れた。潮風の心地よさに息を吐き、少女は風で乱れたツインテールを軽く揺らした。
「あたしたちが最初に蝦夷の人たちと接触したのがここだったんだよね」
潮騒を聞きながら、顔を上げる。波間の向こう、紫の瞳が天売島を捉えていた。
「よ、と」
波間から見えた岩を、とん、と飛び越える。海面は、今や少女に――遠宮・秋(アブノーマル中学生・g11768)とって、地面と変わらない。足を下ろした先から海面は凪ぎ、波は遠くに見えるだけになる。
「こんな辺鄙なとこに施設作るのも理由があんのかな。破棄してそうならそれにも理由が」
考えるように眉を寄せ、はぁ、と秋は息を吐いた。
「正直いい予感はしないけど……見てみない事には始まんないよね」
今日の波は然程荒くは無く、雲も無い。侵入するということを考えれば、もう少し天気もどうにかなってても良かったけど――まぁ、結局仕掛けるのだ。
「……右から回るね」
パシャン、と波を蹴る音が耳に届く。同じように、海面を蹴ってきたディアボロス達に告げると秋は海面を蹴った。遠く、波が岩を打つ音が届き――同時に『何か』が笑うのを聞いた。
「来ましたね、ディアボロス」
「そうだね」
海面を蹴る。上陸を阻むように展開していたのは、その頭から電磁鞭を生やす新選組の部隊だった。人間と武器が融合したようなその身で波を蹴って、踏み込んで来た秋へと射線を合わす。
(「――来る。けど」)
ざぁあと凪いだ海に足を滑らせる。弧を描くようにして見据えたのは、布陣する部隊の側面。手にした大太刀の鞘が海面を裂き、ざぁああ、と響く音に新選組ウィップヘッド達がこちらを向く。
「そう、そこにいるなら――」
その先が、叫ばれる前に秋は海面を蹴った。白河泡沫分を抜く。晒す刃が日差しを受けて鈍く光る。新選組ウィップヘッド達の電磁鞭がゆらり、としなり――だが、その一撃が撃ち出されるその前に少女の姿は――消える。
「――な、消え……!?」
「見失ったというの!?」
ひゅ、とウィップヘッド達が息を飲む。捉える筈の鞭は、相手を見失ったまま海面を叩き、だが、何かに気がついたように――漸く、気がつけたように顔を横に向ける。
「――! 違う、横に……!」
「そう、もう遅いね」
波を蹴って前に出ていた。海面を、大地を蹴るときと変わらないように秋は身を跳ばした。前に。瞬発の加速。その踏み込みは敵に秋の姿を見失わせ――目の前で消えたかのように思った彼らは、秋を探したのだろう。跳んだか、沈んだか。だが答えは、瞬時に敵陣の側面へと回り込んで――海面を、踏んだのだ。
「……ッぐ、この、距離では……ッ」
「――狼牙の太刀!」
大太刀を低く構える。白刃に零れた波が触れ――薙ぐ。一閃、振り抜いた刃は新選組ウィップヘッド達へと、沈む。三尺六寸五分の刀身を持つ大太刀を、迷い無く扱って見せた少女が切りこみ、その横を抜ける頃には三体の敵が崩れ落ちていた。
「っぐ、ぁあ……!」
派手な水音立てて倒れた敵を見送るよりも、秋は海面を蹴る。足を止めれば、態勢を立て直した新選組が電磁鞭を秋へと向けていたのだ。
「仕掛けるわ」
ヒュン、と空間事切り裂くように、鞭が大きく振るわれた。一閃、切り裂くように来る一撃に、秋は半身を逸らす。衝撃を刃で受けとめ、滑らせるようにして衝撃を殺しながら――海面を踏む。次の一撃の為に。
「何と戦うつもりでここに居たのか知んないけど、ちょっと戦力不足じゃないか、な!」
告げる言葉と共に海面を蹴った。この戦いを、向かうべき島への道を切り開くために。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【水面走行】LV1が発生!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
常香・クロウエア
樺太のアルタン・ウルクからも遠いこの地に残る新選組の皆様ですか。
ふむ、「株を守りて兎を待つ」というやつでしょうか?
施設をそのまま運用しているなら警戒度を高めるのもわかります。
ですがもし私たちディアボロスが再び訪れるのを信じて警戒し続けていたのなら、なまら気に入られたものですね。
まあ律儀に再訪する私たちも大概ですが。傷病者輸送の話もありますし気になりますもの、しかたない。
調べられることはしっかり調べて骨抜きにしちゃいますよ!
さあ天売島でのアンコール公演です。ご期待にお応えいたしましょう!
残留効果「水面走行」で海に立ち、パラドクス「Water seeks its Joker」を披露いたします。
アイテム「和傘に扇子」の扇子で上に持ち上げるようにして煽ぐことで、間欠泉のような水柱を噴き上げ、新選組の皆々様を空中散歩へご案内いたしましょう。
鞭による電磁波攻撃ですか。
やっかいですね、「和傘に扇子」の和傘を開いて盾とし直撃をなるべく避けようと思います。
私は物理的によりも感動的にしびれさせたいものです。
●軽やかに空に告げ
「樺太のアルタン・ウルクからも遠いこの地に残る新選組の皆様ですか。
ふむ、「株を守りて兎を待つ」というやつでしょうか?」
常香・クロウエア(忘憂と嘱望のジョーカー・g11778)は考えるように眉を寄せた。
(「施設をそのまま運用しているなら警戒度を高めるのもわかります」)
哨戒部隊が展開している以上、施設が維持されているというパターンは可能性も低そうな気もしますが、とクロウエアは思う。
「ですがもし」
息を吐く。バチ、と空気の弾ける音がした。稲光に似たそれは、電磁鞭が撓る音だ。敵がこちらを見据えている。武器の頭がこちらを向くのを見ながら、クロウエアは微笑んだ。
「私たちディアボロスが再び訪れるのを信じて警戒し続けていたのなら、なまら気に入られたものですね」
悠然と告げる。舞台の上と変わらぬように。マジシャンとして修行と営業を続けてきた娘は、吐息一つ零すようにして笑う。
「まあ律儀に再訪する私たちも大概ですが。傷病者輸送の話もありますし気になりますもの、しかたない」
軽く肩を竦め、クロウエアは顔を上げた。
「調べられることはしっかり調べて骨抜きにしちゃいますよ!」
「――骨抜きになるのは、どちらかしら?」
艶めいた声が、クロウエアの耳に届いた。ざ、と波を蹴り、海面に上がる音がする。分かっている。敵だってこっちを警戒していた以上、すぐに見付けてくるし、放っては置かないだろう。でも、こっちだって分かっていてきたのだから――。
「さあ天売島でのアンコール公演です。ご期待にお応えいたしましょう!」
彼らは、自分達を待ち続けた観客だ。
マジシャンは高らかに告げる。戦場という舞台で、海面を蹴って、天をさすように伸ばした手が始まりを告げる。
「常香・クロウエアの大イリュージョン!」
パチン、と指を鳴らす。その瞬間から、常香・クロウエアのマジックショーが始まる。すい、と伸ばした手の中に扇子が落ち、パン、と開いて上に持ち上げれば――ざぁああ、と水が揺れた。水面走行で凪いでいた海に、海流が生まれる。
「この渇いた大地の奥底に沈む大海の記憶を、私が呼び覚ましてみようじゃありませんか!」
「何をして……ッ待て、足元が……ッ散開!」
新選組ウィップヘッドの一体が声を上げる。応える声に代わりに、新選組達が海面を蹴った。その場を離れるように、領域外を狙うように身を跳ばす。だが――。
「いえいえ、やはり楽しんで貰わなくては」
ショーは始まったばかりなのですから!
歌うように告げたクロウエアが、扇子で持ち上げるようにして煽ぐ。ひらり生まれたひとつは柔い風、だがこの地に齎されるのは吹き上がる間欠泉のような水柱だ。
「さぁさ。新選組の皆々様を空中散歩へご案内いたしましょう」
吹き上がる水が、新選組ウィップヘッド達を宙へと打ち上げた。足元から叩きつける水流が、散開するはずであった彼らの足を捉え、浮いた身を――撃ち抜く。
「く、足が……ッ」
「水が……ッなん、こん――な」
「ディア、ボロス……!」
水しぶきに飲み込まれるように、敵が崩れていく。その身が崩れ、バチと揺れた頭の電磁鞭が力なく海面に落ちる。淡く零れた光がひとつ、だがその光が――揺れた。
「仕留めましょう、このウィップヘッドが」
「――」
ひゅ、と音がした。空気を打つ音――いや、撓る音だとクロウエアは思う。打ち付けるように来る攻撃では無く、ただその鞭を振るった――電磁鞭そのものを使った攻撃。
「鞭による電磁波攻撃ですか」
辿り着いた解と、身体が動いたのは同時だった。バチ、と爆ぜるような衝撃波に、クロウエアは和傘を開いた。バチン、と派手な音がひとつ響き、指先から痛みと痺れが伝わってくる。だが――それだけだ。
「私は物理的によりも感動的にしびれさせたいものです」
息を吐き、クロウエアは顔を上げる。笑みを浮かべる。直撃は避けられた。身体は充分に動く。それならば、さぁ、ショーの続きだ。辿り着く為に。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【水面走行】がLV2になった!
効果2【命中アップ】がLV2になった!
マリリン・モンロー
土地も資源も限りがある以上は、一度襲撃されたからってそう簡単に放棄したりしないよね。
元は矯正施設があったそうだけど……警備の力具合や施設の状態で今の新選組の方針や考えは見えてくる筈。
うん、マリちゃん、好奇心がそそられます。
展開した【フライトドローン】に乗って海上を移動。
双眼鏡で哨戒する敵を探しながら進んでいくよ。
敵を発見した時に、仲間が近くに居れば連絡してタイミングを合わせて攻撃開始。
戦端が開いたら【SFゴールド・アプリ】でバリアを展開して、敵からのダメージを抑えつつ、ドローンを足場に敵の上からゴブリン軍団を生成。
爆撃みたいにゴブリンたちを落下させて攻撃させるよ。
なるたけ、敵が密集してるところに突っ込ませて陣形を乱していきたいね。
うーむ……電磁波で機械を壊そうとしてくるのはマリちゃん的にはやり難い相手。
マリちゃんの作品を壊されるのは勘弁してもらいたいよ。
●unsinkable
潮騒が遠く聞こえる。眼下の海は、水面走行の影響で凪いでいた。
「土地も資源も限りがある以上は、一度襲撃されたからってそう簡単に放棄したりしないよね」
バイザー型デバイスを軽く上げる。海面を反射する陽の光にマリリン・モンロー(偽物は人類の夢を見るか?・g11765)は紫の瞳を細めた。
「元は矯正施設があったそうだけど……」
言いながら奥へと、目をやる。海上、展開したフライトドローンの上は、天売島の姿が見えていた。上陸予定の海岸付近に目立った変化は無く――言うなれば、布陣した部隊くらいだろうか。新選組ウィップヘッド達が声を荒げ、切り込んだ仲間の一撃が斬り伏せ、打ち上げる。倒れた一体の後からすぐに切り込む彼らの後、はた、と揺れる羽織が新しく見えた。
「……」
「ま、目も会うよねぇ」
マリリンは口元を緩める。
「具合や施設の状態で今の新選組の方針や考えは見えてくる筈」
あれは哨戒部隊の隊長格だろう。接敵を確認しやってきたか。追加の部隊の様子は無い。
「うん、マリちゃん、好奇心がそそられます」
さぁ、とフラとドローンに手をつく。戦端は開かれてある。
「これをこうして……と」
アプリを起動して、バリアを展開しながらマリリンは一気に距離を詰めた。
「右からも来てるよ。左の方はマリちゃんに……」
「あそこだ! 全員構えなさい」
新選組ウィップヘッド達が声を上げる。海面を走り、岩を蹴って一気に距離を詰めて来ようとする相手に、警戒を告げる仲間達の声を聞きながらマリリンに指を滑らせる。
「擬似外殻、形成。疑似外殻、連続複製」
「仕留めきりなさい。これ以上、ディアボロスに邪魔をされる理由は無い」
電磁鞭がうねる。バチバチと光が爆ぜ、その衝撃が空間を震わせるその前に――淡い光が、戦場に零れた。
「証明開始」
スマートフォンの画面が光る。その青を頬に受けながら、マリリンは僅かに口元を上げた。
「蹂躙と共に亜人は増えゆく」
軽やかに告げる。その言葉と共に表れたのは、蹂躙戦記イスカンダルのデータを基に擬似再現された亜人達であった。ゴブリンの軍団達が、我先にと落下する――地上の、新選組達へと。
『蹂躙だぁあああ!』
『ひゃは、はははは!』
咆吼と共に、襲い掛かったゴブリン達の拳が新選組ウィップヘッドにぶつかる。
「っく、邪魔を……!」
「隊列が崩れる……ッく、ぁあ……!」
その見目で、と新選組が忌々しげに息を吐く。撓る鞭が空を切り、肩口叩き込まれた己が敵の動きを鈍らせる。
「まぁ、上々というところでしょうかね」
敵の密集しているところに突っこませたのは、相手に組織だった動きをさせないためだ。部隊は散り――だが、すぐに対応してくるだろう。
(「けど、その一瞬は、使えるよねぇ」)
仲間が海面を蹴る音がする。なら、今は派手に暴れさせるだけだ。トン、とマリリンがスマートフォンに触れれば、その指先が――ぴくり、と痺れた。
「ディア、ボロス……叩き落としてあげましょう……!」
「これは……」
ただの痺れじゃ無い。空間がパチパチと爆ぜていく。見れば、ぐらりと身を揺らしながら立ち上がった新選組ウィップヘッドが、鞭を撓らせていた。あれは叩き付ける為じゃない。
「うーむ……電磁波で機械を壊そうとしてくるのはマリちゃん的にはやり難い相手」
バチン、と乗っていたドローンが揺れた。衝撃が、敵の放った電磁波が、マリリンの指先から腕に伝わってくる。
「マリちゃんの作品を壊されるのは勘弁してもらいたいよ」
溜息ひとつ、血濡れの指先を軽く振るう。だが、敵の数は随分と減ってきている。隊長格が見えたのがその証拠だ。
――もう少しだ。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV3になった!
八雲・譲二
※アドリブ連携歓迎
この場所の事は覚えている。痛烈に
また来る事になるとは正直思ってなかったが、確かにここはアルタン・ウルクとの境目のひとつだ
ただ礼文島や利尻島と比べると些か小さすぎる島だから、色々後回しにされてる可能性もある。城壁すらなかったもんなぁ
ただ一度俺達が足を踏み入れた場所に新選組がどういう対処をしてるかも確認できそうだしな、無収穫にはならんだろう多分
【水面走行】を借りて出撃
【パラドクス通信】を早めに開き仲間と連携を取って散開
敵戦力の分散と攪乱を狙いそれぞれ別方向から接敵する
よう新選組ども!ディアボロスが帰って来たぞオラァ!!
一旦味方と離れているから前に出過ぎて囲まれないよう注意して動こう
光輪を振り回し、まずは連中ご自慢の頭部の鞭を、続いて関節や首を狙って叩き斬っていく
一体二体ずつ確実に減らしていくぞ
反撃の電磁鞭はフライパンで弾き、受け損ねた分はボディアーマーで耐えて電撃はエンジェルオーラで軽減を図ろう
安心しろよ、市民を傷付けに来たわけじゃねえからよ
市民がまだ居るかは知らんけどな!
●Remembrance
荒く波を蹴って進む音がした。ざ、と弾けた白波を飛び越え来る敵へと、ディアボロス達は海面を蹴って行く。水面走行で凪いだ海面に波は遠く――ただ、海岸近くに見えた岩を飛び越え、その姿を、鞭を撓らせる新選組ウィップヘッドを、そして――天売島を見た。
「……」
この島を、この場所の事を男は痛烈に覚えていた。
「また来る事になるとは正直思ってなかったが、確かにここはアルタン・ウルクとの境目のひとつだ」
は、と八雲・譲二(武闘派カフェマスター・g08603)は息を吐く。
(「ただ礼文島や利尻島と比べると些か小さすぎる島だから、色々後回しにされてる可能性もある。城壁すらなかったもんなぁ」)
岩を、飛び越える。考え込んで足を止めるつもりはない。
(「ただ一度俺達が足を踏み入れた場所に新選組がどういう対処をしてるかも確認できそうだしな、無収穫にはならんだろう多分」
パシャン、と海面を蹴れば、跳躍の合間、遠く見える景色と、新たに現れた敵が譲二の瞳に映った。
「……ディアボロス」
低く、這うような声が譲二を呼ぶ。腰に刃は無く、頭に剥き身の刃を持つ新選組が視界に入れば、揺れる衣が天売島の姿を隠す。
「それで秘密にするつもりか?」
緩く問う。相手とて、答えるつもりはないだろう。バチ、と弾ける雷めいた音を聞きながら、翼を広げる。大きく一歩、加速するように前に出たのは今、目の前にある戦場を――仲間の足を晒すように放たれた電磁波を見たからだ。
「さて」
三歩目の踏み込み。わずか翼を畳むようにして加速すると、落とした足と共に手を掲げる。キィン、と空間が歌う。召喚された大きな光輪が二つ譲二の指にかかり、掴む。仲間へと狙いを定めて動き出した敵の――その背に向けて。
「よう新選組ども! ディアボロスが帰って来たぞオラァ!!」
声を上げたのは、敵にその存在を告げる為。構えた光輪を前に構え、譲二は顔を上げる。新選組ウィップヘッドが慌てたように振り返った。
「……ッ詰めてきていたのね、けど、その距離で」
ひゅん、と電磁鞭が揺れる。狙いを定めるように弧を描き、淡く影が譲二の頬に触れる。
「私に傷をつけるつもり?」
艶やかに、煽るように。叩きつけられた言葉に、だが譲二は笑った。
「――あぁ」
ふ、と口の端を上げ、常と変わらぬ笑みを浮かべた天使は、確かに、あと二歩残っていた間合で腕を振りあげる。相手の懐へと踏み込むには確かに距離があっただろう。だが、この光輪は――投擲とて、出来るのだから。
「届くだろう?」
ヒュン、と譲二は光輪を放った。鋭く、空へと舞いあがった光が譲二を狙ってきていた鞭を斬る。
「貴方、私の、鞭をき……ッ」
「まだだぜ?」
薄く笑って前に出たのは落ちてきた光輪を掴む為。指先で拾い、構え直すと譲二は今度こそ敵の間合深く、その影を踏んで両の手を振るった。
「一丁踊ってもらうとしようか!」
「っくぁああ……!」
交差した手を、振り下ろす。ザン、と光輪が新選組ウィップヘッドの首を斬り、ぐらりと倒れる。その姿を見送る前に、譲二は振り返るようにして腕を振るった。
「そこだ」
「ッチ、ディアボロスめ……!」
ヒュン、と振り下ろされた電磁鞭を受けとめる。カン、と鋭い音を立てたのはフライパンだ。愛用のフライパンが一撃を受けとめ、そのまま譲二は迷わずもう片方の腕を振りあげた。
「安心しろよ、市民を傷付けに来たわけじゃねえからよ」
ザン、と光輪が新選組ウィップヘッドの鞭を斬り捨てる。ぐらり、と崩れゆく敵を見送りながら譲二は顔を上げた。
「市民がまだ居るかは知らんけどな!」
全ては、この島が知っている。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【パラドクス通信】LV1が発生!
効果2【命中アップ】がLV4になった!
荒田・誠司
アドリブなど歓迎
【心情】
もう一度あそこに行くことになるとはな
警備が前よりも厳重になってしまっているのは当たり前か
それでも放棄せずにあの島で何をやっているんだか
調べるためにもここは押し通らせてもらおうか
【行動】
水面走行を借りて行動
仲間とはパラドクス通信で声を掛け合い積極的に連携していく
使用できる残留効果は全て使用
まずは完全視界を使い敵群を発見すればパラドクスを発動
射程距離に入った敵を自動的に攻撃するガトリングを製作し水面に浮かぶように設置しておく
射程距離内に入ってしまえばガトリングが捉えてくれるはずだ
その後は接敵し攻撃を盾のフェイク・プリドゥエンや電光警棒で受けて防ぎつつガトリングの射程距離内へと誘導し攻撃させよう
必要なら臨機応変に対処する
●Shrouded in the
凪いだ海に光が走る。光輪がバチ、と空間を痺れさせる鞭を落とし、その撓る一撃を受けとめながら前に出る。たん、と一歩、前に出た後、振り返った仲間が大きく後に退いてみせるのを青年は見た。
「――」
機だ。と思う。
この一瞬、仲間が派手に動いて見せたのはこちらの姿を見たからであり――パラドクス通信から、状況を伝える声が響く。射線が開く。動き回る敵が射線に乗る。開けた空間、相手とて、この意味に気がつくだろう。
(「チャンスは一度だけ。だが、一度あればそれで――良い」)
青年は――荒田・誠司(雑草・g00115)はゴーグルに手をかけると、設置しておいたガトリングに手をかけた。
「こいつで蜂の巣になりやがれ!」
「――! な、銃撃……!?」
「まさか、あの距離から向かってきていたというの……!?」
「……」
新選組ウィップヘッド達の言葉に、何を返すことなく誠司は前に――出た。
「は、貴方も蜂の巣になるつもりかしら!?」
「さぁな」
ふ、と誠司は笑う。僅か口の端を上げて、海面を蹴った。身を前に跳ばす。頬の横をガトリングの銃弾が抜け、足元を浚う。派手に火を噴くガトリングは、その勢いを止めることは無いまま――その瞬間になって、新選組ウィップヘッドは息を飲んだ。
「まさか、この銃弾は……貴方、には」
「っく、それ、なら……ッぁああ!」
銃弾が、新選組ウィップヘッドの腕を吹き飛ばす。派手にしぶいたのは鮮血か。或いは錆びた何かか。飛沫に身を逸らし、だが、その赤さえ纏うに距離を詰めてきた相手に誠司は気がついた。
「そこか」
「えぇ、そうよ!」
ヒュン、と素速く電磁鞭が振るわれた。バチバチと派手な音を上げながら、叩きつけられたそれに誠司は反射的に盾を持ち上げる。
ギィイインと、鋼が震えるような音がした。痺れが腕に伝わり、僅か皮膚が裂ける。
「――だが」
それだけだ。痛みがある。感じる頭があれば生きてる。そういう戦場を誠司は何度も経験してきた。
「……」
盾を構えながら、軽く後に跳ぶ。間合を厭うようにそうすれば、次の新選組ウィップヘッドが踏み込んでくる。
「は、距離でも取るつもりかしら? でもダメよ、逃がさないわ……!」
銃弾が頭部を掠ったのだろう。鞭が僅かに減り、雷のような光を零しながら敵が来る。
「ここで、終わらせる!」
「――」
鞭が撓る。頭部に残された無数の鞭が蠢き、振り回される。その一撃を受けとめ、身を逸らす。猛攻が誠司の腕を引き裂き、避けるように身を逸らしそこを、追うように来た新選組ウィップヘッドの腕が――跳んだ。
「な……ん、で……?」
「単純な話だ」
種明かしをする気は無いが、と誠司はゴーグルに触れる。遠距離からの銃撃を仕掛けてきた誠司に、近接の手は無いと、そう思って新選組ウィップヘッド達は踏み込んで来たのだろう。その勝利への過程が敗北を生むとも知らず。
あの時設置したガトリングは、射程に入った敵を認識し攻撃を仕掛ける。ここは、今や全自動機関銃の射程だ。
「っぐ、ぁあああ……!?」
銃撃に、新選組ウィップヘッドが崩れ落ちる。二体、巻き込むようにして散らせば、残る敵が警戒するようにこちらを見ていた。
(「それでも、撤退はせず増援を呼ぶ空気は無い」)
爆ぜる光の向こう、向かうべき天売島が見える。
(「もう一度あそこに行くことになるとはな。警備が前よりも厳重になってしまっているのは当たり前か」)
哨戒部隊の隊長格も、姿を見せている。腕を組むようにして待つあれが、最後の砦か。
(「それでも放棄せずにあの島で何をやっているんだか。調べるためにもここは押し通らせてもらおうか」)
敵はもう殆ど残ってはいない。道を切り開く時だ。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【完全視界】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
イツカ・ユメ
以前来た時は、警備ゆるゆるだったけれども……まぁ、警戒されるのは当たり前よね。
あの時天売島にいた人達は、まだいるのかしら。そもそも、あの施設はまだあるのかしら。
島を放棄せずに警備を固めているのなら、何かしらの目的あると思うけれども……
うん!考えるよりも行動あるのみ!もう一度この島の歌を聴いて、この目で見て確かめる!
上陸されるのを警戒しているのなら、哨戒部隊とは海上で接触することになりそうだよね。
【水面走行】のご加護をお借りして、ガツンと一気に攻め込むよ!
念の為、応援を呼ばれないように【通信障害】も発生させておくね。
できるだけ周りの皆とも協力して、リズムを合わせて畳み掛けたり、わざとタイミングをずらして相手の調子を狂わせたりしながら斬り込むね。
遠距離からの鞭の一閃は厄介だけれども、怯まず懐に飛び込むよ!
遠くの相手は狙えても、逆に近くの相手は狙い難いんじゃない?
散々ビリビリ痺れさせてくれたお礼に、ノリノリの歌とキラキラの音楽で、あなたのハートを痺れさせてイカせてあげる!
●貴方の、旋律を
潮騒の向こう、遠く荒く見えた波さえ打ち消すように銃弾が叩き込まれた。雷撃に似た光が爆ぜ、打ち据える鞭が空を切る。零れた赤さえ置いて、踏み込んだ仲間と囲めと叫ぶ敵の姿が見える。
「囲め! 上陸などさせるな」
「ここで終わりにしましょう、ディアボロス」
哨戒部隊の数も、もう随分と減っていた。波間を縫い、岩を飛び越え踏み込んで来ていた彼らもその圧を失い――……。
「だから、余計にどーんって感じかしら?」
距離を詰めるのに迷いが無い。それでいて、諦めている様子も無くて、攻撃だって受け続ければ不利になるのは自分達だろう。
「以前来た時は、警備ゆるゆるだったけれど……まぁ、警戒されるのは当たり前よね」
さらりとした髪が潮風に揺れる。ふわり、と靡くのをそのままに、イツカ・ユメ(いつかかなうゆめ・g02834)は真っ直ぐに戦場を、新選組達を見ていた。
「……まぁ、警戒されるのは当たり前よね」
ぽつり、と呟く。ディアボロス達が最初に侵入したという事実は、彼らに軽くは思われていないのだろう。
(「あの時天売島にいた人達は、まだいるのかしら。そもそも、あの施設はまだあるのかしら」)
考えるように、イツカは眉を寄せる。
(「島を放棄せずに警備を固めているのなら、何かしらの目的あると思うけれども……」)
新選組の視点で考えた時の利点は何か。勿論懸念だってあるだろう。
ここが要所になるのか、理由があるのか、考えることは出来ても正解がまだ分からない以上、ここに『答え』は無い。
「うん! 考えるよりも行動あるのみ!」
力図良く頷いて、イツカは顔を上げた。
「もう一度この島の歌を聴いて、この目で見て確かめる!」
パチン、と指を鳴らす。歌い出す、その時のように展開した通信障害が、戦場に広がっていく。
「あら、まだ何かするって言うのね」
「ディアボロス。これ以上は、止めさせて貰うわ……!」
パシャン、と水を蹴る音がした。踏み込みじゃ無い、体を支えるような――地面を掴むように岩場に足を掛けた新選組ウィップヘッド達が、その頭を大きく回した。
「――来る」
ヒュ、と鋭い音と、イツカがそう呟いたのは同時だった。薙ぎ払うように大きく、振るわれた電磁鞭がイツカの腕に触れる。バチ、と痺れる感覚と共に痛みが走る。
「……ッ」
思わず小さく息をつめれば、モキュ! と警戒を告げるようにキットが声を上げた。
「うん、そうだね」
左だ、と彼女は思う。痺れた足で、痛む体で海面を蹴って――前に、跳ぶ。怯むことなく。痛みも、苦しみも戦いもイツカは知っているから。だから、きゅ、と握った手と共に前に出た。足元、浚うように来た鞭を飛び越えて、爆ぜた光を背にだけ感じながら新選組ウィップヘッドの影を、踏んだ。
「貴様……!」
「遠くの相手は狙えても、逆に近くの相手は狙い難いんじゃない?」
ふ、とやわくイツカは微笑む。パシャン、と海面を踏んだ娘は、ラ、と小さく歌う。
「散々ビリビリ痺れさせてくれたお礼に、ノリノリの歌とキラキラの音楽で、あなたのハートを痺れさせてイカせてあげる」
さぁ、と振りあげたその手と共に、歌い上げるのはいつかどこかで聴いた歌。陽気に楽しく奏でる中、ぱふん、とモーラットが分裂した。
『もきゅっ』
『もきゅ♪』
楽しげに歌い、ぱふん、ぽふんと分裂するモーラット達の大合唱が戦場に響き渡る。
「これは……ッなんだ、この歌声は」
「この、こいつ邪魔を……ッ」
間合を厭うように払う鞭を、だが、ふわりと避けたモーラット達が、ぽふん、と空で跳ねた。
「いつか叶う、夢はきっと叶う……さぁ、楽しくもきゅっと弾けちゃおう♪」
イツカの歌声に乗せて、もきゅっと分裂したモーラット達が新選組ウィップヘッド達に突撃する。
『もきゅ』
「っく、こんな……筈じゃ……」
ぱふんともふっと、もきゅっと。
突撃に吹き飛ばされた最後の一体が、崩れ落ちるようにして消えていった。
「これ程までにディアボロスは障害となりえるか」
訪れた静寂に、静かな声が落ちる。カツ、コツと靴音を響かせながら、崩れ落ちた新選組ウィップヘッド達を一瞥したかれは血濡れの衣を揺らしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【通信障害】LV1が発生!
効果2【反撃アップ】LV1が発生!
●血濡れの理
波打ち際に、羽織が揺れていた。一体、また一体と崩れ落ちた新選組ウィップヘッド達が消えていく。
「これ程までにディアボロスは障害となりえるか」
訪れた静寂に、静かな声が落ちた。カツ、コツと靴音を響かせながら、崩れ落ちた新選組ウィップヘッド達を一瞥したかれは血濡れの衣を揺らす。
「私の名は長曽祢虎徹。今この時においては、哨戒部隊の隊長なるもの」
靴先が波に触れる。凪いだ海に立つディアボロスも、あと数歩前に出ればそこは波打ち際だ。そこで構わぬとでもいうように、長曽祢虎徹は手袋を嵌め直す。頭の血濡れの刃が鈍い光を零し——かれの、手の中に収まる。最初から、頭には何もなかったのか、或いはあの虚空が鞘であったのか。
「主命である。ここで、潰えて貰おう」
問うべき言葉はここには無い。ただ、踏み込ませぬ為に立つ者と、侵入しようというこちらがいるだけだ。
「その首を貰おう。ディアボロス」
✦・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ・✦
ご参加ありがとうございます。
秋月諒です。
第二章は「③アヴァタール級との戦闘『長曽祢虎徹』」となります。
●戦場について
波打ち際での戦いとなります。
長曽祢虎徹との戦いに勝利するまでは、島への完璧な上陸、また周辺の調査はできません。
*周りがどうなっているか……等々の調査は①の調査選択肢でしかできません。
●プレイングについて
数日受け付けてからの執筆となります。
先着順ではありません。
*技能は、パラドクスを越えた効果は発揮しません。
*必要数をどかんと大きく超えた採用はありません。予めご了承ください。
*パラドクスの説明文章やアイテム説明文章を過大解釈したなんかすごい行動は、不採用でお返しする可能性がございます。
各種行動は、プレイングで御願いします。
どの効果もあれば良い、というよりはどう使うかが重要となってくるかと。
それでは皆様、御武運を。
遠宮・秋
今更過ぎない?
こっちは歯舞から始めて網走に釧路に……色々戦ってきてんのに
新選組ってずいぶんのんびり屋なんだね
あんたたちがのんびり屋でも、こっちはそれに付き合う義理はないから
あんたたちが何を考えてるのか知るためにも、ここも見せてもらおうかな
大太刀「白河泡沫分」を手に戦闘
波打ち際だけど念のため【水面走行】は維持、不意に見ずに足が取られないように
長曽祢虎徹とは距離を取っての戦闘を中心に、あっちは距離を詰めて来るだろうけど、刀で牽制して近づかれないようにしたり、距離を取りなおしたりして一定の距離は保てるようにしたいね
攻撃は突きと同時に風の刃を放つ『蠍尾の太刀』で
遠距離からでも攻撃を仕掛けていって長曽祢虎徹の胴体を貫く
どういう技術なのか頭はついてないみたいだけど、そのスーツの下も空洞ってことはないよね
確かめてみようか、な!
反撃の格闘は距離を取り、吹き飛ばされたり投げられたりしてもすぐに受け身を取って臨戦態勢、追撃や連続での攻撃を受けないように
常香・クロウエア
おやおや、ご存じありませんでしたか。私たちディアボロスはとっても強いんですよ?
ご存じないのでしたら残念。キミに私たちの力をもっともーっとお見せしちゃいましょう。
もちろん、マジックショーでね!
レディース、エーン、ジェントルメーン。
常香・クロウエアのマジックショーへようこそおこしくださいました。
本日のお披露目するマジックは―パラドクス「Joker flies like Arrow」!
ここになんの変哲もないアイテム「不思議なシルクハット」がございます。
こうやってお客様にも中が見えるようにお見せいたしますが、なにもはいっていませんね?
ですが次の瞬間、驚くことにここからなにかが飛び出てくるようですよ。
見逃さないようにご注目くださいね。
わん、つー、すりーっ!ドーン!
ビームでお客様のハートを狙い撃ちにしちゃいましょう。
お客様の剣撃にはアイテム「和傘に扇子」の和傘を開いて盾とし急所への直撃から極力護りたいですね。
波打ち際での戦いだなんてまるで巌流島みたいじゃないですか。華麗に勝利を刻みたいところですね。
荒田・誠司
アドリブなど歓迎
【心情】
さすがにこのまま潜入しますよはダメか
はいそうですかと首を渡す程耄碌してないってのは分かっていると思うが、全力で争わせてもらおうか
これが俺の戦い方だ。ズルいやら卑怯は褒め言葉ってな
【行動】
仲間とはパラドクス通信を用いて声を掛け合いながら積極的に連携していく
引き続き水上走行の力を借りて行動
まずはパラドクスを使用し
気配や影も隠すステルス機能のあるバッチ型装置を製作し身につけておく
敵からの攻撃は盾のフェイク・プリドゥエンや電光警棒で防御する
そのまま製作した装置を起動しステルスになった後は盾を放棄
姿を隠したまま敵の死角に入り電光警棒を打ち据えて攻撃
急に姿が見えなくなれば少しの間でも動揺させられるかもしれない
そうして出来た隙を突く
上手くダメージを与えられなかったとしてもこちらに意識が向けば仲間が攻撃する隙になるはずだ
必要なら臨機応変に対処する
イツカ・ユメ
首を貰う、ですって?
ざーんねん!首を貰われるのはあなたの方だよ!覚悟なさいっ!
…頭の刀が取れちゃったのには、ちょっぴりびっくりしたけれども。
油断せずに引き続き【水面走行】のご加護をお借りして、波打ち際のステージも盛り上げていくね。
歌って踊って周りの皆を応援しながら、華麗に切り結ぶよ!
相手がディアボロスを障害と認めて、全力で来てくれるのならば。
こっちも全力で打ち破りにいかないとね。
…この島の人達の心に、わたしの歌は響かなかった。
この蝦夷の地に、わたしの歌は不要だと言われた。
それでも。
管理された幸福じゃなくて、自分の夢を自分で掴む幸せを。
夢に破れた時に寄り添う歌のあたたかさを、希望を、この地の人達に知ってほしいから。
わたしはわたしのやり方で、もっと自由に。
夢を、希望を、愛を、この地で歌いたいのよ!
どこを斬られたって、めげない、折れない、諦めない!
苦しい時こそ笑顔を忘れず、大声で歌って気合いを入れるね。
その自慢の刀でも、わたしの夢は、私の歌は、わたしの心は、絶対に斬ることは出来ないんだからね!
八雲・譲二
※アドリブ連携歓迎
長曽祢虎徹ね。近藤勇の刀の方か、それとも刀工の長曽祢興里か?ふん、主命て事は前者だな
随分と血まみれじゃねえか。刃物の手入れがなってない
血糊や脂は都度丁寧に拭き取らねえと、あっという間に切れ味が落ちるぞ
俺の包丁と比べてみるか!
【水面走行】は継続使用しフィールドを広く取りつつ[調理器具利用強打]を発動
大包丁を構えて接近戦を仕掛ける。攻撃の手を止めないよう意識し、他の仲間が撃ち込む隙を作ろう
頭部の刀は今こそ奴の手元に収まってるが、最初は浮いてたのも事実だ。トリッキーな妖刀と思って油断せず立ち回るぞ
相手の一閃も大包丁で受けて逸らして流す。浅い傷ならボディアーマーで防げるし、急所だけやられないように注意する
タイミングがあれば胴や腕も斬りに行きたいが、やはり刀が本体な気がする
仲間と連携して立ち回りつつ、大包丁で叩き斬る形で刀自体をブチ折りにかかろう
こっちは対クロノヴェーダ軍事企業CCTSの社長が直々に贈ってくれた天然砥石で研ぎ澄ました大包丁だ
手入れ不行き届きのなまくらに負けるかよ!
マリリン・モンロー
さてさて、この先には何があるのかな?
主命というと、単に命令系統が新選組を指しているのか、それとも個人的に仕えている、もしくは所属部隊のトップを指しているのか。
最終人類史では長曽祢虎徹といえば近藤勇の愛刀らしいけれど……聞いたら答えてくれるかい?
うん、最初から答えは期待してないけれどね。
文明を有する人間としてはちゃんと会話も試みたいというところ。
新選組は武器と融合したような形態の個体が多いけど、頭に刀が浮いているのはまた特徴的なビジュアルだよね、貴方。
その見た目だとやっぱり会話はあまり好まない感じ?
会話をしつつ、格闘戦の勢いに押されないように距離は取りつつ、前面に【SFゴールド・アンク】でバリア展開。
敵の動きの邪魔するような位置にドローンも出現させて、ダメージを抑えるのを試みるね。
攻撃を防ぎつつ、更にアプリを起動。
巨大昆虫の大群を生成、一気にけしかけるよ。
召喚するのはタガメの群れ、海中から囲むようにして攻撃させるね。
本来は海に虫はいないけど……それはそれ。
●刃たる者
ざぁん、と波が岩を打つ。白波は遠く、未だ、凪いだ海がディアボロス達の足元にあった。靴先を濡らす海は無く――だが、湿った砂が、波打ち際まで辿り着いたことを示していた。
天売島――ディアボロスが最初に接触した蝦夷共和国の都市がある島が、目の前にあった。
「それ以上、足を踏み入れることは叶わない。ディアボロスよ」
波を蹴るようにして立った新選組・長曽祢虎徹が告げる。首より上を持たない存在は、頭の代わりのようにあった剥き身の刀をその手に落とす。
「再び、この地にその目を向けようとも、ここで潰えるが定めだ」
「今更過ぎない?」
低く、射るように響いたその声に遠宮・秋(アブノーマル中学生・g11768)は溜息をつくようにして言った。結い上げた髪が揺れる。僅か、銀色の髪が落とした影が瞳を隠し――軽く肩を竦めた後には、常の色が宿る。
「こっちは歯舞から始めて網走に釧路に……色々戦ってきてんのに。新選組ってずいぶんのんびり屋なんだね」
大太刀・白河泡沫分に手をかける。鞘は地につくようにして相手を見ることは無い。いつでも抜けるように、秋は鞘に触れた。
「あんたたちがのんびり屋でも、こっちはそれに付き合う義理はないから」
「私とて、貴様等に付き合う義理はない。ウィップヘッド達が討ち取られた事実を以て、警戒はしているがな」
「――だが、理由はあるって?」
言の葉を拾いあげるように告げたのは八雲・譲二(武闘派カフェマスター・g08603)であった。口の端を僅かに上げて見せた男は、鋭く返された視線に琥珀の瞳を細める。
「長曽祢虎徹ね。近藤勇の刀の方か、それとも刀工の長曽祢興里か? ふん、主命て事は前者だな」
「……」
長曽祢虎徹は答えない。ただ冷えた視線だけが、殺意を以て譲二を射貫く。血の匂いが、頬を撫でた。吹き抜ける風が生んだのか、長曽祢虎徹が生んだ圧か。だが、それに憶する理由など譲二には無い。
「随分と血まみれじゃねえか。刃物の手入れがなってない」
「全ては規律の為。私は主命を果たす為にある刃に過ぎない」
端的に返された言葉は、それでも言葉を返すだけ長曽祢虎徹の精神に触れたのだろう。
「この身が血に濡れようとも構わん」
「その刃が、血まみれだって言ってるんだ。
血糊や脂は都度丁寧に拭き取らねえと、あっという間に切れ味が落ちるぞ」
肉厚な大包丁を譲二は取ってみせる。包丁か、と落ちた声に、あぁ。とだけ応えれば、パシャン、と長曽祢虎徹が刃を向けた。
「なら、試してみるが良い。貴様等の首で」
「おやおや、ご存じありませんでしたか。私たちディアボロスはとっても強いんですよ?」
その一歩に、常香・クロウエア(忘憂と嘱望のジョーカー・g11778)は軽やかに告げる。
「ご存じないのでしたら残念。キミに私たちの力をもっともーっとお見せしちゃいましょう」
パチン、とマジシャンは指を鳴らす。ウインクひとつ、殺意を見せる相手に常香は告げた。
「もちろん、マジックショーでね!」
この舞台の、幕開けを。
●辿り着く為に
「レディース、エーン、ジェントルメーン。
常香・クロウエアのマジックショーへようこそおこしくださいました」
空間が、揺れる。指をパチンとならしたその瞬間から、マジックショーは始まっていたのだ。
「――これが、ウィップヘッド達が打ち上げられていた手か」
だが、と告げた長曽祢虎徹が波打ち際を蹴った。手にした刃が、鋒が波を切り裂くように――来る。
「ここになんの変哲もないアイテム「不思議なシルクハット」がございます。
こうやってお客様にも中が見えるようにお見せいたしますが、なにもはいっていませんね?」
だがその踏み込みにも構わずに、常香は不思議なシルクハットをくるり、と回してみせる。差し込む日差しが、ただ彼女の為のスポットライトとなる。
「ですが次の瞬間、驚くことにここからなにかが飛び出てくるようですよ。
見逃さないようにご注目くださいね」
「先に貴様を落とす」
長曽祢虎徹が踏み込む。腰を低く落とし、下段から斬り上げる刃が常香に迫る。だが、その鋒より早く――彼女は笑った。
「わん、つー、すりーっ! ドーン!」
とびっきりの笑みを浮かべ、マジシャンは一礼する。常香の元、収斂していた光は、真っ直ぐに眼前の相手に向いたのだ。
「……っ、れは、光か!?」
Joker's All that Glitter
本日、披露されたマジックが――ビームが、長曽祢虎徹を撃ち抜いた。
「ッチ、面妖な。流石はディアボロスか。だが……我が刃はこの手にある」
肩口、焼けた身から零れたのは血か光か。ゆらり、一度身を揺らした長曽祢虎徹の刃が、凪ぐような構えから突きに変わった。
「終わりだ」
「っと、まだまだショーは終わりませんよ」
パン、と常香が和傘を開く。一撃、心の臓まで穿つように来ていた一撃が僅かにそれ、肩口に沈む。鈍い痛みに、だが、ふ、とマジシャンは笑みを見せた。
「何を笑う」
ギチギチ、と和傘が軋む。押しこむように踏み込んでくる相手に、常香は悪戯っぽい笑みをみせた。
「波打ち際での戦いだなんてまるで巌流島みたいじゃないですか」
マジシャンは、舞台を楽しませるもの。さぁさ、と笑って、軽く傘を持つ腕を跳ね上げる。刃が迫る。けれど――こうしたのは、こう演じて見せたのは、仲間の足音を聞いていたからだ。
「あんたたちが何を考えてるのか知るためにも、ここも見せてもらおうかな」
水面を蹴る音が聞こえたその時には、彼女は迫っていた。た、と道を譲る常香が一礼をする。その影を踏むように、更にその奥へと行ったのは――秋だ。
「貴様、いつこの距離に……!」
「どういう技術なのか頭はついてないみたいだけど、そのスーツの下も空洞ってことはないよね」
この距離に、と長曽祢虎徹が言ったということは、秋の位置は把握していたのだろう。
(「だからこそ、距離を取ってたから驚いたんだろうけれど」)
無為に、詰めた訳じゃない。凪いだ水面を蹴って、腕を持ち上げて白河泡沫分を構える。長曽祢虎徹が厭うように距離を開けた。だが――。
「確かめてみようか、な!」
それこそ、秋の間合だ。
バシャン、と凪いだ海を踏む。ぐん、と突き出した刃が空を切り裂くようにひゅう、と音を鳴らし、生まれたのは風の刃だ。
「――蠍尾の太刀!」
直線上に放たれた一撃が、長曽祢虎徹を貫いた。
「っぐぁあ……ッは、早いな、その太刀。大太刀か。だが、私とて粛清役」
息を吐く。血濡れの身体を揺らし、蹈鞴を踏んだ足が、次に荒く海面を掴む。
「貴様を制圧する」
「――」
来る、と秋は思った。た、と身を後に跳ばせば、その間合を食らうように拳が来た。
「……ッ」
ゴ、と鈍い音が身体に響く。骨を折ったか。衝撃で身体が浮いた瞬間、下から動く足が見えた。
「――それ、なら」
刀を持つ手を引き上げる。大太刀が、続け様に来た長曽祢虎徹の蹴りを受けとめる。
「ほう、これで仕留めきれないか」
「当たり前よ。これで、折れるつもりはないよ」
着地の足が、ざ、と海水に触れる。真っ直ぐに言の葉を返せば、少女の声が戦場に響き渡った。
「さてさて、この先には何があるのかな?
主命というと、単に命令系統が新選組を指しているのか、それとも個人的に仕えている、もしくは所属部隊のトップを指しているのか」
問いかける声と共に海面を踏む。ディアボロスがそこに立つ以上、凪いだままである海にて、マリリン・モンロー(偽物は人類の夢を見るか?・g11765)は興味心を乗せた声で問うた。
「最終人類史では長曽祢虎徹といえば近藤勇の愛刀らしいけれど……聞いたら答えてくれるかい?」
声を投げれば長曽祢虎徹の意識は、マリリンへと向く。その一拍を利用するように秋が距離を取り直す。身を隠すように仲間の後を一度抜け、荒田・誠司(雑草・g00115)はゆっくりと海面に足を下ろした。
(「さすがにこのまま潜入しますよはダメか。
はいそうですかと首を渡す程耄碌してないってのは分かっていると思うが、全力で争わせてもらおうか」)
即席で作成したパッチ型の装置を身につける。気配や、影も隠すステルス機能のあるそれをつけ、誠司は盾を放棄する。
(「これが俺の戦い方だ。ズルいやら卑怯は褒め言葉ってな」)
海面を踏む。気配を消すように行けば、こちらに気がついた様子も無いままに長曽祢虎徹はマリリンと向き合っていた。
●問いかける者、穿つ者
「元より、貴様等に与える答えなど無い」
私は、と長曽祢虎徹は血濡れの身を揺らす。血溜まりが海面に一度止まり、落ちていく。
「長曽祢虎徹だ」
告げる言葉と共に踏み込みがあった。早い、とマリリンは思う。
「うん、最初から答えは期待してないけれどね。文明を有する人間としてはちゃんと会話も試みたいというところ」
タン、とスマホをタップする。ラムセスの黄金アンクが浮かびあがり、淡い金色がマリリンを包み込む。
「新選組は武器と融合したような形態の個体が多いけど、頭に刀が浮いているのはまた特徴的なビジュアルだよね、貴方」
「……」
ざ、と水を蹴る音が響く。その勢いに押されぬようにマリリンは距離を取る。粛清役としての自負を身に纏い、強化した身体は一足でマリリンの間合を踏んだ。
「来るよ!」
警戒を告げるようにイツカ・ユメ(いつかかなうゆめ・g02834)が声を上げる。バリアを前面へと展開しながら、少女は問うた。
「その見た目だとやっぱり会話はあまり好まない感じ?」
「さてな」
ひゅん、と繰り出されたのは蹴りだった。首元、折るように来たそれが金色のバリアにぶつかり――殺しきれなかった衝撃が、マリリンを襲う。
「――わ」
手が、痺れる感覚と共に一拍の後に軋むような痛みが来た。けど、それだけだ。手は動くし、スマホも落としてない。
「それなら……」
「落ちないか」
吐き出された息に、マリリンはもう一つアプリを起動する。痛みはあっても、意識はあって手は動くなら――。
「擬似外殻形成。疑似外殻、連続複製」
仕掛けるときだ。
スマホから淡い光が零れる。ジジ、ジ、と鈍く音が零れ――それは、実体を得る。
「証明開始」
大戦乱群蟲三国志のデータを基に擬似再現した巨大昆虫のデータが実体化されたのだ。召喚されたタガメの群れが、長曽祢虎徹に襲い掛かった。
「ッチ、面妖な」
刃を振るう。鋒が一匹を払おうとも次が来る。切り裂かれた体はぐらりと揺れ、蹈鞴を踏んだ一瞬、長曽祢虎徹が小さく呟く。
「あと一人は、どこだ」
頭となる部分には何も無い。だが、誰かを探すように揺れた一瞬を――その惑いを青年は見逃さない。
「さっさと終わらせる……!」
ガン、と重い一撃が、長曽祢虎徹の死角から叩き込まれた。は、と振り返った時には、電光警棒がバチバチと衝撃を送り込んでいた。
「……ッ貴様、姿を隠していたか」
「これが俺の戦い方だ」
ふ、と誠司は口の端を上げて告げる。身を隠し、狙う不意打ちは相手が自分の不在に気がついた、その瞬間だったのだ。ヒュ、と穿つ拳が来る。電光警棒で受けとめながら、誠司は顔を上げた。
「長曽祢虎徹」
「貴様……!」
刃のように鋭い殺気が、来た。続け様に来た拳に後に身を跳ばす。放棄した盾を拾いあげれば、痺れるような感覚と共に衝撃が誠司を襲った。
「――は」
だが、意識はある。この身は動く以上、凪いだ水面を足裏で掴む。顔を上げたのは、駆け抜ける風を感じたからだ。
「どっせーーーい!!!!!」
踏み込みと共に、羽ばたきがあった。一歩、進めた歩と共に男は前に出る。羽ばたきが二歩目を跳躍に変え――瞬発の踏み込みを以て、譲二は長曽祢虎徹の影に迫った。
「貴様……!」
その距離に長曽祢虎徹が、は、と顔を上げる。踏み込みは深く。先に影を踏んできた相手の手に収まっていた刀が下段に見える。
(「頭部の刀は今こそ奴の手元に収まってるが、最初は浮いてたのも事実だ」)
そのまま、単純に下からは来ない可能性もある。荒い踏み込みは、長曽祢虎徹にしては距離を詰め過ぎな――己を顧みない動きに見える。
(「それなら余計に、この一撃で決めるつもりだろう」)
それなら、と譲二は大包丁を持つ手を振りあげる。下段に見えていた刀が、上段に変わる。ふわりと浮くように、その手の中に無くとも掲げた手に辿り着いた刀を長曽祢虎徹が握った。
「ここで、断ち切る……!」
「っと、やっぱりな。トリッキーな妖刀だな」
ヒュン、と振り下ろす一撃が来た。一閃、斬り落とす衝撃に譲二は大包丁を振りあげる。両の手で支え、幅の広い刃で受け流せば、キィイン、と甲高い音と共に火花が散る。逸らした一撃が、譲二の髪を軽く浚い――肩口から胴を軽く斬る。血が飛沫き、だが、長曽祢虎徹の一閃は首を落とす為のものだったのだ。それを躱した今、好機は――こちらにある。
「こっちは対クロノヴェーダ軍事企業CCTSの社長が直々に贈ってくれた天然砥石で研ぎ澄ました大包丁だ」
刃が包丁の上を滑る。ぐ、と押しこもうとしてくる相手に、だが、譲二は大包丁ごと搗ち上げた。ギン、と鈍い音を響かせ、僅か、長曽祢虎徹の身が浮く。
「――ッ!」
「手入れ不行き届きのなまくらに負けるかよ!」
僅かに空いた間へと譲二は踏み込む。間合深く、影を踏む。男が手にしているのは大包丁だ。刀より間合は狭く、そして料理する男の包丁はよく研がれている。
――ギン、と振りあげる一刀が、大包丁による一撃が長曽祢虎徹の、その刀にぶつかった。ギ、ギギ、と鈍い音が響き、次の瞬間、キン、と堅く鋭い音と共に刀が欠け――肉厚の大包丁が長曽祢虎徹の肩口を裂いた。
「ぐ、ぁあ……ッの、私の刀を」
ぐらり、と長曽祢虎徹が身を揺らす。間合を取り直すように後に跳ぶ。
「……ッく、は。だが、貴様等の首を落とす。それで、命を果たす……!」
ひゅん、と向けられた欠けた刀が、妖しげな光を纏っていた。顔は無くとも、殺意に満ちた視線をイツカは感じていた。
「首を貰う、ですって?」
たん、と凪いだ海に足を落とす。真っ直ぐに響いたその声と共に、イツカは眼前の相手を見た。
「ざーんねん! 首を貰われるのはあなたの方だよ! 覚悟なさいっ!」
「ハ、覚悟。覚悟か、私には常にあり……今、貴様等に必要なものだ……!」
ゆらり、長曽祢虎徹は身を揺らす。血に染まった衣が重く揺れ、ざ、と波を蹴る音が耳に届いた。
「踏み込み、早いよ」
牽制の一撃と共に秋が告げる。その言葉に頷きながら、イツカは顔を上げた。相手がディアボロスを障害と認めて、全力で来てくれるのならば。
「こっちも全力で打ち破りにいかないとね」
息を吸う。迫る刃に、踏み込みにイツカは――歌う。歌うことを選ぶ。
(「……この島の人達の心に、わたしの歌は響かなかった。
この蝦夷の地に、わたしの歌は不要だと言われた」)
いつかどこかで聴いた歌を。旋律をなぞっていく。
「それでも。
管理された幸福じゃなくて、自分の夢を自分で掴む幸せを。
夢に破れた時に寄り添う歌のあたたかさを、希望を、この地の人達に知ってほしいから」
思い出のアルバムを捲るように、過去を思い起こさせる旋律は、苦い記憶を思い出させる。それでも、そう。それでも、と決めたのだ。過去の経験から、未来を切り開く一手を繰り出す為に。
「わたしはわたしのやり方で、もっと自由に。
夢を、希望を、愛を、この地で歌いたいのよ!」
旋律が、歌声が響く。空間を震わせる。踏み込む長曽祢虎徹の身体が傾ぐ。罅が入った刀が更に軋む、ハ、と吐きだした息と共に、荒い踏み込みがイツカの目に入った。
「ならば、私は私の役目を持って貴様等を斬り捨てる!」
ザン、と走る刀が肩口から切り落とすように来る。痛みと共に視界が歪み、ひゅ、と鳴りかけた喉をイツカは必死に抑えた。
「その自慢の刀でも、わたしの夢は、私の歌は、わたしの心は、絶対に斬ることは出来ないんだからね!」
どこを斬られようとも、めげないし、折れない。諦めるつもりだって無かったから。ぐ、と顔を上げる。真っ直ぐに見据えた先、顔があるだろう場所を見据えれば、僅かに息を飲む気配がする。
「諦めが悪い、か。悪くは無いが、仕留めさせて貰おう」
「その言葉、こちらが貰おう」
「刻限だね」
誠司が踏み込む。秋が穿つ風の刃が走り――その横を、マリリンの召喚したタガメが行く。
「ッチ、この間合、潰すつもりか」
「――あぁ」
悠然と告げる譲二の踏み込みは早い。さぁ、と軽やかな声と共に常香がシルクハットを振りあげる。
「華麗に勝利を刻みたいところですね」
「いつか叶う、夢はきっと叶う……懐かしい過去の思い出も、未来に進む力になるよ!」
華麗なマジックショーと共に、イツカの歌声が響く。
「ッくぁああ……!
旋律に飲み込まれ、包まれるようにぐらり、と長曽祢虎徹は身を揺らし――刃が、落ちる。その手から。
「――私、は……申し訳ありません。主命を、はた、せ……ず……」
刀の纏っていた不気味な光が消え、長曽祢虎徹は波打ち際で崩れ落ち、飲み込まれるようにして消えた。
●再び、天売島へ
剣戟の音が止み、遠く吹き抜ける風の音が戦いの終わりをディアボロス達に告げていた。荒れた波打ち際から、一行は天売島を見る。
――上陸の時が、訪れようとしていた。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【アイテムポケット】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
【モブオーラ】LV1が発生!
【書物解読】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
【操作会得】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【ドレイン】LV2が発生!
【フィニッシュ】LV1が発生!
【命中アップ】がLV5(最大)になった!
【ダメージアップ】LV1が発生!
●再び、天売の島へ
波打ち際に静寂が戻ってきていた。敵の哨戒部隊を倒し、訪れた静けさの中——それでも、警戒を忘れことなくディアボロス達は辺りを見渡した。本格的な上陸と調査はこれからとなる。
「敵の防衛施設がある場合は、敵に見付からない範囲で情報を集めるって、話だな。今回の調査は」
「あぁ。警備の方は、どうにかはできたが何があるかは分からないからな」
戴冠の戦が始まった今、ディヴィジョン境界である天売島の状況を確認するための調査として決まったのがこの作戦だ。
「何があるか色々考えながらだよね」
ディアボロスの1人が告げる。元々あったという施設や、そもそも島の状況もある。
「哨戒部隊がいた以上、正直いい予感はしないけど……」
ほう、と溜息をついたディアボロスの横、でもまずは、ともう一人のディアボロスが告げた。
「上陸よね。……この、ちょっとだけ足はついちゃってるんだけど」
「そこはそこ。ショーの始まりと致しましょう」
笑みを浮かべたもう一人が告げる。
さぁ、再び訪れた天売島を調べる時だ。
✦・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ・✦
ご参加頂きありがとうございます。
秋月諒です。
①天売島上陸調査 となります。
こちらは前後半でのプレイングの受付となります。
★まず『上陸』ターンからの受付となります。
色々想定しながら上陸し→上陸時の情報(リプレイ)を得てから『上陸後の追加調査』だー! となります。
調査後は撤退となります。
👑7 のため、上陸ターンの採用は一名の予定です。
●プレイングについて
一定数集まってから、判定します。
先着順ではありません。
*技能は、パラドクスを越えた効果は発揮しません。
*必要数をどかんと大きく超えた採用はありません。予めご了承ください。
*パラドクスの説明文章やアイテム説明文章を過大解釈したなんかすごい行動は、不採用でお返しする可能性がございます。
各種行動は、プレイングで御願いします。
どの効果もあれば良い、というよりはどう使うかが重要となってくるかと。
それでは皆様、御武運を
✦・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ・✦
ご参加ありがとうございます。
秋月諒です。
上陸プレイング確認期間:〜28日朝に届く分まで
✦・┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈ ・✦
八雲・譲二
※アドリブ歓迎
いよいよだな。残留効果が潤沢にあって助かるぜ
【光学迷彩】を展開し、迷彩模様をかぶりつつ姿勢を低くして海岸線から素早く移動
前回調査に来た時の事を思い出しつつ、ぱっと見の光景で変化を感じる箇所があるか【完全視界】を使って見回してみる
アルタン・ウルクを警戒して防壁が増えている等あれば、遠目からでもわかる筈だ
逆に前回から変化がないなら、ざっと見えるものは宿舎と管理棟、工場、それに運動場と畑あたりの筈か…
遠巻きに見える人影があるかどうかも確認し、誰かいれば一旦その方向からは離れる
後続の仲間と【パラドクス通信】でこまめに情報共有しつつ施設群の方へ慎重に前進
手近な建物の陰を伝って進み、発見されにくそうな狭い路地等に一旦隠れよう
ここらで一般人相手ならある程度誤魔化せるように、【アイテムポケット】から新選組の羽織を取り出し着用しておく
前回の調査で収容者に紛れ体験した1日のスケジュールを思い出しつつ、現在時刻も確認しとこう
目視確認できた建物を挙げ、調査先を考える
さて、どうする。手分けするか?
●静寂は尾をひいて
「……さて」
言の葉を舌の上に溶かすようにして、男は顔を上げた。波打ち際に見付けた岩に背を預け、一拍。二度目の息を落とし、男は迷彩を纏った手を緩く握った。
「いよいよだな。残留効果が潤沢にあって助かるぜ」
岩陰に身を潜めるように姿勢を低くしながら、八雲・譲二(武闘派カフェマスター・g08603)は砂浜を蹴った。足早に海岸線を移動していけば、前回調査しに来た時に見たような海岸線に出会う。
「それなら、このまま移動していけば良いはずだが……」
一度、譲二は瞳を伏せる。意識を視覚へと集中させるようにして、ゆっくりと瞳を開けた。
「アルタン・ウルクを警戒して防壁が増えている等あれば、遠目からでもわかる筈だって思ったんだが……こいつはまた、変化はなしか?」
完全視界——霧でさえこの目で見える世界を邪魔することはないその状況で、防壁らしいものは無く、ただ遠くにあの日見たのと変わらない管理棟があった。
「明かりは無し、今の時間帯を考えりゃつけてないってのもあるだろうが」
日中であれば不要と向こうの間隔でなるかどうか。一歩、二歩と慎重に歩を進め、岩陰に身を隠す。
(「ざっと見えるものは宿舎と管理棟、工場、それに運動場と畑あたりの筈か……」)
予想通り、宿舎の壁が目に付く。運動場には人がいないが、時間的に今は走らせてない可能性もある。だが——……。
「妙に静かだな。人影もない」
前の調査で収容者に紛れて体験したスケジュールを思い出せば、誰か移動くらいしていても良いはずだ。
「……あれは、工場か」
ぱっと見た限り変化は無いが、そう見る限り変化は無いが——違和感はある。
(「前に見た時との違いか?」)
工場が増えたという様子は無い。外壁も変わらないが——……。
「ま、考え込む前に着換えだな」
新選組の羽織を用意しておいたのだ。
アイテムポケットから取り出して、袖を通す。 一般人相手ならこれである程度は誤魔化せるだろう。
「さてだ。何が妙かってことだが……」
慎重に足を進めていく。妙だと思うその感覚が、誤解だとはどうしても譲二には思えなかった。何かはある。問題は——。
「それが何なのか、だが……、ん?」
考えながら顔を上げたところで、チカ、と何かが光った。
「誰かいるのか? ……、いや、あれは……窓硝子が、割れてる?」
遠目に見えた窓の硝子が割れていたのだ。中で何があったのか。
「……」
身を潜めるようにして、譲二は管理棟の位置を確認する。鋭い視線を向けた先で譲二が見付けたのは同じように、陽の光を反射する窓硝子だ。
「あそこまで割れてるのか?」
管理棟は、新選組が詰めていた場所だ。その場所の窓硝子が割れ、運動場に人の気配も無く——いや、どこもかしこも妙に静かだ。
「嫌な気がするな」
譲二は静かに息をひとつ落とすと、さっと近場の建物へと移動した。何棟か立ち並ぶこれは、工場か。
「……」
掌で壁に触れる。何か振動が伝わってくる様子はない。戦いの気配は無く、だが、慎重に進めようとした一歩を、譲二は止めた。
「窓硝子の破片がこっち側にある、か」
チカ、とそれは光る。さっき見たのと同じように。
「つまり、中から割ったってか?」
建物と建物の間にある、狭い通路だ。殆ど人が通っていないだろうその場所に窓硝子の破片が落ちていたのだ。一枚や二枚ではない。随分と割ったのか、或いは割れたのか。
「中で何かあったか、ってやつだな。……このあたりなら、中も見えるか?」
念の為、硝子は踏まないように慎重に足を進める。窓硝子が割れている、ということは中も見える筈だ。漸く見付けた窓から中を覗き込めばそこに見えたのは、荒らされた部屋の様子だった。
「こいつは……、この工場は放棄したのか?」
或いは、他の施設も同じなのか。機械類の姿はなく、部屋の端に見える大型の機械は、壁に打ち付けられ、修復など不可能なほど破壊されている。
「持ち運ぶにも無理だったもんは、破壊しているってところか」
窓硝子が割れ、破片が外に落ちていたのは中側でこれが起きていたからだろう。資料が残されている様子もない。
「他も似たような状況だろうな……、施設は前の調査で見たまま残されてるみたいだが」
中はぐちゃぐちゃだ。溜息をついて、譲二は顔を上げた。
「さて、どうする。手分けするか?」
——上陸した天売島では、過去にあった施設が破棄されている。資料や機械類は持ち運ばれ、動かせないものは破壊されていた。<上陸時天売島の情報を入手>
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【光学迷彩】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV3になった!
●詳細な調査へ
「さて、どうする。手分けするか?」
施設は見た限り、前の調査で見付けたやつがそのまま残されてるようだな、と譲二は言った。
「だがまぁ、中は破棄されてて荒れてる。工場でこの感じだ。他も似たようなものだろう」
その状況で、どこをどう探すか。
或いは、何を探すか。
——さぁ、何から始めようか。
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ご参加ありがとうございます。
秋月諒です。
上陸後のプレイング確認:10月3日朝に届く分まで。
*3日より前に流れないようにお願い致します。
👑7 で、上陸分の採用もありますので、上陸後調査の採用数はそんな感じです。
調査は複数の調査すると言うよりは、これ、とひとつに絞る方がお勧めです。
それでは皆様御武運を。
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イツカ・ユメ
以前あった施設を破棄して、情報を残さないように機械等を破壊して……じゃあ、幸福度矯正施設はもう必要無くなった、ってこと?
でも、必要の無い場所にわざわざ警備は置かないよね?
この島にはまだ何かの役割があるのかしら?
目立たないように【光学迷彩】を活用して、以前あった宿舎の方に行ってみるね。
あの時には、幸福度の矯正に来ていた人達がいたけれども、今はどうなのかしら?以前いた人たちの行方も、可能ならば調べたいけれども……
一先ず様子を確認して、人がいないようならこっそり侵入して宿舎内部を調べるよ。
【完全視界】もあるから、暗くても大丈夫なのは助かるね。
物陰や隙間とかに、ここにいた一般人の遺留品が無いか探してみるよ。
視覚以外にも、嗅覚や聴覚も使って小さな違和感も見逃さないようにするよ。
あとは床や天井を叩いてみて、
何か空間があるみたいな……他と音が違う箇所があったら、ずどんと【一刀両断】してみるよ!
ほら、床下とか屋根裏とかって、秘密を隠すのにぴったりじゃない?
得た情報は【パラドクス通信】で皆と共有するね。
八雲・譲二
※アドリブ連携歓迎
前回来た時に稼働していた施設は、悉く破壊されている…
だが居残りの新選組もいた。ならば先程の連中が最近まで使っていた部屋がどこかしらにはある筈
となるとやはり管理棟は見ておこう
最初は外から管理棟を各方向から見上げる
無事な窓の部屋、または明かりが付いている部屋があれば何階のどこらへんかメモしよう
それにしても施設の放棄にあたり資料や端末を回収するのはわかるが、動かせない物を壊したり窓ガラスまで割ってく必要あるか?
確かにディアボロスを警戒するなら立ち入り禁止看板では意味ないが…
つまり持ち去れなかった何かの中に、重要な物が紛れてた可能性もある?
外観を確認したら中へ。
新選組残党がいる可能性を警戒し【光学迷彩】は使い続けつつ、先程の確認で気になる部屋があればまずそこへ。
特になかったなら仕方ない、物音に注意しつつざっくりクリアリングしてこう
事務室や資料室だったと思しき部屋があれば、忘れ物がないか確認したい
連中が使っていたと思しき部屋があれば、残された物から情報を得られないか集中して捜索だ
●宿舎にて
「以前あった施設を破棄して、情報を残さないように機械等を破壊して……じゃあ、幸福度矯正施設はもう必要無くなった、ってこと?」
でも、とイツカ・ユメ(いつかかなうゆめ・g02834)は呟く。空を撫でるように伸ばした指先から、ふわりと光学迷彩を纏う。
「必要の無い場所にわざわざ警備は置かないよね?」
この島にはまだ何かの役割があるのかしら?
小さく呟き落とした言葉が、風に揺れた。答えを得るためには、まず目の前の施設に潜り込む必要があるだろう。
「ここが宿舎で……、あの時には、幸福度の矯正に来ていた人達がいたけれども、今はどうなのかしら?」
宿舎の入り口を抜け、ガランとした廊下を見る。落とされた瓦礫を踏まないように、そうっと足を進めるとイツカは破壊された棚の影に身を隠した。
(「これだけ荒れているし、誰かが居るなら足音か何か音はするはずだよね」)
たっぷり十秒、気配を伺い――そうして返ってきた静寂に、イツカは息を吸う。誰かがいる気配は無い。
「……」
こっそりと宿舎の中へと忍び混めば、外よりは薄暗い施設内が目に映る。一度伏せた瞳をゆっくりと開けば完全視界の加護が、暗がりによる邪魔を払った。
「この棚って普通に倒したみたいだね。ここの液晶は壊してあるし、この感じ窓硝子が割れてたのは、持ち運べなさそうな機材を倒して壊していたからみたい」
それに、とイツカは考えるようにして部屋の中を見渡した。
「液晶のこの傷は、刀か銃……だね。新選組が自分達で廃棄したんだよね」
少なくともアルタン・ウルクの仕業では無い。ぽっかりと空いた空間や、壁に残されていた跡を思えば、いくつかの機材は運び出し、残されたものは破壊した。完膚なきに破壊したのではない。これは――……。
「後から来て、誰かが調べることが出来ないように、だよね。明らかにディアボロスを警戒してる」
どうしてか、と考えた時、思い付くのはひとつだ。
「天売島は新選組にとってみれば、ディアボロスが一度潜入した島だから」
だから、施設を破壊したのだろう。後からディアボロスが来ても、何も調べられないように。
(「ディアボロスを警戒して哨戒部隊が展開しているという情報は、時先案内人からもあったよね」)
荒れた部屋の中を見る。液晶もテレビも、医療機器も全て、核となる部分が壊されている。間違っても、情報を抜き出すことなど出来ないように。
「……うん。やっぱり新選組は天売島を守るためにいたんじゃなくて、ディアボロスを警戒して配備されてたんだね」
でも、そうだとしたらここにいた一般人はどうなったのだろうか。
「……次の部屋を」
廊下に出れば、施設を破棄したときに出た機材の汚れや、黴のような臭いがする。古い建物にでも入ったかのような感覚は、嘗ての幸福度矯正施設からは想像もつかない。
「この部屋は、ベッドとかはそのままなんだね」
機械類が無い分、荒れた様子は少ない。トン、と触れた天井にも違和感は無く――何かを隠している様子は無さそうだ。
「床下とか屋根裏とかって、秘密を隠すのにぴったりじゃない? って思っていたけれど……ん? あれって……」
トン、と床に触れた時だった。ベッドの下から何からふわりと舞い上がるようにして出て来た。
「服の……端? それに、靴?」
片方だけの靴に、服の端はどこかに引っかけたのだろうか。ほつれた糸が残されていた。
「部屋から出る時に引っかけたのかな? でも、幸福度矯正施設にいた人達がそんなことをするかは……」
もしかして、とイツカは顔を上げる。
「ここの人達がそうしたんじゃなくて、他の人が、新選組がしたなら……」
一般人は、ここで殺されたということは無いのだろう。宿舎の中、どの部屋を調べても殺害に至る痕跡も、血の跡も、骸も見付からなかった。
「けれど、どこかに連れて行かれた痕跡はあるから……、たぶん、他の施設に移されたみたいだね」
嫌な気が無くなった訳じゃ無い。それでもどうか、無事でいてほしいと祈るようにイツカは主を失った部屋の戸に触れた。
●管理棟にて
「――成る程な。こちらも、管理棟に着いたところだ」
パラドクス通信でイツカから情報を受けとりながら、八雲・譲二(武闘派カフェマスター・g08603)は管理棟を見上げていた。
「前回来た時に稼働していた施設は、悉く破壊されている……だが居残りの新選組もいた。ならば先程の連中が最近まで使っていた部屋がどこかしらにはある筈」
イツカからのパラドクス通信によれば、新選組はディアボロスを警戒してこの島にいたのは確実だという。
「パソコンに機械機器も、後の調査が出来ないように破壊して放棄してたってなりゃ、意識はされてるんだな」
見上げた管理棟には窓の無事な階もあるが、明かりはどこも消えている。
「施設の放棄にあたり資料や端末を回収するのはわかるが、動かせない物を壊したりしていく必要あるか? って思ったが……ディアボロスが調査できないようにってなれば、やるか」
それにしても派手ではある。
窓硝子は、あれは結果的に割れたのだろう。動かせない大物を——機械を壊す為に斬りつけた結果窓にぶつかって割れたという説が強いというのは、通信で貰った情報からも明らかだ。
「確かにディアボロスを警戒するなら立ち入り禁止看板では意味ないが……」
ひとつ、息を零して譲二は光学迷彩を纏う。残党を警戒しながら踏み込んだ施設の中、気になったのは二階にある窓硝子の割られてはいない部屋だった。
「……なるほどな。ここは資料室か」
残されているのは空っぽの書棚だ。資料は全て持ち去られたのだろう。だから、この部屋は荒れず、窓も割れてはいない。他にも書棚の残された部屋はあったが、書類は全て無くなっていた。施設を放棄する際に、新選組が持っていったのだろう。
「事務室のパソコン類は持ち出され、大型の液晶は破壊済、か。持ち去られなかった何かの中に、重要な物があるかとも思ったが……特に無さそうだな」
単純に重いから運ばなかったのだろう。
無駄な破壊は無い。機械機器は核となる部分を明確に破壊していて効率的だ。この方法で壊されれば、修理も出来ない。
「新選組による施設の破壊に、含むところは無さそうだな」
譲二は残された紙片に手を伸ばす。一枚、二枚、バラバラになってはいるが、つなぎあわせれば幾つか文字は見えてきた。
「天売島の施設は、重要度が低かったみたいだな。だから、ディアボロスが接触したから放棄の選択がされた、か」
残された紙は廃棄リストだ。細かく書き込まれている様子は無いが大きく引かれた線で何が書かれていたかは分からない。だが、持ち運ぶものと、破壊していくものは明確に分けていたようだ。
「こっちは……地図か。このデカいマークは、栄養バーの自作設備があった場所だな」
地図を指先で辿る。インクが他の紙に比べて真新しい色をしていた。哨戒部隊が使っていたのだろう。
「この手の特殊な施設は、完全に破壊していった……か。哨戒部隊がこのあたりを確認してんのは、ディアボロスの侵入を警戒してってことだな」
どこから入ってくるか分からないと思われているのか。まぁ、海からは来たけどな、とそう思いながら地図へと目を落として――そこで、譲二は手を止めた。指先に妙な感触がある。転がっていた鉛筆で、ざっとそのざらつきの上を滑らせれば見えてきたのは数字だ。
「これは……時間? まさか、定期連絡か」
哨戒部隊が使っていたであろう地図と、そこに書かれた時間――彼らは定期的に連絡を取っていたのだ。
「新選組が警戒して、天売島に部隊を配置してたっていうなら……その部隊を撃破した今、そいつを指示した連中はどっかで気がつく筈だよな?」
哨戒部隊からの連絡が途絶えた、と。
なにせ、相手はディアボロスが侵入し、接触したという理由でこの島の施設を放棄した上で、再侵入を警戒していたのだ。
「……長居は出来ないな」
パラドクス通信を仲間に繋げる。危険を告げながら、譲二は手に入れた情報を頭に叩き込んでいった。
天売島の現状、そして一般人の行方。
放棄された施設と、完全に破壊された施設。
天売島を守るためではなく、ディアボロスの侵入を警戒して配備されていた哨戒部隊。
彼らが連絡を取っていた誰か。
手に入れた情報と共に、ディアボロス達は天売島を後にした。この全てを、明日へと繋げるために。
成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【飛翔】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【ガードアップ】LV1が発生!