1793年、ベルサイユ改修作戦

 ディアボロスの活躍により、マリー・アントワネットを処刑台から救出する事に成功しました。
 しかし、マリー王妃を1802年の時代に連れてくることは出来ず、マリー王妃は、1793年のベルサイユ宮殿に取り残されてしまいました。

 しかし、悪い事ばかりではありません。
 1793年のベルサイユ……マリー王妃の元に向かうパラドクストレインが出現したのです。
 これからは、ディアボロスがパラドクストレインで直接、マリー王妃の元に向かうことが出来、1793年で起こっている事件に対処する事が可能になるでしょう。

 しかし、まずは、マリー王妃が残された『ベルサイユ宮殿』を、クロノヴェーダの襲撃に備えて城塞化し、かつ、周囲のクロノヴェーダの駆逐を行う必要があります。

 ベルサイユの城塞化とベルサイユ近郊の安全が確保されたら、マリー王妃からの情報を元にして、1793年のフランスの謎に挑む事になります。
 皆さん、どうぞ、よろしくお願いします。

儚き薔薇に鉄壁を(作者 棟方ろか
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#断頭革命グランダルメ  #1793年、ベルサイユ改修作戦  #1793年  #疑似ディヴィジョン 


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「何をもたもたしているのです! 絶対にこの時代に居るのです、急ぎなさい!」
 静まった町並みに、張りのある少女の声が鳴り響く。
 なめらかな陽射しに染められた場所ながら、少女リュネットの機嫌は頗る悪い。つま先でトントンと地を叩き、愛らしい顔を歪ませていく。そんな少女の姿をした淫魔の周りを、忙しく駆け回るのはしかし、彼女の機嫌を損ねる一方のオートマタたち。
 カシャカシャと甲高い音を撒き散らしながら、かれらは草を掻き分け、建造物や瓦礫の裏側を覗き込み、鼠の穴も逃さず確かめていった。けれど成果は示せていない。だからリュネットの眉間にもメキメキと谷が築かれつつあるのだ。
「こんなに時間をかけるなんて……ダブー元帥はお怒りですよ!」
 カシャキシャカチコチ。
 金属音で応えるかのようにリュネットへ敬礼をし、征服人形の群れは作業を再開した。
 どうして、と呟くリュネットの感情は、行き場なく煮えていく。
「逃げられる筈はないのに。何処に隠れているの……ふふ、ふ」
 やがて彼女の肩は震え出す。焦りか、怒りか、高ぶった感情がリュネットを笑わせて。
「早く見つけるのですお前たち! そしたら私が……」
 あの子を、たぁっぷり可愛がってやるんだから。

●発車前
「マリー・アントワネット救出作戦、お疲れ様だよ! やあ素晴らしいねぇ!」
 木庭・国男(デーモンの魔創機士・g03330)の声色は、作戦成功の喜びに満ちている。
「その後のマリー王妃の所在から話すとしよう。彼女は1793年に取り残されたままだよ」
 別の時代へ連れ出すことは叶わなかったが、得たものもある。
 パラドクストレインがその1793年、マリー・アントワネットのいるベルサイユ宮殿に、直接移動できるようになったのだ。
「ただねー。クロノヴェーダがマリー王妃を血眼になって探してるんだよ」
「なら、彼女をクロノヴェーダの魔の手から守らないと……!」
「そゆこと! さすが話が早くて助かるねぇ」
 ディアボロスの戦友たちを頼もしげに見た後、うんうんと頷いて国男は話を続ける。

「始めにして欲しいのは、ベルサイユ宮殿の防衛の強化さ」
 マリー・アントワネットが逃げ延びた場所でもある。もしも宮殿が襲撃された際、僅かでも時間を稼げれば、マリー王妃の元へ敵が到達するのを遅らせることに繋がるだろう。
 あらゆる防御の手段を用いて、宮殿の守りを固めてほしいと国男は告げた。
 ただし、『1793年代の技術力で絶対に不可能なもの』を設けた場合、ディヴィジョンの排斥力によって破壊されてしまうため、意味を成さない。その点だけ注意する必要がある。
「あとね、庭園も宮殿も、時空の歪みで結構損傷しちゃってるんだよねぇ」
 既に時空の歪みも消えたとはいえ、穴だらけ――と言うと風通しが良すぎる印象だが、そう例えてもおかしくない状態だ。宮殿の修復作業も要る。
「マリーさんの警備は? どうします?」
「身辺警護は気にしなくていいんだ。その分、拠点防御力の上昇をお願いするよ!」
 敵が周辺で探索していることも考えると、宮殿の城塞化にも時間はかけていられない。
 皆でさくっと行い、次へ進むのが良い。何故なら、その『次の手』というのが。
「守備をどうにかしたら、近辺でうろうろしてるクロノヴェーダを全部やっつけておくれ」
 マリー・アントワネット捜索部隊は、ベルサイユ宮殿の外にいる。
 宮殿へ近づかれる前に、殲滅してしまおう。

「いやあ1793年に直接移動できるようになって良かったよ、ホントありがとね」
 すべては、ディアボロスがマリー・アントワネットを処刑台から救い出し、クロノヴェーダによる大儀式を台無しにしたからだ。
 だからこそクロノヴェーダも焦り、必死に彼女を探しているわけで。
「今度も挫いてやろうじゃあないか! さあゆこう、1793年のベルサイユ宮殿へ!」


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●残留効果

 残留効果は、このシナリオに参加する全てのディアボロスが活用できます。
効果1
効果LV
解説
【飛翔】
1
周囲が、ディアボロスが飛行できる世界に変わる。飛行時は「効果LV×50m」までの高さを、最高時速「効果LV×90km」で移動できる。【怪力無双】3LVまで併用可能。
※飛行中は非常に目立つ為、多数のクロノヴェーダが警戒中の地域では、集中攻撃される危険がある。
【怪力無双】
1
周囲が、ディアボロスが怪力を発揮する世界に変わり、「効果LV×3トン」までの物品を持ち上げて運搬可能になる(ただし移動を伴う残留効果は特記なき限り併用できない)。
【強運の加護】
1
幸運の加護により、周囲が黄金に輝きだす。運以外の要素が絡まない行動において、ディアボロスに悪い結果が出る可能性が「効果LVごとに半減」する。
【一刀両断】
1
意志が刃として具現化する世界となり、ディアボロスが24時間に「効果LV×1回」だけ、建造物の薄い壁や扉などの斬りやすい部分を、一撃で切断できるようになる。
【腐食】
1
周囲が腐食の霧に包まれる。霧はディアボロスが指定した「効果LV×10kg」の物品(生物やクロノ・オブジェクトは不可)だけを急激に腐食させていく。
【セルフクラフト】
1
周囲が、ディアボロスが、一辺が1mの「コンクリートの立方体」を最大「効果LV×1個」まで組み合わせた壁を出現させられる世界に変わる。
【迷宮化】
1
洞窟や家屋、砦などの内部を迷宮に変化させる。迷宮化により、敵は探索や突破に必要な時間が「効果LV倍」される。
【冷気の支配者】
2
ディアボロスが冷気を自在に操る世界になり、「効果LV×1km半径内」の気温を、最大で「効果LV×10度」低下可能になる(解除すると気温は元に戻る)。ディアボロスが望む場合、クロノヴェーダ種族「アルタン・ウルク」の移動速度を「効果LV×10%」低下させると共に、「アルタン・ウルク」以外の生物に気温の低下による影響を及ぼさない。
【植物活性】
1
周囲が、ディアボロスが指定した通常の植物が「効果LV×20倍」の速度で成長し、成長に光や水、栄養を必要としない世界に変わる。
【建造物分解】
1
周囲の建造物が、ディアボロスが望めば1分間に「効果LV×1トン」まで分解され、利用可能な資源に変化するようになる。同意しない人間がいる建造物は分解されない。

効果2

【命中アップ】LV1 / 【ダメージアップ】LV3 / 【ガードアップ】LV3 / 【反撃アップ】LV1 / 【リザレクション】LV1 / 【ロストエナジー】LV2

●マスターより

棟方ろか
 お世話になっております。棟方ろかです。
 なお、マリー・アントワネットと会うことはできません。ご了承下さいませ。

●最終目標
 リュネット(アヴァタール級)の撃破

●選択肢の補足
①ベルサイユ城塞の建設
 オープニングにございます通り、防御力を高めましょう!

②👾巡回警備のトループス『征服人形』
 マリー捜索部隊です。

③👿アヴァタール級との決戦『眼鏡っ娘淫魔・リュネット』(攻略必須!)
 ボスとの戦闘。撃破すると、このシナリオは攻略完了となります。

 それでは、いってらっしゃいませ!
110

このシナリオは完結しました。


『相談所』のルール
 このシナリオについて相談するための掲示板です。
 既にプレイングを採用されたか、挑戦中の人だけ発言できます。
 相談所は、シナリオの完成から3日後の朝8:30まで利用できます。


発言期間は終了しました。


リプレイ


黒野・茉莉奈
……確かにこれはちょっと風通しが良すぎるね。
風以外にも良くないのがわんさか入ってきそうだ。

じゃあ、作業を始めようか。
まずは宮殿の周囲に壁を作るところからかな。
……といっても、私は力仕事は苦手だからね。
丁度使えそうなパラドクスもあるし、少々横着させてもらうよ。

『一夜城』で即席の城壁を建設
【セルフクラフト】もあるから、あとで壁を強化するのに使えそうだ。


アリス・セラフィハート
アドリブや連携等歓迎です

※心情
マリーさんは
今はベルサイユ宮殿に…
ひとまずは
ご無事であってよかったです…
でも、安心ばかりも
していられないですね…

『クロノヴェーダさん達の襲撃に備えて、この宮殿を少しでも
強化しなきゃです…』

※行動
私は【迷宮化】を使って
仲間の方が
ご用意されている資材を
使わせて頂いたり
宮殿の周辺の
修繕のしようがない建設物
岩場や森林などの自然物を
『迷宮』にして
宮殿や
パラドクストレインに
敵が容易に
近付けない様にします

また
外壁等を
クロノヴェーダさんが
登ってくる事も考えて
外壁等自体も迷宮化し
仲間の方が作って下さった
新しい城壁や
仲間の方の策と併用して
トラップ的な壁として
仕立てたりする事も
行います


「……確かにこれはちょっと風通しが良すぎるね」
 宝石めいたまなこを眇めて、黒野・茉莉奈(サキュバスのレジェンドウィザード・g02229)が吐息を零す。傍らではアリス・セラフィハート(不思議の国の天司姫アリス・g00270)がこくんと頷き、あどけない眼差しでベルサイユ宮殿を仰ぎ見ていた。
「はい……こんなに、穴ぼこだらけ……だなんて……」
 遥かな威容を誇る建造物なのに、時空の歪みに侵されたことで物悲しさが際立っている。
 茉莉奈はアリスと目の高さを合わせて、薄く微笑んだ。
「風以外の良くないのがわんさか入ってこないよう、努めようか」
「が、がんばりましょう……っ」
 うっそりと眦を和らげた茉莉奈に連ねて、アリスも意欲を拳へきゅっと握り込んだ。
 こうして、ディアボロスによるベルサイユ宮殿城塞化計画は施工される。
 マリー・アントワネットと呼ばれるかの王妃を、悪の手から守るために。

 珠玉を連ね渡したかのように美しく彩られていた宮殿は、その名残を多分に見せながらも、今はひっそりと静まり返っている。ひと気の無さも然ることながら、やはり崩れた箇所の多い有様が、そんな雰囲気をより強く醸し出しているのだろう。宮殿も庭園も、かつての栄華を失ったかのように色褪せていた。
 一通り担当区域の状態を確かめた茉莉奈は、ふむ、と唸りながら顎へ指を添える。
「穴を全部塞ぐには、手数と……何より時間が足らないね」
 そこかしこの穴から寒がる声が聞こえる。壁も柱も、風が通るたび物言わんばかりに生きているように茉莉奈には感じた。同じく現状を見て回っていたアリスも、転がる瓦礫や破片を集めながら、首肯する。
 資材と呼べるものは確かにあるが、守備を固め切るには明らかに時間が少なすぎる。
「どこから……手をつけていきましょうか……」
 くるくると右へ左へアリスの眼差しが泳ぐ一方、茉莉奈が歩み出して。
「さて、少々横着させてもらうよ」 
 茉莉奈が築城するのは一夜城。暗愁漂う宮殿の空気をガラリと一変させるかのように、彼女の興した城壁は、朽ちかけた建物の壁の前に聳え立つ。囲うように壁がクラフトされていく様を目撃して、わあ、とアリスが控えめに手を叩く。
「……大きいですね……それに、表面も……きれい……!」
「まあね。お安いご用だ」
 ふふ、と吐息混じりに笑った茉莉奈に続いて、アリスも意気込みを発する。
「私も、宮殿に近づかせないよう……してみせます」
 言い終えるやひとつ深呼吸をして、アリスが織り上げたのは鏡と薔薇の迷宮。ベルサイユ宮殿が醸し出す気を取り戻すかのような壮麗なる光景が、場を満たしていった。修繕の困難な建物だろうと、屋内は瞬く間に迷宮と化す。
 そしてあらゆる色彩を写し出す鏡の迷宮には――マリー・アントワネットが愛したとされる薔薇も咲き誇った。
(「マリーさん……ご無事であってよかったです……でも、だからこそ……」)
 安心してばかりもいられない。
 だから少しでも支えになればと、アリスの想いが花開く。鏡と薔薇はすぐに消えてしまうけれど、迷宮となった建物はすべて、マリー・アントワネットへ迫る敵勢の時間を狂わせてくれるはず。
「元の宮殿も、庭園も、もっとずっと美しかったんだろうね」
 こんな風に、と呟きつつ茉莉奈は消えゆく薔薇の残滓を目で追った。
 今となっては、その面影から想像するばかりだけれど。
 アリスも顎を引き、マリー王妃を捜索して回っているであろう敵の存在を、今いちど思考へ寄せる。
「これで……クロノヴェーダさんの襲撃にも、対応できますよね……」
「そうだね。じゃあ出来得る限り、残り時間も使おうか」
 ベルサイユ宮殿が安全圏になれば、ディアボロスの仲間たちも動きやすくなる。
「そうしたら、この敷地を汚す存在を掃除してこないとね」
 茉莉奈が口端をそっと引き上げて、そう囁いた。
 ベルサイユ宮殿はこうして、城塞への道を辿る。強固なる守りに後を任せて、ディアボロスが次に成すべきは――周囲でマリー・アントワネットを探しているクロノヴェーダの殲滅だ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【セルフクラフト】LV1が発生!
【迷宮化】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!

フェリシア・セイアッド
【AC】
王妃様がご無事で本当に良かった
ほっと息を吐いた後 伏せていた瞳を上げる
歴史を、人の歩みを 勝手に捻じ曲げていいはずがない
そのためにも がんばらなくちゃ

あなたたちが かくれんぼの鬼なのね?
でも駄目よ 王妃様は探させないわ
精一杯腕を広げて通せんぼ
前に出てきたレインに目をぱちくりした後小さく笑う
…ありがとう でも、大丈夫
レインこそ無理しないで
「聖花光臨」を使用
クロノヴェーダへの攻撃と共に、植物活性で敵の視界阻害
接近していく味方の足場や、宮殿の補強になればいい
自分は敵からよく見える位置に立つ
少し怖いけど大丈夫
瞬く間に敵との距離を詰めるレインを見て笑顔
私はひとりじゃないもの


レイン・フォレスト
【AC】
王妃が無事だったのは良かったけどまだ終わりじゃないしね
うん、もう少し頑張ろう

意気込むフィリアの頭をポンと叩き前へ出る
フィリアの言葉に無意識に庇うような位置にいたことに苦笑
ごめん、別にフィリアが弱いと思ってる訳じゃないんだけど

少し考え

どっちにしても僕は前に出て戦うスタイルだからさ、たまたまと言う事で
無理はするかもしれないけど無茶はしないようにするよ
うっすら笑ってフィリアから少し離れる
彼女が敵を引き付けるというのなら僕は敵が到達する前に片付ければ良い

つかず離れずの位置から敵へヒットアンドウエイを繰り返し
フリージングミサイルで攻撃
敵の攻撃は回避
回避した時にフィリアに当たらない位置取りを心がけ


 磨かれた真鍮は、表情もなく生きる者を映し込む。たとえ虫一匹、鼠一匹が通ろうともかれらの目をかい潜って逃げることは叶わない。
 そんなかれらが探している存在こそ、かの王妃マリー・アントワネット。
 ディアボロスたちが救い出し、今は近くのベルサイユ宮殿で身を潜めている存在だ。
「しっかりクリアしよう。まだ終わりじゃないしね」
 闘気を纏いながら、レイン・フォレスト(冷気の拳使い・g01528)がフェリシア・セイアッド(青晶花の星唄い・g00918)へそう囁けば。
「ええ。それにしても……王妃様がご無事で、本当によかった……」
 ほ、と温かく吐いた安堵をひとつ、そこに残してフェリシアは顔をもたげる。俯いてばかりでは、瞼を閉ざしてばかりでは、今から立ち向かおうとしている陣営を捉えることもできない。だから意気を飲み込んで。
「あなたたちが、かくれんぼの鬼なのね?」
 ふわりと佇むフェリシアの声は、この上なくまろい。
 ガシャガシャと耳障りな音を散らして、自動人形たちのつま先が一斉に彼女を差す。
「駄目よ。探させないわ。カウントも最初からやり直してもらうから」
 めいっぱい広げた腕で、小柄な少女が示したのは大きな大きな通せんぼ。
 そんな彼女の頭へ、ぽん、と不意に手が置かれる。
 フェリシアの瞳がぱちくりと驚きを表したのを見て、あっ、とレインが吐息に近い声と共に手を引っ込めた。
「ごめん、つい……別にフィリアが弱いと思ってる訳じゃないんだけど……」
 言葉を途切れさせ、金色の瞳が少し思考を巡らすように片側へ流れた。
「どっちにしても僕は、前に出て戦うスタイルだからさ」
 レインの心を配る一言を受け、フェリシアは途端に眦を和らげる。
「……ありがとう、でも、大丈夫」
 強気でも意地でもない様相に、レインがはっと瞠目した。すると。
「レインこそ、無理しないで」
 フェリシアの根幹にある優しさがレインにも向けられる。
 戦地、日常、きっと何処へ行こうとも変わらぬ彩を見た気がして、レインは薄ら笑む。
「無理はするかもしれないけど、無茶はしないようにするよ」
 言いながら距離をあけていくレインを気配だけで見送ったのち、リーフィ、とフェリシアが囁く。呼ばれたオラトリオがふんわり花の裾を揺らして舞い上がるや、淋しい街へ光が降り始めた。きらきらと歌い、踊る花びら。降ると同時にフェリシアの願いに沿って、瓦礫や外壁からつる草が伸びていく。
(「少し怖い……けど、大丈夫」)
 成長の速い種の蔓が活性を帯び、人工めいた機械らの黄銅へ触れる。かくれんぼの鬼であるかれらへ、隠れた存在を発見させないように。こうして常緑植物に気を取られた一瞬のうちに、光の花が触れたところから人形たちの冷たい躯が浄められ、熔けていく。
 蔓に阻まれながらも四体の征服人形は、フェリシア目掛けての一斉射撃を行った。ひらひらと囁く花弁ごと撃ち抜くかれらの弾は、フェリシアへ雨となって注がれるも――この程度で崩れる姿勢を、彼女は持たない。
 その勇姿を目の端で認め、レインは己の銃から凍結弾を放った。
(「フィリアへ、それ以上の攻撃はさせないよ」)
 紛うことなき光へ集中していたオートマタに贈ったのは、凍てつく眼差しとミサイル。
 着弾した箇所から青白い光の幕が拡がり、人形をその冴えた色彩で包み込む。氷への誘いからガンスリンガーズ・ボムが発射されたとて、レインの敵ではなかった。
 瓦礫から瓦礫へ、陰から陰へと駆け回る彼女はすばしっこい。
 然しもの自動機械人形たちも彼女を追い詰めること叶わず、氷結に抗えぬまま朽ちるだけ。
 こうして一連の流れを視界におさめたフェリシアは、細長い息をつく。
「歴史を、人の歩みを……勝手に捻じ曲げて、壊して、消して……そんなの」
 良いはずがない。
 彼女の意思を汲み取ったレインも、離れたところから首肯してみせる。
「うん、もう少し頑張ろう」
「ええ……私は、私たちは、ひとりじゃないもの」
 やがて迫撃を続けたレインの後背を見つめて、フェリシアは薄く笑んだ。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【植物活性】LV1が発生!
【冷気の支配者】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV2になった!
【ロストエナジー】LV1が発生!

アリス・セラフィハート
アドリブ連携歓迎です

※心情
今度は
こちらからですね
マリーさんのお命を狙う
敵さんを
野放しにもいかないです

『捜索隊さん…ここは通しません…!』

※行動
残留効果2は
全て使用

味方と連携
敵に囲まれない様
【臨機応変】に立回り

【セルフクラフト】や
【結界術】【残像】で
敵の攻撃を
防御や避けつつ
ヴォーパルソードを手に
【光使い】で
剣から
光焔の【衝撃波】【誘導弾】を
放ち牽制と
『リングスラッシャー』で
攻撃し
【飛翔】を発生
空中などに離脱する
ヒット&アウェイを
繰り返し
(飛翔発生後は
空中から攻撃も混ぜ)
戦います

近接時は
【斬撃】【両断】【薙ぎ払い】で攻撃

オラトリオの
ロリーナちゃんに
オラトリオクレセントの
光矢の【連射】で
援護もお願い


霧雨・龍雅
悪い奴らからお姫様を守る
…なんだか、物語の勇者みたいだね
物語みたいに良い結末を迎えれるように、まずは捜索隊を何とかしようか

こっちを見つけると大砲を撃ってくるみたいだけど…弾がずっとこっちを追いかけてくるわけじゃないんだよね
だったら、まずは【戦闘知識】を活かして集中攻撃を受けないような位置取りをするよ
相手が大砲を撃ってきたら【精神集中】して弾道を見切って、回避しながらその砲弾を横合いから掴んで、思いっきり投げ返す
わざわざこっちの武器になりそうな物を寄越してくれてありがとね…っと
砲撃を投げ返して陣形を崩したら、一気に懐に飛び込んで片を付けるよ


白蔵主・天狐
逃がした獲物を必死に探す姿は、ちょっと滑稽。
でも、その徒労もここで終了。お疲れ様。そして、さようなら。
お人形をばらばらにしようか。

うん。あなたたちぐらいなら、たまちゃんを使わなくてもいいかな。
なんだっけあの飛び道具。大砲、だったかな?
当たったら痛そう。……だから、当たらないように動くね。
──『灼天華』
人形たちの隙間を抜けるように、駆ける。同士討ちとかしないかな?したら面白いし、しなくても動きが止まるよね。
行き先を邪魔するのがいたら、足に呪力を集中させて。
遠慮なく、飛び蹴り。上手に頭だけ蹴り飛ばせるかな?やってみよー。

ふぅ、いっぱい走ったら汗かいちゃった。早くお風呂入りたいな。


 かのベルサイユ宮殿におわすは、マリー・アントワネット。
 そして身を潜める王妃を探し出さんとするは、悪しき大陸軍の手勢。
 かれらが麗人を浚おうというのなら、かれらを阻止する存在こそ、自分たちディアボロスで。
「……なんだか、物語の勇者みたいだね」
 サングラスの下、霧雨・龍雅(千篇挽歌の紫霧・g01645)は静かに口の端を引き延ばした。お姫様という象徴を救い出すのは、勇者と相場が決まっている。少年の胸をくすぐる好奇心もどこかで、そんな物語を今にも綴り出しそうなぐらい高鳴っている。
 けれど面差しはそのままに、龍雅は敵の布陣を一瞥した。
「物語みたいな結末を迎えるには、あれを何とかしないとね」
 彼の言う『あれ』がクロノヴェーダであることは言を俟たない。
「それにしても、逃した獲物を必死に探す姿は、ちょっと滑稽ね」
 ふ、と短い笑みだけ吐息へ宿して白蔵主・天狐(空狐に至らんとする者・g05726)が銀糸を揺らす。揺れた、と自動機械人形らが認識した時にはもう、天狐の姿は風塵に紛れていた。街なかを巡る風が天狐の背を後押しし、色褪せた光景で銀の残り香がゆく。
 敵陣の隙間を縫う彼女の挙動が、オートマタの真鍮製の顔面を右へ左へ彷徨わせる間に。
「捜索隊さん……ここは通しません……!」
 小さいながらに、総身から精一杯の勇気と志を輝かせて、アリス・セラフィハート(不思議の国の天司姫アリス・g00270)が残るオートマタの前へと立ちはだかった。途端にかれらの顔と思しき平たい面が、少女をねめつける。
 恨み、憎しみ、そういった情は微塵も感じ取れないけれど。アリスが覚えた寒気は間違いなくかれらが齎したもの。冷たい躯から伝う、クロノヴェーダの敵意と呼べるもの。恐れずに立つだけでも、心身が張り裂けそうで。
 二人を見ていた龍雅も、ここで踏み出す。
 捜索隊というだけあって数はそこそこだが、敵を光の花で引き付けながら倒していった仲間たちのおかげで、既に何体もの自動人形は物言わぬ残骸となって転がっている。
(「数もここまで減っているんだ。囲まれないように気をつけていれば……」)
 サングラスの下で青を煌めかせ、龍雅は二人と別角度から攻めていく。
 戦友らが始めた中で、うん、と天狐は小さく首肯する。
(「たまちゃんの敵じゃないかな」)
 そう目を眇めた直後、またしても彼女の姿は群れに紛れ込んだ。
 天狐がこうして撹乱を試みている隙をつき、少女の瞳に似た空色の光焔を揺らめかせ、振りかざした剣身の軌跡が、アリスによって描かれていく。
 白銀の眩しさを映し混んだ人形たちは、追うべき者の多さに翻弄されつつもしっかり武器を構えている。
(「マリーさんのお命を狙う、敵さんを、野放しにもいかないです」)
 アリスの決意が輝いた、そのとき。
 龍雅の構えに対抗してか、ドォン、と地響きと鼓膜を震わす轟音が鳴った。一つや二つではない。統率のとれたオートマタのカノン砲が展開した弾幕だ。隙間なき砲弾は驟雨の如く龍雅を襲う。
「……っと」
 しかし彼は特段慌てるでも動揺するでもなく、まるでリズムを刻むようなステップで、砲撃のけたたましさの中を跳ね回る。総てを避け切るのは叶わなくとも、舞い上がった粉塵の合間を突っ切るぐらいなら、龍雅には容易い。
 そして彼が筒音に溶けていく一方で。
「逃がした獲物は、見つかったかな?」
 人形へ告げた天狐の足は軽やかに地を蹴り、跳ねた。
「いくよ」
 掛け声ひとつ発したら、細い足へと呪力を集わせ、天狐は疾駆する。
 龍雅とアリスも、機を逸さない。
(「そんなに撃ち込んで、俺たちを見失っても知らないけどね」)
 マリー・アントワネットの姿も、見失ったままだというのに。
 そう思いながら龍雅は、塵芥を吸い込まぬよう袖で口と鼻を覆って――駆けた。
 パラドクスにより悪を破る力を得た物を投げつける、それこそが彼のアヴァランチ。敵の勢いも、ボディも、立ち向かおうとする命さえ破壊し尽くすための一投だ。
 彼に貫かれた個体が仰臥するよりも早く、知識の共有により、アリスの白き羽を撃ち抜こうとする人形があった。だが少女が羽ばたくたび、無数の光輪が宙空を制する。場に揺蕩う守りの力も合わせて、機械人形はアリスへ弾を当てても墜落させることがついぞ叶わなかった。
 そんなかれらへ、今度は少女の光が飛びかかる。
(「今度は、こちらから……ですね……っ」)
 アリスのひと呼吸が為される間に、光彩を放ったリングたちは、四体もの人形を切り裂いていく。
 鮮やかな一閃で転がるばかりとなった人形の、更に奥。 
 紅く咲いた闘気の花へ、大砲に形態変化した征服者の一射が重なろうと。
「徒労もここで終了」
 目許へ意思を燈した天狐の赤を、沈められない。カノン・フランセーズに見舞われてもなお、彼女の足は速度を落とさず敵の懐へ飛び込んでいく。
 鮮烈なる灼天華が、天狐の跳び蹴りが。人形の黄銅をかち割り、頭部ごと弾き落とす。
 そのまま彼女の脚部は美しい線を描きあげるように、人形を真っ二つに裂いた。
「お疲れ様。そして、さようなら」
 ばらばらに。ばらばらと。
 崩れた征服人形たちが再び動き出す日は、もう来ない。
 銃声が鳴り響いていた街で、漸く龍雅がふうと息を落とす。
「残念だけどね」
 ちっとも残念そうではない口振りで、龍雅が囁く。
「どうせなら、エピローグに向かう流れも綺麗な方がいいからね」
 彼がそう告げた相手こそ、捜索隊を率いるリュネットで。
 ふうん、と唸る淫魔の少女には退くつもりもないらしく。
「あの子を早く見つけたいところですが、お前たちから可愛がってあげましょうか」
 ゆらり尻尾で誘いながら、リュネットは微笑みもせずディアボロスをじいっと見つめた。
成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​
効果1【飛翔】LV1が発生!
【建造物分解】LV1が発生!
【怪力無双】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】がLV3になった!
【ダメージアップ】LV2が発生!

アリス・セラフィハート
アドリブ連携歓迎です

貴女が
捜索隊を率いる
リュネットさん…

格好を見て
思わず赤面してしまいつつも
敵さんの「可愛がる」の意味が
解らず…

『あ、あの…お寒くないですか…?何をなさるつもりか解りませんけど…マリーさんは、探させません…!』

残留効果2は
全て使用

味方と連携
【飛翔】で飛行
敵の貫通ビームは
【結界術】【光使い】と
【念動力】で
軌道を反らして【残像】で躱し
敵に狙いを定まらせない様
飛行速度や
方向・高度などを変えたりして
【臨機応変】に立回り
ヴォーパルソードを手に
【光使い】で
剣から
光焔の【衝撃波】【誘導弾】を
放ち
敵を牽制や
味方を援護し
敵の攻撃を避けつつ接近
『アリスセイバー・ヴォーパルソード』で
敵を一閃です…!


フェリシア・セイアッド
【AC】
私たちは、お人形じゃないのだけど
「可愛がる」の意味をいまいちわかっていない顔で首を傾げつつ
自身も愛用のハープを抱え直す
王妃様は、渡さない
この世界は、この時代を生きている人たちのものだから
まっすぐに相手を見て言葉を紡ぐ
 
淫魔の歌の効力を浄化するように 世界樹の唄を
イメージするのは あるべき宮殿の姿
花の咲き誇る庭園 微笑む人々
今なおクロノヴェータに抗う人たちの無事と幸運を願って歌う
敵の攻撃に身をさらす形になるが気にしない
(だって レインがいるから)
友だちが一緒だから頑張れる
レインが敵に接近しやすいよう気を引く
仲間と連携 精神汚染を防ぐように動く


白蔵主・天狐
ふぅん、あなたが王妃を探してるっていうクロノヴェーダ。
……すごい恰好ね。お腹、冷えない?トイレに行くのなら、早めにどーぞ。
ま、私も似たような恰好だけど。
あ、可愛がりとか遠慮しとこう。意思表示、大事大事。びしっと手のひらを突き出して。ごめんなさい、としっかり腰を折って謝罪の意を表そう。なんかこう、告白を断った感じで。

飛んでくるビームは、【セルフクラフト】で作った足場を蹴って跳ねて避けてみよっか。……そろそろ愛刀のたまちゃんもお腹がすいたって。
──『永遠ヲ貪ル牙』
あなたのその若さ、美味しくいただきます。
大丈夫。おばあちゃんでも頑張れるって!
無理そう?だったら、ここで死んでおくといいんじゃないかな。


レイン・フォレスト
【AC】
君がラスボスかな?長袖の水着とは珍しいね
そうじゃないことは分かってるが、くすっと馬鹿にした感じで笑ってみる
怒りで攻撃が単調になってくれると有難いかな

可愛がるって色んな意味があるんだよ、フィリア
まあ知らなくても構わないんだけどね

戦闘はフィリアや仲間達と連携できるように立ち回る
相変わらず囮になろうとする幼馴染みに苦笑
君のは無理と言うより無茶な気もするんだけど
まあ僕が付いてるんだから問題無いね

敵の攻撃は防御無理そうだな
となれば、回避一択
上空へ飛び(跳び)上がったり地を駆けたり
とにかく的を絞らせないよう動き回る

攻撃はフリージングミサイルで
その格好だし多少なりとも冷気が堪えてくれるといいんだけど


 ベルサイユ宮殿の近く、崩れかけの街で戦の花が咲く。
 咲くのが薔薇であったなら、どれだけ美しかったことだろうとアリス・セラフィハート(不思議の国の天司姫アリス・g00270)も指先を震わさずにいられない。
 街に似合わぬ緊張感を張り巡らせているのは、自動人形という手勢を失った淫魔リュネットと、ディアボロス。捜索隊を率いる少女型淫魔は、王妃の居場所すら見つけられぬまま、ディアボロスと相対せざるを得なかった。
 平時であれば、あどけなさを残す少女の見目は愛らしく、穏やかそうに思えるものだが。
「可愛がってあげます、お前たち。嫌と泣き叫んでも、やめてあげませんから」
 文字の並びだけなら楽しげな印象を受けるのに、リュネットの声音は愉快から縁遠い色を含んでいた。この色を言の葉で象るなら、怒りや焦燥に近いと白蔵主・天狐(空狐に至らんとする者・g05726)は眸を眇める。
「……すごい恰好ね」
 敵が王妃を探している点には触れず、天狐が意識を寄せたのは、他でもないリュネットの装い。
 輪郭は少女そのもの。しかし姿かたちは。
「本当、長袖の水着とは珍しいね」
 レイン・フォレスト(冷気の拳使い・g01528)も天狐の言に乗る。ひらりと泳がせた片手へ小さな笑いを寄せて。
「そんな水着の君がラスボスかな?」
 嘲る意味を多分に含んでの一言を受け、リュネットの眼が弧を描く。
「セーラー服の魅力も分からないなんて、勿体ないですね」
 リュネットのど得意げな顔が返るも、あれをセーラー服と称した一点がレインには少々不思議でならない。
 こうして疑問を抱く彼女たちの後ろで、アリスは捜索隊長の露出っぷりに顔を赤らめていた。
「貴女が……捜索隊を率いる……リュネットさん……」
 そろりと紡いだアリスの呟きを聞き、見目には似合わぬ妖艶さでリュネットが笑う。
「ふふ、よくご存知で。安心しなさい、順番に可愛がってあげますから」
「可愛がる……? 私たち、お人形じゃないのだけど……」
 フェリシア・セイアッド(青晶花の星唄い・g00918)が、戸惑いを頬に乗せて首を傾ぐ。
「かわい……がる……?」
 アリスも、フェリシアと同じ角度にこてんと頭を傾けていた。
 きょとんとする二人をよそに、天狐は浅めの溜息をつく。
「そういうのは遠慮したいとこね」
 かぶりを振るう天狐の傍で、眉間を押さえてレインがううんと唸る。
「……可愛がるって色んな意味があるんだよ、フィリア。アリスも」
「まあ、そうなの?」
「いろんな……可愛がる、ですか……?」
 フェリシアとアリスの純一なる驚きが好奇心へと変わる前に、レインは前へ向き直る。
「知らなくて構わないことだけどね。さ、いこう」
 彼女たちの見据える先で、淫魔リュネットはゆうらりゆらりと尾を遊ばせた。
「可愛がりはしますが、私も急いでいるのです。手早く済ませます」
 長く付き合うつもりはないと宣言し、淫魔が楽器を掲げる。
 相手がフラジョレットで挑むのなら。フェリシアも慣れ親しんだハープを抱え直す。
「あなたに王妃様は、渡さない。何があっても」
 清らかな奏者の宣言にリュネットは、ふうん、と興味深そうに目を細めた。
「渡さないと言われたら、より奪いたくなるものです」
 冷酷を携えたクロノヴェーダにフェリシアも臆さず、寒空にそぐわぬ音色を燈し始める。
「奪うなんてだめ。この世界は、この時代を生きている人たちのものだから」
 フェリシアの眼差しも言葉も、どこまでもまっすぐだ。
 そんな彼女を認め、相変わらずだとレインは苦笑いを零す。
(「君のは、無理をすると言うより、無茶な気もするんだけど……」)
 仕方ないな、とレインは肩を竦めた。
 そうして垣間見えた彼女たちの繋がりを眺め、リュネットはふんと鼻で笑う。
「断ち切ってあげます。お前たちも、全部!」
 彼女の細身から溢れ出た敵意や狂気が、ディアボロスたちの織り成す『音』のすべてを乱していく。街を包む空気をも、絶望めいたもので染め上げていくように。
 天狐は察した――リュネットの世界観を築かせてはならないと。
 だからアリスとレインが得物を手に飛び上がったのを見届けて、天狐も踏み出す。
「ごめんなさいっ!!」
 すぐさまリュネットへ手の平を突きつけて拒み、思い切り頭を下げてみる。
 突然の断り文句にぎょっとするリュネットの前で姿勢を戻し、天狐は恥じらう素振りで目線を外す。
「あなたの気持ちには応えてあげられないの。だって……」
 漂う調べが天国とも地獄とも区別できぬメロディを紡ぐ間、告白を断る時の様相で天狐が綴り、そして。
「……そろそろたまちゃんも、お腹がすく頃だから」
「たま……ちゃん?」
「そう」
 怪訝そうに眉根を寄せたリュネットへ、天狐はこくりと頷いてみせる。
 こうして敵の調子が崩れたそのときだ。寂れた街なかに、歌声が響いたのは。
「世界は光に満ち……陽は輝きて鳥は歌う……」
 天を衝き、彼方へ伝う希望の唄。美しくも郷愁を誘う音と詞で、フェリシアが披露したもので。
 すう、と腹のそこまで冴えた空気を吸い込んで、フェリシアは在るべき宮殿の姿を想像し続けた。咲き誇る花たちはきっと、ベルサイユ宮殿へ豊かな情をもたらしただろう。悲しみに暮れる人でなく、微笑み湛えた人々を招き入れたはず。
 ここに本来、あったもの。この街で本来、有り得たもの。
 クロノヴェーダを掻き消そうと拡がる音色に痛みを覚え、リュネットが仕返しとばかりにフラジョレットを吹き鳴らす。甘酸っぱい青春を連想させる調べが、フェリシアの脳を揺さぶる。
(「き、気持ちが悪くなる……なに、これ……」)
 フェリシアはぐるぐる回ってやまない視界や感覚を抑えようと試みるも、なかなか吹き飛ばない。
 そこへ、翅を煌めかせたレインが飛び込んでいく。
「レ……レイン……」
 視界へ飛び込んできた姿に思わずフェリシアが呟くも、殆ど吐息だけとなった。
 そしてレインが握るガジェットウェポンには、凍結弾を精製する装置が取り付けてあり――狙いさえ定めれば、あとは一瞬だった。凍てつく弾が、敵の光線も覆う冴えた青白さを生み出し、リュネットを震え上がらせる。
「より寒く感じるんじゃないかな、その格好だと」
「っく……冷えは大敵だというのに、なんてことを……!」
 リュネットにキッと睨まれるも、レインは口端をもたげて。
「僕に気を取られるのもいいけど、『可愛がる』には向かないと思うよ」
 忠告めいた一言を告げたレインへ、はっ、と息を吐き捨てながらリュネットが眉をひそめる。
 次にリュネットの耳朶を打つのは――。
「あ、あの……お寒くないですか……?」
 青に輝く冷気の光景から、天使の羽で舞い上がったアリスの声。ほんのり心を配るのに近い呼びかけだが、アリスの手にはヴォーパルソードがしかと握られている。
 しかも彼女だけでなく、地上をゆく天狐もまたクロノヴェーダを見据えていた。
「お腹、冷えない? ただでさえ外は寒いのに。トイレに行くのなら、早めにどーぞ」
「よく口が回りますね、嫌いではありませんよ、お前みたいな子」
 リュネットが矢継ぎ早に返す中、アリスが光の剣と共に空をゆくのなら、天狐は妖刀を手に地を駆ける。
 フェリシアの曲は響き渡ったまま、レインの凍結弾の余韻が場を飾って間もない街で。
「私には、あなたが何をなさるつもりか解りません、けど……」
 光焔ゆらめく剣を振り翳し、アリスが頭上からリュネットへ飛びかかる。
「マリーさんは、探させません、から……!」
 空を留めた彩りの光の奔流に切り裂かれ、リュネットのローネットが割れる。
「探させない、ですって? 私は必ず見つけてみせますよ」
 果たしてどこから沸いて来る自信なのか。パリンと甲高い悲鳴が転がった直後、リュネット・レヨンがアリスへ放たれるも――レンズを通さぬ光は、淡い光輝さを纏った天使を、墜落させることも叶わずに。
 頭の上に意識を向けてばかりのリュネットへ、天狐が囁いた。
「あのね。お断りはするけど、代わりに……」
 舌なめずりしたのは天狐か、それとも妖刀の魂喰らいか。
「あなたのその若さ、美味しくいただきます」
「っ!? 美味しい思いなんて、させません!」
 同時にリュネットの眸から煌々とビームが放たれる。だが腹を底まで空かせた刀の食欲の方が、勝った。リュネットへ息継ぐ余裕も与えず、死神の咢が迫り、そして 。
「大丈夫、おばあちゃんでも頑張れるって! ま、ここでその人生も終わるんだけどね」
 小さく笑ったのち、天狐の一撃が淫魔の身を絶つ。その命ごと。
 目当てのマリー王妃の居場所も探れなかった追っ手の眼が、零れんばかりに見開かれる。
「なんて、失態を……ダブー元帥、申し訳、あり……」
 仰ぎ見た空へ伸ばしかけた少女の腕は、誰にも届かず力尽き、石畳へと落ちていった。
大成功🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​
効果1【一刀両断】LV1が発生!
【強運の加護】LV1が発生!
【腐食】LV1が発生!
【冷気の支配者】がLV2になった!
効果2【命中アップ】LV1が発生!
【リザレクション】LV1が発生!
【ダメージアップ】がLV3になった!
【ロストエナジー】がLV2になった!

最終結果:成功

完成日2021年11月16日