チョコレートで巡る世界旅行(作者 湊ゆうき)
#最終人類史(新宿島)
#💝最終人類史のバレンタイン2025
#バレンタイン2025
⊕
●世界各国のチョコスイーツ
「今年もバレンタインの季節がやってきたよー!」
嬉しそうにそうディアボロスたちに笑顔で告げるジュリオ・ヴェント(人間のレジスタンス諜報員・g03277)もチョコが大好き。だからこの時期になるとつい、うきうきそわそわしてしまうのだ。
「例年通り、節分で地獄変のエネルギーをチャージしたけど、バレンタインもまた特別な力があるんだ」
そう、多くのディアボロスや住民たちが最終人類史のお祭りを楽しむことで、力が高まり、ディヴィジョンの排斥力を弱めることができるのだ。
「だから今年のバレンタインもみんなでおもいっきり楽しもうね!」
そう笑顔で皆を誘うジュリオは、今年はこんなイベントを考えたんだ! と得意そうに胸を張った。
「オレ、チョコケーキとかチョコのお菓子とかも大好きで。それでいろいろと調べてたら、世界中にいろんなチョコのお菓子があることがわかったんだ。だから、みんなでチョコで世界中を旅しよう!」
有名なチョコケーキといえば、フランスのガトーショコラや、オーストリアのザッハトルテ、アメリカのブラウニーなど。
「他にもいっぱいいろんな種類のチョコのケーキやお菓子があるんだ。奪還した場所もまだ奪還出来てない場所もあるけど……各国のチョコを巡って世界旅行しようってお誘いだよ!」
とはいえ、実際に各地に赴くわけではなく、会場となるのは、都内にあるホテルのイベントホール。
たくさんのパティシエに協力してもらい、世界各国のチョコスイーツを準備してもらうことが出来た。
「ほら、デパートとかでバレンタインのチョコが並ぶでしょ? あんな感じでそれぞれのブースを作って、チョコスイーツを提供してくれるから、みんなは好きなものを好きなだけ選んで楽しむことが出来るんだ!」
誰かへのプレゼントにしても良いし、すぐ近くに飲食できるスペースも設けてある。ディアボロスのためにと協力してくれたのでお代は不要だ。用意されたチョコはディアボロスならば増やすことも可能なので、数を気にせず好きなものを好きなだけ選んでいい。
「ね? 夢のような世界旅行でしょ? その場で試食も出来るから、美味しいと思ったら、パティシエさんたちに感想も伝えてあげてね!」
テーブルや椅子のある休憩スペースでは、飲み物も提供されている。紅茶やコーヒー以外にも、バレンタインらしくホットチョコやチョコシェイクも。お酒が飲める年齢であれば、チョコレートリキュールを使ったカクテルを注文することも出来る。
「あとね、新宿島でも見かけるチョコレートのお菓子とかもあるんだ。好きなチョコを満喫してね!」
駄菓子から高級アイスまで。ジュリオのお気に入りを用意したのだそうだ。
「ディアボロスのみんなには、それぞれ故郷があって、だから思い出のチョコなんかもそれぞれ違うんじゃないかなって」
ディアボロスになる前はそんなに食べたことがなかったとジュリオは過去を振り返るが、チョコレートの甘さは人を幸せにするのだと力説した。
「まだ故郷を取り戻せてないディアボロスも多いと思うけど……遠くない未来に、現地でまた食べられたらいいね」
そんな願いを込めて、この催しを企画したのだった。
「今年は《戴冠の戦》の年。戦い抜くためにも、楽しむべき時はめいっぱい楽しむ。それがきっと勝利への道でもあるから……だから、今年のバレンタインも楽しもう!」
そうジュリオは笑顔で告げ、皆をイベントに誘うのだった。
●Bon voyage!
会場には、各国の国旗も飾られ、そのもとにたくさんのチョコスイーツが並ぶ。
フランスは皆が知っている有名なケーキがたくさん。しっとりとした『ガトーショコラ』に中からとろとろのチョコが流れ出す『フォンダンショコラ』。さくさくのタルト生地が人気の『タルト・オ・ショコラ』に、華やかなパリのオペラ座をモデルにしたといわれるケーキの『オペラ』。『エクレア』や『ショコラテリーヌ』もフランス発祥の菓子。珍しいところでは、ナッツを使ったチョコケーキ、『レーヌ・ド・サバ』もある。
チョコレートケーキの王様の異名があるのは、オーストリアのウィーンで生まれたチョコレートケーキ『ザッハトルテ』だ。
ヨーロッパ圏では、他にもイタリアもチョコレート菓子がたくさんある。仕上げにココアパウダーを振りかける『ティラミス』にナッツやドライフルーツ、ビスコッティが入った『チョコレートサラミ』。カプリ島で発祥した小麦粉を使わないチョコレートケーキの『トルタ・カプレーゼ』や、ピエモンテ州で生まれたチョコレートプリン『ボネ』など。
ドイツで有名なのは黒い森を意味する『フォレノワール』に、鹿の背中という意味を持つ、伝統的なケーキ『マンデルンレーリュッケン』。
イギリス生まれの洋酒を効かせたドライフルーツがふんだんに使われた『ケークオショコラ』や、ハンガリーで由緒あるチョコレートケーキ『ドボシュ・トルテ』なども並んでいる。
ヨーグルトで有名なブルガリア生まれの『ガラシュケーキ』は、バター入りのクルミとチョコレートを何層にも重ねた上にチョコレートでコーティングした濃厚な甘さが楽しめるもの。
生地にアイルランド名物のギネスビールを混ぜ込んだ『ギネスケーキ』もアイルランドではよく食べられているチョコレートケーキだ。
まだ奪還を果たしていないアメリカにも甘いチョコケーキが豊富にある。代表的なチョコ菓子の『ブラウニー』に、チョコレートのスポンジ生地にチョコクリームを挟み、表面もチョコクリームでコーティングした悪魔級に美味しい『デビルズフードケーキ』や、考案者の名を冠した『ジャーマンケーキ』はたっぷりと塗られた甘いココナッツフィリングが特徴だ。濃厚な『ミシシッピーマッドパイ』や見た目が特徴的な『レッド・ヴェルヴェット・ケーキ』など他には見ないものも多い。
そしてオーストラリアには『ラミントン』という一口サイズの四角いスポンジケーキをチョコレートソースでコーティングして、上にココナッツをまぶしたチョコケーキがある。
ケーキ以外にも、一口サイズのチョコやクッキーなどもある。試食も出来るので、気になるものがあればこの機会にぜひ試してみるのもいいだろう。
チョコレートを巡る世界旅行に、いざ出発!
リプレイ
柳田・太郎
アドリブ・絡み大歓迎!
判断に迷った所はお任せします。
「よーし、今日は張り切って食べまくりますよ~!」
ぱぁん!と太鼓腹を叩いて端から順に回って行きましょう!
ひとつづつ味わってはお菓子にまつわる逸話なんかを聞いて回ります。
ほらよくあるでしょ?
どっかのお貴族様が気に入ってずっと食べてたとか、ほんの偶然で生まれたレシピだったとか、おとぎ話をもとに作ったとか、ある季節だけの特別なお菓子とか。
もしくは作成時の苦労話とか。
そんな話を聞いて回って、新作落語のネタにしてみたいですねえ。
●逸話で巡るチョコの旅
「よーし、今日は張り切って食べまくりますよ~!」
各国の国旗が飾られた会場内には、チョコレートの甘い香りが漂っていた。
魅惑的な香りと並ぶチョコレート菓子に相好を崩した柳田・太郎(妖狐の吟遊詩人・g00636)は、ぱぁん! と良い音を立てる自らの太鼓腹を叩いて景気づけてから、会場をゆっくりと巡る。
まずは星条旗がたなびくアメリカのブースへ。
「ほうほう。ブラウニーはアメリカのものなんですねえ」
ずっしりとして濃厚なブラウニーはケーキというよりソフトクッキーに近い食感をしている。アメリカではよく家庭で作られ、家庭ごとのアレンジがあるのも特徴だという。
試食してはその濃厚さに唸った太郎は、ナッツやドライフルーツ入りのものもお土産用にもらっていくことに。
次に勧められたのは、これまた濃厚なチョコを感じられる黒っぽいケーキ。
「デビルズフードケーキという名ですか」
試食してみれば、しっとりとした食感で、口にチョコレートの芳醇なコクと風味が広がっていく。
「実は白くて軽いエンジェルフードケーキというものもあるんですよ」
そう提供してくれたパティシエから教えられた太郎は、ほうと目を丸くする。
天使に対して悪魔のケーキと名付けられたのは納得だ。さらには、悪魔のように濃厚で罪深い味わいや悪魔的な美味しさという意味も込められているらしい。
アメリカでは特別な日に食べられるそれをしっかり確保し、他にもアメリカのケーキをいくつかもらって、次はフランスのブースへ。
「これは美しい……」
艶やかなチョコレートのコーティングと、そっと飾られた金箔。オペラは世界中で愛されるケーキのひとつ。
見た目もお洒落だが、味の方もビターチョコレートとコーヒーの香り高い風味が感じられる大人味。
「パリにあるオペラ座が名前の由来で、この表面の金箔は、オペラ座にそびえたつ金のアポロン像に見立てているんですよ」
ケーキにまつわる話を聞いて回っていた太郎へとパティシエがそう教えてくれた。
「この金箔ひとつにも、作り手のこだわりが感じられますねえ」
ほくほくと、オペラやタルト・オ・ショコラ、エクレアなどを受け取り、次に目に着いたのは、ハンガリーのドボシュ・トルテ。
「ふうむ、これは馴染みがないので気になりますね」
カットされたケーキからは、スポンジとカカオ入りのバタークリームが交互に美しい六層になっているのが確認できる。一番上の生地は、キャラメルコーティングされていて見た目も美しい。
「皇帝や皇妃も愛した味なんですよ」
考案したパティシエの名前がつけられたケーキは、1885年にブダペストで開催された展覧会でふるまわれた。
「特徴的なのはこのカカオバタークリームです。当時、冷蔵庫もなかったので、保存の観点から、バターには塩と決まっていましたが、ドボシュ氏の弟子が間違って粉砂糖を混ぜてしまったんです」
「おお、そういう逸話が聞きたかったんです!」
太郎は身を乗り出してその話に聞き入る。
失敗作のはずが食べてみればとても美味しく、この美味しさを保存できないか研究したところ、カカオを加えることになったのだそうだ。
ある程度保存がきくということで、長距離の輸送もでき、当時一世を風靡したそうだ。特にウィーンとハンガリーを中心に広まっては、ヨーロッパ各地で親しまれるようになったのだという。
「今日聞いた話はどれもおもしろかったですねえ。新作落語のネタになりそうでしょうか」
しっかりとブースを回って確保したケーキたちを休憩スペースでコーヒーと一緒に味わいながら、太郎はその美味しさに笑顔を浮かべるのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵
効果1【勝利の凱歌】LV1が発生!
効果2【ガードアップ】LV1が発生!
陳・桂菓
小鳥遊・英、黄泉王・唯妃と一緒に行動。呼び方はそれぞれ「小鳥遊」「唯妃」
チョコがたくさん!
端から端まで一つずつと言いたいところだが、いくら大食い種族のインセクティアでも流石に無理か。
では、渋めの茶でもお供にしつつ適当に巡ろう。
まず第一には安全牌、フォンダンショコラだ。中からドロッとチョコがあふれてくる独特の口当たりがたまらん。
あとザッハトルテも何だかんだ外れがない印象。いやまあ、外さず作れる職人が凄いんだろうけど。仮にレシピを渡されたとて、自分で同じようにこさえる自信はない。
それからギネスケーキも気になるな。聞いたことないけど、ビールを使っているそうだが、酒の味はするだろうか?
確実に押さえたいのはこの辺として、あとは腹具合と相談しつつ攻略していく感じ。
……引っ張ってきたは良いものの、小鳥遊の様子はどうだろ。チョコの匂いだけで目を回してない? 大丈夫?
唯妃は放っておいても……って、何か変なことしてるな。
「ん? 唯妃ならケークオショコラとか気に入ると思うぞ。ドライフルーツが酒っぽくて美味だ」
黄泉王・唯妃
小鳥遊・英、陳・桂菓と一緒に。呼び方は「あきらさん」「桂菓」
見渡す限りのチョコスイーツ。
本来ならば色々なチョコに舌鼓を打つところですが、今回は別の目的があるので自分で食べるのはそこそこに。
あきらさんの動きを注視しつつスイーツを口に運ぶ瞬間を【神速反応】で見切り、そこに持てる限りの速度で手持ちのスイーツを口に捻じ込んでいきます。
そう! これは普段から小食で偏食のあきらさんを肥えさせる一計!
相手をガチョウに見立てガヴァージュ(強制給餌)する!!
この技を名付けるならば《ショコラ・デ・フォアグラ》といったところでしょうか!!
時々、桂菓の方にもサーブしておきましょう。
さすが私。気遣いの鬼。
一仕事終えれば優雅に紅茶でも飲んでチョコを味わうと致しましょう。
「わあ、おいしいおいしいパクパクですわー(食べる演技)」
「どれが美味しかったです桂菓? 折角なんで私もそれ食べてみたいんですけど」
小鳥遊・英
黄泉王さん、桂菓さんと
バレンタインだなんて、ソシャゲの限定ボイス回収くらいしかないイベントだったのに
ディアボロスになってからやたらと引っ張り出されるようになった気がします
まあ甘いものは嫌いではありませんので、ぼちぼちと楽しみますか
と言ってもそんなに食べる方でもありませんので厳選して
いちごのガナッシュが入った正方形のチョコと、ザクザクナッツが入った正方形のチョコ
これくらいにしておくかなぁ
いや、折角ですしあと1個なんか小さいやつを適当に取ってテーブルへ持っていきましょう
……いつもながら、健啖家でいらっしゃいますよね?
見てるだけでお腹いっぱいですよ
まあ持ってきた分はキチンと食べます
ひとつ、小さなチョコを口に入れ
?!
なんか質量バグってませんかこのチョコ?!
口いっぱいに詰まった事実に目をまんまるにして、白黒させながら頑張って咀嚼します
へ、変なチョコに当たった……?
●Chocolat Voyage
世界各国のチョコスイーツが楽しめるバレンタインイベントの会場となった都内のホテルのイベントホールでは、各国の国旗が揺れ、辺りが甘い香りに包まれていた。
「チョコがたくさん!」
見渡す限り、よく知るものや珍しいものまで幅広いチョコスイーツであふれる会場を前にした陳・桂菓(如蚩尤・g02534)は、思わず弾んだ声を上げるのだった。
「ええ、見渡す限りのチョコスイーツですね」
桂菓の言葉に同意しては頷いた黄泉王・唯妃(アトラク=ナクアの娘・g01618)も甘い香りと多種多様なチョコスイーツたちを眺めてから、もう一人の同行者へを声をかける。
「あきらさん、今日は一緒に楽しみましょうね」
「バレンタインだなんて、ソシャゲの限定ボイス回収くらいしかないイベントだったのに……」
唯妃にそう微笑まれた小鳥遊・英(Code name/Falcon・g00772)は、目の前の光景に眼鏡の奥の瞳をぱちぱちと瞬かせる。自他共に認めるゲームオタクである彼女にとっては、現実のイベントよりもそちらの方が馴染みがあって。けれど、ディアボロスになってからは、こうして友人にイベントだからとやたらと引っ張り出されるようになった気がするのだ。
「ああ、これだけのチョコが揃ってるんだ。せっかく来たんだし、小鳥遊も好きなものを好きなだけ食べればいい」
彼女を引っ張ってきた一人である桂菓もそう語り掛けると、自らはその戦術眼で、どれから攻略しようかと策を巡らせるのだった。
「まあ甘いものは嫌いではありませんので」
ぼちぼちと楽しみますかと呟いては、英は二人について行く。
「出来ることならば、端から端まで一つずつと言いたいところだが……流石に無理か」
桂菓は大食い種族のインセクティア。全ての種類を制覇したいと思うところだが、世界各国のチョコスイーツの数はなかなかに膨大。さすがに厳しいかと作戦を切り替える。
「全部食べる気だったんですか……」
わりと本気で悩んでいた桂菓を驚きの眼差しで眺めつつ、どうやら自分とは別次元の胃袋を持っているようだと理解した英はたくさん食べれる方ではないので、食べるチョコを厳選することにして、二人と一緒に会場を見て回る。
「試食もさせていただけるようですし、気に入ったものを少しずつ、という楽しみ方も出来そうですね」
そう言いながら唯妃は、フランスブースのガトーショコラを勧められ、一口。しっとりとしていて濃厚でビターな味わいが口に広がっていく
「では、これをいただきますね」
「私はまずはフォンダンショコラだな」
同じフランスのブースで桂菓が選んだのは人気のフォンダンショコラ。
見た目は唯妃が食べていたガトーショコラのようにも見えるが、フォークを入れると中からとろとろのチョコが流れ出る人気のチョコケーキ。桂菓にとっては頼りになる安全牌的立ち位置だ。
「では、わたしは……このチョコにします」
英が選んだのはいちごのガナッシュが入ったものと、ザクザクナッツが入った正方形のチョコ二種類。ケーキのようなボリュームはないが、どちらも一流のパティシエが作った逸品。
「これくらいにしておくかなぁ」
「あきらさん、それだけでいいんですか?」
英の選んだチョコをしっかりと観察していた唯妃がきらりと目を光らせる。別に咎めているわけではないのだが、唯妃には美味しいチョコスイーツを食べる以外にも今回目的があるので、しっかりと英の動きをチェックしておく。
「そうですね……折角ですしあと1個くらい……」
そうしてナッツやドライフルーツ、ビスコッティが入ったチョコレートサラミをひとかけらもらうことにして。
「あとはザッハトルテも。これも何だかんだ外れがない印象だしな」
もちろん外さずに作れる職人の腕がすごいのは桂菓にもわかるのだが、仮に同じレシピを渡されたとして、桂菓が同じように作り上げる自信はない。だからこそパティシエには敬意を示して、ケーキを受け取る。
「では私は定番のティラミスにオペラ、珍しいところでブルガリアのガラシュケーキをいただいておきますね」
「普段目にしないのも気になるよな……ギネスケーキか」
桂菓は、チョコレート色のスポンジの上に、たっぷりのサワークリームをまとったそのケーキをじっと見つめる。
アイルランドでよく食べられているチョコケーキには、名物のギネスビールが生地に混ぜ込まれているという。
「酒の味はするだろうか……?」
「生地に混ぜ込んだアルコールは飛びますが、苦味とコクが加わったほろ苦い大人のケーキですよ」
興味津々の桂菓の疑問にパティシエが答えてくれた。ほろ苦い大人のケーキに興味を持った桂菓はそちらも選んで、あとはお腹の具合を鑑みながらいくつか選んでいく。
「ところで小鳥遊。チョコの匂いだけで目を回してない? 大丈夫?」
「食べる前からお腹いっぱいになりそうですが……大丈夫です」
引っ張ってきた手前、気遣いを見せる桂菓に、英は大丈夫と頷いて見せる。
「ではそろそろいただきましょうか」
そう唯妃が声をかけ、それぞれが選んだチョコレートスイーツをテーブルと椅子のある休憩スペースへと運べば、皿やフォークなども提供してもらえる。さらにホテルのスタッフが飲み物を用意してくれるというので、桂菓は渋めのお茶を、唯妃と英は紅茶やコーヒーを頼んでいざ実食。
「さて、まずはフォンダンショコラから」
飲み物を持ってきてくれた時に、スタッフが温めなおしを提案してくれたので、桂菓がフォークを入れれば、中からとろとろのチョコがあふれていく。
「ん、独特の口当たりがたまらん」
幸せそうにフォンダンショコラを食べ、次にザッハトルテと次々にチョコケーキを平らげていく桂菓の食べっぷりに英は感心するのだった。
「……いつもながら、健啖家でいらっしゃいますよね?」
「気になったのがあれば試してみるか?」
「いえ、見てるだけでお腹いっぱいですよ」
それでも自分で選んだものはきちんと食べますと、英は皿に乗ったいちごのガナッシュが入った正方形のチョコを口に運ぶ。
その時だった。チョコを食べることもなく、英の動きにだけ集中していた唯妃は、【神速反応】で英がチョコを口に運ぶ一瞬を見切ると、持てる限りの速度で既にフォークにスタンバイさせていたガトーショコラを英の口に捻じ込む。
その速度は瞬きするほどの間だったろうか。
「?!」
小さなチョコを口に入れたはずなのに、なぜか口の中がぱんぱんになった英は、思わず目が真ん丸になる。どういうことか理解できないまま、目を白黒させながらも、ともかく口の中の甘いものを一生懸命咀嚼してはなんとか呑み込んだ。
「なんか質量バグってませんかこのチョコ?!」
美味しい。確かに美味しいのだが、思っていた質量と違う。もしや食べた瞬間体積が増すという摩訶不思議な近未来的なチョコだったのだろうか。
「へ、変なチョコに当たった……?」
まさか唯妃の仕業などと思いもしない英は不思議そうに首をかしげている。
(「ふっふっふ。やりましたわ! そう! これは普段から小食で偏食のあきらさんを肥えさせる一計!」)
何事もなかったかのように、美味しいと言いながらガトーショコラを食べるふりをしている唯妃は内心にんまり。
そう、これは相手をガチョウに見立て、ガヴァージュ――強制給餌するという唯妃の作戦なのだ。
(「この技を名付けるならば《ショコラ・デ・フォアグラ》といったところでしょうか!!」)
その後も何度となく、英の口にチョコスイーツを捻じ込みつつ、時には桂菓の方にもチョコスイーツを切り分け、サーブしながら唯妃はそつなく作戦をこなしていく。
(「さすが私。気遣いの鬼」)
面倒見のよさを余すところなく発揮した唯妃は、聖母のような穏やかな微笑みを浮かべていた。
(「唯妃は……何か変なことしてるな」)
その様子を見守りつつも特に口は出さず、桂菓は唯妃に差し出されたチョコスイーツも美味しくいただいていた。
「うん、ザッハトルテはやはり間違いなかった。ギネスケーキもほろ苦さがいいな」
「二人は変なチョコに当たりませんでした? いえ、大丈夫ならいいんです……」
一人不思議そうな英は、チョコを少し食べたはずなのに妙な満腹感を覚えつつ、気を取り直すようにコーヒーを飲んでいた。
一仕事終えて満足した唯妃も優雅に紅茶を飲みつつ、ようやくゆっくりと自分のチョコスイーツを味わうことに。
「フォンダンショコラにエクレアにティラミスに……どれも美味しかったです」
「ああ、唯妃に分けてもらったのも美味しかったな。他もどれも良かった」
さすがに全部制覇は難しかったが、桂菓はかなりの種類のチョコケーキを制覇することに成功していた。
「どれが美味しかったです桂菓? 折角なんで私もそれ食べてみたいんですけど」
唯妃よりも遥かにたくさんの種類を食べていた桂菓なので、興味を持った唯妃がそう訊ねる。
「ん? 唯妃ならケークオショコラとか気に入ると思うぞ。ドライフルーツが酒っぽくて美味だ」
「あら、いいですね。ではそれをいただいてまいりましょうか」
既に桂菓の皿の上は空になっているので、名前の挙がったケーキを味わうために、唯妃は席を立つ。
「よし、私もまだ腹の具合がいけそうだ。もう少し世界を巡ってくるか」
「二人ともすごいですね……わたしは見送りに徹しましょう」
世界各国で愛されているチョコレート菓子。
定番の味から初めて食べる味を仲間たちで楽しんで。
そしてちょっとした事件もまたバレンタインの思い出のひとつ。
それぞれのチョコレートを巡る世界旅行は、数々の思い出を刻みながら、こうして過ぎていくのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【口福の伝道者】LV1が発生!
【神速反応】LV1が発生!
【アイテムポケット】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【命中アップ】LV1が発生!
【ダメージアップ】LV1が発生!
一角・實生
水蓮寺さん(g08972)と
世界にはこんなにチョコレート菓子が存在するなんて
すごいな、と見渡してふと視線をおろせば
広がる光景に心躍る真っ最中
……なんて、後ろ姿でも丸わかりな水蓮寺さんに俺もつい笑顔
勢いよく振り向いた姿に頷くよ
うん。その時はお願い
ヴェントさんには軽く手を上げて近づくよ
こんにちは、ヴェントさん
初めて耳にするチョコレートが沢山あるようで、今から巡るのが楽しみなんだ
水蓮寺さんの『甘さ控えめ』に嬉しくなりながらも
ヴェントさん。彼女が喜びそうなおすすめはあるかい?
俺からはそんな質問を
つい足を止めるのはドイツのチョコレート
とはいっても、俺はあまり甘いものは食べないからそう詳しくもなく
彼女が言うものを目で追えばお腹が一杯になってきた
ある程度回った後は、ヴェントさんおすすめの一品とショコラショーを楽しもう
はい。味見と別腹用
切り分けたスイーツを水蓮寺さんへお裾分け
苦みに顔を顰める水蓮寺さんについ笑ってしまいつつ
うん、苦いけど濃厚で美味しい
食べ物も飲み物もチョコレートなのは今日が初めてかも
水蓮寺・颯
實生さん(g00995)と
右も左もチョコレイト色…会場中がチョコレイトの香り…!
意気揚々と足を踏み入れようとした所で、ハッと振り返る
あ、あの、つらくなったら遠慮なく言ってくださいね!僕が實生さんのぶんも食べますから!
甘い香りに包まれる会場でジュリオさんを見つけて
ジュリオさん!お疲れ様です
すごいですね、こんなにたくさんのお菓子を集めるなんて…まだこれから回るんですけど、甘さ控えめのでおすすめってありますか?
え、僕に?……あ、ありがとうございます!
ドイツだけでもたくさんチョコのお菓子ってあるんですね…どっしりしてて濃厚な感じです
お菓子の名前で『黒い森』とか『犬の鼻』だなんて面白い――
み、實生さん、大丈夫?
あっ…こっち来てください!
これ、カカオ80%のショコラショーなんですって
冷たいのもあるし、少しは飲みやすいかも
僕はこっちの66%のにしようかな?
…あの、實生さんの、ひと口貰ってもいいですか?
んえふっ…す、すみません
思ったより苦いですね…でもこれはこれで美味しい
んふふ、僕も初めてです
アドリブ◎
●Bitter & Sweet
足を踏み入れた途端、チョコレートの甘い香りが鼻腔をくすぐる。
よく街で見かけるチョコレートケーキもあれば、あまり馴染みのないものもある。それらが世界各国の国旗のもとに集う様子は、見ていても壮観だ。
「世界にはこんなにチョコレート菓子が存在するなんて……すごいな」
会場に漂う甘い香りと、圧巻のチョコレートスイーツたちを見渡していた一角・實生(深い潭・g00995)だが、ふと視線を降ろした先に、この光景に誰よりも胸を躍らせているのが丸わかりな様子の後ろ姿を見つけては思わず頬を緩めてしまう。
「右も左もチョコレイト色……会場中がチョコレイトの香り……!」
頬を朱に染め、瞳をきらきらと輝かせ、まるでチョコレートに恋する乙女のような水蓮寺・颯(灼がて白く・g08972)が、世界中のチョコレート菓子が集結したその光景に心躍らせていた。
ああ、なんていい香り……そう思い、意気揚々と足を踏み出しかけた颯だが、ハッとなっては後ろを振り返った。
「あ、あの、甘い香り大丈夫ですか? つらくなったら遠慮なく言ってくださいね!」
颯は大好きなチョコレートだが、一緒に来てくれた實生はそこまで甘いものが得意ではない。ホットドリンクにマシュマロが入っていれば甘すぎるので、颯が食べてあげるくらいだ。だから今回も、無理しないでくださいね、と颯は真剣な顔で實生へと申し出る。
「僕が實生さんのぶんも食べますから!」
「うん。その時はお願い」
大好きなチョコを前に浮かれていたはずなのに、そんな風に自分を気遣ってくれる彼女の優しさと一生懸命さにも笑みを浮かべ、頷く實生。
「はい。お任せください! それで、ジュリオさんはどこかな……あ、ジュリオさん!」
会場で見つけた少年に、お疲れ様ですと笑顔で言葉をかける颯。
声をかけられたこのイベントの発起人でもあるジュリオ・ヴェント(人間のレジスタンス諜報員・g03277)もまた、二人を見つけては嬉しそうな笑顔を見せる。
「こんにちは、ヴェントさん」
「颯おねえちゃんと實生おにいちゃん! 来てくれてありがと! 今日は世界中のチョコスイーツを楽しんで行ってね!」
手を上げてくれた實生にジュリオも手を振り返し、すごいでしょ? と会場に並ぶチョコ菓子を前に得意げだ。
「初めて耳にするチョコレートが沢山あるようで、今から巡るのが楽しみなんだ」
「すごいですね、こんなにたくさんのお菓子を集めるなんて……まだこれから回るんですけど、甘さ控えめのでおすすめってありますか?」
「うんうん、オレも初めて食べるのいっぱいあったよ! 開催にはたくさんのケーキ屋さんやパティシエさんに協力してもらったんだ。どれもおすすめだけど、甘さ控えめ……あ、實生おにいちゃんは甘すぎない方がいいもんね」
颯の問いかけにそうだったねと頷きつつ、少し思案する。
「ならフランスのオペラはどうかな? 生地やクリームにコーヒーを使ってて、甘さとほろ苦さを味わえる大人のケーキだよ!」
「わあ、ではそれもいただいていきますね。ありがとうございます!」
「さすがヴェントさん。情報収集もばっちりだね。じゃあ俺からも。彼女が喜びそうなおすすめはあるかい?」
甘さ控えめを提案してくれた颯の言葉に嬉しくなりながら、實生はいつも別腹を発動しては二人仲良く食後のスイーツを食べているのを知っているので、颯が好みそうなものも訊ねてみる。
「え、僕に? ……あ、ありがとうございます!」
「颯おねえちゃんにはいっぱい食べて欲しいから悩むけど……オレからのおすすめは、今日はフォンダンショコラ! 中からとろとろのチョコが出てくるし、会場では温めなおしてくれるから熱々が楽しめるよ!」
「はい、ぜひ味わってみますね」
ジュリオのおすすめを聞いたところで、二人は礼を告げてから会場を巡ることに。
「アメリカのケーキはボリュームもすごいですね!」
「イタリアのチョコレートサラミ……確かに断面がサラミっぽいね」
各国のブースを回り、ジュリオおすすめのケーキをフランスのブースで分けてもらい、二人は束の間の世界旅行を楽しむ。
そして自然と二人の足が止まったのは、實生の故郷であるドイツのブース。
「ドイツだけでもたくさんチョコのお菓子ってあるんですね……どっしりしてて濃厚な感じです」
「うん、種類は多いみたいだけど、俺はそんなに詳しくなくて……」
ドイツと言えばチョコレートの生産も消費も世界トップレベル。けれど甘いものを好んで食べることがあまりない實生にとっては知らないことも多い。
「じゃあこの機会に食べてみますか? 名前も個性的ですよ。『黒い森』とか『犬の鼻』だなんて面白い――」
確かに名前の通りだとその見た目に微笑みを浮かべていた颯は、實生の様子の変化に気づく。
「み、實生さん、大丈夫?」
「うん、見てるだけでお腹が一杯になってきた……」
持ち帰りも出来るというので、気になるドイツのケーキも分けてもらってから、颯はテーブルと椅子のある休憩スペースへと向かう。近くで飲み物を提供しているブースがあるので、それらを眺めてから實生を手招きする。
「實生さん、こっち来てください! これ、カカオ80%のショコラショーなんですって」
フランス流ホットチョコレートのショコラショー。甘さも選べるので實生にもぴったりだと思ったのだ。
「冷たいのもあるし、少しは飲みやすいかも」
そうして實生はカカオ80%、颯は66%のものを選んでは、席について先程分けてもらったチョコケーキたちをいただくことに。
「フォンダンショコラ温めてもらいました……わ、切ると中からとろとろのチョコが……!」
幸せそうにフォンダンショコラを頬張る颯の様子を微笑ましく眺めながら實生もショコラショーを一口。カカオの苦みがしっかり効いているが、コクがあって濃厚でとても美味しい。
「うん、オペラともよく合うね。……はい。味見と別腹用」
そうして颯にも切り分けておいたオペラをお裾分け。
「わ、ありがとうございます!」
コーヒーシロップを染みこませた薄い生地とコーヒー風味のバタークリームのほろ苦さに、なるほど大人の味と感心しつつ、チョコの風味をしっかり感じるショコラショーと共に美味しくいただく。そうするとカカオ80%がどんなものか気になってくる。
「……あの、實生さんの、ひと口貰ってもいいですか?」
「ショコラショー? いいよ。どうぞ」
「んえふっ……す、すみません」
ちょっとはしたないかなと思いながらも、当然のように快諾してくれた實生へとそう一言告げて、そうして口にしたショコラショーの思った以上の苦みに颯は思わず顔を顰めてしまう。
「思ったより苦いですね……でもこれはこれで美味しいです」
實生はその様子に思わず笑ってしまうが、その言葉に同意する。
「うん、苦いけど濃厚で美味しい」
甘さも苦さも味わえる、それがチョコレートの魅力。
「食べ物も飲み物もチョコレートなのは今日が初めてかも」
甘いものを食べる方でない實生だから、こんなチョコ尽くしな日はあまりなくて。
「んふふ、僕も初めてです」
甘いものが好きな颯もまた初めてだと笑う。
「實生さん、まだ食べれそうです? ドイツのケーキも一緒に食べませんか?」
せっかくだから、今日はチョコ尽くしの一日を。
もう少しの間、二人はチョコを巡る世界旅行を楽しむのだった。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【エイティーン】LV1が発生!
【クリーニング】LV1が発生!
効果2【ダメージアップ】がLV2になった!
【リザレクション】LV1が発生!