バレンタイン2025～石の囁きに想いを込めて～（作者 柊透胡）

9

リプレイ

　ギャラガー・ゼロマネー（朝霧に舞う流れ星・g01251）とカーリィン・ダールグリュン（流浪のtrucker・g02688）、仲睦まじく開いたドアは……左側。
「お菓子も気になるケド、今日はアクセサリーで♪」
　席は背中合わせに、それぞれ、最愛の人に贈りたいアクセサリーを作り始める。
（「以前、着けたいッて言ッてたからな」）
　ギャラガーが手掛けるのは、ゴールドとエメラルドをあしらったピアス。
　形状はフックピアス。ピアスホールに釣り針状のポストを引っ掛けて着けるタイプのピアスだ。耳元で軽やかに揺れる様子がフェミニンで、モチーフのバリエーションも豊富。外れ難く、落とし難いのも嬉しい所だ。
「ハハ、丸カンにヤットコだ。懐かしいや」
　昔、ピアスを作るバイトでやらされたものだ――雫の形のエメラルドを、同じく雫状のイエローゴールドの輪に嵌め込むギャラガー。
（「確か……石言葉は夫婦の愛、だッたか」）
　あの日、他のピアスを着けたい、なんて言われて……勘違いして盛大に恥をかいたという思い出。まー、用意出来たからヨシとするか。
「よし、これで一旦……リィン、進捗はどう――」
　肩越しにカーリィンの集中ぶりを認め、ギャラガーは先の細いペンチに手を伸ばす。
（「聞くだけ野暮だな。こッちはこッちであと少し……」）
　――一方、カーリィンが挑戦するのは、シルバーのリング。
　伝統的な銀細工と言えば、炉で溶かしたり、意匠も細やかな職人の世界――だけど、シルバークレイを使えば、普通の粘土のように手でこねたり、ヘラで模様をつけて成形出来る。初めてさんでも大丈夫。
（「ギィの指に似合いそうなのは……」）
　オリーブの模様は、イタリアでも夫婦の象徴としてモチーフに使われているという。
（「じゃアこれに、ブルートパーズを嵌め込む感じで！」）
　シルバークレイは焼くと縮む。サイズは大きめに。伸ばした粘土を棒に巻き付け、指輪の形に整えていく。厚みを一定にする所が、肝心。天然石を嵌める石枠を埋め込み、土台を貫通して穴を開けておいた。ブルートパーズのように光を透過する石は、裏側からも光を取り入れた方がより輝くし、美しく見える。
　ドライヤーの温風で指輪を乾燥させたら、細かく模様を刻んでいく。時間が掛かっても、丁寧に。
「…………」
　一心にリングの彫刻に集中していたカーリィンは、ギャラガーの声にも気付かなかった程。
「ギィ、見て！　出来たヨ♪」
　そうして、焼成して、冷却して、研磨して――石枠にブルートパーズをしっかり嵌め込んだら、いよいよ指輪の完成。
「俺様のも完成だ」
　ギャラガーの方も、石を付けたTピンをピンセットで曲げ、丸カンでフックと繋げて仕上げる。
「お待たせ、リィン。あの日の約束をようやく果たせたな」
「これって……ピアス!?　エメラルドと金の……覚えててくれたンだ、ありがとう!!」
「ハハハ、喜ンでくれてなによりだ」
　パッと碧眼を輝かせるカーリィンの耳のピアスを、早速着け替えるギャラガー。
（「……ああ、ようく似合うな。リィンに」）
「あたしからは……幸福をあなたに、この石が更なるチャンスを運んでくれますように」
「お、薬指用？」
　カーリィンの指輪を、結婚指輪と重ねて嵌める。まるで最初から誂えたかのように、揃ってしっくりと馴染むデザインに、ギャラガーは思わず相好を崩す。
「良いセンスしてるじゃン…！　いいね、気に入ッた。ありがとう！」
　偉丈夫である夫との身長差は約30㎝。背伸びしても届かないから、2つの指輪を嵌めた左手を引く。
「結婚1周年、これからもよろしくネ、旦那様？」
　満足そうに笑み零れ、カーリィンはギャラガーの頬に唇を寄せた。




　毎度の事ながら――世間は本当に色々な事をやっていて感心する、と雑賀・黒詠（雑賀衆の末裔・g07640）
。
「して……菓子と宝飾か、と。菓子は別の機会でやる予定もあるから、今回は宝飾の方を創ろうじゃないか」
　黒詠の提案に、荒田・誠司（雑草・g00115）も否やは無い。
（「俺の気持ちをアクセサリーに込める！　全力で作り上げよう」）
　石言葉の下調べもしっかりと。だからこそ、照れ臭さも否めないが……折角のバレンタインデー、今日は愛を伝える日だ。
「さてさて、天然石は多種多様。だが、加工の方はそこまでって感じかな」
　鍛冶を生業とする黒詠としては、些か物足りない風でもあったが、アクセサリーパーツは豊富だ。手作りの時間を楽しめそうだ。
「それじゃあ、誠司。折角なら、完成して手渡すまで、内容は内緒としておこう。きっとその方が楽しいだろうからさ」
「わかった。一緒に作るのもありだろうが……今回は、後で交換だ」
　それぞれ、離れたテーブルに着く2人。
　誠司は、選ぶ石を既に決めている。パパラチアサファイアとルビーだ。
　サファイアには多くの色があり、青以外のサファイアはファンシーサファイアと呼ばれる。ファンシーサファイアの中でも、特に人気のパパラチアサファイアは、オレンジがかったピンク色だ。蓮の花の色とも、夕暮れの空の色とも言われている。
　良縁を齎す石とされ、その石言葉は「慈愛」や「光の花」、そして「一途な愛」。
（「ルビーの石言葉は『情熱的な愛』。双方の相性はいいからな」）
　パパラチアサファイアとルビーを組み合わせて、誠司が作るアクセサリーはマジェステ。バレッタと簪を組み合わせたような髪飾りだ。結った髪に着けるだけで可愛く華やぐので、艶やかな黒髪の黒詠にもきっとよく似合うだろう。
（「別名、棒さしだったっけ」）
　まずは小花模様の台座に、丁寧にそれぞれの石を留め付けていく誠司。バレッタ部分ににオレンジかかったピンクの花と赤い花が寄り添うようにして、普段使い出来るようにしたい。
　彼女も、石言葉は知っているだろうから。愛の日に、思いの丈を全力で伝えられる物を作って贈るのだ。
「……気に入ってくれるといいなぁ」
　一方、黒詠は、時間を掛けて石を選ぶ。
（「何より、石の選択が重要。色々あるが……ふむ。ならば、これかな」）
　ディアボロスとして、戦い続ける彼には、幾らお守りがあっても困らないだろう。
（「前線を張りつつ味方を護るんだ、ならば見極めも大事。後は魔除けの力もあっていいだろうし……」）
　漸く、黒詠が手に取ったのは「黄鉄鉱」――パイライト。
　真鍮と見紛うメタリックな質感を持つ鉱石であり、若干黄色がかっている為、ゴールドと間違えられる場合もあるという。12面体やキューブ型など、原石がとてもユニークな形状をしているのも特徴だ。
（「首飾りの方が邪魔にもならないだろうし、失くしてしまうこともそうは無いだろう」）
　派手にならず、されど印象は持たせつつ――個性的な形の裸石をペンダントヘッドにするか、或いは、カットストーンを連ねたネックレスが良いか。ここは、黒詠のセンスの見せ所。
　その石言葉は「行動力」、「勇気」、「勝負事」、そして「危険回避」。
（「さて、彼はパイライトの意味に気が付くかな？」）
　想いを込めて、黒詠は装飾品を仕上げていく――唇の端に、悪戯っぽい笑みを刷きながら。






「天然石を使ったアクセサリーだけじゃなくて……チョコレートとかで、天然石を作れるのか。すごいな」
　菓子とアクセサリーが並ぶ共同店舗のスペースで、首を巡らせる緋詠・琥兎（その身に潜むは破滅か。それとも朧げな標か・g00542）。自身もカフェで働いているので、興味津々の表情だ。
「桜嬢と白水嬢は、どっちを作るんだ？」
「んー、身につけやすいネックレスがいいかな？」
「折角ですし、ブローチを作成しましょうか」
　桜・姫恋（苺姫・g03043）も白水・蛍（鼓舞する詩歌・g01398）も、アクセサリーの方が気になる様子。
「なるほど。自分は……ん？　どうした、燈杜美」
　尚も迷う素振りの琥兎だったが、オラトリオの燈杜美に、クイクイと袖を引かれる。
「……あぁ、自分で選んだ天然石を２人に贈りたいのか。わかった」
　常から大切にしているサーヴァントのお願いだ。2人に続いて、アクセサリー工房の方に足を向けた。
（「せっかく燈杜美が選ぶなら、形が残る方がいいだろうしな……ブレスレットにしよう。時間があったら、食べれられる天然石も作ろうか」）
　ウキウキとはしゃぐ様子のオラトリオと一緒に、まず天然石を見て回る琥兎。
「桜嬢には……これは、スピネルだな？」
　カラーバリエーションが豊富なスピネルの石言葉は色によっても異なるが、共通して「情熱」や「不屈」。ポジティブな意味合いが多く「自己実現の石」として知られる。特にグリーンスピネルは「愛情」や「幸福」を意味する筈。
「いつも一緒にいると楽しいからか……確かに、桜嬢とは楽しい事が多いよな」
　燈杜美のセレクトに応じて赤系を3つ、青系を2つ見繕い、交互で等間隔に石を配置したチャームブレスレットを作る事にする。
「白水嬢には……クンツァイトか」
　ほんのりと紫を帯びた上品なピンクの色合いが美しい。別名『夕べの宝石』。キャンドルの明かりの元でこそ、その美しさが最大限に引き出されるとか。
「石言葉は……『母性』や『慈愛』だな」
　確かに、サーヴァントを大事にしている彼女にピッタリだと、琥兎も思う――プレートの両脇にクンツァイトを嵌める、シンプルなデザインのブレスレットに仕上げるとしよう。
「……さて、どうしようかな……何を選びましょうか」
　一方、蛍は、鉱石の専門家としての血がうずくのか、心なしか気合も入っている様子。
（「琥兎さんには、アイオライトを」）。
　3月の誕生石であり、その石言葉は「誠実」。菫の花を思わせる紫がかったブルーストーンは、個人的に彼女にピッタリだと思う。
「宝石かぁ。実はあまり馴染みがなくて、詳しくはないのよね……」
「姫恋さんにはストロベリークォーツがいいかな。その名の通り、苺っぽいところからとられた宝石ですね」
　あんまりに多種多様な天然石を前に、途方に暮れる姫恋にお勧めする余裕もある。
　愛らしい色合いのストロベリークォーツの石言葉は「愛情」や「夢の実現」。持ち主の魅力を引き出してくれる、女性にとっては願ってもない守り石だ。
「うん、確かに苺みたいに可愛い色だね」
　苺大好きに打ってつけの石だろう。蛍のお勧めに頷いて、早速、丸玉ビーズを連ねてネックレスを作る事にする姫恋。
（「私からも、2人に何か贈りたいわ」）
　一休みの頃合いを見計らい、職人さんに相談した。
「蛍のイメージは……『誠実』や『勤勉』、『美しい』辺りかしら」
「『誠実』ならアメシストやサファイア、『勤勉』ならブラッドストーンかしらね」
　天然石のサファイアは、深みのあるダークブルーが特徴。ダークグリーンに赤の斑紋が散る玉髄がブラッドストーンだ。渋い色合いが大人びた雰囲気の組合せだろう。
「琥兎はそうねぇ……『堅実』、『博識』、『優しさ』辺りかしらね」
「スモーキークォーツは『堅実さ』の象徴よ。博識……『頭脳明晰』なら、カーネリアンやプレナイトの石言葉ね。『優しさ』を象徴する石は多いわよ。ローズクォーツ、アクアマリン、ラリマー、ピンクトルマリン、モルガナイト……」
　ある程度は絞られたものの、目移りするのも暫し。幅広い意味での「お守り」として良い組合せという事で、スモーキークォーツとプレナイトをペンダントに仕立てて貰う事にした。
　――そうして、各々アクセサリーを持ち寄る3人。
　ブローチ、ブレスレット、ペンダント――丹精込めたプレゼント交換に、自然と笑みが零れる。
「これから、お二方のお守りになりますように」
「ハッピーバレンタイン。これからもよろしくだ」
「こちらこそ、これからもよろしくね？　……燈杜美も選んでくれてありがとう。とても綺麗ね、大切に使わせてもらうわね」




「なるほど『石言葉』というものがあるのですね……一覧表と、実際の石を見比べているだけでも興味深いです」
　一覧表の石言葉は主だったもので、ずらりと並ぶ天然石の傍らには、それぞれ石言葉の解説がメッセージカードに書かれている。
「由来など、調べてみるだけでも面白そうですが……」
「石言葉も、花言葉と同様に、365日分有るみたいですね」
　好奇心旺盛な面持ちの一騎塚・喜一（一騎刀閃・g04498）に、フウガ・ミヤビ（風来楽師・g06359）が指差して見せたのは『365日石言葉辞典』。分厚い蔵書を広げると、丁度2月14日に栞が挟んであった。
「2月14日、バレンタインデーの誕生石は『ピンク・オパール』。石言葉は『愛の出会い』ですか……」
「フフ、お友達の誕生石を調べるのも楽しそうです」
　興味は尽きないが、本日1番の目的は、天然石のアクセサリー作りだ。後で、プレゼント交換するのがお約束。
（「では……ボクは、ラピスラズリを使いましょう」）
　ラピスラズリは『瑠璃』の別名。12月の誕生石であり、「幸運」・「健康」という石言葉ならば、肌身離さず持っていられるだろう。
「合わせるのは……蛍石にしましょうか」
　蛍石――フローライトは、そのカラーバリエーションの豊富さから「世界で最もカラフルなジェムストーン」と言われる。原石も、正六面体や正八面体、サイコロ型と個性的な形が多い。
　石言葉は「知性」・「創造性」。 「天才の石」とも呼ばれ、記憶力や集中力を高める一方で、心身を癒すヒーリングストーンとしても効果的。
「普段使いにもぴったりですね」
　ラピスラズリに合わせて、フローライトも近い色合いを選んだ。ブレスレットに仕立てる心算だ。
（「うーん……メインに使う石は『ペリドット』にしましょう」）
　喜一が選んだ石は、鮮やかなオリーブグリーンと独特の輝きが美しい。古代エジプトでは「太陽の石」と崇拝されたという。
（「8月生まれのフウガさんの誕生石でもありますから、きっと良いご加護があるはずです」）
　以前はピアスを作ったので、今回はブレスレットに挑戦する事にした。
　折角なので、他の石も組み合わせる事にして……虹を内に秘めたアイリスクォーツも、太陽のように輝くヘリオドールも『希望』の石言葉を持つ。
（「フウガさんの、これからの『幸福』と『希望』を願って」）
　更にそれぞれの石を厳選して、席に戻れば、フウガは既に工作を始めている。
「折角のバレンタインなので、ハート型のトグルクラスプにしました。可愛らしいでしょう？」
「え……と、とぐるくらすぷ？」
　トグルクラスプとは、棒状のパーツを円形状のパーツに差し込んで留めるタイプの金具の事。
「『マンテル』とも呼ばれています。パーツが大きいので、片手でも簡単に付け外し出来ますから、ブレスレットでもよく使われているのですよ」
「片手でも、ですか。便利ですね！　さすがフウガさん、物知りです……私も、同じもので仕上げてもいいですか？」
「もちろん。お揃いですね」
　片や、ラピスラズリとフローライト。もう一方は、ペリドットにアイリスクォーツとヘリオドールを連ねて――可憐なハートのマンテルを留め付ければ、出来上がり。
「……そう言えば、作るのに夢中で忘れてました」
　晴れて、ブレスレットを交換。くすぐったそうに微笑みながら、フウガは小さく手を叩く。
「今日はバレンタインなので、チョコレートケーキを作ってみました。後で食べて貰えると嬉しいです」
「チョコレートケーキ！　しかも手作りですか!?」
　眼鏡越しに、緑の瞳を輝かせる喜一。ほのぼのと笑い合う2人の手首には、心尽くしの天然石が揺れていた。




「いろいろ揃ってんなぁ」
　ずらりと並ぶ天然石を前に、ボソリと呟く御守・樹（行雲流水の珪化木・g05753）。表情こそ、いつもと変わらぬ平静ながら、内心はテンション急上昇の鉱石好き。
「天然石がこんなにたくさん……！　ここから、好きな石を選んでアクセサリーをつくれるんですか？」
　対照的に、ファギー・ルヴァン（明けぬ夜森の魔法つかい・g00880）は、緑の瞳をキラキラと輝かせている。
「す、すごく贅沢……！　ど、どれにしようかな……」
　石言葉の一覧表を見ながら、ひとつずつ天然石を手に取っては悩むこと仕切りだ。
（「そうだな、折角のバレンタインだし……ファギーに贈りたいものだから……」）
　その実、迷っていたのは、樹も同じく。結局、直感を頼りに選んだのは、翡翠。隣合わせのクリソプレーズは、もっと爽やかなアップルグリーンで、ファギーというより、寧ろ彼女の弟の雰囲気だと思った。
（「翡翠の柔らかな色合いの方が、彼女らしいよな……長寿とか幸福っていう石言葉も良いし、何より昔から魔除けの守り石だ」）
　ファギーの瞳の色を思わせるのもあるけれど……翡翠は、卯年の守護石でもある。実は、卯年生まれの樹。
（「俺の何かを、欠片でも渡したいと思うのはわがままかな……」）
　面映ゆそうに頬を掻くのも束の間。思い切って、彼女の瞳と似た色合いの石を選んで、着席。さて、何を作ろう？
（「……あぁ、スカーフピンにしよう」）
　これから、温かくなってくる季節。スカーフやストールの出番も、きっと増えるだろうから。
（「あんまり、ごてごてしても重くなって使いにくいだろうし」）
　翼の形に切り出された翡翠をピンに留め付け、モチーフが揺れるシンプルなデザイン。時々、背中に視線を感じたが、完成するまで集中した。
「お待たせ、ファギー。受け取ってくれたら、とても嬉しい」
「え、これ……翡翠の、スカーフピン？　すごく綺麗……」
　樹の掌の上で、そっと白い指先が緑の翼に触れる。
「あの、今、着けてみてもいいですか？」
「もちろん」
　慎重に慎重に、ショールに翡翠を留め付けたファギーは、嬉しそうに笑み零れる。
「……また大切なものが増えました。大事にしますね」
　そうして、ファギーが樹に差し出したのは――シルバーのイヤーカフ。
「樹さん、よかったらこれ……気に入ってくれるといいのですが……」
　デザインは、あんまり凝りすぎずシンプルに。どんな服装の時でも合わせられるように。アクセサリーパーツも石も小さくて、よくよく気を付けて作業した。
「この石は……レッドスピネル？」
「はい。樹さんにも、わらびさんにも合う……って思って」
　ルビーと見紛う深い赤は、「好奇心・情熱・活力」という石言葉も納得の鮮やかさだ。
「ありがとう、助かる」
　早速、イヤーカフを着けて見せて、樹は目を細めて微笑む。
「とっさに手が出がちだから……危なく無いように、装飾品は避けてるんだ」
　破軍拳士である樹も、イヤーカフなら気兼ねなく着けられるというもの。
「それに、そこにあるって感じられるのは嬉しい」
　それぞれ贈られたアクセサリーに触れながら、見交わす2人の空気は、優しい幸福に満ちていた。

最終結果:成功
完成日	2025年02月24日