扇動者たちの行く末(作者 海鶴)
#蛇亀宇宙リグ・ヴェーダ
#K2中腹、カーマデーヴァ軍撃破作戦
#K2
#愛欲の扇動者カーマデーヴァ
⊕
●K2中腹
氷雪の上に寺院が埋まるように、それこそ投げ込まれたように着陸していた。
それはジェネラル級アーディティヤ『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』の拠点たる寺院であった。
無論、『マンディール石』で出来た寺院である。
だが、その質は悪いと言わざるを得ない。故にこのK2中腹程度までしか高度を維持できないのだ。
「山頂で確認された怪しい飛行物体の例を見ても、恐らく山頂にはディアボロスがいるのでしょう」
採掘に向かわせた大天使が戻らないとちうことは失敗したと見てもいいだろう。
しかし、ここまで来て高品質の『マンディール石』を諦めることはできない。
何故なら!
「美しい僕に相応しい、天空寺院建立のためにも、山頂のディアボロスは排除しなければならない。『マンディール石』の採掘を急がなければなりませんよ」
そう、高品質の『マンディール石』さえあれば、こんな中途半端な高さで立ち往生するような情けない事態を晒すこともなくなる。
それはジェネラル級の威厳というよりは、己の美しさ、対面を保つための言葉であった。
しかし、配下たちはそんな『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』を慕うように頷く。
「必ずや」
アヴァタール級『風天ヴァーユ』は厳しい顔で頷く。
「うむ。みなの活躍を頼みにしていますよ」
そう言って『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』は彼らを山頂に送り出すのだった。
●パラドクストレイン
シルヴァーム・カリニミタリ(人間のヨーガダンサー・g11467)は集まってきたディアボロスたちを前にして手を合わせ一礼を以て出迎えていた。
「よく集まってくれた。感謝する。攻略旅団の作戦により、K2山頂の『マンディール石』を狙うジェネラル級アーディティヤ『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』の存在が判明した」
『マンディール石』は天空寺院を浮遊させ、高度を維持するために必要な鉱石である。
K2中腹に陣取っている、ということは恐らく、『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』の天空寺院は、その質が低いのだろう。
故に高品質の『マンディール石』の採掘を狙っているのだろう。
「敵の拠点である天空寺院はK2中腹までしか上昇することができず、限界高度近くの雪原に着陸しているようだ。その拠点からアーディティヤ部隊が山頂に派遣されてくるようだ。まずはこの部隊を撃破して、『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』の拠点に攻め込む準備をして欲しい」
ディアボロス達は頷く。
だが、K2は言うまでもなく厳しい自然環境といえるだろう。
「残留効果である【飛翔】での戦闘は行えない。傾斜が厳しいが氷雪に覆われた山中での戦闘を行うことなるだろう。工夫が必須となることは諸兄らの方が詳しいはずだ」
戦いを有利に運ぶためには、それ相応の工夫が必要になるだろう。
しかし、不用意な戦い方をすれば敵に利する所になる。
「今回の戦いでは、劣勢に追い込まれた敵が戦闘から離脱する撤退行動を取る可能性も示唆されている。当然、逃走する敵機は、此方の情報を『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』に知らせるだろう。そうなれば決戦に持ち込む前に敵に対策を取らせるなどの行動に出ることになり、此方が不利な状況に追いやられるかもしれない」
となれば、敵の逃走を許さないような対応が重要かもしれない。
「仮に、だ。ジェネラル級である『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』を撃破することが出来れば、彼奴の拠点である小寺院を手に入れることができるかもしれない」
とは言っても、この状況を招いた寺院の性能は低い。
そのままでの使用は難しい。
が、検証した『マンディール石』の性質などを踏まえて、大改修を行えば……。
「そうだ。蛇亀宇宙リグ・ヴェーダ攻略に大きく役立つかもしれないだろう。『マンディール石』は別のディヴィジョンでは使用できないのが残念なところであるがな」
シルヴァームは心底残念そうな顔をした。
だが、今やるべきことは承知しているようだった。
「『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』は配下から敬愛を集める善神であるようだ。とは言え、討たねばならぬクロノヴェーダであることに代わりはない」
そう言ってシルヴァームは一礼をもってディアボロスたちをパラドクストレインへと送り出すのだった。
●風狂う非情の山
その山は人の踏破を拒むようであった。
荒ぶ風の凄まじさは言うまでもない。一歩間違えば、即座に滑落の危険性すらある頂きへの道は、クロノヴェーダであっても容易ならざるものであった。
「足場が悪い。皆、気をつけよ」
アヴァタール級『風天ヴァーユ』の言葉に配下たるとループス級『キンナリー』たちは頷いた。
「ハッ……しかし、飛んでは如何でしょうか。我らの芭蕉扇にて一息に……」
「やめておけ。如何に我らが風を操るのだとしても、この吹雪だ。視界が遮られて互いを見失う。結局、一歩一歩進むのが肝要であり確実なのだ」
『風天ヴァーユ』の言葉に『キンナリー』たちは己達の不明を恥じるようだった。
だが、それを『風天ヴァーユ』は咎めることはなかった。
己もできるのならば、そうしているところだ。
登山など容易い。
が、雪に覆われた峰は足場も悪い。
滑落する危険性もあれば、崩落する可能性だって十分にあるのだ。
それでも往かねばならぬ。
全ては敬愛する『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』のために。
リプレイ
クィト・メリトモナカアイス
寒い!
とても寒い……帰っておこたに入りたい……
んむ、早く帰るには早く倒すのが一番。頑張る。
んむー、相手の本拠地の天空寺院は中腹にあると聞いている。
低品質のマンディール石しかないのでそこまでしか浮かべなさそうなのだとか。
これは自慢だけど我らの飛空艇はもっと高くまで飛べる。カーマデーヴァはもっと石の研究と加工を頑張るべき。
おっと話が逸れた。ともかく。中腹に敵の拠点があり、もっと高いところのマンディール石を求めて登ってくるのだから。麓方向から回り込めるようにすれば敵の退路を断てる。
というわけでゆくぞー。
【浮遊】を使い、地面からちょっと浮いた状態でふよふよと山を登ろう。
足が地面に付かないので、滑落することもなければ、我の重みに負けて足場が崩落することもなし。
【飛翔】とは違うゆっくりひっそりの動きだけど。こういう時は便利。
アーディティヤたちが先に登って行ってるなら足跡もあるかな?入れ違いにならず敵の退路を断てるよう、【浮遊】があるとはいえちゃんと登山道を進み、足跡があればそれを追っていこう。
エイレーネ・エピケフィシア
カーマデーヴァが最高峰たるエベレストでなく2位のK2を狙うのは、あちらの石に手が出せない理由があるからか、或いはチベットのアルタン・ウルク領の間近にあることを嫌ったか……
いずれにせよ、採掘の邪魔はさせません
吹雪による寒さと視界不良を耐え抜くために、現代の登山家が使用する防寒着とゴーグル、そして滑りにくい靴を着用
クィト様が中腹寄りの位置から登って敵の後背を突くなら、わたしは頂上付近に陣取って挟撃の態勢を整えます
偽神どもを前にも後ろにも逃げ場がない状況に追い込むのです
敵が登ってくる途中でこちらの存在に気付けば引き返すかもしれません
相手が登って来る方と逆側で、頂の峰を身を隠す壁とするかのように待ち伏せを
そして、麓への落下による逃走を阻止する手立ても必要ですね
【フライトドローン】を用意して、敵が下に落ちていきそうな時はこれで「救出」して差し上げます
落下軌道に重ねるようにドローンの1機を飛び出させて、勢いがつく前に機体の背で受け止めましょう
あなた達が墜ちる先は山の麓ではなく、タルタロスの深淵です!
「寒い! とても寒い……帰っておこたに入りたい……」
非情の山とも呼ばれるK2中腹。
その雪原の表面をクィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)は手繰り寄せた残留効果である【浮遊】でもってゆっくりであるが登っていた。
が、彼女はK2の厳しい環境の中にあってめげそうになっていた。
しかたない。
彼女の生きた環境とK2の寒風荒ぶ山肌とでは天と地ほど異なるのだ。
こたつが恋しい。
丸くなりたい。
願うなら、あったまりながらアイスを食べたい。
そういう自堕落な願望が溢れ出すのは致し方ないことであった。
しかし、此処は我慢のしどころである。
アーディティヤ、ジェネラル級である『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』の持つ小寺院の『マンディール石』の質は恐らく低い。だからこそ、高品質な『マンディール石』を求めてK2までやってきているのだ。
中腹に座しているのが良い証拠だ。
アーディティヤたちは山頂を目指しいている。であるのならば、彼らの退路を断つためにまずしなければならないことは何か。
そう、後方から追うことである。
そのためにクィトは一度中腹の方向に降りてから回り込むようにして峰を登っているのだ。
彼女が手繰り寄せた残留効果によって、クィト自身はなんなく登頂を可能にするだろう。
だが、風が吹き荒んでいる。
その風が身を切るようだった。
とは言え、雪原に直接足をつけなくてすむのはありがたいことだった。
何せ、滑落の危険性がない。
歩く程度の速度になってしまっても、この険しい峰を登ろうとするアーディティヤ部隊の速度も大して変わらないだろう。
加えて、自重でクレバス……雪渓の亀裂に踏み込む恐れもない。
「こういう時便利」
加えて、アーディティヤ達の後を追うクィトに利する要因がある。
それは彼らの足跡だ。
クィトと違い、彼らは通常の登山行を行っている。
であれば、当然荒ぶ風の中であっても足跡は残っている。これをたどれば、遅かれ早かれアーディティヤの後方に他通り突くだろう。
「後は……んむ、早く帰るには早く倒すのが一番。頑張る」
クィトは己が敵の背後を突いて退路を遮断するのと同じように挟撃を為す為に山頂にて陣取るエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)が敵の頭を抑えてくれることを期待するのだ。
そう、エイレーネは山頂付近に足を止めて登ってくるアーディティヤ部隊を待ち構えていた。
「『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』が最高峰たるエベレストではなく、2位のK2を狙うのは、あちらの『マンディール石』に手が出せない理由があるからか、或いはチベットのアルタン・ウルク領の間近にあることを嫌ったからか……いずれにせよ、採掘の邪魔はさせません」
彼女は吹雪の寒さを防ぐ防寒着とゴーグルを装着してアイゼンの付いた靴の具合を確かめていた。
新宿島から持ち込んだものである。
これによって雪上で戦うに踏ん張りや寒さを気にする必要はないだろう。
加えて、クィトが別動として麓からアーディティヤ部隊を追っている。
彼女は挟撃によってアーディティヤ部隊の頭を抑えるために此処に陣取っているのだ。
「偽神どもを前にも後ろにも逃げ場がない状況に追い込みましょう」
とは言え、だ。
敵が此方の存在に気がついて戦闘ではなく撤退を選択するかもしれない。
可能性は十分にある。
ならば、とエイレーネはアーディティヤ部隊が登ってっくる峰とは反対側を壁にするように身を隠す。
敵が来るとわかっていて、目指す場所が一点しかないというのならば、待ち伏せも有効だろう。
「挟撃とは言え、攻撃によって意図せずして敵を崖に落としてしまうかもしれません。それは悪手。であるのならば、逃走を阻止する手立ても必要となりいましょう」
エイレーネは残留効果によって【フライトドローン】を呼び出す。
この吹雪荒ぶ中でも飛ぶドローンを見やる。
人間一人を運ぶことの出来るフライトドローン。これを持ってエイレーネは崖下に落下してでも逃げようとするアーディティヤを『救出』しようと試みる。
ドローンの背に受ければ持ち上げて崖上に復帰させることはできるかもしれない。
と言っても、それは一種の賭けであろう。
「賭けに出ずとも良いように立ち回ればよいだけのこと。備え、程度に思っておきましょう。さて」
エイレーネは眼下に視線を向ける。
その先には、吹雪の中に陰るいくつかの影。
そう、アーディティヤ部隊だ。
漸くにして此処まで登ってきたのだろう。
ならば今が強襲の一手を打つべき瞬間だろう。
エイレーネは飛び出す。
「あなた達が墜ちる先は、山の麓ではなく、タルタロスの深淵です! 偽神、お覚悟を!」
その言葉にアーディティヤたちは目を見開く。
いいや、当然の展開であるとも思っただろう。
「やはり、ディアボロスの守備隊……! どうかお下がりください、ここは我らが!」
トループス級である『キンナリー』たちがアヴァタール級である『風天ヴァーユ』を庇うように現れたエイレーネを迎撃戦と踏み出す。
だが、彼女たちは気が付かなかった。
自分達が今まさにクィトによって挟撃の憂き目に立っていることを。
その一瞬の判断の遅れが、この戦いの命運を決するのだ。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【浮遊】LV1が発生!
【フライトドローン】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】LV1が発生!
【反撃アップ】LV1が発生!
クィト・メリトモナカアイス
モナカ砲撃型、制圧せよー!
キンナリーたちが背中を向けたところを狙い、「砲撃のメコンボブテイル」。
主砲からどかんどかんと砲撃を放ち、キンナリーへと攻撃。
んむ、えっちらおっちら山を登って石を掘りに来た汝らには悪いけれど。
天空寺院から出てきたのが運の尽き。
汝ら神を騙る者。
汝らの名は語られず、刻まれず。
この山で雪の下に沈むべし。
その後も仲間と挟撃することで一気に攻め立て、まずは敵が逃げようとする前に倒しきれるように。
逃げようとしても、敵より下に我がいるから普通に退くことはできぬし、斜面を転がり落ちてでも……という敵も狙いやすい。
敵のはばたきやモナカ砲撃型の砲撃で雪が舞い上がろうと【完全視界】で視界を確保し、狙い撃つことで逃さず敵を倒そう。
我のかわいいモナカからは逃れられぬ。てー!
急降下からの一撃は黄金猫拳打棒で受け止めてダメージを抑えつつ、攻撃の勢いで滑落や崩落が起きそうな時は【浮遊】でふわりと浮いて安定した足場へ移ろう。
エイレーネ・エピケフィシア
クィト様の攻撃と同時に発生した【完全視界】を借りて、彼女と敵の姿を鮮明に視認
『精霊たちの召喚』で梟の精霊を傍らに呼び出し、頂から撃ち下ろす破壊光線で敵群を薙ぎ払います
クィト様の砲撃を耐えた者がいれば優先して光線に巻き込んで、逃すことがないようにトドメを
聖なる頂は、不浄なる偽神どもの到来を望んでいません
都市のみならず、未開の自然すら脅かす者らよ
あなた達にはここで果てて頂きます――覚悟なさい!
この状況を切り抜けるために、敵は「前方の私をパラドクスで吹き飛ばし強行突破する」か「横方向に逃げる」ことを試みるでしょうか
突破狙いの相手に対しては、暴風を《神護の輝盾》で防ぎながら撃ち合って対処
風に耐え切れず頂から落ちそうな時は【フライトドローン】に自身を拾わせ、一時的な足場とします
横に離脱を図る者に対しては、パラドクスで蛇の精霊を足元に呼び出します
蛇を脚に噛みつかせてダメージを与えながら移動を妨害
いよいよ山から飛び降りる寸前まで至る者がいれば、【防衛ライン】を眼前に引いて足止めし迂回される前に討ちます
それは刹那に過ぎない隙だった。
しかし、致命的でもあった。
トループス級『キンナリー』たちは己達が今まさに攻撃されている、という認識を得た瞬間に山頂に待ち構えるディアボロスあるのならば、当然己たちの背後が突かれるということを意識したのだ。
背後から迫るパラドクスの輝き。
「挟撃、だと……!」
「モナカ砲撃型、制圧せよー!」
クィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)は、浮遊球形ガジェット『モナカ』砲撃型を整然と一列に並べ立て、山頂を目指していたトループス級『キンナリー』の背後へとパラドクスの砲撃を叩き込むのだ。
炸裂する光に『キンナリー』たちは一瞬の判断が遅れた事により、その身を打ち据えられる。
「くっ……だが、我らより下にあったことが運の尽きよ!」
羽撃く『キンナリー』が己達よりも下に位置することを良いことにクィトに飛びかかる。
「女神に仕える聖なる獣よ、穢れし者らを狩りたまえ!」
しかし、その背中に迫るのはエイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)のパラドクスだった。
精霊たちの召喚(クルシス・プネヴマトス)によって宙を矢のように飛ぶのは、梟の精霊であった。
その瞳から迸る破壊光線の一撃が『キンナリー』の背中を打ち据え、失墜させる。
「聖なる頂は、不浄なる偽神どもの到来を望んでいません。都市のみならず、未開の自然すら脅かす者らよ。あなた達にはここで果てて頂きます――覚悟なさい!」
エイレーネの携えた盾が吹雪の中にあってパラドクスの輝きによって輝く。
その姿に『キンナリー』たちは歯噛みする。
そう、背後からクィトのガジェットによる砲撃。
己たちの頭上からはエイレーネの召喚した精霊たちが放つ破壊光線。
完全に挟撃されている。
であるのならば、彼女たちが次に取ったのは山頂への強行突破であった。
「下策、無為に還るばかりと知らず」
エイレーネは果敢に己に迫る『キンナリー』のパラドクスによる暴風を盾で受け止めながら、己の背をフライトドローンで支え、足場にする。
アイゼンのついた登山靴を装備していたとしても、この雪原である。
過酷な環境で戦うのだから、足場は堅固であればあるほどいい。
「んむ、えっちらおっちら山を登って石を掘りに来た汝らには悪いけれど。天空寺院からでてきたのが運の尽き」
クィトは砲撃を続ける。
この挟撃は敵を逃さぬことに腐心しなければならない。
敵が撤退を選ぶ前にトループス級の数を減らし、アヴァタール級を丸裸にしなければならない。
「汝ら神を騙る者。汝らの名は語られず、刻まれず。この山で雪の下に沈むべし」
「我らを謗るか! そのような驕り!」
「んむ、然り」
クィトを襲う『キンナリー』の一撃を彼女は見ていた。
どれだけ吹雪くのだとしても、戦いの余波で視界が遮られようと、彼女の瞳は残留効果の軌跡を手繰り寄せていた。
【完全視界】による何物にも阻まれぬ視界。
彼女は狙いを誤ることなく『キンナリー』を見据えていた。
「我のかわいいモナカからは逃れられぬ。てー!」
交錯するパラドクス。
時空を歪める逆説連鎖戦において互いの一撃は必中。
砲撃を受けて身を焼かれながらも『キンナリー』は、その強靭な鉤爪の一撃をクィトへと叩き込む。
しかし、その一撃は彼女が手にしていた黄金猫打棒によって防がれていた。
「だが! この足場では!」
「案ずるな。我の足は雪原に触れておらぬゆえ」
そう、残留効果【浮遊】にてクィトは地面から僅かに浮かんでいた。そのために悪い足場に取られる、ということはない。
しかと受け止めた『キンナリー』の一撃。
返す刃のように放たれる砲撃が『キンナリー』を討ち滅ぼす。
さらにエイレーネのパラドクスが煌めく。
彼女は『キンナリー』たちの頭上を抑えていた。しかし、重力に従って峰の下方へと走るということは、それだけで危険を伴う。
だが、彼女はフライトドローンを足場にして跳躍し、己が手にした槍より走る蛇の精霊でもって『キンナリー』の脚部へと噛みつかせるのだ。
「くっ……こ、ここまで!」
「逃がしません。ただの一人も、この状況を『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』に伝えさせることは」
許さない。
エイレーネの瞳に『キンナリー』たちはたじろいだようだった。
しかし、この状況を冷静に、それこそ大局的に見ていたのはアヴァタール級『風天ヴァーユ』であった。
「お前たちは一人でも多く逃げよ。一か八かであるが、崖下に転げ落ちれば、ディアボロスの追撃を躱せるやもしれぬ。私が殿を務める。さあ、ゆけ」
その言葉に『キンナリー』たちは僅かにためらったが、しかし決意したように崖下に飛び込もうとする。
「……!?」
「何
……!?」
彼らの表情が凍りつく。
そう、いよいよ崖下に飛び込もうとした『キンナリー』たちを阻んだのは、一本の白線だった。
通常ならば飛翔すればいい。
だが、崖下に降ろうとすれば、当然足が地についた状態である。
その状況でエイレーネが手繰り寄せた【防衛ライン】が『キンナリー』たちの移動を一瞬阻んだのだ。
飛翔すれば、確かに白線は軽々と飛び越えることができるだろう。
「この逆説連鎖戦の中にあっては、飛翔することは目を集める自殺行為。その逡巡が、あなた方の命運を決するのです」
「そのとおり! ってー!」
クィトのガジェットのに寄る砲撃が崖下に飛び込んででも撤退しようとした『キンナリー』を打ち据える。
燃える体躯が崖下に落ちていく。
あれでは生命はないだろう。
アヴァタール級『風天ヴァーユ』は理解しただろう。
ならば、彼に取れる選択肢など、もはやない。
「ならば、貴様らを打倒して私だけでも山頂を目指すしかあるまい!『愛欲の扇動者カーマデーヴァ』様のためにも……! 我が身命をとしてでも貴様らを屠らせてもらおう!」
吹き荒れる風。
クィトとエイレーネは、その気迫漲る姿を見ることになるだろう。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【完全視界】LV1が発生!
【防衛ライン】LV1が発生!
効果2【能力値アップ】がLV2になった!
【命中アップ】LV1が発生!
フェリシア・ウィンウッド
神々の戦いなんて、やっぱり時代はボリウッドなのかしら……ディヴィジョンにも波はやってきているのね
防寒は必要よね。ディアボロスになっても、登山を舐めたりはしないわ
雪山登山装備とスパイク付の靴も身に着けていくわ
女優たるもの、涼しい顔で演技をしなくちゃね
……寒くなんかないんだからッ!
風天ヴァーユの風が強ければ、吹き飛ばされないように地面を踏みしめるわ
足場が崩れたら【浮遊】で姿勢を維持して立て直すわ
『Protean Actress』を発動して、大声で注意を引くわ
お待ちなさい!『貴様らを打倒して』ですって!?
できると思っているなら、あなた私達の実力を見誤っているわよ
私の一撃はこのK2さえ形を変えて砕くわ!
喰らいなさい! 偉大なるドラゴンから奪った、『神殺し』の聖剣エクスカリバーの一撃をーー!
大口叩いて、プロティアンソードを大剣に変えて一撃よ!
強さはハッタリだけど、存在感を見せつけてあげるわ
その隙に仲間が上手いことやってくれるでしょ!
気圧された方が負けね
風の刃で切り裂かれても、怯んであげないわ
エイレーネ・エピケフィシア
戦い抜く覚悟を決めるのが些か遅かったようですね。わたし達は初めからそのつもりですよ
この地に救うべき命は在りませんが、カーマデーヴァが良質の石を手に入れれば、改築された天空寺院は新たな支配の礎となるでしょう
その目論見を赦す訳には参りません!
《神護の長槍》と《神護の輝盾》を手に山頂付近に陣取ります
ただし相手は離脱や突破ではなく直接対決に舵を切ったようですから、こちらも立ち位置に固執はしすぎません
足元が崩れてきているなら、仲間が敵と打ち合っている間により安定した場所に降りて仕切り直すのも手ですね
また、【フライトドローン】も引き続き自身や仲間の落下阻止に使います
【完全視界】で敵の姿を過たず捉え、『勝利齎す女神の威光』を発動
槍の穂先から溢れ出す聖光の奔流で偽神の体を呑み込み、焼き尽くさんとします
迫り来る大気の拳は、盾を構えながら交差するように斜め前に跳んで、握り潰されるのではなくぶつかり合って弾き飛ばされるダメージに留めましょう
忌まわしき偽りの神よ!
奈落の底へと転げ落ち、永遠に囚われていなさい!
クィト・メリトモナカアイス
んむ、そのいきやよし。
それはそれとして。
容赦する理由も倒されてあげる理由もなし。
カーマデーヴァがいる汝らの拠点にも向かわねばならぬのでー。
ここで汝はしばき倒す。
黄金猫拳打棒の先端に光を集め爪のように伸ばす「毒蛇食む断頭の爪」。
暴風と共に突進するヴァーユを待ち構え、光の爪で切り裂こう。
これぞ黄金猫爪斬棒。おりゃー。
悪い足場に対しては引き続き【浮遊】で滑落を防ぎながら戦闘。
さっきのトループス戦からずっと暴れてるし、そろそろ辺りの雪も吹き飛んで崩れやすいところはある程度崩れてるような気はする。
地面が露出しているところとか岩場みたいな安定した足場になりそうなところは戦闘中に見繕っておこう。
他の復讐者と挟撃できるタイミングや、他の復讐者がヴァーユの気を惹いている時など好機では浮遊を使わず地面を蹴って一気にヴァーユに接近。黄金猫爪斬棒の猫ひっかきでヴァーユを縦に切り裂く。
何をどう言おうと。
汝ら神を騙り民を惑わす者。
容赦せぬ。
非情の山、K2の山頂付近に風が吹き荒れていた。
それはアヴァタール級『風天ヴァーユ』のパラドクスに起因する暴風であった。
曰く、その速さ駿馬の如く。
荒れ狂うは人の生気より生まれし、激情。
かつて在りし神話にて語られる所の神の名を持つアヴァタール級は、不退転の覚悟を決めていた。
無論、此処において後退という二文字は彼の中にはなかった。
進むか、もしく散るか。
結果として、そのいずれかしかない。
故に、エイレーネ・エピケフィシア(都市国家の守護者・g08936)とクィト・メリトモナカアイス(モナカアイスに愛されし守護者・g00885)は理解していた。
眼の前のアヴァタール級の覚悟を。
「んむ、その意気やよし」
「ですが、戦い抜く覚悟を決めるのが些か遅かったようですね。私達ははじめからそのつもりですよ」
二人は『風天ヴァーユ』を挟撃する。
挟み込んだ二面からの攻勢。
確かに『風天ヴァーユ』は劣勢に立たされている。しかし、ディアボロスとアヴァタール級との力が同程度であればの話だ。
成長続けるディアボロスであれど、未だにアヴァタール級に単騎で如何にかすることはできない。
ディアボロスの強みは、単騎の能力に寄るところではないからだ。
ともに戦う者たちがいてこそ、ディアボロスの能力は向上する。。
それをディアボロスたちは理解していたし、『風天ヴァーユ』は理解していなかった。
「目障りな。貴様らを打倒しなければ、あの御方に報いることができぬのならば!」
手繰る風が暴風へと変貌する。
だが、その一触即発に割って入る声があった。
「お待ちなさい! それができると思っているのなら、あなた、私達の実力を見誤っているわよ!」
フェリシア・ウィンウッド(人間のワールドスター・g11699)だった。
彼女は、己のパラドクスでもって『風天ヴァーユ』の注意を引き付ける。瞬間、『風天ヴァーユ』のかざした手から放たれるのは、変幻自在なる風の刃であった。
「問答無用ってわけ!」
「戦いにおいて問答なぞする暇があるものか!」
「ふん、いいわ。でもいいのかしら、私の一撃はこのK2さえ形を変えて砕くわ!」
「大法螺をふく!」
「なら、身を持って体感するといいわ! 偉大なるドラゴンから奪った『神殺し』エクスカリバーの一撃を!」
それは確かに大口であったことだろう。
しかし、何故か『風天ヴァーユ』は己が、フェリシアの言葉を無視できないことができないのか、頭の片隅で考えていた。
風の刃はフェリシアの体躯を切り裂く。
防寒具が散り散りに切り裂かれる。
けれど、フェリシアは涼しい顔で己が手にした大剣を振りかぶる。
まさか本当にそうなのか?
はったりではないのか?
このK2の地形を変えるほどの一撃を、あのディアボロスは放つことができるのか?
疑念を払拭する材料は何一つない。
「まさか……! 真なのか!?」
叩きつけられる大剣の一撃。
しかし、それはパラドクスが見せる幻影めいた輝き以上のものではなかった。
『風天ヴァーユ』は、やはりはったりなのだと理解しただろう。
だが。
「フン、気がついたみたいね。けど、もう遅いわ。ハッタリでもなんでも、気圧されたでしょ、あなた。なら、負けよ!」
そう、フェリシアが生み出したのは、隙だった。
フェリシアの女優としての演技、胆力が『風天ヴァーユ』を僅かでも脅かした証明であった。
「そ、その程度で……!」
「いいえ、あなたは確かに彼女に気圧されたのです」
「んむ、何をどう言おうと、それは変わらぬ。汝ら神を騙り民を惑わす者。それが気圧されるというのならば、偽神という証左。故に、容赦せぬ」
エイレーネとクィトが暴風吹き荒れる『風天ヴァーユ』へと飛び込む。
フェリシアが生み出した一瞬の隙。
その隙を逃さず踏み込んだのは、互いに残留効果を紡いでいるからだ。
彼女たちの連携は、即席だった。
しかし、その胸に抱く意思は同じだった。
そう、アーディティヤ。
彼らに『マンディール石』を渡さない。
「この地に救うべき生命は在りませんが、カーマディーヴァが良質の石を手に入れれば、改築された天空寺院は新たな支配の礎となるでしょう。その目論見は!」
貫いて穿つ。
そういうようにエイレーネの瞳がパラドクスに輝く。
手にした盾と槍。
その煌きと共にパラドクスが煌めく。
振るわれるは、大気の拳。
エイレーネの頭上に合わされた両の拳が大気を圧縮して凄まじい圧力を放つのを感じただろう。
「あの御方のために、私は戦うのだ! 貴様らディアボロスを打倒し、山頂の『マンディール石』を手に入れれば、あの御方の御威光はさらにあまねく世界を照らすはずなのだ! それを! 邪魔立てするのならば!!」
振るわれる鉄槌のごとき大気の拳。
その一撃をエイレーネは己が足場としたフライトドローンを蹴って掠めながら『風天ヴァーユ』へと飛び込む。
暴風に舞う雪。
然し、彼女の瞳は通らえていた。
「忌まわしき偽りの神よ! 奈良の底へ転げ落ち、永遠に囚われていなさい!」
エイレーネが宿すは、勝利齎す女神の威光(アテーナー・ニーケー)である。
彼女の信仰心の発露。
それはパラドクスの光となって『風天ヴァーユ』へと叩きつけられる。
溢れ出す聖光は、破壊光線となって『風天ヴァーユ』の体躯を焼くだろう。
叩きつけられた大気の拳は衝撃波となってエイレーネを襲う。
盾で受けても吹き飛ばされるほどの力。
「驕るったな、ディアボロス! この程度で私をやれると思ったか!」
「んむ。やれると思っている。共に戦う仲間がいる」
叩きつけられた大気の拳によって雪原は、雪粉が舞う銀の世界。
けれど、その中を蹴って駆け上がっていく一つの影があった。
フェリシアが注意を引き付け、エイレーネが打撃を与えた。
その間隙を縫うようにしてクィトは駆け上がっていたのだ。
この雪原の麓には『愛欲の扇動者カーマディーヴァ』がいる。その拠点にも己達は向かわねばならぬのだ。
故に。
「ここで汝はしばき倒す」
手にした黄金猫打棒の先に光が灯る。
刻むはパラドクスの輝き。
銀雪舞う中にあって、その輝きは猫の爪を思わせる光をともしていた。
「これぞ守護者にして処刑人の爪」
「見くびるな、ディアボロス!」
「気圧され、打ちのめされて、その体……己が思う以上に動けぬのではないか?」
「謀るな! この私が動けぬ? 笑止! 苦し紛れのハッタリなど!」
クィトの言葉を吹き飛ばすように回転して突撃する『風天ヴァーユ』。
しかし、その一撃をクィトは黄金の光放つ爪……毒蛇食む断頭の爪(ドクジャハムダントウノツメ)によって切り裂くようにして『風天ヴァーユ』の首元へと迫るのだ。
「いいや、汝は既に敗れておる」
そう、ともに戦うからこそディアボロスは強くなっていく。
手繰り寄せた残留効果の輝きをクィトは見た。
フェリシアが束ね、エイレーネが叩きつけ、さらに強烈な輝きを宿していく残留効果。
そのお力の軌跡をなぞるようにして放たれたクィトの黄金の爪の一撃が『風天ヴァーユ』の首を刈り取るようにして、断頭する。
暴風に舞う首。
雪原に落ちた首と共に『風天ヴァーユ』は、倒れ伏す。
如何なる暴風であっても、人は歩みを止めなければ、未踏地であろうと踏破していくことができる。
それを示すようにディアボロスたちは山頂に迫るアーディティヤたちを退けたのだった――。
大成功🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
効果1【友達催眠】LV1が発生!
【隔離眼】LV1が発生!
【一刀両断】LV1が発生!
効果2【アクティベイト】LV1が発生!
【命中アップ】がLV3になった!