リプレイ

●新年の喜びを共に
　冬の寒さを肌で感じながら、リヴィエラ・ラルトラス（Cavaliere dell'Alba・g10778）はレイラ・ウルブズ（Lady Wolf・g10776）と手を繋ぎ、賑わう境内を歩いていた。
「家族での初詣も今回で二回目か……」
　感慨深げに、それでいてほんの少しの照れくささと、隠しきれない嬉しさと共にリヴィエラが呟く。
「そうですわね……わたくしたち、去年の今頃はまだ恋人同士でしたのに」
「……そうだな、今は夫婦だ」
　その言葉に今は夫婦として初詣に向かっているのだと、レイラもまたリヴィエラと同じように照れくさくもあり、嬉しくもありといった笑みを浮かべ、繋いだ手をきゅっと握りしめた。
　そして二人の視線の先――足元で歩くメーラーデーモンの『キャプレット』とダンジョンペンギンの『プルケリマ』も手を繋ぎ、よちよちと歩く姿にも自然と笑みが零れてしまう。まるでいつかの未来のようにも見えて、レイラはついリヴィエラを見上げて微笑む。
「どうした？」
「いえ、ふふ、何でもありませんの」
　ただただ、幸せだなと思っただけだとレイラが言うと、リヴィエラが俺もだと囁いた。
　人の流れに任せて歩いていると、この神社特有の白蛇の像が見えてレイラが繋いだ手を軽く揺らす。
「狛犬ならぬ白蛇の像ですのね」
「さすが白蛇を祀る神社ってところだな」
　小さな社は軽い行列ができるほどだったが、二人はそれすらも楽しいと手を繋ぎゆっくりと進んでいく。そして二度目ともなれば参拝の作法も慣れたもので、日本の形式に倣い手を合わせて願いごとをしていく。二人が願うのは示し合わせたわけでもないが、家族の変わらない幸せだ。
　病気にかからず健康でいられますように、家族が健康で幸せに過ごせますように――無病息災、家内安全をしっかりと願って目を開けると、小さな家族も二人の真似をして願いごとをしている姿が見えた。
「ふふ、あなた達はなにを願ったの？」
　レイラの問い掛けに、キャプレットもプルケリマも楽しそうにするばかりだ。
　参拝を終えると、来た道を戻りながら蛇の像を眺め、露店へと向かう。参道の両脇にずらりと並んだそれらは、見ているだけでも楽しくなるもの。
「キャプ？」
　リヴィエラが立ち止まったキャプレットに声をかけると、これ！　といわんばかりにキャプレットが屋台の飴細工を見つめているのが見えた。
「プルも欲しいのかしら？」
　レイラが言うと、食べたそうな鳴声を上げたのでリヴィエラと顔を見合わせて笑い、白蛇の飴細工を二つ買い求めキャプレットとプルケリマに渡すと仲良く食べ始めたので、また笑い声が弾ける。
「レイラは何か食べたいものはないか？」
「わたくしは……リヴィエラが選んでくれたものが食べたいですわ」
　そう言われると、どれがいいだろうかとリヴィエラが屋台へ視線を巡らせ、あれでもないこれでもないと屋台を覗き、これだと手にしたのは白蛇の形をしたパン。
「ほら」
　渡されたパンを手にし、一口食べればほんのりと甘い生地に中に入っているクリームがとても合っていて、レイラがリヴィエラもと差し出す。
「あーん、ですわ」
「……あーん」
　ぱくりと齧れば、確かに美味しいとリヴィエラも笑みを浮かべ、二人で分け合うから余計に美味しく感じるのかも、なんて笑いあった。
　食べ終わると、今度はお守りを貰いに行こうと社務所へと向かう。こちらも混んではいたけれど、並んでいる間に何にしようかと数あるお守りを見比べる。
「素敵ね、どんなものがあるかしら」
「種類が色々あるから悩むな……」
　厄除けに除災招福、健康や縁結び、様々な御利益のあるお守りが色とりどり、所狭しと並んでいてリヴィエラが真剣な顔で悩んでいる。その隣で、レイラもまたどれがいいかと視線をあちらこちらに向けていた。
「……本当、沢山で悩んでしまいますの」
　あれも素敵、これもいいと悩んでいれば、すぐに自分達がお守りを授かる番になって。
「よし、キャプとプルには子巳守、自分達用に白蛇根付御守、それぞれ色違いで貰おうか」
　リヴィエラが悩んだ末に決めたものを頼む横で、レイラがふと目にしたお守りに手を伸ばして貰うことに決めた。受け取ったお守りをキャプレットとプルケリマの鞄に付けてやり、色違いで揺れるお守りに喜ぶ彼らの後ろをレイラとリヴィエラがついていく。
「……ん？　レイラ、何を持ってるんだ？」
「これはわたくしに必要かと思って」
　ふふ、と笑ってレイラが手にしたお守りを見せる。
「えっ、それは……安産御守？　もしかして、そう……なのか？」
　安産を願うお守り、ということは、とリヴィエラの鼓動がにわかに早くなる。それを知ってか知らずか、レイラが柔らかく微笑んだ。
「……ええ、そうですの。今年の夏にはあなた、パパになりますのよ」
「…………！」
　レイラの言葉を何度も頭の中で繰り返し、嬉しさがこみ上げすぎて言葉が出てこない。けれど、嬉しいということを伝える為にリヴィエラは繋いだ手を強く握りしめる。
「俺達に、新たな家族が増えるんだな……」
　やっとのことで言葉を絞り出したリヴィエラに微笑んで、レイラが彼の頬を優しく撫でて頷いた。
「そうか……そうか……！　それなら、確かにそのお守りは必要だ」
　なんなら、もう一つ余分に買ったっていいくらいだ、と真剣な顔でリヴィエラがレイラに向き合う。
「ふふ、リヴィエラったら……」
　リヴィエラが喜ぶその姿に、レイラも新しい家族が増えるのだと改めて感じ、そしてこんなにも喜んでくれる彼への想いが溢れ出すのを感じて、手を握り返した。
　守るべきものが増えた幸せの中、これからも大事な家族を守っていこうとリヴィエラが新たな願いを込める。
　どうか、これから新しく始まる一年が、良きものでありますように――。

最終結果:成功
完成日	2025年01月11日